(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025123088
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20250815BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20250815BHJP
G06F 40/216 20200101ALI20250815BHJP
G06F 40/44 20200101ALI20250815BHJP
G06N 5/046 20230101ALI20250815BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/27
G06F40/216
G06F40/44
G06N5/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018956
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰志
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC03
(57)【要約】
【課題】自然言語処理技術を架構に応用することで、建物架構やその部材に関わる諸特徴量を数学的に統一的に取り扱うことを可能にすること。
【解決手段】情報処理システムは、建物諸量を取得する取得部と、前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部と、前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部と、前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物諸量を取得する取得部と、
前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部と、
前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部と、
前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部と、
を備える、
情報処理システム。
【請求項2】
前記建物諸量は、建物の高さ、前記着目部材の設置のレベル、梁の部材長、端部の接合部タイプ、接合された各部材長を少なくとも含む、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分散表現化は、ベクトル化である、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記架構部材断面推定部は、ベクトル化された前記建物諸量を、架構部材の断面と建物諸量とベクトル化された建物諸量との対応関係を学習した学習モデルに入力することで、前記着目部材の架構部材断面を推定する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
建物諸量を取得する取得部と、
前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部と、
前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部と、
前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部と、
を備える、
情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置のコンピュータが実行する情報処理方法であって、
建物諸量を取得する取得ステップと、
前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化ステップと、
前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化ステップと、
前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定ステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項7】
情報処理装置のコンピュータに、
建物諸量を取得する取得ステップと、
前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化ステップと、
前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化ステップと、
前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、架構部材断面の推定は、架構、部材の特徴量を抽出した上で、それらと部材断面との関係を計算機に学習させている場合がほとんどである。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の建築各々の架構に関する建築架構情報を記憶する建築架構情報データベース部と、対象となる建築の架構に関する建築架構情報である対象建築架構情報を取得する対象建築架構情報取得部と、複数の建築の中から、対象となる建築に架構が類似する建築を抽出する類似建築抽出部と、抽出した建築を示す情報を出力する出力部とを備え、類似建築抽出部は、複数の建築の各々について選択し、選択した建築の建築架構情報および対象建築架構情報から算出されたTanimotoScoreと、対象となる建築の最高高さと選択した建築の最高高さの比とに、少なくとも基づき、類似する建築を抽出する、類似建築抽出装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、架構の部材構成や架構形状等の特徴量の表現は、極めて難しい。建物の高さ、主要スパン、アスペクト比等の特徴量を用いて表現することは可能であるが、これらにも限界があり、規模や架構構成が相違する個々の建物架構をこれらによってその全体像を数学的に統一した形で表現することには無理がある。また、架構の細部の状況を表すためにさらに多くの特徴量を設けても、それらを個々の建物から抽出するには多くの時間と手間を要することになり効率的でない。さらに、これらの架構の特徴量と部材に関わる特徴量を合わせて部材断面の推定に用いる場合においても、それらの特徴量は個々に特有な意味合いを持っているものも多く、それらを統一的に取り扱うことが難しい。このような数学的に統一した形での扱いが極めて困難な建物架構の性質は、AI技術を用いて架構部材断面の推定を行う際に大きな障害となり、その推定精度向上を妨げる大きな要因となっている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、自然言語処理技術を架構に応用することで、建物架構やその部材に関わる諸特徴量を数学的に統一的に取り扱うことを可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、情報処理システムであって、建物諸量を取得する取得部と、前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部と、前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部と、前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部と、を備える、情報処理システムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、情報処理装置であって、建物諸量を取得する取得部と、前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部と、前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部と、前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部と、を備える、情報処理装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、情報処理装置のコンピュータが実行する情報処理方法であって、建物諸量を取得する取得ステップと、前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化ステップと、前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化ステップと、前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定ステップと、を有する情報処理方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、プログラムであって、情報処理装置のコンピュータに、建物諸量を取得する取得ステップと、前記建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化ステップと、前記文章化された前記建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化ステップと、前記分散表現化された前記建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、自然言語処理技術を架構に応用することで、建物架構やその部材に関わる諸特徴量を数学的に統一的に取り扱うことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の一例を説明する説明図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図5】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図6】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図7】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図8】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【
図9】本実施形態に係る情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態の変形例に係る情報処理装置100における処理の一例を説明する説明図である。
【
図11】本実施形態の変形例に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[情報処理システムの構成]
まず、第1の実施形態に係る情報処理システムSYSについて説明する。
本実施形態に係る情報処理システムSYSは、情報処理装置100として1つの装置として実現する場合の一例について説明するが、情報処理装置100の機能を情報処理システムSYSにおける複数の装置として実現してもよい。
【0015】
情報処理システムSYS(情報処理装置100)は、建物諸量を取得し、建物諸量を含む文章に文章化し、文章化された建物諸量を分散表現化し、分散表現化された建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定するシステムである。
【0016】
具体的には、情報処理システムSYSは、建物架構を構成する部材の長さ、周辺部材の取付け状態、周辺部材の長さなどをそれぞれ1つの単語とし、建物架構はそれらにより構成される、いわば文、あるいは文章であるとして、自然言語処理における分散表現を各特徴量に応用することで、架構部材断面を推定する。換言すれば、情報処理システムSYSは、各特徴量をすべて同次元の固定長ベクトルとして表現し、これを様々なAIと組み合わせて建物架構の部材を推定する。
【0017】
このようにすることで、情報処理システムSYSは、自然言語処理技術を架構に応用することで、建物架構やその部材に関わる諸特徴量を数学的に統一的に取り扱うことを可能にすることができる。具体的には、情報処理システムSYSは、建物に関わる各特徴量や建物の部材構成などをすべて同じ次元の固定長ベクトルとして表現できる。これにより、各特徴量の組み合わせは、それらのベクトル和として表現することができ、架構などの類似性も個々の建物を表す固定長ベクトルの内積などのベクトル演算結果として表現することができる。また、様々な特徴量や建物架構を固定長ベクトル化することで、それらをニューラルネットワークなどのAI技術で多用されるマトリックス演算やベクトル演算に組み込み易くすることができ、既存および将来のAI技術との親和性を高めることが期待できる。さらに、こうした各特徴量や建物の部材構成等の固定長ベクトル化(分散表現)は、将来的に他の分野において培われる得る自然言語処理関連技術、例えば、Attentionなどの建築架構への応用に期待することできる。
【0018】
次いで、図面を参照して、情報処理装置100について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
情報処理装置100は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、入力部14と、出力部15と、を含んで構成される。
通信部11と、制御部12と、記憶部13と、入力部14と、出力部15とは、バスを介して相互に接続される。
【0019】
通信部11は、ネットワークを介して情報処理システムSYSにおける他の装置と通信する機能を有する。通信部11は、制御部12によって制御され、制御部12から出力される各種情報を他の装置に送信する。通信部11は、他の装置から送信された各種情報を受信し、受信した各種情報を制御部12に出力する。
【0020】
記憶部13は、学習モデルを記憶する。
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル、マイクなどの入力装置である。
出力部15は、表示部、スピーカなどの出力装置である。
【0021】
制御部12は、情報処理装置100の各部の処理を制御し、情報処理装置100の機能を発揮する。制御部12は、専用のハードウェアで構成されてもよいが、汎用のコンピュータシステムで構成されてもよい。コンピュータシステムは、少なくとも演算処理装置と記憶媒体を備える。演算処理装置として、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが適用され得る。当該記憶媒体として記憶部13とフラッシュメモリ(不図示)が用いられる。演算処理装置は、例えば、フラッシュメモリに予め記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを記憶部13に展開する。演算処理装置は、記憶部13に展開されたプログラムを実行して制御部12の機能を実現する。
【0022】
なお、ここで言うCPUは、プロセッサ一般のことを示すものであって、狭義のいわゆるCPUと呼ばれるデバイスのことだけではなく、例えばGPUやDSP等も含む。また、ここで言うCPUは、一つのプロセッサで実現されることに限られず、同じ、または異なる種類の複数のプロセッサを組み合わせることで実現されてもよい。
【0023】
制御部12は、建物諸量取得部121と、建物諸量文章化部122と、建物諸量分散表現化部123と、架構部材断面推定部124と、学習部125と、を含んで構成される。
【0024】
建物諸量取得部121は、予め記憶部13に記憶された建物諸量、あるいは通信部11あるいは入力部14を介して入力された建物諸量を取得する。建物諸量取得部121は、取得した建物諸量を、建物諸量文章化部122に出力する。
【0025】
ここで、建物諸量は、建物を特徴づける諸量であり、例えば、建物の高さ、着目部材の設置のレベル(高さ)、梁の部材長、端部の接合部タイプ、接合された各部材長などである。また、着目部材は、断面推定を行う対象である部材のことである。
【0026】
建物諸量文章化部122は、建物諸量取得部121から建物諸量が入力されると、自然言語処理を行い、建物諸量を文章化する。
具体的には、建物諸量文章化部122は、建物諸量として、建物高さa[m]、部材(着目部材)の設置レベルb[m]、梁(柱)の部材長[m]、端部の接合タイプd[タイプ]、端部が接合された部材の各部材長e[m]、f[m]である場合に、「建物高さがaメートル、その設置レベルがbメートル、梁(柱)の部材長がcメートルで、端部の接合部タイプがd、端部が接合された部材の各部材長がeメートル、fメートル」のように、建物諸量に事前言語処理を行い文章化する。建物諸量文章化部122は、文章化した建物諸量を建物諸量分散表現化部123に出力する。
【0027】
ここで、建物諸量a~fの単語以外の文章(単語の集合)を定型文章として扱えば、上記の建物諸量a~fは、文章として記述することができる。すなわち、建物諸量a~fを単語として捉えたときのそれぞれの分散表現が得られれば、以降の処理において上記文章を各々、分散表現化(固定長ベクトル化)することができ、分散表現化(ベクトル化)された建物諸量と架構部材断面との対応関係を学習させた学習モデルと、分散表現化された建物諸量とによって架構部材断面推定が可能となる。また、断面サイズをxとすると、xについては、断面にインデックス数値を割り当てることでも十分対応可能なので、特に分散表現化をしなくても良い。従って、建物諸量a~fの分散表現が得られればよい。
【0028】
建物諸量分散表現化部123は、建物諸量文章化部122から文章化された建物諸量が入力されると、文章化された建物諸量を分散表現化する。
建物諸量の分散表現化は、様々な手法を用いることが可能であるが、本実施形態では、以下に示すような、着目部材が含まれる架構の最高高さと着目部材の位置、および着目部材とそれに接続する周辺部材との関係から建物諸量を、分散表現化する場合について説明する。ここでは、当該手法をFrame2Vecと称する。具体的には、建物諸量分散表現化部123は、建物高さ、着目部材の部材設置レベル、端部の接合部タイプ、端部が接合された部材の各部材長を、各々の項目に対しそれらの種類を把握する。建物諸量分散表現化部123は、把握した種類にインデクス番号を付与し、それらに対応する行の要素に1を与えるベクトルを、各着目部材長に対して行うことで、建物諸量を分散表現化(ベクトル化)する。また、建物諸量分散表現化部123は、それらの一連の架構群における出現確率を算出する。建物諸量分散表現化部123は、最終的に上記1、0より構成されるベクトルを入力層、出現確率を出力層とする1層のNNにより建物諸量を分散表現化する。建物諸量分散表現化部123は、分散表現化した建物諸量を、架構部材断面推定部124に出力する。
【0029】
図2から
図5を参照して詳述する。
図2は、本実施形態に係る情報処理装置100における処理の一例を説明する説明図である。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
図4は、本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
図5は、本実施形態に係る情報処理装置100における処理の他の一例を説明する説明図である。
【0030】
図2に示す例において、建物A100とし、建物A100における地面からの高さを高さA11、着目部材A1の地面からの設置レベル(高さ)を高さA12、端部が接合された部材の各部材が部材A2および部材A3と定義する。ここで、着目部材が含まれる架構の最高高さと着目部材の位置(領域A10)の高さは、高さA12となる。
【0031】
図3に示す例は、
図2の領域A10を詳細に示した一例である。また、着目部材A1と接合部A20によって端部が接合された部材A2(部材A21、および部材A22)、着目部材A1と接合部A30によって端部が接合された部材A3(部材A31、および部材A32)と定義する。
【0032】
建物諸量分散表現化部123は、着目部材が含まれる架構の最高高さA12と着目部材A1の位置、および着目部材A1の長さとそれに接続する周辺部材A2、A3の長さとの関係から建物諸量を分散表現化する。具体的には、建物諸量分散表現化部123は、建物高さA11、着目部材の部材設置レベルA12、端部の接合部A20およびA20の接合部タイプ、端部が接合された部材A2、A3の各部材長を、各々の項目に対しそれらの種類を把握する。建物諸量分散表現化部123は、把握した種類にインデクス番号を付与し、それらに対応する行の要素に1を与えるベクトルを、各着目部材長に対して行うことで、
図4に示すように建物諸量を分散表現化(ベクトル化)する。また、建物諸量分散表現化部123は、それらの一連の架構群における出現確率を算出する。建物諸量分散表現化部123は、最終的に上記1、0より構成されるベクトルを入力層、出現確率を出力層とする1層のNNにより建物諸量を分散表現化する。
【0033】
なお、
図4に示す例において着目部材A1の梁部材長は、「22.0」である。着目部材の出現確率は、1.0とする。
図4に示す例において、各ラベルの出現確率に対して1/5を乗算しているが、各要素の値の合計が1.0となるように基準化しているためである。これは、出現率を各項目に対して算出しているため、そのままでは各要素の値の合計値が5.0となるためである。
【0034】
これらをダイヤグラムとして図示したものが
図5に示す例である。
最終的に得られたWinの列ベクトルは、各項の値の分散表現ベクトルである。建物諸量分散表現化部123は、該当する各項目ラベルのOneHotベクトルを連結し、分散表現ベクトルを生成する。
【0035】
図1に戻って、架構部材断面推定部124は、建物諸量分散表現化部123から分散表現化された建物諸量が入力されると、架構部材断面を、以下に示す手法(ここではVec2Secと称する)を用いて推定する。具体的には、架構部材断面推定部124は、分散表現化された建物諸量と、架構部材断面(断面ラベルのOneHotベクトル)との対応関係を学習した学習モデルに、分散表現化された建物諸量(着目部材Vベクトル)を入力することで、出力として架構部材断面を得る。ここで、着目部材Vベクトルは、建物高さ、部材設置レベル、接合部タイプ、端部が接合された各部材の長さの和であるΣ部材長さベクトルの和が含まれる。端部が接合された各部材の長さには、着目部材の長さを含む。これらを図示したものが
図8に示す例である。
【0036】
また、架構部材断面推定部124は、計画建物の推定部材断面を、計画建物の各着目部材のVベクトルをNNに入力した場合に出力されるベクトル要素の内、最も大きい値を示すものに対応する断面として推定する。ここで、ベクトル要素の最大値を与える行が位iである場合、Index iの断面を推定断面として扱うものとする。これらを示したものが
図7、8に示す例である。
【0037】
なお、計画建物の建物高さ、部材設置レベル、部材長和、部材長は、かならずしも学習データと一致するわけではない。そのため、計画建物の建物諸量の分散表現(ベクトル)は、学習で得られたベクトルを基に内外挿するものとする。例えば、計画建物の建物高さがhdで、その値を挟む学習時に得られた上限値をhu、下限値をhlとし、上限値huに対応する分散表現ベクトルをVhu、下限値hlに対応する分散表現ベクトルをVhlとした場合、計画建物の建物高さhdに対応する分散表現ベクトルVhdは、下記ベクトルの内分で与えられるものとする。
Vhd={Vhu(hd-hl)+Vl(hu-hd)}/(hu-hl)
=Vhuα+Vl(1-α)
α=(hd-hl)/(hu-hl)
【0038】
このように情報処理装置100は、Frame2VecとVec2Secを組み合わせることにより、フレームのジオメトリ情報(特徴量)から、その分散表現を介して構成部材断面を推定するシステム(Frame2Sec)を構築することができる。
【0039】
図1に戻って、学習部125は、分散表現化された建物諸量と、架構部材断面(断面ラベルのOneHotベクトル)との対応関係を学習した学習モデルを生成する。当該学習モデルは、分散表現化された建物諸量(着目部材Vベクトル)を入力することで、出力として架構部材断面を得る。学習部125は、生成した学習モデルを記憶部13に記憶させる。
【0040】
図9は、本実施形態に係る情報処理装置100における処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS101において、情報処理装置100は、建物諸量を取得する。次いで、情報処理装置100は、ステップS102の処理を実行する。
ステップS102において、情報処理装置100は、建物諸量を文章化する。次いで、情報処理装置100は、ステップS103の処理を実行する。
ステップS103において、情報処理装置100は、建物諸量を分散表現化する。次いで、情報処理装置100は、ステップS104の処理を実行する。
ステップS104において、情報処理装置100は、分散表現化された建物諸量を学習モデルに入力することで架構部材断面を推定する。
【0041】
このように、本実施形態に係る情報処理装置100は、建物諸量を取得する取得部(建物諸量取得部121)と、建物諸量を含む文章に文章化する建物諸量文章化部122と、文章化された建物諸量を分散表現化する建物諸量分散表現化部123と、分散表現化された建物諸量に基づいて、着目部材の架構部材断面を推定する架構部材断面推定部124と、を備える。
【0042】
このようにすることで、自然言語処理技術を架構に応用することで、建物架構やその部材に関わる諸特徴量を数学的に統一的に取り扱うことを可能にすることができる。
【0043】
次いで、変形例について説明する。
【0044】
変形例では、第1の実施形態における架構部材断面推定NNの推定精度を向上させる場合について説明する。具体的には、TanimotoScoreを用いる場合の一例について説明する。
TanimotoScoreは、すでに建物の類似性を評価するのに極めて有効であることが確認されている。ただし、これまでのTanimotoScoreでは、架構部材長に分布幅の概念を取り入れ、部材長分布を言わば分散表現することで離散的な架構部材長を一種の固定長ベクトル化して計算を行っている。
ところで、上述の自然言語処理には、分布幅の概念なしでも部材長の固定長ベクトル化ができるので、TanimotoScoreの評価において利用される架構部材長さの分布を用いて部材長の固定長ベクトルの和として表現することができる。すなわち、建物架構を固定長ベクトルとして表現することができる。本変形例では、このようにして定義される建物架構の正規化された(ベクトル長が1の)固定長ベクトルをTanimotoVectorと称する。
【0045】
TanimotoVectorは、
図10に示すように算出可能である。
【0046】
具体的には、建物諸量取得部121は、建物諸量としてTanimotoVector gをさらに取得する。
建物諸量文章化部122は、部材断面が属している建物のTanimotoVectorがg、建物高さがaメートル、その設置レベルがbメートル、梁(柱)の部材長がcメートルで、端部の接合部タイプがd、端部が接合された部材長がeメートル、fメートルのように、建物諸量を文章化する。
【0047】
建物諸量分散表現化部123は、着目部材VベクトルにTanimotoVectorをベクトル加算して加算着目部材Vベクトルを生成する。建物諸量分散表現化部123は、加算着目部材Vベクトルに応じた部材断面インデックスのOneHotベクトルを対応づけることで、架構部材断面推定NNを行う。これらを示したものが
図11に示す例である。
【0048】
このように、変形例によれば、TanimotoVectorを断面推定NNに用いた固定長ベクトルに加算することで当該部材が属していた建物架構の情報を付加し、これにより架構部材断面推定精度を向上させることができる。
【0049】
なお、上述した実施形態における情報処理装置100の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、情報処理装置100に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0050】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0051】
また、上述した実施形態における情報処理装置100の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。情報処理装置100の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 情報処理装置
11 通信部
12 制御部
121 建物諸量取得部
122 建物諸量文章化部
123 建物諸量分散表現化部
124 架構部材断面推定部
125 学習部
13 記憶部
14 入力部
15 出力部
SYS 情報処理システム