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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025122523
(43)【公開日】2025-08-21
(54)【発明の名称】椅子、及び、下肢運動システム
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/28 20060101AFI20250814BHJP
   A47C 7/34 20060101ALI20250814BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20250814BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20250814BHJP
   A63B 22/04 20060101ALI20250814BHJP
   A63B 23/00 20060101ALI20250814BHJP
【FI】
A47C7/28 A
A47C7/34 Z
A47C7/62 Z
A47C7/18
A63B22/04
A63B23/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018084
(22)【出願日】2024-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 英祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 富夫
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084CA01
3B084JA06
3B084JC17
(57)【要約】
【課題】腰痛を緩和できる健康効果を高めた椅子を提供する。
【解決手段】椅子2は、2つの寛骨をそれぞれ支持する2つの寛骨支持バルーン5と、仙骨又は尾骨の何れか一方を支持する仙骨支持バルーン7と、を含む。2つの寛骨支持バルーン5は、仙骨支持バルーン7に対して相対的に揺動可能に構成されている。以上の構成によれば、2つの寛骨と仙骨の間の仙腸関節の可動性が改善されるので、仙腸関節の可動性がないために代償的に負担が増加していた腰部関節のメカニカルストレスが抑えられ、もって、腰痛が緩和される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの寛骨をそれぞれ支持する2つの第1支持部と、
仙骨又は尾骨の何れか一方を支持する第2支持部と、
を含み、
前記2つの第1支持部は、前記第2支持部に対して相対的に揺動可能に構成されている、
椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の椅子であって、
前記2つの第1支持部は、互いに相対的に揺動可能に構成されている、
椅子。
【請求項3】
請求項1に記載の椅子であって、
椅子本体と、
前記2つの第1支持部を前記椅子本体にそれぞれ連結する、2つの弾性連結部と、
を更に備え、
前記2つの弾性連結部の弾性変形により前記2つの第1支持部はピッチ方向及びロール方向に揺動可能に構成されている、
椅子。
【請求項4】
請求項1に記載の椅子であって、
前記2つの第1支持部、又は、前記第2支持部は、ユーザーの体格に応じて位置を調整可能に構成されている、
椅子。
【請求項5】
請求項1に記載の椅子と、
ユーザーが前記椅子に座った状態で下肢運動を行う下肢運動機器と、
を含む、
下肢運動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子、及び、下肢運動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腰痛の97%は機械的要因であり、画像診断で確定診断が難しく適切に治療されていなかった非特異性の腰痛は80%とされている。このような患者は、整形外科に通院するものの痛み止めと定期的なマッサージが処方され、数ヶ月にわたる運動療法のリハビリが計画されている。骨盤を動かし可動性を改善する運動は継続することで腰痛解消することがわかっているものの、効果が出るまでに数ヶ月と時間がかかる。効果が実感し難い中、モチベーションを維持して病院に通院し続けることは難しい。
【0003】
このように多くの整形外科にて画像診断で特定されなかった非特異性の慢性腰痛も厳密に検査をすることでその多くは仙腸関節痛、筋膜性疼痛、椎間関節痛の3つに当てはまることが知られている。この3つの腰痛は腰背部のメカニカルストレスが要因である。要因の一つとして、長時間座位姿勢であることが挙げられる。1日中同一の姿勢で座ると、腰や臀部の痛み、下肢の腫脹が起こる。固定座位姿勢の問題点、すなわち筋収縮による筋疲労及び循環障害、椎間板(軟骨)の栄養障害、及び座面の圧迫による循環障害などの固定座位姿勢の問題点が指摘されている。
【0004】
特許文献1は、椅子の座部が揺動可能に構成されることで、ユーザーの両脚のサイクル動作(例:足漕ぎペダル操作)に伴う座部が傾斜動作する椅子を開示している。これにより、ユーザーの足の動きが、脚の動き、腰部の動きとして、全身に伝播するように伝わる運動連鎖が発生し、高い運動効果が得られる。これにより、座りながらにおいても運動不足解消に対処できる健康的な椅子を実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-005485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、腰痛を緩和できる健康効果を高めた椅子に対するニーズが高まっている。
【0007】
本開示の目的は、腰痛を緩和できる健康効果を高めた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
椅子は、2つの寛骨をそれぞれ支持する2つの第1支持部と、仙骨又は尾骨の何れか一方を支持する第2支持部と、を含む。前記2つの第1支持部は、前記第2支持部に対して相対的に揺動可能に構成されている。以上の構成によれば、2つの寛骨と仙骨の間の仙腸関節の可動性が改善されるので、仙腸関節の可動性がないために代償的に負担が増加していた腰部関節のメカニカルストレスが抑えられ、もって、腰痛が緩和される。
前記2つの第1支持部は、互いに相対的に揺動可能に構成されてもよい。以上の構成によれば、前記2つの第1支持部の前記第2支持部に対する相対的な揺動が促進されるので、腰痛の緩和効果が高まる。
椅子本体と、前記2つの第1支持部を前記椅子本体にそれぞれ連結する、2つの弾性連結部と、を更に備え、前記2つの弾性連結部の弾性変形により前記2つの第1支持部はピッチ方向及びロール方向に揺動可能に構成されてもよい。以上の構成によれば、簡素な構成で、前記2つの第1支持部がピッチ方向及びロール方向に揺動可能となる。
前記2つの第1支持部、又は、前記第2支持部は、ユーザーの体格に応じて位置を調整可能に構成されてもよい。以上の構成によれば、ユーザーの体格に応じて、前記2つの第1支持部、又は、前記第2支持部の位置を調整することができる。
上記の椅子と、ユーザーが前記椅子に座った状態で下肢運動を行う下肢運動機器と、を含む、下肢運動システムが提供される。以上の構成によれば、腰痛の緩和に優れた下肢運動システムが実現される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、2つの寛骨と仙骨の間の仙腸関節の可動性が改善されるので、仙腸関節の可動性がないために代償的に負担が増加していた腰部関節のメカニカルストレスが抑えられ、もって、腰痛が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】骨盤の骨格図である。
図2】下肢運動システムの概略図である。
図3】椅子の側面図である。
図4】椅子の正面図である。
図5】椅子による骨盤の支持を説明するための側面図である。
図6】寛骨支持バルーン連結部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
まず、図1を参照して、骨盤の骨格を概説する。図1に示すように、骨盤は、仙骨と尾骨、2つの寛骨から構成されている。各寛骨は、更に、腸骨と恥骨、坐骨から構成されている。そして、腸骨と仙骨を接続する関節は仙腸関節と称されている。
【0013】
図2は、下肢運動システム1の側面図を示している。図2に示すように、下肢運動システム1は、椅子2と足漕ぎ運動機器3を含む。足漕ぎ運動機器3は、下肢運動機器の一具体例である。足漕ぎ運動機器3は、椅子2に座った状態のユーザーが座位のまま足漕ぎ運動を実現するための運動機器である。足漕ぎ運動機器3は、運動機器本体3aと、運動機器本体3aによって支持される一対のペダル3bと、を含む。典型的には、一対のペダル3bの先端は側面視で楕円軌道を描き、一対のペダル3bの後端は側面視で水平に往復運動するように構成されている。下肢運動機器としては、足漕ぎ運動機器3に限らず、足踏み運動機器であってもよい。下肢運動機器としては、足を前後にスライドする下肢運動機器であっても良いし、足を上下に動かす腿上げ運動器具であってもよい。
【0014】
図3は、椅子2の側面図を示している。図4は、椅子2の正面図を示している。図3及び図4に示すように、椅子2は、椅子本体4、2つの寛骨支持バルーン5、2つの寛骨支持バルーン連結部6、仙骨支持バルーン7、仙骨支持バルーン連結部8、背もたれ9、を含む。
【0015】
椅子本体4は、2つの寛骨支持バルーン5、2つの寛骨支持バルーン連結部6、仙骨支持バルーン7、仙骨支持バルーン連結部8、背もたれ9を支持するフレーム構造体である。椅子本体4は、メインフレーム10、位置調整機構11、2つの手すり12を含む。
【0016】
メインフレーム10は、前後方向に延びる2つの下フレーム20及び2つの上フレーム21、垂直に延びる2つの前垂直フレーム22及び2つの後垂直フレーム23、を含む。
【0017】
2つの下フレーム20は、左右に離れて配置されている。2つの上フレーム21は、左右に離れて配置されている。2つの上フレーム21は、それぞれ、2つの下フレーム20の上方に配置されている。
【0018】
2つの前垂直フレーム22は、それぞれ、2つの下フレーム20の前端と2つの上フレーム21の前端を連結している。2つの後垂直フレーム23は、それぞれ、2つの下フレーム20の後端と2つの上フレーム21の後端を連結している。
【0019】
2つの手すり12は、2つの前垂直フレーム22及び2つの後垂直フレーム23によって支持されている。
【0020】
ここで、前後や左右は、椅子2に着座したユーザーの体幹を基準として定義される。前後とは、冠状面に対して直交する方向である。左右とは、矢状面に対して直交する方向である。
【0021】
位置調整機構11は、2つの下フレーム20の間に配置され、2つの下フレーム20によって支持されている。位置調整機構11は、2つの寛骨支持バルーン5の位置を前後左右に調整可能に構成されている。位置調整機構11は、一方の寛骨支持バルーン5の位置を調整するための第1位置調整機構11Aと、他方の寛骨支持バルーン5の位置を調整するための第2位置調整機構11Bと、を含む。第1位置調整機構11Aと第2位置調整機構11Bの構成は類似しているため、以下、第1位置調整機構11Aを説明し、第2位置調整機構11Bの説明は省略する。
【0022】
第1位置調整機構11Aは、左右に延びる2つの左右調整フレーム30と、前後調整フレーム31と、を含む。2つの左右調整フレーム30は、前後に離れて配置されている。2つの左右調整フレーム30は、2つの下フレーム20の間に配置され、2つの下フレーム20に連結している。前後調整フレーム31は、2つの左右調整フレーム30の間に配置され、2つの左右調整フレーム30に連結している。前後調整フレーム31は、2つの左右調整フレーム30に対して左右に位置調整可能に連結している。前後調整フレーム31には、一方の寛骨支持バルーン5が一方の寛骨支持バルーン連結部6を介して連結している。これにより、2つの寛骨支持バルーン5の間の左右における距離を自在に調整できるようになっている。また、各寛骨支持バルーン連結部6は、対応する前後調整フレーム31に対して前後方向で位置調整可能に連結している。これにより、各寛骨支持バルーン5の前後方向における位置を自在に調整できるようになっている。
【0023】
各寛骨支持バルーン5は、第1支持部の一具体例である。各寛骨支持バルーン5は、ユーザーの対応する寛骨を支持する。具体的には、図5に示すように、各寛骨支持バルーン5は、ユーザーの対応する寛骨の坐骨に対して鉛直方向で対向するように配置される。即ち、各寛骨支持バルーン5は、上方を向く座面5aを有する。寛骨支持バルーン5は、典型的には、ポリ塩化ビニール製であってある程度のクッション性を呈する。第1支持部は、ある程度のクッション性を呈する構成であればよく、寛骨支持バルーン5に代えて、例えば連続気泡構造又は独立気泡構造であるウレタンフォームなどに代表されるクッション部材であってもよい。
【0024】
図6には、各寛骨支持バルーン連結部6を例示している。各寛骨支持バルーン連結部6は、弾性連結部の一具体例である。図6に示すように、各寛骨支持バルーン連結部6は、対応する寛骨支持バルーン5がロール方向及びピッチ方向に揺動自在となるように対応する寛骨支持バルーン5を前後調整フレーム31に連結する。
【0025】
図6の(a)に示すように、各寛骨支持バルーン連結部6は、一例として、コイルスプリング40とユニバーサルジョイント41で構成されてもよい。ユニバーサルジョイント41は、寛骨支持バルーン5から延びる上リンク41aと、前後調整フレーム31から延びる下リンク41bと、上リンク41aと下リンク41bを連結するジョイント部41cと、を含む。この構成で、対応する寛骨支持バルーン5がロール方向又はピッチ方向に揺動すると、コイルスプリング40が弾性変形する。コイルスプリング40の弾性復元力により、対応する寛骨支持バルーン5は中立位置(基準位置)に弾性復帰する。なお、ユニバーサルジョイント41は省略することができる。
【0026】
図6の(b)に示すように、各寛骨支持バルーン連結部6は、一例として、ゴム柱42により構成されてもよい。この構成で、対応する寛骨支持バルーン5がロール方向又はピッチ方向に揺動すると、ゴム柱42が弾性変形する。ゴム柱42の弾性復元力により、対応する寛骨支持バルーン5は中立位置(基準位置)に弾性復帰する。
【0027】
図3に戻り、仙骨支持バルーン7は、第2支持部の一具体例である。仙骨支持バルーン7は、ユーザーの仙骨又は尾骨の何れか一方を支持する。仙骨支持バルーン7は、ユーザーの仙骨又は尾骨の何れか一方の動きを抑制するように、ユーザーの仙骨又は尾骨の何れか一方を支持している。本実施形態では、図5に示すように、仙骨支持バルーン7は、ユーザーの尾骨の動きを抑制するように、ユーザーの尾骨を斜め下方から支持している。換言すれば、仙骨支持バルーン7のユーザーに対する接触面7aは、斜め上方を向いている。これにより、ユーザーの骨盤を前傾させる効果が期待できる。しかし、これに代えて、仙骨支持バルーン7は、ユーザーの仙骨の動きを抑制するように、ユーザーの仙骨を斜め上方から支持してもよい。この場合、仙骨支持バルーン7のユーザーに対する接触面7aは、水平もしくは斜め下方を向くことになる。仙骨と尾骨は互いに固定された関係にあるので、仙骨の動きを抑制すれば尾骨の動きも抑制されるし、尾骨の動きを抑制すれば仙骨の動きも抑制される。このように、仙骨支持バルーン7は、ユーザーの仙骨の動きを抑制するために、仙骨と対向することで仙骨の動きを直接的に抑制してもよく、尾骨と対向することで仙骨の動きを間接的に抑制してもよい。仙骨支持バルーン7は、典型的には、ポリ塩化ビニール製であってある程度のクッション性を呈する。第2支持部は、ある程度のクッション性を呈する構成であればよく、仙骨支持バルーン7に代えて、例えば連続気泡構造又は独立気泡構造であるウレタンフォームなどに代表されるクッション部材であってもよい。
【0028】
なお、バルーンとは、体表面と接触することで荷重を支持すると共に変形可能な柔軟支持部材であって、空気や液体が入った膨張・収縮する部材から構成されるものを意味する。
【0029】
図3に戻り、仙骨支持バルーン連結部8は、仙骨支持バルーン7と椅子本体4を連結する。一例として、仙骨支持バルーン連結部8は、寛骨支持バルーン連結部6と同様に、コイルスプリングとユニバーサルジョイントから構成されている。これにより、仙骨支持バルーン7は、椅子本体4に対して上下左右に揺動自在となっている。しかしながら、前述したように、仙骨支持バルーン7はユーザーの仙骨の動きを抑制することが目的であるため、仙骨支持バルーン7が椅子本体4に対して上下左右に揺動自在である構成は必須ではない。むしろ、仙骨支持バルーン7は椅子本体4に対して揺動困難または揺動不能としてもよい。この場合、仙骨支持バルーン連結部8は、弾性変形困難又は弾性変形不能な部材から構成され得る。これにより、仙骨支持バルーン連結部8は、仙骨支持バルーン7が揺動困難又は揺動不能となるように仙骨支持バルーン7を椅子本体4に連結する。
【0030】
ここで、ユーザーの体格に応じて仙骨支持バルーン7の位置や姿勢を調整可能としてもよい。本実施形態では、仙骨支持バルーン連結部8は、椅子本体4に対して上下方向に位置を調整可能に構成されている。これに加えて、仙骨支持バルーン連結部8の長手方向の仰俯角を調整可能としてもよい。また、仙骨支持バルーン連結部8の長さを調整可能としてもよい。このように仙骨支持バルーン7の位置や姿勢を調整可能とすることで、ユーザーの体格に応じた仙骨支持バルーン7の位置や姿勢が実現される。加えて、このように仙骨支持バルーン7の位置や姿勢を調整可能とすることで、ユーザーが椅子2に座った状態で骨盤を前傾するタイプであっても、骨盤を後傾させるタイプであっても、仙骨支持バルーン7が安定的にユーザーの仙骨又は尾骨の何れか一方の動きを抑制するようにユーザーの仙骨又は尾骨の何れか一方を支持することができる。
【0031】
引き続き図3を参照して、背もたれ9は、仙骨支持バルーン7の上方に配置されている。背もたれ9は省略してもよい。
【0032】
以上の構成で、図2に示すようにユーザーが椅子2に着座すると、2つの腸骨の坐骨が2つの寛骨支持バルーン5に対してそれぞれ鉛直方向で対向すると共に、尾骨が仙骨支持バルーン7に対して斜め方向で対向する。即ち、ユーザーの体幹の自重は、2つの寛骨支持バルーン5と仙骨支持バルーン7によって支持されることになる。この状態で、2つの寛骨支持バルーン5が仙骨支持バルーン7に対して相対的に揺動自在に構成されることで、仙腸関節の可動性が改善される。更に詳しく言えば、仙骨支持バルーン7が揺動困難又は揺動不能に構成され、2つの寛骨支持バルーン5が揺動自在に構成されることで、椅子2に着座したユーザーの仙骨の動きが抑制される一方、2つの腸骨はピッチ方向及びロール方向に自在に動かせるようになっている。
【0033】
この状態で、図2に示すように、ユーザーが足漕ぎ運動機器3を用いて足漕ぎ運動を実施すると、両脚の足漕ぎ運動に伴って2つの腸骨が主としてピッチ方向に交互に動く。このとき、仙骨の動きが抑制されているので、図1に示すように仙骨と各腸骨を連結する仙腸関節における関節運動が著しく促進され、もって、仙腸関節の可動性が改善される。上記の椅子2によれば、以下の効果が期待できる。
【0034】
(1)第1に、座りながら足漕ぎ運動をすると、仙骨の動きが仙骨支持バルーン7によって抑制されながら、左右の寛骨が足漕ぎ運動でピッチ方向に回転することになる。仙骨の動きを抑えつつ、寛骨を動かすことで仙腸関節の可動性が改善される。仙腸関節の可動性が戻ることで、仙腸関節の可動性がないために代償的に負担が増加していた腰部関節のメカニカルストレスを軽減し腰痛が緩和される。
(2)第2に、椅子2は、左右の坐骨と仙骨の3点で支持する構成を採用している。支持支柱がフレキシブルに動くので骨盤が同じ場所にならない。従って、座位中に骨盤が同じ姿勢にならないことでの、腰回りの筋部位において同じ場所を使わないので、筋負荷が低下する。長時間同じ姿勢による腰痛発症リスクが軽減する。骨盤を動かすことになるので骨盤周りの筋が硬くなることを防ぐ。
(3)通常の固定座面と異なり、骨盤の動きを制約しないので、下肢の足漕ぎ運動に伴い、骨盤が前後左右に動く。下肢の動きと骨盤の動きに伴い筋が働く。座りながら知らず知らずに足漕ぎ運動をすれば、腰痛が緩和される。通常は治療院に徒手療法を継続的に受けるため定期的に通う必要があるが、本実施形態の下肢運動システム1によれば、自宅でのトレーニングで腰痛改善効果を期待できる。
【0035】
以上に、本開示の好適な実施形態を説明した。上記の実施形態は以下の特徴を有する。
【0036】
椅子2は、2つの寛骨をそれぞれ支持する2つの寛骨支持バルーン5(第1支持部)と、仙骨又は尾骨の何れか一方を支持する仙骨支持バルーン7(第2支持部)と、を含む。2つの寛骨支持バルーン5は、仙骨支持バルーン7に対して相対的に揺動可能に構成されている。以上の構成によれば、2つの寛骨と仙骨の間の仙腸関節の可動性が改善されるので、仙腸関節の可動性がないために代償的に負担が増加していた腰部関節のメカニカルストレスが抑えられ、もって、腰痛が緩和される。
【0037】
2つの寛骨支持バルーン5は、互いに相対的に揺動可能に構成されている。以上の構成によれば、2つの寛骨支持バルーン5の仙骨支持バルーン7に対する相対的な揺動が促進されるので、仙腸関節の可動性が更に向上し、もって、腰痛の緩和効果が高まる。
【0038】
椅子2は、椅子本体4と、2つの寛骨支持バルーン5を椅子本体4にそれぞれ連結する、2つの寛骨支持バルーン連結部6(弾性連結部)と、を更に備える。2つの寛骨支持バルーン連結部6の弾性変形により2つの寛骨支持バルーン5はピッチ方向及びロール方向に揺動可能に構成されている。以上の構成によれば、簡素な構成で、2つの寛骨支持バルーン5がピッチ方向及びロール方向に揺動可能となる。
【0039】
また、2つの寛骨支持バルーン5、又は、仙骨支持バルーン7は、ユーザーの体格に応じて位置を調整可能に構成されている。以上の構成によれば、ユーザーの体格に応じて、2つの寛骨支持バルーン5、又は、仙骨支持バルーン7の位置を調整することができるので、椅子2を用いた仙腸関節の可動性を向上する効果を最大限に高めることができる。
【0040】
また、下肢運動システム1は、上記の椅子2と、ユーザーが椅子2に座った状態で下肢運動を行う下肢運動機器としての足漕ぎ運動機器3と、を含む。以上の構成によれば、足漕ぎ運動に伴う運動連鎖により腸骨のピッチ方向における揺動が実現されるので、仙腸関節の可動性を効率よく改善することができる。
【0041】
上記実施形態は、例えば、以下のように変更できる。
【0042】
即ち、ユーザーが椅子2に着座した状態でユーザーの腹部中央部の一部を抑える構成を椅子2に追加してもよい。これにより、ユーザーの骨盤と椅子2の2つの寛骨支持バルーン5及び仙骨支持バルーン7との一体感が向上するので、仙腸関節の可動性を向上する効果が更に高まる。なお、腹部中央部の一部とは、鳩尾、臍部、下腹部のうち少なくとも何れか1つを意味する。
【0043】
上記実施形態では、2つの寛骨支持バルーン5は、互いに干渉することなく独立して揺動自在である。しかし、これに代えて、2つの寛骨支持バルーン5を互いに連結し、2つの寛骨支持バルーン5が一体となってピッチ旋回、ロール旋回、ヨー旋回できるように構成してもよい。この場合でも、仙腸関節の可動性を向上する効果がある程度得られるものと考えられる。
【0044】
また、足漕ぎ運動機器3に代えて、又は、足漕ぎ運動機器3に加えて、手漕ぎ運動機器を使用してもよい。即ち、手漕ぎ運動に伴う下行性の運動連鎖により2つの寛骨の動きが更に促進されるので、仙腸関節の可動性向上に寄与する。
【0045】
また、上記実施形態において2つの手すり12は位置固定されている。しかし、これに代えて、2つの手すり12を図示しないアクチュエータによって交互に動かしてもよい。この場合でも、下行性の運動連鎖により2つの寛骨の動きが更に促進されることが考えられる。2つの手すり12の動かし方としては、第1に、2つの手すり12をピッチ方向でそれぞれ異なる位置となるように動かすことである。第2に、2つの手すり12の前後位置が互いに異なるように2つの手すり12を前後に交互に動かすことである。第3に、2つの手すり12の高さ位置が互いに異なるように2つの手すり12を上下に交互に動かすことである。
【0046】
また、足漕ぎ運動機器3は、ユーザーが能動的に足漕ぎ運動を行うものであってもよく、ユーザーが受動的に足漕ぎ運動を行うものであってもよい。後者の場合、典型的には、足漕ぎ運動機器3の一対のペダル3bをアクチュエータで駆動することが考えられる。
【0047】
また、背もたれ9は、背もたれ9の長手方向を軸として旋回するように構成してもよい。即ち、背もたれ9は、ユーザーの右肩と左肩が交互に前後に振れるように、いわばヨー旋回できるように構成してもよい。これにより、下肢運動に伴う上行性の運動連鎖や、上肢運動に伴う下行性の運動連鎖がより高いレベルで実現されるだろう。
【符号の説明】
【0048】
1 下肢運動システム
2 椅子
3 足漕ぎ運動機器
3a 運動機器本体
3b ペダル
4 椅子本体
5 寛骨支持バルーン
5a 座面
6 寛骨支持バルーン連結部
7 仙骨支持バルーン
7a 接触面
8 仙骨支持バルーン連結部
9 背もたれ
10 メインフレーム
11 位置調整機構
11A 第1位置調整機構
11B 第2位置調整機構
12 手すり
20 下フレーム
21 上フレーム
22 前垂直フレーム
23 後垂直フレーム
30 左右調整フレーム
31 前後調整フレーム
40 コイルスプリング
41 ユニバーサルジョイント
41a 上リンク
41b 下リンク
41c ジョイント部
42 ゴム柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6