(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025122938
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20250815BHJP
【FI】
H01R13/52 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018697
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】クルブレ トマ
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF04
5E087FF07
5E087GG12
5E087LL02
5E087LL12
5E087LL17
5E087LL29
5E087LL34
5E087MM05
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR49
(57)【要約】
【課題】締結部およびリテーナの少なくとも一方の未組立てを認識することができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、相手コネクタ2に嵌合されるコネクタハウジング3と、締結部18によって相手コネクタ端子25に固定される電線4と、締結部18を通すためにコネクタハウジング3に形成された開口部24に取付けられるシール部材30を保持するリテーナ29と、開口部24を閉塞するカバー34と、を備える。コネクタ1は、締結部18およびリテーナ29の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、カバー34でコネクタハウジング3の開口部24を閉塞することを不可とする未組立確認機構74を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの開口部から挿入される締結部によって前記相手コネクタの相手コネクタ端子に先端の電線端子が固定される電線と、前記開口部の縁を防水するシール部材を保持するリテーナと、前記リテーナを覆うように前記開口部を閉塞するカバーと、を備えたコネクタであって、
前記リテーナおよび前記締結部の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、前記カバーで前記開口部を閉塞することを不可とする未組立確認機構を備えた、コネクタ。
【請求項2】
前記未組立確認機構は、前記リテーナが前記組立途中位置に位置する場合に、前記カバーを前記コネクタハウジングに組付けることができないようにする、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記未組立確認機構は、前記締結部が前記組立途中位置に位置する場合に、前記コネクタハウジングに組付けられて初期位置に位置する前記カバーを、前記開口部の閉塞位置に操作できないようにする、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記カバーは、前記コネクタハウジングに組付けられた際には初期位置に位置するとともに、前記コネクタハウジングに対して前記初期位置から直線方向に操作されることにより、前記開口部の閉塞位置に位置する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記カバーは、前記コネクタハウジングに設けられたレール部に直線移動可能に取付けられた脚部を有し、
前記脚部は、前記レール部から脱落しないように前記レール部に摺動可能に係合する突起を有し、
前記突起は、前記レール部の底面に接触する部分が曲面状に形成されている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記カバーが前記開口部の閉塞位置において嵌合の操作が行われた場合に、前記カバーを操作後の位置で保持するカバーロック機構を備えた、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングにおいて前記カバーの開方向への移動経路の終端に設けられるとともに前記カバーの前記開方向への脱落を防止する脱落防止部を備えた、請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジング内の電線をボルトの締め付けによって相手コネクタの端子に電気的に接続するボルト締めコネクタが周知である。この種のボルト締めコネクタは、ボルトに手が触れないように、ボルトを通すためにコネクタハウジングに形成された開口部がカバーによって閉塞される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のコネクタは、種々の部品から構成されているが、部品が完全に組み立てられていない状態で出荷することは好ましくない。よって、部品が完全に組み立てられていないことを認識できる仕組みが必要であった。
【0005】
本開示の目的は、締結部およびリテーナの少なくとも一方の未組立てを認識することができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するコネクタは、相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの開口部から挿入される締結部によって前記相手コネクタの相手コネクタ端子に先端の電線端子が固定される電線と、前記開口部の縁を防水するシール部材を保持するリテーナと、前記リテーナを覆うように前記開口部を閉塞するカバーと、を備えた構成であって、前記リテーナおよび前記締結部の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、前記カバーで前記開口部を閉塞することを不可とする未組立確認機構を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、締結部およびリテーナの少なくとも一方の未組立てを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、コネクタを背面から見た際の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は電線の斜視図であり、
図4(b)は電線の分解斜視図である。
【
図8】
図8(a)から
図8(c)は、カバーの嵌合手順を示す説明図である。
【
図9】
図9は、一部破断したコネクタの平面図である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)は、検知部材の第1係合片および第2係合片の係合の仕方を示す説明図である。
【
図12】
図12(a)は、コネクタが半嵌合の際の検知部材の状態を示す断面図であり、
図12(b)は、検知前位置から検知位置に移動する検知部材を示す断面図である。
【
図15】
図15は、未組立確認機構の構造を示す側面図である。
【
図16】
図16は、未組立確認機構の構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のコネクタは、相手コネクタに嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの開口部から挿入される締結部によって前記相手コネクタの相手コネクタ端子に先端の電線端子が固定される電線と、前記開口部の縁を防水するシール部材を保持するリテーナと、前記リテーナを覆うように前記開口部を閉塞するカバーと、を備えた構成であって、前記リテーナおよび前記締結部の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、前記カバーで前記開口部を閉塞することを不可とする未組立確認機構を備えた。
【0010】
本構成によれば、締結部およびリテーナの少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合、カバーで開口部を閉塞することが未組立確認機構によって不可とされる。よって、作業者がカバーをコネクタハウジングに取付ける作業の過程で、締結部およびリテーナの少なくとも一方が未組立てであることが直ちに分かる。このようにして、締結部およびリテーナの少なくとも一方の未組立てを認識することが可能となる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記未組立確認機構は、前記リテーナが前記組立途中位置に位置する場合に、前記カバーを前記コネクタハウジングに組付けることができないようにする。この構成によれば、カバーをコネクタハウジングに取付けることができないという分かり易い方法で、リテーナが完全にコネクタハウジングに組付けられていないことを作業者に認識させることが可能となる。
【0012】
[3]上記[1]または[2]において、前記未組立確認機構は、前記締結部が前記組立途中位置に位置する場合に、前記コネクタハウジングに組付けられて初期位置に位置する前記カバーを、前記開口部の閉塞位置に操作できないようにする。この構成によれば、初期位置のカバーを開口部の閉塞位置に操作することができないという分かり易い方法で、締結部が未締結であることを作業者に認識させることが可能となる。
【0013】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記カバーは、前記コネクタハウジングに組付けられた際には初期位置に位置するとともに、前記コネクタハウジングに対して前記初期位置から直線方向に操作されることにより、前記開口部の閉塞位置に位置する。この構成によれば、カバーをコネクタハウジングに対して移動させる構造をスライド操作式の簡単な構造とすることが可能となる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記カバーは、前記コネクタハウジングに設けられたレール部に直線移動可能に取付けられた脚部を有し、前記脚部は、前記レール部から脱落しないように前記レール部に摺動可能に係合する突起を有し、前記突起は、前記レール部の底面に接触する部分が曲面状に形成されている。この構成によれば、カバーをコネクタハウジングに対して直線方向に操作する場合に、曲面状の突起によって、コネクタハウジングに対するカバーの円滑な移動が確保される。よって、カバーを初期位置から開口部の閉塞位置にスライド操作する際に、カバーにスティックスリップが生じ難くなるので、カバーを円滑に直線移動させることが可能となる。
【0015】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記コネクタは、前記カバーが前記開口部の閉塞位置において嵌合の操作が行われた場合に、前記カバーを操作後の位置で保持するカバーロック機構を備えた。この構成によれば、コネクタハウジングの開口部を閉塞するカバーをカバーロック機構によってコネクタハウジングから脱落し難くすることが可能となる。
【0016】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記コネクタは、前記コネクタハウジングにおいて前記カバーの開方向への移動経路の終端に設けられるとともに前記カバーの前記開方向への脱落を防止する脱落防止部を備えた。この構成によれば、カバーを開口部から開操作した場合に、脱落防止部によってカバーをコネクタハウジングから脱落し難くすることが可能となる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0018】
(コネクタ1)
図1に示すように、コネクタ1は、相手コネクタ2に嵌合されるコネクタハウジング3と、コネクタハウジング3の内部に先端を収容した電線4と、を備える。コネクタ1は、電線4を一対有する。コネクタ1は、例えば、車両のワイヤハーネスに使用される。コネクタ1は、例えば、車両の充電インレットのケーブルに使用される。車両としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などが挙げられる。
【0019】
(コネクタハウジング3)
図1に示す通り、コネクタハウジング3は、側部から電線4が接続され、底部に相手コネクタ2が接続される。このように、コネクタ1は、電線4をコネクタハウジング3に挿入する方向と、コネクタハウジング3を相手コネクタ2に嵌合する方向と、が直交するL字コネクタである。
【0020】
図2に示すように、コネクタハウジング3は、電線4を挿入するための開口孔5を側部に有する。開口孔5には、一対の電線4がホルダ6を介して挿通されている。一対の電線4は、ホルダ6の高さ方向に並んで形成された一対のスリット7にそれぞれ止水部材8を介して挿通されている。開口孔5には、ホルダ6を保持するキャップ9が取付けられている。
【0021】
図3に示すように、コネクタハウジング3および相手コネクタ2の間には、これらが嵌合した状態をロックするロック部10が設けられている。本例の場合、ロック部10は、コネクタハウジング3に形成された爪部11と、相手コネクタ2に形成された突部12と、を有する。コネクタハウジング3が相手コネクタ2に完全に嵌合されると、爪部11が突部12に係合することにより、嵌合がロックされる。
【0022】
(電線4)
図4(a)、(b)に示すように、電線4は、芯線15と、芯線15の周囲を被覆する絶縁被覆16と、を有する。芯線15は、例えば、板状のバスバーである。芯線15の先端には、相手コネクタ2に電気接続される電線端子17が形成されている。電線端子17には、電線端子17を相手コネクタ2に固定する締結部18の軸を通すための孔部19が形成されている。
【0023】
絶縁被覆16は、例えば、芯線15の外周面全体を被覆する。絶縁被覆16は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料からなる。絶縁被覆16の材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂が用いられる。絶縁被覆16の材料としては、1種の材料を単独で用いてもよいし、2種以上の材料を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
一対の電線端子17は、高さ方向(
図4のZ軸方向)において互いに異なる位置に配置されるとともに、高さ方向の直交する方向の平面上(
図4のX-Y軸平面)で互いにずれて配置されている。すなわち、電線4が高さ方向に並べて配置されるものの、一対の電線端子17が高さ方向から見て互いに重ならないように配置されている。
【0025】
電線4の先端には、電線端子17の周囲を覆うインナーハウジング21が取付けられている。本例の場合、インナーハウジング21は、一対の電線4の電線端子17を1つの部材で収容する。一対の電線4は、インナーハウジング21に形成された複数の係合爪22(1つのみ図示)によって、インナーハウジング21に固定されている。インナーハウジング21には、電線端子17の孔部19と対向する位置に、締結部18の軸を通す孔部23が形成されている。
【0026】
図5に示すように、電線4は、コネクタハウジング3の開口部24から挿入される締結部18によって相手コネクタ2の相手コネクタ端子25に先端の電線端子17が固定される。締結部18は、電線4のそれぞれに設けられている。締結部18は、例えば、ボルトである。このように、コネクタ1は、締結部18としてのボルトによって電線4が相手コネクタ2に固定されるボルト締めコネクタである。締結部18は、例えば、電線端子17の孔部23に収容されたブッシュ26を介して相手コネクタ端子25に固定される。
【0027】
(リテーナ29)
図1および
図5に示す通り、コネクタ1は、開口部24の縁を防水するシール部材30を保持するリテーナ29を備える。リテーナ29は、シール部材30の形状に合わせて環状に形成されている。リテーナ29は、一対の爪部31をコネクタハウジング3の開口部24の内周面に形成された突部32(片方のみ図示)に係合することにより、コネクタハウジング3に固定される。シール部材30は、例えば、ゴムリングである。
【0028】
(カバー34)
図5および
図6に示すように、コネクタ1は、リテーナ29を覆うように開口部24を閉塞するカバー34を備える。カバー34は、締結部18に手が触れないように開口部24を閉塞する。カバー34は、開口部24の全体を覆うカバー本体35と、カバー本体35からコネクタハウジング3に向かって延びる脚部36と、カバー本体35の側面に形成された膨出部37と、を有する。脚部36は、カバー本体35の両側に一対配置されている。
【0029】
コネクタハウジング3は、コネクタハウジング3に組付けられたカバー34の直線方向の移動を案内するレール部38を有する。レール部38には、カバー34をコネクタハウジング3に組付ける際にカバー34の脚部36を挿入する挿入孔39が形成されている。カバー34は、脚部36が挿入孔39に挿入されてコネクタハウジング3に組付けられた際、操作前の初期位置をとる。
【0030】
図6に示す通り、脚部36は、レール部38から脱落しないようにレール部38に摺動可能に係合する突起40を有する。突起40は、レール部38の内部のレール溝41に配置されている。カバー34は、突起40がレール溝41に沿って摺動することにより、レール部38に対して直線移動操作される。
【0031】
図7に示すように、突起40は、側面視において円形状に形成されている。このように、突起40は、レール部38(具体的には、レール溝41)の底面に接触する部分が曲面状に形成されている。突起40は、このような形状であると、レール溝41の内面に対して摺動し易くなる。カバー34は、初期位置から直線方向(
図7の矢印A1方向)に操作されることにより、開口部24の閉塞位置に位置する(
図8(a)の状態)。
【0032】
膨出部37は、下部の角位置に斜面42を有する。ところで、突起40が側面視で円形状に形成されている場合、カバー34が突起40を中心に揺動するので、膨出部37がカバー34の移動経路上に存在する部品に接触する可能性がある。この場合、膨出部37に斜面42が形成されていれば、カバー34が直線方向に操作された際の移動経路上に部品が位置していても、斜面42によって部品を円滑に乗り越えることが可能となる。よって、カバー34を初期位置から閉塞位置に円滑に操作可能となる。
【0033】
図9に示すように、コネクタハウジング3のレール部38には、閉塞位置に位置するカバー34の脚部36が配置される位置に挿入孔43が形成されている。このため、カバー34は、閉塞位置に位置した際、脚部36が挿入孔43の奥へ更に挿入されることが許容されるので、閉塞位置から更に奥への移動が可能となっている。
【0034】
図10に示すように、カバー34は、脚部36の基端を支持する一対の壁部45を有する。カバー34の内面には、一対の壁部45の間にリブ46が形成されている。コネクタハウジング3には、レール部38の近傍位置に、カバー34の直線移動方向に配列された深さの異なる2つの切欠部47、48が形成されている。カバー34が閉塞位置において上から操作されると、リブ46がコネクタハウジング3の切欠部47に挿入されるとともに、一対の壁部45の片側がコネクタハウジング3の切欠部48に挿入される。
【0035】
図8(a)から
図8(b)に示すように、カバー34は、閉塞位置の際に操作(本例は、押圧操作)されると、操作方向(
図8(a)の矢印A2方向)への1段階目の操作位置である第1操作位置に位置する。第1操作位置は、カバー34が開口部24に仮に嵌まった状態をとる仮嵌合位置である。
図8(b)から
図8(c)に示すように、カバー34は、第1操作位置から更に操作(本例は、押圧操作)されると、操作方向への2段階目の操作位置である第2操作位置に位置する。第2操作位置は、カバー34が開口部24に完全に嵌まった完全嵌合位置である。
【0036】
(検知部材51)
図1等に示す通り、コネクタ1は、コネクタハウジング3が相手コネクタ2に完全嵌合されたか否かを検知可能な検知部材51を備える。検知部材51は、高さ方向(
図1のZ軸方向)に延びる形状の本体部52を有する。本体部52は、例えば、複数箇所で肉抜きされることにより、軽量化されている。検知部材51は、コネクタハウジング3の側面に形成された一対の溝部53に、両側の縁部が摺動可能に係合されている。このように、検知部材51は、コネクタハウジング3に取付けられ、溝部53に沿って高さ方向に直線移動可能となっている。
【0037】
図11(a)、
図11(b)に示すように、検知部材51は、検知位置に位置した際に、相手コネクタ2に形成された突部54にロックされる第1係合片55と、コネクタハウジング3に形成された突部56にロックされる第2係合片57と、を有する。第1係合片55および第2係合片57の組は、本体部52の幅方向両側にそれぞれ配置されるとともに、本体部52の下端に配置されている。各第2係合片57は、各々組をなす第1係合片55の幅方向外側に配置されている。
【0038】
ロック部10の爪部11と突部12とが半嵌合の場合、第1係合片55が突部54に到達せず、更に、第2係合片57が突部56に到達しない。このように、爪部11と突部12とが半嵌合の場合、第1係合片55および第2係合片57がともに係合状態に移行しない。これにより、ロック部10が半嵌合の場合には、検知部材51を検知位置に位置させることが不可となるので、コネクタ1が相手コネクタ2に完全に嵌合されていないことが作業者に認識される。
【0039】
ロック部10の爪部11と突部12とが完全嵌合の場合、第1係合片55が突部54に到達し、更に、第2係合片57が突部56に到達する。このように、爪部11と突部12とが完全嵌合の場合、第1係合片55および第2係合片57がともに係合状態に移行する。これにより、検知部材51を正常に検知位置に位置させることが可能となるので、コネクタ1が相手コネクタ2に完全に嵌合されていることが作業者に認識される。
【0040】
図12(a)および
図12(b)に示すように、検知部材51は、ロック部10のロック状態を保持するロック保持部59を有する。ロック保持部59は、コネクタハウジング3の爪部11を横断するように配置された規制部60と、爪部11の基端の凹設部61に挿入可能な支持突62と、を有する。規制部60は、検知部材51が検知位置の際、爪部11を表面から押さえる。支持突62は、検知部材51が検知位置に位置した際に、凹設部61に収容される。
【0041】
図12(b)に示す通り、検知部材51が検知位置に位置した際には、規制部60が爪部11を上から覆い、かつ、支持突62が凹設部61に入り込む。このため、ロック部10を無理に外そうとしても、検知部材51の支持突62がコネクタハウジング3の凹設部61に収容されるとともに規制部60が爪部11を上から押さえるロック保持部59によって、爪部11が突部12から解除されない。このように、ロック保持部59は、ロック部10の爪部11に開き方向(アンロック方向)の負荷がかかった際に、支持突62が凹設部61の内面に支えられて爪部11が開かないようにすることにより、規制部60が爪部11を表面から押さえる状態を維持する。
【0042】
(脱落防止部65)
図7に示す通り、コネクタ1は、コネクタハウジング3においてカバー34の開方向(
図7の矢印B1方向)への移動経路の終端に設けられるとともにカバー34の開方向への脱落を防止する脱落防止部65を備える。脱落防止部65は、コネクタハウジング3の上壁において、開口部24の反対側の位置に形成された突出片である。カバー34が開方向にスライド操作された際、カバー34のカバー本体35が脱落防止部65に当接することにより、カバー34を開方向に直線移動操作した際の脱落が防止される。
【0043】
(カバーロック機構66)
図13、
図14(a)、および
図14(b)に示すように、コネクタ1は、カバー34が開口部24の閉塞位置において嵌合の操作が行われた場合に、カバー34を操作後の位置で保持するカバーロック機構66を備える。本例の場合、カバーロック機構66は、カバー34が開口部24の閉塞位置で押圧操作によりコネクタハウジング3に嵌合された場合に、カバー34が押圧操作された位置でカバー34の位置を保持する。具体的には、カバーロック機構66は、カバー34が閉塞位置から第1操作位置に操作された場合に、ロック状態に移行する。
【0044】
カバーロック機構66は、検知部材51に形成されたロック片67(
図14(a)、(b)参照)と、カバー34に形成された段部68(
図13参照)と、を有する。ロック片67は、検知部材51の長さ方向の一端(本例は、上端)に配置されている。段部68は、カバー34の膨出部37の内部に形成されている。カバー34が閉塞位置から押圧操作されると、押圧操作の過程でロック片67が撓み、そして、カバー34が第1操作位置に到達すると、ロック片67が段部68に係合される。
【0045】
(案内機構69)
図8(a)に示す通り、コネクタ1は、カバー34と検知部材51とをカバーロック機構66でロックする際に、凹凸の形状によってカバー34と検知部材51との位置決めを案内する案内機構69を備える。案内機構69は、検知部材51に形成された突出壁70と、カバー34に形成された切欠部71と、を含む。案内機構69は、カバー34が閉塞位置から第1操作位置に押圧操作される際、突出壁70が切欠部71内に入り込んでいくことにより、カバー34と検知部材51とを位置決めする。
【0046】
(押込面72)
図8(a)に示す通り、カバー34は、操作時に検知部材51に当接して検知部材51を検知位置の方向に押し込む押込面72を有する。押込面72は、案内機構69(具体的には、切欠部71)の両側に一対配置されている。本例の場合、カバー34は、第1操作位置から第2操作位置に操作される際、一対の押込面72によって検知部材51を押すことにより、検知部材51を検知位置に位置させる。このように、検知部材51は、カバーロック機構66によってカバー34とロックされた後に、更にカバー34が操作されることに連動して、検知前位置から検知位置に位置する。
【0047】
(未組立確認機構74)
図15および
図16に示すように、コネクタ1は、リテーナ29および締結部18の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、カバー34で開口部24を閉塞することを不可とする未組立確認機構74を備える。未組立確認機構74は、リテーナ29および締結部18の少なくとも一方が完全に組み立てられていない場合に、カバー34を正常に取付けられないことをもって、作業者にこれら部品の未組立てを認識させる。
【0048】
図15に示す通り、未組立確認機構74は、リテーナ29が組立途中位置に位置する場合に、カバー34をコネクタハウジング3に組付けることができないようにする。本例の場合、未組立確認機構74は、例えば、カバー34をコネクタハウジング3に組付ける際に、コネクタハウジング3に完全に取付けられずに所定量浮いたリテーナ29がカバー34に干渉することにより、カバー34の突起40がレール溝41に係合できないことをもって、リテーナ29が組立途中位置に位置することを認識できるようにする。
【0049】
図16に示す通り、未組立確認機構74は、締結部18が組立途中位置に位置する場合に、コネクタハウジング3に組付けられて初期位置に位置するカバー34を、開口部24の閉塞位置に操作できないようにする。本例の場合、未組立確認機構74は、例えば、初期位置に位置するカバー34を開口部24の閉塞位置にスライド操作する際に、カバー34が締結部18に干渉することにより、カバー34を途中までしかスライド操作できないことをもって、締結部18が組立途中位置に位置することを認識できるようにする。
【0050】
次に、本実施形態のコネクタ1の作用について説明する。
(リテーナ29の嵌合が不完全な場合)
図15に示す通り、リテーナ29が開口部24に完全に組付いていない場合、リテーナ29が開口部24の上面から所定量上方に突出した状態となる。この状態でカバー34をコネクタハウジング3に組付けようとすると、所定量上方に突出したリテーナ29に干渉してしまい、カバー34の脚部36の突起40をレール溝41に嵌合させることができない。このため、作業者はリテーナ29の嵌合が不完全であることが直ちに分かる。よって、リテーナ29を組立て直して、カバー34の正しい取付けの継続が可能となる。
【0051】
(締結部18の締結が不完全な場合)
図16に示す通り、締結部18が完全に相手コネクタ2の相手コネクタ端子25に締結されていない場合、締結部18が開口部24の正面から所定量上方に突出した状態となる。この状態でカバー34を初期位置から閉塞位置にスライド操作すると、所定量上方に突出した締結部18に干渉してしまい、カバー34を閉塞位置までスライド操作することができない。このため、作業者は締結部18の締結が不完全であることが直ちに分かる。よって、締結部18を直ちに締結し直して、カバー34の正しい取付けの継続が可能となる。
【0052】
(実施形態の効果)
上記実施形態のコネクタ1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コネクタ1は、相手コネクタ2に嵌合されるコネクタハウジング3と、締結部18によって相手コネクタ端子25に固定される電線4と、開口部24に取付けられるシール部材30を保持するリテーナ29と、開口部24を閉塞するカバー34と、を備える。コネクタ1は、締結部18およびリテーナ29の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合に、カバー34でコネクタハウジング3の開口部24を閉塞することを不可とする未組立確認機構74を備える。
【0053】
本構成によれば、締結部18およびリテーナ29の少なくとも一方が組立途中位置に位置する場合、カバー34で開口部24を閉塞することが未組立確認機構74によって不可とされる。よって、作業者がカバー34をコネクタハウジング3に取付ける作業の過程で、締結部18およびリテーナ29の少なくとも一方が未組立てであることが直ちに分かる。このようにして、締結部18およびリテーナ29の少なくとも一方の未組立てを認識することができる。
【0054】
(2)未組立確認機構74は、リテーナ29が組立途中位置に位置する場合に、カバー34をコネクタハウジング3に組付けることができないようにする。この構成によれば、カバー34をコネクタハウジング3に取付けることができないという分かり易い方法で、リテーナ29が完全にコネクタハウジング3に組付けられていないことを作業者に認識させることができる。
【0055】
(3)未組立確認機構74は、締結部18が組立途中位置に位置する場合に、コネクタハウジング3に組付けられて初期位置に位置するカバー34を、開口部24の閉塞位置に操作できないようにする。この構成によれば、初期位置のカバー34を開口部24の閉塞位置に操作することができないという分かり易い方法で、締結部18が未締結であることを作業者に認識させることができる。
【0056】
(4)カバー34は、コネクタハウジング3に組付けられた際には初期位置に位置するとともに、コネクタハウジング3に対して初期位置から直線方向に操作されることにより、開口部24の閉塞位置に位置する。この構成によれば、カバー34をコネクタハウジング3に対して移動させる構造をスライド操作式の簡単な構造とすることができる。
【0057】
(5)カバー34は、コネクタハウジング3に設けられたレール部38に直線移動可能に取付けられた脚部36を有する。脚部36は、レール部38から脱落しないようにレール部38に摺動可能に係合する突起40を有する。突起40は、レール部38の底面に接触する部分が曲面状に形成されている。この構成によれば、カバー34をコネクタハウジング3に対して直線方向に操作する場合に、曲面状の突起40によって、コネクタハウジング3に対するカバー34の円滑な移動が確保される。よって、カバー34を初期位置から開口部24の閉塞位置にスライド操作する際に、カバー34にスティックスリップが生じ難くなるので、カバー34を円滑に直線移動させることができる。
【0058】
(6)コネクタ1は、カバー34が開口部24の閉塞位置において嵌合の操作が行われた場合に、カバー34を操作後の位置で保持するカバーロック機構66を備える。この構成によれば、コネクタハウジング3の開口部24を閉塞するカバー34をカバーロック機構66によってコネクタハウジング3から脱落し難くすることができる。
【0059】
(7)コネクタ1は、コネクタハウジング3においてカバー34の開方向への移動経路の終端に設けられるとともにカバー34の開方向への脱落を防止する脱落防止部65を備える。この構成によれば、カバー34を開口部24から開操作した場合に、脱落防止部65によってカバー34をコネクタハウジング3から脱落し難くすることができる。
【0060】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・一対の電線4は、高さ方向に並ぶ構成に限らず、幅方向(横方向)に並んだ構成でもよい。
・電線4は、2本に限らず、1本のみであってもよいし、3本以上であってもよい。
【0062】
・カバー34の初期位置から閉塞位置への操作は、スライド操作式に限らず、例えば、脚部36の先端(具体的には、突起40)を中心とした回転操作式であってもよい。
・カバー34がコネクタハウジング3に組付けられた時点での状態が開口部24の閉塞位置であってもよい。
【0063】
・カバー34を閉塞位置からコネクタハウジング3に嵌合する操作は、2段階操作に限らず、1段階操作であってもよい。すなわち、カバー34の閉塞位置からの1段階操作によって、カバー34のロックと検知部材51の連動とが同時に実行される構成としてもよい。
【0064】
・芯線15は、バスバーに限らず、複数の導線を束ねた構成でもよい。
・組立途中位置は、締結部18が締結途中に配置される位置や、リテーナ29が開口部24に嵌合される途中に配置される位置を言う。
【0065】
・検知部材51は、コネクタ1から省略されてもよい。
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0066】
1 コネクタ
2 相手コネクタ
3 コネクタハウジング
4 電線
5 開口孔
6 ホルダ
7 スリット
8 止水部材
9 キャップ
10 ロック部
11 爪部
12 突部
14 絶縁被覆
15 芯線
16 絶縁被覆
17 電線端子
18 締結部
19 孔部
21 インナーハウジング
22 係合爪
23 孔部
24 開口部
25 相手コネクタ端子
26 ブッシュ
29 リテーナ
30 シール部材
31 爪部
32 突部
34 カバー
35 カバー本体
36 脚部
37 膨出部
38 レール部
39 挿入孔
40 突起
41 レール溝
42 斜面
43 挿入孔
45 壁部
46 リブ
47 切欠部
48 切欠部
51 検知部材
52 本体部
53 溝部
54 突部
55 第1係合片
56 突部
57 第2係合片
59 ロック保持部
60 規制部
61 凹設部
62 支持突
65 脱落防止部
66 カバーロック機構
67 ロック片
68 段部
69 案内機構
70 突出壁
71 切欠部
72 押込面
74 未組立確認機構