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  • -絞り機構及びレンズ鏡筒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025122602
(43)【公開日】2025-08-21
(54)【発明の名称】絞り機構及びレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/06 20210101AFI20250814BHJP
   G03B 9/02 20210101ALI20250814BHJP
【FI】
G03B9/06
G03B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034472
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2024017736
(32)【優先日】2024-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】田内 久真
【テーマコード(参考)】
2H080
【Fターム(参考)】
2H080AA22
2H080AA27
2H080AA38
2H080AA54
(57)【要約】
【課題】絞り羽根の動作安定性が向上し、設計自由度が向上し、小型化された絞り機構を提供すること
【解決手段】絞り羽根と固定部材と回転部材とを有する絞り機構において、前記絞り羽根は、複数枚の第1の絞り羽根が構成する第1の絞り羽根群と複数枚の第2の絞り羽根が構成する第2の絞り羽根群とからなり、前記第1の絞り羽根は、固定ダボと移動ダボとを有し、前記固定部材と前記回転部材のいずれか一方は、前記固定ダボと嵌合する嵌合孔を有し、前記固定部材と前記回転部材の他方は、前記移動ダボと係合するカム溝を有し、前記第2の絞り羽根は、前記移動ダボが挿通する挿通孔を有し、前記回転部材が回転することで前記移動ダボと前記カム溝との位置関係が変化し、前記絞り羽根が開閉駆動することを特徴とする絞り機構
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り羽根と固定部材と回転部材と
を有する絞り機構において、
前記絞り羽根は、
複数枚の第1の絞り羽根が構成する第1の絞り羽根群と複数枚の第2の絞り羽根が構成する第2の絞り羽根群とからなり、
前記第1の絞り羽根は、
固定ダボと移動ダボとを有し、
前記固定部材と前記回転部材のいずれか一方は、前記固定ダボと嵌合する嵌合孔を有し、
前記固定部材と前記回転部材の他方は、前記移動ダボと係合するカム溝を有し、
前記第2の絞り羽根は、
前記移動ダボが挿通する挿通孔を有し、
前記回転部材が回転することで前記移動ダボと前記カム溝との位置関係が変化し、前記絞り羽根が開閉駆動することを特徴とする絞り機構
【請求項2】
前記第1の絞り羽根の先端は、前記第2の絞り羽根群が形成する開口形状よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の絞り機構
【請求項3】
前記第2の絞り羽根は、複数の前記移動ダボが挿通することを特徴とする請求項1に記載の絞り機構
【請求項4】
前記第2の絞り羽根は、複数の前記移動ダボが挿通することを特徴とする請求項2に記載の絞り機構
【請求項5】
前記第2絞り羽根群は、光軸方向において前記第1絞り羽根群の編み上がり方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の絞り機構
【請求項6】
1つの前記移動ダボが前記挿通孔に挿通する前記第2の絞り羽根は、前記第2の絞り羽根の外縁に位置し、前記挿通孔に挿通される前記移動ダボとは異なる前記移動ダボにて規制されることを特徴とする請求項1に記載の絞り機構
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の絞り機構を備えることを特徴とするレンズ鏡筒
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構及び絞り機構を備えたレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、絞り機構の開口形状は、できるだけ円形に近いことが望ましく、円形に近い絞り開口を形成するにあたり、複数枚の絞り羽根が用いられることが多い。複数枚の絞り羽根は、環状に重なり合って配置される。また、複数枚の絞り羽根は、回動可能な駆動リングが回動することで、開口形状のサイズ変更が可能である。
【0003】
一般に、複数枚の絞り羽根が光軸を中心に環状に重なり合って配置される絞り機構では、絞り込む(つまり、開口形状が小さくなる。)につれて、絞り羽根の開口形状付近が反り上がっていく。絞り羽根が反り上がることで、絞り機構に隣接するレンズに干渉する虞がある。具体的には、レンズと接触することでレンズ表面に施されているコートを傷つけてしまったりする。
【0004】
そのため、従来の絞り装置では、絞り羽根の反り上がり量のスペースを考慮し、絞り機構とレンズを配置する必要があるため、光学設計の制約やレンズ鏡筒の小型化に不利であった。
【0005】
特許文献1は、絞り羽根の迫り上がりを抑える方法として、迫り上がりの方向と反対方向に絞り羽根を抑えるための斜面部を設けた光量調節装置ことを開示している。
【0006】
特許文献2は、絞り羽根を長くして開口部材の内径から出ないようにすることで反り上がりの量を低減した光量調節装置を開示している。
【0007】
特許文献3は、絞り羽根が二重となっており、絞り羽根同士の重なり合いによる編み上がりを抑える羽根駆動装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-8853号公報
【特許文献2】特開2020-134724号公報
【特許文献3】特許6654640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の光量調節装置は、絞り羽根の迫り上がりはレンズ鏡筒の姿勢によっても変化するため、当接する斜面部では迫り上がり防止の効果としては限度があるという課題を有する。
【0010】
次に、特許文献2に記載の光量調節装置は、絞り羽根を長くする方法では、絞り羽根の端の掛りが十分でないと外部から光量調節装置に衝撃があった場合、絞り羽根の先端が内径側に飛び出し、駆動による復帰が不可になることがある。また、十分な掛かりを確保しようとした場合、絞り機構が全体的に大型化してしまうという課題を有する。
【0011】
最後に、特許文献3に記載の羽根駆動装置は、2つの絞り機構を互いにせり上がるように配置し、お互いに押さえあうことで開口部のせり上がりを押さえている。しかし、良好な開口形状を得るために絞り羽根の枚数を増やしていくと、応じて部品点数も増えてゆき、コストが嵩む他、光軸方向の絞り羽根の収納スペースも確保する必要があるいう課題を有する。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、絞り羽根の動作安定性が向上し、設計自由度が向上し、小型化された絞り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段である第1の発明は、絞り羽根と固定部材と回転部材とを有する絞り機構において、前記絞り羽根は、複数枚の第1の絞り羽根が構成する第1の絞り羽根群と複数枚の第2の絞り羽根が構成する第2の絞り羽根群とからなり、前記第1の絞り羽根は、固定ダボと移動ダボとを有し、前記固定部材と前記回転部材のいずれか一方は、前記固定ダボと嵌合する嵌合孔を有し、前記固定部材と前記回転部材の他方は、前記移動ダボと係合するカム溝を有し、前記第2の絞り羽根は、前記移動ダボが挿通する挿通孔を有し、前記回転部材が回転することで前記移動ダボと前記カム溝との位置関係が変化し、前記絞り羽根が開閉駆動することを特徴とする絞り機構
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絞り羽根の動作安定性が向上し、設計自由度が向上し、小型化された絞り機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る絞り機構を示す分解斜視図
図2】本発明の実施例に係る絞り羽根の拡大図
図3a】本発明の実施例に係る絞り機構の開放状態の平面図
図3b】本発明の実施例に係る絞り機構の絞った状態の平面図
図4】本発明の実施例に係る絞り機構の断面図
図5】本発明の実施例に係る絞り機構の掛り量を説明する説明図
図6】本発明の実施例2に係る絞り機構の絞った状態の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。また、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る絞り機構1の要部を示す分解斜視図である。尚、図1は、本発明の絞り機構1のみに簡略化されている。図2は、絞り機構1を構成する絞り羽根10の第1羽根11と第2羽根12の拡大図である。図3(a)と(b)は、絞り機構1の平面図である。図4は、絞り機構1の断面図である。図5は、絞り機構1を構成する第1羽根の掛り量を説明する説明図である。尚、本実施例中では、不図示のレンズ鏡筒を構成する絞り機構1を基に、絞り機構1の光軸に沿った方向を光軸方向、絞り機構1の外周に沿った方向を周方向とする。具体的には、図1における光軸方向は、紙面上に配置された各部材の中心を通る光軸に沿った方向となり、光軸に対する円周が周方向となる。図3図5における光軸方向は、紙面裏表方向となり、周方向は紙面水平方向となる。図4における光軸方向は、紙面上下方向となる。尚、各図面中の符号は、一部省略している。同様の構成要素であれば同じ符号となる。
【0018】
図1を用いて、本願実施例の絞り機構1の構成を説明する。尚、図中の移動ダボ112は、第1羽根11の固定部材30側の面に配置されるので点線で示している。固定ダボ111は、回転部材20側の面に配置される。
【0019】
本願発明の絞り機構1は、レンズ鏡筒に組み込まれて用いられるのが一般的であり、不図示のレンズ鏡筒は、撮像装置に対して装着されており、交換可能でも固定されていても問題ない。内部には不図示の光学素子を備える。
【0020】
絞り機構1は、絞り羽根10と回転部材20と固定部材30とを備える。
【0021】
絞り羽根10は、第1羽根11と第2羽根12とからなる。本願実施例の絞り機構1は、12枚の第1羽根11と4枚の第2羽根12を有するが、第1羽根11と第2羽根12の枚数はこれに限定されない。
【0022】
図2は、固定部材30側から見た図1の絞り機構1を構成する第1羽根11と第2羽根12の拡大図である。尚、図中に記載の第1羽根11は、左側の弧が第1開口部C1を形成する内円側となり、下側が先端となる。また、図中の固定ダボ111は、裏側に位置するので点線で示している。
【0023】
図3は、固定部材30側から見た図1の絞り機構1から固定部材30を外した平面図である。(a)は、開放状態の絞り機構1を示す。(b)は、(a)に示す絞り機構1の開放状態から1段絞った状態を示す。
【0024】
第1羽根11は、固定ダボ111と移動ダボ112を有し、片面に固定ダボ111が配置され、もう一方の面には移動ダボ112が配置される。第2羽根12は、移動ダボ112が挿通する挿通孔121を有する。
【0025】
第2羽根12の挿通孔121について説明する。第2羽根12の挿通孔121は、第1挿通孔121aと第2挿通孔121bの2種類ある。尚、本願実施例の第1挿通孔121aは丸孔、第2挿通孔121bは長孔である。第1挿通孔121aも第2挿通孔121bのどちらも、環状に複数枚配置されている第1羽根11のうち、任意の2枚の第1羽根11の移動ダボ112が第1挿通孔121aと第2挿通孔121bとにそれぞれ挿通され、挿通された移動ダボ112は、固定部材30のカム溝31と係合する。従って、回転部材20が回転操作された場合、移動ダボ112はカム溝31に従動するので、挿通される第2羽根12も第1挿通孔121aと第2挿通孔121bの形状と配置によって動きを制御することが可能である。
【0026】
また、本願実施例の絞り機構1は、第1羽根11が固定部材30側に編み上がるように環状に配置されている。従って、第2羽根12は、第1羽根11の固定部材30側に配置されることとなる。
【0027】
回転部材20は、嵌合孔21を有する。嵌合孔21は、第1羽根11の固定ダボ111が嵌合する。
【0028】
固定部材30は、カム溝31を有する。カム溝31は、第1羽根11の移動ダボ112が係合する。
【0029】
絞り機構1の機能である。絞りを通過する光量調節機能を実現するためには、複数枚の第1羽根11が形成する第1開口部C1の径を変化させる必要がある。以下に具体的に絞り機構1を構成する各部材が、光量調節時にどのように動くか説明する。
【0030】
絞り機構1の光量調節機能を実現するには、回転部材20を回転させる必要がある。不図示のレンズ鏡筒外周に設けられた絞りリングなどを操作することで、機構的に接続された回転部材20が回転する。勿論、機構的に接続されていなくても撮影者からの絞り値変更の意図に基づいて、モーターなどにより回転部材20を回転させることとしてもよい。
【0031】
回転部材20が回転すると、回転部材20の嵌合孔21へ嵌合している固定ダボ111を介して第1羽根11へ回転が伝達される。回転が伝達することで、第1羽根11自体は光軸を中心に回転する。この時、固定ダボ111の配置される第1羽根11の反対側の面には、移動ダボ112が配置されている。第2羽根12の挿通孔121に挿通している移動ダボ112は、挿通孔121を挿通し、固定部材30のカム溝31と係合しているので、カム溝31に沿って移動するため、移動ダボ112と光軸との距離が変化する。そのため、固定ダボ111と光軸を基準に見たとき、第1羽根11は、固定ダボ111を軸として回転運動することとなる。従って、環状に配置された複数枚の第1羽根11から形成される第1開口部C1が変化するので絞り機構1は開閉駆動することとなる。
【0032】
この時、移動ダボ112は、第2羽根12の丸孔の第1挿通孔121aと長孔の挿通孔121bそれぞれに挿通している。第2羽根12の光軸に対する位置と姿勢は移動ダボ112の光軸に対する位置によって規定される。前述したように回転部材20の回転に伴って、移動ダボ112と光軸との距離が変化すると、第2羽根12の光軸に対する位置と姿勢も変化することとなり、その結果、環状に配置された複数枚の第2羽根12から形成される第2開口部C2が変化する。
【0033】
以上のことから、第1開口部C1を形成する第1羽根11の光軸に対する位置と姿勢は固定部材30のカム溝31によって決まる。そして、本願発明の絞り機構1は、複数枚の第1羽根11によって形成される第1開口部C1が変化する。前述したように、第2羽根12についても、位置と姿勢は固定部材30のカム溝31によって決まる。複数枚の第2羽根12によって形成される第2開口部C2も同様に変化する。尚、第1羽根11における姿勢とは、固定ダボ111と光軸を基準としたときの固定ダボ111を軸とした回転姿勢を示し、第2羽根12における姿勢とは、移動ダボ112と光軸を基準としたときの移動ダボ112を軸とした回転姿勢を示す。
【0034】
尚、挿通孔121の挿通していない移動ダボ112もカム溝31と係合しているので、当該移動ダボ112を有する第1羽根11へ回転部材20から回転が伝達された際の動きは、挿通孔121の挿通している移動ダボ112を有する第1羽根11と同様となる。
【0035】
図3aと図3bは、本願発明の絞り機構1を構成する第1羽根11と第2羽根12を光軸方向固定部材30側から見た平面図である。図3aは開放状態、図3bは開放状態から1段絞った状態である。尚、前述したように第1羽根11と第2羽根12はそれぞれ環状に配置されていることから、図3中の同じ構成要素の符号は一部省略されている。
【0036】
これまでの説明や図3の各図に示すように、本願実施例の絞り機構1には、12枚の第1羽根11が用いられている。1枚の第1羽根11に1つの移動ダボ112が配置されているので、移動ダボ112は12か所がある。一方、第2羽根12は4枚ある。第2羽根12は1枚につき第1挿通孔121aと第2挿通孔121bの2つの挿通孔があるので、12か所ある移動ダボ112の中から8か所の移動ダボ112へ挿通される。尚、1か所の移動ダボ112へ複数の挿通孔121が挿通されても問題ない。
【0037】
図3に記載の本願実施例の絞り機構1は、12枚の第1羽根が環状に配置された後、固定部材30側から見ると光軸を中心として周上に12か所の移動ダボ112が並んでいる。その中から任意の移動ダボ112へ1枚目の第2羽根12の第2挿通孔121bを挿通させ、時計回りに1つ飛ばした移動ダボ112に第1挿通孔121aを挿通する。再び時計回り側の移動ダボ112へ2枚目の第2羽根12の第2挿通孔121bを挿通させ、時計回り側に1つ飛ばした移動ダボ112に第1挿通孔121aを挿通する。以後3枚目と4枚目の第2羽根12も同様に繰り返し、4枚目の第2羽根12の第1挿通孔121aの先端を1枚目の第2羽根12の第2挿通孔121bの後端が固定部材30側となるように配置することで、4枚の第2羽根12は環状に配置される。
【0038】
尚、本願実施例の絞り機構1の第1羽根11と第2羽根12は、それぞれ12枚と4枚の組み合わせとしたが、レンズ鏡筒の光学設計に合わせてそれぞれの枚数を変更しても問題ない。第2羽根12の枚数は第1羽根11の枚数に依存しないので、第1羽根11も第2羽根12も本願実施例より少ない枚数で構成することが可能である。従って、開放状態で羽根を収納した際の羽根同士の重なり枚数を最小限に抑えることが可能となることから、絞り機構1の小型化に寄与する。
【0039】
また、良好な形状の第1開口部C1を得るために第1羽根11の枚数を増やした場合でも、第2羽根21の枚数を増やす必要がない。その結果、部品点数及び製造コストを抑えることが可能という効果を有する。
【0040】
次に、第1羽根11と第2羽根12のカム溝31に沿って従動する際の位置関係について説明する。本願発明の絞り機構1は、図3(a)から図3(b)へと第1羽根11が形成する第1開口部C1の開口面積が小さくなるにつれて、第2羽根12が形成する第2開口部C2の開口面積も小さくなる。この時、第1開口部C1の開口面積がいずれの状態であっても、常に第1羽根11の先端は、第2開口部C2よりも外側に位置するように設計されている。
【0041】
本願発明の絞り機構1のように、環状に配置された複数枚の絞り羽根を開閉することで光量を調整する絞り機構は、絞り羽根が反り上がる現象(絞り羽根の先端同士が編み上がること)が、発生することがある。特に絞り機構1の開口部である第1開口部C1が絞り込んだ小絞り径の際(最小絞り面積に近い状態)には、反り上がりの量が大きくなるために問題となりやすい。
【0042】
本願発明の絞り機構1は、前述したように常に第1羽根11の先端が第2開口部C2よりも外側に位置することで、第2開口部C2を形成する第2羽根12が反り上がろうとする第1羽根11の先端を物理的に押え込んでいる。従って、第1開口部C1の開口面積がどのような状態であっても、第1羽根11の反り上がりを防止することが可能である。さらに本願発明の絞り機構1は、外部からの衝撃を受けても第1羽根11が飛び出すことを防ぐことが可能である。以下に図4図5を用いて、詳しく説明する。
【0043】
図4は、絞り機構1を光軸に沿った方向に切断した断面図である。複数枚の絞り羽根10から構成される絞り機構1は、前述したように不図示のレンズ鏡筒が(図中の白抜き矢印方向に)衝撃を受けたことで、図4に示すように第1羽根11はたわむ。その結果、それまで光軸方向に固定部材30と重なる位置に配置されていた(以後、掛り)第1羽根11の先端は内径側へ移動する。つまり図4中第1羽根11の先端が矢印aから矢印bの位置へ移動することで、第1羽根11の先端の掛りが外れる(つまり、第1羽根11の先端と固定部材30との光軸方向での重なりがなくなる)ことから第1羽根11が飛び出すことが生じていた。これは第1開口部C1の状態に関係なく生じる虞がある。
【0044】
従来の絞り機構では、絞り羽根の先端が掛かるのは固定部材となるため、絞り羽根が掛ることが可能な領域は固定されている。一方、絞り羽根は、絞り値が大きくなるにつれて絞り込んでいくので絞り羽根の掛りが少なくなる状態が発生するので、常に絞り羽根の先端の掛り量を確保することが難しい。その結果、外部からの衝撃によって絞り羽根の先端が飛び出す懸念があるという課題を有していた。
【0045】
しかし、絞り羽根の飛び出しを防止するために、掛り量を十分に確保しようとした場合、絞り機構自体の大型化を招いてしまう。
【0046】
図5は、本願発明の絞り機構1の第1羽根11の掛り量を説明する説明図である。絞り機構1を構成する第1羽根11のうち特定の1枚を用いて説明する。この第1羽根11は先端部が6時位置に位置し、従来の絞り機構の構成であれば、絞り羽根11の掛り先は固定部材30であるので掛り量はZ2となる。一方、本願発明の絞り機構1の構成では、第1羽根11の掛り先は第2羽根12となるのでZ1となる。
【0047】
図5に図示するように従来の絞り機構の掛り量Z2と比べて本願発明の絞り機構1の第1羽根11の掛り量Z1の方が多いことがわかる。また、第2羽根12は、前述したようにカム溝31に従動するので第1羽根11の絞り込みに応じて第2羽根12の形成する第2開口部C2も小さくなるので、第1羽根11の構成する第1開口部C1の大きさに関わらず、常に掛り量を確保することが可能となる。
【0048】
以上のことから、本願発明の絞り機構1は、常に第1羽根11の先端を第2開口部C2が押えるので、第1羽根11の掛かりを確保するために絞り機構1自体の大型化を招くこともなく第1羽根11の反り上がりを防止する効果を有しながら、レンズ鏡筒がどのような姿勢であっても衝撃時の第1羽根11の飛び出しを防止することから、絞り機構1の動作安定性が向上するという効果も有する。
【0049】
尚、本願実施例の絞り機構1は、第2羽根12が第1羽根11の固定部材30側に配置されていたが、前述した効果を有するためには、第2羽根12は第1羽根11の反り上がる方向に配置する必要がある。
【0050】
また、これまで本実施例の絞り機構1は、回転部材20に固定ダボ111と嵌合する嵌合孔21を配置し、固定部材30に移動ダボ112と係合するカム溝31を配置する構成としていた。しかし、回転部材20に移動ダボ112と係合するカム溝31を配置し、固定部材30に固定ダボ111が嵌合する嵌合孔21を配置する構成としても問題ない。
【0051】
次に、本願発明の挿通孔121は、各図を見てわかるように第1挿通孔121aは丸孔、第2挿通孔121bは長孔としていた。しかし、丸孔と長孔を繋げて一つにしてもよい。第1挿通孔121aも第2挿通孔121bも前述したように移動ダボ112と係合することで第1羽根11の反り上がりと飛び出しを防止するという第2羽根12の役割を果たすことが可能であれば、挿通孔121の形状や個数は問題とならない。
【0052】
本願実施例の各第2羽根12は、2つの移動ダボ112が挿通しているが、各第2羽根12に挿通する移動ダボ112が1つしかない場合、当該第2羽根12は、挿通する移動ダボ112を中心に回転可能な状態となるため、位置と姿勢が不安定となる。第2羽根12が意図せず回転すると第1羽根11によって形成される第1開口形状の内側に第2羽根12の先端が飛び出し、絞り機構1本来の機能に支障をきたす虞がある。そのため、第2羽根12の内径は、回転方向の振られを考慮して径方向に大きくする必要があるが、第2羽根12の内径を大きくすると第1羽根11の先端の掛り量が少なくなる為、第2羽根12の効果が十分に発揮されなくなる。
【0053】
本願実施例の各第2羽根12は、2つの移動ダボ112が挿通している。孔と挿通する2つの移動ダボ112との寸法関係で姿勢が決まるため、精度が出しやすい。その結果、第2羽根の内径を最小限に抑えることが可能となり、第1羽根11の先端の掛り量を確保しやすいというメリットがある。
【0054】
また、第2羽根12の軌跡は、図3(a)と図3(b)を見てわかるように、絞り込むにつれて第1羽根11のように先端が内径側(光軸側)へ移動するのとは異なり、第2羽根12は先端だけでなく第2羽根12自体が内径側(光軸側)へ移動するようにしても問題ない。一方、第1羽根11のように第2羽根12の先端が光軸側へ回転運動することとしても問題ない。
【0055】
本願発明の絞り機構1は、第1羽根11が反り上がってきた際、レンズとの間に干渉を避けるためのスペースを確保する必要がないため、光学設計の自由度が向上するとともに、絞り機構1を備えたレンズ鏡筒の小型化に寄与する。
【0056】
本願発明の絞り機構1は、回転部材20と第1羽根11と固定部材30からなる一般的な絞り機構の構成に第2羽根12を加えたものであり、容易な構成である。回転部材20と第1羽根11と固定部材30は一般的な絞り機構と同様の構成で問題なく。前述したように第2羽根12は、移動ダボ112がカム溝31に従動するのに合わせて、第2羽根12が形成する第2開口部C2が第1羽根11の先端を押さえるよう、第2羽根12が移動するように機構設計された移動ダボ112が挿通する第1挿通孔121aと第2挿通孔121bとを備えることで本願発明特有の効果を実現することが可能となる。
【0057】
また、本願発明の絞り機構1は、第1羽根11が固定ダボ111と移動ダボ112を有するので、第2羽根12は、移動ダボ112が挿通する挿通孔のみを有する構成である。従って、前述したように一般的な絞り機構で第1羽根が反り上がる課題が発見された後、一般的な絞り機構に追加工することなく第2羽根を追加するということで本願発明の効果を有することが可能である。
【0058】
以上のことから、本願発明の絞り機構1は、第2羽根12の支点となる形状を設けたり、カム溝31を新たに長くする必要がなく、それらの要素を配置するためのスペースを確保する必要もないことから、絞り機構1の設計の自由度及び小型化を実現する効果を有する。
【0059】
(実施例2)
これまで説明してきた絞り機構1(以下、実施例1の絞り機構)とは、別案である実施例2の絞り機構1を図6を用いて説明する。図6は、図3aや図3bと同様に実施例2の絞り機構1を構成する第1羽根11と第2羽根12を光軸方向固定部材30側から見た平面図である。尚、図6に記載の実施例2の絞り機構1は、開放状態から1段絞った状態である。
【0060】
図6に記載の実施例2の絞り機構1は、物体側から回転部材20、第1羽根11、第2羽根12、固定部材30から構成され、図3aなどに記載された実施例1の絞り機構1と同様の構成となる。但し、実施例2の絞り機構1の絞り羽根10は、11枚の第1羽根と4枚の第2羽根とから構成されている。実施例1と実施例2の絞り機構1の差異は、第2羽根12となる。前述したように実施例1の第2羽根12は、丸孔の第1挿通孔121aと長孔の挿通孔121bと複数の挿通孔を有している。一方、実施例2の第2羽根12は、移動ダボ112の挿通する挿通孔121は1か所のみとなる。
【0061】
実施例2の絞り機構1は、各第2羽根12に挿通する移動ダボ112が1か所しかないので、第2羽根12は移動ダボ112を中心に回転可能な状態となることから位置と姿勢が不安定となる。そこで、実施例2の絞り機構1は、当該第2羽根12に挿通している移動ダボ112とは異なる移動ダボ112が当該第2羽根12の外縁に接している。具体的には、図6に示すように4時位置に配置されている第2羽根12を用いて説明する。当該第2羽根12は1つの挿通孔121を有し、移動ダボ112が挿通されている。当該第2羽根12の外縁は、2つの移動ダボ112が当接される。外縁で接する2つの移動ダボ112は、光軸と挿通孔112に挿通される移動ダボ112とを結んだ直線(図中の点線)により分けられた当該第2羽根12の外縁にそれぞれ接するよう配置する。その結果、外縁にて接する移動ダボ112によって当該第2羽根12の位置と姿勢が規制され、当該第2羽根が、挿通される移動ダボ112を中心に回転することも防止している。
【0062】
また、第2羽根12の外縁に接している2つの移動ダボ112は、当該第2羽根12に挿通されている移動ダボ112と光軸を結んだ直線により分けられた当該第2羽根12の外縁にそれぞれ接するように配置するよう説明してきた。しかし、実施例2の絞り機構1は、第2羽根12を挿通孔21に挿通される移動ダボ112を軸とした回転が規制される形状とすることで、当該第2羽根12の外縁に接する2つの移動ダボ112は、当該第2羽根12に挿通されている移動ダボ112と光軸を結んだ直線により分けられた当該第2羽根12の外縁の片側に配置されてもよい。
【0063】
尚、上記実施例2の説明では、第2羽根12と外縁に位置する移動ダボ112は接触していたが、両者は接触せずとも、移動ダボ112は第2羽根の回転防止し位置と姿勢を規制する役割を果たせば問題ない。また、第2羽根12の外縁とは、第2羽根12の外周に沿った領域となる。さらには、第2羽根12の外縁に位置する移動ダボ112の本数は、2つに限らず増減しても問題ない。
【0064】
実施例1の絞り機構1に開示する構成は、丸孔と長孔のそれぞれに挿通する移動ダボ112との寸法関係で姿勢が決まるため、精度を出しやすいという効果を有する。また、精度が出しやすいことで第1羽根11の先端の掛り量を確保しやすいという効果も有する。
【0065】
実施例2の絞り機構1に開示する構成は、第2羽根12の形状を簡略化することが可能である。また、丸孔の挿通孔121以外は移動ダボ112より外径側に第2羽根12が来ないため、絞り機構1の小型化に有利という効果を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 絞り機構
10 絞り羽根
11 第1羽根
111 固定ダボ
112 移動ダボ
12 第2羽根
121a 第1挿通孔
121b 第2挿通孔
20 回転部材
21 嵌合孔
30 固定部材
31 カム溝
C1 第1開口部
C2 第2開口部
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6