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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025123108
(43)【公開日】2025-08-22
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/24 20190101AFI20250815BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250815BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20250815BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20250815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250815BHJP
【FI】
B60L53/24
B60L50/60
B60L58/10
B60L53/14
H02J7/00 P
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018983
(22)【出願日】2024-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 行功
(72)【発明者】
【氏名】出口 順一
(72)【発明者】
【氏名】伊良波 平
(72)【発明者】
【氏名】石浦 一昭
(72)【発明者】
【氏名】粟田 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 僚介
(72)【発明者】
【氏名】永井 昂哉
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503FA18
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BA00
5H125BB05
5H125BC21
5H125CD06
5H125DD04
5H125EE05
5H125EE47
5H125EE48
5H125FF22
(57)【要約】
【課題】本明細書は、中性点充電の後すぐに電気モータが使われる可能性が高い場合に電気モータを冷却することのできる電気自動車を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する電気自動車は、車軸を駆動する電気モータと、直流端がバッテリに接続されており交流端が電気モータのステータコイルに接続されているインバータと、ステータコイルの中性点に接続されている充電端子と、電気モータを冷却する冷却器と、コントローラを備えている。コントローラは、充電端子を通じて供給された電力をステータコイルとインバータで昇圧してバッテリを充電した後、電気モータを駆動するためのメインスイッチがオンであり、かつ、電気モータの温度が所定の閾値温度を超えている場合、冷却器を動作させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸を駆動する電気モータと、
直流端がバッテリに接続されており、交流端が前記電気モータのステータコイルに接続されているインバータと、
前記ステータコイルの中性点に接続されている充電端子と、
前記電気モータを冷却する冷却器と、
コントローラと、
を備えており、
前記コントローラは、前記充電端子を通じて供給された電力を前記ステータコイルと前記インバータで昇圧して前記バッテリを充電した後、前記電気モータを駆動するためのメインスイッチがオンであり、かつ、前記電気モータの温度が所定の閾値温度を超えている場合、前記冷却器を動作させる、電気自動車。
【請求項2】
前記コントローラは、前記充電端子を通じて供給された電力を前記ステータコイルと前記インバータで昇圧して前記バッテリを充電した後、前記電気モータの温度が前記閾値温度を超えていても前記メインスイッチがオフの場合は前記冷却器を動作させない、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記コントローラは、前記充電端子を通じて供給された電力を前記ステータコイルと前記インバータで昇圧して前記バッテリを充電した後、前記メインスイッチがオンであり、かつ、前記電気モータの温度が所定の閾値温度を超えていても、前記電気モータが前記車軸から切り離されている場合、前記冷却器を動作させない、請求項1に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記車軸と前記電気モータの間にギアが備えられており、
前記冷却器の冷媒は前記ギアの潤滑剤を兼ねており、
前記冷却器は、前記冷媒を前記電気モータと前記ギアの両方に供給する全循環モードと、前記冷媒を前記電気モータには供給するが前記ギアには供給しない半循環モードを切り替える切替器を備えており、
前記コントローラは、前記電気モータを冷却する際、前記電気モータが前記ギアに係合している場合は全循環モードで前記冷却器を動作させ、前記電気モータが前記ギアから切り離されている場合は半循環モードで前記冷却器を動作させる、
請求項1に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、バッテリと、車軸を駆動する電気モータを備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータのステータコイルとインバータのスイッチング素子で構成される回路は、昇圧コンバータとして利用できることが知られている。特許文献1に、ステータコイルの中性点に電源を接続し、ステータコイルとインバータの回路で電源電圧を昇圧してバッテリを充電する技術が開示されている。以下では、説明の便宜上、ステータコイルの中性点に電源を接続し、ステータコイルとインバータの回路で電源電圧を昇圧してバッテリを充電することを「中性点充電」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-118659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中性点充電を行うと電気モータの温度が上昇する。中性点充電の後、すぐには電気モータを駆動しないのであれば、温度が高くても電気モータを冷却する必要はない。一方、中性点充電の後、すぐに電気モータが使われる可能性が高いのであれば、充電後に電気モータを冷却する方がよい。本明細書は、中性点充電の後すぐに電気モータが使われる可能性が高い場合に電気モータを冷却することのできる電気自動車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電気自動車は、車軸を駆動する電気モータ、インバータ、電気モータのステータコイルの中性点に接続されている充電端子、電気モータを冷却する冷却器、コントローラを備える。インバータは、直流端がバッテリに接続されており、交流端が電気モータのステータコイルに接続されている。
【0006】
コントローラは、充電端子を通じて供給された電力を電気モータのステータコイルとインバータで昇圧してバッテリを充電した後、電気モータを駆動するためのメインスイッチがオンであり、かつ、電気モータの温度が所定の閾値温度を超えている場合、冷却器を動作させる。なお、コントローラは、充電端子を通じて供給された電力をステータコイルとインバータで昇圧してバッテリを充電した後、電気モータの温度が閾値温度を超えていてもメインスイッチがオフの場合は冷却器を動作させない。本明細書が開示する電気自動車は、中性点充電の後、電気モータを使う可能性が高い場合に冷却器を動作させる。
【0007】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の電気自動車100のブロック図である。
図2】第2実施例の電気自動車200のブロック図である。
図3】第3実施例の電気自動車300のブロック図である。
図4】モータケースとギアケースが結合した駆動装置500の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施例)図1に、第1実施例の電気自動車100のブロック図を示す。電気自動車100は、電気モータ110、インバータ120、バッテリ109、冷却器130、コントローラ101、充電端子103を備える。以下では、説明の便宜上、電気モータ110を単純にモータ110と表記する場合がある。
【0010】
モータ110の主軸114が車軸104に連結されており、車軸104はデファレンシャルギア105を介して車輪に連結されている。モータ110は三相交流モータであり、3個のステータコイル111を備える。モータ110が車軸104を駆動し、電気自動車100が走る。
【0011】
インバータ120は、バッテリ109の直流電力をモータ110の駆動に適した交流電力に変換する。インバータ120の直流端120p、120nがバッテリ109に接続されており、交流端120aがモータ110に接続されている。より詳しくは、インバータ120の複数の交流端120aのそれぞれが、モータ110の複数のステータコイル111のそれぞれに接続されている。直流端の正極120pと負極120nの間にコンデンサ125が接続されている。バッテリ109の負極とインバータ120の負極120nは同電位に保持される。バッテリ109の負極をグランドGと称する。
【0012】
インバータ120は、3個の直列接続回路123u、123v、123wを備えている。3個の直列接続回路123u、123v、123wを、以下では、直列接続回路123と総称する。3個の直列接続回路123は、直流端の正極120pと負極120nの間に並列に接続されている。それぞれの直列接続回路123は、2個のスイッチング素子(上スイッチング素子121と下スイッチング素子122)の直列接続で構成されている。それぞれのスイッチング素子にはダイオードが逆並列に接続されている。ダイオードは、スイッチング素子の低電位側から高電位側へ電流を通す。ダイオードは、スイッチング素子に組み込まれていてもよい。コントローラ101が上スイッチング素子121と下スイッチング素子122を交互にオンオフすると、直列接続回路123の中点から交流が出力される。インバータ120の回路構成と動作はよく知られているので詳しい説明は省略する。
【0013】
冷却器130は、インバータ120とモータ110を冷却する。冷却器130は、循環路131とポンプ132を備える。ポンプ132が動作すると、冷媒が循環路131を循環する。循環路131はインバータ120とモータ110の内部を通過しており、循環路131を流れる冷媒でインバータ120とモータ110が冷却される。図示は省略しているが、循環路131にはリザーブタンクとラジエータも備えられている。リザーブタンクはポンプ132の上流側の循環路131に備えられており、ラジエータはリザーブタンクの上流側の循環路131に備えられている。インバータ120とモータ110の熱を吸収した冷媒はラジエータで冷やされ、リザーブタンクに戻る。ポンプ132はリザーブタンクの冷媒をインバータ120とモータ110へ圧送する。
【0014】
モータ110、インバータ120(スイッチング素子121、122)、冷却器130は、コントローラ101によって制御される。コントローラ101にはメインスイッチ102が接続されている。メインスイッチ102は、イグニッションスイッチとも呼ばれる。メインスイッチ102は、運転席に備えられており、ユーザが操作する。メインスイッチ102は、電気モータ110を駆動するためのスイッチである。メインスイッチ102がオンであると、電気自動車100は走行可能な状態になる。メインスイッチ102がオフであると、コントローラ101は、電気自動車100を走行させない。別言すれば、メインスイッチ102がオフのとき、コントローラ101はモータ110を回転させることを禁止する。メインスイッチ102がオンであれば、コントローラ101はモータ110を回転させることを許可する。
【0015】
なお、冷却器130は、オイルを冷媒とするサブ冷却器を備えていてもよい。サブ冷却器は、オイル循環路とオイルクーラとオイルポンプを備えている。オイル循環路はオイルクーラとモータ110を通過している。オイルポンプがオイルクーラとモータ110の間でオイルを循環させる。循環路131の冷媒がオイルクーラにてオイルを冷却し、オイルがモータ110を冷却する。オイルはモータ110のステータとロータに直接にかけられてもよい。この場合、オイルは潤滑剤としても機能する。
【0016】
モータ110の複数のステータコイル111のそれぞれの一端はインバータ120の複数の交流端120aのそれぞれに接続されており、複数のステータコイル111のそれぞれの他端は相互に接続されている。ステータコイル111の他端が接続されている点は中性点112と呼ばれる。
【0017】
中性点112には、充電端子103の正極端103pが接続されている。充電端子103の負極端103nはグランドGに接続されている。電気自動車100は、充電端子103に外部の電源900を接続し、電源900でバッテリ109を充電することができる。ステータコイル111と下スイッチング素子122の回路構成は、昇圧コンバータとして機能する。すなわち、バッテリ109よりも出力電圧が低い電源900でバッテリ109を充電することができる。中性点を経由した充電を本明細書では中性点充電と称する。
【0018】
中性点充電を概説する。中性点112に電源900の直流電圧を印加する。下スイッチング素子をオンにすると、ステータコイル111に電流が流れるとともに磁気エネルギが蓄積される。下スイッチング素子をオフにすると、ステータコイル111に蓄積された磁気エネルギによって、交流端120aの電圧が押し上げられる。すなわち、電源900の電圧が昇圧される。
【0019】
メインスイッチ102がオフの状態でもコントローラ101は中性点充電を実行できる。先に述べたように、メインスイッチ102がオフのとき、コントローラ101はモータ110を回転させることを禁止する。中性点充電を行う場合、コントローラ101は、モータ110を回転させないように下スイッチング素子122を駆動し、中性点112に印加された電圧を昇圧する。
【0020】
中性点充電は、電気自動車100が停止している間に行われる。中性点充電を実行すると、モータ110のステータコイル111とインバータ120の下スイッチング素子122が発熱する。モータ110には温度センサ113が備えられており、インバータ120にも温度センサ126が設けられており、温度センサ113、126の計測データはコントローラ101に送られる。
【0021】
充電端子103を通じて供給された電力をステータコイル111とインバータ120で昇圧してバッテリ109を充電した後(すなわち、中性点充電の後)、メインスイッチ102がオンであり、かつ、モータ110の温度が所定の閾値温度を超えている場合、コントローラ101は、冷却器130を動作させる。メインスイッチ102がオンの場合、中性点充電が終わった後にユーザが電気自動車100を走らせる可能性が高いからである。そのような場合にはモータ110の温度を速やかに下げておくことが望ましい。先に述べたように、冷却器130は、モータ110とともにインバータ120も冷却する。
【0022】
中性充電の後、メインスイッチ102がオフであれば、モータ110の温度が閾値温度を超えていても、コントローラ101は冷却器130を動作させない。メインスイッチ102がオフであれば、ユーザが電気自動車100をすぐに走らせる可能性は小さい。そのような場合、モータ110(およびインバータ120)を自然冷却に任せることで、冷却器130を動かすエネルギを節約することができる。中性充電の後、メインスイッチ102がオンであっても、モータ110の温度が閾値温度よりも低ければ、コントローラ101は冷却器130を動作させない。
【0023】
モータ110を加熱から保護するため、モータ110の温度が上限温度を超えている場合、メインスイッチ102の状態に関わらず、コントローラ101は、モータ110を冷却する。上限温度は、前述した閾値温度よりも高い値に設定されている。中性点充電の最中にモータ110の温度が上限温度を超えれば、コントローラ101は、モータ110を冷却する。
【0024】
(第2実施例)図2に、第2実施例の電気自動車200のブロック図を示す。第2実施例の電気自動車200は、モータ110と車軸104の間にクラッチ206を備える。クラッチ206は、モータ110を車軸104に係合したり、モータ110を車軸から切り離したりする。電気自動車200のその他の構成は、第1実施例の電気自動車100の構成と同じである。ただし、電気自動車100と電気自動車200では、中性点充電後のコントローラの処理が異なる。それゆえ、電気自動車200のコントローラには符号201を用いる。
【0025】
電気自動車200は、電気自動車100と同様に、中性点充電によってバッテリ109を充電することができる。コントローラ201は、中性点充電後、メインスイッチ102がオンであり、かつ、モータ110の温度が所定の閾値温度を超えていても、クラッチ206が係合していなければ、冷却器130を動作させない。別言すれば、コントローラ201は、中性点充電後、メインスイッチ102がオンであり、かつ、モータ110の温度が所定の閾値温度を超えていても、モータ110が車軸104から切り離されていれば、冷却器130を動作させない。モータ110が車軸104から切り離されている場合、ユーザが、中性点充電の後、すぐに電気自動車200を走らせる可能性が小さいからである。そのような場合には、中性点充電の後に温度が高くなったモータ110とインバータ120は自然冷却にまかせればよい。
【0026】
コントローラ201は、中性点充電後、メインスイッチ102がオンであり、かつ、モータ110の温度が所定の閾値温度を超えており、かつ、モータ110が車軸104に係合されていれば、冷却器130を動作させる。コントローラ201は、中性点充電後、メインスイッチ102がオフであれば冷却器130を動作させない。
【0027】
(第3実施例)図3に、第3実施例の電気自動車300のブロック図を示す。電気自動車300では、冷却器330とコントローラ301が第1実施例の電気自動車100とは異なる。また、電気自動車300は、クラッチ306とギアケース307を備える点で電気自動車100とは異なる。
【0028】
ギアケース307にはギア308が収容されている。図では、ギア308は模式的に描かれている。モータ110の主軸114は、クラッチ306を介してギア308に係合する。クラッチ306は、モータ110をギア308に連結したり、モータ110をギア308から切り離したりする。ギア308は、車軸104に係合している。モータ110のトルクは、クラッチ306とギア308を介して車軸104を駆動する。クラッチ306が離れると、モータ110が回転しても、ギア308と車軸104は回転しない。
【0029】
冷却器330の循環路331は、上流路331aと下流路331bとバイパス路331cを含んでいる。上流路331aと下流路331bとバイパス路331cは、三方弁335で連結されている。三方弁335は、上流路331aを、下流路331bとバイパス路331cの一方に接続し、他方から切り離す。下流路331bはギアケース307を経由しており、バイパス路331cはギアケース307をバイパスする。下流路331bとバイパス路331cの下流端は、いずれも、ポンプ132につながっている。なお、第1実施例の電気自動車100の冷却器130と同様に冷却器330も不図示のリザーブタンクとラジエータを備える。
【0030】
上流路331aが下流路331bに接続されると、インバータ120とモータ110を通過した冷媒はギアケース307に送られる。ギアケース307にて、冷媒はギア308にかけられる。冷媒は、ギア308の潤滑剤を兼ねている。
【0031】
上流路331aがバイパス路331cに接続されると、インバータ120とモータ110を通過した冷媒は、ギアケース307をバイパスしてポンプ132に戻る。
【0032】
以下では、上流路331aが下流路331bに接続され、冷媒がインバータ120とモータ110とギア308に供給される状態を全循環モードと称する。また、上流路331aがバイパス路331cに接続され、冷媒はインバータ120とモータ110に供給されるがギア308には供給されない状態を半循環モードと称する。コントローラ301は、冷却器330を作動させる際、全循環モードと半循環モードのいずれかを選択する。
【0033】
冷却器330は、冷却器130と同様に、オイルを冷媒とするサブ冷却器を備えていてもよい。サブ冷却器は、オイル循環路とオイルクーラとオイルポンプを備えている。オイル循環路はオイルクーラとモータ110とギアケース307を通過している。オイルポンプがオイルクーラとモータ110とギアケース307の間でオイルを循環させる。循環路331の冷媒がオイルクーラにてオイルを冷却し、オイルがモータ110とギア308を冷却する。オイルはギアに直接に接する。オイルはモータ110のステータとロータに直接に接してもよい。この場合、オイルはモータ110とギア308の潤滑剤としても機能する。
【0034】
電気自動車300は、ギア308を備える。ギア308は、車軸104とモータ110の間に備えられており、モータ110のトルクを増幅して車軸104に伝達する。冷却器330の冷媒はギア308の潤滑剤を兼ねている。モータ110とギア308の間にはクラッチ306が設けられており、クラッチ306は、ギア308をモータ110に係合させたり、ギア308をモータ110から切り離したりする。冷却器330は、冷媒をモータ110とギア308の両方に供給する全循環モードと、冷媒をモータ110には供給するがギア308には供給しない半循環モードを切り替える切替器(三方弁335)を備えている。コントローラ301は、モータ110を冷却する際、モータ110がギア308に係合している場合は全循環モードで冷却器330を動作させる。コントローラ301は、モータ110がギア308から切り離されている場合は半循環モードで冷却器330を動作させる。
【0035】
三方弁によらずに全循環モードと半循環モードを切り替えることのできる構造の一例を図4に示す。図4は、モータケース511とギアケース521が結合した駆動装置500の構造を示している。駆動装置500では、モータケース511とギアケース521は結合しており、両者は仕切板530で仕切られている。モータケース511にはモータ510が収容されており、ギアケース521には複数のギア520が収容されている。モータ510の主軸とギア520は、クラッチ512を介して係合している。クラッチ512をつなげるとモータ510とギア520が係合し、モータ510とともにギア520と車軸104が回転する。クラッチ512を離すとモータ510がギア520から分離する。ギア520の出力軸が車軸104に相当する。モータケース511の上部にオイル供給管541が接続されており、オイル供給管541からオイルが供給される。オイルはモータ510にかけられる。オイルはモータ510を冷却するとともに潤滑する。
【0036】
仕切板530には連通孔531と、連通孔531を閉じる可動板532が備えられている。可動板532は、コントローラ(不図示)が制御する。図4では、可動板532が開いた状態を示してある。可動板532が開くと連通孔531を通じてモータケース511とギアケース521が連通する。図4の仮想線は、可動板532が閉じた状態を示す。可動板532が閉じると連通孔531が塞がれ、モータケース511の中の空間とギアケース521の中の空間が分離する。
【0037】
可動板532を開いた状態でモータ510が回転すると、モータ510の回転によってまき上げられたオイルの一部が連通孔531を通じてギアケース521へ入る。ギアケース521に入ったオイルがギア520にかかる。オイルはギア520を冷却するとともに潤滑する。図4の太い矢印線が、可動板532が開いているときのオイルの流れを示している。可動板532を閉じるとモータケース511のオイルはギアケース521へは入らなくなる。
【0038】
モータケース511の下部にはオイル排出管542が接続されており、ギアケース521の下部にはオイル排出管543が接続されている。モータケース511の下に溜まったオイルはオイル排出管542から排出され、ギアケース521の下に溜まったオイルはオイル排出管543から排出される。
【0039】
オイル供給管541、オイル排出管542、543は、冷却器の一部である。不図示のコントローラが可動板532を閉じて冷却器を作動させると前述した半循環モードになり、可動板532を開いて冷却器を作動させると前述した全循環モードになる。可動板532は、冷媒をモータとギアの両方に供給する全循環モードと、冷媒をモータには供給するがギアには供給しない半循環モードを切り替える切替器に相当する。
【0040】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例の電気自動車100、200、300は、中性点充電の後すぐにモータが使われる可能性が高い場合にモータを冷却することができる。中性点充電の後、メインスイッチ102がオフのときは、モータの温度が閾値温度を超えていても、コントローラは冷却器を動作させない。
【0041】
メインスイッチ102は、モータ110を駆動するためのスイッチである。ただし、メインスイッチ102がオフでも中性点充電は実行可能である。中性点充電では、モータ110のステータコイル111に電流が流れるが、モータ110は回転しない。メインスイッチ102は、より正確に表現すると、モータ110の回転駆動を許可するスイッチである。メインスイッチ102がオンであれば、モータ110の回転駆動が許可され、オフであれば、モータ110の回転駆動が禁止される。
【0042】
実施例の電気自動車200は、モータと車軸を係合したり切り離したりする機構としてクラッチ206を備える。電気自動車300は、モータとギアを係合したり切り離したりする機構としてクラッチ306を備える。モータと車軸(またはギア)を係合したり切り離したりする機構は、ボールねじを採用したディスコネクト機構であってもよい。モータと車軸(またはギア)を係合したり切り離したりする機構は、どのような機構であってもよい。
【0043】
本明細書における「電気自動車」には、電気モータとエンジンの双方を備えるハイブリッド車と、バッテリと燃料電池を備える燃料電池車が含まれる。例えば、前輪と後輪の一方をエンジンが駆動し他方を電気モータが駆動するタイプも、本明細書における「電気自動車」に含まれる。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300:電気自動車 101、201、301:コントローラ 102:メインスイッチ 103:充電端子 104:車軸 105:デファレンシャルギア 109:バッテリ 110:電気モータ 111:ステータコイル 112:中性点 113、126:温度センサ 114:主軸 120:インバータ 120a:交流端 120p、120n:直流端 121、122:スイッチング素子 123、123u、123v、123w:直列接続回路 125:コンデンサ 130、330:冷却器 131、331:循環路 132:ポンプ 206、306:クラッチ 307:ギアケース 308:ギア 331a:上流路 331b:下流路 331c:バイパス路 335:三方弁 500:駆動装置 510:モータ 511:モータケース 512:クラッチ 520:ギア 521:ギアケース 530:仕切板 531:連通孔 532:可動板 541:オイル供給管 542、543:オイル排出管 900:電源
図1
図2
図3
図4