IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田建設工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社熊谷組の特許一覧 ▶ テクノス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-位置合わせ治具 図1
  • 特開-位置合わせ治具 図2
  • 特開-位置合わせ治具 図3
  • 特開-位置合わせ治具 図4
  • 特開-位置合わせ治具 図5A
  • 特開-位置合わせ治具 図5B
  • 特開-位置合わせ治具 図6
  • 特開-位置合わせ治具 図7A
  • 特開-位置合わせ治具 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012234
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】位置合わせ治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E04G21/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114938
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】東間 敬造
(72)【発明者】
【氏名】青田 晃治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 信一
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 信一
(72)【発明者】
【氏名】安井 利彰
(72)【発明者】
【氏名】荒籾 稔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森枝 亮
(72)【発明者】
【氏名】谷山 英臣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】須田 生史
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA37
2E174DA41
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】騒音の発生を抑制しつつ、貫通孔同士の重ね合わせ状態に関わらず高精度な貫通孔同士の位置合わせを実現できる位置合わせ治具を提供する。
【解決手段】建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具は、貫通孔を挿通可能な本体部を含むピンであって、本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部およびテーパ部よりも本体部の先端側に位置する雄ねじ部を含むピンと、雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を含むねじ穴が形成されているナットと、を備え、ナットは、半球面形状に突出しねじ穴の入口を有する凸部を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
前記貫通孔を挿通可能な本体部を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部を含むピンと、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を含むねじ穴が形成されているナットと、を備え、
前記ナットは、半球面形状に突出し前記ねじ穴の入口を有する凸部を含む、
位置合わせ治具。
【請求項2】
前記雄ねじ部を挿通可能な挿通孔が形成されている筒形状のスペーサであって、前記ナットよりも前記テーパ部側に位置するスペーサをさらに備える、
請求項1に記載の位置合わせ治具。
【請求項3】
前記スペーサは、内周面のうち前記挿通孔の出口から前記挿通孔の入口に向かって延びるにつれて前記挿通孔の内径が小さくなる座面を有する凹部であって、前記凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部を含む、
請求項2に記載の位置合わせ治具。
【請求項4】
前記内周面は、前記挿通孔の内径を維持したまま前記挿通孔の前記入口から前記挿通孔の前記出口に向かって延びる直線面をさらに含む、
請求項3に記載の位置合わせ治具。
【請求項5】
前記挿通孔のうち前記直線面によって画定される部分の内径をφ1とし、前記雄ねじ部の外径をφ2とすると、
0.9φ1>φ2を満たす、
請求項4に記載の位置合わせ治具。
【請求項6】
0.5φ1<φ2を満たす、
請求項5に記載の位置合わせ治具。
【請求項7】
前記ピンが延びる方向を延在方向とし、前記ピンを前記延在方向に沿って切断して視た場合に、
前記テーパ部の前記延在方向の一方側の一端と前記テーパ部の前記延在方向の他方側の他端とを通過する仮想の直線と前記ピンの軸線とによって形成される角度は3度程度である、
請求項1から6の何れか一項に記載の位置合わせ治具。
【請求項8】
前記ピンは、前記テーパ部を挟んで前記雄ねじ部とは反対側に位置し、前記本体部よりも大径の大径部をさらに含み、
前記大径部は、前記ピンの延在方向と直交する平面で切断した断面形状が六角形状を有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の位置合わせ治具。
【請求項9】
建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
前記貫通孔を挿通可能な本体部を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部を含むピンと、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を含むねじ穴が形成されているナットと、
前記雄ねじ部を挿通可能な第1挿通孔が形成されている筒形状の第1スペーサであって、前記ナットよりも前記テーパ部側に位置する第1スペーサと、
前記雄ねじ部が挿通可能な第2挿通孔が形成されている筒形状の第2スペーサであって、前記第1スペーサよりも前記テーパ部側に位置する第2スペーサと、を備え、
前記第1スペーサは、半球面形状に突出し前記第1挿通孔の入口を有する凸部を含み、
前記第2スペーサは、内周面のうち前記第2挿通孔の出口から前記第2挿通孔の入口に向かって延びるにつれて前記第2挿通孔の内径が小さくなる座面を有する凹部であって、前記凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部を含む、
位置合わせ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の建材(例えば、スプライスプレートやガセットプレート)同士の固定にはボルト接合が広く行われてきた。このボルト接合を行うために、貫通孔同士の少なくとも一部が互いに連通するように重ね合わせられた状態で、金属ハンマーなどによって貫通孔の各々にボール心を叩きこむことで、貫通孔同士の位置合わせが行われることがある。しかしながら、このような方法では、貫通孔同士の位置合わせを行う際に大きな打撃音を伴う。
【0003】
これに対して、特許文献1には、トルクが付与可能に構成されている頭部と、頭部から延びるとともに縮径する挿入部と、挿入部に挿入力を生じさせるねじ部と、を有するボール心が開示されている。さらに、このボール心のねじ部は、頭部と逆側で建材に設置した受け台に固定されるナットに螺合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-055449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボール心の挿入前における貫通孔同士の重ね合わせ状態は一様ではなく、貫通孔同士に挿入されているボール心は様々な角度で傾斜する。このため、特許文献1に記載の技術では、貫通孔同士の重ね合わせ状態によっては、受け台に固定されているナットにボール心を螺合することが困難となり、貫通孔同士の位置合わせの精度が低くなる虞がある。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、騒音の発生を抑制しつつ、貫通孔同士の重ね合わせ状態に関わらず高精度な貫通孔同士の位置合わせを実現できる位置合わせ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る位置合わせ治具は、建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
前記貫通孔を挿通可能な本体部を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部を含むピンと、前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を含むねじ穴が形成されているナットと、を備え、前記ナットは、半球面形状に突出し前記ねじ穴の入口を有する凸部を含む。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る位置合わせ治具は、建築物を構成する複数の建材の各々に形成された貫通孔同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、前記貫通孔を挿通可能な本体部を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部を含むピンと、前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部を含むねじ穴が形成されているナットと、前記雄ねじ部を挿通可能な第1挿通孔が形成されている筒形状の第1スペーサであって、前記ナットよりも前記テーパ部側に位置する第1スペーサと、前記雄ねじ部が挿通可能な第2挿通孔が形成されている筒形状の第2スペーサであって、前記第1スペーサよりも前記テーパ部側に位置する第2スペーサと、を備え、前記第1スペーサは、半球面形状に突出し前記第1挿通孔の入口を有する凸部を含み、前記第2スペーサは、内周面のうち前記第2挿通孔の出口から前記第2挿通孔の入口に向かって延びるにつれて前記第2挿通孔の内径が小さくなる座面を有する凹部であって、前記凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の位置合わせ治具によれば、騒音の発生を抑制しつつ、貫通孔同士が重ね合わせられた状態に関わらず高精度な貫通孔同士の位置合わせを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る位置合わせ治具の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る大径部の構成を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係るテーパ部の構成を概略的に示す図である。
図4】第1実施形態に係るスペーサの構成を概略的に示す図である。
図5A】第1実施形態に係る位置合わせ治具の作用・効果について説明する図である。
図5B】第1実施形態に係る位置合わせ治具の作用・効果について説明する図である。
図6】第2実施形態に係る位置合わせ治具の構成を概略的に示す図である。
図7A】第2実施形態に係る位置合わせ治具の作用・効果について説明する図である。
図7B】第2実施形態に係る位置合わせ治具の作用・効果について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態による位置合わせ治具について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
本開示に係る位置合わせ治具1は、建築物を構成する複数の建材100の各々に形成された貫通孔102同士の位置合わせをする。建築物は、鉄骨梁などを用いた鉄骨造が適用されている。本開示では、図5Aに参照されるように、第1のスプライスプレート100A(100)に形成された第1の貫通孔102A(102)、第2のスプライスプレート100B(100)に形成された第2の貫通孔102B(102)、及びH形鋼である鉄骨のフランジ100C(100)に形成された第3の貫通孔102C(102)の位置合わせをする場合を例にして説明する。第1のスプライスプレート100Aおよび第2のスプライスプレート100Bのそれぞれが例えば高力ボルトのような締結具によってフランジ100Cにボルト接合されるまでは、第1のスプライスプレート100A、第2のスプライスプレート100B、およびフランジ100Cのうちの少なくとも1つは、フランジ100Cの板厚方向と直交する水平方向D2に沿ってスライド可能である。尚、ボルト接合する対象は、H形鋼のフランジ100Cに限定されず、例えば、H形鋼のウェブであってもよい。
【0013】
<第1実施形態>
(構成)
第1実施形態に係る位置合わせ治具1A(1)の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る位置合わせ治具1Aの構成を概略的に示す図である。図1に示すように、位置合わせ治具1Aは、ピン2と、ナット4と、を含む。第1実施形態では、位置合わせ治具1Aは、スペーサ6をさらに含んでいる。ピン2は、一方向に沿って長手形状を有している。
【0014】
本開示では、ピン2の両端のうち貫通孔102に最初に挿通される一方をピン2の先端20とし、他方をピン2の基端22とする。ピン2が延びる方向を延在方向D1とし、ピン2の基端22からピン2の先端20に向かう方向を延在方向D1の一方とし、ピン2の先端20からピン2の基端22に向かう方向を延在方向D1の他方とする。
【0015】
ピン2は、第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cのそれぞれを挿通可能な本体部10を含む。第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cのそれぞれは、互いに同径であり、例えば、直径が24mmである。本体部10のうち最も大径である部分(後述する延在部16)は、第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cのそれぞれよりも僅かに小径であり、例えば、直径が23.8mmである。
【0016】
第1実施形態では、図1に示すように、ピン2は、本体部10よりも大径の大径部8をさらに含んでいる。この大径部8は、後述するように、延在方向D1においてテーパ部12を挟んで雄ねじ部14とは反対側に位置している。第1実施形態では、大径部8は、本体部10の延在方向D1の他方側の他端に接続されており、ピン2の基端22を含んでいる。このような大径部8は、ピン2(ボール心)の頭部を構成している。尚、幾つかの実施形態では、大径部8は、ピン2の基端22よりも延在方向D1の一方側に位置している。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る大径部8の構成を概略的に示す図であって、大径部8を延在方向D1の他方側から視た図である。第1実施形態では、図2に示すように、大径部8は、延在方向D1と直交する平面で切断した断面形状が六角形状を有する。尚、幾つかの実施形態では、大径部8は、延在方向D1と直交する平面で切断した断面形状が矩形状を有する。
【0018】
図1に示すように、本体部10は、本体部10の延在方向D1の一方側である先端側(ピン2の先端20)に向かうにつれて縮径するテーパ部12およびテーパ部12よりも本体部10の先端側に位置する雄ねじ部14を含む。第1実施形態では、本体部10は、大径部8からテーパ部12に向かって延びる延在部16と、雄ねじ部14の延在方向D1の一方側の一端から延在方向D1の一方側に延びる先端部18をさらに含む。本体部10は、延在方向D1の他方側から順に延在部16、テーパ部12、雄ねじ部14、および先端部18を含んでいる。そして、先端部18は、ピン2の先端20を含んでいる。延在部16は、テーパ部12よりも大径である。テーパ部12は、雄ねじ部14よりも大径である。雄ねじ部14は、先端部18よりも大径である。
【0019】
図3は、第1実施形態に係るテーパ部12の構成を概略的に示す図であって、ピン2を延在方向D1に沿って切断して視た図である。第1実施形態では、図3に示すように、ピン2を延在方向D1に沿って切断して視た場合に、テーパ部12の延在方向D1の一方側の一端24とテーパ部12の延在方向D1の他方側の他端26とを通過する仮想の直線L1とピン2の軸線L2とによって形成される狭角側の角度θは3度程度である。例えば、テーパ部の延在方向D1の長さが70mmとなり、テーパ部12のうち最も大径となる部分(他端26を含む部分)の直径が23.8mmとなり、テーパ部12のうち最も小径となる部分(一端24を含む部分)の直径が16mmとなっている。角度θは、例えば、2.1度である。尚、テーパ部12の一端24および他端26のそれぞれは、ピン2の軸線L2を中心とする周方向における位置が互いに同じである。幾つかの実施形態では、角度θは2.5度以上3.5度以下である。
【0020】
図1に示すように、雄ねじ部14は、ねじ山が形成されている。第1実施形態では、本体部10は、テーパ部12と雄ねじ部14とを接続する接続部13をさらに含んでいる。接続部13は、テーパ部12よりも小径であり、且つ雄ねじ部14よりも大径である。接続部13は、延在方向D1の長さがテーパ部12および雄ねじ部14のそれぞれよりも短い。雄ねじ部14の直径(後述するφ2)は、例えば、12mmである。雄ねじ部14および先端部18を含めた延在方向D1の長さは、テーパ部12の延在方向D1の長さと略同一となっている。
【0021】
図1に示すように、ナット4は、雄ねじ部14に螺合される雌ねじ部28を含むねじ穴29が形成されている。ねじ穴29は、ナット4を延在方向D1に沿って貫通している。ねじ穴29によるナット4の開口のうち、ピン2が挿入される一方をねじ穴29の入口31とし、ピン2に脱出される他方をねじ穴の29出口33とする。
【0022】
ナット4は、半球面形状に突出する凸部30を含む。凸部30は、延在方向D1の他方側に突出する。この凸部30は、ねじ穴29の入口31を有する。
【0023】
スペーサ6は、円筒形状を有しており、雄ねじ部14を挿通可能な挿通孔34が形成されている。挿通孔34は、スペーサ6を延在方向D1に沿って貫通している。挿通孔34によるスペーサ6の開口のうち、ピン2が挿入される一方を挿通孔34の入口40とし、ピン2に脱出される他方を挿通孔34の出口38とする。スペーサ6は、位置合わせ治具1Aを用いて貫通孔102同士の位置合わせをする際には、ナット4よりもテーパ部12側に位置する。
【0024】
図4は、第1実施形態に係るスペーサ6の構成を概略的に示す図であって、スペーサ6を延在方向D1に沿って切断した断面図である。第1実施形態では、図4に示すように、スペーサ6は、挿通孔34を画定する内周面36のうち挿通孔34の出口38から挿通孔34の入口40に向かって延びるにつれて挿通孔34の内径が小さくなる座面42を有する凹部44を含む。この凹部44は、凸部30の少なくとも一部が挿入可能となっている。第1実施形態では、座面42は、凸部30の半球面形状と同程度の曲率を有しており、延在方向D1の他方側に凹むように凹状に湾曲している。曲率は、特に限定されないが、例えば、半径50.9mmである。尚、座面42は、凸部30の半球面形状と同一の曲率を有していてもよい。幾つかの実施形態では、座面42は、延在方向D1に沿って直線状に延びており、凹形状又は凸形状に湾曲していない。
【0025】
第1実施形態では、スペーサ6の内周面36は、挿通孔34の内径を維持したまま挿通孔34の入口40から挿通孔34の出口38に向かって延びる直線面46をさらに含む。直線面46の延在方向D1の一方側(挿通孔34の出口38側)の一端は座面42に接続されている。
【0026】
第1実施形態では、挿通孔34のうち直線面46によって画定される部分の内径をφ1とし、雄ねじ部14の外径をφ2とすると、0.9φ1>φ2を満たす。さらに、第1実施形態では、0.5φ1<φ2を満たす。φ2は、例えば、12mmや16mmである。
【0027】
尚、φ2を12mmに設定することで、φ2を16mmに設定する場合と比較して、ピン2に導入する軸力を大きくして、より容易にねじ穴29と挿通孔34の位置合わせを行うことができる。具体的に説明すると、ナット4を回転させること(トルクを導入すること)によって、ピン2に導入される力N(軸力N)は、N=Tr/(k・d)となる。ここで、Trは、トルク係数(N・m)であり、例えば、工具による導入する力である。kは、トルク係数であり、例えば、ナット4を回転させる際の抵抗に基づいて予め算出される。dは、トルクを導入するネジ部の直径である(つまりは、φ2である)。ナット4にトルクを導入できる治具・工具の性能が限られており、ある一定の値以上にすることは困難である(Tr=一定)。一方で、ピン2には出来るだけ大きな軸力を導入してねじ穴29と挿通孔34のズレを矯正できるようにすることが望ましい。上述した式から、dを小さくすることで、同一のトルクであっても導入軸力を大きくすることができる。しかしながら、実際には、dを小さくしすぎるとピン2が破損しやすくなるため、dは12~16mm程度(これ以上大きくするとずれたねじ穴29に挿入できない)が現実的なサイズとなる。よって、dを12mmとすることで導入軸力を大きく確保しつつ、ピン2の破損を抑制できる。
【0028】
(作用・効果)
第1実施形態に係る位置合わせ治具1Aの作用・効果について説明する。図5Aは、第1実施形態に係る位置合わせ治具1Aの作用・効果について説明するための図であって、ピン2が複数の貫通孔102に挿通され、且つナット4がスペーサ6に当接する直前の状態を示している。図5Bは、第1実施形態に係る位置合わせ治具1Aの作用・効果について説明するための図であって、図5Aに示す第1領域Aを拡大した図である。
【0029】
第1のスプライスプレート100Aおよび第2のスプライスプレート100Bのそれぞれをフランジ100Cにボルト接合するために、フランジ100Cの一面に第1のスプライスプレート100Aが重ねられるとともに、フランジ100Cの一面とは反対側の他面に第2のスプライスプレート100Bが重ねられる。このとき、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cは、少なくとも一部が互いに連通するように重ね合わせられている。しかし、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯は互いにずれている。
【0030】
第1実施形態によれば、第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cにピン2の本体部10を挿通する。この際、レンチのような工具を大径部8にアクセスさせて大径部8を一方向に回すことで、騒音の発生を抑制しつつ、本体部10をよりスムーズに貫通孔102に挿通させてもよい。雄ねじ部14の少なくとも一部が第2のスプライスプレート100Bを挟んで大径部8とは反対側に位置するようになったら、スペーサ6を本体部10に挿入し、ナット4を雄ねじ部14の少なくとも一部に挿入する(螺合する)。スペーサ6は、第2のスプライスプレート100Bのフランジ100C側とは反対側の表面104に当接させる。スペーサ6は、第2のスプライスプレート100Bと接触する面積が大きくなるよう(面接触するように)に、本体部10に挿入されている。
【0031】
以下では、図5Aに示すように、第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cを1つにまとめたものを複合貫通孔103とする。
【0032】
ナット4のねじ穴29に雄ねじ部14が挿入されている状態でナット4を回転させることで、ナット4がスペーサ6と当接し、ピン2の大径部8が第1のスプライスプレート100Aに近接するようにピン2の本体部10が複合貫通孔103に深く挿通される。この際、テーパ部12のテーパ面がガイド面になって第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cのうちの少なくとも1つの水平方向D2の位置をずらし、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯が互いに合わせられる。このように、テーパ部12によって第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cの位置合わせが行われる。このため、金属ハンマーなどによって複合貫通孔103に叩きこまれることで、貫通孔102同士の位置合わせを行う従来のボール心と比較して、騒音の発生を抑制することができる。尚、ピン2は、複合貫通孔103に挿通させておくことで、一時的に仮止めしておくための仮ボルトとして利用されてもよい。
【0033】
さらに、図5Bに示すように、ナット4の回転によって凸部30を凹部44に侵入させることで凸部30が座面42と干渉し、ナット4の中心線L3がスペーサ6の中心線L4に合わせられるように、座面42がガイド面になってナット4の傾きやナット4の水平方向D2の位置のずれを修正する。そして、このナット4の位置の修正に伴い、本体部10(特にテーパ部12)を介して、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯がさらに高精度に合わせられる。言い換えると、複合貫通孔103に挿通されているピン2の偏芯を解消することができる。このように、貫通孔102同士が重ね合わせられた状態に関わらず、ナット4を用いて貫通孔102同士の芯を合わせることができる。
【0034】
尚、第1実施形態では、位置合わせ治具1Aは、座面42を有する凹部44が形成されたスペーサ6を含んでいたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、位置合わせ治具1は、ピン2およびナット4を含むが、スペーサ6を含んでいない。この場合、第2のスプライスプレート100Bの表面104が座面42として機能する。幾つかの実施形態では、フランジ100Cの表面104に、凸部30の少なくとも一部が挿入可能であり、座面42として機能する面を含む凹部が形成されている。
【0035】
尚、第1実施形態では、ナット4に凸部30が形成され、且つスペーサ6に凹部44が形成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。不図示であるが、幾つかの実施形態では、スペーサ6は、ナット4に向かって半球面形状に突出し挿通孔34の出口38を有する凸部を含む。そして、ナット4は、ねじ穴29の入口31から出口33に向かって延びるにつれてねじ穴29の内径が小さくなる座面を有する凹部であって、上述の凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部を含む。
【0036】
第1実施形態によれば、スペーサ6によってナット4と第2のスプライスプレート100Bとの接触が防止されるので、第2のスプライスプレート100Bの損傷を防止できる。
【0037】
本発明者らの知見によれば、貫通孔102同士の位置合わせを実現するためには、スペーサ6の挿通孔34に本体部10が挿通されている状態において、本体部10が水平方向D2に沿って移動する必要があることを見出した。言い換えると、内径φ1と外径φ2との差を適切に設定することで、貫通孔102同士の位置合わせを実現できる。
【0038】
内径φ1と外径φ2との差が小さすぎると、本体部10のふり幅が小さくなり、ピン2をスペーサ6に挿入可能な水平方向D2のずれ量が小さくなる。つまり、貫通孔102同士のずれが大きくなると、位置合わせが難しくなる虞がある。一方で、内径φ1と外径φ2との差が大きすぎると、本体部10が水平方向D2に沿って過度に移動する虞がある。第1実施形態では、0.9φ1>φ2を満たすので、貫通孔102同士のずれが大きくなっても、本体部10を水平方向D2に沿って動かして貫通孔102同士の位置合わせを実現することができる。さらに、第1実施形態では、0.5φ1<φ2を満たすので、本体部10が水平方向D2に沿って過度に移動することを抑制できる。
【0039】
第1実施形態によれば、図3に例示して説明したように、テーパ部12は角度θが3度程度であるように構成されている。角度θが3度程度になることで、挿通孔34に挿入されている本体部10を移動させる力が小さくなり、貫通孔102同士の位置合わせに必要なトルクを小さくすることができる。
【0040】
第1実施形態によれば、ピン2は大径部8を含んでいるので、貫通孔102同士の芯を合わせた後に、レンチのような工具を大径部8にアクセスさせて大径部8を一方向とは反対方向に回すことで、ピン2を複合貫通孔103から容易に取り外すことができる。
【0041】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る位置合わせ治具1B(1)について説明する。第2実施形態に係る位置合わせ治具1Bは、ナット4に代わり第1スペーサ52が凸部53を含み、スペーサ6に代わり第2スペーサ54が凹部76を含んでいる点で第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
(構成)
図6は、第2実施形態に係る位置合わせ治具1Bの構成を概略的に示す図である。図6に示すように、位置合わせ治具1Bは、ピン2と、ナット50と、第1スペーサ52と、第2スペーサ54と、を含む。
【0043】
ナット50は、雄ねじ部14に螺合される雌ねじ部28を含むねじ穴29が形成されている。このナット50は、例えば、六角ナットである。ナット50の延在方向D1の他方側の面は、面一となっている。
【0044】
第1スペーサ52は、円筒形状を有しており、雄ねじ部14を挿通可能な第1挿通孔56が形成されている。第1挿通孔56は、第1スペーサ52を延在方向D1に沿って貫通している。第1挿通孔56による第1スペーサ52の開口のうち、ピン2が挿入される一方を第1挿通孔56の入口60とし、ピン2に脱出される他方を第1挿通孔56の出口58とする。第1スペーサ52は、位置合わせ治具1Bを用いて貫通孔102同士の位置合わせをする際には、ナット50よりもテーパ部12側に位置する。
【0045】
第1スペーサ52は、半球面形状に突出する凸部53を含む。凸部53は、延在方向D1の他方側に突出する。この凸部53は、第1挿通孔56の入口60を有する。
【0046】
第2実施形態では、図6に示すように、第1スペーサ52は、第1挿通孔56を画定する内周面61のうち第1挿通孔56の出口58から第1挿通孔56の入口60に向かって延びるにつれて第1挿通孔56の内径が小さくなる第1傾斜面62と、第1挿通孔56の内径を維持したまま第1挿通孔56の入口60から第1挿通孔56の出口58に向かって延びる第1直線面64と、を含む。第1傾斜面62は、第1スペーサ52の中心線L5に対して35度から55度の範囲で傾斜しており、例えば、45度で傾斜している。第1傾斜面62の延在方向D1の他方側(第1挿通孔56の入口60側)の一端は、第1直線面64に接続されている。
【0047】
第2スペーサ54は、円筒形状を有しており、雄ねじ部14を挿通可能な第2挿通孔66が形成されている。第2挿通孔66は、第2スペーサ54を延在方向D1に沿って貫通している。第2挿通孔66による第2スペーサ54の開口のうち、ピン2が挿入される一方を第2挿通孔66の入口68とし、ピン2に脱出される他方を第2挿通孔66の出口70とする。第2スペーサ54は、位置合わせ治具1Bを用いて貫通孔102同士の位置合わせをする際には、第1スペーサ52よりもテーパ部12側に位置する。
【0048】
第2スペーサ54は、第2挿通孔66を画定する内周面72のうち第2挿通孔66の出口70から第2挿通孔66の入口68に向かって延びるにつれて第2挿通孔66の内径が小さくなる座面74を有する凹部76を含む。この凹部76は、凸部53の少なくとも一部が挿入可能となっている。第2実施形態では、座面74は凹状に湾曲している。尚、別の一実施形態では、座面74は、延在方向D1に沿って直線状に延びている。
【0049】
第2実施形態では、図6に示すように、第2スペーサ54の内周面72は、第2挿通孔66の入口68から第2挿通孔66の出口70に向かって延びるにつれて第2挿通孔66の内径が小さくなる第2傾斜面78と、第2挿通孔66の内径を維持したまま第2傾斜面78と座面74とを接続する第2直線面80をさらに含む。
【0050】
(作用・効果)
第2実施形態に係る位置合わせ治具1Bの作用・効果について説明する。図7Aは、第2実施形態に係る位置合わせ治具1Bの作用・効果について説明するための図であって、ピン2が複合貫通孔103に挿通され、且つ第1スペーサ52が第2スペーサ54に当接する直前の状態を示している。図7Bは、第2実施形態に係る位置合わせ治具1Bの作用・効果について説明するための図であって、図7Aに示す第2領域Bを拡大した図である。
【0051】
第1のスプライスプレート100Aおよび第2のスプライスプレート100Bのそれぞれをフランジ100Cにボルト接合するために、フランジ100Cの一面に第1のスプライスプレート100Aが重ねられるとともに、フランジ100Cの他面に第2のスプライスプレート100Bが重ねられる。このとき、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cは、少なくとも一部が互いに連通するように重ね合わせられている。しかし、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯は互いにずれている。
【0052】
第2実施形態によれば、複合貫通孔103にピン2の本体部10を挿通する。この際、レンチのような工具を大径部8にアクセスさせて大径部8を一方向に回すことで、騒音の発生を抑制しつつ、本体部10をよりスムーズに貫通孔102に挿通させてもよい。雄ねじ部14の少なくとも一部が第2のスプライスプレート100Bを挟んで大径部8とは反対側に位置するようになったら、第1スペーサ52および第2スペーサ54を本体部10に挿入するとともに、ナット50を雄ねじ部14の少なくとも一部に挿入する(螺合する)。そして、第2スペーサ54は、第2のスプライスプレート100Bの表面104に当接させる。
【0053】
ナット50のねじ穴29に雄ねじ部14が挿入されている状態でナット50を回転させることで、ナット50が第1スペーサ52を押圧し、第1スペーサ52が第2スペーサ54と当接する。そして、ピン2の大径部8が第1のスプライスプレート100Aに近接するようにピン2の本体部10が複合貫通孔103に深く挿通される。この際、テーパ部12のテーパ面がガイド面になって第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cのうちの少なくとも1つの水平方向D2の位置をずらし、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯が互いに合わせられる。このように、テーパ部12によって第1の貫通孔102A、第2の貫通孔102B、および第3の貫通孔102Cの位置合わせが行われる。このため、金属ハンマーなどによって複合貫通孔103に叩きこまれることで、貫通孔102同士の位置合わせを行う従来のボール心と比較して、騒音の発生を抑制することができる。尚、ピン2は、複合貫通孔103に挿通させておくことで、一時的に仮止めしておくための仮ボルトとして利用されてもよい。
【0054】
さらに、図7Bに示すように、ナット50の回転によって第1スペーサ52の凸部53を第2スペーサ54の凹部76に侵入させることで凸部53が座面74と干渉し、第1スペーサ52の中心線L5が第2スペーサ54の中心線L6に合わせられるように、座面74がガイド面になって第1スペーサ52の傾きや第1スペーサ52の水平方向D2の位置のずれを修正する。そして、この第1スペーサ52の位置の修正に伴い、本体部10(特にテーパ部12)を介して、第1の貫通孔102Aの芯、第2の貫通孔102Bの芯、および第3の貫通孔102Cの芯がさらに高精度に合わせられる。言い換えると、複合貫通孔103に挿通されているピン2の偏芯を解消することができる。このように、貫通孔102同士が重ね合わせられた状態に関わらず、ナット50を用いて貫通孔102同士の芯を合わせることができる。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
[1]本開示に係る位置合わせ治具(1A)は、
建築物を構成する複数の建材(100)の各々に形成された貫通孔(102)同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
前記貫通孔を挿通可能な本体部(10)を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部(12)および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部(14)を含むピン(2)と、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部(28)を含むねじ穴(29)が形成されているナット(4)と、を備え、
前記ナットは、半球面形状に突出し前記ねじ穴の入口(31)を有する凸部(30)を含む。
【0057】
上記[1]に記載の構成によれば、ねじ穴に雄ねじ部が挿入されている状態でナットを回転させることで、本体部を貫通孔同士に深く挿通させ、テーパ部によって貫通孔同士の位置合わせが行われる。このため、金属ハンマーなどによって貫通孔に叩きこまれることで、貫通孔同士の位置合わせを行う従来のボール心と比較して、騒音の発生を抑制することができる。さらに、ナットは半球面形状に突出しねじ穴の入口を有する凸部を含むので、凸部に干渉する干渉物を準備することで、ナットの傾きやナットの水平方向(建材の板厚方向と直交する方向)の位置のずれを修正し、高精度な貫通孔同士の位置合わせをすることができる。このように、貫通孔同士が重ね合わせられた状態に関わらず、貫通孔同士の芯を合わせることができる。
【0058】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記雄ねじ部を挿通可能な挿通孔(34)が形成されている筒形状のスペーサであって、前記ナットよりも前記テーパ部側に位置するスペーサ(6)をさらに備える。
【0059】
上記[2]に記載の構成によれば、ナットと建材との接触が防止されるので、建材の損傷を防止できる。
【0060】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記スペーサは、内周面のうち前記挿通孔の出口(38)から前記挿通孔の入口(40)に向かって延びるにつれて前記挿通孔の内径が小さくなる座面(42)を有する凹部であって、前記凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部(44)を含む。
【0061】
上記[3]に記載の構成によれば、凸部を凹部に侵入させることで凸部が座面と干渉するので、ナットの傾きやナットの水平方向の位置のずれを修正することができる。このため、貫通孔同士の位置合わせの精度をさらに高めることができる。
【0062】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の構成において、
前記挿通孔の前記内周面は、前記挿通孔の内径を維持したまま前記挿通孔の前記入口から前記挿通孔の前記出口に向かって延びる直線面(46)をさらに含む。
【0063】
本発明者らの知見によれば、高精度な貫通孔同士の位置合わせを実現するためには、スペーサの挿通孔に本体部が挿通されている状態において、本体部が水平方向に沿って移動する必要があることを見出した。上記[4]に記載の構成によれば、高精度な貫通孔同士の位置合わせを実現可能な内径を有するスペーサを準備することができる。
【0064】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]に記載の構成において、
前記挿通孔のうち前記直線面によって画定される部分の内径をφ1とし、前記雄ねじ部の外径をφ2とすると、
0.9φ1>φ2を満たす。
【0065】
上記[5]に記載の構成によれば、貫通孔同士のずれが大きくなっても、本体部を水平方向に沿って動かして貫通孔同士の位置合わせを実現することができる。
【0066】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]に記載の構成において、
0.5φ1<φ2を満たす。
【0067】
上記[6]に記載の構成によれば、本体部が水平方向に沿って過度に動くことを抑制できる。
【0068】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記ピンが延びる方向を延在方向(D1)とし、前記ピンを前記延在方向に沿って切断して視た場合に、
前記テーパ部の前記延在方向の一方側の一端(24)と前記テーパ部の前記延在方向の他方側の他端(26)とを通過する仮想の直線(L1)と前記ピンの軸線(L2)とによって形成される角度(θ)は3度程度である。
【0069】
上記[7]に記載の構成によれば、テーパ部が貫通孔同士をスムーズに挿通するようになるので、ナットを回転させるトルクを小さくすることができる。
【0070】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記ピンは、前記テーパ部を挟んで前記雄ねじ部とは反対側に位置し、前記本体部よりも大径の大径部(8)をさらに含み、
前記大径部は、前記ピンの延在方向と直交する平面で切断した断面形状が六角形状を有する。
【0071】
上記[8]に記載の構成によれば、貫通孔同士の芯を合わせた後に、レンチのような工具を大径部にアクセスさせて大径部を回すことでピンを複数の建材の各々から容易に取り外すことができる。
【0072】
[9]本開示に係る位置合わせ治具(1B)は、
建築物を構成する複数の建材(100)の各々に形成された貫通孔(102)同士の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
前記貫通孔を挿通可能な本体部(10)を含むピンであって、前記本体部の先端側に向かうにつれて縮径するテーパ部(12)および前記テーパ部よりも前記本体部の先端側に位置する雄ねじ部(14)を含むピン(2)と、
前記雄ねじ部に螺合される雌ねじ部(28)を含むねじ穴(29)が形成されているナット(50)と、
前記雄ねじ部を挿通可能な第1挿通孔(56)が形成されている筒形状の第1スペーサであって、前記ナットよりも前記テーパ部側に位置する第1スペーサ(52)と、
前記雄ねじ部が挿通可能な第2挿通孔(66)が形成されている筒形状の第2スペーサであって、前記第1スペーサよりも前記テーパ部側に位置する第2スペーサ(54)と、を備え、
前記第1スペーサは、半球面形状に突出し前記第1挿通孔の入口(60)を有する凸部(53)を含み、
前記第2スペーサは、内周面(72)のうち前記第2挿通孔の出口(70)から前記第2挿通孔の入口(68)に向かって延びるにつれて前記第2挿通孔の内径が小さくなる座面(74)を有する凹部であって、前記凸部の少なくとも一部が挿入可能な凹部(76)を含む。
【0073】
上記[9]に記載の構成によれば、ねじ穴に雄ねじ部が挿入されている状態でナットを回転させることで、本体部を貫通孔同士に深く挿通させ、テーパ部によって貫通孔同士の位置合わせが行われる。このため、金属ハンマーなどによって貫通孔に叩きこまれることで、貫通孔同士の位置合わせを行う従来のボール心と比較して、騒音の発生を抑制することができる。さらに、第1スペーサは半球面形状に突出し第1挿通孔の入口を有する凸部を含むので、凸部を凹部に侵入させることで凸部が座面と干渉し、第1スペーサの傾きや第1スペーサの水平方向の位置のずれを修正し、高精度な貫通孔同士の位置合わせをすることができる。このように、貫通孔同士が重ね合わせられた状態に関わらず、貫通孔同士の芯を合わせることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 位置合わせ治具
1A 位置合わせ治具(第1実施形態)
1B 位置合わせ治具(第2実施形態)
2 ピン
4 ナット
6 スペーサ
8 大径部
10 本体部
12 テーパ部
13 接続部
14 雄ねじ部
16 延在部
18 先端部
20 先端
22 基端
24 テーパ部の一端
26 テーパ部の他端
28 雌ねじ部
29 ねじ穴
30 凸部(第1実施形態)
31 ねじ穴の入口
33 ねじ穴の出口
34 挿通孔
36 スペーサの内周面
38 挿通孔の出口
40 挿通孔の入口
42 座面(第1実施形態)
44 凹部(第1実施形態)
46 直線面
50 ナット(第2実施形態)
52 第1スペーサ
53 凸部(第2実施形態)
54 第2スペーサ
56 第1挿通孔
58 第1挿通孔の出口
60 第1挿通孔の入口
61 第1スペーサの内周面
62 第1傾斜面
64 第1直線面
66 第2挿通孔
68 第2挿通孔の入口
70 第2挿通孔の出口
72 第2スペーサの内周面
74 座面(第2実施形態)
76 凹部(第2実施形態)
78 第2傾斜面
80 第2直線面
100 建材
100A 第1のスプライスプレート
100B 第2のスプライスプレート
100C フランジ
102 貫通孔
102A 第1の貫通孔
102B 第2の貫通孔
102C 第3の貫通孔
103 複合貫通孔
104 第2のスプライスプレートの表面
A 第1領域
B 第2領域
D1 延在方向
D2 水平方向
L1 直線
L2 ピンの軸線
L3 ナットの中心線(第1実施形態)
L4 スペーサの中心線(第1実施形態)
L5 第1スペーサの中心線(第2実施形態)
L6 第2スペーサの中心線(第2実施形態)

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B