IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社あけぼの産業の特許一覧

特開2025-12259シールド掘進機の回動移動システムと横移動システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012259
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】シールド掘進機の回動移動システムと横移動システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E21D9/06 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114979
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502143319
【氏名又は名称】株式会社あけぼの産業
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安本 宣興
(72)【発明者】
【氏名】最上 裕生
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰憲
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一介
(72)【発明者】
【氏名】小池 悠介
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054EA01
(57)【要約】
【課題】立坑の内部において、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の回動移動と横移動を実現できる、シールド掘進機の回動移動システムと横移動システムを提供する。
【解決手段】立坑10に到達したシールド掘進機Mを回動させる回動移動システム70であり、シールド掘進機が載置される載置架台40、底版11に着底される反力架台30、反力架台30に対して回動可能に支持されるターンテーブル50、回動手段60を有し、回動手段60は、第1回動支承部61と第1係止部62と回動用ジャッキ63を備え、反力架台30に設けられている溝条のガイドレール35には所定の間隔で第1被係止部36が設けられ、第1被係止部36に第1係止部62が係止された状態で回動用ジャッキ63が伸びた際にターンテーブル50が所定角度回動し、回動用ジャッキ63が縮んだ際に第1係止部62が第1被係止部36から係脱して次の第1被係止部36へ移動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑の内部に設置されて、該立坑に到達したシールド掘進機を回動させる、シールド掘進機の回動移動システムであって、
前記シールド掘進機が載置される、載置架台と、
前記立坑の底版に着底される、反力架台と、
前記載置架台と一体とされ、前記反力架台に対して回動可能に支持され、リング状を呈している、ターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回動させる回動手段とを有し、
前記回動手段は、前記ターンテーブルに対して回動自在に接続されている第1回動支承部と、前記反力架台の一部に係止される第1係止部と、該第1回動支承部と該第1係止部を連結する回動用ジャッキとを備え、
前記反力架台のうち、前記ターンテーブルの外郭ラインよりも外側に溝条のガイドレールが設けられ、該ガイドレールにはその長手方向に所定の間隔で前記第1係止部が係止される第1被係止部が設けられており、
前記第1被係止部に前記第1係止部が係止された状態で前記回動用ジャッキが伸びた際に、前記反力架台に反力を取って前記ターンテーブルが所定角度回動し、
前記ターンテーブルの所定角度の回動の後、前記回動用ジャッキが縮んだ際に前記第1係止部が前記第1被係止部から係脱して、次の前記第1被係止部へ移動することを特徴とする、シールド掘進機の回動移動システム。
【請求項2】
前記第1被係止部は係止孔であり、前記第1係止部は係止ピンであり、
前記係止孔のうち、前記ターンテーブルの回動方向の前方には、前記ガイドレールの天端に摺り付く第1傾斜面が設けられており、前記第1被係止部から前記第1係止部が係脱される際に、該第1係止部が前記第1傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする、請求項1に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項3】
前記係止ピンのうち、前記ターンテーブルの回動方向の前方には、該係止ピンの下端に向かって傾斜した第2傾斜面が設けられており、
前記第1被係止部から前記第1係止部が係脱される際に、前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする、請求項2に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項4】
前記係止ピンは、前記回動用ジャッキの一端に設けられている上下方向に延びる貫通孔の内部において昇降自在に配設されており、
前記係止ピンには、前記回動用ジャッキの一端の一つの側面に係合して該係止ピンの回動を防止する回動防止片が設けられており、該回動防止片により前記第1傾斜面に対する前記第2傾斜面の位置が保持されるようになっていることを特徴とする、請求項3に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項5】
前記ターンテーブルに対して複数の前記回動手段が取り付けられており、
複数の前記回動手段の備えるそれぞれの前記回動用ジャッキの駆動が同期して実行されることを特徴とする、請求項1に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項6】
前記ターンテーブルは、内側リングと外側リングを備え、
前記内側リングと前記外側リングのいずれか一方が前記載置架台と接合され、いずれか他方が前記反力架台と接合されており、
前記内側リングの外周面には凹条が設けられており、
前記外側リングの内周面には、前記凹条に収容される凸条が設けられており、
前記凸条の上面と側面と下面、及び前記凹条とで形成され、前記回動方向に延びる、3つの溝空間にそれぞれ、複数のローラが収容されて、前記内側リングと前記外側リングの間の回動機構と、前記載置架台から前記反力架台への荷重伝達機構を形成していることを特徴とする、請求項2に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項7】
前記ターンテーブルは、その周方向に、所定の角度間隔を置いて複数の位置合わせピン孔を備えており、
複数の前記回動手段の前記第1回動支承部が位置合わせピンを備え、それぞれの該第1回動支承部の該位置合わせピンが対応する前記位置合わせピン孔に挿入されて前記ターンテーブルに取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシールド掘進機の回動移動システム。
【請求項8】
前記シールド掘進機を載置する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシールド掘進機の回動移動システムを横移動させる、シールド掘進機の横移動システムであって、
前記立坑は、前記シールド掘進機が到達する到達部と、該シールド掘進機が発進する発進部を備えており、
前記立坑の底版には、前記到達部と前記発進部とを繋ぐ横移動用レールが敷設され、
前記横移動用レールの上に移動用ソリが搭載され、該移動用ソリの上に前記反力架台が搭載され、
前記回動移動システムを横移動させる横移動手段を備えており、
前記横移動手段は、前記反力架台に対して回動自在に接続されている第2回動支承部と、前記横移動用レールの一部に係止される第2係止部と、該第2回動支承部と該第2係止部を連結する横移動用ジャッキとを備え、
前記横移動用レールには、その長手方向に所定の間隔で前記第2係止部が係止される第2被係止部が設けられており、
前記第2被係止部に前記第2係止部が係止された状態で前記横移動用ジャッキが伸びた際に、前記横移動用レール及び前記底版に反力を取って前記回動移動システムが所定長横移動し、
前記回動移動システムの所定長の横移動の後、前記横移動用ジャッキが縮んだ際に前記第2係止部が前記第2被係止部から係脱して、次の前記第2被係止部へ移動することを特徴とする、シールド掘進機の横移動システム。
【請求項9】
前記第2被係止部は係止孔であり、
前記第2係止部は係止ピンを下方に備えた反力ピースであり、該係止ピンのうち、前記回動移動システムの横移動方向前方には、該係止ピンの下端に向かって傾斜した第3傾斜面が設けられており、
前記第2被係止部から前記第2係止部が係脱される際に、前記第3傾斜面が前記係止孔のエッジに沿って係脱が案内されることを特徴とする、請求項8に記載のシールド掘進機の横移動システム。
【請求項10】
前記係止孔のうち、前記回動移動システムの横移動方向前方には、前記横移動用レールの天端に摺り付く第4傾斜面が設けられており、
前記第2被係止部から前記第2係止部が係脱される際に、前記第3傾斜面が前記第4傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする、請求項9に記載のシールド掘進機の横移動システム。
【請求項11】
前記回動移動システムは、前記反力架台を昇降させる昇降ジャッキを備えており、
前記昇降ジャッキがジャッキダウンした際に、前記反力架台が前記底版に着底して、前記ターンテーブルの回動姿勢が形成され、
前記昇降ジャッキがジャッキアップした際に、前記反力架台が持ち上げられ、前記横移動用レールの上に前記移動用ソリが設置され、該昇降ジャッキがジャッキダウンして該移動用ソリの上に該反力架台が盛り替えられ、横移動姿勢が形成されることを特徴とする、請求項8に記載のシールド掘進機の横移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の回動移動システムと横移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1台のシールド掘進機を利用して相互に併設した2本のシールドトンネルを施工する際に、到達部と発進部を備えた立坑の当該到達部に、1本目のシールドトンネル(所謂往路トンネル)を施工したシールド掘進機を到達させて内部へ受け入れ、立坑の内部でシールド掘進機を所定角度(例えば180度)回動させ、シールド掘進機を横移動(例えば水平移動)させて発進部に移動させ、当該発進部からシールド掘進機を発進させて2本目のシールドトンネル(所謂復路トンネル)を施工する施工方法がある。
ここで、シールド掘進機を所定角度回動させる方法は、シールド掘進機のUターン施工などと称されることがある。
立坑の内部におけるシールド掘進機の回動移動や横移動の形態には、完全に回動移動させた後に横移動させる方法、途中まで横移動させ、完全に回動移動させた後にさらに横移動させる方法、完全に横移動させた後に回動移動させる方法等、様々な移動形態がある。
立坑の底版の上でシールド掘進機を回動移動と横移動させるべく、鉄球の転がりを利用した装置をシールド掘進機と底版の間に配設する方法があるが、この方法では、シールド掘進機の重量によって鉄球が底版に食い込んで底版に不陸が生じ、生じた不陸にて鉄球の転がりに対する抵抗が大きくなって上記する回動移動と横移動が困難になる恐れがある。そして、シールド掘進機が大口径である場合はこの課題が一層顕著になる。
また、鉄球が転がり過ぎることでシールド掘進機と立坑の側面との衝突の恐れもある。
【0003】
さらに、上記するシールド掘進機のUターン施工は、誰でも簡単にできる施工ではない。
具体的には、往路トンネルを施工したシールド掘進機を立坑内へ引き入れ、架台上に載せ、復路トンネルを施工するための発進位置まで横移動させる施工内容となり、シールド掘進機受け台の下方に上記するような鉄球(鋼球)やエアーキャスター等を設置することになるが、この準備作業においては、受け台の移動範囲全面に敷鉄板を平坦に敷設し、念入りな継ぎ目処理を施す必要がある。
また、実際のUターン施工における横移動や位置合わせの際には、方向修正のための段取り替え作業が発生し、多数の技能者を配置する必要がある。これらのことから、シールド掘進機のUターン施工は、特定の専門工事業者にてUターン装置が操作されることにより行われるのが一般的である。
【0004】
以上のことから、立坑の内部においてシールド掘進機を回動移動と横移動させる施工において、特定の専門工事業者によるUターン装置の操作を不要にして、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の回動移動と横移動を実現できる、シールド掘進機の回動移動システムと横移動システムが望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、シールド掘削機の移動装置が提案されている。このシールド掘削機の移動装置は、シールド掘削機の下方に固定する架台と、シールド掘削機に固定して、伸縮作用により架台とシールド掘削機を上下移動させるジャッキアップ装置と、架台の下に設置して、スライド機構により架台とシールド掘削機を水平方向に移動させる水平移動装置とを備え、ジャッキアップ装置を伸長することにより水平移動装置を所定の位置に移動させ、水平移動装置のスライド機構によりシールド掘削機の水平移動を行うものである。
より詳細には、水平移動装置を、架台を載置するスライディングシップと、スライディングシップの走行路であるレールと、スライディングシップの移動手段であるジャッキとにより構成し、スライディングシップとレールとの摩擦抵抗をレールとレールの支持面との摩擦抵抗より小さく設定している。
さらに詳細には、スライディングシップの上部に回転式のターンテーブルを設置して、ターンテーブルの上に架台が載置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-240401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシールド掘削機の移動装置によれば、床が滑るなどの危険が伴わず、支持面の上に異物や凹凸があっても移動の障害となることは少なく、シールド掘削機の移動に際して、水平移動装置によって距離と方向を任意に決定できることから、僅かな距離でも確実に移動させることができる等、様々な効果が奏される。しかしながら、水平移動装置内のジャッキをストロークさせるたびにレールの盛替えが必要になることから、操作手間の観点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、立坑の内部においてシールド掘進機を回動移動と横移動させる施工において、特定の専門工事業者によるUターン装置の操作を不要にして、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の回動移動と横移動を実現できる、シールド掘進機の回動移動システムと横移動システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの一態様は、
立坑の内部に設置されて、該立坑に到達したシールド掘進機を回動させる、シールド掘進機の回動移動システムであって、
前記シールド掘進機が載置される、載置架台と、
前記立坑の底版に着底される、反力架台と、
前記載置架台と一体とされ、前記反力架台に対して回動可能に支持され、リング状を呈している、ターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回動させる回動手段とを有し、
前記回動手段は、前記ターンテーブルに対して回動自在に接続されている第1回動支承部と、前記反力架台の一部に係止される第1係止部と、該第1回動支承部と該第1係止部を連結する回動用ジャッキとを備え、
前記反力架台のうち、前記ターンテーブルの外郭ラインよりも外側に溝条のガイドレールが設けられ、該ガイドレールにはその長手方向に所定の間隔で前記第1係止部が係止される第1被係止部が設けられており、
前記第1被係止部に前記第1係止部が係止された状態で前記回動用ジャッキが伸びた際に、前記反力架台に反力を取って前記ターンテーブルが所定角度回動し、
前記ターンテーブルの所定角度の回動の後、前記回動用ジャッキが縮んだ際に前記第1係止部が前記第1被係止部から係脱して、次の前記第1被係止部へ移動することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、シールド掘進機が載置される載置架台と一体とされるターンテーブルが、立坑の底版に着底される反力架台に対して回動可能に支持され、ターンテーブルが回動手段により回動されることにより、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の回動移動を実現できる。
また、回動手段が、ターンテーブルに接続されている第1回動支承部と、反力架台の一部に係止される第1係止部と、これらを連結する回動用ジャッキとを備え、反力架台のガイドレールに所定の間隔で設けられている第1被係止部に第1係止部が係止された状態で、回動用ジャッキが伸びることでターンテーブルが所定角度回動し、ターンテーブルの所定角度の回動の後、回動用ジャッキが縮んだ際に第1係止部が第1被係止部から係脱して、次の第1被係止部へ移動して係止されることにより、ターンテーブルの安定的かつ高精度な所望角度の回動移動を実現できる。
さらに、溝条のガイドレールの例えば底面に複数の第1被係止部が設けられ、この第1被係止部に対して第1係止部が係止されることから、第1係止部がガイドレールから逸脱することを抑制できる。
【0011】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記第1被係止部は係止孔であり、前記第1係止部は係止ピンであり、
前記係止孔のうち、前記ターンテーブルの回動方向の前方には、前記ガイドレールの天端に摺り付く第1傾斜面が設けられており、前記第1被係止部から前記第1係止部が係脱される際に、該第1係止部が前記第1傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、第1被係止部である係止孔におけるターンテーブルの回動方向の前方に、ガイドレールの天端に摺り付く(回動方向に斜め上方に傾斜した)第1傾斜面が設けられ、第1係止部である係止ピンが第1傾斜面に沿って係脱されることにより、回動用ジャッキが縮んだ際の係止ピンの係止孔からのスムーズな係脱を実現できる。
【0013】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記係止ピンのうち、前記ターンテーブルの回動方向の前方には、該係止ピンの下端に向かって傾斜した第2傾斜面が設けられており、
前記第1被係止部から前記第1係止部が係脱される際に、前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、係止ピンにおけるターンテーブルの回動方向の前方に、係止ピンの下端に向かって傾斜した(回動方向に斜め上方に傾斜した)第2傾斜面が設けられ、係止ピンの第2傾斜面が係止孔の第1傾斜面に沿って係脱が案内されることにより、回動用ジャッキが縮んだ際の係止ピンの係止孔からのより一層スムーズな係脱を実現できる。
【0015】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記係止ピンは、前記回動用ジャッキの一端に設けられている上下方向に延びる貫通孔の内部において昇降自在に配設されており、
前記係止ピンには、前記回動用ジャッキの一端の一つの側面に係合して該係止ピンの回動を防止する回動防止片が設けられており、該回動防止片により前記第1傾斜面に対する前記第2傾斜面の位置が保持されるようになっていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、回動用ジャッキの一端の一つの側面に係合して係止ピンの回動を防止する回動防止片が係止ピンに設けられていることにより、回動防止片にて第1傾斜面に対する第2傾斜面の位置や移動方向を保持することができ、第1傾斜面に沿う第2傾斜面の移動を保証することができる。
【0017】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記ターンテーブルに対して複数の前記回動手段が取り付けられており、
複数の前記回動手段の備えるそれぞれの前記回動用ジャッキの駆動が同期して実行されることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、ターンテーブルに対して取り付けられている複数の回動手段の備えるそれぞれの回動用ジャッキの駆動が同期して実行されることにより、各回動用ジャッキの仕様(規格)を可及的に低減しながら、重量のあるシールド掘進機のスムーズな回動移動を実現できる。
【0019】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記ターンテーブルは、内側リングと外側リングを備え、
前記内側リングと前記外側リングのいずれか一方が前記載置架台と接合され、いずれか他方が前記反力架台と接合されており、
前記内側リングの外周面には凹条が設けられており、
前記外側リングの内周面には、前記凹条に収容される凸条が設けられており、
前記凸条の上面と側面と下面、及び前記凹条とで形成され、前記回動方向に延びる、3つの溝空間にそれぞれ、複数のローラが収容されて、前記内側リングと前記外側リングの間の回動機構と、前記載置架台から前記反力架台への荷重伝達機構を形成していることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、ターンテーブルを構成する内側リングの外周面に設けられている凹条と、外側リングの内周面に設けられていて凹条に収容される凸条とにより形成される、回動方向に延びる3つの溝空間にそれぞれ複数のローラが収容されて、内側リングと外側リングの間の回動機構と、載置架台から反力架台への荷重伝達機構が形成されることにより、各ローラが荷重を線支持して荷重分散することとなり、例えば鉄球等からなるベアリングのように、荷重を点支持する際の過度な集中荷重に起因して鉄球が当接部材へ食い込むといった課題を解消できる。
また、内側リングと外側リングの間の3つの溝空間にある複数のローラにて、双方の相対的な回動が実現されることから、シールド掘進機からの大きな重量が載荷された状態であっても摩擦抵抗が効果的に低減された回動機構を形成でき、安定した載置架台から反力架台への荷重伝達機構を形成できる。
【0021】
また、本発明によるシールド掘進機の回動移動システムの他の態様において、
前記ターンテーブルは、その周方向に、所定の角度間隔を置いて複数の位置合わせピン孔を備えており、
複数の前記回動手段の前記第1回動支承部が位置合わせピンを備え、それぞれの該第1回動支承部の該位置合わせピンが対応する前記位置合わせピン孔に挿入されて前記ターンテーブルに取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、ターンテーブルがその周方向に所定の角度間隔を置いて複数の位置合わせピン孔を備え、複数の回動手段の第1回動支承部の備える位置合わせピンが対応する位置合わせピン孔に挿入されてターンテーブルに取り付けられていることにより、ターンテーブルが正確に所定の回動角度だけ回動移動したことを位置合わせピンにて確認することができる。
例えば、ターンテーブルの周方向に所定の角度間隔である90度ピッチに位置合わせピン孔が設けられ、4つの回動手段のそれぞれの位置合わせピンが各位置合わせピン孔に挿入されていることにより、シールド掘進機を載置するターンテーブルを180度回動移動させる際の正確な回動移動を、位置合わせピンを視認することにより確認できる。
【0023】
また、本発明によるシールド掘進機の横移動システムの一態様は、
前記シールド掘進機を載置する前記シールド掘進機の回動移動システムを横移動させる、シールド掘進機の横移動システムであって、
前記立坑は、前記シールド掘進機が到達する到達部と、該シールド掘進機が発進する発進部を備えており、
前記立坑の底版には、前記到達部と前記発進部とを繋ぐ横移動用レールが敷設され、
前記横移動用レールの上に移動用ソリが搭載され、該移動用ソリの上に前記反力架台が搭載され、
前記回動移動システムを横移動させる横移動手段を備えており、
前記横移動手段は、前記反力架台に対して回動自在に接続されている第2回動支承部と、前記横移動用レールの一部に係止される第2係止部と、該第2回動支承部と該第2係止部を連結する横移動用ジャッキとを備え、
前記横移動用レールには、その長手方向に所定の間隔で前記第2係止部が係止される第2被係止部が設けられており、
前記第2被係止部に前記第2係止部が係止された状態で前記横移動用ジャッキが伸びた際に、前記横移動用レール及び前記底版に反力を取って前記回動移動システムが所定長横移動し、
前記回動移動システムの所定長の横移動の後、前記横移動用ジャッキが縮んだ際に前記第2係止部が前記第2被係止部から係脱して、次の前記第2被係止部へ移動することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、立坑の底版に敷設されている横移動用レールの上に搭載されている移動用ソリの上に本発明の回動移動システムの反力架台が搭載され、横移動手段が回動移動システムを横移動用レールに沿って横移動させることにより、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の横移動を実現できる。
また、横移動手段が、反力架台に接続されている第2回動支承部と、横移動用レールの一部に係止される第2係止部と、これらを連結する横移動用ジャッキとを備え、横移動用レールに所定の間隔で設けられている第2被係止部に第2係止部が係止された状態で横移動用ジャッキが伸びることで回動移動システムが所定長横移動し、回動移動システムの所定長の横移動の後、横移動用ジャッキが縮んだ際に、第2係止部が第2被係止部から係脱して次の第2被係止部へ移動し、当該第2被係止に係止されることにより、回動移動システムを安定的で高精度に所望長の横移動を実現できる。
ここで、横移動手段には、回動手段と同じ構成及び仕様の装置が適用されてよい。
【0025】
また、本発明によるシールド掘進機の横移動システムの他の態様において、
前記第2被係止部は係止孔であり、
前記第2係止部は係止ピンを下方に備えた反力ピースであり、該係止ピンのうち、前記回動移動システムの横移動方向前方には、該係止ピンの下端に向かって傾斜した第3傾斜面が設けられており、
前記第2被係止部から前記第2係止部が係脱される際に、前記第3傾斜面が前記係止孔のエッジに沿って係脱が案内されることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、第2係止部である係止ピンにおける回動移動システムの横移動方向の前方に、係止ピンの下端に向かって傾斜した(横移動方向に斜め上方に傾斜した)第3傾斜面が設けられ、係止ピンの第3傾斜面が第2被係止部である係止孔のエッジに沿って係脱が案内されることにより、横移動用ジャッキが縮んだ際の係止ピンの係止孔からのスムーズな係脱を実現できる。
【0027】
また、本発明によるシールド掘進機の横移動システムの他の態様において、
前記係止孔のうち、前記回動移動システムの横移動方向前方には、前記横移動用レールの天端に摺り付く第4傾斜面が設けられており、
前記第2被係止部から前記第2係止部が係脱される際に、前記第3傾斜面が前記第4傾斜面に沿って係脱が案内されることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、係止孔における回動移動システムの横移動方向の前方に、横移動用レールの天端に摺り付く(横移動方向に斜め上方に傾斜した)第4傾斜面が設けられ、係止ピンの第3傾斜面が第4傾斜面に沿って係脱が案内されることにより、横移動用ジャッキが縮んだ際の係止ピンの係止孔からのより一層スムーズな係脱を実現できる。
【0029】
また、本発明によるシールド掘進機の横移動システムの他の態様において、
前記回動移動システムは、前記反力架台を昇降させる昇降ジャッキを備えており、
前記昇降ジャッキがジャッキダウンした際に、前記反力架台が前記底版に着底して、前記ターンテーブルの回動姿勢が形成され、
前記昇降ジャッキがジャッキアップした際に、前記反力架台が持ち上げられ、前記横移動用レールの上に前記移動用ソリが設置され、該昇降ジャッキがジャッキダウンして該移動用ソリの上に該反力架台が盛り替えられ、横移動姿勢が形成されることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、回動移動システムの備える昇降ジャッキにて反力架台が昇降され、ターンテーブルの回動姿勢の形成と、移動用ソリの上へお反力架台の盛り替えによる横移動姿勢の形成が行われることにより、シールド掘進機のスムーズな回動移動と横移動を実現できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシールド掘進機の回動移動システムと横移動システムによれば、立坑の内部においてシールド掘進機を回動移動と横移動させる施工において、特定の専門工事業者によるUターン装置の操作を不要にして、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機の回動移動と横移動を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】シールド掘進機を搭載した実施形態に係る回動移動システムの一例が、立坑の到達部から内部へ移動している状態を示す平面図である。
図1B】回動移動システムを備える実施形態に係る横移動システムの一例が横移動し、回動移動システムが回動している状態を示す平面図である。
図1C】横移動システムが、立坑の発進部へ移動している状態を示す平面図である。
図2】実施形態に係る回動移動システムの一例を側方から見た図である。
図3】実施形態に係る回動移動システムの一例を斜め上方から見た図である。
図4図3のIV部の拡大図であって、回動手段の第1回動支承部がターンテーブルに接続され、第1係止部が反力架台の第1被係止部に係止されている状態を示す斜視図である。
図5図4のV部の拡大図であって、溝条のガイドレールに設けられている第1係止部を斜め上方から見た斜視図である。
図6】(a)は、回動用ジャッキが伸びて係止ピンが係止孔に反力を取り、回動手段がターンテーブルを回動させている状態を示す図であり、(b)は、回動用ジャッキが縮んで係止ピンが係止孔から係脱している途中の状態を示す図であり、(c)は、さらに回動用ジャッキが縮んで係止ピンが係止孔から完全に係脱している状態を示す図である。
図7】ターンテーブルを構成する内側リングと外側リングをそれらの直径位置で切断した縦断面図である。
図8図7のVIII部の拡大図であって、載置架台とターンテーブルと反力架台により形成される荷重伝達機構と回動機構を説明する図である。
図9】横移動用レールの上に移動用ソリが搭載され、移動用ソリの上に反力架台が搭載され、横移動手段により回動移動システムが横移動されている状態を説明する図である。
図10】反力ピースの係止ピンが横移動用レールの係止孔に反力を取っている状態を説明する図である。
図11】実施形態に係る回動移動システムの一例を示す斜視図である。
図12】立坑の内部の到達部において、回動移動システムが位置合わせされている状態を示す斜視図である。
図13】到達部に到達したシールド掘進機が回動移動システムに引き込まれている状態を示す斜視図である。
図14】シールド掘進機が載置架台に搭載された後、昇降ジャッキがジャッキアップして反力架台が持ち上げられ、横移動用レールの上に移動用ソリが設置されている状態を示す斜視図である。
図15】昇降ジャッキがジャッキダウンして反力架台が移動用ソリに搭載され、横移動姿勢が形成されている状態を示す斜視図である。
図16】回動移動位置において、昇降ジャッキがジャッキアップして反力架台が持ち上げられている状態を示す斜視図である。
図17】横移動用レールから移動用ソリが撤去され、昇降ジャッキがジャッキダウンして反力架台が底版に着底している状態を示す斜視図である。
図18】回動用ジャッキが伸びて反力架台に反力を取り、ターンテーブルを回動させている状態を示す斜視図である。
図19】回動用ジャッキが縮んで第1係止部である係止ピンが次の第1被係止部である係止孔に移動し、係止されている状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係るシールド掘進機の回動移動システムと横移動システムについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0034】
[実施形態に係るシールド掘進機の回動移動システムと横移動システム]
図1乃至図19を参照して、実施形態に係るシールド掘進機の回動移動システムと横移動システムの一例について説明する。
ここで、図1A図1B、及び図1Cはそれぞれ、シールド掘進機を搭載した実施形態に係る回動移動システムの一例が、立坑の到達部から内部へ移動している状態を示す平面図、回動移動システムを備える実施形態に係る横移動システムの一例が横移動し、回動移動システムが回動している状態を示す平面図、及び、横移動システムが、立坑の発進部へ移動している状態を示す平面図である。また、図2図3はそれぞれ、実施形態に係る回動移動システムの一例を側方と斜め上方から見た図であり、図4は、図3のIV部の拡大図であって、回動手段の第1回動支承部がターンテーブルに接続され、第1係止部が反力架台の第1被係止部に係止されている状態を示す斜視図であり、図5は、図4のV部の拡大図であって、溝条のガイドレールに設けられている第1係止部を斜め上方から見た斜視図である。
また、図6(a)は、回動用ジャッキが伸びて係止ピンが係止孔に反力を取り、回動手段がターンテーブルを回動させている状態を示す図であり、図6(b)は、回動用ジャッキが縮んで係止ピンが係止孔から係脱している途中の状態を示す図であり、図6(c)は、さらに回動用ジャッキが縮んで係止ピンが係止孔から完全に係脱している状態を示す図である。また、図7は、ターンテーブルを構成する内側リングと外側リングをそれらの直径位置で切断した縦断面図であり、図8は、図7のVIII部の拡大図であって、載置架台とターンテーブルと反力架台により形成される荷重伝達機構と回動機構を説明する図であり、図9は、横移動用レールの上に移動用ソリが搭載され、移動用ソリの上に反力架台が搭載され、横移動手段により回動移動システムが横移動されている状態を説明する図であり、図10は、反力ピースの係止ピンが横移動用レールの係止孔に反力を取っている状態を説明する図である。
【0035】
まず、図1A乃至図1Cを参照して、立坑の内部においてシールド掘進機を回動移動と横移動させる、Uターン施工の概要を説明する。
【0036】
図示例の立坑10は平面視矩形を呈し、その中の1つの側壁12において、往路トンネルを施工してきたシールド掘進機Mが到達する到達部15と、次に同様のシールド掘進機Mにて復路トンネルを施工するために発進させる発進部16とを有する。立坑10は、鉄筋コンクリート製、鋼製(鋼殻)、鉄筋コンクリートと鋼殻のハイブリッド構造など、様々な仕様がある。
【0037】
立坑10の底版11には、到達部15と発進部16とを繋ぐ、2条1組で2組の横移動用レール20が敷設されている。尚、横移動用レール20の敷設数は図示例に限定されない。
【0038】
複数の横移動用レール20の上には、シールド掘進機Mを搭載して所定角度回動させる回動移動システム70が横移動自在に設置されており、この横移動用レール20と、横移動用レール20上に載置されて回動移動システム70が搭載される複数の移動用ソリ26(図9参照で、移動用コマ材と称することもできる)と、複数の移動用ソリ26の上に搭載された回動移動システム70を横移動させる横移動手段80(図9参照)とにより、横移動システム90が形成される。
【0039】
図1Aに示すように、立坑10の到達部15より、シールド掘進機Mが立坑10の内部へX1方向に引き込まれ、回動移動システム70の上に搭載される。図1Aに示す状態では、シールド掘進機Mのカッタヘッドは側壁12と反対側の側壁13に対向している。
【0040】
次いで、図1Bに示すように、横移動システム90により、シールド掘進機Mを搭載した回動移動システム70が横移動用レール20に沿って発進部16側へX2方向に横移動し、例えば到達部15と発進部16の中間当たりで横移動が停止される。この停止位置において、回動移動システム70により、シールド掘進機MがX3方向に所定角度(図示例は180度)回動される。この回動により、シールド掘進機Mのカッタヘッドは側壁12に対向する。
【0041】
次いで、図1Cに示すように、180度回動されたシールド掘進機Mを搭載する回動移動システム70を、横移動システム90にて発進部16の正面位置までX4方向に横移動させることにより、発進部16を介した復路トンネル施工のための発進準備が完了する。
【0042】
ここで、Uターン施工の形態は、図示例の他にも、例えば、到達部15から引き込んだシールド掘進機Mをまず回動移動システム70にて180度回動移動させた後、横移動システム90にてシールド掘進機Mを発進部16の正面位置まで連続的に横移動させる形態や、到達部15から引き込んだシールド掘進機Mを、横移動システム90にて発進部16の正面位置まで連続的に横移動させた後、当該正面位置にて回動移動システム70にて180度回動移動させる形態などであってもよい。
【0043】
次に、図2乃至図8を参照して、実施形態に係る回動移動システムの一例について説明する。
【0044】
回動移動システム70は、シールド掘進機Mが載置される載置架台40と、立坑10の底版11に着底される反力架台30と、載置架台40と一体とされ、反力架台30に対して回動可能に支持され、リング状を呈しているターンテーブル50と、ターンテーブル50を回動させる回動手段60とを有する。
【0045】
載置架台40は、複数の平板状の鋼材41の積層体と、この積層体の最上部に積層されて、上面がシールド掘進機Mの鋼殻と同様の曲率を備え、当該シールド掘進機Mが直接載置される載置鋼材42とを有し、各鋼材同士が不図示のボルト等により相互に接合されている。
【0046】
回動手段60は、ターンテーブル50に対して回動自在に接続されている第1回動支承部61と、反力架台30の一部に係止される第1係止部62と、第1回動支承部61と第1係止部62を連結する回動用ジャッキ63とを備える。
【0047】
図3に示すように、回動手段60は、ターンテーブル50の外周位置において、90度間隔で計4基設置されている。
【0048】
第1回動支承部61は、回動用ジャッキ63の一端に設けられている位置合わせピンであり、ターンテーブル50の外周側面において90度間隔に位置合わせピン固定片51が取り付けられ、位置合わせピン固定片51の備える不図示の貫通孔に挿通された位置合わせピン61が、反力架台30の上面において同様に90度間隔で開設されている不図示の位置合わせピン孔に固定されている。
【0049】
本例では、ターンテーブル50の回動によってシールド掘進機Mを180度回動移動させることから、ターンテーブル50に対して90度間隔に取り付けられている4基の回動手段60の位置合わせピン61を視認することで、ターンテーブル50の回動角度を確認することができ、精度よく180度回動していることを保証することができるようになっている。
【0050】
ターンテーブル50は、内側リング50Aと外側リング50Bとにより形成される。図示例では、内側リング50Aと反力架台30がボルト接合等により一体とされ、外側リング50Bと載置架台40がボルト接合等により一体とされている。
【0051】
すなわち、「載置架台40と一体とされ、反力架台30に対して回動可能に支持されているターンテーブル50」とは、より詳細には、「載置架台40と一体とされている外側リング50Bと、反力架台30に対して固定される内側リング50Aとを有するターンテーブル50において、反力架台30に対して外側リング50Bが回動可能に支持されている」となる。ここで、図示例とは逆の形態、すなわち、内側リング50Aと載置架台40がボルト接合等により一体とされ、外側リング50Bと反力架台30がボルト接合等により一体とされている形態であってもよい。
【0052】
底版11に反力架台30が着底された状態で、4基の回動手段60が同期駆動することにより、内側リング50Aに対して外側リング50Bが回動移動し、外側リング50Bと一体とされている載置架台40の上に載置されるシールド掘進機Mが回動移動することになる。
【0053】
図3図4に示すように、反力架台30の上面のうち、ターンテーブル50の外郭ラインよりも外側には、溝条のガイドレール35が設けられている。そして、ガイドレール35の底面には、ガイドレール35の長手方向に所定の間隔を置いて、回動手段60の第1係止部62が係止される第1被係止部36が設けられている。
【0054】
ここで、第1係止部62は、回動用ジャッキ63の他端に設けられている不図示の貫通孔に挿通される係止ピンである。
【0055】
一方、係止ピン62の下端が係止される第1被係止部36は係止孔である。図4図5に示すように、係止孔36は、ガイドレール35の長手方向に長いトラック状(横長楕円形)の平面視形状を呈している。
【0056】
さらに、係止孔36のうち、ターンテーブルの回動方向の前方には、ガイドレール35の天端に摺り付く第1傾斜面36bが設けられている。尚、図5において、係止孔36におけるターンテーブルの回動方向の後方は、係止ピン62が反力を取る反力孔壁36aとなっている。
【0057】
対して、図6(a)に示すように、係止ピン62のうち、ターンテーブルの回動方向の前方には、係止ピン62の下端に向かって傾斜した第2傾斜面62aが設けられており、係止孔36の第1傾斜面36bと係止ピン62の第2傾斜面62aのそれぞれの水平面からの傾斜角度は同程度に設定されている。
【0058】
ここで、図6を参照して、回動手段60によるターンテーブル50の回動移動態様を説明する。尚、図6は、溝条のガイドレール35、第1被係止部36、及び第1係止部62のみを取り出して説明した図である。
【0059】
まず、図6(a)に示すように、回動手段60の一端にある係止ピン62が、ガイドレール35に設けられている複数の係止孔36のうちの1つの係止孔36に係止されれる。この係止状態において、係止ピン62の側面後方は、係止孔36の反力孔壁36aに当接しており、この段階で回動用ジャッキ63は図3図4に示すように縮んだ状態となっている。
【0060】
次に、回動用ジャッキ63が駆動して図2に示すように伸びた際に、係止ピン62は反力孔壁36a(及び底版11に着底している反力架台30)に反力を取ることにより、ターンテーブル50の外側リング50BをY1方向へ回動移動させる。
【0061】
図示例では、4基の回動手段60の回動用ジャッキ63が同期駆動されて、回動用ジャッキ63の伸び分に相当する回動角度だけ、外側リング50Bと載置架台40に載置されるシールド掘進機Mが回動移動する。
【0062】
次に、図6(b)に示すように、回動用ジャッキ63を縮めることにより、回動用ジャッキ63の後方にある係止ピン62がターンテーブルの回動方向へ移動する。この際、係止ピン62の第2傾斜面62aが係止孔36の第1傾斜面36bに沿ってY2方向へ案内されることにより、係止ピン62が係止孔36からスムーズに係脱されることになる。
【0063】
ここで、図4に示すように、係止ピン62の天端には回動防止片65が設けられており、回動防止片65は回動用ジャッキ63の後方側面(ターンテーブルの回動方向と反対側の側面)に係止されている。このように、係止ピン62の備える回動防止片65が回動用ジャッキ63の一部に係止されて係止ピン62の回動が抑制されることにより、係止ピン62の方向が規定され、第1傾斜面36bに対する第2傾斜面62aの乗り上げが保証される。
【0064】
次に、図6(c)に示すように、係止孔36から係脱した係止ピン62は、次の係止孔36側へY3方向に移動し、次の係止孔36に係止されることになる。
【0065】
すなわち、ガイドレール35の長手方向に設けられている各係止孔36の間隔は、回動用ジャッキ63に設定されているストローク長と同程度の長さである。
【0066】
このように、回動用ジャッキ63が伸びる際には係止ピン62が係止孔36から反力を取ってターンテーブル50Bを回動移動させ、回動用ジャッキ63を縮めた際に係止ピン62が係止孔36からスムーズに係脱して次の係止孔36に移動して係止されることから、これを所定回繰り返すことにより、底版11に着底している反力架台30に反力を取りながら、スムーズかつ高精度に所望する回動角度(図示例は180度)のシールド掘進機Mの回動移動を実現できる。
【0067】
ここで、図示例は、係止ピン62と係止孔36の双方が傾斜面を備える形態であるが、いずれか一方のみが傾斜面を備えている形態であってもよい。
【0068】
次に、図7図8を参照して、ターンテーブル50の具体的な構成と、ターンテーブル50により形成される各種機構について説明する。
【0069】
ターンテーブル50を構成する内側リング50Aの外周面には、全周に亘る凹条53が設けられており、同様にターンテーブル50を構成する外側リング50Bの内周面には、凹条53に収容される凸条54が設けられている。そして、凸条54の上面と側面と下面、及び凹条53とにより、回動方向に延びる3つの溝空間55A,55B,55Cが形成される。各溝空間55A,55B,55Cにはいずれも、複数のローラ56A,56B,56Cが収容される。
【0070】
このように、内側リング50Aと外側リング50Bの間に形成される3つの溝空間55A,55B,55Cと、これら各溝空間55A,55B,55Cに収容される複数のローラ56A,56B,56Cとにより、内側リング50Aに対して外側リング50Bをスムーズに回動移動させる回動機構58が形成される。
【0071】
さらに、図8に示すように、シールド掘進機Mの荷重を、載置架台40から外側リング50B,凸条54,ローラ56C、及び内側リング50Aを介して、反力架台30へY5方向、Y6方向、及びY7方向に安定的に伝達する荷重伝達機構59が形成される。
【0072】
ローラ56Cは、作用する荷重を線支持して荷重分散することとなり、例えば鉄球等からなるベアリングのように、荷重を点支持する際の過度な集中荷重に起因して鉄球が当接部材へ食い込むといった課題を解消できることから、安定的に荷重を伝達可能な荷重伝達機構59の形成に寄与する。
【0073】
尚、図8に示すように、反力架台30は、環状で板状の複数の鋼材31の積層体が繋ぎ鋼材33により一体とされ、積層体の上にガイドレール35を備える上部鋼材32が設置され、積層体と上部鋼材32が別途の繋ぎ鋼材34により一体とされることにより、全体が形成される。鋼材31の厚みや枚数を調整することにより、反力架台30の高さを所望に調整することができる。
【0074】
次に、図9乃至図19を参照して、実施形態に係る横移動システムの一例について説明する。
【0075】
図9に示すように、横移動システム90は、シールド掘進機Mを載置する回動移動システム70を横移動用レール20に沿って横移動させるシステムである。尚、図11に示すように、回動移動システム70は、複数の形鋼材により形成される引き込み架台30A(反力架台の他の例)の内部に配設されている。図9に示す横移動システム90は、立坑10の底版11において到達部15と発進部16を繋ぐように敷設される横移動用レール20と、横移動用レール20の上に搭載されて回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aが搭載される複数の移動用ソリ26と、回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aを横移動させる横移動手段80とを有する。
【0076】
立坑10の底版11には、2条1組で2組の横移動用レール20が、アンカー筋等によって接合された態様で敷設されている。横移動用レール20には、その長手方向に間隔を置いて第2被係止部22が設けられており、複数の第2被係止部22の左右位置には、横移動用レール20の長手方向に沿って延びる一対の逸脱防止突起24が設けられている。
【0077】
逸脱防止突起24は、横移動手段80を形成して第2被係止部22に係止される第2係止部82が、次の第2被係止部22に移動する際に左右方向に逸脱することを防止するための突起である。
【0078】
計4つの横移動用レール20に対応するように、計4基の横移動手段80が引き込み架台30Aに接続される。横移動手段80は、引き込み架台30Aに対して回動自在に接続されている第2回動支承部81と、横移動用レール20の第2被係止部22に係止される第2係止部82と、第2回動支承部81と第2係止部82を連結する横移動用ジャッキ83とを備える。
【0079】
ここで、横移動用ジャッキ83には、例えば回動用ジャッキ63と異種のジャッキを適用してもよいが、同様の重量物を回動移動もしくは横移動させることから、同種(同性能)のジャッキを適用することができる。
【0080】
図9図10に示すように、第2被係止部22は係止孔である。また、図10に示すように、第2係止部は、係止ピン84を下方に備えた反力ピース82である。
【0081】
係止ピン84のうち、回動移動システム70の横移動方向の前方には、係止ピン84の下端に向かって傾斜した第3傾斜面84aが設けられている。
【0082】
図10に示すように、係止孔22の後方の反力孔壁22aと係止ピン84が当接した状態で、横移動用ジャッキ83が伸びた際に、係止ピン84が反力孔壁22a(及び底版11)に反力を取ることで、横移動用レール20の上に搭載され、回動移動システム70が載置された移動用ソリ26を横移動用レール20に沿って横移動させることができる。この際、4基の横移動用ジャッキ83は同期駆動される。横移動用ジャッキ83の伸び量分だけ、回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aが横移動される。
【0083】
次に、横移動用ジャッキ83を縮めることにより、横移動用ジャッキ83の後方にある反力ピース82の係止ピン84は、その第3傾斜面84aが係止孔22の乗り上げ壁22bのエッジに沿って乗り上げることにより、係止孔22からスムーズに係脱されることになる。
【0084】
ここで、図示例は、乗り上げ壁22bが傾斜面を備えていないが、例えば、乗り上げ壁22bが、横移動用レール20の天端に摺り付く第4傾斜面(第3傾斜面84aと同程度の傾斜角度を有する)を備えている形態であってもよい。
【0085】
係止孔22から係脱した係止ピン84は、次の係止孔22に係止されることになる。すなわち、横移動用レール20の長手方向に設けられている各係止孔22の間隔は、横移動用ジャッキ83に設定されているストローク長と同程度の長さである。
【0086】
このように、横移動用ジャッキ83が伸びる際には、係止ピン84が係止孔22から反力を取って回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aを横移動させ、横移動用ジャッキ83を縮めた際に係止ピン84が係止孔22からスムーズに係脱して次の係止孔22に移動して係止される。そして、これを所定回繰り返すことにより、底版11に敷設される横移動用レール20に反力を取りながら、スムーズかつ高精度に所望する横移動距離の回動移動システム70の横移動を実現できる。
【0087】
図11は、立坑10の到達部15にシールド掘進機Mが到達するに当たり、回動移動システム70が発進部16側へ退避している状態を示している。
【0088】
図11では、複数の形鋼材(H形鋼)をシールド掘進機Mの引き込み及び押し出し方向に間隔を置いて並べ、これらの左右端を引き込み及び押し出し方向に伸びる形鋼材で繋いだ引き込み架台30Aの内部に、図2乃至図4等で示す回動移動システム70が組み込まれた構造体を示している。引き込み架台30Aのうち、載置架台40の周囲には、4基の昇降ジャッキ45が設けられている。この構造体が、横移動用レール20に沿って、立坑10の内部を発進部16と到達部15の間で横移動することになる。
【0089】
到達部15にシールド掘進機Mが到達した後、図12に示すように、回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aを横移動用レール20に沿って横移動させ、到達部15に到達しているシールド掘進機Mの正面に位置合わせする。
【0090】
次に、図13に示すように、引き込み架台30Aと回動移動システム70の反力架台30を底版11上に着底させ、シールド掘進機Mを立坑Mの内部へZ1方向に引き込む。ここで、図示例では、引き込み架台30A(及び反力架台30)の高さを高さ調整ピース37により調整している。
【0091】
次に、図14に示すように、4基の昇降ジャッキ45をZ2方向にジャッキアップして引き込み架台30A(及び反力架台30)を持ち上げ、引き込み架台30A(及び反力架台30)の下方にある横移動用レール20の上に移動用ソリ26を載置する。図示例では、各組の横移動用レール20に対して横移動方向に間隔を置いて2つの移動用ソリ26を載置している。
【0092】
次に、図15に示すように、4基の昇降ジャッキ45をZ3方向にジャッキダウンし、引き込み架台30A(及び反力架台30)を移動用ソリ26の上に搭載する。
【0093】
次に、引き込み架台30A(及び反力架台30)と横移動用レール20に対して、図9に示す横移動手段80を設置し、図9図10を参照して既に説明した通りの方法で、横移動手段80にて移動用ソリ26に搭載されている回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aを横移動用レール20に沿って横移動させる。より詳細には、図1Bを参照して説明した通り、到達部15と発進部16の中間位置当たりまで回動移動システム70を含む引き込み架台30Aを横移動させ、そこで横移動を停止する。
【0094】
次に、図16に示すように、4基の昇降ジャッキ45をZ4方向にジャッキアップして引き込み架台30A(及び反力架台30)を持ち上げ、引き込み架台30Aの下方にある移動用ソリ26を撤去する。
【0095】
次に、図17に示すように、4基の昇降ジャッキ45をZ5方向にジャッキダウンし、引き込み架台30A(及び反力架台30)を底版11に着底させる。この引き込み架台30A(及び反力架台30)の着底により、ターンテーブル50は底版11に反力を取りながら搭載するシールド掘進機Mを回動可能になる。
【0096】
尚、図17からも明らかなように、昇降ジャッキ45がジャッキダウンした際に、引き込み架台30A(及び反力架台30)は昇降ジャッキ45よりも下方に位置する高さを有することから、昇降ジャッキ45は底版11から上方へ持ち上げられた位置となる。
【0097】
次に、図18図19に示すように、回動手段60の回動用ジャッキ63を駆動させ(より具体的には、90度間隔で設置される4基の回動手段60の各回動用ジャッキ63を同期駆動させる)、回動用ジャッキ63が伸びることで外側リング50Bが回動され、次に回動用ジャッキ63が縮むことで係止ピン62がガイドレール35における次の係止孔36に移動して係止される。これを所定回繰り返すことにより、シールド掘進機Mを180度回動移動する。
【0098】
最後に、図1Cを参照して説明した通り、横移動システム90により、回動移動システム70を内部に備えた引き込み架台30Aを横移動させ、発進部16の正面位置に位置合わせする。
【0099】
図示するシールド掘進機の回動移動システム70と横移動システム90によれば、立坑10の内部においてシールド掘進機Mを回動移動と横移動させる施工において、特定の専門工事業者によるUターン装置の操作を不要にして、誰でも操作可能であって、スムーズかつ安全性の高いシールド掘進機Mの回動移動と横移動を実現できる。
【0100】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0101】
10:立坑
11:底版
12,13:側壁
15:到達部
16:発進部
20:横移動用レール
22:第2被係止部(係止孔)
22a:反力孔壁
22b:乗り上げ壁
24:逸脱防止突起
26:移動用ソリ
30:反力架台
30A:引き込み架台(反力架台)
31:鋼材
32:上部鋼材
33,34:繋ぎ鋼材
35:ガイドレール(溝条のガイドレール)
36:第1被係止部(係止孔)
36a:反力孔壁
36b:第1傾斜面
37:高さ調整ピース
40:載置架台
41:鋼材
42:載置鋼材
45:昇降ジャッキ
50:ターンテーブル
50A:内側リング
50B:外側リング
51:位置合わせピン固定片
52:位置合わせピン孔
53:凹条
54:凸条
55A,55B,55C:溝空間
56A,56B,56C:ローラ
58:回動機構
59:荷重伝達機構
60:回動手段
61:第1回動支承部(位置合わせピン)
62:第1係止部(係止ピン)
62a:第2傾斜面
63:回動用ジャッキ
65:回動防止片
70:回動移動システム
80:横移動手段
81:第2回動支承部
82:第2係止部(反力ピース)
83:横移動用ジャッキ
84:係止ピン
84a:第3傾斜面
90:横移動システム
M:シールド掘進機
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19