(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012211
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】照明装置及び補正方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20250117BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20250117BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20250117BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/105
H05B47/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114890
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 昂大
(72)【発明者】
【氏名】大野 彰久
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA01
3K273PA09
3K273QA07
3K273QA11
3K273QA28
3K273RA05
3K273SA06
3K273SA35
3K273SA46
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA77
3K273UA21
3K273UA22
3K273UA23
3K273UA27
3K273UA28
(57)【要約】
【課題】色温度の異なる複数の発光素子を有する照明装置の色温度のばらつきを抑制することを目的とする。
【解決手段】照明装置は、それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子と、第1発光素子及び第2発光素子に、個別に点灯電力を供給する電源回路と、第1発光素子及び第2発光素子の色温度のばらつきに応じて設定された補正値に基づいて、第1発光素子及び第2発光素子へ供給される点灯電力を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子と、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子に、個別に点灯電力を供給する電源回路と、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつきに応じて設定された補正値に基づいて、前記第1発光素子及び前記第2発光素子へ供給される前記点灯電力を制御する制御部と、
を備えた照明装置。
【請求項2】
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲は、それぞれマクアダム楕円1stepを超える範囲である請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1発光素子と前記第2発光素子との合成光の色温度のばらつき範囲は、マクアダム楕円3step以下の範囲である請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記補正値は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲から得られる請求項1~請求項3の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記補正値は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲、及び、前記第1発光素子及び前記第2発光素子を個別に発光させた時の明るさのばらつき範囲から得られる請求項1~請求項3の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1発光素子及び前記第2発光素子を個別に発光させた時の明るさのばらつき範囲は、それぞれの基準の明るさに対し±20%以内の範囲である請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1発光素子へ供給される前記点灯電力と前記第2発光素子へ供給される前記点灯電力との比率を、前記補正値を用いて補正する請求項1~請求項3の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子を備える照明装置の補正方法であって、
前記第1発光素子のみを点灯させ、前記第1発光素子の色度座標を特定する工程と、
前記第2発光素子のみを点灯させ、前記第2発光素子の色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子と前記第2発光素子との合成光の色度座標である補正前色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子の色度座標と、前記第2発光素子の色度座標と、前記補正前色度座標と、目標となる前記合成光の等色温度線とに基づいて、補正値を求める工程と、を含む補正方法。
【請求項9】
前記補正値を求める工程は、
前記第1発光素子の色度座標と前記第2発光素子の色度座標とを結ぶ直線と、前記合成光の前記等色温度線との交点を求め、
前記交点と、前記補正前色度座標との差に応じて色度座標の補正値を求める工程である請求項8に記載の補正方法。
【請求項10】
前記補正前色度座標を特定する工程は、
前記第1発光素子の色度座標と、前記第2発光素子の色度座標と、から前記合成光の色度座標を算出し、算出した前記合成光の色度座標を前記補正前色度座標とする工程である請求項8又は請求項9に記載の補正方法。
【請求項11】
前記補正前色度座標を特定する工程は、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の両方を点灯させて、前記合成光の色度座標を取得し、取得した前記合成光の色度座標を前記補正前色度座標とする工程である請求項8又は請求項9に記載の補正方法。
【請求項12】
それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子を備える照明装置の補正方法であって、
前記第1発光素子のみを点灯させ、前記第1発光素子の色度座標を特定する工程と、
前記第2発光素子のみを点灯させ、前記第2発光素子の色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子と前記第2発光素子との合成光の色度座標である補正前色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子の色度座標と、前記第2発光素子の色度座標と、前記補正前色度座標とに基づいて求められる、目標となる前記合成光における前記第1発光素子及び前記第2発光素子の明るさに基づいて、補正値を求める工程と、を含む補正方法。
【請求項13】
それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子を備える照明装置の補正方法であって、
前記第1発光素子のみを点灯させ、前記第1発光素子の明るさ及び色度座標を特定する工程と、
前記第2発光素子のみを点灯させ、前記第2発光素子の明るさ及び色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子と前記第2発光素子との合成光の色度座標である補正前色度座標を特定する工程と、
前記第1発光素子の明るさ及び色度座標と、前記第2発光素子の明るさ及び色度座標と、前記補正前色度座標とに基づいて、補正値を求める工程と、を含む補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色温度の異なる複数の発光素子を有する照明装置、及び該照明装置の補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照射する光の光量及び光色を調整可能な照明装置が知られている。例えば特許文献1には、光色の異なる複数の光源を備えた照明器具において、複数の光源の光量をそれぞれ調整することで、目的の照明光とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、光色の異なる複数の種類の光源により目的の光色の合成光を照射する場合は、各光源へ供給される電力の調整が行われる。例えば、相関色温度が5000Kの第1発光素子と、相関色温度が3000Kの第2発光素子とを備える照明装置の場合、第1発光素子及び第2発光素子へ供給される電力の比率を調整することで、中間色である相関色温度が4000Kの合成光を生成することができる。しかしながら、同じ種類の各発光素子にも色温度及び光束のばらつきが存在し、合成光の色温度及び光束のばらつきは、第1発光素子と第2発光素子との色温度及び光束のばらつきが加算された範囲となる。その結果、複数の照明装置において、第1発光素子及び第2発光素子へ供給される電力の比率を同じに調整して点灯させた場合も、照明装置によって色温度が異なり、利用者に違和感を与えてしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、色温度の異なる複数の発光素子を有する照明装置における色温度のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る照明装置は、それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子と、第1発光素子及び第2発光素子に、個別に点灯電力を供給する電源回路と、第1発光素子及び第2発光素子の色温度のばらつきに応じて設定された補正値に基づいて、第1発光素子及び第2発光素子へ供給される点灯電力を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
本開示に係る補正方法は、それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子を備える照明装置の補正方法であって、第1発光素子のみを点灯させ、第1発光素子の色度座標を特定する工程と、第2発光素子のみを点灯させ、第2発光素子の色度座標を特定する工程と、第1発光素子と第2発光素子との合成光の色度座標である補正前色度座標を特定する工程と、第1発光素子の色度座標と、第2発光素子の色度座標と、補正前色度座標と、目標となる合成光の等色温度線とに基づいて、補正値を求める工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示における照明装置及び補正方法によれば、色温度の異なる複数の発光素子の色温度のばらつきに応じて設定された補正値に基づいて、各発光素子へ供給される点灯電力を制御することで、照明装置の色温度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る照明装置の斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る照明装置の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る照明装置の灯具の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る照明装置の光源部及び電源部の構成を説明する図である。
【
図5】実施の形態1に係る照明装置の色温度のばらつきを説明する色度図である。
【
図6】実施の形態1における補正値取得処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1における補正値取得処理を説明する色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る照明装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明装置100の斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る照明装置100の分解斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る照明装置100の灯具101の斜視図である。なお、
図1及び
図2は、照明装置100を下方から見た図であり、
図3は、照明装置100の灯具101を上方から見た図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の照明装置100は、長尺状であり、天井又は壁等に取り付けられて、室内空間等の照明空間に光を照射するものである。照明装置100は、照明空間に光を照射する長尺の灯具101と、天井又は壁等に取り付けられて固定される長尺の器具102とを備える。
【0013】
図1~
図3に示すように、灯具101は、光源部1と、台座部2と、電源部3と、連結具4と、カバー5と、を有している。器具102は、
図1及び
図2に示すように、器具本体6と、端子台7と、保持具8と、を有している。灯具101は、器具102に着脱自在に取り付けられている。
【0014】
まず、
図1~
図3を参照して、灯具101の構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、光源部1は、複数の発光素子13を備えている。なお、
図1及び
図2では、発光素子13を一部省略して示しているが、実際には、発光素子13は、灯具101の長手方向に沿って連続して実装されている。複数の発光素子13は、後述する複数の第1発光素子13aと、複数の第2発光素子13bとを含む(
図4)。
【0015】
台座部2は、灯具101の長手方向に沿って延びる長尺の平板状であり、照射側となる台座部2の下面に光源部1が設けられている。また、
図3に示すように、台座部2の上面には、電源部3及び連結具4が設けられている。台座部2は、板金で形成されており、光源部1又は電源部3の動作熱を放散させる放熱機能を有している。なお、台座部2は、放熱機能を有する範囲で、一部又は全部が金属以外の合成樹脂又はセラミック等で形成されてもよい。
【0016】
電源部3は、端子台7から供給された電力を発光素子13に供給する電源としての機能と、発光素子13に供給される点灯電力を制御する機能と、を有している。なお、電源部3は、灯具101の一部として構成する必要はなく、器具102の一部として構成してもよい。
【0017】
連結具4は、器具102に設けられた保持具8と係合し、灯具101を器具102に取り付けるための部材である。連結具4は、一例として板状であり、保持具8が挿通される開口が形成されている。連結具4は、保持具8に対応する位置であって、台座部2の長手方向における両端にそれぞれ設けられている。なお、連結具4の位置及び個数は、
図3の例に限定されるものではなく、照明装置100の形状及び大きさに応じて適宜決められる。また、連結具4の構造は、
図3の例に限定されるものではなく、保持具8を保持することができれば、他の構造でもよい。また、器具102に連結具4を設け、灯具101に保持具8を設けてもよい。
【0018】
カバー5は、透光性を有する材料を用いて形成され、光源部1の発光素子13の周囲を覆う部材である。発光素子13から発光された光は、カバー5を介して照明空間に照射される。透光性の材料は、例えば、ポリカーボネイト、アクリル又はポリプロピレン等の合成樹脂等である。カバー5は、使用される材料に応じて、射出成形、押出し成形、又は三次元積層造形等により形成される。カバー5は、長手方向に沿って設けられた取付け部(不図示)によって台座部2に取り付けられている。
【0019】
次に、
図1及び
図2を参照して器具102の構成について説明する器具102は、一例として、所謂V字タイプの直付型器具である。なお、器具102は、図示した直付型器具に限定されず、他の形態でもよい。上記したように、器具102は、器具本体6と、端子台7と、保持具8と、を有している。器具本体6は、長手方向に沿って延びる本体部60と、本体部60の両端に取り付けられた端板部61と、を有している。
【0020】
本体部60は、短手方向の断面形状が凹状となるよう板金を折り曲げて形成され、該凹状の内部に灯具101が装着される。本体部60の底面には、器具102を天井に取り付けるための吊りボルト又はネジ等を通す複数の取付孔が形成されている。器具102は、天井に吊りボルト又はネジ等で接合されることで取り付けられる。また、本体部60の底面には、外部電線を照明装置100の内部へ通すための通線孔が形成されている。外部電線は、本体部60の内部で端子台7に接続される。
【0021】
端板部61は、本体部60の長手方向における両端面を塞ぐように、本体部60の長手方向における両端部に取り付けられる。なお、端板部61には、複数の照明装置100を長手方向に連結設置する場合に開放して送り電線を通すためのノックアウトを設けてもよい。
【0022】
また、本体部60の底面と側面とで形成された凹状の内部には、端子台7及び保持具8が設けられている。端子台7は、本体部60の底面に固定されている。端子台7は、建物等に設けられた固定配線(不図示)に接続されて、商用電源から電力供給を受けると共に、制御用の通信を中継するために設けられている。端子台7は、一端部にコネクタを有する電線を介して電源部3に接続される。
【0023】
保持具8は、連結具4と係合して、器具102に灯具101を取り付けるために設けられている。保持具8は、例えば、ステンレス等の弾性を有する材質であり、帯状の板材を湾曲させて形成した板バネである。保持具8は、基端部が本体部60の底面に取り付けられている。
図3の例の場合、保持具8は、連結具4に対応する位置であって、本体部60の長手方向における両端にそれぞれ1つずつ設けられている。なお、保持具8の位置及び個数は、
図3の例に限定されるものではなく、照明装置100の形状及び大きさに応じて適宜決められる。
【0024】
なお、保持具8は、板形状の弾性部材に限定されず、線バネ等、板バネ以外の弾性部材でもよく、灯具101を保持できるものであればよい。また、保持具8及び連結具4を使用することなく、例えばネジ又はリベット等の固定具を用いて、器具102に灯具101を取り付けてもよい。
【0025】
図4は、実施の形態1に係る照明装置100の光源部1及び電源部3の構成を説明する図である。
図4に示すように、光源部1は、複数の第1発光素子13aを有する第1光源回路11と、複数の第2発光素子13bを有する第2光源回路12と、第1光源回路11及び第2光源回路12が実装される基板14と、を備えている。なお、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの数は、複数に限定されず、1つ以上であればよい。
【0026】
第1発光素子13a及び第2発光素子13bは、砲弾型、表面実装型(SMDタイプ)、又はチップオンボード型(COBタイプ)のLEDである。又は、第1発光素子13a及び第2発光素子13bは、レーザー光源もしくは有機EL光源などであってもよい。
【0027】
第1発光素子13aは、相関色温度が5000Kの白色光を発光する。また、第1発光素子13aの色温度のばらつき範囲は、5000Kの等色温度線を含むマクアダム楕円1stepを超える範囲であり、例えば3step相当の範囲とする。第2発光素子13bは、相関色温度が3000Kの白色光を発光する。また、第2発光素子13bの色温度のばらつき範囲は、3000Kの等色温度線を含むマクアダム楕円1stepを超える範囲であり、例えば3step相当の範囲とする。
【0028】
第1発光素子13a及び第2発光素子13bの仕様は、上記に限定されず、照明装置100の仕様に応じて適宜選択可能である。例えば、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの色温度は、上記の例に限定されず、例えば、第1発光素子13aの相関色温度を6500Kとし、第2発光素子13bの相関色温度を2700Kとしてもよい。
【0029】
基板14には、第1発光素子13a及び第2発光素子13bに個別に点灯電力を供給する経路となる導電性の回路パターンが形成されている。第1発光素子13a及び第2発光素子13bが表面実装型(SMDタイプ)の場合は、リフローはんだ工程により基板14上に固定されることによって第1光源回路11及び第2光源回路12が構成される。
【0030】
図4においては、説明のため、第1発光素子13a及び第2発光素子13bがそれぞれ一列に配置されているが、実際は、第1発光素子13a及び第2発光素子13bは1つずつ交互に隣り合うように配置される。又は、2つ以上の第1発光素子13a及び2つ以上の第2発光素子13bを一組として、一組ずつ交互に配置してもよい。ただし、一組を構成する同じ種類の発光素子の数が多くなるほど、隣りあう異なる発光素子の組同士の視覚上の色度差が目立ちやすくなる。そのため、色温度が異なる第1発光素子13a及び第2発光素子13bを1つずつ交互に配置する方が視覚上の色度差は目立ちにくい。
【0031】
第1発光素子13a及び第2発光素子13bを実装する際の列数又は行数は、基板14又は第1発光素子13a及び第2発光素子13bの寸法、並びに形状によって決まる。第1発光素子13a及び第2発光素子13bは、1列に実装してもよいし、複数列に実装してもよい。なお、第1発光素子13a及び第2発光素子13bを実装する際の列数又は行数は、第1光源回路11及び第2光源回路12の構成、すなわち、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの並列数及び直列数によっても決まる。また、第1光源回路11及び第2光源回路12の構成によって、第1光源回路11及び第2光源回路12が消費する電力も決まる。
【0032】
基板14は、リジット基板、フレキシブル基板、又はリジットフレキシブル基板である。基板14の難燃性は、製品仕様又は経済性などを勘案して適宜選択可能であるが、一般汎用品であるFR-1~FR-5、CEM1、CEM3(NEMA/ANSI規格)などが好ましい。具体的には、基板14は、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、複合基材エポキシ基板、又はガラスコンポジット基板である。また、基板14は、金属ベース基板(メタルコア基板)であってもよい。基板14の形状は特に限定するものではなく、長方形状、正方形状、多角形状、真円形状、又は楕円形状などさまざまな形状から、照明装置100の仕様に応じて選択することができる。
【0033】
図4に示すように、電源部3は、制御部31と、電源回路32とからなる。制御部31は、専用の単一回路もしくは複合回路などのハードウェア、プログラムを実行するマイクロコンピュータもしくはプロセッサ及びメモリ、又はこれらの組み合わせで構成される。制御部31は、外部からの制御指令を受信し、受信した制御指令に基づいて、第1光源回路11及び第2光源回路12に供給する点灯電力を制御する出力指令を電源回路32に送信する。制御指令は、照明装置100の専用のコントローラ又は利用者のスマートフォンなどから、PWM制御方式、DALI(登録商標)方式などの様々な方式により、有線又は無線で制御部31に送信される。
【0034】
制御指令は、色温度範囲を変化させる「調色」と、明るさを変化させる「調光」の少なくとも何れか一方を制御するものである。調光は、消灯状態である0%出力から100%出力の範囲まで調整可能である。調色は、搭載する発光素子の種類により決まる。例えば本実施の形態のように5000Kの第1発光素子13aと3000Kの第2発光素子13bを備える照明装置100の場合は、相関色温度範囲を5000K~3000Kに調整可能となる。
【0035】
電源回路32は、商用交流電源又は直流電源などの、照明装置100の外部の電源200から供給される外部電力を、第1発光素子13a及び第2発光素子13bを点灯させるための点灯電力に変換する。電源回路32は、第1光源回路11と接続される第1コネクタ321と、第2光源回路12と接続される第2コネクタ322とを有している。電源回路32は、第1コネクタ321及び第2コネクタ322から第1光源回路11及び第2光源回路12に個別に点灯電力を供給する。第1光源回路11及び第2光源回路12に供給される点灯電力の比率、すなわち第1発光素子13a及び第2発光素子13bに流れる電流の比率は、制御部31からの出力指令に基づいて決定される。
【0036】
続いて、照明装置100における色温度のばらつきの抑制について説明する。
図5は、実施の形態1に係る照明装置100の色温度のばらつきを説明する色度図である。
図5の一点鎖線は、第1発光素子13aの色温度である5000Kの等色温度線を示す。
図5の二点鎖線は、第2発光素子13bの色温度である3000Kの等色温度線を示す。
図5の実線は、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの合成光の目標値の一例である、4000Kの等色温度線を示す。
【0037】
また、
図5の一点鎖線の楕円は、第1発光素子13aのばらつき範囲R1であり、例えば、マクアダム楕円3step相当の範囲である。
図5の二点鎖線の楕円は、第2発光素子13bのばらつき範囲R2であり、例えば、マクアダム楕円3step相当の範囲である。
図5の実線の楕円は、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの合成光の目標となるばらつき範囲Rtであり、例えばマクアダム楕円3step相当の範囲である。なお、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの合成光の目標となるばらつき範囲Rtは、マクアダム楕円3step以下の範囲であればよい。
【0038】
一般に、第1発光素子13a及び第2発光素子13bなどの発光素子は、部品仕様としてそれぞれ色温度が定められているが、製造工程における製造ばらつきにより、色温度にもばらつきが発生する。このばらつきは、通常は正規分布を示しており、全ての発光素子が部品仕様として定められた色温度の中心に位置するものではない。そのため、異なる時期に購入(生産)した発光素子は、部品仕様は同じであっても色温度が異なることがある。そして、それらを同じ照明装置の光源として使用すると、基板に実装された隣り合う発光素子同士で見た目の色味が異なることがあり視覚上の違和感に繋がる。
【0039】
通常、色度は、CIE色度図上のxy座標表記よる色度座標として定義される。また、色度図上において、黒体軌跡を中心に、白色相当(6500K昼光色~2700K電球色)の各色温度で、等色温度線が定められる。そして、各色の中心座標からどの程度ばらつき範囲があるかを定義するため楕円が描かれ、マクアダム楕円stepとして表現される。通常、上記のようにマクアダム楕円3stepの範囲であれば、ばらつきがあっても、見た目には分かりにくく違和感はない。なお、より精度の高い発光素子群を使用するか、又は色度座標の組み合わせによっては、ばらつき範囲をマクアダム楕円3stepよりもさらに狭めることも可能である。
【0040】
本実施の形態の照明装置100のように、色温度の異なる複数の発光素子による合成光を照射する場合、各発光素子のばらつき範囲がそれぞれ3step以内だとしても、2種類の発光素子を組み合わせて使用することで合成光のばらつき範囲が広がる。例えば、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの合成光のばらつき範囲は、
図5の破線の楕円に示すばらつき範囲R3となり、例えばマクアダム楕円5.8step相当の等色範囲となる。
【0041】
第1発光素子13a及び第2発光素子13bのばらつきは、各発光素子群が保有する色のばらつき及び光束のばらつきと、各発光素子群に点灯電力を供給する電源回路32の出力ばらつきと、によるものである。このばらつきを抑制する方法として、メーカーから納入される発光素子の色のばらつき範囲及び光束のばらつき範囲を限定し、選別して実装する方法がある。ただし、その場合は、発光素子の購入コストが高くなってしまうこと、並びに層別実装する際に、製造工程での調整の手間が増加すること、及び人員による誤実装が発生する可能性があること、などの問題がある。また、電源回路32の出力ばらつきを抑えるためには、高精度の部品を使用する必要がある。
【0042】
そこで、本実施の形態の照明装置100では、電源回路32から各発光素子へ供給される点灯電力の比率を補正することで、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの合成光の色温度のばらつきを抑制する。点灯電力の比率を補正する際に用いられる補正値は、照明装置100の製造時において、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの実際のばらつきに応じて求められる。
【0043】
図6は、実施の形態1における補正値取得処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、照明装置100の製造時に、光源部1又は照明装置100が完成した段階で、演算用のコンピュータ及び各測定装置によって実施される。まず、第1光源回路11に含まれる全ての第1発光素子13aを点灯させ、第1発光素子13aの光束を測定する(S1)。ここでは、第1発光素子13aのみを点灯させ、第2発光素子13bは点灯させない。そして、第1発光素子13aの色温度を測定し、色度座標を特定する(S2)。
【0044】
続いて、第2光源回路12に含まれる全ての第2発光素子13bを点灯させ、第2発光素子13bの光束を測定する(S3)。ここでは、第2発光素子13bのみを点灯させ、第1発光素子13aは点灯させない。そして、第2発光素子13bの色温度を測定し、色度座標を特定する(S4)。
【0045】
そして、特定された第1発光素子13aの色度座標と、第2発光素子13bの色度座標とから、合成光の色度座標を算出する(S5)。ここでは、第1光源回路11及び第2光源回路12へ供給される点灯電力の比率が50%対50%の場合の色度座標、すなわち補正される前の4000K付近の合成光の色度座標が算出される。ここで算出された合成光の色度座標を「補正前色度座標」とする。
【0046】
そして、第1発光素子13aの色度座標と第2発光素子13bの色度座標とを結ぶ直線と、合成光の目標色の色温度である4000Kの等色温度線との交点座標を算出する(S6)。そして、補正前色度座標と、交点座標との差を算出する(S7)。そして、算出された差に対応した補正値が設定され、制御部31のメモリに記憶される(S8)。
【0047】
補正値は、例えば、第1光源回路11へ供給される点灯電力の基本比率に乗算する係数α(0<α<2)である。補正値は、以下の手順により求められる。まず、第1発光素子13aの色度座標(x1,y1)と第2発光素子13bの色度座標(x2,y2)との距離(差)D2に対する、補正前色度座標(x3,y3)と交点座標(xt,yt)との距離(差)D1の割合(D1/D2)が求められる。そして、求めた割合から第1発光素子13a及び第2発光素子13bの目標光束がそれぞれ求められる。そして、各目標光束を得るための第1発光素子13a及び第2発光素子13bの目標電流値が求められ、ステップS1~S4測定時の電流値に対する目標電流値の比率を補正値とする。なお、ステップS1~S4において、各発光素子の点灯は同じ条件で点灯させても良いし、異なる条件で点灯させても良い。異なる条件で点灯させる場合は補正値の算出に条件を反映させればよい。
【0048】
図7は、実施の形態1における補正値取得処理を説明する色度図である。
図7では、補正値取得処理において特定された第1発光素子13aの色度座標(x1,y1)と、第2発光素子13bの色度座標(x2,y2)と、補正前色度座標(x3,y3)とが、それぞれ黒丸で示されている。そして、
図7に示すように、第1発光素子13aの色度座標(x1,y1)と第2発光素子13bの色度座標(x2,y2)とを結ぶ直線Lと、合成光の色温度である4000Kの等色温度線との交点座標(xt,yt)が算出される。そして、補正前色度座標(x3,y3)と、交点座標(xt,yt)との差が算出され、この差を解消する補正値が求められる。これにより、実際の第1発光素子13a及び第2発光素子13bのばらつきに応じた補正値を求めることができる。
【0049】
そして、照明装置100が使用される状態において、制御部31は、制御指令を受信すると、メモリに記憶された補正値に基づき制御指令を補正して、電源回路32に出力指令を送信する。制御部31による出力指令について説明する。まず、制御指令における調色が5000Kの場合、制御部31は、第1光源回路11及び第2光源回路12に供給される点灯電力の比率を100%対0%とした出力指令を電源回路32に送信する。また、制御指令における調色が3000Kの場合、制御部31は、第1光源回路11及び第2光源回路12に供給される点灯電力の比率を0%対100%とした出力指令を電源回路32に送信する。
【0050】
また、制御指令における調色が5000K及び3000K以外の場合、制御部31は、第1光源回路11及び第2光源回路12に供給される点灯電力の基本比率を補正値で補正して出力指令とし、電源回路32に送信する。例えば、制御指令における調色が4000Kの場合、制御部31は、4000Kの場合の基本比率50%対50%を補正値で補正し、例えば53%対47%とした出力指令を電源回路32に送信する。詳しくは、制御部31は、第1光源回路11へ供給する点灯電力の基本比率50%に補正値(例えば1.06)を乗算して補正後の比率を求め、第2光源回路12へ供給する点灯電力の基本比率50%に補正値(例えば0.94)を乗算して補正後の比率を求める。これにより、第1発光素子13a及び第2発光素子13bのばらつきが存在しても、照明装置100から目標色である4000Kの色温度の光を照射することができる。なお、第2光源回路12へ供給する点灯電力の補正後の比率は、100%から第1光源回路11へ供給する点灯電力の補正後の比率を減算して求めてもよい。この場合、比率の合計は100%となり、補正前後において電力は変わらない。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、照明装置100ごとに、色温度の異なる複数の発光素子の色温度のばらつきを実測して、合成光の色温度のばらつきを抑制するための補正値を求める。そして、求めた補正値を用いて、電源部3による出力を調整することで、照明装置100の合成光の発光時の色温度のばらつきを抑制することができる。これにより、複数の照明装置100を隣合わせて設置した場合にも、利用者への違和感を抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態によると、発光素子の選別基準(許容ばらつき)を必要以上に厳しくする必要がなく、また、色温度の分布が近い発光素子を再選別して層別に配置する必要もなくなるため、コストアップを抑制できる。また、使用機会がない発光素子の数量を抑制することができ、廃棄損失削減及び環境負荷軽減等の効果も期待できる。
【0053】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、照明装置100の構成及び用途は実施の形態1に限定されるものではなく、施設用照明、一般家庭用照明、又は店舗用照明などの様々な構成及び用途としてもよい。また、照明装置100の設置環境についても特に限定されるものではなく、屋内用、屋外用、又は特殊用途用(耐塩タイプ、高温タイプ、又は低温タイプなど)であってもよい。
【0054】
また、照明装置100は、上記の灯具101と器具102とが分離可能で、灯具101と、器具102とが別売り可能であってもよい。又は、顧客の希望に応じて灯具101と器具102との組み合わせが変更可能であってもよい。又は、灯具101と器具102とが一体不可分なものであってもよい。さらに、照明装置100の形状は、上記実施の形態の例に限定されず、長尺以外の形状(正方形又は円形)であってもよい。
【0055】
また、照明装置100は、器具102に対して複数の灯具101が取り付けられるものであってもよい。
【0056】
また、照明装置100は、色温度の異なる3種類以上の発光素子を備えてもよい。この場合は、3種類以上の発光素子の色度座標を実測して補正値を求め、補正値に応じて3種類以上の発光素子へ供給される点灯電力の比率を調整することで、合成光のばらつきを抑制することができる。また、上記実施の形態では、目標とする合成光の色温度を中間色の4000Kとした場合で説明したが、製造時に目標とする色温度ごとに補正値を求め、目標とする色温度に応じた補正値を用いて、各発光素子への点灯電力の比率を調整してもよい。
【0057】
また、
図6に示す補正値取得方法において、ステップS1からステップS4の処理は、順序を変更してもよい。また、ステップS5に代えて、第1光源回路11に含まれる全ての第1発光素子13aと、第2光源回路12に含まれる全ての第2発光素子13bとを点灯させ、合成光の色度座標を特定し、補正前色度座標としてもよい。また、ステップS5の処理とステップS6の処理との順序を入れ替えてもよい。
【0058】
また、
図6に示す補正値取得方法において、ステップS5の補正前色度座標(合成光の色度座標)は、測定された第1発光素子13aの光束及び特定された第1発光素子13aの色度座標と、測定された第2発光素子13bの光束及び特定された第2発光素子13bの色度座標とから算出してもよい。この場合、第1発光素子13a及び第2発光素子13bを個別に発光させた時の明るさのばらつき範囲は、それぞれの部品仕様として定められた基準の明るさに対して±20%以内の範囲であることが好ましい。
【0059】
また、
図6に示す補正値取得方法において、ステップS1及びステップS3の処理は、明るさを測定する方法として光束を測定する方法を例示したが、照度、輝度、又は光度などを測定する方法としてもよい。また、上記の補正値取得方法では、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの目標光束に基づき補正値を求めたが、第1発光素子13a及び第2発光素子13bの目標の明るさとして、照度、輝度、又は光度を用いてもよい。
【0060】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0061】
(付記1)
それぞれ異なる色温度で発光する第1発光素子及び第2発光素子と、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子に、個別に点灯電力を供給する電源回路と、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつきに応じて設定された補正値に基づいて、前記第1発光素子及び前記第2発光素子へ供給される前記点灯電力を制御する制御部と、
を備えた照明装置。
(付記2)
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲は、それぞれマクアダム楕円1stepを超える範囲である付記1に記載の照明装置。
(付記3)
前記第1発光素子と前記第2発光素子との合成光の色温度のばらつき範囲は、マクアダム楕円3step以下の範囲である付記1又は2に記載の照明装置。
(付記4)
前記補正値は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲から得られる付記1~3の何れか一つに記載の照明装置。
(付記5)
前記補正値は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の色温度のばらつき範囲、及び、前記第1発光素子及び前記第2発光素子を個別に発光させた時の明るさのばらつき範囲から得られる付記1~3の何れか一つに記載の照明装置。
(付記6)
前記第1発光素子及び前記第2発光素子を個別に発光させた時の明るさのばらつき範囲は、それぞれの基準の明るさに対し±20%以内の範囲である付記5に記載の照明装置。
(付記7)
前記制御部は、前記第1発光素子へ供給される前記点灯電力と前記第2発光素子へ供給される前記点灯電力との比率を、前記補正値を用いて補正する付記1~6の何れか一つに記載の照明装置。
【符号の説明】
【0062】
1 光源部、2 台座部、3 電源部、4 連結具、5 カバー、6 器具本体、7 端子台、8 保持具、11 第1光源回路、12 第2光源回路、13 発光素子、13a 第1発光素子、13b 第2発光素子、14 基板、31 制御部、32 電源回路、60 本体部、61 端板部、100 照明装置、101 灯具、102 器具、200 電源、321 第1コネクタ、322 第2コネクタ。