(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012235
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】位置合わせ治具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E04G21/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114942
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】東間 敬造
(72)【発明者】
【氏名】青田 晃治
(72)【発明者】
【氏名】三浦 信一
(72)【発明者】
【氏名】岩岡 信一
(72)【発明者】
【氏名】安井 利彰
(72)【発明者】
【氏名】荒籾 稔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森枝 亮
(72)【発明者】
【氏名】谷山 英臣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】須田 生史
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA32
2E174DA38
2E174EA07
(57)【要約】
【課題】建材孔部の位置合わせを精度よく実行することができる位置合わせ治具を提供する。
【解決手段】位置合わせ治具は、規定方向に延在する延設部と、延設部から突出する第1突出部と、複数の建材を間にして第1突出部と規定方向に並ぶよう延設部から突出する第2突出部と、第1突出部に設けられる第1螺合孔部と、を含む治具本体と、第1螺合孔部に螺合する第1ボルトと、第1ボルトに連結すると共に規定方向に延在し、規定方向の一方側から建材孔部に挿入される第1挿入棒と、第2突出部に連結すると共に規定方向に延在し、規定方向の他方側から建材孔部に挿入される第2挿入棒とを備える。第1挿入棒は、規定方向に対して傾斜する第1傾斜面を含み、第2挿入棒は、第1傾斜面と対面して当接する第2傾斜面を含む。第1ボルトの回転によって第1挿入棒が規定方向に移動すると、第1傾斜面は第2傾斜面に対して摺動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を構成する複数の建材の各々に設けられる建材孔部の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
規定方向に延在する延設部と、前記延設部から突出する第1突出部と、前記複数の建材を間にして前記第1突出部と前記規定方向に並ぶよう前記延設部から突出する第2突出部と、前記第1突出部に設けられる第1螺合孔部と、を含む治具本体と、
前記第1螺合孔部に螺合する第1ボルトと、
前記第1ボルトに連結すると共に前記規定方向に延在し、前記規定方向の一方側から前記建材孔部に挿入される第1挿入棒と、
前記第2突出部に連結すると共に前記規定方向に延在し、前記規定方向の他方側から前記建材孔部に挿入される第2挿入棒と、
を備え、
前記第1挿入棒は、前記規定方向に対して傾斜する第1傾斜面を含み、
前記第2挿入棒は、前記第1傾斜面と対面して当接する第2傾斜面を含み、
前記第1ボルトの回転によって前記第1挿入棒が前記規定方向に移動すると、前記第1傾斜面は前記第2傾斜面に対して摺動するように構成される
位置合わせ治具。
【請求項2】
前記第1ボルトは、前記規定方向に延在する第1軸部を含み、
前記第1軸部の前記第1挿入棒側の端面である第1軸端面は、凸状または凹状の湾曲形状を呈し、
前記第1挿入棒の前記第1ボルト側の端面である第1挿入棒端面は、前記第1軸端面に対面して当接する凹状または凸状の湾曲形状を呈する
請求項1に記載の位置合わせ治具。
【請求項3】
前記第1軸端面と前記第1挿入棒端面とが互いに摺動可能となるよう第1ボルトと前記第1挿入棒とを連結させる第1連結部材をさらに備え、
前記第1連結部材は、前記第1ボルトおよび前記第1挿入棒に対して離脱可能に取り付けられている
請求項2に記載の位置合わせ治具。
【請求項4】
前記第1挿入棒は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第1傾斜面とは反対側に向かって凸となる第1湾曲面をさらに含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の位置合わせ治具。
【請求項5】
前記第1挿入棒は、前記第1湾曲面と前記第1傾斜面とを接続する第1接続面をさらに含み、
前記第1接続面は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第1挿入棒の軸心を中心とした半径が前記第1湾曲面の曲率半径と同じになる第1仮想円よりも内側に位置する
請求項4に記載の位置合わせ治具。
【請求項6】
前記第1傾斜面には、前記規定方向に沿って延在する複数の第1縦溝が形成されている
請求項1または2に記載の位置合わせ治具。
【請求項7】
前記治具本体は、前記第2突出部に設けられる第2螺合孔部をさらに含み、
前記位置合わせ治具は、前記第2螺合孔部に螺合する第2ボルトをさらに備え、
前記第2挿入棒は、前記第2ボルトに連結される
前記第2ボルトの回転によって前記第2挿入棒が前記規定方向に移動すると、前記第2傾斜面は前記第1傾斜面に対して摺動するように構成される
請求項1または2に記載の位置合わせ治具。
【請求項8】
前記第2ボルトは、前記規定方向に延在する第2軸部を含み、
前記第2軸部の前記第2挿入棒側の端面である第2軸端面は、凸状または凹状の湾曲形状を呈し、
前記第2挿入棒の前記第2ボルト側の端面である第2挿入棒端面は、前記第2軸端面に対面して当接する凹状または凸状の湾曲形状を呈する
請求項7に記載の位置合わせ治具。
【請求項9】
前記第2軸端面と前記第2挿入棒端面とが互いに摺動可能となるよう第2ボルトと前記第2挿入棒とを連結させる第2連結部材をさらに備え、
前記第2連結部材は、前記第2ボルトおよび前記第2挿入棒に対して離脱可能に取り付けられている
請求項8に記載の位置合わせ治具。
【請求項10】
前記第2挿入棒は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第2傾斜面とは反対側に向かって凸となる第2湾曲面をさらに含む
請求項7に記載の位置合わせ治具。
【請求項11】
前記第2挿入棒は、前記第2湾曲面と前記第2傾斜面とを接続する第2接続面をさらに含み、
前記第2接続面は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第2挿入棒の軸心を中心とした半径が前記第2湾曲面の曲率半径と同じになる第2仮想円よりも内側に位置する
請求項10に記載の位置合わせ治具。
【請求項12】
前記第2傾斜面には、前記規定方向に沿って延在する複数の第2縦溝が形成されている
請求項7に記載の位置合わせ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物を構成する複数の建材の各々に設けられる建材孔部の位置合わせをする位置合わせ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場において例えば鉄骨架構などを構成する複数の建材をボルト接合するためには、建材孔部の位置合わせを予め行う必要がある。従来では、位置ずれしている複数の建材孔部にボール芯を差し込み、工具を使ってボール芯を打ち込むことで位置合わせを行っていた。しかしながら、打ち込みを行う際に発生する騒音は近隣に悪影響を及ぼしかねないため、上記の作業は夜間など特定の時間帯を避けて行わざるを得ず、結果として建設工期が長くなる一因になっていた。
【0003】
そこで、位置合わせ作業の静音化を図るために特許文献1では、同軸に配置される一対の傾斜面摺動部材と、一対の傾斜面摺動部材の各々に挿通される棒状部材とを備えた位置合わせ治具が提案されている。建材孔部に挿入した一対の傾斜面摺動部材の一方を他方へ向かって押し付けると、一対の傾斜面摺動部材は互いに摺動しながら建材孔部をスライドさせ、位置合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記位置合わせ治具では、棒状部材が一対の傾斜面摺動部材の各々に挿通されているため、各傾斜面摺動部材は棒状部材に当接する位置までしか建材孔部をスライドさせることができない。そのため、複数の建材孔部の位置合わせを精度よくできない虞がある。
【0006】
本開示の目的は、建材孔部の位置合わせを精度よく実行することができる位置合わせ治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る位置合わせ治具は、
建築物を構成する複数の建材の各々に設けられる建材孔部の位置合わせをするための位置合わせ治具であって、
規定方向に延在する延設部と、前記延設部から突出する第1突出部と、前記複数の建材を間にして前記第1突出部と前記規定方向に並ぶよう前記延設部から突出する第2突出部と、前記第1突出部に設けられる第1螺合孔部と、を含む治具本体と、
前記第1螺合孔部に螺合する第1ボルトと、
前記第1ボルトに連結すると共に前記規定方向に延在し、前記規定方向の一方側から前記建材孔部に挿入される第1挿入棒と、
前記第2突出部に連結すると共に前記規定方向に延在し、前記規定方向の他方側から前記建材孔部に挿入される第2挿入棒と、
を備え、
前記第1挿入棒は、前記規定方向に対して傾斜する第1傾斜面を含み、
前記第2挿入棒は、前記第1傾斜面と対面して当接する第2傾斜面を含み、
前記第1ボルトの回転によって前記第1挿入棒が前記規定方向に移動すると、前記第1傾斜面は前記第2傾斜面に対して摺動するように構成される。
【0008】
上記1)の構成によれば、第2傾斜面といずれかの建材孔部との間で第1挿入棒が挟まった状態で第1ボルトが締め込まれると、第1挿入棒は、第1傾斜面を第2傾斜面に対して摺動させつつ、建材孔部を押しのけながら規定方向の他方側に向けて移動する。これにより、建材孔部はスライドするので、建材孔部の位置合わせを行うことができる。第1挿入棒が建材孔部をどの程度だけスライドさせるかは第1ボルトの締込量によって自在に調整できるため、建材孔部のスライド量も自在に調整できる。よって、建材孔部の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0009】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第1ボルトは、前記規定方向に延在する第1軸部を含み、
前記第1軸部の前記第1挿入棒側の端面である第1軸端面は、凸状または凹状の湾曲形状を呈し、
前記第1挿入棒の前記第1ボルト側の端面である第1挿入棒端面は、前記第1軸端面に対面して当接する凹状または凸状の湾曲形状を呈する。
【0010】
上記2)の構成によれば、第1ボルトが締め込まれる場合、第1軸端面と第1挿入棒端面が互いに摺動するため、第1挿入棒は連れ回りを起こしにくい。これにより、第1ボルトの回転力と直進力とのうち直進力のみが第1挿入棒に伝わり易く、第1挿入棒は回転位置を変えることなく移動して建材孔部を押しのけることができる。よって、建材孔部の位置合わせを行う際に、建材孔部が回転してしまうのを回避できる。また、建材孔部をスライドさせる際に第1ボルトの軸心に対して第1挿入棒の軸心を偏心させようとする力が発生しようとしても、第1挿入棒端面が第1軸端面に対して摺動して、第1挿入棒は規定方向に対して傾くことができ、第1挿入棒に作用する上記の力を逃がすことができる。これにより、第1挿入棒にかかる負荷を低減でき、第1挿入棒の破損などを回避できる。
【0011】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第1軸端面と前記第1挿入棒端面とが互いに摺動可能となるよう第1ボルトと前記第1挿入棒とを連結させる第1連結部材をさらに備え、
前記第1連結部材は、前記第1ボルトおよび前記第1挿入棒に対して離脱可能に取り付けられている。
【0012】
上記3)の構成によれば、位置合わせ作業の開始前に、第1螺合孔部に螺合した第1ボルトに、第1連結部材を用いて第1挿入棒を連結させることができる。第1挿入棒が連結した第1ボルトを第1螺合孔部に差し込む作業を不要にできるので、位置合わせ作業をより簡易に行うことができる。
【0013】
4)幾つかの実施形態では、上記1)または3)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第1挿入棒は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第1傾斜面とは反対側に向かって凸となる第1湾曲面をさらに含む。
【0014】
上記4)の構成によれば、第1湾曲面が建材孔部に面接触することができるので、スライドさせるための力が建材孔部に力に伝わり易く、位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0015】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第1挿入棒は、前記第1湾曲面と前記第1傾斜面とを接続する第1接続面をさらに含み、
前記第1接続面は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第1挿入棒の軸心を中心とした半径が前記第1湾曲面の曲率半径と同じになる第1仮想円よりも内側に位置する。
【0016】
上記5)の構成によれば、第1接続面が第1仮想円の内側に位置する分だけ第1挿入棒を細くできるので、位置ずれした複数の建材孔部に対して第1挿入棒を差し込む際に、第1挿入棒が建材孔部に引っ掛からない。よって、建材孔部の位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0017】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の位置合わせ治具であって、
前記第1傾斜面には、前記規定方向に沿って延在する複数の第1縦溝が形成されている。
【0018】
上記6)の構成によれば、第1傾斜面と第2傾斜面との間で発生する溝の凹凸による抵抗によりずれを抑制することができるので、第1傾斜面が第2傾斜面に対して幅方向にずれるのを抑制でき、スライドさせるために建材孔部に伝わる力が逃げるのを回避できる。これにより、建材孔部の位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0019】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載の位置合わせ治具であって、
前記治具本体は、前記第2突出部に設けられる第2螺合孔部をさらに含み、
前記位置合わせ治具は、前記第2螺合孔部に螺合する第2ボルトをさらに備え、
前記第2挿入棒は、前記第2ボルトに連結され、
前記第2ボルトの回転によって前記第2挿入棒が前記規定方向に移動すると、前記第2傾斜面は前記第1傾斜面に対して摺動するように構成される。
【0020】
上記7)の構成によれば、第2ボルトを締め込めば、第2挿入棒は、第2傾斜面を第1傾斜面に対して摺動させつつ、建材孔部を押しのけながら規定方向の一方側に移動することができる。第2挿入棒が建材孔部をどの程度だけスライドさせるかは第2ボルトの締込量によって自在に調整できるため、建材孔部のスライド量も自在に調整できる。よって、建材孔部の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0021】
8)幾つかの実施形態では、上記7)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第2ボルトは、前記規定方向に延在する第2軸部を含み、
前記第2軸部の前記第2挿入棒側の端面である第2軸端面は、凸状または凹状の湾曲形状を呈し、
前記第2挿入棒の前記第2ボルト側の端面である第2挿入棒端面は、前記第2軸端面に対面して当接する凹状または凸状の湾曲形状を呈する。
【0022】
上記8)の構成によれば、上記2)と同様の技術的な利点が得られる。
【0023】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第2軸端面と前記第2挿入棒端面とが互いに摺動可能となるよう第2ボルトと前記第2挿入棒とを連結させる第2連結部材をさらに備え、
前記第2連結部材は、前記第2ボルトおよび前記第2挿入棒に対して離脱可能に取り付けられている。
【0024】
上記9)の構成によれば、上記3)と同様の技術的な利点が得られる。
【0025】
10)幾つかの実施形態では、上記7)から9)のいずれかに記載の位置合わせ治具であって、
前記第2挿入棒は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第2傾斜面とは反対側に向かって凸となる第2湾曲面をさらに含む。
【0026】
上記10)の構成によれば、上記4)と同様の技術的な利点が得られる。
【0027】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載の位置合わせ治具であって、
前記第2挿入棒は、前記第2湾曲面と前記第2傾斜面とを接続する第2接続面をさらに含み、
前記第2接続面は、前記規定方向に沿って視たとき、前記第2挿入棒の軸心を中心とした半径が前記第2湾曲面の曲率半径と同じになる第2仮想円よりも内側に位置する。
【0028】
上記11)の構成によれば、上記5)と同様の技術的な利点が得られる。
【0029】
12)幾つかの実施形態では、上記7)から11)のいずれかに記載の位置合わせ治具であって、
前記第2傾斜面には、前記規定方向に沿って延在する複数の第2縦溝が形成されている。
【0030】
上記12)の構成によれば、上記6)と同様の技術的な利点が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、建材孔部の位置合わせを精度よく実行することができる位置合わせ治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2A】位置ズレを起こした建材孔部8の概略図である。
【
図2B】別の位置ズレした建材孔部8の概略図である。
【
図3】位置合わせが行われた建材孔部8の概略図である。
【
図4】第1ボルト21と第1挿入棒110の概略的な拡大図である。
【
図5】第1軸端面25と第1挿入棒端面111とが互いに摺動を開始した時の概略図である。
【
図7】
図6のA-A線矢視方向における第1挿入棒110の概略的な断面図である。
【
図8】
図6のB-B線矢視方向における第1挿入棒110の概略的な断面図である。
【
図9】他の実施形態に係る第1挿入棒110の概略図である。
【
図10】第2ボルト22と第2挿入棒220の概略的な拡大図である。
【
図12】
図11のA-A線矢視方向における第2挿入棒220の概略的な断面図である。
【
図13】他の実施形態に係る第2挿入棒220の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0034】
<位置合わせ治具1の概要>
図1の例では孔の位置合わせがなされる建材9として、建材9Aと、建材9Aを挟むようにして配置される一対の建材9Bとが配置されている。一例として、建材9Aは架構式構造を構成するH鋼のフランジ部である。一対の建材9Bはスプライスプレートであり、建材9Aとのボルト接合がなされる前においては、建材9Aに沿ってスライド可能である。本例の位置合わせ治具1は、建材9Aの建材孔部8Aと建材9Bの建材孔部8Bとを位置合わせするために使用される。以下、建材9A,9Bを総称する場合には単に「建材9」といい、建材孔部8A,8Bを総称する場合には単に「建材孔部8」という場合がある。
【0035】
位置合わせ治具1を構成する治具本体10は、規定方向に延在する延設部15と、延設部15から突出する第1突出部11と、建材9を間にして第1突出部11と規定方向に並ぶように設けられる第2突出部12と、第1突出部11に設けられる第1螺合孔部13と、第2突出部12に設けられる第2螺合孔部14とを含む。位置合わせ治具1が使用される状態にあるときには、規定方向は建材孔部8の中心線と平行な方向である。第1螺合孔部13と第2螺合孔部14は、規定方向を軸方向とするねじ孔であり、互いに同軸となるように配置されている。
【0036】
位置合わせ治具1は、第1ボルト21、第2ボルト22、第1挿入棒110、および、第2挿入棒220をさらに備え、これら4つの部品はいずれも同軸に配置されると共に規定方向に延在する。第1ボルト21の軸部である第1軸部23は第1螺合孔部13に螺合しており、第2螺合孔部14に向かって突き出ている。同様に、第2ボルト22の軸部である第2軸部24は第2螺合孔部14に螺合しており、第1螺合孔部13に向かって突き出ている。
【0037】
第1挿入棒110は第1軸部23に連結しており、規定方向の一方側から建材孔部8に挿入される。第2挿入棒220は第2軸部24に連結しており、規定方向の他方側から建材孔部8に挿入される。互いに同軸に配置される第1挿入棒110と第2挿入棒220は、規定方向において対称な形状を呈しており、いずれも中実な軸部材である。
【0038】
第1挿入棒110は規定方向に対して傾斜する第1傾斜面31(
図2A参照)を含み、第2挿入棒220は第1傾斜面31と対面して当接する第2傾斜面32を含む。第1傾斜面31と第2傾斜面32が設けられるため、第1挿入棒110と第2挿入棒220は先端側に向かうほど尖る形状を呈する。第1傾斜面31と第2傾斜面32の長手方向はいずれも規定方向に沿った方向であり、短手方向(幅方向)は当該長手方向と直交する方向である。
【0039】
本実施形態では、第1ボルト21の回転によって第1挿入棒110が規定方向に移動すると、第1傾斜面31は第2傾斜面32に対して摺動するように構成されている。例えば
図2Aで示すように、互いに位置ずれした建材孔部8に作業者が第1挿入棒110および第2挿入棒220を挿入する。このとき、第2傾斜面32と2つの建材孔部8Bとの間に第1挿入棒110が挟まったとする。作業者が第1ボルト21を締め込むと、第1挿入棒110は、第1傾斜面31を第2傾斜面32に対して摺動させながら、規定方向の他方側へと移動する(矢印D)。このとき、第2挿入棒220の第2傾斜面32から受ける反力によって、第1挿入棒110の少なくとも先端部は矢印A方向に向かって孔を拡げるように変位する。同時に、第1ボルト21の締め込みに伴って第1挿入棒110は、第2傾斜面32上で規定方向の他方側にスライドする。これにより、第1挿入棒110は一対の建材9Bを押しのける結果、建材孔部8Bはスライドする(矢印R1、R2)。2つの建材孔部8Bが建材孔部8Aと同軸になった時点で第1ボルト21の締め込みを停止すれば、
図3に示すように建材孔部8の位置合わせが完了する。
【0040】
同様に、第2ボルト22の回転によって第2挿入棒220が規定方向に移動すると、第2傾斜面32は第1傾斜面31に対して摺動するように構成されている。例えば、
図2Bで示すように、互いに位置ずれした建材孔部8に作業者が第1挿入棒110と第2挿入棒220を挿入する。このとき、第1傾斜面31と2つの建材孔部8Bとの間に第2挿入棒220が挟まったとする。作業者が第2ボルト22を締め込むと、第2挿入棒220は、第2傾斜面32を第1傾斜面31に対して摺動させながら、規定方向の他方側へと移動する(矢印U)。このとき、第1挿入棒110の第1傾斜面31から受ける反力によって、第2挿入棒220の少なくとも先端部は矢印B方向に向かって傾くように変位する。同時に第2ボルト22の締め込みに伴って第2挿入棒220は第1傾斜面31上で規定方向の一方側へスライドする。これにより、第2挿入棒220は一対の建材9Bを押しのける結果、建材孔部8Bはスライドする(矢印L1、L2)。2つの建材孔部8Bが建材孔部8Aと同軸になった時点で第2ボルト22の締め込みを停止すれば、
図3に示すように建材孔部8の位置合わせが完了する。
【0041】
このように、本実施形態では、建材孔部8の位置合わせ作業を行う際に、ボール芯の打ち込み作業を不要とできるため、位置合わせ作業の静音化を図ることができる。また、建材孔部8Bをどの程度スライドさせるかは、第1ボルト21の締込量と第2ボルト22の締込量の調整を通じて自在に調整できる。これにより、建材孔部8Bのスライド量も自在に調整できるので、建材孔部8A,8Bの位置合わせを精度よく行うことができる。
【0042】
<第1ボルト21及び第1挿入棒110の詳細>
図4に示すように、第1ボルト21の第1軸部23は、ねじ山が形成されるねじ軸部231と、ねじ軸部231の先端部に接続されると共に第1挿入棒110と当接する当接軸部232とを含む。当接軸部232はねじ軸部231よりも小径である。また、当接軸部232のねじ軸部231側の部位にはリング溝232cが形成されている。リング溝232cは、第1ボルト21の軸線を中心とする周方向の全長に亘り形成されている。当接軸部232の第1挿入棒110側の端面である第1軸端面25は、第1螺合孔部13に向かって凹んだ湾曲形状を呈する。
【0043】
他方で、第1挿入棒110の第1ボルト21側の端面である第1挿入棒端面111は、第1ボルト21の第1軸端面25に対面して当接する湾曲形状を呈する。
図4で例示される第1挿入棒端面111は、第1螺合孔部13に向かって凸状に湾曲している。さらに、第1挿入棒110の第1ボルト21側の部位には、リング溝110cが形成されている。リング溝110cの深さは第1ボルト21のリング溝232cの深さと同じである。また、リング溝110cの底面とリング溝232cの底面は互いに同じ外径を有する。なお、リング溝110cの深さは、第1挿入棒110の軸線を基準としたリング溝110cの径方向寸法であり、リング溝232cの深さは、第1ボルト21の軸線を基準としたリング溝232cの径方向寸法である。
【0044】
図4で例示される位置合わせ治具1は第1連結部材41をさらに備える。第1連結部材41は、第1軸端面25と第1挿入棒端面111とが互いに摺動可能となるように第1ボルト21と第1挿入棒110を連結させる。第1連結部材41は、第1ボルト21および第1挿入棒110に対して離脱可能に取り付けられており、より具体的には、リング溝232c,110cに離脱可能に取り付けられている。本例では、第1挿入棒110と第1ボルト21を基準とした径方向の外側から第1連結部材41を取り付けることが可能である。
【0045】
上記のような構成が採用されることで得られる技術的な利点について、
図2A、
図4、
図5を参照して説明する。第1ボルト21が締め込まれる場合、第1軸端面25と第1挿入棒端面111が互いに摺動するため、第1ボルト21が回転しても第1挿入棒110は連れ回りを起こしにくい。これにより、第1ボルト21の回転力と直動力のうち直動力のみが第1挿入棒110に伝わり易く、第1挿入棒110は回転位置を変えることなく規定方向に移動して建材孔部8を押しのけることができる。よって、位置合わせを行う際に建材9Bが第1挿入棒110を中心に回転してしまうのを回避できる。
【0046】
さらに、
図2Aで示される第1挿入棒110が建材孔部8を押しのけながら規定方向に移動する際には(矢印D)、第1ボルト21の軸心に対して第1挿入棒110の軸心を偏心させようとする力が発生する。一例を挙げると、第1挿入棒110の先端部には、上述したように第2傾斜面32から傾きを生じさせるような反力が作用する。別の例を挙げると、第1ボルト21による規定方向の力が、第1挿入棒110の心からずれて加力される場合には、第1挿入棒110にはずれによる曲げる力がかかって座屈する虞がある。
【0047】
この点、本実施形態では、
図5に示すように、第1挿入棒端面111が第1軸端面25に対して摺動して、第1挿入棒110が規定方向に対して傾くことができる(この傾きは、規定方向に亘って第1挿入棒110で生じる。)。これにより、第1挿入棒110に作用する上記の力を逃がすことができるため、第1挿入棒110にかかる負荷を低減でき、第1挿入棒110の破損を回避できる。
【0048】
他の実施形態に係る第1軸端面25は、第1螺合孔部13から離れる方向に向かって凸状となる湾曲形状を呈してもよい。この場合、第1挿入棒端面111は、第1螺合孔部13から離れる方向に向かって凹状となる湾曲形状を呈するが、第1軸端面25と第1挿入棒端面111とが互いに摺動できることに変わりはなく、第1挿入棒110の回転を抑制できるという上記の利点、及び、第1挿入棒110で発生する反力を逃がすことができるという上記の利点はいずれも得られる。
【0049】
さらに、第1ボルト21と第1挿入棒110に対して離脱可能な第1連結部材41が設けられることで、建材孔部8の位置合わせ作業の開始前に、第1螺合孔部13に螺合した第1ボルト21を、第1連結部材41を用いて第1挿入棒110を連結させることができる。つまり、第1挿入棒110が連結した状態にある第1ボルト21を第1螺合孔部13に差し込む作業を不要にできるので、位置合わせ作業をより簡易に行うことができる。
【0050】
また、第1挿入棒110および第2挿入棒220をそれぞれ、第1ボルト21および第2ボルト22から切り離した状態で建材孔部8に挿入した後に、第1挿入棒110と第1ボルト21の装着、および、第2挿入棒220と第2ボルト22の装着を行うことができる。従って、建材孔部8の位置合わせを行う際の第1ボルト21および第2ボルト22の回転量(即ち、第1挿入棒110と第2挿入棒220の規定方向における移動量)を低減できる。よって、第1挿入棒110および第2挿入棒220をはじめとする、位置合わせ治具1を構成する可動部品の規定方向における長さを短くでき、位置合わせ治具1を小型化できる。
【0051】
図6~
図8を参照し、第1挿入棒110の詳説を続ける。第1挿入棒110は、規定方向に沿って視たとき、第1傾斜面31とは反対側に向かって凸となる第1湾曲面112をさらに含む。第1湾曲面112は、第1傾斜面31が配置される規定方向範囲に少なくとも配置される。第1湾曲面112の曲率半径は、建材孔部8の半径と略同じである。
【0052】
上記構成によれば、第1湾曲面112が、規定方向に長さを有する建材孔部8Bに対して面接触できる(
図2A参照)。これにより、スライドさせるための力が建材孔部8Bに伝わり易く、位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0053】
さらに、第1挿入棒110は、第1湾曲面112と第1傾斜面31とを接続する一対の第1接続面113をさらに含む。規定方向に沿って視たとき、一対の第1接続面113は、第1仮想円91よりも内側に位置する。ここで、第1仮想円91とは、第1挿入棒110の軸心を中心とした半径が第1湾曲面112の曲率半径と同じになる仮想的な円である。図示される例では、第1接続面113は平坦面であるが、本発明はこれに限定されず、湾曲形状を呈してもよい。例えば、第1接続面113は、第1挿入棒110に軸心側に向かって凹む凹状湾曲面であってもよいし、軸心から遠ざかる方向側に向かって凸となる凸状湾曲面であってもよい。
【0054】
上記構成によれば、第1接続面113が第1仮想円91の内側に位置する分だけ第1挿入棒110を細くできるので、位置ずれした複数の建材孔部8に第1挿入棒110を差し込む際に、第1挿入棒110が建材孔部8Bに引っ掛からない。例えば、第1挿入棒110を差し込む際には、
図8で示す第1挿入棒110の先端部がはじめに差し込まれることになるが、第1接続面113が第1仮想円91の内側に位置する分だけ先端部を細くき、先端部と建材孔部8Bとの引っ掛かりを回避できるので、位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0055】
図9は、幾つかの実施形態に係る第1挿入棒110を示す概略図である。第1傾斜面31には、規定方向に沿って延在する複数の第1縦溝115が形成されている。第1縦溝115の延在方向は、第1傾斜面31の長手方向と平行である。また、複数の第1縦溝115は、第1傾斜面31の幅方向に沿って間隔を空けて配置されている。
【0056】
上記構成によれば、第1傾斜面31と第2傾斜面32との間で発生する溝の凹凸による抵抗によりずれを抑制することができるので、第1挿入棒110が規定方向の他方側に移動する場合において、第1傾斜面31が第2傾斜面32に対して幅方向にずれるのを抑制でき、スライドさせるために建材孔部8Bに伝わる力が逃げるのを回避できる。これにより、建材孔部8Bの位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0057】
<第2ボルト22及び第2挿入棒220の詳細>
図10に示すように、第2ボルト22の第2軸部24は、ねじ山が形成されるねじ軸部241と、ねじ軸部241の先端部に接続されると共に第2挿入棒220と当接する当接軸部242とを含む。当接軸部242はねじ軸部241よりも小径である。また、当接軸部242のねじ軸部241側の部位にはリング溝242cが形成されている。リング溝242cは、第2ボルト22の軸線を中心とする周方向の全長に亘り形成されている。当接軸部242の第2挿入棒220側の端面である第2軸端面26は、第2螺合孔部14に向かって凹んだ湾曲形状を呈する。
【0058】
他方で、第2挿入棒220の第2ボルト22側の端面である第2挿入棒端面221は、第2ボルト22の第2軸端面26に対面して当接する湾曲形状を呈する。
図10で例示される第2挿入棒端面221は、第2螺合孔部14に向かって凸状に湾曲している。さらに、第2挿入棒220の第2ボルト22側の部位には、リング溝220cが形成されている。リング溝220cの深さは第2ボルト22のリング溝242cの深さと同じである。また、リング溝220cの底面とリング溝242cの底面は互いに同じ外径を有する。ただし、両底面の外径は同じでなくてもよく、いずれか一方の底面の外径がいずれか他方の底面の外径よりも大きくてもよい。なお、リング溝220cの深さは、第2挿入棒220の軸線を基準としたリング溝220cの径方向寸法であり、リング溝242cの深さは、第2ボルト22の軸線を基準としたリング溝232cの径方向寸法である。
【0059】
図10で例示される位置合わせ治具1は第2連結部材42をさらに備える。第2連結部材42は、第2軸端面26と第2挿入棒端面221とが互いに摺動可能となるように第2ボルト22と第2挿入棒220を連結させる。第2連結部材42は、第2ボルト22および第2挿入棒220に対して離脱可能に取り付けられており、より具体的には、リング溝242c,220cに離脱可能に取り付けられている。本例では、第2挿入棒220と第2ボルト22を基準とした径方向の外側から第2連結部材42を取り付けることが可能である。
【0060】
上記のような構成が採用されることで得られる技術的な利点を、
図2Bと
図10を参照して説明する。第2ボルト22が締め込まれる場合、第2軸端面26と第2挿入棒端面221が互いに摺動するため、第2ボルト22が回転しても第2挿入棒220は連れ回りを起こしにくい。これにより、第2ボルト22の回転力と直動力のうち直動力のみが第2挿入棒220に伝わり易く、第2挿入棒220は回転位置を変えることなく規定方向に移動して建材孔部8を押しのけることができる。よって、位置合わせを行う際に建材9Bが第2挿入棒220を中心に回転してしまうのを回避できる。
【0061】
さらに、
図2Bで示される第2挿入棒220が建材孔部8を押しのけながら移動する際には(矢印U)、第2ボルト22の軸心に対して第2挿入棒220の軸心を偏心させようとする力が作用する。当該力の詳細は、第1挿入棒110と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
本実施形態では第2挿入棒端面221が第2軸端面26に対して摺動して、第2挿入棒220が規定方向に対して傾くことができる(詳細な図示は省略するが、
図5で示す第1挿入棒110と同様な傾き現象がおこる。)。これにより、第2ボルト22の軸心に対して第2挿入棒220の軸心を偏心させようとする力を逃がすことができるため、第2挿入棒220にかかる負荷を低減でき、第2挿入棒220の破損を回避できる。
【0063】
なお、第2軸端面26は、第2螺合孔部14から離れる方向に向かって凸状となる湾曲形状を呈してもよい。この場合、第2挿入棒端面221は、第2螺合孔部14から離れる方向に向かって凹状となる湾曲形状を呈するが、第2軸端面26と第2挿入棒端面221とが互いに摺動できることに変わりはなく、第2挿入棒220の回転を抑制できるという上記の利点、及び、第2挿入棒220を偏心させようとする力を逃がすことができるという上記の利点はいずれも得られる。
【0064】
さらに、第2ボルト22と第2挿入棒220に対して離脱可能な第2連結部材42が設けられることで、建材孔部8の位置合わせ作業の開始前に、第2螺合孔部14に螺合した第2ボルト22を、第2連結部材42を用いて第2挿入棒220を連結させることができる。つまり、第2挿入棒220が連結した状態にある第2ボルト22を第2螺合孔部14に差し込む作業を不要にできるので、位置合わせ作業をより簡易に行うことができる。
【0065】
図11、
図12に示すように、第2挿入棒220は、規定方向に沿って視たとき、第2傾斜面32とは反対側に向かって凸となる第2湾曲面222をさらに含む。第2湾曲面222は、第2傾斜面32が配置される規定方向範囲に少なくとも配置される。第2湾曲面222の曲率半径は、建材孔部8の半径と略同じである。
【0066】
上記構成によれば、第2湾曲面222が、規定方向に長さを有する建材孔部8Bに対して面接触できる(
図2B参照)。これにより、スライドさせるための力が建材孔部8Bに伝わり易く、位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0067】
さらに、第2挿入棒220は、第2湾曲面222と第2接続面223とを接続する一対の第2接続面223をさらに含む。規定方向に沿って視たとき、一対の第2接続面223は、第2仮想円92よりも内側に位置する。ここで、第2仮想円92とは、第2挿入棒220の軸心を中心とした半径が第2湾曲面222の曲率半径と同じになる仮想的な円である。図示される例では、第2接続面223は平坦面であるが、本発明はこれに限定されず、湾曲形状を呈してもよい。例えば、第2接続面223は、第2挿入棒220に軸心側に向かって凹む湾曲面であってもよいし、軸心から遠ざかる方向側に向かって凸となる湾曲面であってもよい。
【0068】
上記構成によれば、第2接続面223が第2仮想円92の内側に位置する分だけ第2挿入棒220を細くできるので、位置ずれした複数の建材孔部8に第2挿入棒220を差し込む際に、第2挿入棒220が建材孔部8Bに引っ掛からない。よって、位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0069】
図13は、幾つかの実施形態に係る第2挿入棒220を示す概略図である。第2傾斜面32には、規定方向に沿って延在する複数の第2縦溝225が形成されている。第2縦溝225の延在方向は、第2傾斜面32の長手方向と平行である。また、複数の第2縦溝225は、第2傾斜面32の幅方向に沿って間隔を空けて配置されている。
【0070】
上記構成によれば、第2傾斜面32と第1傾斜面31との間で発生する摩擦力を大きくすることができるので、第2挿入棒220が規定方向の他方側に移動する場合において、第2傾斜面32が第1傾斜面31に対して幅方向にずれるのを抑制でき、スライドさせるために建材孔部8Bに伝わる力が逃げるのを回避できる。これにより、建材孔部8Bの位置合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0071】
<変形例>
図1で示される位置合わせ治具1は、第2螺合孔部14および第2ボルト22を備えなくてもよく、第2挿入棒220は第2突出部12と一体的に形成されていてもよい。この場合であっても、第1ボルト21を締め込めば、第1挿入棒110は第1傾斜面31を第2傾斜面32に対して摺動させながら移動できるので、建材孔部8の位置合わせを行うことができる。第1ボルト21と第1挿入棒110とは互いに摺動可能となるように第1連結部材41を介して連結する代わりに、規定方向と角度を持って第1挿入棒110が第1ボルト21に対して回転できるよう、第1連結部材41は第1ボルト21と第1挿入棒110を連結させてもよい。同様の変形例が第2連結部材42に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 :位置合わせ治具
8,8A,8B :建材孔部
9,9A,9B :建材
10 :治具本体
11 :第1突出部
12 :第2突出部
13 :第1螺合孔部
14 :第2螺合孔部
15 :延設部
21 :第1ボルト
22 :第2ボルト
23 :第1軸部
24 :第2軸部
25 :第1軸端面
26 :第2軸端面
31 :第1傾斜面
32 :第2傾斜面
41 :第1連結部材
42 :第2連結部材
91 :第1仮想円
92 :第2仮想円
110 :第1挿入棒
110c :リング溝
111 :第1挿入棒端面
112 :第1湾曲面
113 :第1接続面
115 :第1縦溝
220 :第2挿入棒
220c :リング溝
221 :第2挿入棒端面
222 :第2湾曲面
223 :第2接続面
225 :第2縦溝
231 :ねじ軸部
232 :当接軸部
232c :リング溝
241 :ねじ軸部
242 :当接軸部
242c :リング溝