(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001230
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20241225BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H02J1/00 308E
H02J7/00 P
H02J7/00 B
H02J1/00 304H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100709
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木(中村) 拓
(72)【発明者】
【氏名】藤浦 圭一
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165EA01
5G165HA09
5G165MA07
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CB10
5G503GA01
5G503GC04
5G503GD02
(57)【要約】
【課題】電動車に搭載されたバッテリモジュールを複数並列接続して構成された電源システムの起動をより適正に行なう。
【解決手段】安定化電源と電源ラインの並列接続点との間にシステム用スイッチを取り付けると共に並列接続点と各バッテリ用制御装置との間に複数のモジュール用スイッチを取り付ける。そして、システム起動時には、システム用スイッチをオンとした後に、順次複数のモジュール用スイッチのオンとして順次複数のバッテリモジュールを起動する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと前記バッテリを管理するバッテリ用制御装置とを有する車載用の複数のバッテリモジュールを並列接続して構成された電源システムであって、
前記複数のバッテリモジュールの各バッテリ用制御装置は、電源ラインにより安定化電源に並列接続されており、
前記安定化電源と前記電源ラインの並列接続点との間に取り付けられたシステム用スイッチと、
前記電源ラインの並列接続点と各バッテリ用制御装置との間に取り付けられた複数のモジュール用スイッチと、
前記安定化電源から電力の供給を受けてシステムを制御するシステム用制御装置と、
を備え、
前記システム用制御装置は、
システム起動時には、前記システム用スイッチをオンとした後に、順次複数のモジュール用スイッチのオンとして順次複数のバッテリモジュールを起動する、
ことを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関し、詳しくは、複数の車載用のバッテリモジュールを並列接続して構成された電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電源システムとしては、第1スイッチを介して負荷に接続された第1電源部と、第2スイッチを介して負荷に接続された第2電源部と、第3スイッチを介して負荷に接続された第2電源部より内部抵抗が低い第3電源部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、第1電源部の出力電圧が第1電圧よりも低くなると第1スイッチをオフとし、第2スイッチと第3スイッチとをオンとする。そして、第3スイッチを所定接続期間を経過した時点でオフとする。これにより、複数の電源から切り替えを伴って負荷へ供給される電圧を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車に搭載されたバッテリモジュールは、資源の有効利用の観点から複数を並列接続した電源システムに用いられることが考えられる。この場合、システム起動の際には、安定化電源から各バッテリモジュールを起動する制御装置に電源を供給する必要があるが、各バッテリモジュールが同時に起動しようとすると、安定化電源の出力電圧が低下して起動できない場合が生じる。
【0005】
本開示の電源システムは、電動車に搭載されたバッテリモジュールを複数並列接続して構成された電源システムの起動をより適正に行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電源システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の電源システムは、
バッテリと前記バッテリを管理するバッテリ用制御装置とを有する車載用の複数のバッテリモジュールを並列接続して構成された電源システムであって、
前記複数のバッテリモジュールの各バッテリ用制御装置は、電源ラインにより安定化電源に並列接続されており、
前記安定化電源と前記電源ラインの並列接続点との間に取り付けられたシステム用スイッチと、
前記電源ラインの並列接続点と各バッテリ用制御装置との間に取り付けられた複数のモジュール用スイッチと、
前記安定化電源から電力の供給を受けてシステムを制御するシステム用制御装置と、
を備え、
前記システム用制御装置は、
システム起動時には、前記システム用スイッチをオンとした後に、順次複数のモジュール用スイッチのオンとして順次複数のバッテリモジュールを起動する、
ことを特徴とする。
【0008】
本開示の電源システムでは、複数のバッテリモジュールの各バッテリ用制御装置を電源ラインにより安定化電源に並列接続し、安定化電源と電源ラインの並列接続点との間にシステム用スイッチを取り付けると共に、電源ラインの並列接続点と各バッテリ用制御装置との間に複数のモジュール用スイッチを取り付ける。そして、システム起動時には、システム用スイッチをオンとした後に、順次複数のモジュール用スイッチのオンとして順次複数のバッテリモジュールを起動する。即ちモジュール用スイッチをオンとすると共にこのモジュール用スイッチに接続されたバッテリ用制御装置を起動してバッテリモジュールを起動する処理を順次繰り返すのである。このように、順次バッテリモジュールを起動するから、同時にバッテリモジュールのバッテリ用制御装置の起動を行なう際に生じ得る安定化電源からの出力電圧の低下を抑制することができ、より適正にシステムを起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態としての電源システム20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】システム起動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態の電源システム20と比較例の電源システムのシステム起動時の安定化電源の電圧の時間変化の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、本開示の実施形態としての電源システム20の構成の概略を示す構成図である。電源システム20は、複数のバッテリモジュール30a~30nを並列接続して構成されており、複数のバッテリモジュール30a~30nの他に、システム用電子制御ユニット(以下、システムECUという。)22と、安定化電源51と、システム用スイッチ53と、複数のモジュール用スイッチ56a~56nとを備える。
【0011】
バッテリモジュール30aは、電動車の走行用モータに電力を供給する車載用のモジュールとして構成されており、電動車に搭載して利用したあとの再利用として電源システム20に組み込まれる。バッテリモジュール30aは、バッテリ32aと、パワーコントロールユニット(Power Control Unit:以下、PCUという。)34aと、モジュール用電子制御ユニット(以下、モジュールECUという。)36aと、電池用電子制御ユニット(以下、電池ECUという。)38aとを有する。なお、バッテリモジュール30b~30nは、バッテリモジュール30aと同一の構成をしている。
【0012】
バッテリ32aは、例えばリチウムイオン二次電池として構成されている。PCU34aは、走行用モータを駆動するインバータやバッテリからの電力を昇圧してインバータに供給する昇圧コンバータなどにより構成されている。電池ECU38aは、バッテリ32aを管理するためにバッテリ32aの出力端子に取り付けられた図示しない電流センサや電圧センサからの検出値を入力し、バッテリ32aの蓄電割合SOCなどを計算している。モジュールECU36aは、バッテリモジュール30aが車載されているときにはPCU34a内の昇圧コンバータやインバータを制御することにより走行用モータを駆動制御するモータ用電子制御ユニットとして機能し、バッテリモジュール30aが電源システム20に組み込まれているときにはバッテリモジュール30aを起動する制御装置として機能する。
【0013】
バッテリ32a~32nは、PCU34a~34nを介してモジュール用電力ライン42a~42nにより出力用電力ライン44に接続されている。出力用電力ライン44は、電源システム20の出力用の電力ラインである。
【0014】
安定化電源51は、電源ライン50により外部電源(例えば200Vの商用電源)に接続されており、トランスやコンデンサなどにより安定した所定電圧(例えば5V)を供給する電源回路として構成されている。安定化電源51は、電源ライン52により並列接続用電源ライン54に接続されている。電源ライン52には、システム用スイッチ53が取り付けられている。並列接続用電源ライン54は、モジュール用電源ライン55a~55nによりモジュールECU36a~36nに接続されている。モジュール用電源ライン55a~55nには、それぞれモジュール用スイッチ56a~56nが取り付けられている。したがって、システム用スイッチ53をオンとすると共に各モジュール用スイッチ56a~56nをオンとすることにより、安定化電源51からの所定電圧を各モジュールECU36a~36nに供給することができるようになっている。
【0015】
システムECU22は、安定化電源51から電源ライン52を介して電力の供給を受け、電源システム20を制御する。システムECU22は、例えば、システム用スイッチ53のオンオフや、各モジュール用スイッチ56a~56nをオンオフを行なう。
【0016】
次に、こうして構成された実施形態の電源システム20の動作、特にシステム起動時の動作について説明する。
図2は、電源システム20のシステム起動時に実行されるシステム起動処理の一例を示すフローチャートである。
【0017】
システム起動処理では、まず、安定化電源51をオンとし(ステップS100)、システムECU22を起動する(ステップS110)。続いて、システム用スイッチ53をオンとし(ステップS120)、バッテリモジュール30a~30nを順次起動し(ステップS130~S150)、システム起動を完了し(ステップS160)、システム起動処理を終了する。
【0018】
バッテリモジュール30a~30nの起動は、順に並べられたバッテリモジュール30a~30nのうち、まず、最初のバッテリモジュール30aに接続されたモジュール用スイッチ56aをオンとし(ステップS130)、モジュールECU36aを起動する(ステップS140)。そして、まだ未起動のバッテリモジュールがあるか否かを判定し(ステップS150)、未起動のバッテリモジュールがあると判定したときには、ステップS130の次のバッテリモジュールに接続されたモジュール用スイッチをオンとする処理に戻る。こうしたステップS130~S150を繰り返すことにより、順次、バッテリモジュール30a~30nを起動する。
【0019】
図3は、実施形態の電源システム20と比較例の電源システムのシステム起動時の安定化電源の電圧の時間変化の一例を示す説明図である。比較例としては、実施形態の電源システム20のハード構成でシステム起動時にシステム用スイッチ53とモジュール用スイッチ56a~56nとを同時にオンとするものとした。図中、電圧Vrefは、モジュールECU36a~36nを起動するのに最低限必要な電圧である。比較例では、時間T1にシステム起動が開始されると、システム用スイッチ53とモジュール用スイッチ56a~56nとが同時にオンとされる。このため、安定化電源51からの電圧は、大きく電圧降下し、モジュールECU36a~36nを起動するのに最低限必要な電圧Vrefを下回り、システム起動に失敗してしまう。一方、実施形態では、時間T1にシステム起動が開始されると、システム用スイッチ53がオンとされ、その後、モジュール用スイッチ56a~56nが順次オンとされる。このため、安定化電源51からの電圧は、スイッチがオンされたときに若干の電圧降下が認められるもののモジュールECU36a~36nを起動するのに最低限必要な電圧Vrefを下回ることはなく、正常にシステム起動する。
【0020】
以上説明した実施形態の電源システム20では、再利用の複数のバッテリモジュール30a~30nの各バッテリ32a~32nをモジュール用電力ライン42a~42nにより出力用電力ライン44に並列接続すると共に、バッテリモジュール30a~30nのモジュールECU36a~36nをモジュール用電源ライン55a~55nと並列接続用電源ライン54とを用いて安定化電源51に接続された電源ライン52に並列接続する。そして、電源ライン52にはシステム用スイッチ53を取り付け、各モジュール用電源ライン55a~55nにはモジュール用スイッチ56a~56nを取り付ける。システム起動時には、システム用スイッチ53をオンとした後で、モジュール用スイッチ56a~56nを順次オンとして各モジュールECU36a~36nを順次起動する。このように順次バッテリモジュール30a~30nを起動するから、同時にバッテリモジュール30a~30nを起動する際に生じ得る安定化電源51からの出力電圧の大幅な低下を抑制することができ、より適正に電源システム20を起動することができる。
【0021】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、バッテリ32a~32nが「バッテリ」に相当し、バッテリモジュール30a~30nが「バッテリモジュール」に相当し、安定化電源51が「安定化電源」に相当し、システム用スイッチ53が「システム用スイッチ」に相当し、並列接続用電源ライン54が「並列接続点」に相当し、モジュールECU36a~36nが「バッテリ用制御装置」に相当し、モジュール用スイッチ56a~56nが「モジュール用スイッチ」に相当し、システムECU22が「システム用制御装置」に相当する。
【0022】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0023】
以上、本開示を実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示は、電源システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
20 電源システム、22 システム用電子制御ユニット(システムECU)、30a~30n バッテリモジュール、32a~32n バッテリ、34a~34n パワーコントロールユニット(PCU)、36a~36n モジュール用電子制御ユニット(モジュールECU)、42a~42n モジュール用電力ライン、44 出力用電力ライン、50 電源ライン、51 安定化電源、52 電源ライン、53 システム用スイッチ、54 並列接続用電源ライン、55a~55n モジュール用電源ライン、56a~56n モジュール用スイッチ。