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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012223
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】香味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20250117BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20250117BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20250117BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20250117BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20250117BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L27/20 G
A23D9/00 504
A23L27/60 A
A23L27/60 Z
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114922
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴仙
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏成
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG07
4B026DG20
4B026DL02
4B026DP03
4B026DX01
4B036LC01
4B036LE08
4B036LF01
4B036LH05
4B036LH13
4B036LH29
4B036LK01
4B036LP01
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF06
4B047LF07
4B047LF08
4B047LG10
4B047LG11
4B047LG39
4B047LP01
4B047LP05
4B047LP07
(57)【要約】
【課題】ネギ香味付与組成物の香味をネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある自然なネギらしい良質な香味に改善する新規な香味改善剤を提供する。
【解決手段】下記A群またはB群から選択される1種以上を有効成分として含有するネギ香味付与組成物用香味改善剤。(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、ネギ香味付与組成物用香味改善剤。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【請求項2】
請求項1に記載のネギ香味付与組成物用香味改善剤を含有する、ネギ香味付与組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のネギ香味付与組成物において、
前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が1ppt以上100ppm以下の範囲となる、ネギ香味付与組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のネギ香味付与組成物において、
前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が100ppt以上1%以下の範囲となる、ネギ香味付与組成物。
【請求項5】
請求項2に記載のネギ香味付与組成物において、
前記A群から選択される1種または2種以上の化合物と、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物とを含有する、ネギ香味付与組成物。
【請求項6】
下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、ネギ風味飲食品用香味付与組成物。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【請求項7】
請求項6に記載のネギ香味付与組成物において、
前記A群から選択される1種または2種以上の化合物と、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物とを含有する、ネギ風味飲食品用香味付与組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載のネギ風味飲食品用香味付与組成物を含有する、ネギ風味飲食品。
【請求項9】
請求項8に記載のネギ風味飲食品において、
前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記ネギ風味飲食品の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の濃度が0.001ppt以上100ppb以下の範囲となる、ネギ風味飲食品。
【請求項10】
請求項8に記載のネギ風味飲食品において、
前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記ネギ風味飲食品の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の濃度が0.1ppt以上10ppm以下の範囲となる、ネギ風味飲食品。
【請求項11】
下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物をネギ香味付与組成物に添加する工程を含む、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【請求項12】
請求項11に記載のネギ香味付与組成物の香味改善方法において、
前記工程では、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が1ppt以上100ppm以下の範囲となるように、前記化合物を前記ネギ香味付与組成物に添加する、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
【請求項13】
請求項11に記載のネギ香味付与組成物の香味改善方法において、
前記工程では、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が100ppt以上1%以下の範囲となるように、前記化合物を前記ネギ香味付与組成物に添加する、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
【請求項14】
下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を、飲食品に添加する工程を含み、
前記香味付与組成物がネギ香味付与組成物である、および/または、前記飲食品がネギ風味飲食品である、飲食品の香味改善方法。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【請求項15】
請求項14に記載の飲食品の香味改善方法において、
前記香味付与組成物が、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が0.001ppt以上100ppb以下の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
【請求項16】
請求項14に記載の飲食品の香味改善方法において、
前記香味付与組成物が、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、
前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が0.1ppt以上10ppm以下の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味改善剤、香味付与組成物、飲食品および香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品に野菜の香味を付与乃至増強するため、または飲食品の香味を改善するために、野菜香味付与組成物(例えば野菜フレーバー)が使用されている。野菜香味付与組成物としては、例えば、オニオン、ガーリック、ネギ、ワサビ、トマト、ニンジン、キャベツ、ゴボウ、シイタケ、マツタケ、セロリ、シソ、ミツバなどのフレーバーが知られている。
【0003】
野菜香味付与組成物の用途は極めて広く、例えばスープ、カレー、ソース、たれ、畜肉製品、スナック、菓子類、総菜、冷凍食品、健康食品などのあらゆる飲食品への香味の付与、増強または改善に用いられる。野菜香味付与組成物は、直接飲食品に添加されるか、または各種調味料(畜肉エキス、魚介エキス、海藻エキスなどの抽出系調味料、酵母エキス、植物性タンパク加水分解物、動物性タンパク加水分解物などのタンパク加水分解物系調味料、醤油、味醂、食酢などの醸造系調味料及び複合系調味料など)に添加されて使用される。
【0004】
これら野菜香味付与組成物の主たる素材としては、例えば(1)野菜エキス、(2)精油、(3)オレオレジン、(4)シーズニングオイル、(5)分画香料、(6)合成香料などが挙げられ、用途に応じてこれらの少なくとも1種または2種以上を、任意の割合で調合して野菜香味付与組成物が調製される。野菜香味付与組成物には、より自然な、その野菜そのものを想起させるような香味特性が求められている。自然な野菜香味付与組成物を調製するには、(1)~(5)を主体とする素材で構成されることが多かったが、その場合は力価が高くないという問題点がある。一方、野菜香味付与組成物を(6)合成香料のみで構成した場合は、力価が高く安定した品質で提供することが容易であるが、自然なその野菜そのものを想起させるような香味とすることが難しいという問題点がある。
【0005】
そのため、力価が高く、自然な野菜香味付与組成物を安定した品質で効率良く得ることは非常に困難であり、その野菜香味付与組成物の香味を改善する化合物(香味改善剤)を野菜香味付与組成物に添加することにより、野菜香味付与組成物の香気の品質を安定的に供給することが求められている。
【0006】
野菜香味付与組成物の香味を改善する化合物(香味改善剤)、またはこのような化合物(香味改善剤)を含む野菜香味付与組成物としては、例えばジメチルジスルフィド等からなるニラネギ香味剤、タマネギ香味剤混合物、ニンニク香味剤混合物(特許文献1)、各種チアゾール類の緑色野菜系フレーバーへの使用(特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭49-6669号公報
【特許文献2】特開昭47-11977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今般、本発明者らは、野菜香味付与組成物のうち、ネギ香味付与組成物に着目し、ネギ香味付与組成物の香味を改善する化合物(香味改善剤)について鋭意研究した。しかしながら、特許文献1または2に記載の化合物ではネギ香味付与組成物が有する香味を、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味に改善するには十分ではなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術における課題を解決し、ネギ香味付与組成物の香味をネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味に改善する新規なネギ香味改善剤、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味を有するネギ風味飲食品用香味付与組成物、ならびに当該香味付与組成物を含有させたネギ風味飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のメトキシピラジンおよび/またはスルファニルケトンがネギ香味付与組成物にネギの繊維感(ネギの葉(偽茎)を噛んだようなシャキシャキした感覚が例示されるがこれに限定されない。)、みずみずしさ(新鮮な芳香を感じる感覚、水を豊富に含んだような感覚が例示されるがこれに限定されない。)および/または刺激感(ネギのツーンとする辛味感が例示されるがこれに限定されない。)のある、自然なネギらしい良質な香味を付与乃至増強し、ネギ香味付与組成物の香味を改善することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。また本発明者らは、同じく特定のメトキシピラジンおよび/またはスルファニルケトンを有効成分として含有する香味付与組成物がネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味を付与乃至増強し、ネギ風味飲食品の香味を改善することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0012】
[1] 下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、ネギ香味付与組成物用香味改善剤。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
[2] [1]に記載のネギ香味付与組成物用香味改善剤を含有する、ネギ香味付与組成物。
[3] [2]に記載のネギ香味付与組成物において、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が1ppt以上100ppm以下の範囲となる、ネギ香味付与組成物。
[4] [2]に記載のネギ香味付与組成物において、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が100ppt以上1%以下の範囲となる、ネギ香味付与組成物。
[5] [2]に記載のネギ香味付与組成物において、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物と、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物とを含有する、ネギ香味付与組成物。
[6] 下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する、ネギ風味飲食品用香味付与組成物。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
[7] [6]に記載のネギ香味付与組成物において、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物と、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物とを含有する、ネギ風味飲食品用香味付与組成物。
[8] [6]または[7]に記載のネギ風味飲食品用香味付与組成物を含有する、ネギ風味飲食品。
[9] [8]に記載のネギ風味飲食品において、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記ネギ風味飲食品の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の濃度が0.001ppt以上100ppb以下の範囲となる、ネギ風味飲食品。
[10] [8]に記載のネギ風味飲食品において、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記ネギ風味飲食品の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の濃度が0.1ppt以上10ppm以下の範囲となる、ネギ風味飲食品。
[11] 下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物をネギ香味付与組成物に添加する工程を含む、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
[12] [11]に記載のネギ香味付与組成物の香味改善方法において、前記工程では、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が1ppt以上100ppm以下の範囲となるように、前記化合物を前記ネギ香味付与組成物に添加する、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
[13] [11]に記載のネギ香味付与組成物の香味改善方法において、前記工程では、前記ネギ香味付与組成物の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が100ppt以上1%以下の範囲となるように、前記化合物を前記ネギ香味付与組成物に添加する、ネギ香味付与組成物の香味改善方法。
[14] 下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を、飲食品に添加する工程を含み、前記香味付与組成物がネギ香味付与組成物である、および/または、前記飲食品がネギ風味飲食品である、飲食品の香味改善方法。
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
[15] [14]に記載の飲食品の香味改善方法において、前記香味付与組成物が、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記A群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が0.001ppt以上100ppb以下の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
[16] [14]に記載の飲食品の香味改善方法において、前記香味付与組成物が、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物を含有し、前記工程では、前記飲食品の全質量を基準として、前記B群から選択される1種または2種以上の化合物の合計濃度が0.1ppt以上10ppm以下の範囲となるように、前記香味付与組成物を前記飲食品に添加する、飲食品の香味改善方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ネギ香味付与組成物の香味を繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味に改善する新規なネギ香味改善剤、繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感のある、自然なネギらしい良質な香味を有するネギ風味飲食品用香味付与組成物、ならびに当該香味付与組成物を含有させたネギ風味飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm、ppb、ppt、%)」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味を新たに加える、および/または、香味を増強することを含み、香味を付与乃至増強した結果、香味が改善されるものをも含んでいる。さらには、用語「香味付与(香味を付与する)」には、香味付与の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸や辛さなどの刺激感などを増強、抑制、または改善するものも含んでいる。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「添加」とは、「配合」とほぼ同義であり、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0015】
(ネギ)
ネギは、狭義にはAPG植物分類体系でヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属に分類される植物(Allium fistulosum)を意味するが、本明細書における「ネギ」には、このネギ(Allium fistulosum)と、ネギ(Allium fistulosum)ではないが、ネギ(Allium fistulosum)と同じヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属に分類される植物とを含むものとする。
【0016】
ネギ(Allium fistulosum)には、主に白色の部分を食用にする根深ねぎ(白ねぎ)と、主に緑色の部分を食用にする葉ねぎとがある。根深ねぎは、長ねぎ、太ねぎともよばれる系統で、具体例として、深谷ねぎ、下仁田ねぎ、上州ねぎ、千住葱、越谷ねぎ、矢切ねぎ、株ねぎ、西谷ねぎ、赤ねぎ、徳田ねぎ、越津ねぎ、大和太ねぎ、曲がりねぎなどの品種が挙げられる。葉ネギは、青ねぎともよばれる系統で、具体例として、難波葱、九条葱(九条細ネギ、九条太ネギ)、岩津ねぎ、結崎ネブカ、観音ねぎ、谷田部ねぎ、地ねぎ、ヤグラネギ、小ねぎ(万能ねぎ)、みさきネギ、姫ねぎなどの品種が挙げられる。
【0017】
一方、ネギ(Allium fistulosum)ではないが、ネギ(Allium fistulosum)と同じヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属に分類される植物としては、例えば、リーキ(Allium ampeloprasum;リーク、ポロネギともいう)、チャイブ(Allium schoenoprasum var. schoenoprasum;エゾネギ、セイヨウアサツキともいう)、ワケギ(Allium × proliferum)、アサツキ(Allium schoenoprasum var. foliosum)、タマネギ(Allium cepa)、ラッキョウ(Allium chinense)、ヤマラッキョウ(Allium thunbergii)、ニンニク(Allium sativum)、ニラ(Allium tuberosum)、ヒメニラ(Allium monanthum)、ギョウジャニンニク(Allium victorialis subsp. platyphyllum)、ノビル(Allium macrostemon)が挙げられる。
【0018】
(香味改善剤)
本発明の一実施の形態に係るネギ香味付与組成物用香味改善剤(以下、本件香味改善剤という場合がある。)は、下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「本件化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する。
【0019】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0020】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0021】
本件香味改善剤は、後述の実施例にその一例を示すように、各種ネギ香味付与組成物に添加することでそのネギ香味付与組成物の香味を改善することができる。より具体的には、本件香味改善剤は、添加対象の各種ネギ香味付与組成物に繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などを付与乃至増強し、当該ネギ香味付与組成物の香味を自然なネギらしい良質な香味に改善することができる。なお、後述の実施例に示すように、本件化合物のうち、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンが特に優れた香味改善効果を奏することがわかった。
【0022】
ここで、「ネギ香味付与組成物」とは、ネギの香味を有する香味付与組成物であって、天然香料素材であるネギ抽出物(精油(エッセンシャルオイル)、エキストラクト、オレオレジン等)および合成香料素材であるジプロピルジスルフィド、ジプロピルトリスルフィド、メチル1-プロペニルジスルフィド、1-プロペニルプロピルジスルフィド、アリルメチルジスルフィド、3,5-ジメチル-1,2,4-トリチオラン等、ならびにこれらのいずれか一方または両方を含むネギ香料組成物(フレーバー)、ネギ呈味付与組成物等が例示できる。また、ネギ香味付与組成物は、ネギの香味を有していればよいため、すき焼きフレーバー、コンソメフレーバーのように後述のネギ風味飲食品の香味を有する香料組成物、呈味付与組成物等として構成してもよい。
【0023】
前記A群を構成する化合物は、いわゆるメトキシピラジン類であるが、従来、例えば、メトキシピラジン類は、コーヒーにおけるいわゆる「ポテト臭」という異臭で有名であり、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジンは、ピーマンの香りを構成する香気成分(香料化合物)として有名であり、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジンは、もやしの香りを構成する香気成分(香料化合物)として有名である。しかしながら、前記A群を構成する化合物が、各種ネギ香味付与組成物に添加することでそのネギ香味付与組成物の香味を改善するネギ香味付与組成物用香味改善剤として有用であることは一切知られていなかった。
【0024】
また、前記B群を構成する化合物は、いわゆるスルファニルケトン(メルカプトケトン)類であるが、従来、例えば、3-スルファニルペンタン-2-オンは、チキン使用食品のチキン風味増強剤(特開2021-153418号公報)として記載されている。しかしながら、前記B群を構成する化合物が、各種ネギ香味付与組成物に添加することでそのネギ香味付与組成物の香味を改善するネギ香味付与組成物用香味改善剤として有用であることは一切知られていなかった。
【0025】
前記A群を構成する化合物は、いずれもメトキシピラジンであり、具体的には以下の式(1)で表される2-メトキシピラジン、式(2)で表される2-メトキシ-3-メチルピラジン、式(3)で表される2-メトキシ-5-メチルピラジン、式(4)で表される2-メトキシ-6-メチルピラジン、式(5)で表される5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、式(6)で表される6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、式(7)で表される2-エチル-3-メトキシピラジン、式(8)で表される2-エチル-5-メトキシピラジン、式(9)で表される2-エチル-6-メトキシピラジン、式(10)で表される2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、式(11)で表される2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、式(12)で表される2-イソブチル-3-メトキシピラジンである。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
前記B群を構成する化合物は、いずれもスルファニルケトンであり、具体的には以下の式(13)で表される3-スルファニルペンタン-2-オン、式(14)で表される3-スルファニルブタン-2-オンである。
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
前記A群またはB群を構成する化合物は、当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手できる。入手した上記化合物は、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0042】
本件香味改善剤は、本件化合物のみで構成してもよいし、本件化合物を有効成分として所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、前述した当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手した本件化合物(他の成分を含んでいてもよい)を、そのまま本件香味改善剤として使用するか、溶媒または他の香味改善剤に添加して本件香味改善剤として使用することができる。
【0043】
本件香味改善剤は、前記A群または前記B群から選択される1種の化合物のみを有効成分として構成しても、前記A群または前記B群から選択される2種以上の化合物を有効成分として併用して構成してもよく、上記した効果を奏する。
【0044】
本件香味改善剤の添加対象であるネギ香味付与組成物中の本件化合物の濃度(1種の化合物を使用する場合にはその化合物の濃度を表し、同じ群に属する2種以上の化合物を併用する場合にはその合計の濃度を表す。以下同じ。)は、ネギ香味付与組成物の香味特性および/またはネギ香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。
【0045】
ただし、本件香味改善剤が前記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「A群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味改善剤の添加対象であるネギ香味付与組成物中のA群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ香味付与組成物の全体質量に対して、1ppt(0.000001ppm)以上1000ppm未満、より好ましくは10ppt(0.00001ppm)~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれかとし、上限値を1000ppm(未満)、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0046】
また、本件香味改善剤が前記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「B群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味改善剤の添加対象であるネギ香味付与組成物中のB群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ香味付与組成物の全体質量に対して、100ppt(0.0001ppm)以上10%(100000ppm)未満、より好ましくは1ppb(0.001ppm)~1%(10000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%のいずれかとし、上限値を10%(未満)、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0047】
なお、本件香味改善剤がA群化合物およびB群化合物の両方を有効成分として含有する場合には、A群化合物とB群化合物とは独立して、上記の濃度範囲とすればよい。
【0048】
本件香味改善剤を含有するネギ香味付与組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財を例示できる。
【0049】
本件香味改善剤を含有するネギ香味付与組成物を添加可能な飲食品の風味は特に限定されないが、例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、トマト、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてネギおよびニラ風味など複数の香味野菜風味が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味およびネギ風味を感じさせる、柑橘ネギ風味が挙げられる。
【0050】
本件香味改善剤を含有するネギ香味付与組成物の添加可能な飲食品の中で、最も好適な例としては、ネギ風味飲食品が挙げられる。ネギ風味飲食品とは、原材料として含まれるネギによりネギの香味を付与した飲食品、またはネギ香味付与組成物でネギの香味を付与した飲食品を意味し、例えば、ネギ風味香辛料、ネギ風味油、ネギ風味ソース、ネギ風味スープ、ネギ風味バター、ネギ風味ふりかけ、ネギ風味ブイヨン、ネギ風味パスタソース、ネギ風味タレなどが挙げられ、具体的には、すき焼き、牛丼、南蛮そば、南蛮うどん、鴨南蛮そば、鴨南蛮うどん、カレー南蛮そば、カレー南蛮うどん、ねぎらーめん、棒々鶏、よだれ鶏、ねぎま鍋、葱油餅、お好み焼き、たこ焼き、チヂミ、ねぎ塩風味の焼肉のたれ、ねぎ味噌などが挙げられる。なお、もともとネギ風味を有していない飲食品に(a)本件化合物を含まないネギ香味付与組成物を添加してネギ風味飲食品とした後に、本件香味付与組成物を添加しても、(b)本件香味付与組成物を添加した後に、本件化合物を含まないネギ香味付与組成物を添加しても、(c)本件化合物を含まないネギ香味付与組成物と本件香味付与組成物とを同時に添加しても、ネギ風味飲食品としての趣旨は変わらない。したがって、本件香味付与組成物がネギ香味付与組成物である場合、ネギ風味飲食品は、もともとネギ風味を有していない飲食品に本件香味付与組成物を添加することによってネギ風味飲食品となるものも含む(以下、本明細書において同じ。)。
【0051】
また、本件香味改善剤を含有するネギ香味付与組成物の添加可能な飲食品の中で、ネギ風味飲食品以外にも、中華風スープ、ブイヨン、ブロード、ブロス、出汁、コンソメ、鶏ガラスープ、ラーメン、かけそば、かけうどん、そうめん、冷奴、チャーハン、餃子、麻婆豆腐、ドレッシング、チャウダー、シチューなどの、ネギを原材料として含むがネギ香味とはいえない飲食品、または、ネギを原材料として含まずネギ風味ではない飲食品であって、ネギ香味付与組成物をいわゆる隠し味として添加することが行われる飲食品も好適な例として挙げられる。
【0052】
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、餅類、クラッカー、ポテトチップス、パイ、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0053】
さらに、本件香味改善剤を含有するネギ香味付与組成物は、各種香料組成物に添加して、当該香料組成物に香味を付与し当該香料組成物の香味を改善することもできる。各種香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)、香粧品用香料組成物(フレグランス組成物ともいう)が挙げられる。添加対象となる物品の例としては、上述のように、飲食品、香粧品、医薬品、または保健衛生品などの消費財が挙げられる。各種香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0054】
(香味付与組成物)
本発明の一実施の形態に係るネギ風味飲食品用香味付与組成物(以下「本件香味付与組成物」という場合がある。)は、下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)を有効成分として含有する。
【0055】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0056】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0057】
本件香味付与組成物は、後述の実施例にその一例を示すように、各種ネギ風味飲食品に添加することでそのネギ風味飲食品に良質な香味を付与することができる。より具体的には、本件香味付与組成物は、添加対象の各種ネギ風味飲食品に繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などを付与乃至増強し、当該ネギ風味飲食品の香味を改善することができる。なお、後述の実施例に示すように、本件化合物のうち、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンが特に優れた香味改善効果を奏することがわかった。
【0058】
本件香味付与組成物は、前記A群または前記B群から選択される1種の化合物のみを有効成分として構成しても、前記A群または前記B群から選択される2種以上の化合物を有効成分として併用して構成してもよく、上記した効果を奏する。
【0059】
また、本件香味付与組成物は、本件化合物のみで構成してもよいし、本件化合物を有効成分として所定量含んでいればそれ以外の成分を含んでいてもよい。すなわち、前述した当業者によってなし得る任意の方法、例えば、食品用香料化合物または試薬として購入するか、天然物から抽出するか、定法に従い合成することにより入手した本件化合物(他の成分を含んでいてもよい)を、そのまま本件香味付与組成物として使用するか、溶媒または他の香味付与組成物に添加して本件香味付与組成物として使用することができる。また、本件香味付与組成物が本件化合物以外の成分として溶媒および/または他の香気成分を含む場合、本件香味付与組成物自体を香料組成物として使用することもできる。
【0060】
本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中の本件化合物の濃度(1種の化合物を使用する場合にはその化合物の濃度を表し、同じ群に属する2種以上の化合物を併用する場合にはその合計の濃度を表す。以下同じ。)は、ネギ風味飲食品の香味特性に応じて任意に決定できる。
【0061】
ただし、本件香味付与組成物が前記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「A群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のA群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.001ppt(0.000000001ppm)以上1ppm未満、より好ましくは0.01ppt(0.00000001ppm)~100ppb(0.1ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.001ppt、0.01ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppbのいずれかとし、上限値を1ppm(未満)、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1ppt、0.01pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0062】
また、本件香味付与組成物が前記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「B群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のB群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.1ppt(0.0000001ppm)以上100ppm未満、より好ましくは1ppt(0.000001ppm)~10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm(未満)、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0063】
本件香味付与組成物中の本件化合物の濃度(1種の化合物を使用する場合にはその化合物の濃度を表し、同じ群に属する2種以上の化合物を併用する場合にはその合計の濃度を表す。以下同じ。)は、ネギ風味飲食品の香味特性に応じて任意に決定できる。ただし、本件香味付与組成物をネギ風味飲食品に添加する際には、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、本件香味付与組成物を0.1%で添加することが通常である。そのため、本件香味付与組成物がA群化合物を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物中のA群化合物の濃度が、ネギ風味飲食品中のA群化合物の濃度の1000倍となるように構成すればよい。
【0064】
具体的には、本件香味付与組成物中のA群化合物の濃度として、好ましくは、本件香味付与組成物の全体質量に対して、1ppt(0.000001ppm)以上1000ppm未満、より好ましくは10ppt(0.00001ppm)~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれかとし、上限値を1000ppm(未満)、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0065】
同様に、本件香味付与組成物がB群化合物を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物中のB群化合物の濃度が、ネギ風味飲食品中のB群化合物の濃度の1000倍となるように構成すればよい。
【0066】
具体的には、本件香味付与組成物中のB群化合物の濃度として、好ましくは、本件香味付与組成物の全体質量に対して、100ppt(0.0001ppm)以上10%(100000ppm)未満、より好ましくは1ppb(0.001ppm)~1%(10000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%のいずれかとし、上限値を10%(未満)、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0067】
なお、以上で説明した本件香味付与組成物中の本件化合物の濃度は、ネギ風味飲食品中の本件化合物の濃度が、前述の好ましい濃度範囲となるよう、ネギ風味飲食品に対する本件香味付与組成物の添加率に応じて適宜変更することができる。
【0068】
なお、本件香味付与組成物がA群化合物およびB群化合物の両方を有効成分として含有する場合には、A群化合物とB群化合物とは独立して、上記の濃度範囲とすればよい。
【0069】
本件香味付与組成物が使用可能な香調は限定されるものではなく、本件香味付与組成物によってネギ風味飲食品に良好な香味を付与、増強乃至改善可能な任意の香調であってよい。ただし、本件香味付与組成物は、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を好適に付与することから、ネギ香味付与組成物として構成することが好ましい。
【0070】
本件香味付与組成物の添加対象のネギ風味飲食品としては、前掲「香味改善剤」の項目で定義したネギ風味飲食品であればよく、特に限定されないが、ネギ風味香辛料、ネギ風味油、ネギ風味ソース、ネギ風味スープ、ネギ風味バター、ネギ風味ふりかけ、ネギ風味ブイヨン、ネギ風味パスタソース、ネギ風味タレなどのネギ風味飲食品が好適な例として挙げられる。なお、もともとネギ風味を有していない飲食品に(a)本件化合物を含まないネギ香味付与組成物を添加してネギ風味飲食品とした後に、本件香味付与組成物を添加しても、(b)本件香味付与組成物を添加した後に、本件化合物を含まないネギ香味付与組成物を添加しても、(c)本件化合物を含まないネギ香味付与組成物と本件香味付与組成物とを同時に添加しても、ネギ風味飲食品としての趣旨は変わらない。したがって、本件香味付与組成物がネギ香味付与組成物である場合、ネギ風味飲食品は、もともとネギ風味を有していない飲食品に本件香味付与組成物を添加することによってネギ風味飲食品となるものも含む(以下、本明細書において同じ。)。
【0071】
(香料組成物)
本発明の一実施の形態に係る香料組成物(以下、本件香料組成物という場合がある。)は、本件香味付与組成物の一態様であり、本件化合物を有効成分として含有し、着香を目的として各種ネギ風味飲食品に添加することができる。本件香料組成物は、添加対象の各種ネギ風味飲食品に繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などを付与乃至増強し、当該ネギ風味飲食品の香味を改善することができる。
【0072】
本件香料組成物中の本件化合物の濃度は、本件香料組成物の香気特性および/または本件香料組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。ただし、本件香料組成物をネギ風味飲食品に添加する際には、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、本件香料組成物を0.1%で添加することが通常である。そのため、本件香料組成物がA群化合物を有効成分として含有する場合には、本件香料組成物中のA群化合物の濃度が、ネギ風味飲食品中のA群化合物の濃度の1000倍となるように構成すればよく、本件香料組成物がB群化合物を有効成分として含有する場合には、本件香料組成物中のB群化合物の濃度が、ネギ風味飲食品中のB群化合物の濃度の1000倍となるように構成すればよい。
【0073】
本件香料組成物は、それ自体をネギ風味飲食品に添加してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料(平成12年1月14日発行)」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)」に記載される香料化合物)から選択される1種または2種以上と併せてネギ風味飲食品に添加してもよい。
【0074】
本件香料組成物は、本件香味付与組成物の一態様であるため、この「香料組成物」の項目で記載した以外の事項については、前掲「香味付与組成物」で説明した通りである。
【0075】
(ネギ香味付与組成物の香味改善方法)
本発明の一実施の形態に係るネギ香味付与組成物の香味改善方法は、下記A群または下記B群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)を有効成分として含有する香味改善剤(本件香味改善剤)をネギ香味付与組成物に添加する工程を含む。
【0076】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0077】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0078】
後述の実施例にその一例を示すように、本件香味改善剤をネギ香味付与組成物に添加することで、そのネギ香味付与組成物の香味を改善することができる。より具体的には、本件香味改善剤を各種ネギ香味付与組成物に添加することで、繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などを付与乃至増強し、当該ネギ香味付与組成物の香味を改善することができる。
【0079】
本実施の形態に係るネギ香味付与組成物の香味改善方法にあっては、本件香味改善剤をネギ香味付与組成物に添加する際の、ネギ香味付与組成物中の本件化合物の濃度は、ネギ香味付与組成物の香気特性および/またはネギ香味付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。
【0080】
ただし、前掲「香味改善剤」の項目で述べた通り、本件香味改善剤が前記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「A群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味改善剤の添加対象であるネギ香味付与組成物中のA群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ香味付与組成物の全体質量に対して、1ppt(0.000001ppm)以上1000ppm未満、より好ましくは10ppt(0.0001ppm)~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれかとし、上限値を1000ppm(未満)、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0081】
また、本件香味改善剤が前記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「B群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味改善剤の添加対象であるネギ香味付与組成物中のB群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ香味付与組成物の全体質量に対して、100ppt(0.0001ppm)以上10%(100000ppm)未満、より好ましくは1ppb(0.001ppm)~1%(10000ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%のいずれかとし、上限値を10%(未満)、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0082】
なお、本件香味改善剤がA群化合物およびB群化合物の両方を有効成分として含有する場合には、A群化合物とB群化合物とは独立して、上記の濃度範囲とすればよい。
【0083】
本実施の形態に係るネギ香味付与組成物の香味改善方法において、本件化合物を有効成分として含有する香味改善剤をネギ香味付与組成物に添加する方法は特に限定されない。また、本件化合物を有効成分として含有する香味改善剤をネギ香味付与組成物に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0084】
(ネギ風味飲食品)
本発明の一実施の形態に係るネギ風味飲食品(以下、本件ネギ風味飲食品という場合がある。)は、本件香味付与組成物を所定量含むものである。本件ネギ風味飲食品は、後述の実施例にその一例を示すように、本件化合物を有効成分として含有する本件香味付与組成物が有効量添加されているため、香味が改善される。より具体的には、本件ネギ風味飲食品は、本件香味付与組成物が添加されているため、繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などが付与乃至増強され、当該ネギ風味飲食品の香味が改善される。
【0085】
本件ネギ風味飲食品に対する本件香味付与組成物の添加量は、有効成分として含まれる本件化合物による香味改善効果の程度、本件香味付与組成物による香味付与の程度、および/またはネギ風味飲食品自体の香味などに応じて任意に決定できる。
【0086】
ただし、前記「香味付与組成物」の項目で述べた通り、本件香味付与組成物が前記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「A群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のA群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.001ppt(0.000000001ppm)以上1ppm未満、より好ましくは0.01ppt(0.00000001ppm)~100ppb(0.1ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.001ppt、0.01ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppbのいずれかとし、上限値を1ppm(未満)、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1ppt、0.01pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0087】
また、本件香味付与組成物が前記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「B群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のB群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.1ppt(0.0000001ppm)以上100ppm未満、より好ましくは1ppt(0.000001ppm)~10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm(未満)、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0088】
(ネギ風味飲食品の香味付与方法)
本発明の一実施の形態に係るネギ風味飲食品の香味付与方法は、下記A群から選択される1種または2種以上の化合物(本件化合物)を有効成分として含有する香味付与組成物(本件香味付与組成物)を、ネギ風味飲食品に添加する工程を含む。
【0089】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0090】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0091】
後述の実施例にその一例を示すように、本件香味付与組成物をネギ風味飲食品に添加することで、そのネギ風味飲食品の香味を改善することができる。より具体的には、本件香味付与組成物は、添加対象のネギ風味飲食品に繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感などを付与乃至増強し、当該ネギ風味飲食品の香味を改善することができる。
【0092】
本件香味付与組成物をネギ風味飲食品に添加する際の、本件香味付与組成物の濃度は、本件香味付与組成物および/またはネギ風味飲食品の香味特性に応じて任意決定できる。
【0093】
ただし、前掲「香味付与組成物」の項目で述べた通り、本件香味付与組成物が前記A群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「A群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のA群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.001ppt(0.000000001ppm)以上1ppm未満、より好ましくは0.01ppt(0.00000001ppm)~100ppb(0.1ppm)の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.001ppt、0.01ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppbのいずれかとし、上限値を1ppm(未満)、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1ppt、0.1ppt、0.01pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0094】
また、本件香味付与組成物が前記B群から選択される1種または2種以上の化合物(以下「B群化合物」という場合がある。)を有効成分として含有する場合には、本件香味付与組成物の添加対象であるネギ風味飲食品中のB群化合物の濃度として、好ましくは、ネギ風味飲食品の全体質量に対して、0.1ppt(0.0000001ppm)以上100ppm未満、より好ましくは1ppt(0.000001ppm)~10ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm(未満)、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0095】
本実施の形態に係るネギ風味飲食品の香味改善方法において、本件香味付与組成物をネギ風味飲食品に添加する方法は特に限定されない。また、本件香味付与組成物をネギ風味飲食品に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0096】
前述したように、ネギ風味飲食品には、もともとネギ風味を有していない飲食品にネギ香味付与組成物を添加してネギ風味飲食品とする場合を含む。そのため、本発明の第二の実施の形態に係るネギ風味飲食品の香味付与方法は、(a1)ネギ風味を有しない飲食品に、ネギ香味付与組成物を添加する工程、(b1)前記(a1)工程の前、前記(a1)工程と同時、または前記(a1)工程の後のいずれかにおいて、本件化合物を有効成分として含有する香味付与組成物を添加する工程を含む、とすることができる。また、本発明の第三の実施の形態に係るネギ風味飲食品の香味付与方法は、ネギ風味を有しない飲食品に、本件化合物を有効成分として含有するネギ香味付与組成物を添加し、前記飲食品をネギ風味飲食品とし、かつ、ネギ香味を改善する工程を含む、とすることができる。
【実施例0097】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]本件香味改善剤のネギ香味油(フレッシュタイプ;ネギ香味付与組成物)への添加効果
ネギ香味付与組成物の一例であるネギ香味油(フレッシュタイプ)に本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0099】
<実施例1-1>香味改善剤の調製
市販の(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン(以下まとめて「各種化合物」とする。)のMCT(炭素数8~12の脂肪酸からなる中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を意味する。以下同じ。)溶液(濃度は1%、0.1%ほか適宜必要なものを用意した。)をそれぞれ調製した(本実施の形態に係る香味改善剤に相当)。
【0100】
一方、上記各種化合物と構造が類似する化合物として、以下の式(91)で表される2-エチル-3-メチルピラジン、式(92)で表される2-アセチル-3-メチルピラジン、式(93)で表される3-スルファニル-1-ヘキサノール(以下まとめて「比較化合物」とする。)の1%MCT溶液をそれぞれ調製した。
【0101】
【化15】
【0102】
【化16】
【0103】
【化17】
【0104】
<実施例1-2>ネギ香味油(フレッシュタイプ)の製造
市販のねぎ(白ねぎ)の根を切断・除去し、水洗して汚れや雑菌を取り除き、みじん切りにしたもの270gと、米サラダ油250gとを混合し、24時間常温で攪拌を行った。この撹拌後のものについて、油相部を分離し、無水硫酸ナトリウムにより脱水および濾過し、ネギ香味油(フレッシュタイプ)200gを得た。
【0105】
<実施例1-3>ネギ香味油(フレッシュタイプ)への添加例(1)
実施例1-2で調製したネギ香味油(フレッシュタイプ)に対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、上記各種化合物が以下の表1に示す各濃度になるように添加し、本発明品1-1~1-98のネギ香味付与組成物を調製した。同様に、実施例1-2で調製したネギ香味油(フレッシュタイプ)に対して、実施例1-1で調製した上記比較化合物のMCT溶液を、上記比較化合物が以下の表1に示す各濃度になるように添加し、比較品1-1~1-3のネギ香味付与組成物を調製した。また、上記各種化合物および上記比較化合物のいずれも添加していない実施例1-2で調製したネギ香味油(フレッシュタイプ)を、対照品1のネギ香味付与組成物とした。そして、得られた本発明品1-1~1-98および比較品1-1~1-3のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-1~1-98および比較品1-1~1-3をそれぞれお湯に0.1%添加したもの(飲食品への添加を想定した濃度。以下同じ。)を用意し、これらを、対照品1をお湯に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品1をお湯に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0106】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品1に比べて著しく増加した:5点
対照品1に比べて大きく増加した:4点
対照品1に比べてある程度増加した:3点
対照品1に比べてわずかに増加した:2点
対照品1と同等である:1点
【0107】
本発明品1-1~1-98および比較品1-1~1-3のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、上記各種化合物は、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認され、上記各種化合物はネギ香味付与組成物用香味改善剤の有効成分として有用であることがわかった。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ香味付与組成物に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0110】
一方、上記各種化合物と構造が類似する比較化合物では、上記各種化合物と同様の香味改善効果は得られず、上記各種化合物の有用性が確認できた。
【0111】
<実施例1-4>ネギ香味油(フレッシュタイプ)への添加例(2)
本件香味改善剤の有効成分である上記各種化合物を、下記A群および下記B群に分類した際、下記A群から選択される化合物と、下記B群から選択される化合物とを併用した実施例について説明する。
【0112】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0113】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0114】
実施例1-2で調製したネギ香味油(フレッシュタイプ)に対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表2または3に示す各濃度になるように添加し、本発明品1-99~1-140のネギ香味付与組成物を調製した。そして、得られた本発明品1-99~1-140のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品1-99~1-140をそれぞれお湯に0.1%添加したものを用意し、これらを、実施例1-3と同様に、対照品1をお湯に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品1をお湯に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について実施例1-3と同じ評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0115】
本発明品1-99~1-140のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表2および表3に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
表2および3に示すように、上記各種化合物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を併用しない場合に比べてさらに良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認された。
【0119】
[実施例2]本件香味改善剤のネギ香味油(ローストタイプ;ネギ香味付与組成物)への添加効果
ネギ香味付与組成物の一例であるネギ香味油(ローストタイプ)に本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0120】
<実施例2-1>ネギ香味油(ローストタイプ)の製造
市販のねぎ(白ねぎ)の根を切断・除去し、水洗して汚れや雑菌を取り除き、みじん切りにしたもの270gと、米サラダ油250gとを、密封式加熱釜(オートクレーブ)に投入し、180℃、3時間密封状態で加熱攪拌を行った。反応させたものを、40℃まで冷却し、油相部を分離し、無水硫酸ナトリウムにより脱水および濾過し、ネギ香味油(ローストタイプ)200gを得た。
【0121】
<実施例2-2>ネギ香味油(ローストタイプ)への添加例(1)
実施例2-1で調製したネギ香味油(ローストタイプ)に対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表4に示す各濃度になるように添加し、本発明品2-1~2-14のネギ香味付与組成物を調製した。また、上記各種化合物のいずれも添加していない実施例2-1で調製したネギ香味油(ローストタイプ)を、対照品2のネギ香味付与組成物とした。そして、得られた本発明品2-1~2-14のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品2-1~2-14をそれぞれお湯に0.1%添加したものを用意し、これらを、対照品2をお湯に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2をお湯に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0122】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品2に比べて著しく増加した:5点
対照品2に比べて大きく増加した:4点
対照品2に比べてある程度増加した:3点
対照品2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2と同等である:1点
【0123】
本発明品2-1~2-14のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
表4に示すように、上記各種化合物は、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認され、上記各種化合物は香味改善剤として有用であることがわかった。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ香味付与組成物に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0126】
<実施例2-3>ネギ香味油(ローストタイプ)への添加例(2)
本件香味改善剤の有効成分である上記各種化合物を、実施例1-4と同様に上記A群および上記B群に分類した際、上記A群から選択される化合物と、上記B群から選択される化合物とを併用した実施例について説明する。
【0127】
実施例2-1で調製したネギ香味油(ローストタイプ)に対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表5に示す各濃度になるように添加し、本発明品2-15~2-38のネギ香味付与組成物を調製した。そして、得られた本発明品2-15~2-38のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品2-15~2-38をそれぞれお湯に0.1%添加したものを用意し、これらを、実施例2-2と同様に、対照品2をお湯に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2をお湯に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について実施例2-2と同じ評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0128】
本発明品2-15~2-38のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表5に示す。
【0129】
【表5】
【0130】
表5に示すように、上記各種化合物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用しない場合に比べてさらに良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認された。
【0131】
[実施例3]本件香味改善剤のネギフレーバー(ネギ香味付与組成物)への添加効果
ネギ香味付与組成物の一例であるネギフレーバーに本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0132】
<実施例3-1>ネギフレーバーの調製
下記表6の処方1に従い、ネギフレーバーを調製した(このネギフレーバーを以下「参考品1」とする。)。
【0133】
【表6】
【0134】
<実施例3-2>ネギフレーバーへの添加例(1)
実施例3-1で調製した参考品1のネギフレーバーに対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表7に示す各濃度になるように添加し、本発明品3-1~3-14のネギ香味付与組成物を調製した。また、上記各種化合物のいずれも添加していない実施例3-1で調製したネギフレーバーを、対照品3のネギ香味付与組成物とした。そして、得られた本発明品3-1~3-14のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品3-1~3-14をそれぞれ市販のラーメンスープ(醤油味)に0.1%添加したものを用意し、これらを、対照品3を上記市販のラーメンスープ(醤油味)に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3を上記市販のラーメンスープ(醤油味)に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0135】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品3に比べて著しく増加した:5点
対照品3に比べて大きく増加した:4点
対照品3に比べてある程度増加した:3点
対照品3に比べてわずかに増加した:2点
対照品3と同等である:1点
【0136】
本発明品3-1~3-14のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表7に示す。
【0137】
【表7】
【0138】
表7に示すように、上記各種化合物は、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認され、上記各種化合物は香味改善剤として有用であることがわかった。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ香味付与組成物に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0139】
また、表7に示すように、上記各種化合物を含むネギ香味付与組成物は、ラーメンスープ(飲食品)に添加することによって、ラーメンスープ(飲食品)にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与することが確認された。
【0140】
<実施例3-3>ネギフレーバーへの添加例(2)
本件香味改善剤の有効成分である上記各種化合物を、実施例1-4および2-3と同様に上記A群および上記B群に分類した際、上記A群から選択される化合物と、上記B群から選択される化合物とを併用した実施例について説明する。
【0141】
実施例3-1で調製したネギフレーバーに対して、実施例1-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表8に示す各濃度になるように添加し、本発明品3-15~3-38のネギ香味付与組成物を調製した。そして、得られた本発明品3-15~3-38のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品3-15~3-38をそれぞれ市販のラーメンスープ(醤油味、実施例3-2と同じもの)に0.1%添加したものを用意し、これらを、実施例3-2と同様に、対照品3を上記市販のラーメンスープ(醤油味)に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品3を上記市販のラーメンスープ(醤油味)に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について実施例3-2と同じ評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0142】
本発明品3-15~3-38のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表8に示す。
【0143】
【表8】
【0144】
表8に示すように、上記各種化合物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用しない場合に比べてさらに良好に付与するし、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認された。
【0145】
また、上記各種化合物を含むネギ香味付与組成物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ラーメンスープ(飲食品)にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用しない場合に比べてさらに良好に付与することが確認された。
【0146】
[実施例4]本件香味改善剤のネギ香味油(リーキ精油;ネギ香味付与組成物)への添加効果
ネギ香味付与組成物の一例であるネギ香味油(リーキ精油)に本件香味改善剤を添加した例について説明する。
【0147】
市販の(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン(以下まとめて「各種化合物」とする。)のエタノール溶液(濃度は1%、0.1%ほか適宜必要なものを用意した。)をそれぞれ調製した(本実施の形態に係る香味改善剤に相当)。
【0148】
また、市販のリーキ精油を95%エタノールで希釈し、リーキ精油の0.1%エタノール溶液を調製した。このリーキ精油の0.1%エタノール溶液に対して、上記各種化合物のエタノール溶液を、本件香味改善剤の有効成分としての上記各種化合物が以下の表9に示す各濃度になるように添加し、本発明品4-1~4-14のネギ香味付与組成物を調製した。また、上記各種化合物のいずれも添加していない上記リーキ精油の0.1%エタノール溶液を、対照品4のネギ香味付与組成物とした。そして、得られた本発明品4-1~4-14のネギ香味付与組成物について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品4-1~4-14をそれぞれお湯に0.1%添加したものを用意し、これらを、対照品4をお湯に0.1%添加したものと比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品4をお湯に0.1%添加したものと比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0149】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品4に比べて著しく増加した:5点
対照品4に比べて大きく増加した:4点
対照品4に比べてある程度増加した:3点
対照品4に比べてわずかに増加した:2点
対照品4と同等である:1点
【0150】
本発明品4-1~4-14のネギ香味付与組成物に対する官能評価の結果を表9に示す。
【0151】
【表9】
【0152】
表9に示すように、上記各種化合物は、ネギ香味付与組成物にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与し、ネギ香味付与組成物の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認され、上記各種化合物は香味改善剤として有用であることがわかった。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ香味付与組成物に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0153】
[実施例5]本件香味付与組成物のドレッシング(ねぎ塩味)(ネギ風味飲食品)への添加効果
ネギ風味飲食品の一例であるドレッシング(ねぎ塩味)に、本件香味付与組成物を添加した例について説明する。
【0154】
<実施例5-1>香味付与組成物の調製
市販の(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン(以下まとめて「各種化合物」とする。)のMCT溶液(濃度は1%、0.1%ほか適宜必要なものを用意した。)をそれぞれ調製した(本実施の形態に係る香味付与組成物に相当)。
【0155】
一方、上記各種化合物と構造が類似する化合物として、2-エチル-3-メチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン、3-スルファニル-1-ヘキサノール(以下まとめて「比較化合物」とする。)の1%MCT溶液をそれぞれ調製した。
【0156】
<実施例5-2>ドレッシング(ねぎ塩味)への添加例(1)
市販のドレッシング(ねぎ塩味)に、本件香味付与組成物の一例である実施例5-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味付与組成物の有効成分としての上記各種化合物が以下の表10に示す各濃度になるように添加し、本発明品5-1~5-98のネギ風味飲食品を調整した。同様に、市販のドレッシング(ねぎ塩味)に対して、実施例5-1で調製した上記比較化合物のMCT溶液を、以下の表10に示す各濃度になるように添加し、比較品5-1~5-3のネギ風味飲食品を調製した。また、上記化合物のいずれも添加していない上記市販のドレッシング(ねぎ塩味)を対照品5のネギ風味飲食品とした。そして、得られた本発明品5-1~5-98および比較品5-1~5-3のネギ風味飲食品について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品5-1~5-98および比較品5-1~5-3を対照品5と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品5と比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0157】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品5に比べて著しく増加した:5点
対照品5に比べて大きく増加した:4点
対照品5に比べてある程度増加した:3点
対照品5に比べてわずかに増加した:2点
対照品5と同等である:1点
【0158】
本発明品5-1~5-98および比較品5-1~5-3のネギ風味飲食品に対する官能評価の結果を表10に示す。
【0159】
【表10】
【0160】
表10に示すように、上記各種化合物は、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与し、ネギ風味飲食品の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認され、上記各種化合物はネギ風味飲食品用香味付与組成物の有効成分として有用であることがわかった。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ風味飲食品に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0161】
一方、上記各種化合物と構造が類似する比較化合物では、上記各種化合物と同様の香味改善効果は得られず、上記各種化合物の有用性が確認できた。
【0162】
<実施例5-3>ドレッシング(ねぎ塩味)への添加例(2)
本件香味付与組成物の有効成分である上記各種化合物を、下記A群および下記B群に分類した際、下記A群から選択される化合物と、下記B群から選択される化合物とを併用した実施例について説明する。
【0163】
(A群)2-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-メトキシ-5-メチルピラジン、2-メトキシ-6-メチルピラジン、5-イソプロピル-2-メトキシピラジン、6-イソプロピル-2-メトキシピラジン、2-エチル-3-メトキシピラジン、2-エチル-5-メトキシピラジン、2-エチル-6-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン
【0164】
(B群)3-スルファニルペンタン-2-オン、3-スルファニルブタン-2-オン
【0165】
市販のドレッシング(ねぎ塩味)に対して、実施例5-1で調製した上記各種化合物のMCT溶液を、本件香味付与組成物の有効成分としての上記各種化合物が以下の表11または12に示す各濃度になるように添加し、本発明品5-99~5-140のネギ風味飲食品を調整した。そして、得られた本発明品5-99~5-140のネギ風味飲食品について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品5-99~5-140を実施例5-2で調製した対照品5と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品5と比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について実施例5-2と同じ評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0166】
本発明品5-99~5-140のネギ風味飲食品に対する官能評価の結果を表11および12に示す。
【0167】
【表11】
【0168】
【表12】
【0169】
表11および12に示すように、上記各種化合物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用しない場合に比べてさらに良好に付与し、ネギ風味飲食品の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認された。
【0170】
[実施例6]本件香味付与組成物のチューブ入りきざみネギ(ネギ風味飲食品)への添加効果
ネギ風味飲食品の一例であるチューブ入りきざみネギに、本件香味付与組成物を添加した例について説明する。
【0171】
<実施例6-1>チューブ入りきざみネギへの添加例(1)
市販のチューブ入りきざみネギ(ねぎ塩チューブ)に、本件香味付与組成物の一例である実施例1-3で調製した本発明品1-5、1-12、1-19、1-26、1-33、1-40、1-47、1-54、1-61、1-68、1-75、1-82のネギ香味付与組成物(各種化合物(A群)をそれぞれ1ppm含むもの)および本発明品1-89、1-96のネギ香味付与組成物(各種化合物(B群)をそれぞれ100ppm含むもの)を賦香率(ネギ風味飲食品に対するネギ香味付与組成物の割合。以下同じ。)0.1%で添加し、本発明品6-1~6-12のネギ風味飲食品(各種化合物をそれぞれ1ppb含むもの)および本発明品6-13~6-14のネギ風味飲食品(各種化合物をそれぞれ100ppb含むもの)を調製した。また、上記市販のチューブ入りきざみネギに、実施例1-3で調製したネギ香味付与組成物(対照品1;上記各種化合物を添加していないもの)を賦香率0.1%で添加し、対照品6のネギ風味飲食品を調製した。
【0172】
そして、得られた本発明品6-1~6-14のネギ風味飲食品について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品6-1~6-14を対照品6と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品6と比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0173】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品6に比べて著しく増加した:5点
対照品6に比べて大きく増加した:4点
対照品6に比べてある程度増加した:3点
対照品6に比べてわずかに増加した:2点
対照品6と同等である:1点
【0174】
本発明品6-1~6-14のネギ風味飲食品に対する官能評価の結果を表13に示す。
【0175】
【表13】
【0176】
表13に示すように、上記各種化合物を含む香味付与組成物は、ネギ風味飲食品に添加することによって、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与することが確認された。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ風味飲食品に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。
【0177】
<実施例6-2>チューブ入りきざみネギへの添加例(2)
本件香味付与組成物の有効成分である上記各種化合物を、実施例5-3と同様に上記A群および上記B群に分類した際、上記A群から選択される化合物と、上記B群から選択される化合物とを併用した実施例について説明する。
【0178】
市販のチューブ入りきざみネギ(ねぎ塩チューブ)に、本件香味付与組成物の一例である実施例1-3で調製した本発明品1-4、1-11、1-18、1-25、1-32、1-39、1-46、1-53、1-60、1-67、1-74、1-81のネギ香味付与組成物(各種化合物(A群)をそれぞれ10ppb含むもの)と、本発明品1-5、1-12、1-19、1-26、1-33、1-40、1-47、1-54、1-61、1-68、1-75、1-82のネギ香味付与組成物(各種化合物(A群)をそれぞれ1ppm含むもの)と、本発明品1-88、1-95のネギ香味付与組成物(各種化合物(B群)をそれぞれ1ppm含むもの)と、本発明品1-89、1-96のネギ香味付与組成物(各種化合物(B群)をそれぞれ100ppm含むもの)とを、賦香率(ネギ風味飲食品に対するネギ香味付与組成物の割合。以下同じ。)0.1%にて、適宜組み合わせて添加し、本件香味付与組成物の有効成分としての上記各種化合物が以下の表14または15に示す各濃度になるように添加し、本発明品6-15~6-62のネギ風味飲食品を調製した。そして、得られた本発明品6-15~6-62のネギ風味飲食品について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品6-15~6-62を実施例6-1で調製した対照品6と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品6と比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について実施例6-1と同じ評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0179】
本発明品6-15~6-62のネギ風味飲食品に対する官能評価の結果を表14および15に示す。
【0180】
【表14】
【0181】
【表15】
【0182】
表14および15に示すように、上記各種化合物は、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用することによって、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を、上記A群の化合物と上記B群の化合物とを併用しない場合に比べてさらに良好に付与し、ネギ風味飲食品の、ネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を改善することが確認された。
【0183】
[実施例7]本件香味付与組成物の焼肉のタレ(ねぎ塩味)(ネギ風味飲食品)への添加効果
ネギ風味飲食品の一例である焼肉のタレ(ねぎ塩味)に、本件香味付与組成物の一例であるネギ香味付与組成物を添加した例について説明する。
【0184】
市販の焼肉のタレ(ねぎ塩味)に、本件香味付与組成物の一例である実施例3-2で調製した本発明品3-1~3-12のネギ香味付与組成物(各種化合物(A群)をそれぞれ1ppm含むもの)および本発明品3-13~3-14のネギ香味付与組成物(各種化合物(B群)をそれぞれ100ppm含むもの)を賦香率(各種ネギ風味飲食品に対するネギフレーバーの割合)0.1%で添加し、本発明品7-1~7-12のネギ風味飲食品(各種化合物(A群)をそれぞれ1ppb含むもの)および本発明品7-13~7-14のネギ風味飲食品(各種化合物(B群)をそれぞれ100ppb含むもの)を調製した。また、上記市販の焼肉のタレ(ねぎ塩味)に、実施例3-1で調製した対照品3のネギ香味付与組成物(上記各種化合物をいずれも添加していないもの)を賦香率0.1%で添加し、対照品7のネギ風味飲食品を調製した。
【0185】
そして、得られた本発明品7-1~7-14のネギ風味飲食品について、15名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品7-1~7-14を対照品7と比べた際の香味の違いについてパネリストにコメントさせるとともに、対照品7と比べたネギの繊維感、みずみずしさ、および刺激感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0186】
<ネギの繊維感、みずみずしさ、刺激感に関する評価基準>
対照品7に比べて著しく増加した:5点
対照品7に比べて大きく増加した:4点
対照品7に比べてある程度増加した:3点
対照品7に比べてわずかに増加した:2点
対照品7と同等である:1点
【0187】
本発明品7-1~7-14のネギ風味飲食品に対する官能評価の結果を表16に示す。
【0188】
【表16】
【0189】
表16に示すように、上記各種化合物を含む香味付与組成物は、ネギ風味飲食品に添加することによって、ネギ風味飲食品にネギの繊維感、みずみずしさおよび/または刺激感を良好に付与することが確認された。中でも2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、3-スルファニルペンタン-2-オンはネギ風味飲食品に対する香味改善の効果がそれ以外の上記各種化合物よりも高いことが確認された。