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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012291
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】建具および気密材
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20250117BHJP
   E06B 7/16 20060101ALI20250117BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20250117BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
E06B7/23 A
E06B7/16 B
E06B7/22 F
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115025
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞岩 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014DA05
2E036AA01
2E036AA02
2E036BA01
2E036CA01
2E036CA04
2E036DA02
2E036DA07
2E036DA09
2E036DA12
2E036EB07
2E036EB09
2E036EC03
2E036GA02
2E036HA01
2E036HB13
(57)【要約】
【課題】見付方向の寸法を小さくでき、かつ、気密性能を確保でき、光漏れなども低減できる気密材およびこの気密材を用いた建具を提供すること。
【解決手段】建具であるドアは、建具枠と障子とを備える。建具枠の少なくともいずれかの枠である下枠20は、障子の見込面に対向する枠見込面部21と、枠見込面部21から見付方向に突出された突出部22と、突出部22に取り付けられる気密材50と、を備える。気密材50は、突出部22に取り付けられるベース部51と、ベース部51から延出するタイト部55とを有する。タイト部55は、ベース部51から障子側に延出する延出片部56と、延出片部56の先端から分岐されたメインタイト片57およびサブタイト片58を備える。メインタイト片57およびサブタイト片58は、障子の閉鎖時に、障子の内外周方向に離れた位置で障子に当接する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠および左右の縦枠を備える建具枠と、
前記建具枠に対して室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられる障子と、を備える建具であって、
前記建具枠の少なくともいずれかの枠は、
前記障子の見込面に対向する枠見込面部と、
前記枠見込面部から見付方向に突出された突出部と、
前記突出部に取り付けられる気密材と、を備え、
前記気密材は、前記突出部に取り付けられるベース部と、前記ベース部から延出するタイト部とを有し、
前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、前記延出片部の先端から分岐されたメインタイト片およびサブタイト片を備え、
前記障子の閉鎖時に、前記メインタイト片および前記サブタイト片は、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接する
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記ベース部は、前記延出片部に連続して設けられる内周面部を有し、
前記突出部は、前記内周面部とほぼ同一平面とされた見込面部を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1に記載の建具において、
前記メインタイト片の先端は、前記障子の見込面よりも外周側に位置する
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1に記載の建具において、
前記建具枠の下枠に取り付けられる気密材と、前記建具枠の縦枠に取り付けられる気密材との接合部には、止水材が配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1に記載の建具において、
前記気密材は、前記ベース部と、前記延出片部と、前記メインタイト片とで三方が囲まれた空間を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項1に記載の建具において、
前記建具枠はドア枠であり、
前記障子は前記ドア枠に対して室外側に開閉される扉であり、
前記ドア枠の下枠は、
前記扉の下面に対向する下枠見込面部と、
前記下枠見込面部から見付方向に突出された下枠突出部と、を備え、
前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する前記延出片部と、前記延出片部の先端から分岐されて室外側に向かって斜め下方に延出された前記メインタイト片と、前記延出片部の先端から分岐されて室外側に向かって斜め上方に延出された前記サブタイト片とを備え、
前記障子の閉鎖時に、前記メインタイト片および前記サブタイト片は、上下方向に離れた位置で前記障子の室内面に当接する
ことを特徴とする建具。
【請求項7】
障子が室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられた建具枠に取り付けられる気密材であって、
前記建具枠に取り付けられるベース部と、
前記ベース部から延出するタイト部と、を有し、
前記タイト部は、
前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、
前記延出片部の先端から分岐され、前記障子の閉鎖時に、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接されるメインタイト片およびサブタイト片と、を備える
ことを特徴とする気密材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の玄関ドアや勝手口ドア等の建具およびこの建具に用いられる気密材に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア枠および扉を備えるドアにおいて、ドア枠の上枠、下枠および左右の縦枠にAT材(気密材)を取り付け、扉を閉めた際に、前記AT材を扉に当接させることで、気密性や水密性を高めたドアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の下枠は、扉の下面の下方に配置される下枠見込面と、この下枠見込面から上方に突出して扉の室内側に位置する立上り部とを備える。下枠に取り付けられるAT材は、下枠の立上り部に固定される固定部と、固定部に連続する中空部と、中空部の室外面の上端部から室外側斜め上方に突出するサブタイト片と、中空部の室外面においてサブタイト片よりも下方の位置から室外側斜め下方に突出するメインタイト片とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の下枠用のAT材において、メインタイト片による所定の気密性能を確保するためには、扉の室内面の下端からメインタイト片の基端部までの高さ寸法つまりメインタイト片の掛かり代を所定寸法、例えば7mm以上確保する必要がある。このため、サブタイト片の基端部がメインタイト片よりも上方に配置される特許文献1の下枠用のAT材では、扉の室内面の下端からサブタイト片の基端部までの高さ寸法、つまりAT材の下枠見付方向の寸法は7mmよりも大きくなり、例えば11mm程度になる。このため、AT材を保持する下枠の立上り部の高さ寸法つまり見付寸法も大きくなり、下枠見込面や下枠の室内側の土間などとの段差が大きくなるという課題がある。
また、2つのタイト片は、AT材の中空部の室外面において見付方向つまり上下方向の異なる位置から独立して突出しているため、特にメインタイト片に比べて突出寸法が小さいサブタイト片が扉の室内面に十分に当接しない状態となる可能性があり、その場合は、気密性能が低下し、光漏れも生じる可能性があった。
このため、見付方向の寸法を小さくでき、かつ、気密性能を確保でき、光漏れなども低減できる気密材およびこの気密材を用いた建具が求められている。
【0005】
本発明の目的は、見付方向の寸法を小さくでき、かつ、気密性能を確保でき、光漏れなども低減できる気密材およびこの気密材を用いた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を備える建具枠と、前記建具枠に対して室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられる障子と、を備える建具であって、前記建具枠の少なくともいずれかの枠は、前記障子の見込面に対向する枠見込面部と、前記枠見込面部から見付方向に突出された突出部と、前記突出部に取り付けられる気密材と、を備え、前記気密材は、前記突出部に取り付けられるベース部と、前記ベース部から延出するタイト部とを有し、前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、前記延出片部の先端から分岐されたメインタイト片およびサブタイト片を備え、前記障子の閉鎖時に、前記メインタイト片および前記サブタイト片は、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接することを特徴とする。
【0007】
本発明の気密材は、障子が室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられた建具枠に取り付けられる気密材であって、前記建具枠に取り付けられるベース部と、前記ベース部から延出するタイト部と、を有し、前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、前記延出片部の先端から分岐され、前記障子の閉鎖時に、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接されるメインタイト片およびサブタイト片と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、見付方向の寸法を小さくでき、かつ、気密性能を確保でき、光漏れなども低減できる気密材およびこの気密材を用いた建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の建具である勝手口ドアを示す内観姿図である。
図2】前記実施形態の勝手口ドアを示す縦断面図である。
図3】前記実施形態の勝手口ドアを示す横断面図である。
図4】前記実施形態のドア枠のコーナー部分を示す斜視図である。
図5】前記実施形態のドア枠のコーナー部分を示す分解斜視図である。
図6】前記実施形態の気密材を示す図である。
図7】前記実施形態の気密材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~3に示すように、本発明の建具である勝手口ドア(以下、ドア1と略称)は、いわゆる片開きドアであり、建物の外壁開口部に固定される建具枠であるドア枠2と、このドア枠2に開閉可能に支持される障子である扉8とを備えて構成されている。
なお、本実施形態のドア1は、図2、3に示すように、既設のドア枠2Bの内周側に新設のドア枠2を配置したリフォーム用のドア1である。なお、各図において、断面を示すハッチングは省略している。また、気密材50では、硬質樹脂部分をハッチングで表示し、軟質樹脂部分はハッチング無しで表示している。
【0011】
扉8は、図1に示すように、上框81、下框82、吊元側の縦框83、戸先側の縦框84を枠組みし、ガラス等の面材85を保持して構成された全面ガラスタイプの扉である。なお、扉8としては、全面ガラスタイプに限らず、上げ下げ障子や各種格子を設けたものなど、勝手口ドア用の各種の扉が利用できる。
【0012】
[ドア枠]
ドア枠2は、図2、3にも示すように、既設のドア枠2Bを介して、建物の躯体である梁91、土間92、柱93、94に固定されている。なお、既設のドア枠2Bは、既設上枠10B、既設下枠20B、既設縦枠30B、40Bを備える。
ドア枠2は、図1にも示すように、上枠10、下枠20および左右の縦枠30,40を有する。なお、図1の内観姿図において左側に配置される縦枠30は吊元側の縦枠であり、図1の右側に配置される縦枠40は戸先側の縦枠である。吊元側の縦枠30には、図3に示すように、扉8を開閉可能に連結する丁番4が取り付けられている。丁番4は、旗丁番などの一般的な丁番である。戸先側の縦枠40には、レバーハンドル5や錠ケースが取り付けられている。
【0013】
上枠10は、図2に示すように、中空形状の枠本体11と、枠本体11の下面から下方に延出された保持片12とを備えたアルミ押出形材で構成されている。保持片12には室外側に開口する保持溝が形成されており、この保持溝には後述する気密材(AT材)50が係合されている。
上枠10は、スペーサー13および既設上枠10Bを介して、建物の躯体である梁91にネジ15で固定されている。
【0014】
下枠20は、図2図4および図5に示すように、扉8の下面つまり見込面に対向する枠見込面部(下枠見込面部)21と、枠見込面部21から上方(下枠20の見付方向)に突出された突出部(下枠突出部)22とを備える。本実施形態の扉8は、ドア枠2に対して室外側に開閉されるため、突出部22は、閉鎖位置にある扉8の室内側に突出されている。
枠見込面部21の下面には、断面略L字状の固定片211が形成され、固定片211と土間92の上面との間にはスペーサー212が配置されている。そして、枠見込面部21に形成された開口を通して挿入されるネジ215を、固定片211およびスペーサー212を介して土間92にネジ込むことで、下枠20が土間92に固定されている。枠見込面部21の開口は、キャップ26で塞がれている。
【0015】
突出部22は、図6に示すように、枠見込面部21の室内側端縁から上方に延出された室内側見付面部221と、枠見込面部21から上方に延出され、室内側見付面部221よりも室外側に位置してビスホールを区画形成するビスホール部222と、ビスホール部222から上方に延出され、室内側見付面部221の室外側に位置する室外側見付面部223と、室内側見付面部221および室外側見付面部223の上端間を連結する見込面部224と、室外側見付面部223の内周側端部(上端部)から室外側に延出され、さらに下方に折曲された上保持片225と、ビスホール部222から室外側に延出され、さらに上方に折曲された下保持片226と、を有する。上保持片225および下保持片226の間には、後述する気密材50を保持する保持溝が形成されている。上保持片225の上面は、見込面部224の上面と同じ高さ、つまり面一とされている。
見込面部224には、開口が形成され、図2に示すように、開口から挿入されるネジ25を、枠見込面部21、既設下枠20Bを介して土間92にネジ込むことで、下枠20が土間92に固定されている。見込面部224の開口は、キャップ24で塞がれている。
【0016】
図3に示すように、吊元側の縦枠30は、上枠10と同様に、中空形状の枠本体31と、枠本体31の内周側見込面から内周側に延出された保持片32とを備えたアルミ押出形材で構成されている。保持片32には室外側に開口する保持溝が形成されており、この保持溝には気密材61が係合されている。
縦枠30は、スペーサー33および既設縦枠30Bを介して、建物の躯体である柱93にネジ35で固定されている。
【0017】
戸先側の縦枠40は、上枠10、縦枠30と同様に、中空形状の枠本体41と、枠本体41の内周側見込面から内周側に延出された保持片42とを備えたアルミ押出形材で構成されている。保持片42には室外側に開口する保持溝が形成されており、この保持溝には気密材62が係合されている。
縦枠40は、スペーサー43および既設縦枠40Bを介して、建物の躯体である柱94にネジ45で固定されている。
【0018】
縦枠30、40に取り付けられた気密材61、62の下端面(小口)と、下枠20に取り付けられた気密材50の上面との間には、図4および図5に示すように、止水材である止水スポンジ70が配置されている。止水スポンジ70は、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)などを利用したスポンジであり、気密材61、62の下端面と気密材50の上面との間で潰されて圧縮されることで、気密材61、62および気密材50間に隙間が生じることを防止し、気密材61、62と気密材50とで連続する気密・水密ラインを構成する。
【0019】
既設上枠10B、既設縦枠30B、40Bの室内側には、図2および図3に示すように、既設の額縁95が設けられている。額縁95の内周側には、既設上枠10B、既設縦枠30B、40Bを隠す室内カバー材100が取り付けられている。
梁91、柱93、94の室外側には、既設の外壁材96が設けられている。上枠10、縦枠30、40の室外面には、室外カバー材110が取り付けられている。室外カバー材110は、既設上枠10B、既設縦枠30B、40Bが室外側に露出しないように、上枠10、縦枠30、40の室外面と、外壁材96とに跨がって配置されている。図2に示すように、下枠20の室内側であり、土間92の上面には、突出部22と土間92との段差を軽減するスロープ状の段差解消部材120がネジ121で固定されている。
【0020】
[気密材]
次に、下枠20の突出部22に取り付けられる気密材50について、図6および図7を参照して説明する。なお、上枠10に取り付けられる気密材50は、下枠20の気密材50と同じ構成であるため、説明を省略する。また、縦枠30、40に取り付けられる気密材61、62は、従来と同様のものであるため、説明を省略する。
気密材50は、ベース部51と、タイト部55と、リップ部59を備える。
ベース部51は、硬質樹脂で構成される係合部52と、軟質樹脂で構成された中空形成部53とを備える。なお、中空形成部53に連続して形成されるタイト部55およびリップ部59も軟質樹脂で構成される。気密材50は、熱可塑性エラストマー(TPE)である各種の硬質樹脂や軟質樹脂を利用でき、例えば、硬質PVC(ポリ塩化ビニル)および軟質PVCを利用できる。
係合部52は、上保持片225および下保持片226の室外側に沿って配置されたプレート部521と、プレート部521から室内側に突出し、上保持片225および下保持片226に係合される係合片522とを備える。
中空形成部53は、プレート部521の上端から室外側に延出された内周面部531と、プレート部521の下端から室外側に延出された外周面部532と、内周面部531および外周面部532を連結する室外面部533とを備えている。中空形成部53およびプレート部521によって断面矩形状の中空部が形成されている。
【0021】
タイト部55は、ベース部51から室外側に延出された延出片部56と、延出片部56の先端から分岐されたメインタイト片57およびサブタイト片58とを備えている。
延出片部56は、内周面部531および室外面部533が接合された角部から延出されている。延出片部56は、図5および図6に示すように、止水スポンジ70が圧接されていないフリーの状態では内周面部531に対して約10度斜め上方に向く角度で形成されている。また、図4および図7に示すように、止水スポンジ70が気密材61、62の下端面で押されて潰された状態では、中空形成部53の上面と延出片部56の上面とは水平面つまり同一平面(面一)の状態とされている。また、中空形成部53の上面は、見込面部224および上保持片225の上面よりも僅かに高い位置に設けられている。但し、それらの高さの差は、0.5mm程度と非常に小さいため、中空形成部53の上面と、見込面部224および上保持片225の上面とは、ほぼ同一平面と見なすことができる。
また、延出片部56の中空形成部53に接合する基端部の下面には、凹溝が形成され、延出片部56の基端部の厚さ寸法(高さ寸法)は、延出片部56の他の部分に比べて小さくされている。この凹溝により、延出片部56は、図7に示す水平状態に容易に変形可能とされている。
【0022】
メインタイト片57は、延出片部56の先端から分岐されて斜め下方に延出されている。メインタイト片57は、断面円弧状に湾曲され、延出片部56に接続される基端部に対して先端は、水平方向に対して略50度の角度で下方に向くように延出されている。
メインタイト片57は、図2に示すように、扉8に当接されていないフリー状態で扉8の下面よりも下方に位置するように延出されている。このメインタイト片57は、図7に示すように、扉8の下框82の室内面に当接した状態では、リップ部59に近接する長さで形成されている。メインタイト片57の基端部にも凹溝が形成され、メインタイト片57が扉8に当接した際に、下向き方向に容易に変形可能とされている。
【0023】
サブタイト片58は、延出片部56の先端から分岐されて斜め上方に延出されている。サブタイト片58は、延出片部56に接続される基端部に対して先端は、水平方向に対して略50度の角度で上方に向くように延出されている。
サブタイト片58は、図6に示すように、扉8に当接されていないフリー状態で、先端の高さ位置が、止水スポンジ70の上面高さ位置とほぼ一致する長さで形成されている。サブタイト片58の基端部にもメインタイト片57との間で凹溝が形成され、サブタイト片58が扉8に当接した際に、上向き方向に容易に変形可能とされている。
【0024】
本実施形態の気密材50では、サブタイト片58の突出寸法、つまり延出片部56から分岐されたサブタイト片58の基端部から先端部までの長さ寸法は、延出片部56の延出寸法、つまり延出片部56のベース部51に接続される基端部からメインタイト片57、サブタイト片58が分岐される先端部までの長さ寸法よりも短く設定されている。また、延出片部56の延出寸法は、メインタイト片57の突出寸法、つまり延出片部56から分岐されたメインタイト片57の基端部から先端部までの長さ寸法よりも短く設定されている。
延出片部56の基端部は、ベース部51に対して変形可能、具体的には凹溝により折曲可能に連結されている。メインタイト片57の基端部は、延出片部56およびサブタイト片58に対して変形可能、具体的には2つの凹溝により折曲可能に連結されている。サブタイト片58の基端部は、延出片部56およびメインタイト片57に対して変形可能、具体的には凹溝により折曲可能に連結されている。
【0025】
リップ部59は、外周面部532および室外面部533が接合された角部から室外側斜め下方に延出されている。リップ部59は、中空形成部53に接続される基端部に対して先端は、水平方向に対して略20度の角度で下方に向くように延出されている。
【0026】
[実施形態の作用効果]
本実施形態のドア1によれば、気密材50は、メインタイト片57およびサブタイト片58を延出片部56から分岐して設けているので、ベース部51から各タイト片をそれぞれ独立して設けた場合に比べて、気密材50の見付方向の寸法を小さくできる。このため、気密材50を枠に取り付ける際の制約が少なくなり、様々な建具の枠に取り付けることができる。
扉8を閉めてメインタイト片57が扉8の下框82の室内面に当接すると、メインタイト片57は室内側に押されながら下向きに変形するため、延出片部56はメインタイト片57に連結される先端側が下方に移動するように変形し、サブタイト片58は先端側が室外側つまり扉8側に移動する。このため、メインタイト片57およびサブタイト片58を、確実に扉8に当接させることができる。すなわち、メインタイト片57およびサブタイト片58が延出片部56から分岐されているので、メインタイト片57が扉8に当接することで、サブタイト片58を室外側つまり扉8に当接する方向に移動させる作用が働き、メインタイト片57およびサブタイト片58が連動するため、扉8に確実に当接することができる。このため、メインタイト片57は、下框82の室内面の下端側に当接し、サブタイト片58は、メインタイト片57よりも上方つまり内周側の位置で下框82の室内面に当接するため、2重のタイトラインを形成でき、気密材50による気密性能を向上でき、ドア枠2および扉8の間からの光漏れも低減できる。
【0027】
メインタイト片57を、フリー状態でその先端が扉8の見込面よりも外周側つまり枠見込面部21側となるように設計しているので、ドア枠2を躯体側(梁91、土間92、柱93、94)に取り付けた際の施工誤差等によって、ドア枠2が例えば室内側から見て樽型や平行四辺形等に変形し、下枠20に対して扉8が上方に移動した場合でも、メインタイト片57の扉8に対する掛かり代を所定寸法確保してシール性を確保でき、施工追従性を向上できる。
【0028】
下枠20の気密材50と、縦枠30、40の気密材61、62との接合部に止水スポンジ70を配置したので、気密材50と気密材61、62との接合部からの水の浸入を防止でき、止水性能を向上できる。
【0029】
メインタイト片57が扉8に当接した場合、図7に示すように、延出片部56、メインタイト片57、室外面部533で三方が囲まれる空間を形成できるので、外気の流入を抑制でき、気密材50の断熱性能を向上できる。さらに、気密材50は、リップ部59を備えるため、メインタイト片57が扉8に当接した際に、メインタイト片57の先端がリップ部59に近づくことで、延出片部56、メインタイト片57、室外面部533で囲まれる空間の外気連通部分の面積が小さくなり、さらに外気が流入し難い空間を形成することができる。このため、気密材50には、中空形成部53および係合部52で区画される中空部に加えて、その室外側にほぼ中空部と見なせる空間が形成されるため、断熱性能を向上することができる。
【0030】
気密材50を下枠20の突出部22に取り付けているので、突出部22の高さ寸法も小さくできる。このため、既設下枠20Bや土間92と、下枠20との段差を小さくでき、出入りしやすいドア1とすることができる。
【0031】
[変形例]
本発明の建具は、前記実施形態の勝手口ドアに限定されず、アパート用等に用いられる玄関ドアでもよい。また、玄関ドアや勝手口ドアに限定されず、外開き窓や内開き窓等の障子が窓枠に対して室外側あるいは室内側に開閉される窓でもよいし、すべり出しヒンジ等を用いたすべり出し窓でもよく、さらに、複数の窓を組み合わせた段窓、連窓でもよい。
建具は、既設のドア枠2Bの内周側に取り付けられるリフォーム用の建具に限定されず、新設の玄関ドア、勝手口ドア、各種の窓等でもよく、建具枠に対して障子(扉)が見込方向に開閉される建具であればよい。
【0032】
ドア1を施工した際に、タイト部55の左右両端が垂れ下がる場合は、図6に二点鎖線で示すように、気密材50の左右両端において、室外面部533、延出片部56、メインタイト片57で囲まれる空間に、スポンジ等で構成される端部支持部材75を配置してもよい。すなわち、気密材50の左右両端は、縦枠30、40に取り付けられる気密材61、62および止水スポンジ70によって下方に押されるため、タイト部55の左右両端が必要以上に垂れ下がる場合がある。この場合、端部支持部材75で延出片部56の下面を支持することで、タイト部55の左右両端の垂れ下がりを改善することができ、タイト部55を止水スポンジ70に密着させてシール性能を向上できる。
【0033】
前記実施形態では、分岐されたメインタイト片57、サブタイト片58を備える気密材50を、下枠20および上枠10に取り付けていたが、縦枠30、40に取り付けてもよい。すなわち、ドア枠2を構成する上枠10、下枠20、縦枠30、40のいずれか1つ以上の枠に気密材50を取り付ければよい。気密材50は、気密材50の長手方向および見込方向に直交する方向の寸法、つまり気密材50を取り付けた枠の見付方向(建具の内外周方向)の寸法を小さくできるため、見付寸法の小さな枠を用いることができ、気密性能を確保でき、光漏れなども低減できる上、意匠性も向上できる。
【0034】
気密材の構成は、前記実施形態の気密材50に限定されない。例えば、気密材は、リップ部59を備えないものでもよいし、ベース部51は中空部を有しないものでもよい。すなわち、気密材は、延出片部56から分岐したメインタイト片57、サブタイト片58を備えるものであればよい。
【0035】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を備える建具枠と、前記建具枠に対して室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられる障子と、を備える建具であって、前記建具枠の少なくともいずれかの枠は、前記障子の見込面に対向する枠見込面部と、前記枠見込面部から見付方向に突出された突出部と、前記突出部に取り付けられる気密材と、を備え、前記気密材は、前記突出部に取り付けられるベース部と、前記ベース部から延出するタイト部とを有し、前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、前記延出片部の先端から分岐されたメインタイト片およびサブタイト片を備え、前記障子の閉鎖時に、前記メインタイト片および前記サブタイト片は、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接することを特徴とする。
本発明の建具によれば、気密材のタイト部にメインタイト片およびサブタイト片の2つのタイト片を設け、これらの各タイト片を1つの延出片部から分岐して設けているので、ベース部から各タイト片をそれぞれ独立して設けた場合に比べて、気密材の見付方向の寸法を小さくでき、かつ、各タイト片を確実に障子に当接させることができる。また、各タイト片を、障子の内外周方向に離れた位置で障子に当接させているので、メインタイト片およびサブタイト片により、障子の外周側および内周側に、2重のタイトラインを形成でき、気密材による気密性能を向上でき、建具枠および障子の間からの光漏れも低減できる。
【0036】
本発明の建具において、前記ベース部は、前記延出片部に連続して設けられる内周面部を有し、前記突出部は、前記内周面部とほぼ同一平面とされた見込面部を有することが好ましい。
本発明によれば、気密材のベース部の内周面部と、気密材が取り付けられる突出部の見込面部とがほぼ同一平面とされているので、障子を開いて出入りする際に障害となる段差を無くすことができる。
【0037】
本発明の建具において、前記メインタイト片の先端は、前記障子の見込面よりも外周側に位置することが好ましい。
本発明によれば、施工時の枠の変形などにより、気密材が取り付けられた枠の枠見込面と、障子の見込面との間隔が枠の長手方向でばらついていても、メインタイト片の先端を、障子の見込面よりも外周側つまり枠見込面側にすることで、メインタイト片を確実に障子に当接させることができ、メインタイト片の掛かり代も確保でき、施工誤差の影響を受けずに気密・水密性を確保できる。
【0038】
本発明の建具において、前記建具枠の下枠に取り付けられる気密材と、前記建具枠の縦枠に取り付けられる気密材との接合部には、止水材が配置されていることが好ましい。
本発明によれば、下枠の気密材と縦枠の気密材との接合部に、スポンジ等の止水材が設けられているので、各気密材間からの水の浸入を防止でき、止水性能を向上できる。
【0039】
本発明の建具において、前記気密材は、前記ベース部と、前記延出片部と、前記メインタイト片とで三方が囲まれた空間を有することが好ましい。
本発明によれば、気密材に、ベース部、延出片部、メインタイト片で三方が囲まれた空間を設けたので、タイト部の垂れ下がりを防止する端部支持部材を配置することができる。さらに、この空間は三方が囲まれているので外気の流入を抑制でき、断熱空間として利用でき、建具の断熱性能の向上に寄与できる。
【0040】
本発明の建具において、前記建具枠はドア枠であり、前記障子は前記ドア枠に対して室外側に開閉される扉であり、前記ドア枠の下枠は、前記扉の下面に対向する下枠見込面部と、前記下枠見込面部から見付方向に突出された下枠突出部と、を備え、前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する前記延出片部と、前記延出片部の先端から分岐されて室外側に向かって斜め下方に延出された前記メインタイト片と、前記延出片部の先端から分岐されて室外側に向かって斜め上方に延出された前記サブタイト片とを備え、前記障子の閉鎖時に、前記メインタイト片および前記サブタイト片は、上下方向に離れた位置で前記障子の室内面に当接することが好ましい。
本発明によれば、ドア枠の下枠に見付寸法が小さな気密材を設けているので、下枠突出部の見付寸法(高さ寸法)も小さくできる。このため、扉を開いてドアを出入りする際に、下枠の段差が小さいため、スムーズに出入りすることができる。
【0041】
本発明の気密材は、障子が室外側または室内側のいずれか一方に開閉可能に取り付けられた建具枠に取り付けられる気密材であって、前記建具枠に取り付けられるベース部と、前記ベース部から延出するタイト部と、を有し、前記タイト部は、前記ベース部から前記障子側に延出する延出片部と、前記延出片部の先端から分岐され、前記障子の閉鎖時に、前記障子の内外周方向に離れた位置で前記障子に当接されるメインタイト片およびサブタイト片と、を備えることを特徴とする。
本発明の気密材によれば、タイト部にメインタイト片およびサブタイト片の2つのタイト片を設け、これらの各タイト片を1つの延出片部から分岐して設けているので、ベース部から各タイト片をそれぞれ独立して設けた場合に比べて、気密材の見付方向の寸法を小さくでき、かつ、各タイト片を確実に障子に当接させることができる。また、各タイト片を、障子の内外周方向に離れた位置で障子に当接させることができ、メインタイト片およびサブタイト片により、障子の外周側および内周側に、2重のタイトラインを形成でき、気密材による気密性能を向上でき、建具枠および障子の間からの光漏れも低減できる。
【符号の説明】
【0042】
1…ドア、2…ドア枠、8…扉、10…上枠、20…下枠、21…枠見込面部、22…突出部、30…縦枠、40…縦枠、50…気密材、51…ベース部、52…係合部、53…中空形成部、55…タイト部、56…延出片部、57…メインタイト片、58…サブタイト片、59…リップ部、70…止水スポンジ、75…端部支持部材、224…見込面部、531…内周面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7