(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012252
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20250117BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60C11/03 C
B60C11/03 100B
B60C11/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114969
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 勇一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC33
3D131EB03U
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB24V
3D131EB24W
3D131EB28V
3D131EB28W
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB42W
3D131EB43W
3D131EB44W
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB86V
3D131EB86W
3D131EC02V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】氷雪性能やウェット性能を確保しつつ耐摩耗性能を向上させること。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に沿って直線状に形成される周方向主溝31と、タイヤ周方向に沿って形成されてタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部32Aがタイヤ周方向にジグザグ状に連続する周方向溝32と、周方向溝32と周方向主溝31との間に設けられて傾斜部32Aのタイヤ幅方向に隣接し傾斜部32Aとはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜する周方向補助溝33と、傾斜部32Aと周方向補助溝33との両端32Aa,33aを連結してタイヤ周方向に連続するブロックを区画する幅方向連結溝34と、周方向補助溝33の中央部と周方向主溝31とを連結し幅方向連結溝34とは不一致に配置される幅方向補助溝35と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って直線状に形成される周方向主溝と、
タイヤ周方向に沿って形成されてタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部がタイヤ周方向にジグザグ状に連続する周方向溝と、
前記周方向溝と前記周方向主溝との間に設けられて前記傾斜部のタイヤ幅方向に隣接し前記傾斜部とはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜する周方向補助溝と、
前記傾斜部と前記周方向補助溝との両端を連結してタイヤ周方向に連続するブロックを区画する幅方向連結溝と、
前記周方向補助溝の中央部と前記周方向主溝とを連結し前記幅方向連結溝とは不一致に配置される幅方向補助溝と、
を含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記周方向主溝と連結する前記幅方向補助溝は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の対向側に連結するラグ溝と対向せずタイヤ周方向で相互に不一致に配置される、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記幅方向連結溝は、前記周方向溝および前記周方向補助溝に連結し、前記周方向主溝および前記周方向溝で区画される陸部の内部で終端する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記傾斜部は、タイヤ周方向に対する角度αが-20°≦α≦-3°もしくは3°≦α≦20°の範囲である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記周方向補助溝は、タイヤ周方向に対する角度βが3°≦β≦30°もしくは-30°≦α≦-3°の範囲である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記傾斜部の溝深さd1と、前記周方向補助溝の溝深さd2とが、0.5≦d2/d1≦0.7の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記傾斜部の溝深さd1と、前記幅方向連結溝の溝深さd3とが、0.7≦d3/d1≦0.9の関係を満たす、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記傾斜部の溝幅W1と、前記周方向補助溝の溝幅W2とが、3.0mm≦W1≦10.0mm、1.5mm≦W2≦6.0mmの範囲である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記幅方向連結溝の溝幅W3と、前記幅方向補助溝の溝幅W4とが、1.5mm≦W3≦5.0mm、2.0mm≦W4≦7.0mmの範囲である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記周方向溝と前記周方向主溝とで区画される陸部に、タイヤ幅方向に沿って延びる複数のサイプが配置される、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記サイプは、前記幅方向連結溝と前記幅方向補助溝との少なくとも一方に対して平行に配置される、
請求項10に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のタイヤは、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ周方向に延びる周方向細溝と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝と、でブロック状の陸部が区画され、周方向溝および周方向細溝は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅することにより相対的に長さが異なる長尺部と短尺部を有するジグザグ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、スタッドレスタイヤは、氷上性能が重要視されてきたが、雪上性能の向上も求められている。一般的に、氷上性能を向上させるには凝着摩擦力の向上が必要であるが、そのためには溝面積比減などによる実接地面積向上の手法が行われており、その手法では雪上性能やウェット性能が悪化してしまう欠点がある。また、近年のスタッドレスタイヤでは、耐摩耗性の向上も求められている。
【0005】
この発明は、パターン構成の最適化により、氷雪性能やウェット性能を確保しつつ耐摩耗性能を向上させることのできるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るタイヤは、タイヤ周方向に沿って直線状に形成される周方向主溝と、タイヤ周方向に沿って形成されてタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部がタイヤ周方向にジグザグ状に連続する周方向溝と、前記周方向溝と前記周方向主溝との間に設けられて前記傾斜部のタイヤ幅方向に隣接し前記傾斜部とはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜する周方向補助溝と、前記傾斜部と前記周方向補助溝との両端を連結してタイヤ周方向に連続するブロックを区画する幅方向連結溝と、前記周方向補助溝の中央部と前記周方向主溝とを連結し前記幅方向連結溝とは不一致に配置される幅方向補助溝と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、氷雪性能やウェット性能を確保しつつ耐摩耗性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分拡大図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、実施形態の空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、タイヤ子午線方向の断面(子午断面図)とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0011】
実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すように、トレッド部2と、サイドウォール部8と、ビード部10と、を有する。
【0012】
トレッド部2は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分に配置される。トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム4を有している。トレッド部2は、その表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時において路面と接触する部分が、トレッド接地面3として形成される。トレッド接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成する。トレッド部2は、そのタイヤ幅方向の両外側端にショルダー部5が構成される。
【0013】
サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側であって、ショルダー部5のタイヤ径方向内側に配置される。サイドウォール部8は、空気入りタイヤ1において、タイヤ幅方向の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
【0014】
ビード部10は、各サイドウォール部8のタイヤ径方向内側に配置される。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ幅方向の両側2箇所に配設される。各ビード部10は、ビードコア11が設けられ、ビードコア11のタイヤ径方向外側にビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材である。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材である。
【0015】
空気入りタイヤ1は、その内部構造として、ベルト層14と、カーカス層13と、を有する。
【0016】
ベルト層14は、トレッド部2のトレッドゴム4に配置される。ベルト層14は、複数のベルト141、142と、ベルトカバー143とが積層される多層構造によって構成されている。ベルト層14は、本実施形態では、2層のベルト141、142が積層されている。
【0017】
ベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロンなどの有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。ベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト141、142は、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造(交差ベルト)として構成される。
【0018】
ベルトカバー143は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロンなどの有機繊維材から成る複数のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。ベルトカバー143は、タイヤ周方向に対するベルトカバーコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、0°以上10°以下)になっている。ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材を、2層のベルト141、142のタイヤ径方向外側において、タイヤ周方向に螺旋状に巻き付けることにより構成される。
【0019】
カーカス層13は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向内側、サイドウォール部8、およびビード部10に連続して配置される。カーカス層13は、タイヤ幅方向の両端部が両ビード部10のビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止され、タイヤ周方向にトロイダル状に架け回されてタイヤの骨格を構成する。カーカス層13は、1枚のカーカスプライからなる単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層してなる多層構造を有する。カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどの有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成される。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設される。
【0020】
カーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向外側は、リムクッションゴム17が配置される。リムクッションゴム17は、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成する。カーカス層13の内側は、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成される。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成する。
【0021】
実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1および
図2に示すように、トレッド部2のトレッド接地面3にトレッドパターンを有する。ここで、トレッドパターンにおける各寸法は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「MEASURING RIM」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0023】
溝幅(開口溝幅とも言う)は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド接地面3における溝開口部の対向する溝壁間の距離の最大値として測定される。また、溝幅は、溝開口部に切欠部あるいは面取部を有する構成では、タイヤ幅方向およびタイヤ径方向に平行な断面においてトレッド接地面3の延長線と溝壁の延長線との交点を端点として測定される。
【0024】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド接地面3から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝深さは、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して測定される。
【0025】
実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1から
図4に示すように、トレッドパターンとして、主に、周方向主溝31と、周方向溝32と、を含む。
【0026】
周方向主溝31は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ全周に亘って連続的に設けられた環状構造を有する。周方向主溝31は、タイヤ赤道面CLを間に挟むようにしてタイヤ幅方向に2本並列して設けられる。周方向主溝31は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝として定義される。周方向主溝31は、実施形態では、
図4に示すように、溝幅W5が4.0mm以上15.0mm以下、溝深さd5が6.0mm以上10.0mm以下とされる。
【0027】
周方向溝32は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ全周に亘って連続的に設けられた環状構造を有する。周方向溝32は、2本の周方向主溝31のタイヤ幅方向内側において、タイヤ赤道面CLを間に挟むようにしてタイヤ幅方向に2本並列して設けられる。周方向溝32は、
図3に示すように、タイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部32Aが、その端32Aaを連通して接続されることで、タイヤ周方向に沿ってジグザグ状に連続して形成される。各傾斜部32Aは、タイヤ周方向に沿って屈曲部を有さない直線状に設けられ、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。周方向溝32は、各傾斜部32Aがなすジグザグ度合い(傾斜部の接続部分のズレ寸法/傾斜部長さ)が0.05以上0.15以下の関係とされる。周方向溝32の傾斜部32Aは、実施形態では、
図3に示すタイヤ周方向に対する傾斜の角度αにおいて、一方向の角度α1が-20°≦α1(α)≦-3°の範囲であり、逆の他方向の角度α2が3°≦α2(α)≦20°の範囲である。このように、周方向溝32は、傾斜部32Aがタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜して設けられる。周方向溝32は、実施形態では、
図4に示すように、傾斜部32Aの溝幅W1が3.0mm以上10.0mm以下、溝深さd1が6.0mm以上10.0mm以下とされる。
【0028】
実施形態の空気入りタイヤ1は、2本の周方向主溝31および2本の周方向溝32により、トレッド部2に複数の陸部20が区画される。陸部20は、センター陸部21と、セカンド陸部22と、ショルダー陸部23と、を有する。センター陸部21は、2本の周方向溝32の間でタイヤ赤道面CLを含みタイヤ周方向に沿ってリブ状に1列形成される。セカンド陸部22は、1本の周方向溝32と1本の周方向主溝31の間で区画され、センター陸部21のタイヤ幅方向両外側においてそれぞれタイヤ周方向に沿ってリブ状に1列で計2列形成される。ショルダー陸部23は、各周方向主溝31のタイヤ幅方向外側に区画され、各セカンド陸部22のタイヤ幅方向外側にそれぞれタイヤ周方向に沿ってリブ状に1列で計2列形成される。
【0029】
空気入りタイヤ1は、セカンド陸部22に、周方向補助溝33、幅方向連結溝34、および幅方向補助溝35が形成される。また、空気入りタイヤ1は、ショルダー陸部23に、ラグ溝36が形成される。また、空気入りタイヤ1は、陸部20に、サイプ37が形成される。
【0030】
周方向補助溝33は、セカンド陸部22において、周方向主溝31と周方向溝32との間に設けられる。周方向補助溝33は、主にタイヤ周方向に沿って屈曲部を有さない直線状に設けられ、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。周方向補助溝33は、周方向溝32の各傾斜部32Aのタイヤ幅方向にそれぞれ1本ずつ隣接して設けられる。周方向補助溝33は、両端33aがセカンド陸部22の内部で終端して設けられる。周方向補助溝33は、傾斜部32Aとはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜して設けられる。周方向補助溝33は、実施形態では、
図3に示すタイヤ周方向に対する傾斜の角度βにおいて、一方向の角度β1が3°≦β1(β)≦30°の範囲であり、逆の他方向の角度β2が-30°≦α≦-3°の範囲である。このように、周方向補助溝33は、周方向溝32の傾斜部32Aとは、タイヤ周方向に対して逆方向に傾斜して設けられる。また、周方向補助溝33は、実施形態では、
図4に示すように、溝幅W2が1.5mm以上6.0mm以下、溝深さd2が3.0mm以上7.0mm以下とされる。
【0031】
幅方向連結溝34は、セカンド陸部22において、主にタイヤ幅方向に沿って屈曲部を有さない直線状に設けられ、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。各幅方向連結溝34は、タイヤ幅方向に対して所定方向に傾斜し、それぞれ平行に設けられる。各幅方向連結溝34は、周方向溝32の傾斜部32Aの両端32Aaと、周方向補助溝33の両端33aをそれぞれ連結して設けられる。各幅方向連結溝34は、傾斜部32Aの端32Aaおよび周方向補助溝33の端33aに連結する自身の両端34aがセカンド陸部22の内部で終端して設けられる。そして、幅方向連結溝34を設けることで、周方向溝32の1本の傾斜部32Aと、1本の周方向補助溝33と、その両端34a,33aを連結するタイヤ周方向に並ぶ2本の幅方向連結溝34と、により、台形ブロック状の第一小陸部22Aをセカンド陸部22の内部に形成する。第一小陸部22Aは、幅方向連結溝34を境にしてタイヤ周方向に複数が連続して設けられる。幅方向連結溝34は、実施形態では、
図4に示すように、溝幅W3が1.5mm以上5.0mm以下、溝深さd3が4.0mm以上9.0mm以下とされる。
【0032】
幅方向補助溝35は、セカンド陸部22において、主にタイヤ幅方向に沿って屈曲部を有さない直線状に設けられ、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。各幅方向補助溝35は、タイヤ幅方向に対して所定方向に傾斜し、それぞれ平行に設けられる。各幅方向補助溝35は、各幅方向連結溝34と平行に設けられる。各幅方向補助溝35は、各周方向補助溝33の中央と周方向主溝31とを連結して設けられる。各幅方向補助溝35は、各周方向補助溝33の中央および周方向主溝31に連結する自身の両端35aがセカンド陸部22の内部で終端して設けられる。幅方向補助溝35は、周方向補助溝33の中央に連結するため、周方向補助溝33の端33aに連結する幅方向連結溝34とは直接連結せず不一致に配置される。そして、幅方向補助溝35を設けることで、周方向主溝31と、タイヤ周方向に並ぶ2本の周方向補助溝33およびこれらを間で連結する幅方向連結溝34の一部と、タイヤ周方向に並ぶ2本の幅方向補助溝35と、により、周方向主溝31の対向側が2点の屈曲部を有するブロック状の第二小陸部22Bをセカンド陸部22の内部に形成する。第二小陸部22Bは、幅方向補助溝35を境にしてタイヤ周方向に複数が連続して設けられる。幅方向補助溝35は、実施形態では、
図4に示すように、溝幅W4が2.0mm以上7.0mm以下、溝深さd4が6.0mm以上10.0mm以下とされる。
【0033】
ラグ溝36は、ショルダー陸部23において、主にタイヤ幅方向に沿って屈曲部を有さない直線状または円弧状に設けられ、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。各ラグ溝36は、それぞれ平行に設けられる。各ラグ溝36は、一方の端36aが周方向主溝31と連結して設けられる。各ラグ溝36と各幅方向補助溝35は、周方向主溝31のタイヤ幅方向の対向側に連結する相互の端36a,35aが対向せずタイヤ周方向で相互に不一致に配置される。各ラグ溝36と各幅方向補助溝35は、タイヤ周方向で1本ずつ互い違いに配置される。なお、ラグ溝36と幅方向補助溝35が、溝幅の中央同士で一致するときの溝位置関係を0%および100%としたとき、それぞれの溝位置関係は30%以上70%以下の範囲となる。ラグ溝36は、実施形態では、トレッド接地面3において、溝幅が2.5mm以上6.5mm以下、溝深さが2.5mm以上10.0mm以下とされる。
【0034】
サイプ37は、センター陸部21と、セカンド陸部22と、ショルダー陸部23と、を含む陸部20の全体に設けられる。サイプ37は、主にタイヤ幅方向に沿って延び、タイヤ周方向に複数が並んで設けられる。サイプ37は、タイヤ周方向に繰り返し屈曲して振幅することにより、ジグザグ状または波状に形成される。各サイプ37は、端が陸部20の内部で終端していてもよく、上述した他の溝に連結し開口していてもよい。実施形態の空気入りタイヤ1は、このように陸部20にサイプ37が配置されることにより、氷雪路面での走行性能を確保したスタッドレスタイヤ、または、冬季の走行性能を確保したオールシーズンタイヤに適用される。
【0035】
サイプ37は、トレッド接地面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、規定内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しない場合があるが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部20の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、あるいは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部20の変形によって互いに接触するものをいう。本実施形態では、サイプ37は、溝幅が1.0mm以下になっており、溝深さが1.5mm以上9.0mm以下とされる。
【0036】
また、サイプ37は、いわゆる三次元サイプであってもよく、二次元サイプであってもよい。ここでいう三次元サイプは、サイプ37の長さ方向を法線方向とする断面視(サイプ37の幅方向で、且つ、深さ方向を含む断面視)、およびサイプ37の深さ方向を法線方向とする断面視(サイプ37の幅方向で、且つ、長さ方向を含む断面視)の双方にて、サイプ37の幅方向に振幅をもつ屈曲形状の壁面を有するサイプ37である。また、二次元サイプは、サイプ37の長さ方向を法線方向とする任意の断面視(サイプ37の幅方向で、且つ、深さ方向を含む断面視)にて、ストレート形状の壁面を有するサイプ37をいう。
【0037】
実施形態の空気入りタイヤ1は、上述した溝31,32,33,34,35,36やサイプ37以外に溝を有さない。
【0038】
実施形態の空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを境にした対称のトレッドパターンを構成している。そして、実施形態の空気入りタイヤ1は、周方向溝32の傾斜部32Aと周方向補助溝33とが互いに逆向きに傾斜し、第一小陸部22Aがタイヤ周方向において相互が窄まる側と、相互が拡がる側とを有する。実施形態の空気入りタイヤ1は、周方向溝32の傾斜部32Aと周方向補助溝33との相互が窄まる側を踏み込み側(あるいはトゥ側)とし、相互が拡がる側を蹴り出し側(あるいはヒール側)とするように回転方向を規定することで、氷雪路面でのトラクション効果を顕著に得ることができる。なお、回転方向の規定は、車両装着時の車両前進時における回転方向として定義される。また、回転方向は、空気入りタイヤ1が、タイヤ回転方向を示す回転方向表示部(図示省略)を備えることで示される。回転方向の表示部は、例えば、空気入りタイヤ1のサイドウォール部8に付されたマークや凹凸によって構成される。
【0039】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2のトレッド接地面3のうち下方に位置するトレッド接地面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
【0040】
また、濡れた路面を走行する際には、トレッド接地面3と路面との間の水が各溝31,32,33,34,35,36やサイプ37に入り込み、トレッド接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド接地面3は路面に接地し易くなり、トレッド接地面3と路面との間の摩擦力により、ウェット性能を有し、車両は走行することが可能になる。
【0041】
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド接地面3で押し固めると共に、路面上の雪が各溝31,32,33,34,35,36に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすると、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が、空気入りタイヤ1と雪との間で発生する。雪上路面を走行する際には、この雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を路面に伝達することができ、スノートラクション性を確保することができ、雪上性能を有する。これにより、車両は雪上路面での走行が可能になる。
【0042】
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、各溝31,32,33,34,35,36やサイプ37のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、各溝31,32,33,34,35,36やサイプ37のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ37で吸水し、氷上路面とトレッド接地面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面とトレッド接地面3は接触し易くなる。これにより、トレッド接地面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、氷上性能を有する。これにより、車両は氷上路面での走行が可能になる。
【0043】
トレッド部2に形成される各溝31,32,33,34,35,36やサイプ37は、これらのように濡れた路面や雪上路面、氷上路面の走行時における走行性能の確保に寄与するため、例えば、濡れた路面での走行性能であるウェット性能を向上させるためには、トレッド部2の溝面積を増加させることが有効である。つまり、各溝31,32,33,34,35,36などの溝の面積である溝面積を増加させた場合は、濡れた路面を走行した際に、路面上の水が溝に入り込み易くなるため、トレッド接地面3と路面との間の水の排水性を高めることができ、ウェット性能を向上させることができる。
【0044】
また、溝面積を増加させることは、雪上路面での走行性能である雪上性能の向上にも有効になっている。つまり、溝面積を増加させた場合は、雪上路面の走行時に、各溝31,32,33,34,35,36に入り込ませることのできる雪の量を増加させることができるため、溝内に入り込んだ雪に対して作用する雪柱せん断力を増加させることができる。これにより、雪上路面の走行時におけるスノートラクション性を向上させることができ、雪上性能を向上させることができる。
【0045】
ここで、トレッド部2の溝面積を増加させた場合、各溝31,32,33,34,35,36によって区画される陸部20は、溝面積の増加に伴って体積が減少する。陸部20の体積が減少した場合、陸部20は、剛性が低下するが、陸部20の剛性が低下すると、荷重が作用した際に陸部20は変形し易くなり、倒れ込み易くなる。陸部20が倒れ込むと、倒れ込んだ陸部20の接地面積が低減するため、走行性能を確保し難くなるおそれがある。
【0046】
例えば、氷上路面の走行時は、溝のエッジ成分によるエッジ効果の他に、氷上路面にトレッド接地面3が接地することによる摩擦力も重要になる。しかし、トレッド部2の溝面積を増加させることにより陸部20の剛性が低下した場合、陸部20は荷重が作用した際に倒れ込み易くなるため、接地面積が低減し易くなり、摩擦力による走行性能を確保し難くなるおそれがある。このため、トレッド部2の溝面積を増加させることにより陸部20の剛性が低下した場合、氷上路面の走行時における制動時に陸部20が倒れ込み易くなることにより、接地面積が低減し易くなり、氷上路面での制動性能が低下し易くなるおそれがある。
【0047】
実施形態の空気入りタイヤ1は、その特徴として、タイヤ周方向に沿って直線状に形成される周方向主溝31と、タイヤ周方向に沿って形成されてタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部32Aがタイヤ周方向にジグザグ状に連続する周方向溝32と、周方向溝32と周方向主溝31との間に設けられて傾斜部32Aのタイヤ幅方向に隣接し傾斜部32Aとはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜する周方向補助溝33と、傾斜部32Aと周方向補助溝33との両端32Aa,33aを連結してタイヤ周方向に連続するブロックを区画する幅方向連結溝34と、周方向補助溝33の中央部と周方向主溝31とを連結し幅方向連結溝34とは不一致に配置される幅方向補助溝35と、を含む。
【0048】
実施形態の空気入りタイヤ1によれば、周方向溝32をジグザグ形状としてエッジ量を確保して氷上性能を得つつ、ジグザグ溝と逆向きの周方向補助溝33を設けてスノートラクションインデックス(STI)成分が特定の角度に偏ることなく雪中せん断力を向上させる。また、実施形態の空気入りタイヤ1によれば、周方向溝32と周方向補助溝33を幅方向連結溝34で連結し、且つ幅方向補助溝35で周方向補助溝33と周方向主溝31を連結することで、排水性を高めることができ、ウェット性能を向上させる。また、実施形態の空気入りタイヤ1によれば、幅方向補助溝35が幅方向連結溝34と一致しないようにすることで、陸部20(セカンド陸部22)の剛性低下を抑えて耐摩耗性能を向上させる。この結果、実施形態の空気入りタイヤ1は、氷雪性能やウェット性能を確保しつつ耐摩耗性能を向上できる。
【0049】
なお、実施形態の空気入りタイヤ1において、周方向補助溝33は、屈曲部を有さない直線状に形成されていることが好ましい。例えば、屈曲部は、エッジ量を増大させるが、その反面、陸部20(セカンド陸部22)の剛性低下が生じ得る。この点、この空気入りタイヤ1によれば、エッジ量は、ジグザグ形状の周方向溝32で確保し、周方向補助溝33を直線状に形成することで、陸部20(セカンド陸部22)の剛性低下を防いで耐摩耗性能を向上する。
【0050】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向主溝31と連結する幅方向補助溝35は、周方向主溝31のタイヤ幅方向の対向側に連結するラグ溝36と対向せずタイヤ周方向で相互に不一致に配置される。
【0051】
この空気入りタイヤ1によれば、幅方向補助溝35が周方向主溝31を境にしたラグ溝36一致しないようにすることで、陸部20(セカンド陸部22)の剛性低下を抑えて耐摩耗性能を向上させる。
【0052】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、幅方向連結溝34は、周方向溝32および周方向補助溝33に連結し、周方向主溝31および周方向溝32で区画される陸部20(セカンド陸部22)の内部で終端する。
【0053】
この空気入りタイヤ1によれば、幅方向連結溝34が終端することで、陸部20(セカンド陸部22)の剛性低下を抑えて耐摩耗性能を向上させる。
【0054】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、傾斜部32Aは、タイヤ周方向に対する角度αが-20°≦α≦-3°もしくは3°≦α≦20°の範囲である。
【0055】
この空気入りタイヤ1によれば、傾斜部32Aの角度αが±3゜を以上の場合、エッジ成分が得られ氷雪性能を向上させる。また、この空気入りタイヤ1によれば、傾斜部32Aの角度αが±20°以下の場合、傾斜が大きくなることの排水性の悪化を抑えてウェット性能を確保する。角度αは、好ましくは5°≦α≦10゜の範囲になるようにすることで、氷雪性能とウェット性能を向上できる。
【0056】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向補助溝33は、タイヤ周方向に対する角度βが3°≦β≦30°もしくは-30°≦α≦-3°の範囲である。
【0057】
この空気入りタイヤ1によれば、周方向補助溝33の角度βが±3°以上の場合、傾斜が小さいことによりエッジ成分が得られず氷雪性能が悪化する。エッジ成分が得られ氷雪性能を向上させる。また、この空気入りタイヤ1によれば、周方向補助溝33の角度βが±30°以下の場合、傾斜がブロック剛性の低下を抑えて耐摩耗性能を確保する。角度βは、好ましくは10°≦α≦20゜の範囲になるようにすることで、氷雪性能と耐摩耗性能を両立できる。
【0058】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、傾斜部32Aの溝深さd1と、周方向補助溝33の溝深さd2とが、0.5≦d2/d1≦0.7の関係を満たす。
【0059】
この空気入りタイヤ1によれば、d2/d1が0.5以上の場合、溝深さを確保でき排水性が得られるためウェット性能か向上する。また、この空気入りタイヤ1によれば、d2/d1が0.7以下の場合、ブロック剛性の低下を抑えて耐摩耗性能を確保する。d2/d1は、好ましくは0.55≦d2/d1≦0.65の範囲になるようにすることで、ウェット性能と耐摩耗性能を両立できる。
【0060】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、傾斜部32Aの溝深さd1と、幅方向連結溝34の溝深さd3とが、0.7≦d3/d1≦0.9の関係を満たす。
【0061】
この空気入りタイヤ1によれば、d3/d1が0.7以上の場合、溝深さを確保でき排水性が得られるためウェット性能か向上する。また、この空気入りタイヤ1によれば、d3/d1が0.9以下の場合、ブロック剛性の低下を抑えて耐摩耗性能を確保する。d3/d1は、好ましくは0.75≦d3/d1≦0.85の範囲になるようにすることで、ウェット性能と耐摩耗性能を両立できる。
【0062】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、傾斜部32Aの溝幅W1と、周方向補助溝33の溝幅W2とが、3.0mm≦W1≦10.0mm、1.5mm≦W2≦6.0mmの範囲である。
【0063】
この空気入りタイヤ1によれば、W1が3.0mm以上で、W2が1.5mm以上の場合、溝幅を確保でき排水性が得られるためウェット性能か向上する。また、この空気入りタイヤ1によれば、W1が10.0mm以下で、W2が6.0mm以下の場合、ブロック剛性の低下を抑えて耐摩耗性能を確保する。
【0064】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、幅方向連結溝34の溝幅W3と、幅方向補助溝35の溝幅W4とが、1.5mm≦W3≦5.0mm、2.0mm≦W4≦7.0mmの範囲である。
【0065】
この空気入りタイヤ1によれば、W3が1.5mm以上で、W4が2.0mm以上の場合、溝幅を確保でき排水性が得られるためウェット性能か向上する。また、この空気入りタイヤ1によれば、W3が5.0mm以下で、W4が7.0mm以下の場合、ブロック剛性の低下を抑えて耐摩耗性能を確保する。
【0066】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、周方向溝32と周方向主溝31とで区画されるセカンド陸部22に、タイヤ幅方向に沿って延びる複数のサイプ37が配置される。
【0067】
この空気入りタイヤ1によれば、サイプ37の配置によって氷上性能を向上でき、スタッドレスタイヤ、または、オールシーズンタイヤに適用できる。
【0068】
また、実施形態の空気入りタイヤ1では、サイプ37は、幅方向連結溝34と幅方向補助溝35との少なくとも一方に対して平行に配置される。
【0069】
この空気入りタイヤ1によれば、サイプ37を、幅方向連結溝34や幅方向補助溝35と平行に配置することで、エッジ成分を揃えるため、氷雪性能を向上できる。
【0070】
ところで、本実施形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤ1について説明した。この空気入りタイヤ1は、空気、窒素などの不活性ガス、およびその他の気体を充填することができる。しかし、本実施形態に記載された空気入りタイヤ1のトレッドパターンの構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例0071】
図5から
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、従来例の空気入りタイヤと、比較例の空気入りタイヤと、実施形態に係る実施例の空気入りタイヤと、について行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、氷上性能、雪上性能、ウェット性能、および耐偏摩耗性能についての試験を行った。
【0072】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Qサイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ15×6.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、排気量が1800ccの前輪駆動の評価車両に試験タイヤを装着して、空気圧を前輪240kPa、後輪240kPaに調整して評価車両で走行をすることにより行った。
【0073】
氷上性能の評価試験は、試験タイヤを装着した評価車両で、氷上路面のテストコースで制動試験を行い、制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、逆数を、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0074】
雪上性能の評価試験は、試験タイヤを装着した評価車両で、雪上路面のテストコースで制動試験を行い、制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、逆数を、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0075】
ウェット性能の評価試験は、試験タイヤを装着した評価車両で、水深1mmのウェット路面のテストコースで制動試験を行い、制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて、逆数を、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましく、97以上であることが耐摩耗性能との両立を達成するうえで好ましい。
【0076】
耐摩耗性能の評価試験は、試験タイヤを装着した評価車両で、乾燥したアスファルト舗装のテストコースを10000km走行後に摩耗量が測定される。そして、この測定結果に基づいて、逆数を、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0077】
従来例の空気入りタイヤは、直線状の周方向主溝、ジグザグ形状の周方向溝、周方向補助溝、幅方向連結溝、および幅方向補助溝を有し、周方向溝と周方向補助溝の傾斜が逆方向であるが、幅方向補助溝が幅方向連結溝と一致した構成である。
【0078】
比較例の空気入りタイヤは、直線状の周方向主溝、ジグザグ形状の周方向溝、周方向補助溝、幅方向連結溝、および幅方向補助溝を有し、幅方向補助溝が幅方向連結溝と不一致であるが、周方向溝と周方向補助溝の傾斜が同方向である。
【0079】
実施例の空気入りタイヤは、直線状の周方向主溝、ジグザグ形状の周方向溝、周方向補助溝、幅方向連結溝、および幅方向補助溝を有し、周方向溝と周方向補助溝の傾斜が逆方向であり、周方向溝と周方向補助溝の傾斜が同方向である。
【0080】
そして、試験結果に示すように、本実施例の空気入りタイヤは、従来例や比較例に対して氷上性能、雪上性能、ウェット制動性能、および耐摩耗性能が改善されていることが分かる。
【0081】
本開示は、以下の発明を含む。
[発明1]
タイヤ周方向に沿って直線状に形成される周方向主溝と、
タイヤ周方向に沿って形成されてタイヤ周方向に対して所定方向に傾斜する傾斜部がタイヤ周方向にジグザグ状に連続する周方向溝と、
前記周方向溝と前記周方向主溝との間に設けられて前記傾斜部のタイヤ幅方向に隣接し前記傾斜部とはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜する周方向補助溝と、
前記傾斜部と前記周方向補助溝との両端を連結してタイヤ周方向に連続するブロックを区画する幅方向連結溝と、
前記周方向補助溝の中央部と前記周方向主溝とを連結し前記幅方向連結溝とは不一致に配置される幅方向補助溝と、
を含む、
タイヤ。
[発明2]
前記周方向主溝と連結する前記幅方向補助溝は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の対向側に連結するラグ溝と対向せずタイヤ周方向で相互に不一致に配置される、
発明1に記載のタイヤ。
[発明3]
前記幅方向連結溝は、前記周方向溝および前記周方向補助溝に連結し、前記周方向主溝および前記周方向溝で区画される陸部の内部で終端する、
発明1または2に記載のタイヤ。
[発明4]
前記傾斜部は、タイヤ周方向に対する角度αが-20°≦α≦-3°もしくは3°≦α≦20°の範囲である、
発明1から3のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明5]
前記周方向補助溝は、タイヤ周方向に対する角度βが3°≦β≦30°もしくは-30°≦α≦-3°の範囲である、
発明1から4のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明6]
前記傾斜部の溝深さd1と、前記周方向補助溝の溝深さd2とが、0.5≦d2/d1≦0.7の関係を満たす、
発明1から5のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明7]
前記傾斜部の溝深さd1と、前記幅方向連結溝の溝深さd3とが、0.7≦d3/d1≦0.9の関係を満たす、
発明1から6のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明8]
前記傾斜部の溝幅W1と、前記周方向補助溝の溝幅W2とが、3.0mm≦W1≦10.0mm、1.5mm≦W2≦6.0mmの範囲である、
発明1から7のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明9]
前記幅方向連結溝の溝幅W3と、前記幅方向補助溝の溝幅W4とが、1.5mm≦W3≦5.0mm、2.0mm≦W4≦7.0mmの範囲である、
発明1から8のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明10]
前記周方向溝と前記周方向主溝とで区画される陸部に、タイヤ幅方向に沿って延びる複数のサイプが配置される、
発明1から9のいずれか1つに記載のタイヤ。
[発明11]
前記サイプは、前記幅方向連結溝と前記幅方向補助溝との少なくとも一方に対して平行に配置される、
発明10に記載のタイヤ。