(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012324
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20250117BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250117BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20250117BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20250117BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F27/02 120
H01F27/29 123
H01F41/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115076
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】宮武 亨
(72)【発明者】
【氏名】川崎 光雄
(72)【発明者】
【氏名】桑原 智也
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD01
5E062FG01
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB03
5E070AB08
5E070BB03
5E070CB12
5E070DA13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】コイルの電気抵抗を低減することができる電子部品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である電子部品は、基材と、前記基材の厚さ方向から見た平面視で環状のコイル部と、を備える。前記コイル部は、前記基材の厚さ方向における両端面のうち第1基材面に形成されたコイルパターンを有する第1配線層と、前記基材の前記両端面のうち前記第1基材面とは異なる第2基材面に形成されたコイルパターンを有する第2配線層と、前記第1配線層および前記第2配線層の各表面を覆うとともに、前記基材を貫通するビアホールを通じて前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する導通部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の厚さ方向から見た平面視で環状のコイル部と、
を備え、
前記コイル部は、
前記基材の厚さ方向における両端面のうち第1基材面に形成されたコイルパターンを有する第1配線層と、
前記基材の前記両端面のうち前記第1基材面とは異なる第2基材面に形成されたコイルパターンを有する第2配線層と、
前記第1配線層および前記第2配線層の各表面を覆うとともに、前記基材を貫通するビアホールを通じて前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する導通部と、
を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記コイル部は、
前記第1配線層の配線幅以下の最大幅を有して前記第1配線層の配線方向の一端部をなし、前記ビアホールの前記第1基材面側の開口を囲む第1ビアパッド部と、
前記第2配線層の配線幅以下の最大幅を有して前記第2配線層の配線方向の一端部をなし、前記ビアホールの前記第2基材面側の開口を囲む第2ビアパッド部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1配線層および前記第2配線層の各コイルパターンは、前記基材の厚さ方向から見た平面視で渦巻形状をなし、
前記導通部は、前記ビアホールを通じて、前記第1配線層の渦巻形状の一端部と前記第2配線層の渦巻形状の一端部とに接触する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記導通部の表面を覆う絶縁層をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項5】
磁性粉体を含有し、前記コイル部を内包する本体部と、
前記本体部の外表面に設けられ、前記第1配線層と電気的に接続される第1外部電極と、
前記第1外部電極と対をなして前記本体部の外表面に設けられ、前記第2配線層と電気的に接続される第2外部電極と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記本体部は、前記第1配線層の前記第1外部電極との接続端部と、前記第2配線層の前記第2外部電極との接続端部とを露出させる態様で、前記コイル部を内包する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第2配線層と離間して前記第2基材面から前記基材の厚さ方向に延在する引き出し配線部と、
前記第1配線層のうち前記基材の厚さ方向から見た平面視で前記引き出し配線部と重なる接続端部の表面と前記引き出し配線部の表面とを覆うとともに、前記基材を貫通する電極用ビアホールを通じて、前記接続端部と前記引き出し配線部とを電気的に接続する電極用導通部と、
前記電極用導通部を介して前記第1配線層と前記第1外部電極とを電気的に接続する第1内部端子と、
前記第1配線層の前記接続端部と対をなす前記第2配線層の接続端部の表面を覆う前記導通部を介して、前記第2配線層と前記第2外部電極とを電気的に接続する第2内部端子と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1基材面に形成される第1下地層と、
前記第2基材面に形成される第2下地層と、
をさらに備え、
前記第1下地層は前記第1基材面と前記第1配線層との間に介在し、前記第2下地層は前記第2基材面と前記第2配線層との間に介在する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1下地層は、前記第1配線層と同じコイルパターンを有し、
前記第2下地層は、前記第2配線層と同じコイルパターンを有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
前記第1下地層および前記第2下地層は、ニッケル、クロムおよびチタンの少なくとも一つを含む導体層であり、
前記第1配線層、前記第2配線層および前記導通部は、銅を含む導体層である、
ことを特徴とする請求項8に記載の電子部品。
【請求項11】
前記導通部は、
前記第1配線層の表面を覆う第1被覆層と、
前記第2配線層の表面を覆う第2被覆層と、
前記ビアホールの内部に充填されるビア導体部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項12】
基材の厚さ方向における一端側の第1基材面と他端側の第2基材面とに下地層を形成する下地層形成工程と、
前記第1基材面の下地層と前記第2基材面の下地層とにコイルパターンを形成するパターン形成工程と、
前記第1基材面において前記コイルパターンをなす下地層の表面をめっきして、前記第1基材面に通じる第1開口部を有する第1配線層を形成するとともに、前記第2基材面において前記コイルパターンをなす下地層の表面をめっきして、前記基材の厚さ方向に前記第1開口部と重なる位置で前記第2基材面に通じる第2開口部を有する第2配線層を形成する第1めっき工程と、
前記第1開口部および前記第2開口部の各内側で前記基材を貫通するビアホールを形成するビアホール形成工程と、
前記第1配線層および前記第2配線層の各表面を覆う導体層をめっきしつつ、前記導体層から成長したビア導体部を前記ビアホールの内部に充填して、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する第2めっき工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記ビアホール形成工程では、レーザ加工法またはエッチング法によって前記ビアホールを形成する、
ことを特徴とする請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ等の電子部品の分野においては、電子機器の小型化および高機能化が進むに伴い、当該電子機器に搭載される電子部品の小型化および低抵抗化等の開発が行われている。例えば、特許文献1には、金属粉末と絶縁性樹脂とを含むボディの内部にコイルが埋め込まれた電子部品(パワーインダクタ)が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載される電子部品では、渦巻形状のコイルパターンを有する第1金属めっき膜と、当該第1金属めっき膜の上面および側面を覆う第2金属めっき膜とを、基材の上下両面に形成することにより、コイルが形成される。当該コイルは、金属粉末と絶縁性樹脂とを含むボディの内部に配置される。また、当該コイルの渦巻形状の端部は、当該ボディの向かい合う2つの側面に露出しており、これら2つの側面には、上記端部と接触するように外部電極が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載される電子部品では、基材の上面側の第1金属めっき膜と下面側の第1金属めっき膜とを、当該基材に形成されたビアホールを介して電気的に接続することにより、当該基材の上下両面のコイルパターン配線同士を電気的に接続している。この接続においては、当該ビアホールの開口縁の全周に亘って上記第1金属めっき膜を埋めることが好ましい。このように第1金属めっき膜を形成すると、当該ビアホールの開口面積が上記第1金属めっき膜の幅によって制限されるため、当該ビアホールを介したコイルパターン配線同士の電気抵抗(接続抵抗)を低減することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、コイルの電気抵抗を低減することができる電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子部品は、基材と、前記基材の厚さ方向から見た平面視で環状のコイル部と、を備え、前記コイル部は、前記基材の厚さ方向における両端面のうち第1基材面に形成されたコイルパターンを有する第1配線層と、前記基材の前記両端面のうち前記第1基材面とは異なる第2基材面に形成されたコイルパターンを有する第2配線層と、前記第1配線層および前記第2配線層の各表面を覆うとともに、前記基材を貫通するビアホールを通じて前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する導通部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記コイル部は、前記第1配線層の配線幅以下の最大幅を有して前記第1配線層の配線方向の一端部をなし、前記ビアホールの前記第1基材面側の開口を囲む第1ビアパッド部と、前記第2配線層の配線幅以下の最大幅を有して前記第2配線層の配線方向の一端部をなし、前記ビアホールの前記第2基材面側の開口を囲む第2ビアパッド部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記第1配線層および前記第2配線層の各コイルパターンは、前記基材の厚さ方向から見た平面視で渦巻形状をなし、前記導通部は、前記ビアホールを通じて、前記第1配線層の渦巻形状の一端部と前記第2配線層の渦巻形状の一端部とに接触する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記導通部の表面を覆う絶縁層をさらに備える、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、磁性粉体を含有し、前記コイル部を内包する本体部と、前記本体部の外表面に設けられ、前記第1配線層と電気的に接続される第1外部電極と、前記第1外部電極と対をなして前記本体部の外表面に設けられ、前記第2配線層と電気的に接続される第2外部電極と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記本体部は、前記第1配線層の前記第1外部電極との接続端部と、前記第2配線層の前記第2外部電極との接続端部とを露出させる態様で、前記コイル部を内包する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記第2配線層と離間して前記第2基材面から前記基材の厚さ方向に延在する引き出し配線部と、前記第1配線層のうち前記基材の厚さ方向から見た平面視で前記引き出し配線部と重なる接続端部の表面と前記引き出し配線部の表面とを覆うとともに、前記基材を貫通する電極用ビアホールを通じて、前記接続端部と前記引き出し配線部とを電気的に接続する電極用導通部と、前記電極用導通部を介して前記第1配線層と前記第1外部電極とを電気的に接続する第1内部端子と、前記第1配線層の前記接続端部と対をなす前記第2配線層の接続端部の表面を覆う前記導通部を介して、前記第2配線層と前記第2外部電極とを電気的に接続する第2内部端子と、をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記第1基材面に形成される第1下地層と、前記第2基材面に形成される第2下地層と、をさらに備え、前記第1下地層は前記第1基材面と前記第1配線層との間に介在し、前記第2下地層は前記第2基材面と前記第2配線層との間に介在する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記第1下地層は、前記第1配線層と同じコイルパターンを有し、前記第2下地層は、前記第2配線層と同じコイルパターンを有する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記第1下地層および前記第2下地層は、ニッケル、クロムおよびチタンの少なくとも一つを含む導体層であり、前記第1配線層、前記第2配線層および前記導通部は、銅を含む導体層である、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電子部品は、上記の発明において、前記導通部は、前記第1配線層の表面を覆う第1被覆層と、前記第2配線層の表面を覆う第2被覆層と、前記ビアホールの内部に充填されるビア導体部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、基材の厚さ方向における一端側の第1基材面と他端側の第2基材面とに下地層を形成する下地層形成工程と、前記第1基材面の下地層と前記第2基材面の下地層とにコイルパターンを形成するパターン形成工程と、前記第1基材面において前記コイルパターンをなす下地層の表面をめっきして、前記第1基材面に通じる第1開口部を有する第1配線層を形成するとともに、前記第2基材面において前記コイルパターンをなす下地層の表面をめっきして、前記基材の厚さ方向に前記第1開口部と重なる位置で前記第2基材面に通じる第2開口部を有する第2配線層を形成する第1めっき工程と、前記第1開口部および前記第2開口部の各内側で前記基材を貫通するビアホールを形成するビアホール形成工程と、前記第1配線層および前記第2配線層の各表面を覆う導体層をめっきしつつ、前記導体層から成長したビア導体部を前記ビアホールの内部に充填して、前記第1配線層と前記第2配線層とを電気的に接続する第2めっき工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、上記の発明において、前記ビアホール形成工程では、レーザ加工法またはエッチング法によって前記ビアホールを形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コイルの電気抵抗を低減することが可能な電子部品およびその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る電子部品の一構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子部品のA-A線断面の一構成例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す電子部品のB-B線断面の一構成例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す電子部品のC-C線断面の一構成例を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す電子部品のD-D線断面の一構成例を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す電子部品のE-E線断面の一構成例を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1に係るコイル部の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態1に係るコイル部を備えた電子部品の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図9A】
図9Aは、第1基材面の第1下地層に形成されたコイルパターンの一例を示す模式図である。
【
図9B】
図9Bは、第2基材面の第2下地層に形成されたコイルパターンの一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態2に係る電子部品の一構成例を示す断面模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態2に係るコイル部の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態2に係るコイル部を備えた電子部品の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態1の変形例に係る電子部品の一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る電子部品およびその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0023】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る電子部品の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る電子部品の一構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子部品のA-A線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図3は、
図1に示す電子部品のB-B線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図4は、
図2に示す電子部品のC-C線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図5は、
図2に示す電子部品のD-D線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図6は、
図4に示す電子部品のE-E線断面の一構成例を示す断面模式図である。なお、
図6には、本発明の実施形態1に係る電子部品1のコイル部3を構成する第1配線層20と第2配線層25との電気的な接続構造を拡大して示す部分断面図が示されている。
【0024】
本発明の実施形態1に係る電子部品1は、例えばインダクタであり、
図1~5に示すように、基材2と、基材2に形成されるコイル部3と、コイル部3を内包する本体部4と、本体部4の外表面を覆う外装コート5と、一対の外部電極(第1外部電極6および第2外部電極7)と、を備える。また、
図2~6に示すように、コイル部3は、基材2の厚さ方向における一端面側の第1配線層20および他端面側の第2配線層25と、基材2に形成されたビアホール13を介して第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する導通部30と、を備える。さらに、コイル部3は、基材2と第1配線層20との間に介在する第1下地層41と、基材2と第2配線層25との間に介在する第2下地層42と、導通部30の表面を覆う第1絶縁層51および第2絶縁層52と、を備える。
【0025】
なお、本明細書においては、説明の便宜上、電子部品1のX方向、Y方向およびZ方向を設定する。具体的には、
図1に示すように、X方向は、電子部品1の上下方向に対して垂直な方向(以下、側方向という)の一つである。Y方向は、電子部品1の側方向の一つであって、X方向に対して垂直な方向である。Z方向は、電子部品1の上下方向である。基材2の厚さ方向は、Z方向と同じ方向である。以下では、基材2の厚さ方向を、基材厚さ方向または厚さ方向と略記する場合がある。
【0026】
基材2は、コイル部3が形成される絶縁性の基材である。詳細には、
図2、3に示すように、基材2は、コイル部3の第1配線層20が形成されている第1基材面11と、コイル部3の第2配線層25が形成されている第2基材面12と、を有する。第1基材面11は、基材厚さ方向における両端面のうちの一端面である。第2基材面12は、当該両端面のうちの他端面であり、第1基材面11とは異なる端面(基材厚さ方向における反対側の端面)である。また、
図3、6に示すように、基材2は、コイル部3の第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続するためのビアホール13を有する。ビアホール13は、基材2のうち、第1配線層20の第1ビアパッド部21および第2配線層25の第2ビアパッド部26の双方と基材厚さ方向に重なる所定領域内において、基材2を貫通するように形成されている。ビアホール13の形状は、特に限定されず、例えば、基材厚さ方向から見た平面視で、円形であってもよいし、楕円形または角丸長方形等のオーバル形であってもよいし、矩形であってもよい。
【0027】
なお、基材2は、ガラスエポキシ基材等のリジッド基材であってもよいが、コイル部3の小型化の観点から、フレキシブル基材であることが好ましい。このような基材2の構成材料としては、例えば、ポリイミド、パラキシレン系ポリマー(パリレン)等の絶縁材料が挙げられる。
【0028】
コイル部3は、基材厚さ方向から見た平面視で環状をなす導体ユニットであり、
図1に示すように、本体部4の内部に配置される。詳細には、
図2、3に示すように、コイル部3は、第1基材面11上の第1配線層20と、第2基材面12上の第2配線層25と、これら第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する導通部30と、を備える。
【0029】
第1配線層20は、
図2~4に示すように、基材2の第1基材面11に形成されたコイルパターンを有する導体層である。詳細には、第1配線層20は、第1基材面11にコイルパターン状に形成された下地層(
図6に示す第1下地層41)上に金属めっきを行うことにより、
図2~4に示すように、第1基材面11上に形成される。この第1配線層20のコイルパターンは、例えば
図4に示すように、基材厚さ方向(
図4の紙面に直交する方向)から見た平面視で渦巻形状、具体的には、電子部品1のZ方向(
図1参照)に平行な中心軸(図示せず)の周りに複数ターン巻回した渦巻形状をなす。また、第1配線層20を構成する導体としては、例えば、銅や鉄等の金属、或いは当該金属を一種類以上含む合金が挙げられる。上記コイルパターンの形成し易さの観点から、第1配線層20は、銅を含む導体層であることが好ましい。
【0030】
また、
図2~4に示すように、第1配線層20は、第1ビアパッド部21を備えている。第1ビアパッド部21は、第1配線層20のうち、基材厚さ方向から見た平面視で基材2のビアホール13を含む領域であり、
図4に示すように、第1配線層20の配線方向の一端部(例えば渦巻形状のコイルパターンにおける内周端部)をなす。本実施形態1において、第1配線層20の配線方向は、渦巻形状のコイルパターンの長手方向(渦巻方向)である。この第1ビアパッド部21には、
図4に示すように、第1開口部23が形成されている。第1ビアパッド部21は、
図6に示すように、ビアホール13の第1基材面11側の開口を、この第1開口部23の内側に囲む。このとき、第1ビアパッド部21の第1開口部23は、基材厚さ方向から見た平面視で、ビアホール13の全域を含み、好ましくは、ビアホール13と一致する。
【0031】
上記のような第1ビアパッド部21は、基材厚さ方向から見た平面視で円形等の形状をなすよう形成されることにより、第1配線層20の配線幅よりも大きい幅を有してもよい。しかし、コイル部3の磁束損失を低減する観点から、第1ビアパッド部21は、例えば
図4に示すように、第1配線層20の配線幅以下の最大幅を有するよう形成されることが好ましい。また、コイル部3の第1配線層20と第2配線層25との電気抵抗(直流抵抗)を低減する観点から、例えば
図4に示すように、第1ビアパッド部21の第1開口部23は、その開口面積が第1ビアパッド部21の面積(基材厚さ方向から見た平面視における第1ビアパッド部21の面積)を上限に最大となるよう形成されることが好ましい。
【0032】
また、
図2、4に示すように、第1配線層20は、第1接続端部22を備えている。第1接続端部22は、第1配線層20の配線方向において第1ビアパッド部21とは反対側の端部、例えば
図4に示すように、渦巻形状のコイルパターンにおける外周端部をなす。この第1接続端部22は、例えば
図2、4に示すように、本体部4の一側面(X方向の一端面)から露出し、当該側面に設けられる第1外部電極6と電気的に接続される。
【0033】
第2配線層25は、
図2、3、5に示すように、基材2の第2基材面12に形成されたコイルパターンを有する導体層である。詳細には、第2配線層25は、第2基材面12にコイルパターン状に形成された下地層(
図6に示す第2下地層42)上に金属めっきを行うことにより、
図2、3、5に示すように、第2基材面12上に形成される。この第2配線層25のコイルパターンは、例えば
図5に示すように、基材厚さ方向(
図5の紙面に直交する方向)から見た平面視で、電子部品1のZ方向に平行な中心軸の周りに複数ターン巻回した渦巻形状をなす。具体的には、第2配線層25のコイルパターンは、
図4に示した第1配線層20のコイルパターンを電子部品1のX方向(
図4の紙面左右方向)に反転させた渦巻形状をなす。なお、第2配線層25を構成する導体は、上述した第1配線層20と同様である。
【0034】
また、
図2、3、5に示すように、第2配線層25は、上述した第1配線層20の第1ビアパッド部21に対応する第2ビアパッド部26を備えている。第2ビアパッド部26は、第2配線層25のうち、基材厚さ方向から見た平面視で、基材2のビアホール13を含むとともに第1配線層20の第1ビアパッド部21と重なる領域である。
図5に示すように、第2ビアパッド部26は、第2配線層25の配線方向の一端部(例えば渦巻形状のコイルパターンにおける内周端部)をなす。本実施形態1において、第2配線層25の配線方向は、渦巻形状のコイルパターンの長手方向(渦巻方向)である。この第2ビアパッド部26には、
図5に示すように、第2開口部28が形成されている。第2ビアパッド部26は、
図6に示すように、ビアホール13の第2基材面12側の開口を、この第2開口部28の内側に囲む。このとき、第2ビアパッド部26の第2開口部28は、上述した第1ビアパッド部21の第1開口部23と同様に、基材厚さ方向から見た平面視で、ビアホール13の全域を含み、好ましくは、ビアホール13と一致する。
【0035】
上記のような第2ビアパッド部26は、第1ビアパッド部21の場合と同様に、第2配線層25の配線幅よりも大きい幅を有してもよいが、コイル部3の磁束損失を低減する観点から、例えば
図5に示すように、第2配線層25の配線幅以下の最大幅を有するよう形成されることが好ましい。また、コイル部3の第1配線層20と第2配線層25との電気抵抗を低減する観点から、例えば
図5に示すように、第2ビアパッド部26の第2開口部28は、その開口面積が第2ビアパッド部26の面積(基材厚さ方向から見た平面視における第2ビアパッド部26の面積)を上限に最大となるよう形成されることが好ましい。
【0036】
また、
図2、5に示すように、第2配線層25は、第2接続端部27を備えている。第2接続端部27は、第2配線層25の配線方向において第2ビアパッド部26とは反対側の端部、例えば
図5に示すように、渦巻形状のコイルパターンにおける外周端部をなす。この第2接続端部27は、例えば
図2、5に示すように、本体部4のX方向の一側面(上述した第1接続端部22とは反対側の側面)から露出し、当該側面に設けられる第2外部電極7と電気的に接続される。
【0037】
なお、上述した第1配線層20および第2配線層25を備えるコイル部3のターン数(巻き数)および配線幅は、電子部品1に要求される電気抵抗およびインダクタンス等の特性に応じて設定される。すなわち、これら第1配線層20および第2配線層25の各コイルパターンは、電子部品1に要求される上記特性に応じて設定される。
【0038】
導通部30は、コイル部3の第1配線層20および第2配線層25の各表面を覆うとともに、基材2のビアホール13を通じて、これら第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続するものである。詳細には、
図2~6に示すように、導通部30は、第1配線層20の表面を覆う第1被覆層31と、第2配線層25の表面を覆う第2被覆層32と、ビアホール13の内部に充填されるビア導体部33とを有する。
【0039】
第1被覆層31は、基材2の第1基材面11上に形成されたコイルパターン状の第1配線層20を下地層にして金属めっきを行うことにより、
図2~4に示すように、第1配線層20の表面上に形成される。これにより、第1被覆層31は、上述した第1配線層20と同様のコイルパターン(
図4参照)を有しつつ、この第1配線層20の表面を覆う。また、第2被覆層32は、基材2の第2基材面12上に形成されたコイルパターン状の第2配線層25を下地層にして金属めっきを行うことにより、
図2、3、5に示すように、第2配線層25の表面上に形成される。これにより、第2被覆層32は、上述した第2配線層25と同様のコイルパターン(
図5参照)を有しつつ、この第2配線層25の表面を覆う。なお、第1配線層20および第2配線層25の各表面には、Z方向と交差する面(例えば上面)と、X方向またはY方向と交差する面(例えば側面)とが含まれる。
【0040】
ビア導体部33は、上述した第1被覆層31および第2被覆層32の形成とともに、基材2のビアホール13の内部に金属めっきを充填することにより、
図3に示すように、第1被覆層31および第2被覆層32の双方と一体化するよう形成される。詳細には、
図6に示すように、ビア導体部33は、第1配線層20の第1開口部23を埋める導体部と、第2配線層25の第2開口部28を埋める導体部と、ビアホール13を埋める導体部とによって構成される。ビア導体部33は、これらの導体部により、第1配線層20上の第1被覆層31と第2配線層25上の第2被覆層32とを電気的に接続する。すなわち、導通部30は、ビアホール13を通じて、第1配線層20の渦巻形状の一端部(
図6に示す第1ビアパッド部21)と、第2配線層25の渦巻形状の一端部(
図6に示す第2ビアパッド部26)とに接触し、これにより、第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する。
【0041】
なお、上述したビア導体部33は、第1配線層20の表面から成長した金属めっきによって構成されてもよいし、第2配線層25の表面から成長した金属めっきによって構成されてもよいし、これら2つの金属めっきの組み合わせによって構成されてもよい。また、上述した第1被覆層31、第2被覆層32およびビア導体部33を有する導通部30を構成する導体としては、例えば、銅や鉄等の金属、或いは当該金属を一種類以上含む合金が挙げられる。上記金属めっきの形成し易さの観点から、導通部30は、上述した第1配線層20および第2配線層25と同様に、銅を含む導体層であることが好ましい。
【0042】
また、コイル部3は、
図6に示すように、第1下地層41および第2下地層42を備える。第1下地層41および第2下地層42は、各々、基材2の第1基材面11および第2基材面12に金属めっきを行うための下地層である。詳細には、
図6に示すように、第1下地層41は、第1基材面11に形成される下地層であり、第1基材面11と第1配線層20との間に介在する。上述した第1配線層20および第1被覆層31の形成し易さの観点から、第1下地層41は、第1配線層20と同じコイルパターンを有することが好ましい。また、
図6に示すように、第2下地層42は、第2基材面12に形成される下地層であり、第2基材面12と第2配線層25との間に介在する。上述した第2配線層25および第2被覆層32の形成し易さの観点から、第2下地層42は、第2配線層25と同じコイルパターンを有することが好ましい。
【0043】
なお、第1下地層41および第2下地層42の各々を構成する導体としては、例えば、ニッケル、クロム、チタンおよび銅等の金属、或いは当該金属を一種類以上含む合金が挙げられる。特に、第1下地層41および第2下地層42の各々は、ニッケル、クロムおよびチタンの少なくとも一つを含む導体層であることが好ましい。
【0044】
また、コイル部3は、
図2、3、6に示すように、導通部30および基材2の各表面を覆う第1絶縁層51および第2絶縁層52を備える。なお、
図4、5では、説明の便宜上、第1絶縁層51および第2絶縁層52の図示が省略されている。第1絶縁層51は、導通部30のうち第1被覆層31の表面と、基材2の表面(例えば第2接続端部27が設けられた第2基材面12の裏面となる第1基材面11等)とを覆う絶縁層である。
図2、3に示すように、第1絶縁層51は、基材2の第1基材面11上で渦巻形状の第1配線層20に沿って隣り合う第1被覆層31同士の間を絶縁する。また、第2絶縁層52は、導通部30のうち第2被覆層32の表面と、基材2の表面(例えば第1接続端部22が設けられた第1基材面11の裏面となる第2基材面12等)とを覆う絶縁層である。
図2、3に示すように、第2絶縁層52は、基材2の第2基材面12上で渦巻形状の第2配線層25に沿って隣り合う第2被覆層32同士の間を絶縁する。これら第1絶縁層51および第2絶縁層52の各構成材料としては、例えば、パリレン等の絶縁材料が挙げられる。
【0045】
本体部4は、磁性粉体を含有し、
図1に示すように、コイル部3を内包する。詳細には、本体部4は、磁性粉体を含有する絶縁樹脂(すなわち磁性材料)によって構成され、
図1に示すように、直方体または立方体等の立体構造を有する。本体部4に含まれる磁性粉体としては、例えば、鉄等の金属粉体、或いは鉄等の金属を含有する合金粉体が挙げられる。当該磁性粉体を含有する絶縁樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0046】
上記のような本体部4は、例えば
図2に示すように、電子部品1のX方向の両端面である一対の側面の各々から、第1配線層20の第1接続端部22と第2配線層25の第2接続端部27とを露出させる態様で、コイル部3を内包する。
図2に示すように、第1接続端部22は第1配線層20と第1外部電極6との接続端部であり、第2接続端部27は第2配線層25と第2外部電極7との接続端部である。また、本体部4は、
図2~5に示すように、コイル部3によって囲まれる内側領域に存在し、コイル部3によって巻回された状態にある。このような本体部4は、上述したようにコイル部3を内包する構造体(筐体)としての機能と、磁性コアとしての機能とを兼ね備える。
【0047】
外装コート5は、上述した本体部4の外表面のうち、外部電極が設けられる領域以外の領域を覆うものである。例えば、外装コート5は、エポキシ樹脂等の絶縁樹脂によって構成され、
図1~5に示すように、本体部4の上面、下面および側面のうち、第1外部電極6または第2外部電極7が設けられる領域以外の領域を覆うよう本体部4の外表面に設けられる。
【0048】
第1外部電極6および第2外部電極7は、
図1に示すように、本体部4の外表面に設けられ、当該本体部4内のコイル部3と電気的に接続される一対の外部電極である。例えば、第1外部電極6は、
図2に示すように、本体部4の外表面のうち、X方向における一端側の側面(以下、第1側面という)から下面の一部に亘る領域に、断面L字状に設けられる。第1外部電極6は、本体部4の第1側面に露出する第1配線層20の第1接続端部22と電気的に接続される。また、第2外部電極7は、
図2に示すように、本体部4の外表面のうち、X方向における他端側の側面(以下、第2側面という)から下面の一部に亘る領域に、上記第1外部電極6と対をなして離間するよう断面L字状に設けられる。なお、この第2側面は、上記第1側面とはX方向の反対側に位置する側面である。第2外部電極7は、本体部4の第2側面に露出する第2配線層25の第2接続端部27と電気的に接続される。
【0049】
上述した第1外部電極6および第2外部電極7の各々を構成する導体としては、例えば、銅、錫、ニッケル等の金属、或いは当該金属を含有する合金等が挙げられる。また、第1外部電極6および第2外部電極7の各々は、単一の導体層によって構成されてもよいし、複数の導体層によって構成されてもよい。
【0050】
つぎに、本発明の実施形態1に係る電子部品1の製造方法について説明する。
図7は、本発明の実施形態1に係るコイル部の製造方法の一例を示すフロー図である。
図7には、上述した
図3(電子部品1のB-B線断面(
図1参照)を示す断面模式図)と同じ視点(X方向)から見たフロー図が図示されている。
図8は、本発明の実施形態1に係るコイル部を備えた電子部品の製造方法の一例を示すフロー図である。
図8には、上述した
図2(電子部品1のA-A線断面(
図1参照)を示す断面模式図)と同じ視点(Y方向)から見たフロー図が図示されている。
図7に示す各工程を順次行うことにより、上述したコイル部3(
図2~6参照)が製造され、その後、
図8に示す各工程を順次行うことにより、上述したコイル部3を備えた電子部品1(
図1参照)が製造される。
【0051】
詳細には、
図7に示すように、電子部品1の製造方法では、まず、コイル部3を製造するために、基材2の第1基材面11と第2基材面12とに下地層を形成する下地層形成工程が行われる(ステップS101)。
【0052】
ステップS101の下地層形成工程においては、真空チャンバー等の装置内に搬入した基材2の厚さ方向における両端面に対し、スパッタリング等の手法により、導体の薄膜を形成する。例えば、当該導体としては、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)および銅(Cu)等が挙げられる。当該導体の薄膜としては、Ni-Cr膜、Ni-Cr-Cu膜、Ni-Ti膜等、ニッケル、クロム、チタンおよび銅の少なくとも一つを含む薄膜が挙げられる。これらの中でも、ニッケル、クロムおよびチタンの少なくとも一つを含む薄膜(導体層)が好ましい。これにより、
図7に示すように、基材2の第1基材面11に第1下地層41が形成され、基材2の第2基材面12に第2下地層42が形成される。
【0053】
なお、これら第1下地層41および第2下地層42の形成順は特に限定されず、第1下地層41の形成後に第2下地層42が形成されてもよいし、第2下地層42の形成後に第1下地層41が形成されてもよいし、第1下地層41および第2下地層42が同時に形成されてもよい。
【0054】
上記ステップS101の下地層形成工程が行われた後、基材2における第1基材面11の下地層(第1下地層41)と第2基材面12の下地層(第2下地層42)とにコイルパターンを形成するパターン形成工程が行われる(ステップS102)。
【0055】
ステップS102のパターン形成工程においては、
図7に示すように、第1基材面11の第1下地層41上に第1レジスト101を形成し、第2基材面12の第2下地層42上に第2レジスト102を形成する。例えば、第1レジスト101および第2レジスト102の各々は、ドライフィルムのラミネートによって形成されてもよいし、フォトレジストの塗布によって形成されてもよい。また、これら第1レジスト101および第2レジスト102の形成順は特に限定されず、いずれのレジストが先に形成されてもよいし、これらのレジストが同時に形成されてもよい。上記のように形成された第1レジスト101および第2レジスト102の各々には、露光および現像等の処理により、
図7に示すように、目的とするコイルパターンが形成される。
【0056】
図9Aは、第1基材面の第1下地層に形成されたコイルパターンの一例を示す模式図である。
図9Bは、第2基材面の第2下地層に形成されたコイルパターンの一例を示す模式図である。
図9Aに示すように、第1基材面11の第1下地層41には、上述した処理後の第1レジスト101により、基材厚さ方向(
図9Aの紙面に直交する方向)から見た平面視で渦巻形状の第1コイルパターン111が形成される。この渦巻形状の第1コイルパターン111における内周端部には、
図4に示した第1配線層20の第1ビアパッド部21に第1開口部23を形成するための第1開口パターン111aが含まれる。また、
図9Bに示すように、第2基材面12の第2下地層42には、上述した処理後の第2レジスト102により、基材厚さ方向(
図9Bの紙面に直交する方向)から見た平面視で渦巻形状の第2コイルパターン112が形成される。この渦巻形状の第2コイルパターン112における内周端部には、
図5に示した第2配線層25の第2ビアパッド部26に第2開口部28を形成するための第2開口パターン112aが含まれる。
【0057】
上記ステップS102のパターン形成工程が行われた後、基材2の第1基材面11上に第1コイルパターン111を有する第1配線層20を形成するとともに、基材2の第2基材面12上に第2コイルパターン112を有する第2配線層25を形成する第1めっき工程が行われる(ステップS103)。
【0058】
ステップS103の第1めっき工程においては、
図7に示すように、基材2の第1基材面11において第1コイルパターン111(
図9A参照)をなす第1下地層41の表面をめっきし、これにより、この第1下地層41の表面に、第1コイルパターン111を有する第1配線層20を形成する。このように形成された第1配線層20は、例えば
図7に示すように、第1コイルパターン111の第1開口パターン111aに対応して、第1基材面11に通じる第1開口部23を有する。また、上記第1配線層20の形成に並行して、基材2の第2基材面12において第2コイルパターン112(
図9B参照)をなす第2下地層42の表面をめっきし、これにより、この第2下地層42の表面に、第2コイルパターン112を有する第2配線層25を形成する。このように形成された第2配線層25は、例えば
図7に示すように、第2コイルパターン112の第2開口パターン112aに対応して、第2基材面12に通じる第2開口部28を有する。この第2開口部28は、
図7に示すように、基材厚さ方向(
図7の紙面上下方向)に第1開口部23と重なる位置に形成されている。
【0059】
なお、上記第1めっき工程で行われるめっき処理としては、銅や鉄等の金属めっき、銅や鉄等の金属を含む合金めっきが挙げられる。これらの中でも、第1配線層20および第2配線層25の形成し易さの観点から、銅めっきまたは銅を含む合金めっきが好ましい。
【0060】
上記ステップS103の第1めっき工程が行われた後、基材2から不要な下地層およびレジストを除去する除去工程が行われる(ステップS104)。ステップS104の除去工程においては、
図7に示すように、基材2の第1基材面11および第2基材面12から、剥離またはエッチング等の手法により、第1レジスト101および第2レジスト102を除去する。つぎに、第1下地層41および第2下地層42のうち、上記の第1レジスト101および第2レジスト102の除去によって露出した部分を、エッチング等の手法により、第1基材面11および第2基材面12から除去する。この結果、基材2には、第1基材面11と第1配線層20との間に介在する第1下地層41と、第2基材面12と第2配線層25との間に介在する第2下地層42とが残る。上記残った第1下地層41は第1配線層20と同様のコイルパターンを有し、上記残った第2下地層42は第2配線層25と同様のコイルパターンを有する。なお、上記の第1配線層20、第2配線層25、第1下地層41および第2下地層42について、
図7には、説明の便宜上、X方向から見た断面図のみが図示されている。
【0061】
上記ステップS104の除去工程が行われた後、基材2にビアホール13を形成するビアホール形成工程が行われる(ステップS105)。ステップS105のビアホール形成工程においては、
図7に示すように、第1配線層20の第1開口部23および第2配線層25の第2開口部28の各内側で基材2を貫通するように、ビアホール13が形成される。このように形成されたビアホール13は、
図7に示すように、第1開口部23および第2開口部28の各内径と同じ内径を有して、第1開口部23および第2開口部28に通じる一連の貫通孔をなすことが好ましい。
【0062】
例えば、上記ステップS105のビアホール形成工程では、レーザ加工法によって基材2にビアホール13が形成されてもよい。この場合、基材2のうち、第1開口部23および第2開口部28によって囲まれる内側領域にレーザ光を照射し、これにより、当該内側領域を融解して除去する。この結果、上述したビアホール13が基材2に形成される。
【0063】
また、上記ステップS105のビアホール形成工程では、エッチング法によって基材2にビアホール13が形成されてもよい。この場合、基材2のうち、第1開口部23および第2開口部28によって囲まれる内側領域以外の全領域をエッチングマスクによって覆い、当該内側領域とエッチング液とを接触させるウェットエッチングにより、当該内側領域を腐食(溶解)させて除去する。この結果、上述したビアホール13が基材2に形成される。なお、上記エッチングマスクは、ビアホール13の形成後、基材2から除去される。例えば、上記エッチングマスクは、ドライフィルムのラミネートによって形成されてもよいし、フォトレジストの塗布によって形成されてもよい。
【0064】
上記ステップS105のビアホール形成工程が行われた後、第1配線層20および第2配線層25の各表面を覆う導体層をめっきしつつ、当該導体層から成長したビア導体部をビアホール13の内部に充填して、第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する第2めっき工程が行われる(ステップS106)。
【0065】
ステップS106の第2めっき工程においては、
図7に示すように、基材2の第1基材面11上に形成されている第1配線層20の表面に、当該表面を覆う導体層である第1被覆層31をめっきするとともに、基材2の第2基材面12上に形成されている第2配線層25の表面に、当該表面を覆う導体層である第2被覆層32をめっきする。これと同時に、第1被覆層31および第2被覆層32の少なくとも一つから成長したビア導体部33を、第1配線層20の第1開口部23および第2配線層25の第2開口部28を通じて基材2のビアホール13の内部に充填する。この結果、
図7に示すように、第1配線層20および第2配線層25の各表面を覆うとともにビアホール13を通じて第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する導通部30が形成される。当該導通部30について、
図7には、説明の便宜上、X方向から見た断面図のみが図示されている。
【0066】
なお、上述した第1被覆層31および第2被覆層32の各めっき処理としては、銅や鉄等の金属めっき、銅や鉄等の金属を含む合金めっきが挙げられる。これらの中でも、上述した第1配線層20および第2配線層25と同様に、銅めっきまたは銅を含む合金めっきが好ましい。
【0067】
上記ステップS106の第2めっき工程が行われた後、基材2のうち一部領域を除去する基材除去工程が行われる(ステップS107)。ステップS107の基材除去工程においては、例えば、基材2に形成されている第1配線層20および第2配線層25等の導体層自体をエッチングマスクとして機能させ、基材2のうち、第1配線層20および第2配線層25の維持に必要な領域を残すとともに、第1配線層20および第2配線層25が存在しない領域を、エッチング法によって除去する。この結果、基材2は、
図7に示すように、第1配線層20および第2配線層25を基材厚さ方向に投影したものと同様の形状に形成される。
【0068】
例えば、上記必要な領域としては、第1基材面11のうち第1配線層20が形成されている領域、第2基材面12のうち第2配線層25が形成されている領域等が挙げられる。また、基材2のうちエッチング法によって除去される領域としては、渦巻形状の第1配線層20および第2配線層25によって囲まれる内側の領域、これら第1配線層20および第2配線層25よりも外側の領域、第1基材面11上において隣り合う第1配線層20同士の間の領域、第2基材面12上において隣り合う第2配線層25同士の間の領域等が挙げられる。なお、上記第1配線層20同士の間の領域および上記第2配線層25同士の間の領域は、エッチングマスクによって覆う等の手法により、除去せず残してもよい。
【0069】
上記ステップS107の基材除去工程が行われた後、上述した導通部30および基材2の各表面を絶縁層によって覆う被覆工程が行われる(ステップS108)。ステップS108の被覆工程においては、導通部30の表面のうち、基材2の第1基材面11側の領域(例えば第1被覆層31の表面およびビア導体部33の上端面)と、基材2の露出領域(第1配線層20等の導体層が存在せず露出した第1基材面11等)とを、パリレン等の絶縁材料によって被覆する。これにより、
図7に示すように、基材2の露出領域を覆うとともに導通部30の第1基材面11側の表面を覆う第1絶縁層51が形成される。また、導通部30の表面のうち、基材2の第2基材面12側の領域(例えば第2被覆層32の表面およびビア導体部33の下端面)と、基材2の露出領域(第2配線層25等の導体層が存在せず露出した第2基材面12等)とを、パリレン等の絶縁材料によって被覆する。これにより、
図7に示すように、基材2の露出領域を覆うとともに導通部30の第2基材面12側の表面を覆う第2絶縁層52が形成される。以上のようにして、第1配線層20、第2配線層25および導通部30等を有するコイル部3が製造される。
【0070】
その後、
図8に示すように、コイル部3を基材2とともに磁性材料中に埋める封入工程が行われる(ステップS201)。ステップS201の封入工程においては、上述した基材2およびコイル部3を成形金型等の装置内にセットし、当該装置内に磁性材料を注入(圧入)して硬化する。これにより、
図8に示すように、コイル部3を基材2とともに埋める磁性材料115の成形体が作製される。この成形体において、磁性材料115は、コイル部3の第1配線層20および第2配線層25によって囲まれる内側領域、コイル部3の外側領域、コイル部3における第1絶縁層51および第2絶縁層52の各間の領域等に充填される。
【0071】
なお、上記磁性材料115としては、磁性粉体と絶縁樹脂とを混合したもの等が挙げられる。例えば、当該磁性粉体としては、鉄等の金属粉体、或いは鉄等の金属を含有する合金粉体が挙げられる。当該絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0072】
上記ステップS201の封入工程が行われた後、磁性材料115の成形体の外表面に外装コート5を設ける外装工程が行われる(ステップS202)。ステップS202の外装工程においては、磁性材料115の成形体に対し、X方向に沿ってダイシング加工を行い、これにより、コイル部3をY方向(
図8の紙面と直交する方向)に挟んで対向する一対の側面を当該成形体に形成する。その後、当該成形体の上記一対の側面、上面および下面にエポキシ樹脂等の絶縁樹脂をコーティングする。これにより、
図8に示すように、当該成形体の外表面に外装コート5が形成される。例えば、外装コート5は、当該成形体の外表面のうち、後述のステップS204の工程において第1外部電極6および第2外部電極7が形成される領域以外の領域、具体的には、上面と、Y方向に対向する一対の側面と、下面の一部とに設けられる。
【0073】
上記ステップS202の外装工程が行われた後、磁性材料115の成形体を個片化する個片化工程が行われる(ステップS203)。ステップS203の個片化工程においては、ダイシング加工により、磁性材料115の成形体を、
図8に示すようにコイル部3を内包する本体部4に個片化する。このとき、本体部4は、
図8に示すように、X方向(
図8の紙面左右方向)における一対の側面から第1配線層20の第1接続端部22と第2配線層25の第2接続端部27とを各々露出させた状態で、コイル部3を内包している。また、本体部4の上面と、Y方向に対向する一対の側面と、下面の一部とには、上記ステップS202の外装工程による外装コート5が設けられている。
【0074】
上記ステップS203の個片化工程が行われた後、コイル部3と電気的に接続する一対の外部電極を本体部4の外表面に設ける電極形成工程が行われる(ステップS204)。ステップS204の電極形成工程においては、本体部4の外表面のうち、外装コート5が形成されていない露出した領域に対し、銅、錫、ニッケル等の金属、或いは当該金属を含有する合金をめっきする。これにより、
図8に示すように、第1外部電極6および第2外部電極7が、当該露出した領域に形成される。例えば、第1外部電極6は、本体部4の外表面のうち、X方向の第1側面から下面の一部に亘る領域に、断面L字状に設けられ、この第1側面から露出する第1接続端部22と電気的に接続される。また、第2外部電極7は、本体部4の外表面のうち、X方向の第2側面から下面の一部に亘る領域に、断面L字状に設けられ、この第2側面から露出する第2接続端部27と電気的に接続される。なお、これら第1外部電極6と第2外部電極7との間には、
図8に示すように、外装コート5が介在している。これにより、第1外部電極6と第2外部電極7との間の絶縁性が確保されている。以上のようにして、本発明の実施形態1に係る電子部品1が製造される。
【0075】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る電子部品1は、基材2と、基材厚さ方向から見た平面視で環状のコイル部3と、を備えており、コイル部3は、基材厚さ方向の一端面である第1基材面11に形成されたコイルパターンを有する第1配線層20と、基材厚さ方向の他端面である第2基材面12に形成されたコイルパターンを有する第2配線層25と、これら第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続する導通部30と、を備えている。この電子部品1において、導通部30は、第1配線層20および第2配線層25の各表面を覆うとともに、基材2を貫通するビアホール13を通じて、第1基材面11側の第1配線層20と第2基材面12側の第2配線層25とを電気的に接続している。
【0076】
このため、第1配線層20および第2配線層25の各々における幅方向の両端部とビアホール13の開口縁との間にマージンを設ける必要がなく、容易にビアホール13の開口面積を増大できるとともに、ビアホール13の開口縁の全周に亘り、導通部30のビア導体部33をビアホール13の内部に十分充填することができる。これにより、ビアホール13を通じて第1基材面11側の第1配線層20と第2基材面12側の第2配線層25とを電気的に接続する導通部30のビア導体部33の断面積を、ビアホール13の開口面積に応じて増大できることから、これら第1配線層20と第2配線層25との間の電気抵抗(接続抵抗)を低減することができ、この結果、コイル部3の電気抵抗を低減することができる。
【0077】
また、本発明の実施形態1に係る電子部品1では、コイル部3が、第1配線層20の配線方向の一端部をなしてビアホール13の第1基材面11側の開口を囲む第1ビアパッド部21と、第2配線層25の配線方向の一端部をなしてビアホール13の第2基材面12側の開口を囲む第2ビアパッド部26と、を備えており、このコイル部3において、第1ビアパッド部21の最大幅を第1配線層20の配線幅以下にし、且つ、第2ビアパッド部26の最大幅を第2配線層25の配線幅以下にしている。
【0078】
このため、第1配線層20および第2配線層25の各々によって囲まれる内側領域、すなわちコイル部3の内側領域へ、第1ビアパッド部21および第2ビアパッド部26が延出する事態を防止することができる。これにより、コイル部3の内側領域の体積低減を防止できることから、当該内側領域に存在する磁性体(本体部4による磁性コア)の体積の低減を防止することができ、この結果、コイル部3の磁束損失を低減することができる。
【0079】
また、本発明の実施形態1に係る電子部品の製造方法では、下地層形成工程において、基材2の厚さ方向における一端側の第1基材面11と他端側の第2基材面12とに下地層を形成し、パターン形成工程において、第1基材面11の下地層(第1下地層41)と第2基材面12の下地層(第2下地層42)とにコイルパターンを形成し、第1めっき工程において、第1基材面11上で前記コイルパターンをなす第1下地層41の表面をめっきして、第1基材面11に通じる第1開口部23を有する第1配線層20を形成するとともに、第2基材面12上で前記コイルパターンをなす第2下地層42の表面をめっきして、基材厚さ方向に第1開口部23と重なる位置で第2基材面12に通じる第2開口部28を有する第2配線層を形成し、その後、ビアホール形成工程において、第1開口部23および第2開口部28の各内側で基材2を貫通するビアホール13を形成し、第2めっき工程において、第1配線層20および第2配線層25の各表面を覆う導体層(第1被覆層31および第2被覆層32)をめっきしつつ、前記導体層から成長したビア導体部33をビアホール13の内部に充填して、第1配線層20と第2配線層25とを電気的に接続するようにしている。
【0080】
このため、基材2のうち、第1配線層20および第2配線層25の各開口部(第1開口部23および第2開口部28)に囲まれる内側領域を狙って、ビアホール13を形成することができる。これにより、第1開口部23および第2開口部28とビアホール13との相対的な位置ずれを防止して、第1配線層20および第2配線層25の少なくとも一方がビアホール13の開口領域内へ入り込む事態を防止することができる。それ故、ビアホール13の開口縁の全周を、第1開口部23および第2開口部28の各内面の際まで拡張できることから、ビアホール13の開口面積を容易に増大できるとともに、ビアホール13の開口縁の全周に亘り、ビア導体部33をビアホール13の内部に十分充填することができる。この結果、ビア導体部33の断面積をビアホール13の開口面積に応じて増大できることから、ビア導体部33を介した第1配線層20と第2配線層25との間の電気抵抗を低減することができ、延いては、コイル部3の電気抵抗を低減することができる。
【0081】
また、第1基材面11上における第1配線層20の第1開口部23の位置と、第2基材面12上における第2配線層25の第2開口部28の位置とが決まった後に、基材2のうち第1開口部23および第2開口部28に囲まれる内側領域にビアホール13を形成しているので、第1配線層20のうち第1開口部23が形成される第1ビアパッド部21の最大幅を第1配線層20の配線幅以下にするとともに、第2配線層25のうち第2開口部28が形成される第2ビアパッド部26の最大幅を第2配線層25の配線幅以下にしても、ビアホール13の開口面積を、第1開口部23および第2開口部28の各開口面積に応じて容易に増大させることができる。これにより、第1ビアパッド部21および第2ビアパッド部26がコイル部3の内側領域へ延出する事態を防止して、コイル部3の内側領域の体積低減を防止できることから、当該内側領域に存在する磁性体の体積の低減を防止することができ、この結果、コイル部3の磁束損失を低減することができる。
【0082】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る電子部品について説明する。
図10は、本発明の実施形態2に係る電子部品の一構成例を示す断面模式図である。
図10には、上述した
図2と同様の視点から見た電子部品の断面構造が模式的に図示されている。
図11は、
図10に示す電子部品のF-F線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図10、11に示すように、本発明の実施形態2に係る電子部品1Aは、上述した実施形態1に係る電子部品1のコイル部3に代えてコイル部3Aを備え、第1外部電極6および第2外部電極7に代えて第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aを備え、さらに、電極用ビアホール14を基材2に備える。また、コイル部3Aは、上述した実施形態1に係るコイル部3の第1接続端部22および第2接続端部27に代えて第1接続端部22Aおよび第2接続端部27Aを備え、さらに、引き出し配線部61と、電極用導通部62と、第1内部端子63と、第2内部端子64と、絶縁層65とを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0083】
コイル部3Aにおいて、第1配線層20の第1接続端部22Aは、
図10、11に示すように、本体部4から露出せず、本体部4に内包されている。例えば、
図10に示すように、第1接続端部22Aは、引き出し配線部61、電極用導通部62および第1内部端子63を介して、本体部4の下面の第1外部電極6Aと電気的に接続される。なお、
図11では、説明の便宜上、第1絶縁層51の図示が省略されている。
【0084】
また、
図10、11に示すように、第1接続端部22Aには、電極用ビアホール14に通じる開口部15が形成されている。電極用ビアホール14は、基材2のうち、第1配線層20の第1接続端部22Aおよび引き出し配線部61の双方と基材厚さ方向に重なる所定領域内において、基材2を貫通するように形成されている。第1接続端部22Aは、
図10に示すように、電極用ビアホール14の第1基材面11側の開口を、この開口部15の内側に囲む。このとき、第1接続端部22Aの開口部15は、基材厚さ方向から見た平面視で、電極用ビアホール14の全域を含み、好ましくは、電極用ビアホール14と一致する。
【0085】
なお、上述した電極用ビアホール14および開口部15の各形状は、特に限定されず、例えば、基材厚さ方向から見た平面視で、円形であってもよいし、楕円形または角丸長方形等のオーバル形であってもよいし、矩形であってもよい。また、本実施形態2において、第1配線層20は、上述した第1接続端部22Aを備えること以外、上述した実施形態1の同様の構成を有する。
【0086】
また、コイル部3Aにおいて、第2配線層25の第2接続端部27Aは、
図10、11に示すように、本体部4から露出せず、本体部4に内包されている。例えば、
図10に示すように、第2接続端部27Aは、第2内部端子64を介して、本体部4の下面の第2外部電極7Aと電気的に接続される。なお、本実施形態2において、第2配線層25は、上記第2接続端部27Aを備えること以外、上述した実施形態1の同様の構成を有する。
【0087】
引き出し配線部61は、第1基材面11側の第1配線層20と本体部4の下面側の第1外部電極6Aとを電気的に接続するための導体層の一部である。詳細には、
図10に示すように、引き出し配線部61は、基材2の第2基材面12に形成された下地層(図示せず)上に金属めっきを行うことにより、第2配線層25と離間して第2基材面12から基材厚さ方向(
図10の紙面下方向)に延在するように形成される。なお、引き出し配線部61の下地層は、第2配線層25の下地層(
図6に示す第2下地層42)の一部である。なお、引き出し配線部61を構成する導体は、上述した第2配線層25と同様である。また、
図10、11に示すように、引き出し配線部61には、電極用ビアホール14に通じる開口部61aが形成されている。引き出し配線部61は、
図10に示すように、電極用ビアホール14の第2基材面12側の開口を、この開口部61aの内側に囲む。このとき、引き出し配線部61の開口部61aは、基材厚さ方向から見た平面視で、電極用ビアホール14の全域を含み、好ましくは、電極用ビアホール14と一致する。なお、引き出し配線部61の開口部61aの形状は、特に限定されず、例えば、上述した電極用ビアホール14および開口部15の各形状と同様であってもよい。
【0088】
電極用導通部62は、
図10、11に示すように、第1配線層20の第1接続端部22Aの表面と引き出し配線部61の表面とを覆うとともに、基材2の電極用ビアホール14を通じて、これら第1接続端部22Aと引き出し配線部61とを電気的に接続する。詳細には、
図10に示すように、第1接続端部22Aは、第1配線層20のうち、基材厚さ方向から見た平面視で引き出し配線部61と重なる接続端部である。電極用導通部62は、
図10、11に示すように、第1接続端部22Aの表面を覆う第1被覆層と、引き出し配線部61の表面を覆う第2被覆層と、電極用ビアホール14の内部に充填されるビア導体部とによって構成される。なお、第1接続端部22Aおよび引き出し配線部61の各表面には、Z方向と交差する面と、X方向またはY方向と交差する面とが含まれる。
【0089】
電極用導通部62の第1被覆層は、
図10、11に示すように第1配線層20の表面を覆う第1被覆層31の一部である。電極用導通部62の第2被覆層は、
図10に示すように第2配線層25の表面を覆う第2被覆層32と同様に形成される。電極用導通部62のビア導体部は、上述した第1被覆層31および第2被覆層32の形成とともに、基材2の電極用ビアホール14の内部に金属めっきを充填することにより、
図10に示すように、電極用導通部62の第1被覆層および第2被覆層の双方と一体化するよう形成される。すなわち、電極用導通部62のビア導体部は、第1接続端部22Aの開口部15を埋める導体部と、引き出し配線部61の開口部61aを埋める導体部と、電極用ビアホール14を埋める導体部とによって構成される。このような電極用導通部62のビア導体部の形成は、上述したビアホール13内のビア導体部33の形成に並行して進行する。
【0090】
なお、電極用導通部62のビア導体部は、第1接続端部22Aの表面から成長した金属めっきによって構成されてもよいし、引き出し配線部61の表面から成長した金属めっきによって構成されてもよいし、これら2つの金属めっきの組み合わせによって構成されてもよい。また、電極用導通部62を構成する導体としては、例えば、銅や鉄等の金属、或いは当該金属を一種類以上含む合金が挙げられる。上記金属めっきの形成し易さの観点から、電極用導通部62は、上述した導通部30と同様に、銅を含む導体層であることが好ましい。
【0091】
第1内部端子63は、第1基材面11側の第1配線層20と本体部4の下面側の第1外部電極6Aとを電気的に接続するための導体層の一部である。詳細には、
図10に示すように、第1内部端子63は、引き出し配線部61の表面に形成された電極用導通部62を下地層にして金属めっきを行うことにより、電極用導通部62から基材厚さ方向(
図10の紙面下方向)に延在するように形成される。この第1内部端子63の延在端部(下端部)は、本体部4の下面から露出する。このような第1内部端子63は、
図10に示すように、電極用導通部62を介して、本体部4内の第1配線層20と本体部4の下面の第1外部電極6Aとを電気的に接続する。
【0092】
第2内部端子64は、第2基材面12側の第2配線層25と本体部4の下面側の第2外部電極7Aとを電気的に接続するための導体層の一部である。詳細には、
図10に示すように、第2内部端子64は、第2配線層25の表面に形成された導通部30の第2被覆層32を下地層にして金属めっきを行うことにより、この第2被覆層32から基材厚さ方向(
図10の紙面下方向)に延在するように形成される。この第2内部端子64の延在端部(下端部)は、上述した第1内部端子63と同様に、本体部4の下面から露出する。すなわち、コイル部3Aは、第1内部端子63および第2内部端子64の各延在端部を本体部4の下面から露出させた態様で、本体部4に内包されている。このような第2内部端子64は、
図10に示すように、上述した第1接続端部22Aと対をなす第2配線層25の第2接続端部27Aの表面を覆う導通部30の第2被覆層32を介して、本体部4内の第2配線層25と本体部4の下面の第2外部電極7Aとを電気的に接続する。
【0093】
なお、上述した第1内部端子63および第2内部端子64の各々を構成する導体は、上述した電極用導通部62と同様である。また、第1内部端子63および第2内部端子64は、例えば
図10に示すように、コイル部3側から本体部4の下面側に向かって狭まるテーパ状をなす錐台状に形成されてもよいし、コイル部3側から本体部4の下面側に向かって拡がるテーパ状をなす錐台状に形成されてもよいし、円柱または角柱等の柱状に形成されてもよい。
【0094】
絶縁層65は、
図10に示すように、電極用導通部62、第1内部端子63および第2内部端子64の各表面を覆う。これにより、絶縁層65は、電極用導通部62、第1内部端子63および第2内部端子64と本体部4との間を絶縁する。なお、絶縁層65の構成材料は、上述した第1絶縁層51および第2絶縁層52と同様である。
【0095】
第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aは、
図10に示すように、本体部4の下面に設けられ、当該本体部4内のコイル部3Aと電気的に接続される一対の外部電極である。第1外部電極6Aは、
図10に示すように、本体部4の下面(Z方向の一端面)のうち、第1内部端子63の延在端部の露出領域を含む領域、例えば、X方向の第1側面の下端部から所定の距離を有する第1下面領域に設けられる。第1外部電極6Aは、本体部4の第1下面領域に露出する第1内部端子63を介して、第1配線層20の第1接続端部22Aと電気的に接続される。また、第2外部電極7Aは、
図10に示すように、本体部4の下面のうち、第2内部端子64の延在端部の露出領域を含む領域、例えば、X方向の第2側面の下端部から所定の距離を有する第2下面領域に、第1外部電極6Aと対をなして離間するよう設けられる。第2外部電極7Aは、本体部4の第2下面領域に露出する第2内部端子64を介して、第2配線層25の第2接続端部27Aと電気的に接続される。なお、第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aの各々を構成する導体は、上述した実施形態1の第1外部電極6および第2外部電極7と同様である。
【0096】
なお、本実施形態2において、外装コート5は、上述した本体部4の外表面のうち、第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aが設けられる各下面領域以外の領域を覆う。例えば、外装コート5は、
図10、11に示すように、本体部4の上面および側面の全領域と、本体部4の下面のうち、上述した第1下面領域および第2下面領域を除く下面領域(第1下面領域と第2下面領域との間の下面領域等)とに設けられる。
【0097】
つぎに、本発明の実施形態2に係る電子部品1Aの製造方法について説明する。
図12は、本発明の実施形態2に係るコイル部の製造方法の一例を示すフロー図である。
図12には、このコイル部3Aの製造方法のうち、第1配線層20および第2配線層25の各コイルパターンの形成から第1内部端子63および第2内部端子64の形成までの各工程が図示されている。
図13は、本発明の実施形態2に係るコイル部を備えた電子部品の製造方法の一例を示すフロー図である。本発明の実施形態2では、まず、
図7、12に示すステップS101~S108の各工程を順次行うことにより、上述したコイル部3A(
図10、11参照)が製造され、その後、
図13に示すステップS201~S204の各工程を順次行うことにより、上述したコイル部3Aを備えた電子部品1Aが製造される。
【0098】
詳細には、まず、コイル部3Aを製造するために、実施形態1と同様にステップS101の下地層形成工程を行い、その後、ステップS102のパターン形成工程において、基材2における第1基材面11の第1下地層41と第2基材面12の第2下地層42とにコイルパターンを形成する。このとき、
図12に示す開口部15および第1接続端部22Aを形成するためのパターンが第1基材面11側の第1レジスト101(
図7参照)に含まれるように、第1基材面側の第1コイルパターンを形成する。また、
図12に示す第2接続端部27Aおよび引き出し配線部61を形成するためのパターンが第2基材面12側の第2レジスト102(
図7参照)に含まれるように、第2基材面12側の第2コイルパターンを形成する。
【0099】
なお、上記第1コイルパターンは、開口部15および第1接続端部22Aの各パターンを含むこと以外、上述した実施形態1と同様である。上記第2コイルパターンは、第2接続端部27Aおよび引き出し配線部61の各パターンを含むこと以外、上述した実施形態1と同様である。また、上記第1コイルパターンおよび第2コイルパターンの形成方法自体は、上述した実施形態1と同様である。
【0100】
上記ステップS102のパターン形成工程を行った後、ステップS103の第1めっき工程およびステップS104の除去工程を順次行う。これにより、
図12に示すように、第1接続端部22Aを有する第1配線層20を、第1基材面11側の第1下地層41上に形成するとともに、第2接続端部27Aを有する第2配線層25と、当該第2配線層25から離間した引き出し配線部61とを、第2基材面12側の第2下地層42上に形成する。この第1接続端部22Aには、
図12に示すように、開口部15が形成されている。また、引き出し配線部61には、
図12に示すように、基材厚さ方向(
図12の紙面上下方向)に第1接続端部22Aの開口部15と重なる開口部61aが形成されている。なお、第1配線層20の構成は、開口部15が形成された第1接続端部22Aを有すること以外、上述した実施形態1と同様である。第2配線層25の構成は、第2接続端部27Aを有すること以外、上述した実施形態1と同様である。
【0101】
本実施形態2において、ステップS103の第1めっき工程で行われるめっき処理自体は、上述した実施形態1と同様である、また、ステップS104の除去工程は、上述した実施形態1と同様である。
【0102】
上記ステップS103の第1めっき工程およびステップS104の除去工程が順次行われた後、ステップS105のビアホール形成工程を行い、これにより、上述した実施形態1と同様のビアホール13を基材2に形成するとともに、
図12に示すように、電極用ビアホール14を基材2に形成する。このとき、電極用ビアホール14は、
図12に示すように、第1接続端部22Aの開口部15および引き出し配線部61の開口部61aの各内側で基材2を貫通するように形成される。このように形成された電極用ビアホール14は、
図12に示すように、これらの開口部15および開口部61aの各内径と同じ内径を有して、開口部15および開口部61aに通じる一連の貫通孔をなすことが好ましい。なお、電極用ビアホール14は、上述したビアホール13と同様に、レーザ加工法によって基材2に形成されてもよいし、エッチング法によって基材2に形成されてもよい。
【0103】
上記ステップS105のビアホール形成工程が行われた後、
図12に示すように、ステップS106の第2めっき工程を行い、これにより、上述した実施形態1と同様に導通部30を形成するとともに、第1接続端部22Aおよび引き出し配線部61に電極用導通部62を形成する。このとき、第1接続端部22Aおよび引き出し配線部61の各表面を覆う導体層をめっきしつつ、当該導体層から成長したビア導体部を電極用ビアホール14の内部に充填し、これにより、第1配線層20の第1接続端部22Aと引き出し配線部61とを電気的に接続する電極用導通部62が形成される。
【0104】
なお、電極用導通部62のめっき処理自体は、上述した実施形態1の導通部30と同様である。また、本実施形態2の導通部30において、第1被覆層31は、
図12に示すように、第1配線層20のうち第1接続端部22A以外の領域の表面を覆うとともに、第1接続端部22Aの表面の電極用導通部62と一体化するように形成される。第2被覆層32は、
図12に示すように、第2接続端部27Aを含む第2配線層25の表面を覆うとともに、引き出し配線部61の表面の電極用導通部62とは離間するように形成される。
【0105】
上記ステップS106の第2めっき工程が行われた後、
図12に示すように、ステップS106aの内部端子形成工程を行い、これにより、電極用導通部62を介して第1配線層20の第1接続端部22Aと電気的に接続される第1内部端子63と、導通部30を介して第2配線層25の第2接続端部27Aと電気的に接続される第2内部端子64とを形成する。
【0106】
ステップS106aの内部端子形成工程においては、引き出し配線部61上の電極用導通部62を下地層にして金属めっきを行い、これにより、この下地層(電極用導通部62)から基材厚さ方向(
図12の紙面下方向)に延在するように第1内部端子63が形成される。これに並行して、第2配線層25上の導通部30(第2被覆層32)を下地層にして金属めっきを行い、これにより、この下地層(第2被覆層32)から基材厚さ方向(上記第1内部端子63と同じ方向)に延在するように第2内部端子64が形成される。なお、これら第1内部端子63および第2内部端子64を形成するためのめっき処理自体は、上述した電極用導通部62と同様である。
【0107】
上記ステップS106aの内部端子形成工程が行われた後、上述した実施形態1と同様の基材除去工程(
図7のステップS107参照)を行い、これにより、基材2のうち、第1配線層20および第2配線層25の維持に必要な領域を残し、当該領域以外の領域を除去する。その後、上述した実施形態1と同様の被覆工程(
図7のステップS108参照)を行い、これにより、上述した導通部30の第1基材面11側の表面等を覆う第1絶縁層51と、上述した第2基材面12側の表面等を覆う第2絶縁層52とが形成される。これに並行して、
図12に示す電極用導通部62、第1内部端子63および第2内部端子64の各表面を覆う絶縁層65(
図10参照)を形成する。なお、絶縁層65の形成方法自体は、上述した第1絶縁層51および第2絶縁層52と同様である。
【0108】
以上のようにして、本実施形態2のコイル部3A(
図10、11参照)が製造される。その後、
図13に示すように、ステップS201の封入工程、ステップS202の外装工程およびステップS203の個片化工程が順次行われる。本実施形態2において、ステップS201の封入工程は、磁性材料中に封入するコイル部が実施形態1のコイル部3から実施形態2のコイル部3Aに置き換わったこと以外、上述した実施形態1と同様である。
【0109】
また、本実施形態2において、ステップS202の外装工程では、コイル部3Aを内包する磁性材料の成形体の外表面のうち、上面と、X方向(
図13の紙面左右方向)に対向する一対の側面と、Y方向(
図13の紙面と直交する方向)に対向する一対の側面と、下面の一部とに外装コート5が設けられる。この外装コート5の形成方法自体は、上述した実施形態1と同様である。
【0110】
また、本実施形態2において、ステップS203の個片化工程では、上記磁性材料の成形体を、
図13に示すように、コイル部3Aを内包する本体部4に個片化する。このとき、本体部4は、
図13に示すように、その下面から第1内部端子63および第2内部端子64の各延在端部を露出させた状態で、コイル部3Aを内包している。また、本体部4の上面と、X方向に対向する一対の側面と、Y方向に対向する一対の側面と、下面の一部とには、上記ステップS202の外装工程による外装コート5が設けられている。なお、上記磁性材料の成形体の個片化方法自体は、上述した実施形態1と同様である。
【0111】
上記ステップS203の個片化工程が行われた後、
図13に示すように、ステップS204の電極形成工程を行い、これにより、コイル部3Aと電気的に接続する一対の外部電極を本体部4の外表面に設ける。
【0112】
本実施形態2において、ステップS204の電極形成工程では、
図13に示すように、本体部4の外表面のうち、外装コート5が形成されていない露出した下面領域に、第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aが形成される。
【0113】
第1外部電極6Aは、本体部4の下面のうち、X方向の一端側の側面から所定の幅を有する第1下面領域に設けられる。この第1下面領域には、
図13に示すように、コイル部3Aの第1内部端子63の延在端部が露出している。第1外部電極6Aは、この第1下面領域から露出する第1内部端子63を介して、第1配線層20の第1接続端部22Aと電気的に接続される。第2外部電極7Aは、本体部4の下面のうち、X方向の他端側の側面から所定の幅を有する第2下面領域に設けられる。この第2下面領域には、
図13に示すように、コイル部3Aの第2内部端子64の延在端部が露出している。第2外部電極7Aは、この第2下面領域から露出する第2内部端子64を介して、第2配線層25の第2接続端部27Aと電気的に接続される。
【0114】
なお、これら第1外部電極6Aと第2外部電極7Aとの間には、
図13に示すように、外装コート5が介在している。これにより、第1外部電極6Aと第2外部電極7Aとの間の絶縁性が確保されている。以上のようにして、本発明の実施形態2に係る電子部品1Aが製造される。
【0115】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る電子部品1Aは、第2配線層25と離間して第2基材面12から基材厚さ方向に延在する引き出し配線部61と、第1配線層20の第1接続端部22Aおよび引き出し配線部61の各表面を覆うとともに、基材2を貫通する電極用ビアホール14を通じて、第1接続端部22Aと引き出し配線部61とを電気的に接続する電極用導通部62と、電極用導通部62を介して第1配線層20と第1外部電極6Aとを電気的に接続する第1内部端子63と、第2配線層25の第2接続端部27Aの表面を覆う導通部30を介して、第2配線層25と第2外部電極7Aとを電気的に接続する第2内部端子64と、を備え、その他を実施形態1と同様に構成している。
【0116】
このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、本体部4の下面に互いに離間して設けられた第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aと、本体部4に内包されたコイル部3Aの第1接続端部22Aおよび第2接続端部27Aとを、それぞれ電気的に接続することができる。したがって、上記コイル部3Aの第1接続端部22Aおよび第2接続端部27Aと電気的に接続する一対の外部電極と、電子部品1Aを回路基板へ実装するための一対の外部電極とを、第1外部電極6Aおよび第2外部電極7Aで兼ねることができる。これにより、上記一対の外部電極を本体部4の側面に設ける必要が無くなり、この結果、電子部品1Aを回路基板へ実装する際に形成される半田フィレットを、本体部4の側面に一対の外部電極が存在する場合に比べて小型化できるから、電子部品1Aの実装面積を低減することができる。
【0117】
(変形例)
つぎに、本発明の実施形態1に係る電子部品の変形例について説明する。
図14は、本発明の実施形態1の変形例に係る電子部品の一構成例を示す断面模式図である。
図14示すように、本変形例に係る電子部品1Bは、上述した実施形態1に係る電子部品1の基材2に代えて複数層の基材(例えば3層の基材2-1~2-3)を備え、渦巻形状(スパイラル状)のコイル部3に代えて積層型のコイル部3Bを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0118】
基材2-1~2-3は、積層型のコイル部3Bが形成される複数層の基材の一例である。例えば、
図14に示すように、基材2-1~2-3は、コイル部3Bの各配線層を介して、Z方向(基材2-1~2-3の各々の厚さ方向)に積層するように配置される。このとき、基材2-1は第1配線層20Bと中間配線層29-1との間に介在し、基材2-2は中間配線層29-1と中間配線層29-2との間に介在し、基材2-3は中間配線層29-2と第2配線層25Bとの間に介在する。すなわち、基材2-1の厚さ方向の両端面のうち、第1基材面は第1配線層20Bが存在する基材面であり、第2基材面は中間配線層29-1が存在する基材面である。基材2-2の厚さ方向の両端面のうち、第1基材面は中間配線層29-1が存在する基材面であり、第2基材面は中間配線層29-2が存在する基材面である。基材2-3の厚さ方向の両端面のうち、第1基材面は中間配線層29-2が存在する基材面であり、第2基材面は第2配線層25Bが存在する基材面である。
【0119】
また、
図14に示すように、基材2-1は、第1配線層20Bと中間配線層29-1とを電気的に接続するためのビアホール13-1を有する。基材2-2は、中間配線層29-1と中間配線層29-2とを電気的に接続するためのビアホール13-2を有する。基材2-3は、中間配線層29-2と第2配線層25Bとを電気的に接続するためのビアホール13-1を有する。例えば、ビアホール13-1~13-3は、
図14に示すように、基材2-1~2-3の厚さ方向から見た平面視で互いに重ならないように形成されている。
【0120】
なお、基材2-1~2-3の各々の構成材料は、上述した実施形態1の基材2と同様である。ビアホール13-1~13-3の各々の構造は、上述した実施形態1のビアホール13と同様である。また、コイル部3Bが形成される基材の積層数は、
図14に示す基材2-1~2-3の積層数(3層)に限らず、2層以上であってもよい。
【0121】
コイル部3Bは、基材2-1~2-3の厚さ方向から見た平面視で環状をなす導体ユニットであり、
図14に示すように、本体部4の内部に配置される。詳細には、
図14に示すように、コイル部3Bは、複数層の基材を介して当該基材の厚さ方向に積層される複数の配線層を備える積層型のコイル部である。例えば、コイル部3Bは、上記複数の配線層として、第1接続端部22Bを有する第1配線層20Bと、第2接続端部27Bを有する第2配線層25Bと、これら第1配線層20Bと第2配線層25Bとの間に積層される中間配線層29-1、29-2と、を備える。
【0122】
第1配線層20Bは、基材2-1の第1基材面に形成されたコイルパターンを有する導体層である。例えば、第1配線層20Bのコイルパターンは、基材2-1の厚さ方向(
図14の紙面上下方向)から見た平面視で、電子部品1BのZ方向に平行な中心軸(図示せず)の周りに0.5ターン以上1ターン以下、巻回した環状をなす。このとき、第1配線層20Bの配線方向における両端部のうち、一端部は第1外部電極6と電気的に接続される第1接続端部22Bであり、他端部はビアホール13-1に対応するビアパッド部である。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21と同様である。当該ビアパッド部とビアホール13-1との関係は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21とビアホール13との関係と同様である。
【0123】
中間配線層29-1は、基材2-1の第2基材面と基材2-2の第1基材面との間に介在する導体層である。例えば、中間配線層29-1のコイルパターンは、基材2-1の厚さ方向から見た平面視で、上述した第1配線層20Bと重なる環状をなす。このとき、中間配線層29-1の配線方向の一端部は、
図14に示すように、基材2-1の厚さ方向から見た平面視でビアホール13-1と重なるビアパッド部である。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26と同様であり、当該ビアパッド部とビアホール13-1との関係は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26とビアホール13との関係と同様である。また、中間配線層29-1の配線方向の他端部は、
図14に示すように、基材2-2の厚さ方向から見た平面視でビアホール13-2と重なるビアパッド部である。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21と同様であり、当該ビアパッド部とビアホール13-2との関係は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21とビアホール13との関係と同様である。
【0124】
中間配線層29-2は、基材2-2の第2基材面と基材2-3の第1基材面との間に介在する導体層である。例えば、中間配線層29-2のコイルパターンは、基材2-2の厚さ方向から見た平面視で、上述した中間配線層29-1と重なる環状をなす。このとき、中間配線層29-2の配線方向の一端部は、
図14に示すように、基材2-2の厚さ方向から見た平面視でビアホール13-2と重なるビアパッド部である。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26と同様であり、当該ビアパッド部とビアホール13-2との関係は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26とビアホール13との関係と同様である。また、中間配線層29-2の配線方向の他端部は、
図14に示すように、基材2-3の厚さ方向から見た平面視でビアホール13-3と重なるビアパッド部である。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21と同様であり、当該ビアパッド部とビアホール13-2との関係は、上述した実施形態1の第1ビアパッド部21とビアホール13との関係と同様である。
【0125】
第2配線層25Bは、基材2-3の第2基材面に形成されたコイルパターンを有する導体層である。例えば、第2配線層25Bのコイルパターンは、基材2-3の厚さ方向から見た平面視で、電子部品1BのZ方向に平行な中心軸の周りに0.5ターン以上1ターン以下、巻回した環状をなす。このとき、第2配線層25Bの配線方向における両端部のうち、一端部はビアホール13-3に対応するビアパッド部であり、他端部は第2外部電極7と電気的に接続される第2接続端部27Bである。当該ビアパッド部の構成は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26と同様である。当該ビアパッド部とビアホール13-3との関係は、上述した実施形態1の第2ビアパッド部26とビアホール13との関係と同様である。
【0126】
特に図示しないが、上述した基材2-1~2-3の各基材面とコイル部3Bの各配線層(第1配線層20B、中間配線層29-1、29-2および第2配線層25B)との間には、コイルパターン状に形成された下地層が介在している。コイル部3Bの各配線層は、当該下地層上に金属めっきを行うことによって形成される。なお、コイル部3Bの各配線層を構成する導体は、上述した実施形態1の第1配線層20および第2配線層25と同様である。
【0127】
なお、コイル部3Bが備える配線層のターン数(巻き数)および配線幅は、電子部品1Bに要求される電気抵抗およびインダクタンス等の特性に応じて設定される。このようなコイル部3Bの配線層の積層数は、
図14に示す4層に限定されず、2層以上であってもよい。基材に加わる応力の低減の観点から、コイル部3Bの配線層の積層数は、基材の厚さ方向の両端面に形成される2層の配線層を単位として、偶数層であることが好ましい。
【0128】
また、
図14に示すように、コイル部3Bは、コイル部3Bの各配線層同士を電気的に接続する導通部30Bを備える。導通部30Bは、第1配線層20Bおよび中間配線層29-1の各表面を覆うとともに、基材2-1のビアホール13-1を通じて、これら第1配線層20Bと中間配線層29-1とを電気的に接続する。また、導通部30Bは、中間配線層29-1、29-2の各表面を覆うとともに、基材2-2のビアホール13-2を通じて、これら中間配線層29-1、29-2同士を電気的に接続する。また、導通部30Bは、中間配線層29-2および第2配線層25Bの各表面を覆うとともに、基材2-3のビアホール13-3を通じて、これら中間配線層29-2と第2配線層25Bとを電気的に接続する。
【0129】
上記のような導通部30Bは、
図14に示すように、ビアホール13-1の内部にビア導体部33-1を有し、ビアホール13-2の内部にビア導体部33-2を有し、ビアホール13-3の内部にビア導体部33-3を有する。これらのビア導体部33-1~33-3の各々は、上述した実施形態1のビア導体部33と同様である。なお、導通部30Bによる各配線層同士の電気的な接続構造は、上述した実施形態1の導通部30と同様である。また、導通部30Bを構成する導体は、上述した実施形態1の導通部30と同様である。特に図示しないが、導通部30Bおよび基材2-1~2-3の各表面には、上述した実施形態1の第1絶縁層51および第2絶縁層52と同様の絶縁層が形成されている。
【0130】
以上、説明したように、本変形例では、電子部品1Bの本体部4に内包するコイル部を積層型のコイル部3Bとし、このコイル部3Bの各配線層同士を、基材2-1~2-3のビアホール13-1~13-3の各々を介して導通部30Bで電気的に接続するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、積層型のコイル部3Bを備える電子部品1Bの場合も、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0131】
なお、上述した実施形態1、2では、電子部品の本体内部に内包するコイル部として、基材の厚さ方向の両端面に渦巻形状の配線層を備える2層構造のコイル部を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る電子部品のコイル部は、基材の厚さ方向の一端面に渦巻形状の配線層を備える1層構造のコイル部であってもよいし、基材の厚さ方向の両端面に形成された渦巻形状の配線層が当該厚さ方向に並ぶ複数層構造のコイル部であってもよい。特に、基材に加わる応力の低減の観点から、当該コイル部が備える配線層の層数は、基材の厚さ方向の両端面に形成される2層の配線層を単位として、偶数層であることが好ましい。
【0132】
また、上述した実施形態2では、ステップS106aの内部端子形成工程によって第1内部端子63および第2内部端子64を形成した後に、コイル部3Aを磁性材料115の成形体(本体部4)の内部に封入していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、コイル部3Aを磁性材料115の成形体の内部に封入した後、当該成形体の下面から電極用導通部62に通じる第1開口穴と、第2接続端部27Aの表面の導通部30(第2被覆層32)に通じる第2開口穴とを、ドリル等の装置によって形成し、これら第1開口穴および第2開口穴の各内部をめっきすることにより、第1内部端子63および第2内部端子64を形成してもよい。また、コイル部3Aに第1内部端子63および第2内部端子64を設けず、第1接続端部22Aと電気的に接続された電極用導通部62と、第2接続端部27Aの表面に形成された第2被覆層32とを本体部4の下面から露出させて、この電極用導通部62の露出部と第1外部電極6Aとを電気的に接続し、この第2被覆層32の露出部と第2外部電極7Aとを電気的に接続してもよい。
【0133】
また、上述した実施形態1、2では、電子部品の本体部に内包するコイル部の配線パターンとして、
図4、5に示す渦巻形状のコイルパターンを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明におけるコイル部が有するコイルパターンは、基材の厚さ方向から見た平面視で、円形状のパターンであってもよいし、楕円形または角丸長方形等のオーバル形状のパターンであってもよいし、矩形状のパターンであってもよい。
【0134】
なお、本発明は、上述した実施形態1、2および変形例によって限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2または変形例に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1、1A、1B 電子部品
2、2-1~2-3 基材
3、3A、3B コイル部
4 本体部
5 外装コート
6、6A 第1外部電極
7、7A 第2外部電極
11 第1基材面
12 第2基材面
13、13-1~13-3 ビアホール
14 電極用ビアホール
15 開口部
20、20B 第1配線層
21 第1ビアパッド部
22、22A、22B 第1接続端部
23 第1開口部
25、25B 第2配線層
26 第2ビアパッド部
27、27A、27B 第2接続端部
28 第2開口部
29-1、29-2 中間配線層
30、30B 導通部
31 第1被覆層
32 第2被覆層
33、33-1~33-3 ビア導体部
41 第1下地層
42 第2下地層
51 第1絶縁層
52 第2絶縁層
61 引き出し配線部
61a 開口部
62 電極用導通部
63 第1内部端子
64 第2内部端子
65 絶縁層
101 第1レジスト
102 第2レジスト
111 第1コイルパターン
111a 第1開口パターン
112 第2コイルパターン
112a 第2開口パターン
115 磁性材料