(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025122913
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】原価管理装置、会計システム、原価管理方法及び原価管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20250815BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018657
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 柾希
(72)【発明者】
【氏名】牧野 香子
(57)【要約】
【課題】原価管理に関する業務の効率化を図ることができる原価管理装置等を提供する。
【解決手段】原価の算出処理を実行する制御部を備える原価管理装置であって、労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、担当者の労働作業に係る日報明細データと、労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、にアクセス可能であり、給与データは、労働作業に支払われた実労務費の情報を含み、日報明細データは、労働作業のプロジェクトごとの作業時間の情報を含み、予定単価データは、担当者に対応付けられる作業時間単価の情報を含み、制御部は、給与データに基づいて、労働作業の実労務費を取得し、日報明細データと予定単価データとに基づいて、労働作業の作業時間の総計に作業時間単価を乗算して、支払予定の予定労務費を算出し、実労務費と予定労務費との差分である原価差異を算出して、事業の原価差異の情報を含む原価データを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する制御部を備える原価管理装置であって、
前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、にアクセス可能であり、
前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、
前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、
前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、
前記制御部は、
前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、
前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、
前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成する原価管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
算出した前記事業の前記原価差異を、前記日報明細データに基づく前記プロジェクトごとの前記作業時間の情報から、前記プロジェクトごとに配賦して、前記プロジェクトごとの前記原価差異の情報を含む前記原価データを生成する請求項1に記載の原価管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
配賦可否基準に基づいて、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦するか否かを可否判定し、前記配賦可否基準を満足する場合、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦する一方で、前記配賦可否基準を満足しない場合、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦しない請求項2に記載の原価管理装置。
【請求項4】
前記配賦可否基準は、判定基準金額に配賦可否基準割合を乗算した基準割合金額であり、
前記判定基準金額は、
前記担当者が担当する前記プロジェクトの受注金額の総計、前記担当者が担当する前記プロジェクトの売上金額の総計、及び前記担当者が担当する前記プロジェクトの直接原価の総計の少なくとも一つであり、
前記制御部は、
前記事業の前記原価差異と前記基準割合金額とを比較した比較結果に基づいて、可否判定を実行する請求項3に記載の原価管理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の原価管理装置と、
前記原価管理装置により生成された前記原価データに基づいて仕訳データを生成する会計管理装置と、を備える会計システム。
【請求項6】
1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する原価管理方法であって、
前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、が用いられ、
前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、
前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、
前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、
前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、
前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、
前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成することを、制御部を備える原価管理装置が実行する原価管理方法。
【請求項7】
1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する原価管理方法を、制御部を備える原価管理装置に実行させるための原価管理プログラムであって、
前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、が用いられ、
前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、
前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、
前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、
前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、
前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、
前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成することを、前記原価管理装置に実行させるための原価管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原価管理装置、会計システム、原価管理方法及び原価管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事の作業者の作業時間を管理する労務管理に基づく原価管理を行う原価管理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原価管理では、作業を担当する担当者に対して支払予定となる労務費(予定労務費)を標準原価として取り扱うことが一般的である。この場合、会計処理においては、実際に担当者に支払われた労務費(実労務費)と予定労務費とに原価差異が生じるため、原価差異に基づく修正を行う必要がある。しかしながら、この修正は、システム外において会計処理することになるため、原価管理に係る業務効率化を図ることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、原価管理に関する業務の効率化を図ることができる原価管理装置、会計システム、原価管理方法及び原価管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る原価管理装置は、1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する制御部を備える原価管理装置であって、前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、にアクセス可能であり、前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、前記制御部は、前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成する。
【0007】
なお、本発明に係る原価管理装置において、前記制御部は、算出した前記事業の前記原価差異を、前記日報明細データに基づく前記プロジェクトごとの前記作業時間の情報から、前記プロジェクトごとに配賦して、前記プロジェクトごとの前記原価差異の情報を含む前記原価データを生成してもよい。
【0008】
また、本発明に係る原価管理装置において、前記制御部は、配賦可否基準に基づいて、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦するか否かを可否判定し、前記配賦可否基準を満足する場合、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦する一方で、前記配賦可否基準を満足しない場合、前記プロジェクトごとの前記原価差異を配賦しないようにしてもよい。
【0009】
また、本発明に係る原価管理装置において、前記配賦可否基準は、判定基準金額に配賦可否基準割合を乗算した基準割合金額であり、前記判定基準金額は、前記担当者が担当する前記プロジェクトの受注金額の総計、前記担当者が担当する前記プロジェクトの売上金額の総計、及び前記担当者が担当する前記プロジェクトの直接原価の総計の少なくとも一つであり、前記制御部は、前記事業の前記原価差異と前記基準割合金額とを比較した比較結果に基づいて、可否判定を実行してもよい。
【0010】
また、本発明に係る会計システムは、上記の原価管理装置と、前記原価管理装置により生成された前記原価データに基づいて仕訳データを生成する会計管理装置と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る原価管理方法は、1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する原価管理方法であって、前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、が用いられ、前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成することを、制御部を備える原価管理装置が実行する。
【0012】
また、本発明に係る原価管理プログラムは、1以上のプロジェクトを含む事業の労働作業に係る労務費を含む原価の算出処理を実行する原価管理方法を、制御部を備える原価管理装置に実行させるための原価管理プログラムであって、前記労働作業を担当した担当者に支給される給与データと、前記担当者の前記労働作業に係る日報明細データと、前記労働作業の作業時間単価に係る予定単価データと、が用いられ、前記給与データは、前記労働作業に支払われた前記労務費である実労務費の情報を含み、前記日報明細データは、前記労働作業の前記プロジェクトごとの作業時間の情報を含み、前記予定単価データは、前記担当者に対応付けられる前記作業時間単価の情報を含み、前記給与データに基づいて、前記労働作業の前記実労務費を取得し、前記日報明細データと前記予定単価データとに基づいて、前記労働作業の前記作業時間の総計に、前記作業時間単価を乗算して、支払予定の前記労務費である予定労務費を算出し、前記実労務費と前記予定労務費との差分である原価差異を算出して、前記事業の前記原価差異の情報を含む原価データを生成することを、前記原価管理装置に実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、原価管理に関する業務の効率化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、原価管理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、原価管理方法に関するフローチャートの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、原価管理方法に関する説明図である。
【
図4】
図4は、プロジェクト受注明細データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、基本情報マスタの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、日報明細データの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、給与按分原価科目区分マスタの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、プロジェクト原価科目区分マスタの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、勘定科目マスタの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実際原価に係るプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、原価担当者属性マスタの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、作業時間の集計結果の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、予定原価に係るプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、プロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図19】
図19は、原価差異の算出で用いるデータの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、部門原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図21】
図21は、配賦実行単位マスタの一例を示す図である。
【
図23】
図23は、配賦可否判定処理及び配賦処理の一例を示す図である。
【
図24】
図24は、原価差異に係るプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図25】
図25は、配賦処理後に更新された部門原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図26】
図26は、配賦処理後のプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図27】
図27は、プロジェクト原価データの一例を示す図である。
【
図28】
図28は、配賦処理後の部門原価ワークテーブルの一例を示す図である。
【
図30】
図30は、取引区分別科目マスタの一例を示す図である。
【
図32】
図32は、実際の給与支給及び原価差異の仕訳の一例を示す図である。
【
図33】
図33は、原価差異の配賦の仕訳の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る原価管理装置、原価管理方法及び原価管理プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
[1.構成]
本実施形態に係る原価管理装置100の構成の一例について、
図1等を参照して説明する。
図1は、原価管理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
原価管理装置100は、労務費を含む原価の算出処理を実行する装置である。原価管理装置100は、会計システム140に設けられていてもよく、会計システム140は、原価管理装置100の他、会計管理装置150(
図3参照)が設けられていてもよい。具体的に、原価管理装置100は、1以上のプロジェクトを含む事業の原価を管理するものとなっており、例えば、建設工事業における原価の管理に適用される。また、原価管理装置100は、労務費として、実際に支払われた労務費である実労務費(以下、実際原価、給与、賃金ともいう)と、支払予定の労務費である予定労務費(以下、予定原価ともいう)とを管理している。
【0018】
原価管理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータを基に構築したものである。なお、原価管理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置を基に構築したものに限らず、市販のノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォンまたはタブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置を基に構築したものであってもよい。
【0019】
原価管理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。原価管理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0020】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置及び専用線等の有線または無線の通信回線を介して、原価管理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、原価管理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、記憶部106に格納されるデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0021】
入出力インターフェース部108には、入力装置112及び出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0022】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル及びファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び光ディスク等を用いることができる。
【0023】
記憶部106は、各種マスタ及び各種データが格納されている。具体的に、記憶部106は、プロジェクト(PJ)受注明細データ121、基本情報マスタ122、日報明細データ123、給与按分原価科目区分マスタ124、プロジェクト(PJ)原価科目区分マスタ125、勘定科目マスタ126、給与取込データ(給与データ)127、プロジェクト(PJ)原価ワークテーブル128、原価担当者属性マスタ129、予定単価マスタ(予定単価データ)130、原価分類マスタ131、原価差異マスタ132、部門原価ワークテーブル133、配賦実行単位マスタ134、配賦定義マスタ135、プロジェクト(PJ)原価データ136、部門原価データ137、及び取引区分別科目マスタ138などを格納する。
【0024】
以下、各種マスタ及び各種データについて説明する。なお、各種マスタ及び各種データに含まれる項目について、重複する項目があるが、重複する項目については、説明を一部省略する。
【0025】
図4は、プロジェクト受注明細データの一例を示す図である。プロジェクト受注明細データ121は、受注した事業に含まれるプロジェクトごとの明細のデータである。
図4に示すように、プロジェクト受注明細データ121は、プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、部門コード(CD)、及び受注金額の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。プロジェクト番号は、プロジェクトを識別する番号である。受注番号、受注を識別する番号である。受注行番号は、行頭に付される番号であり、受注番号に付された所定のラベルを示す番号となっている。部門コードは、プロジェクトを取り扱う部門を識別するコードである。受注金額は、受注した金額である。なお、受注番号及び受注行番号は、プロジェクト番号に対して、複数の番号を設定可能であるが、本実施形態では、一対一の対応としている。
【0026】
図5は、基本情報マスタの一例を示す図である。基本情報マスタ122は、原価の算出処理に係る基本的な情報である。
図5に示すように、基本情報マスタ122は、原価端数処理区分及び配賦実行単位の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。原価端数処理区分は、原価算出において生じる端数処理の区分を示しており、例えば、四捨五入となっている。配賦実行単位は、原価算出において生じる原価配賦の実行単位を示しており、例えば、部門原価をプロジェクトに配賦する設定である部門PJ配賦となっている。
【0027】
図6は、日報明細データの一例を示す図である。日報明細データ123は、プロジェクトの労働を担当する担当者が、日次の作業記録を行うことで取得されるデータである。
図6に示すように、日報明細データ123は、担当者コード(CD)、作業日、プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、作業内容コード(CD)、及び作業時間(分)の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。担当者コードは、担当者を識別するコードである。作業日は、労働作業を行った日付である。プロジェクト番号、受注番号及び受注行番号は、プロジェクト受注明細データ121と同様である。作業内容コードは、作業内容を識別するコードである。作業時間は、労働作業を行った分単位の時間である。
【0028】
図7は、給与按分原価科目区分マスタの一例を示す図である。
図7に示すように、給与按分原価科目区分マスタ124は、給与按分された場合のプロジェクト(PJ)原価科目区分を指定するものである。プロジェクト原価科目区分は、プロジェクトの原価の科目区分を識別するコードとなっている。
【0029】
図8は、プロジェクト原価科目区分マスタの一例を示す図である。プロジェクト原価科目区分マスタ125は、原価の計上用の科目を設定するものである。
図8に示すように、プロジェクト原価科目区分マスタ125は、プロジェクト(PJ)原価科目区分、原価分類コード(CD)、及び総勘定科目コード(CD)の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。プロジェクト(PJ)原価科目区分は、給与按分原価科目区分マスタ124と同様である。原価分類コードは、原価の種類を識別するコードである。総勘定科目コードは、勘定科目の種類を識別するコードである。
【0030】
図9は、勘定科目マスタの一例を示す図である。勘定科目マスタ126は、勘定科目の種類に対応する名前を設定するものである。
図9に示すように、勘定科目マスタ126は、総勘定科目コード、及び勘定科目名の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。総勘定科目コードは、プロジェクト原価科目区分マスタ125と同様である。勘定科目名は、勘定科目の名前である。
【0031】
図10は、給与取込データの一例を示す図である。給与取込データ127は、担当者に支払われる給与に係るデータである。
図10に示すように、給与取込データ127は、会計年月、事業所コード、部門コード、担当者コード、給与金額、及び取引区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。会計年月は、給与が支払われたときの年月である。事業所コードは、事業所を識別するコードである。部門コード及び担当者コードは、他の各種マスタ及び各種データと同様である。給与金額は、担当者に支払われる給与の金額である。取引区分は、会計上における取引の区分である。
【0032】
図11は、実際原価に係るプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。プロジェクト原価ワークテーブル128は、プロジェクトごとの原価を会計処理するため用いられるワークテーブルである。
図11に示すように、プロジェクト原価ワークテーブル128は、プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、会計年月、事業所コード、部門コード、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、原価金額、担当者コード、及び予実差異区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、会計年月、事業所コード、部門コード、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、及び担当者コードは、他の各種マスタ及び各種データと同様である。原価金額は、プロジェクト単位での原価として計上される金額である。予実差異区分は、会計上における原価の取り扱い区分であり、
図11では実際原価となっている。
【0033】
図12は、原価担当者属性マスタの一例を示す図である。原価担当者属性マスタ129は、担当者の属性に係るデータである。
図12に示すように、原価担当者属性マスタ129は、担当者コード、会計年月、予定原価計算対象フラグ(FLG)、及び予定単価コード(CD)の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。担当者コード及び会計年月は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。予定原価計算対象フラグは、予定原価である後述する予定労務費を計算する対象の担当者であるか否かを判定するためのフラグである。予定単価コードは、担当者の予定となる労務費の時間単価を識別するコードである。
【0034】
図13は、予定単価マスタの一例を示す図である。予定単価マスタ130は、予定単価コードに単価を設定するものである。
図13に示すように、予定単価マスタ130は、予定単価コード、プロジェクト原価科目区分、及び単価の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。予定単価コード、及びプロジェクト原価科目区分は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。単価は、時給の金額である。
【0035】
図14は、原価分類マスタの一例を示す図である。原価分類マスタ131は、原価の種別を分類するためのものである。
図14に示すように、原価分類マスタ131は、原価分類コード、原価分類名、及び予定原価計算フラグの項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。原価分類コードは、他の各種マスタ及び各種データと同様である。原価分類名は、原価の種別の名前である。予定原価計算フラグは、後述する予定労務費を計算する対象の原価の種別であるか否かを判定するためのフラグである。
【0036】
図16は、予定原価に係るプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
図16に示すプロジェクト原価ワークテーブル128は、予実差異区分の項目が、予定原価となっており、予定原価に応じた原価金額となっている。
【0037】
図17は、原価差異マスタの一例を示す図である。原価差異マスタ132は、原価差異の算出後、部門原価ワークテーブル133へ更新する際に使用するプロジェクト原価科目区分を指定するものである。原価差異は、実際原価から予定原価を差し引いた差異を示す区分である。
図17に示すように、原価差異マスタ132は、原価分類コード、及びプロジェクト原価科目区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。原価分類コード及びプロジェクト原価科目区分は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0038】
図18は、プロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図である。
図18に示すプロジェクト原価ワークテーブル128は、予実差異区分の項目が、実際原価と予定原価と、つまり、
図11と
図16とをまとめたものである。
【0039】
図20は、部門原価ワークテーブルの一例を示す図である。部門原価ワークテーブル133は、部門ごとの原価を会計処理するため用いられるワークテーブルである。
図20に示すように、部門原価ワークテーブル133は、事業所コード、部門コード、会計年月、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、原価金額、担当者コード、及び予実差異区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。事業所コード、部門コード、会計年月、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、及び担当者コードは、他の各種マスタ及び各種データと同様である。原価金額は、部門単位での原価として計上される金額である。予実差異区分は、会計上における原価の取り扱い区分であり、
図20では原価差異となっている。
【0040】
図21は、配賦実行単位マスタの一例を示す図である。配賦実行単位マスタ134は、原価差異の配賦の実行単位を設定するものである。
図21に示すように、配賦実行単位マスタ134は、単位番号、配賦種類、及び配賦グループ番号の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。単位番号は、配賦の実行単位を識別する番号である。配賦種類は、配賦の種類を示す項目である。配賦グループ番号は、配賦の実行単位に付されたグループ番号である。
【0041】
図22は、配賦定義マスタの一例を示す図である。配賦定義マスタ135は、配賦を実行するか否かを判断するために用いられるものである。
図22に示すように、配賦定義マスタ135は、配賦グループ番号、配賦定義番号、配賦基準、配賦元部門、配賦元プロジェクト原価科目区分、配賦可否基準区分、及び配賦可否基準割合、の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。配賦グループ番号は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。配賦定義番号は、配賦の定義を識別する番号である。配賦基準は、配賦の基準となる指標を示す項目である。配賦元部門は、配賦元となる部門を示す番号である。配賦元プロジェクト原価科目区分は、配賦元となるプロジェクトの原価の科目区分を識別するコードとなっている。配賦可否基準区分は、配賦の可否を判定する基準となる区分を識別する項目となっている。配賦可否基準割合は、配賦の可否基準となる割合である。
【0042】
図27は、プロジェクト原価データの一例を示す図である。プロジェクト原価データ136は、プロジェクト原価ワークテーブル128に基づいて生成されるプロジェクトごとの原価に係るデータである。
図27に示すように、プロジェクト原価データ136は、プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、会計年月、事務所コード、部門コード、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、原価金額、担当者コード、及び取引区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。これらの項目は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0043】
図29は、部門原価データの一例を示す図である。部門原価データ137は、部門原価ワークテーブル133に基づいて生成される部門ごとの原価に係るデータである。
図29に示すように、部門原価データ137は、事務所コード、部門コード、会計年月、原価分類コード、プロジェクト原価科目区分、原価金額、担当者コード、及び取引区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。これらの項目は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0044】
図30は、取引区分別科目マスタの一例を示す図である。取引区分別科目マスタ138は、取引ごとに必要な勘定科目を設定するためのものである。
図30に示すように、取引区分別科目マスタ138は、取引区分、及び総勘定科目コードの項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。これらの項目は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0045】
次に、再び
図1を参照して、制御部102について説明する。制御部102は、原価管理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0046】
制御部102は、情報処理として、記憶部106に記憶された各種データに基づいて、原価の算出処理を実行する。
【0047】
以下、制御部102が実行する処理の具体例について、以下の[2.処理の具体例]にて詳細に説明する。
【0048】
[2.処理の具体例]
ここでは、原価管理装置100で実行される処理の具体例を、
図2及び
図3を参照して説明すると共に、
図4から
図30に示す図を用いて説明する。
図2は、原価管理方法に関するフローチャートの一例を示す図である。
図3は、原価管理方法に関する説明図である。
【0049】
原価管理装置100が実行する原価管理方法に係る原価の算出処理では、原価の算出に先立ち、予め日報明細データ123及び給与取込データ127を取得している(ステップS1)。ステップS1では、原価管理装置100とは別体の装置が、担当者により入力された情報に基づいて、日報明細データ123を生成している。そして、ステップS1では、原価管理装置100が、別体の装置で生成した日報明細データ123を取得する。同様に、ステップS1では、原価管理装置100とは別体の装置が、給与取込データ127を生成している。そして、ステップS1では、原価管理装置100が、別体の装置で生成した給与取込データ127を取得する。
【0050】
次に、
図2に示すように、原価の算出処理では、先ず、制御部102が、実際原価の算出処理及び給与の按分処理を実行する(ステップS10)。ステップS10では、制御部102が、入力装置112からの入力に基づいて、必要なマスタの設定を実行する。具体的に、制御部102は、給与按分原価科目区分マスタ124において、給与按分された際のプロジェクト原価科目区分を指定しており、例えば、プロジェクト原価科目区分として「G001」を指定する。続いて、制御部102は、プロジェクト原価科目区分マスタ125において、プロジェクト原価科目区分に対応する、原価分類コード及び総勘定科目コードを設定する。制御部102は、例えば、原価分類コードとして「2000(労務費)」、総勘定科目コードとして「KAN001(未成工事支出金(実))」を設定する。
【0051】
続いて、ステップS10では、制御部102が、給与取込データ127と日報明細データ123とに基づいて、給与の按分処理を実行する。
図15は、作業時間の集計結果の一例を示す図である。制御部102は、
図6に示す日報明細データ123に基づいて、
図15に示すプロジェクトごとの作業時間を集計する。
【0052】
図15に示す集計結果は、プロジェクト番号、受注番号、受注行番号、及び作業時間の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。これらの項目は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0053】
図10に示す給与取込データ127において、会計年月が「202401」のときの給与金額は「¥100,000」である。また、
図6の日報明細データ123に基づく作業日が2024/1のときのプロジェクトごとの作業時間の総計は、
図15に示すように、プロジェクト「PJ001」が「1740」であり、プロジェクト「PJ002」が「1620」である。給与の按分は、プロジェクトごとの作業時間の割合によって按分される。つまり、制御部102は、プロジェクト「PJ001」の実際原価を、「¥100,000×1740/(1740+1620)=¥51,786」により算出する。同様に、制御部102は、プロジェクト「PJ002」の実際原価を、「¥100,000×1620/(1740+1620)=¥48,214」により算出する。なお、制御部102は、給与の按分処理にあたって、基本情報マスタ122に基づく端数処理を実行する。そして、制御部102は、算出結果を、
図11に示すプロジェクト原価ワークテーブル128として生成する。
【0054】
ステップS10の実行後、制御部102は、予定労務費の算出を実行する(ステップS20)。ステップS20では、制御部102が、入力装置112からの入力に基づいて、必要なマスタの設定を実行する。具体的に、制御部102は、プロジェクト原価科目区分マスタ125において、プロジェクト原価科目区分に対応する、原価分類コード及び総勘定科目コードを設定する。制御部102は、例えば、原価分類コードとして「2000(労務費)」、総勘定科目コードとして「KAN002(未成工事支出金(予))」を設定する。なお、
図14に示すように、原価分類マスタ131において、原価分類コード「2000(労務費)」は、予定原価計算の対象となっている(TRUE)。ここで、予定労務費の算出対象となる条件は、対象月の日報明細データ123が存在すること、日報明細データ123を登録した担当者に対応付けられたプロジェクト原価科目区分マスタ125、原価担当者属性マスタ129、予定単価マスタ130及び原価分類マスタ131が存在すること、原価担当者属性マスタ129の予定原価計算対象FLGがTRUEであること、及び原価分類マスタ131の予定原価計算FLGがTRUEであることの4条件である。
【0055】
続いて、ステップS20では、制御部102が、予定単価マスタ130と日報明細データ123とに基づいて、予定労務費の算出処理を実行する。
図13に示す予定単価マスタ130において、単価は「¥1,500」である。また、
図6の日報明細データ123に基づく作業日が2024/1のときのプロジェクトごとの作業時間の総計は、
図15に示すように、プロジェクト「PJ001」が「1740」であり、プロジェクト「PJ002」が「1620」である。制御部102は、プロジェクト「PJ001」の予定労務費(予定原価)を、「¥1,500×1740/60=¥43,500」により算出する。同様に、制御部102は、プロジェクト「PJ002」の予定労務費(予定原価)を、「¥1,500×1620/60)=¥40,500」により算出する。なお、制御部102は、予定労務費の算出にあたって、基本情報マスタ122に基づく端数処理を実行する。そして、制御部102は、算出結果を、
図16に示すプロジェクト原価ワークテーブル128として生成する。
【0056】
ステップS20の実行後、制御部102は、実際原価から予定原価を差し引いた原価差異を算出する(ステップS30)。ステップS30では、制御部102が、入力装置112からの入力に基づいて、必要なマスタの設定を実行する。具体的に、制御部102は、原価差異マスタ132において、原価差異の算出後に、部門原価ワークテーブル133へ更新する際に使用するプロジェクト原価科目区分を指定する。また、制御部102は、プロジェクト原価科目区分マスタ125において、プロジェクト原価科目区分に対応する、原価分類コード及び総勘定科目コードを設定する。制御部102は、例えば、原価分類コードとして「2999(原価差額(労務費))」、総勘定科目コードとして「KAN901(未成工事支出金(差異))」を設定する。
【0057】
続いて、ステップ30では、制御部102が、
図18に示すプロジェクト原価ワークテーブル128に基づいて原価差異を算出する。ここで、原価差異の算出は、一度、部門ごとに原価差異を算出してから、プロジェクトごとに原価差異を按分している。つまり、制御部102は、
図18に示すプロジェクト原価ワークテーブル128に基づいて、部門ごとに原価を集計することで、
図19に示す集計結果を生成する。
【0058】
図19に示す集計結果は、事業所コード、部門コード、原価分類コード、原価金額、担当者コード、及び予実差異区分の項目を含んでおり、これらの情報が対応付けられている。これらの項目は、他の各種マスタ及び各種データと同様である。
【0059】
制御部102は、生成した集計結果に基づいて、実際原価「¥100,000」から、予定原価「¥84,000」を差し引いて、原価差異「¥16,000」を算出する。そして、制御部102は、算出結果に基づいて、
図20に示す部門原価ワークテーブル133を更新する。
【0060】
ステップS30の実行後、制御部102は、原価差異の配賦可否の判定処理及び部門原価差異の配賦処理を実行する(ステップS40)。ステップS40では、制御部102が、入力装置112からの入力に基づいて、必要なマスタの設定を実行する。具体的に、制御部102は、配賦実行単位マスタ134において、原価差異を配賦する実行単位を設定する。制御部102は、例えば、配賦実行単位として、「部門PJ間」を設定する。また、制御部102は、配賦定義マスタ135において、配賦グループ番号に対応した配賦定義が設定される。制御部102は、例えば、配賦定義として、配賦グループ番号「G1」に対応した配賦定義「H01」を設定する。なお、配賦定義「H01」は、工数時間比に基づく配賦となっているが、他の配賦定義として、例えば、売上金額比(「H02」)、固定比(「H03」)、受注金額比、工事対象の容積比等を適用してもよい。
【0061】
次に、
図23を参照して、原価差異の配賦可否の判定処理及び部門原価差異の配賦処理について具体的に説明する。制御部102は、設定された配賦定義マスタ135の配賦定義に対応する配賦可否基準区分が「NULL(区分無し)」か否かを判定する(ステップS41)。制御部102は、ステップS41において、配賦可否基準区分がないと判定する(ステップS41:Yes)と、配賦処理を実行せずに終了する。一方で、制御部102は、配賦可否基準区分があると判定する(ステップS41:No)と、配賦可否基準区分が「1」であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0062】
制御部102は、配賦可否基準区分が「1」であると判定する(ステップS42:Yes)と、プロジェクト受注明細データ121に基づいて、受注金額の集計を実行する(ステップS43)。ステップS43において、制御部102は、対象となるプロジェクト「PJ001」及び「PJ002」の受注金額を合算することで、集計した受注金額「¥7,000,000+¥8,000,000=¥15,000,000」を算出する。
【0063】
続いて、制御部102は、ステップS43の実行後、配賦可否基準割合による判定を実行する(ステップS44)。具体的に、配賦定義「H01」に対応する配賦可否基準割合は、「1%」となっている。制御部102は、原価差異となる配賦金額「¥16,000」が、受注金額(判定基準金額)「¥15,000,000」に配賦可否基準割合「1%」を乗算した金額(基準割合金額)「¥150,000」よりも小さければ、配賦可否基準を満足したとして、配賦処理を実行する(ステップS45)。一方で、制御部102は、原価差異となる配賦金額が、受注金額に配賦可否基準割合「1%」を乗算した金額以上であれば、配賦可否基準を満足していないとして、配賦処理を実行せずに終了する。
【0064】
制御部102は、ステップS45において、配賦金額を、プロジェクトごとの作業時間の割合によって配賦する。つまり、制御部102は、プロジェクト「PJ001」の配賦金額を、「¥16,000×1740/(1740+1620)=¥8,286」により算出する。同様に、制御部102は、プロジェクト「PJ002」の配賦金額を、「¥16,000×1620/(1740+1620)=¥7,714」により算出する。なお、制御部102は、配賦金額の配賦処理にあたって、基本情報マスタ122に基づく端数処理を実行する。そして、制御部102は、算出結果を、
図24に示すプロジェクト原価ワークテーブル128として生成する。また、制御部102は、配賦処理の実行後、原価差異(配賦金額)と同額のマイナスとなる
図25に示す部門原価ワークテーブル133を追加する。
【0065】
なお、制御部102は、ステップS42において、配賦可否基準区分が「1」でないと判定する(ステップS42:No)と、配賦可否基準区分が「1」である場合の配賦処理(ステップS43~ステップS45)以外の処理を実行する。具体的に、制御部102は、配賦可否基準区分が「2」以降である場合の配賦処理を実行する。この配賦処理は、配賦可否基準区分が「1」である場合の配賦処理と同等の処理であり、配賦定義マスタ135に従った配賦処理となる。
【0066】
ステップS40の実行後、制御部102は、プロジェクト原価ワークテーブル128及び部門原価ワークテーブル133に基づいて、プロジェクト原価データ136及び部門原価データ137の計上を実行する(ステップS50)。
図26は、配賦処理後のプロジェクト原価ワークテーブルの一例を示す図であり、実際原価、予定原価及び原価差異を含むものとなっている。
図28は、配賦処理後の部門原価ワークテーブルの一例を示す図であり、原価差異を含むものとなっている。
【0067】
ステップS50では、制御部102が、
図26に示すプロジェクト原価ワークテーブル128に基づいて、
図27に示すプロジェクト原価データ136を計上する。なお、
図27に示すプロジェクト原価データ136では、計上される原価として、実際原価で、且つ予定原価計算に使用された原価は対象外となるため、実際原価は含まれていない。また、制御部102は、
図28に示す部門原価ワークテーブル133に基づいて、
図29に示す部門原価データ137を計上する。
【0068】
ステップS50の実行後、仕訳データ139の計上が実行される(ステップS60)。なお、ステップS60では、原価管理装置100とは別体の会計管理装置150により仕訳データ139の計上が実行されるが、原価管理装置100により仕訳データ139の計上が実行されてもよい。
【0069】
ステップS60では、会計管理装置150が、プロジェクト原価データ136及び部門原価データ137に基づいて、仕訳データ139を生成する。
図31は、予定原価の仕訳の一例を示す図である。
図32は、実際の給与支給及び原価差異の仕訳の一例を示す図である。
図33は、原価差異の配賦の仕訳の一例を示す図である。
【0070】
生成される仕訳データ139としては、
図31に示す予定原価の仕訳、
図32に示す実際の給与支給・原価差異の仕訳、
図33に示す原価差異の配賦の仕訳がある。
図31では、予定原価として、借方に、プロジェクト「PJ001」の予定原価とプロジェクト「PJ002」の予定原価とが計上され、貸方に予定労務費(賃金(予))が計上されている。
図32では、原価差異として、借方に、予定労務費(賃金(予))と部門の原価差異とが計上され、貸方に、賃金支給(実際原価)が計上されている。また、
図32では、賃金(実際原価)として、借方に、支給された賃金(賃金支給)が計上され、貸方に、現預金が計上されている。
図33では、原価差異の配賦として、借方に、配賦されたプロジェクト「PJ001」の原価差異とプロジェクト「PJ002」の原価差異とが計上され、貸方に、部門の原価差異が計上されている。
【0071】
ステップS60の実行後、原価管理方法に係る原価の算出処理が終了する。
【0072】
以上のように、本実施形態よれば、実際に担当者に支払われた労務費(賃金)と予定労務費とに原価差異が生じる場合であっても、原価差異に基づく修正を含む原価の算出処理を一貫して実行することができるため、原価管理に係る業務効率化を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態よれば、原価差異を一度部門ごとに算出した後、算出した部門ごとの原価差異を、プロジェクトごとに配賦することができる。このため、プロジェクトごとに配賦する配賦基準に自由度を与えることができる。
【0074】
また、本実施形態よれば、原価差異のプロジェクトごとへの配賦に際して、配賦可否基準を設けることで、配賦を実行するか否かの原価管理に自由度を与えることができる。
【0075】
また、本実施形態よれば、プロジェクトの受注金額の総計に配賦可否基準割合を乗算した金額(基準割合金額)に基づいて、配賦の可否を適切に判定することができる。
【0076】
また、本実施形態よれば、原価管理装置100により生成されたプロジェクト原価データ136及び部門原価データ137を含む原価データに基づいて、会計管理装置150により仕訳データを作成することができる。このため、原価管理装置100と会計管理装置150との連携を図ることで、原価の算出処理から仕訳データの作成までを一貫して実行することができるため、より業務効率化を図ることができる。なお、原価管理装置100と会計管理装置150とは一体の装置であってもよく、この場合も業務効率化を図ることが可能である。
【0077】
[3.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0080】
[4.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0081】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0082】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0083】
また、原価管理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0084】
例えば、原価管理装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU及び当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて原価管理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0085】
また、このコンピュータプログラムは、原価管理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0086】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0087】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成及び読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0088】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0089】
また、原価管理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、原価管理装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0090】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、建設工事業またはIT業などの業界において有用である。
【符号の説明】
【0092】
100 原価管理装置
102 制御部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
121 プロジェクト受注明細データ
122 基本情報マスタ
123 日報明細データ
124 給与按分原価科目区分マスタ
125 プロジェクト原価科目区分マスタ
126 勘定科目マスタ
127 給与取込データ
128 プロジェクト原価ワークテーブル
129 原価担当者属性マスタ
130 予定単価マスタ
131 原価分類マスタ
132 原価差異マスタ
133 部門原価ワークテーブル
134 配賦実行単位マスタ
135 配賦定義マスタ
136 プロジェクト原価データ
137 部門原価データ
138 取引区分別科目マスタ
139 仕訳データ
140 会計システム
150 会計管理装置
200 サーバ
300 ネットワーク