IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃料電池システム 図1
  • 特開-燃料電池システム 図2
  • 特開-燃料電池システム 図3
  • 特開-燃料電池システム 図4
  • 特開-燃料電池システム 図5
  • 特開-燃料電池システム 図6
  • 特開-燃料電池システム 図7
  • 特開-燃料電池システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025123013
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20250815BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20250815BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20250815BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20250815BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20250815BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/249
H01M8/0438
H01M8/04858
H01M8/04014
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018828
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 晋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 諭
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆平
(72)【発明者】
【氏名】堀口 大
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H127AB04
5H127AB14
5H127AB17
5H127AC02
5H127AC05
5H127AC17
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB13
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC01
5H127DB22
5H127DB23
5H127DB29
5H127DC22
5H127DC23
5H127DC24
5H127DC90
(57)【要約】
【課題】ターボ式コンプレッサのサージングを回避する。
【解決手段】燃料電池システムは、複数の燃料電池スタックと、複数の燃料電池スタックの各々に酸化ガスを供給するターボ式コンプレッサを有する酸化ガス供給ユニットと、要求された出力に応じて、複数の燃料電池スタックに対する要求運転数、並びに、酸化ガス供給ユニットに指令する酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量を決定する制御装置と、を備える。酸化ガス供給ユニットは、ターボ式コンプレッサの吐出流量に対して、複数の燃料電池スタックへ供給される供給流量の割合である供給率を調整する調整機構を有する。制御装置は、ターボ式コンプレッサにおける圧力比を監視しており、圧力比が所定の閾値を上回るときに、調整機構を制御して、供給率を低下させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックと、
前記複数の燃料電池スタックの各々に酸化ガスを供給するターボ式コンプレッサを有する酸化ガス供給ユニットと、
要求された出力に応じて、前記複数の燃料電池スタックに対する要求運転数、並びに、前記酸化ガス供給ユニットに指令する前記酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量を決定する制御装置と、
を備え、
前記酸化ガス供給ユニットは、前記ターボ式コンプレッサの吐出流量に対して、前記複数の燃料電池スタックへ供給される供給流量の割合である供給率を調整する調整機構を有し、
前記制御装置は、前記ターボ式コンプレッサにおける圧力比を監視しており、前記圧力比が所定の閾値を上回るときに、前記調整機構を制御して、前記供給率を低下させる、燃料電池システム。
【請求項2】
前記調整機構は、
前記ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続する還流経路と、
前記還流経路に設けられた流量調整弁と、を有する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記酸化ガス供給ユニットは、前記ターボ式コンプレッサから吐出された前記酸化ガスを冷却するインタークーラをさらに有し、
前記還流経路は、前記インタークーラよりも上流側において、前記ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続している、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記酸化ガス供給ユニットは、前記ターボ式コンプレッサから吐出された前記酸化ガスを冷却するインタークーラをさらに有し、
前記還流経路は、前記インタークーラよりも下流側において、前記ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続している、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記酸化ガス供給ユニットは、
前記ターボ式コンプレッサから前記複数の燃料電池スタックへ前記酸化ガスを供給する酸化ガス供給経路と、
前記複数の燃料電池スタックから前記酸化ガスのオフガスを排出するオフガス排出経路と、を有し、
前記調整機構は、前記酸化ガス供給経路と前記オフガス排出経路とを互いに接続する分流経路と、前記分流経路に設けられた流量調整弁と、を有する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、燃料電池システムが記載されている。この燃料電池システムは、複数の燃料電池スタックと、複数の燃料電池スタックの各々に酸化ガスを供給する酸化ガス供給ユニットと、複数の燃料電池スタックの各々を冷却する冷媒を供給する冷却ユニットと、酸化ガス供給ユニットに指令する酸化ガスの目標供給流量、並びに、冷却ユニットに指令する冷媒の目標供給流量を決定する制御装置と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-156906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池スタックでは、要求される出力(即ち、発電電力)と、燃料電池スタックの温度とに応じて、燃料電池スタックへ供給すべき酸化ガスの供給圧力及び供給流量が決定される。例えば、燃料電池スタックの温度が一定であれば、燃料電池スタックに要求される出力が大きくなるほど、酸化ガスの供給圧力及び供給流量を増大させる必要がある。このとき、酸化ガスの供給にターボ式コンプレッサが採用されていると、当該コンプレッサにおける圧力比が増大することによって、サージングが発生するおそれがある。特に、複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムでは、システム全体に要求される出力に応じて、運転する燃料電池スタックの数を減少させることがある。この場合、運転を継続する燃料電池スタックでは、要求される出力が急激に上昇することから、サージングが発生するおそれが高くなる。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、ターボ式コンプレッサのサージングを回避するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述したように、燃料電池スタックに要求される出力が増大すると、燃料電池スタックに対する酸化ガスの供給圧力及び供給流量を増大させる必要がある。そのために、ターボ式コンプレッサでは、圧力比及び酸化ガスの吐出流量を増大させる必要がある。この点に関して、ターボ式コンプレッサでは、圧力比がある上限値を超えることで、サージングが発生するおそれが高まる。但し、その上限値は一定ではなく、ターボ式コンプレッサの吐出流量が増大するほど、その上限値も高くなっていく。従って、ターボ式コンプレッサにおける圧力比が増大したときに、当該コンプレッサにおける酸化ガスの吐出流量も併せて増大させることができれば、コンプレッサのサージングを回避することができる。そして、コンプレッサにおける酸化ガスの吐出流量に対して、燃料電池スタックに供給される供給流量の割合を調整することができれば、燃料電池スタックに適量の酸化ガスを供給することができる。
【0007】
以上の知見に基づき、本明細書が開示する技術は、燃料電池システムに具現化される。その第1の態様において、燃料電池システムは、複数の燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池スタックの各々に酸化ガスを供給するターボ式コンプレッサを有する酸化ガス供給ユニットと、要求された出力に応じて、前記複数の燃料電池スタックに対する要求運転数、並びに、前記酸化ガス供給ユニットに指令する前記酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量を決定する制御装置と、を備える。前記酸化ガス供給ユニットは、前記ターボ式コンプレッサの吐出流量に対して、前記複数の燃料電池スタックへ供給される供給流量の割合である供給率を調整する調整機構を有する。前記制御装置は、前記ターボ式コンプレッサにおける圧力比を監視しており、前記圧力比が所定の閾値を上回るときに、前記調整機構を制御して、前記供給率を低下させる。
【0008】
上記の構成によると、例えば、運転させる(即ち、発電させる)燃料電池スタックの数を減少させることで、ターボ式コンプレッサにおける圧力比が増大したときに、ターボ式コンプレッサにおける酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる。これにより、ターボ式コンプレッサのサージングを回避することができる。
【0009】
第2の態様では、前記第1の態様において、調整機構は、ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続する還流経路と、還流経路に設けられた流量調整弁とを有してもよい。このような構成によると、還流経路を介して、吐出側から吸入側へ酸化ガスを送出することができ、ターボ式コンプレッサにおける酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる。
【0010】
第3の態様では、前記第1又は前記第2の態様において、酸化ガス供給ユニットは、ターボ式コンプレッサから吐出された前記酸化ガスを冷却するインタークーラをさらに有してもよい。この場合、還流経路は、インタークーラよりも上流側において、ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続していてもよい。このような構成によると、吐出側から吸入側に送出される酸化ガスはインタークーラを通過しないため、燃料電池スタックに供給される酸化ガスのみをインタークーラによって冷却することができる。
【0011】
第4の態様では、前記第1又は前記第2の態様において、酸化ガス供給ユニットは、ターボ式コンプレッサから吐出された酸化ガスを冷却するインタークーラをさらに有してもよい。この場合、還流経路は、インタークーラよりも下流側において、ターボ式コンプレッサの吐出側と吸入側とを互いに接続していてもよい。このような構成によると、ターボ式コンプレッサが吸入する酸化ガスの温度が低くなり、コンプレッサにおいて所定の圧力比を実現するために必要とされるエネルギーを低減することができる。
【0012】
第5の態様では、前記第1から前記第4の態様のいずれかにおいて、酸化ガス供給ユニットは、ターボ式コンプレッサから複数の燃料電池スタックへ酸化ガスを供給する酸化ガス供給経路と、複数の燃料電池スタックから酸化ガスのオフガスを排出するオフガス排出経路とを有してもよい。この場合、調整機構は、酸化ガス供給経路とオフガス排出経路とを互いに接続する分流経路と、分流経路に設けられた流量調整弁とを有してもよい。このような構成によると、分流経路を介して、酸化ガス供給経路からオフガス排出経路へ酸化ガスを排出することができ、ターボ式コンプレッサにおける酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の燃料電池システム10の構成を概略的に示す図。
図2】燃料電池スタック12、14に対して要求された出力に応じて、制御装置36が、酸化ガス供給ユニット20に指令する酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量の関係を示す図。実線U1~U4のそれぞれは、燃料電池スタック12、14の異なる温度について、酸化ガスの供給流量と酸化ガスの供給圧力との関係を示す。破線P1~P5のそれぞれは、燃料電池スタック12、14の異なる電流(即ち、発電電力)について、酸化ガスの供給流量と酸化ガスの供給圧力との関係を示す。なお、数字が大きいものほど温度が高い、又は電力が大きいことを意味する。
図3】コンプレッサ22のサージング制約ラインSLを示す。点線L1~L5のそれぞれは、コンプレッサ22の異なる回転数について、酸化ガスの吐出流量とコンプレッサ22における圧力比との関係を示す。なお、数字が大きいものほど回転数が大きいことを意味する。
図4】制御装置36が実行する第1の処理を示すフローチャート。
図5図5(A)-(G)は、図4に示す第1の処理における各種パラメータの経時的変化を示す。図5(B)において、曲線I1は、第1燃料電池スタック12の電流を示し、曲線I2は、第2燃料電池スタック14の電流を示す。図5(E)において、曲線OV1は、第1燃料電池スタック12の出口弁30の開度を示し、曲線OV2は、第2燃料電池スタック14の出口弁30の開度を示す。図5(F)において、曲線IV1は、第1燃料電池スタック12の入口弁26の開度を示し、曲線IV2は、第2燃料電池スタック14の入口弁26の開度を示す。
図6】制御装置36が実行する第2の処理を示すフローチャート。
図7】実施例2の燃料電池システム110の構成を概略的に示す図。
図8】実施例3の燃料電池システム210の構成を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)図面を参照して、本実施例の燃料電池システム10について説明する。燃料電池システム10は、移動体(例えば、自動車、バス、トラック、電車、船舶、飛行機)や定置用燃料電池装置等に搭載され、外部から要求される出力に応じて電力を出力する発電システムである。
【0015】
図1に示すように、燃料電池システム10は、複数の燃料電池スタック12、14を備える。各燃料電池スタック12、14は、複数の燃料電池セルが積層された構造を有する。各燃料電池スタック12、14は、アノード側供給口(不図示)と、カソード側供給口16aと、アノード側排出口(不図示)と、カソード側排出口16bとを備える。各燃料電池スタック12、14のアノード側供給口及びカソード側供給口16aは、燃料電池スタック12、14内で、複数の燃料電池セルの各々に接続されている。各燃料電池スタック12、14は、アノード側供給口から取り入れた燃料ガスと、カソード側供給口16aから取り入れた酸化ガスとを、複数の燃料電池セル内で化学反応させることによって発電する。複数の燃料電池スタック12、14を通過したガス(即ち、オフガス)は、アノード側排出口及びカソード側排出口16bから外部へ排出される。
【0016】
複数の燃料電池スタック12、14には、第1燃料電池スタック12と、第2燃料電池スタック14とが含まれる。本実施例において、第1燃料電池スタック12は、第2燃料電池スタック14と、電気的に並列に接続されている。但し、複数の燃料電池スタック12、14の数は特に限定されず、二以上であればよい。なお、本実施例の燃料電池システム10では、燃料ガスとして水素ガスが使用され、酸化ガスとして空気が使用される。空気には、酸化剤として酸素が含まれている。
【0017】
図1に示すように、燃料電池システム10は、複数の電力制御ユニット18をさらに備える。本実施例において、電力制御ユニット18は、昇圧コンバータを有している。電力制御ユニット18は、各燃料電池スタック12、14と電気的に接続されている。電力制御ユニット18は、燃料電池スタック12、14からの発電電力を昇圧して、外部へ出力することができる。特に限定されないが、電力制御ユニット18は、昇圧コンバータに加えて、インバータをさらに備えてもよい。
【0018】
図1に示すように、燃料電池システム10は、酸化ガス供給ユニット20と、制御装置36とをさらに備える。酸化ガス供給ユニット20は、複数の燃料電池スタック12、14の各々に、酸化ガス(空気)を供給するためのユニットである。酸化ガス供給ユニット20は、コンプレッサ22と、インタークーラ50と、酸化ガス供給経路24と、複数の入口弁26と、オフガス排出経路28と、複数の出口弁30と、分流経路32と、分流弁34とを備える。制御装置36は、燃料電池スタック12、14の運転を開始し、その運転を停止することができる。
【0019】
コンプレッサ22は、ターボ式のコンプレッサである。コンプレッサ22は、酸化ガス供給経路24に設けられており、外部から取り込んだ空気を圧縮して、複数の燃料電池スタック12、14へ供給する。酸化ガス供給経路24は、コンプレッサ22が吐出する酸化ガスを、複数の燃料電池スタック12、14へ供給するための経路である。酸化ガス供給経路24は、第1酸化ガス供給経路24aと、第2酸化ガス供給経路24bとを備える。第1酸化ガス供給経路24aは、第1燃料電池スタック12のカソード側供給口16aに接続されており、コンプレッサ22からの酸化ガスを第1燃料電池スタック12に供給する。第2酸化ガス供給経路24bは、第2燃料電池スタック14のカソード側供給口16aに接続されており、コンプレッサ22からの酸化ガスを第2燃料電池スタック14に供給する。第1酸化ガス供給経路24a及び第2酸化ガス供給経路24bは、分岐点B1において互いに接続されている。
【0020】
酸化ガス供給経路24は、第3酸化ガス供給経路24cと、第4酸化ガス供給経路24dとをさらに備える。第3酸化ガス供給経路24cは、分岐点B1とコンプレッサ22との間を延びており、コンプレッサ22を第1酸化ガス供給経路24a及び第2酸化ガス供給経路24bへ接続している。第3酸化ガス供給経路24cは、コンプレッサ22の吐出側に位置しており、コンプレッサ22から吐出される酸化ガスを、第1酸化ガス供給経路24a及び第2酸化ガス供給経路24bへ供給する。第4酸化ガス供給経路24dは、コンプレッサ22の吸入側に位置しており、外部から取り込まれた空気をコンプレッサ22へ供給する。なお、特に限定されないが、燃料電池システム10は、外部から取り込んだ空気から塵や埃等の異物を取り除くエアクリーナをさらに備えてもよい。
【0021】
オフガス排出経路28は、複数の燃料電池スタック12、14から酸化ガスのオフガスを排出するための経路である。オフガス排出経路28は、複数の燃料電池スタック12、14のそれぞれにおいて、カソード側排出口16bに接続されている。
【0022】
インタークーラ50は、第3酸化ガス供給経路24cに設けられている。インタークーラ50は、コンプレッサ22から吐出された酸化ガスを冷却する。これにより、コンプレッサ22から吐出された酸化ガスは、インタークーラ50によって冷却された後に、複数の燃料電池スタック12、14へ供給される。なお、インタークーラ50は、水冷式であってもよいし、空冷式であってもよい。
【0023】
複数の入口弁26は、それぞれ複数の燃料電池スタック12、14において、カソード側供給口16aに設けられている。複数の出口弁30は、それぞれ複数の燃料電池スタック12、14において、カソード側排出口16bに設けられている。
【0024】
分流経路32は、酸化ガス供給経路24とオフガス排出経路28とを互いに接続している。一例ではあるが、本実施例における分流経路32は、第3酸化ガス供給経路24cから分岐して、オフガス排出経路28へ接続されている。分流経路32には、分流弁34が設けられている。入口弁26、出口弁30及び分流弁34は、開度が調整可能な制御弁である。入口弁26、出口弁30及び分流弁34の動作(開度)は、制御装置36によって制御される。制御装置36は、コンプレッサ22、各入口弁26、各出口弁30及び分流弁34の動作を制御することで、複数の燃料電池スタック12、14のそれぞれに供給される酸化ガスの供給圧力及び供給流量を調節することができる。
【0025】
図1に示すように、酸化ガス供給ユニット20は、還流経路52と、還流弁54とをさらに備える。還流経路52は、コンプレッサ22の吸入側に位置する第4酸化ガス供給経路24dと、コンプレッサ22の吐出側に位置する第3酸化ガス供給経路24cとを互いに接続している。還流経路52には、還流弁54が設けられている。還流弁54の動作(開度)は、制御装置36によって制御される。制御装置36は、還流弁54の動作を制御することで、コンプレッサ22から吐出された酸化ガスの一部を、第3酸化ガス供給経路24cから第4酸化ガス供給経路24dへ送出することができる。これにより、制御装置36は、コンプレッサ22の吐出流量に対して、複数の燃料電池スタック12、14へ供給される供給流量の割合である供給率(以下、単に供給率と称することがある)を調整することができる。
【0026】
図示省略するが、燃料電池システム10は、燃料ガス供給ユニットをさらに備える。燃料ガス供給ユニットは、燃料ガス(水素ガス)を燃料電池スタック12、14に供給するためのユニットである。
【0027】
図1に示すように、燃料電池システム10は、冷却ユニット38をさらに備える。冷却ユニット38は、複数の燃料電池スタック12、14の各々を冷却するためのユニットである。冷却ユニット38は、ラジエータ40と、循環経路42と、ポンプ44と、複数の温度センサ46、48とを備える。ラジエータ40は、循環経路42内を循環する冷媒から熱を放出する。循環経路42は、ラジエータ40から燃料電池スタック12、14へ冷媒を供給する往路42aと、燃料電池スタック12、14からラジエータ40に冷媒を戻す復路42bとを備える。ポンプ44は、往路42aに設けられている。
【0028】
複数の温度センサ46、48には、第1温度センサ46と、第2温度センサ48とが含まれる。第1温度センサ46は、復路42bにおける第1燃料電池スタック12の出口に設けられており、第1燃料電池スタック12を通過後の冷媒の温度を検出する。第2温度センサ48は、復路42bにおける第2燃料電池スタック14の出口に設けられており、第2燃料電池スタック14を通過後の冷媒の温度を検出する。冷媒は、各燃料電池スタック12、14内の複数の燃料電池セルを通過する際に、燃料電池セルから熱を吸収している。そのため、各温度センサ48による検出値、即ち、各燃料電池スタック12、14の出口における冷媒の温度は、燃料電池スタック12、14の実温度と相関を有する。ここで、燃料電池スタック12、14の実温度は、燃料電池スタック12、14の実際の温度を意味する。
【0029】
制御装置36は、冷却ユニット38に指令する燃料電池スタック12、14の目標冷却温度を決定する。そして、制御装置36は、温度センサ46、48による検出値に基づいて、ポンプ44を制御して、燃料電池スタック12、14に供給される冷媒の流量を調整することで、燃料電池スタック12、14の温度が目標冷却温度となるように、燃料電池スタック12、14を冷却する。一例ではあるが、冷媒は水である。なお、他の実施形態において、燃料電池システム10は、燃料電池スタック12、14毎に個別の冷却ユニット38を備えてもよい。
【0030】
図1に示すように、燃料電池システム10は、第1圧力センサ56と、第2圧力センサ58とをさらに備える。第1圧力センサ56は、第4酸化ガス供給経路24dに設けられており、コンプレッサ22に吸入される酸化ガス(空気)の圧力を検出する。第2圧力センサ58は、第3酸化ガス供給経路24cに設けられており、コンプレッサ22から吐出された酸化ガス(空気)の圧力を検出する。各圧力センサ56、58による検出値は、制御装置36によって取得される。各圧力センサ56、58による検出値に基づいて、制御装置36は、コンプレッサ22における圧力比を算出し、監視している。
【0031】
図1に示すように、燃料電池システム10は、第3温度センサ60と、流量センサ62とをさらに備える。第3温度センサ60は、第3酸化ガス供給経路24cにおいて、インタークーラ50の出口側に設けられている。これにより、第3温度センサ60は、インタークーラ50によって冷却された酸化ガスの温度を検出する。流量センサ62は、第4酸化ガス供給経路24dに設けられており、コンプレッサ22によって吸引される酸化ガスの流量を検出する。これらのセンサ60、62による検出値は、制御装置36によって取得される。
【0032】
制御装置36は、燃料電池システム10に要求される出力に応じて、運転すべき燃料電池スタック12、14の数を変更することができる。例えば、燃料電池システム10に要求される出力が比較的に小さい場合、制御装置36は、二つの燃料電池スタック12、14の一方の運転を停止する。これにより、発電効率の低下を回避することができる。
【0033】
運転する燃料電池スタック12、14の数が決定されると、各燃料電池スタック12、14に対して要求される出力が定まる。各燃料電池スタック12、14では、要求される出力(即ち、発電電力)と、燃料電池スタック12、14の温度とに応じて、各燃料電池スタック12、14へ供給すべき酸化ガスの供給圧力及び供給流量が決定される。図2に示すように、例えば、燃料電池スタック12、14の温度が一定であれば、燃料電池スタック12、14に要求される出力が大きくなるほど、酸化ガスの供給圧力及び供給流量を増大させる必要がある。特に、運転する燃料電池スタック12、14の数が減少する場合、運転を継続する燃料電池スタック12(又は14)では、要求される出力が急激に上昇することから、酸化ガスの供給圧力及び供給流量も大きく増大させる必要がある。
【0034】
この点に関して、本実施例の燃料電池システム10では、酸化ガスの供給にターボ式のコンプレッサ22が採用されている。そのため、燃料電池スタック12、14への酸化ガスの供給圧力を増大させるために、コンプレッサ22における圧力比を増大させると、コンプレッサ22のサージングが発生するおそれがある。そのことから、図3に示すように、燃料電池システム10では、コンプレッサ22の動作点(圧力比と吐出流量との組み合わせ)に対して、サージング制約ラインSL1、SL2が定められている。即ち、コンプレッサ22の動作点が、サージング制約ラインSL1、SL2を超えると、コンプレッサ22においてサージングが発生するおそれがある。特に、運転する燃料電池スタック12、14の数が減少するときのように、燃料電池スタック12(又は14)に要求される出力が急激に上昇したときは、コンプレッサ22の動作点が、サージング制約ラインSL1、SL2を超えるおそれが高まる。
【0035】
コンプレッサ22のサージングを回避するためには、コンプレッサ22の動作点を、サージング制約ラインSL1(又はSL2)以下に維持する必要がある。ここで、サージング制約ラインSL1(又はSL2)が示すように、コンプレッサ22では、圧力比がある上限値を超えることで、サージングが発生するおそれが高まる。但し、その上限値は一定ではなく、コンプレッサ22の吐出流量が増大するほど、その上限値も高くなっていく。従って、コンプレッサ22における圧力比が増大したときに、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量も併せて増大させることができれば、コンプレッサ22のサージングを回避することができる。そして、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量を増大させた場合でも、その吐出流量に対して燃料電池スタック12、14に供給される供給流量の割合を調整することができれば、燃料電池スタック12、14に適量の酸化ガスを供給することができる。
【0036】
この知見を踏まえて、本実施例の制御装置36は、図4に示す第1の処理を繰り返し実行可能に構成されている。制御装置36は、第1の処理を繰り返し実行することにより、コンプレッサ22の吐出流量に対して、複数の燃料電池スタック12、14へ供給される供給流量の割合である供給率を調整することができる。
【0037】
図4に示すように、制御装置36は、外部から要求された出力PRを取得する(S10)。ステップS10で取得した出力PRに基づいて、制御装置36は、燃料電池スタック12、14に対する要求運転数を算出する(S12)。さらに、制御装置36は、各燃料電池スタック12、14に対する目標電流(即ち、目標発電電力)を算出する(S14)。制御装置36は、S14で決定した目標電流に応じて、酸化ガス供給ユニット20に指令する酸化ガスの目標供給圧力を算出するとともに(S16)、酸化ガス供給ユニット20に指令する酸化ガスの目標供給流量を算出する(S18)。本実施例の制御装置36は、酸化ガス供給ユニット20に指令する酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量の関係(図2参照)を記述するマップを予め記憶している。そのため、制御装置36は、予め記憶したマップが記述する関係に基づいて、実運転数に応じた酸化ガスの目標供給圧力及び目標供給流量を算出する。その後、制御装置36は、算出した値に従って各部を制御する。
【0038】
制御装置36は、コンプレッサ22の吐出流量を取得する(S20)。前述したように、コンプレッサ22に吸入される酸化ガスの吸入流量は、流量センサ62によって検出される。例えば、第3酸化ガス供給経路24c内の酸化ガスの圧力が上昇した場合には、コンプレッサ22による酸化ガスの吐出流量は減少する。また、第3酸化ガス供給経路24c内の酸化ガスの低下した場合には、コンプレッサ22による酸化ガスの吐出流量は増加する。そして、制御装置36は、第2圧力センサ58による検出値と、流量センサ62による検出値とから、コンプレッサ22の吐出流量を推定することができる。但し、他の実施形態として、燃料電池システム10は、コンプレッサ22の吐出流量を検出する流量センサをさらに備え、制御装置36は、当該流量センサによる検出値を取得してもよい。
【0039】
制御装置36は、コンプレッサ22における圧力比CPを取得する(S22)。前述したように、制御装置36は、各圧力センサ56、58による検出値に基づいて、コンプレッサ22における圧力比を算出し、監視している。
【0040】
次に、制御装置36は、還流弁54の開度WRを取得する(S24)。前述したように、還流弁54の開度WRは、制御装置36によって制御されるため、制御装置36は、還流弁54の開度WRを取得することができる。
【0041】
制御装置36は、燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中であるのか否かを判定する(S26)。ここで、燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中とは、二つの燃料電池スタック12、14が運転している状態から、片方の燃料電池スタック12、14のみが運転している状態(即ち、単独運転の状態)に移行するまでの期間をいう。この期間では、図5の時刻R1から時刻R3までの範囲に示すように、コンプレッサ22による酸化ガスの吐出流量等の各種パラメータが大きく変動しており、コンプレッサ22のサージングが比較的に発生しやすくなっている。
【0042】
ステップS26でNOの場合、制御装置36は、サージング制約圧力SPとして、第1圧力値A1を設定する(S30)。ステップS30において、制御装置36は、先ず、サージング制約ラインSLとして、図3に示す第1サージング制約ラインSL1を採用する。制御装置36は、第1サージング制約ラインSL1上で、S20で取得したコンプレッサ22の吐出流量となる圧力値を第1圧力値A1として決定する。
【0043】
これに対して、ステップS26でYESの場合、制御装置36は、サージング制約圧力SPとして、第2圧力値A2を設定する(S28)。ステップS28において、制御装置36は、先ず、サージング制約ラインSLとして、第2サージング制約ラインSL2を採用する。制御装置36は、第2サージング制約ラインSL2上で、S20で取得したコンプレッサ22の吐出流量となる圧力値を第2圧力値A2として決定する。第2圧力値A2は、第1圧力値A1よりも小さい値である。図3に示すように、第2サージング制約ラインSL2は、第1サージング制約ラインSL1を下方に移動させたものに相当する。そのため、コンプレッサ22の吐出流量が一定であれば、第2サージング制約ラインSL2を採用した場合、第1サージング制約ラインSL1を採用した場合よりも、サージング制約圧力SPが小さく設定される。これにより、コンプレッサ22のサージングがより確実に回避される。
【0044】
制御装置36は、S22で取得したコンプレッサ22における圧力比CPが、S28又はS30で設定したサージング制約圧力SPを上回るのか否かを判定する(S32)。ステップS32でYESの場合、制御装置36は、還流弁54の目標開度WTを、S24で取得した還流弁54の開度WRよりも大きくなるように設定する(S34)。これにより、還流弁54の開度は大きくなり、コンプレッサ22から吐出された酸化ガスのうち、第3酸化ガス供給経路24cから第4酸化ガス供給経路24dへ送出される酸化ガスが増加する。即ち、供給率は低下する。ステップS32でNOの場合、制御装置36は、還流弁54の目標開度WTを、S24で取得した還流弁54の開度WR以下となるように設定する(S36)。
【0045】
制御装置36は、酸化ガス供給ユニット20の入口弁26に指令する目標開度を算出するとともに(S38)、酸化ガス供給ユニット20の出口弁30に指令する目標開度を算出する(S40)。次いで、制御装置36は、コンプレッサ22に指令する目標回転数を算出する(S42)。制御装置36は、算出した値に従って各部を制御して、図4に示す第1の処理の一サイクルを終了する。
【0046】
上記した構成によると、運転させる(即ち、発電させる)燃料電池スタック12、14の数を減少させることで、コンプレッサ22における圧力比が増大したときに、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる。これにより、コンプレッサ22のサージングを回避することができる。特に、図4に示す第1の処理では、還流経路52を介して、吐出側から吸入側へ酸化ガスを送出することができ、それによって、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる(図5参照)。なお、本明細書における還流経路52及び還流弁54は、本技術における調整機構の一例である。本明細書における第1圧力値A1及び第2圧力値A2は、本技術におけるターボ式コンプレッサにおける圧力比に対する所定の閾値の一例である。
【0047】
本実施例において、酸化ガス供給ユニット20は、コンプレッサ22から吐出された酸化ガスを冷却するインタークーラ50を有する。そして、還流経路52は、コンプレッサ22の吸入側に位置する第4酸化ガス供給経路24dと、コンプレッサ22の吐出側に位置する第3酸化ガス供給経路24cとを互いに接続している。特に、第3酸化ガス供給経路24cでは、インタークーラ50よりも上流側において、還流経路52が接続されている。このような構成によると、吐出側から吸入側に送出される酸化ガスはインタークーラ50を通過しないため、燃料電池スタック12、14に供給される酸化ガスのみをインタークーラ50によって冷却することができる。
【0048】
上記した第1の処理では、燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中において、コンプレッサ22における圧力比に対する閾値(ここでは、第2圧力値A2)が低く設定されている。燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中では、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量や、コンプレッサ22における圧力比等が大きく変動するため、サージングが比較的に発生しやすくなる。そのため、上記した構成によると、燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中においても、コンプレッサ22のサージングをより確実に回避することができる。なお、図4に示す第1の処理において、制御装置36は、ステップS26からステップS30までの処理を省略してもよい。即ち、他の実施形態において、制御装置36は、燃料電池スタック12、14の運転数を減少させる遷移中において、コンプレッサ22における圧力比に対する閾値を低く設定しなくてもよい。
【0049】
また、同様の知見を踏まえて、本実施例の制御装置36は、図6に示す第2の処理を繰り返し実行可能に構成されている。第2の処理では、図4に示す第1の処理の還流経路52及び還流弁54に代えて、分流経路32及び分流弁34を用いることで、コンプレッサ22の吐出流量に対して、複数の燃料電池スタック12、14へ供給される供給流量の割合である供給率を調整することができる。第2の処理におけるステップS50からステップS82までの各ステップは、第1の処理におけるステップS10からステップS42までの各ステップに対応している。第2の処理では、サージング制約圧力SPとして、第3圧力値A3又は第4圧力値A4が設定され(S78、S80)、第4圧力値A4は、第3圧力値A3よりも小さい値である。
【0050】
このような構成によると、運転させる(即ち、発電させる)燃料電池スタック12、14の数を減少させることで、コンプレッサ22における圧力比が増大したときに、分流経路32を介して、酸化ガス供給経路24からオフガス排出経路28へ酸化ガスを排出することができる。これにより、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させることができる。ここで、本明細書における分流経路32及び分流弁34は、本技術における調整機構の一例である。本明細書における第3圧力値A3及び第4圧力値A4は、本技術におけるターボ式コンプレッサにおける圧力比に対する所定の閾値の一例である。
【0051】
特に限定されないが、制御装置36は、図4に示す第1の処理において、還流経路52及び還流弁54に加えて、分流経路32及び分流弁34を用いることで、コンプレッサ22における酸化ガスの吐出流量を優先的に増大させてもよい。
【0052】
(実施例2)図7を参照して、実施例2の燃料電池システム110について説明する。図7に示すように、実施例2の燃料電池システム110では、実施例1の燃料電池システム10と比較して、還流経路152が設けられている位置が変更されている。その余の構成については、実施例1の燃料電池システム10と同一であることから、ここでは重複する説明を省略する。
【0053】
図7に示すように、還流経路152は、コンプレッサ22の吸入側に位置する第4酸化ガス供給経路24dと、コンプレッサ22の吐出側に位置する第3酸化ガス供給経路24cとを互いに接続している。特に、第3酸化ガス供給経路24cでは、インタークーラ50よりも下流側において、還流経路152が接続されている。
【0054】
上記した構成においても、制御装置36は、実施例1における第1の処理及び/又は第2の処理を繰り返し実行することができる。これにより、コンプレッサ22のサージングを回避することができる。特に、上記のように、還流経路152がインタークーラ50よりも下流側で接続されていることで、コンプレッサ22が吸入する酸化ガスの温度が低くなり、コンプレッサ22において所定の圧力比を実現するために必要とされるエネルギーを低減することができる。
【0055】
(実施例3)図8を参照して、実施例3の燃料電池システム210について説明する。図8に示すように、実施例3の燃料電池システム210では、実施例1の燃料電池システム10と比較して、複数の燃料電池スタック12、14が電気的に直列に接続されている。その余の構成については、実施例1の燃料電池システム10と同一であることから、ここでは重複する説明を省略する。
【0056】
図9に示すように、燃料電池システム210は、第1リレー64と、第2リレー66とをさらに備える。第1リレー64は、第1燃料電池スタック12の一方の極と、電力制御ユニット18の一方の極との間に設けられており、第2リレー66は、第2燃料電池スタック14の他方の極と、電力制御ユニット18の他方の極との間に設けられている。図9に示すように、第1リレー64及び第2リレー66がともに第1状態にあるとき、第1燃料電池スタック12は、第2燃料電池スタック14と電気的に直列に接続されている。第1リレー64が第1状態にあり、第2リレー66が第2状態(点線の位置)にあるときには、燃料電池システム10は、第1燃料電池スタック12からの出力のみを外部へ供給する。第2リレー66が第1状態にあり、第1リレー64が第2状態(点線の位置)にあるときには、燃料電池システム10は、第2燃料電池スタック14からの出力のみを外部へ供給する。
【0057】
上記の構成においても、制御装置36は、実施例1における第1の処理及び/又は第2の処理を繰り返し実行することができる。これにより、コンプレッサ22のサージングを回避することができる。
【0058】
また、実施例3の燃料電池システム210について、還流経路52を設ける位置を変更することもできる。即ち、他の実施形態として、実施例2の燃料電池システム110と比較して、複数の燃料電池スタック12、14が電気的に直列に接続されている燃料電池システムが採用されてもよい。この構成においても、制御装置36は、実施例1における第1の処理及び/又は第2の処理を繰り返し実行することができ、コンプレッサ22のサージングを回避することができる。
【0059】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0060】
10:燃料電池システム、 12、14:燃料電池スタック、 16a:カソード側供給口、 16b:カソード側排出口、 18:電力制御ユニット、 20:酸化ガス供給ユニット、 22:コンプレッサ、 24:酸化ガス供給経路、 26:入口弁、 28:オフガス排出経路、 30:出口弁、 32:分流経路、 34:分流弁、 36:制御装置、 38:冷却ユニット、 40:ラジエータ、 42:循環経路、 44:ポンプ、 46、48、60:温度センサ、 50:インタークーラ、 52:還流経路、 54:還流弁、 56、58:圧力センサ、 62:流量センサ、 64:第1リレー、 66:第2リレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8