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  • 特開-車両の電力システム 図1
  • 特開-車両の電力システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012302
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両の電力システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/10 20190101AFI20250117BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20250117BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250117BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L1/00 L
B60L50/60
H02J7/00 P
H02J7/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115041
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503DA04
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB09
5H125BC05
5H125BC25
5H125BC29
5H125EE22
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池の補機バッテリの充放電電力を制限しても、補機に電力を供給する。
【解決手段】補機14には補機バッテリ16から電力が供給される。補機バッテリ16には、車両駆動用電動機に電力を供給する駆動用バッテリ12からDC-DCコンバータ30を介して電力が供給され、充電される。補機バッテリ16の温度および蓄電量に基づき、補機バッテリ16の充放電電量が制限される。補機バッテリ16の充放電電力に制限が掛かった場合、補機に供給される電力の不足分を駆動用バッテリ12から供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池を含み、車両が備える補機に電力を供給する第1電力源と、
前記第1電力源に充電される電力を供給する第2電力源と、
前記第1電力源および前記第2電力源の充放電電力を制御する電力制御部と、
を備え、
前記電力制御部は、前記第1電力源の充放電電力を制限する要求があった場合、前記補機に供給される電力の不足分を前記第2電力源から供給するように制御する、
車両の電力システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電力システム、特に車載補機への電力供給に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド車などの電動車両は、車両駆動用電動機に電力を供給する駆動用バッテリと、灯火装置、空気調和装置、制御ユニットなどの車載された補機に電力を供給する補機バッテリを備える。補機バッテリは、駆動用バッテリからの電力で充電される。下記特許文献1には、補機バッテリに、駆動用バッテリからの電力に加えて太陽光発電装置からの電力で充電可能な電池システムが記載されている(段落0013,0020等参照)。また、下記特許文献1では、補機バッテリとして、鉛二次電池が用いられることが記載されている(段落0020参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-46679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補機バッテリにリチウムイオン電池を用いる場合、蓄電量および充放電電流の管理が重要である。リチウムイオン電池において、蓄電量を正確に把握するには、充放電電流をゼロとした状態で電圧を測定する必要がある。また、リチウムイオン電池は、電池の劣化を抑制するために、電池の状態に応じて充放電電流を制限する場合がある。しかし、車両運行中は、補機に電力を供給する必要があり、補機バッテリの充放電電力をゼロとすることは難しく、または制限することとが難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両の電量システムは、車両が備える補機に電力を供給するリチウムイオン電池を含む第1電力源と、第1電力源に充電される電力を供給する第2電力源と、第1電力源および第2電力源の充放電電力を制御する電力制御部と、を備え、電力制御部は、第1電力源の充放電電力を制限する要求があった場合、補機に供給される電力の不足分を第2電力源から供給するように制御する。
【0006】
第2電力源は、車両を駆動する電動機に電力を供給する駆動用バッテリであってよい。または、第2電力源は、車両を駆動する電動機に電力を供給する駆動用バッテリと、太陽光発電装置とを含んでよい。
【発明の効果】
【0007】
第1電力源がその充放電電力に制限を受ける場合であっても、補機に必要な電力を供給することができる。よって、第1電力源のリチウムイオン電池の充放電電流を適切に制限することができ、電池の劣化を抑えることができる。また、第1電力源のリチウムイオン電池の充放電電流をゼロに制限した場合、蓄電量を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の電力システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】補機バッテリの充放電電流が制限された場合の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本実施形態の車両の電力システム10の構成を示すブロック図である。電力システム10は、電力源として、車両を駆動する電動機(不図示)に電力を供給する駆動用バッテリ12と、車両に備えられた補機14に電力を供給する補機バッテリ16と、太陽光発電装置18とを有する。補機14は、例えば、前照灯、方向指示灯などの灯火装置20、あるいはエンジン、駆動用電動機および変速機等の機器の制御を行う制御ユニット22、あるいは音響装置24、さらには空気調和装置26など、駆動用電動機よりも低い電圧、例えば12ボルトの電圧が供給される機器である。補機バッテリ16は、リチウムイオン電池で構成される。補機バッテリ16の充放電は、補機バッテリ制御部28によって制御される。太陽光発電装置18は、車両のルーフに設置されたソーラセルと、ソーラセルの充放電を制御する制御部とを含む。
【0010】
駆動用バッテリ12は、車載されたエンジンによって駆動される発電機により発電された電力により充電される。また、車両の減速時の回生制動により発生した電力により充電される。さらに、外部電源からの電力により充電されてもよい。電動機のみにより走行する車両においては、駆動用バッテリ12は、外部電源からの電力および回生電力により充電される。
【0011】
補機バッテリ16は、駆動用バッテリ12からの電力によって充電される。駆動用バッテリ12の高電圧をDC-DCコンバータ30により降圧して補機バッテリ16に電力が供給され充電される。また、補機バッテリ16は太陽光発電装置18からの電力により充電されてもよい。
【0012】
補機バッテリ制御部28は、補機バッテリ16を監視する。具体的には、補機バッテリ制御部28は、電流センサ32Aの出力に基づき充放電電力を積算してその時点の補機バッテリ16の蓄電量を取得する。補機バッテリ制御部28は、あらかじめ定められた蓄電量と充放電電流の上限値との関係に基づき、取得した蓄電量に応じて充放電電流の上限値を定める。充放電電流は、この上限値以下となるように制御される。リチウムイオン電池は、蓄電量が低いとき、および高いときに、充放電を行うと劣化が進む。このため、補機バッテリ制御部28は、蓄電量が低いとき、および高いときには、蓄電量が中程度のときに比べて低い上限値を設定する。充放電電流は、この上限値以下となるように制御される。具体的には、上限値は、蓄電量が0%、および100%に近づくにつれて段階的に、または連続的に減少するようにしてよい。
【0013】
リチウムイオン電池は、温度が低いとき、および高いときに充放電を行うと劣化が進む。このため、補機バッテリ制御部28は、補機バッテリ16の温度に基づき、あらかじめ定められた温度と充放電電流の上限値との関係に基づき、そのとき温度に応じて充放電電流の上限値を定める。充放電電流は、この上限値以下となるように制御される。補機バッテリ制御部28は、温度センサ34により補機バッテリ16の温度を取得し、温度が低いとき、および高いときには、温度が中程度のときに比べて充放電電流の上限値を低く定める。充放電電力の上限値は、所定の下限温度以下となったら、および所定の上限温度以上となったらゼロとなるようにしてよい。また、上限値は、上記の下限温度に近づくにつれて段階的にまたは連続的に減少するようにしてもよい。同様に、上限値は、上記の上限温度に近づくにつれて段階的にまたは連続的に減少するようにしてもよい。
【0014】
蓄電量に基づく充放電電流の上限値と、温度に基づく充放電電流の上限値の両者が設定される条件下では、いずれか低い方の上限値が定められる。
【0015】
電力システム10は、駆動用バッテリ12から、補機14および補機バッテリ16からなる補機系に供給される電力を制御する電力制御部36を有する。電力制御部36は、駆動用バッテリ12から補機系に供給される電力を電流センサ32Bによって検出された電流に基づき取得する。また、電力制御部36は、太陽光発電装置18から補機系に供給される電力を電流センサ32Cによって検出された電流に基づき取得する。また、電力制御部36は、補機14に供給される電力を電流センサ32Dによって検出された電流に基づき取得する。さらに、電力制御部36は、補機バッテリ制御部28から補機バッテリ16の蓄電量および温度を取得する。
【0016】
電力制御部36は、補機バッテリ16に対する充放電を制御する。補機バッテリ制御部28が取得した蓄電量が所定値以下に減少すると、DC-DCコンバータ30を制御して駆動用バッテリ12からの電力を補機バッテリ16に充電する。このとき、補機バッテリ16の蓄電量および温度に基づき定められた上限値以下に充放電電流が制御される。
【0017】
上述のように、補機バッテリ制御部28は、充放電電流の積算値に基づき蓄電量を推定している。積算値に基づく蓄電量は、時間経過と共に誤差が拡大する。そこで、補機バッテリ制御部28は、定期的に補機バッテリ16の充放電電流をゼロにして、そのときの端子電圧に基づき蓄電量を取得する。充放電電流がゼロのときの端子電圧は、蓄電量との相関が高く、正確な蓄電量を取得することができる。定期的に正確な蓄電量を取得することで、充放電電力の積算によって求めた蓄電量の誤差が大きくならないようにしている。
【0018】
上述のように、リチウムイオン電池を用いた補機バッテリ16においては、充放電電力を制限したり、またはゼロとしたりする必要がある。一方、補機バッテリ16から電力が供給される補機14は、車両の運行中は、常に電力を消費している。エンジン、電動機等を制御するため、制御ユニット22には、常に電力を供給する必要がある。灯火装置20に属する制動灯は、制動時には点灯させる必要があり、また近年では、昼間であっても一部の灯火を点灯させる車両もある。よって、補機バッテリ16からの要求に基づき充放電電力を制限すると、補機14に必要な電力を供給できないことが起こりえる。なお、以下では、「充放電電力を制限する」は、充放電電力をゼロにすることも含むものとする。
【0019】
補機バッテリ16の充放電電力の制限によって補機14への電力供給が不足する場合、電力制御部36は、不足分を、駆動用バッテリ12と太陽光発電装置18の少なくとも一方から補機14に供給するよう制御する。
【0020】
図2は、補機バッテリ16の充放電電力が制限されたときの制御を示すフローチャートである。以下の制御は、電力制御部36が所定のプログラムに従って動作することによって実現する。
【0021】
電力制御部36は、補機バッテリ制御部28からの充放電電流の制限要求の有無を判断する(S100)。制限要求がないときには、所定の間隔で繰り返し制限要求の有無を判断する。上述のように、補機バッテリ制御部28は、補機バッテリ16の蓄電量および温度に基づき充放電電流の上限値を定めている。補機バッテリ制御部28は、この上限値が通常時の値より低いとき、例えば蓄電量が100%に近いとき、および0%に近いとき、ならびに温度が低いとき、および高いとき、充放電電流の制限を電力制御部36に要求する。電力制御部36は、充放電電流の制限要求があるとき、充放電電流の上限値に基づき、補機バッテリ16の放電電力の上限値Cを取得する(S102)。次に、太陽光発電装置18が発電中であるかを判断し(S104)、発電中でなければ、現在の補機14の電力使用量Bを取得する(S106)。そして、制限されている補機バッテリ16からの電力を補うように、不足分の電力供給量Aを算出する(S108)。具体的には、補機14の電力使用量Bから、補機バッテリ16の放電電力の上限値Cを減じた値を駆動用バッテリ12から補機系への電力供給量Aとする(A=B-C)。そして、駆動用バッテリ12から補機系へ電力Aを供給する(S110)。
【0022】
太陽光発電が行われているときには、太陽光発電による発電量Dを取得する(S112)。次に、そのときの補機14の電力使用量Bを取得する(S114)。そして、制限されている補機バッテリ16からの電力を補うように、不足分の電力供給量Aを算出する(S116)。具体的には、補機14の電力使用量Bから、太陽光発電による発電量Dと補機バッテリ16の放電電力の上限値Cの和を減じた値を駆動用バッテリ12から補機系への電力供給量Aとする(A=B(C+D))。そして、駆動用バッテリ12から補機系へ電力Aを供給する(S110)。
【0023】
駆動用バッテリ12から補機系へ供給する電力は、算出された電力供給量Aより大きくてもよい。補機バッテリ16に充電可能な状態であれば、供給量Aを超えた余剰分の電力を補機バッテリ16に充電する。この余剰分の電力は、補機バッテリ16の電流制限におる条件を満たす値に制御する。
【0024】
ステップS104で太陽光発電が行われている状態であると判断された場合、太陽光発電を停止して、ステップS106,S109,S110の処理を実行するようにしてもよい。
【0025】
電力システム10は、太陽光発電装置18を備えるシステムであったが、太陽光発電装置を備えていない車両の電力システムにおいては、補機バッテリからの電力が制限された場合に、不足分を駆動用バッテリから補機へ供給する。
【符号の説明】
【0026】
10 電力システム、12 駆動用バッテリ(第2電力源)、14 補機、16 補機バッテリ(第1電力源)、18 太陽光発電装置(第2電力源)、20 灯火装置、22 制御ユニット、24 音響装置、26 空調ユニット、28 補機バッテリ制御部、30 DC-DCコンバータ、32A-D 電流センサ、34 温度センサ、36 電力制御部。

図1
図2