(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012329
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20250117BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20250117BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20250117BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/2475
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115088
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 周治
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA28
5H126BB06
5H126FF09
5H126FF10
(57)【要約】
【課題】ユーザごとに異なる搭載要求に対応できる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック1は、複数の燃料電池セルを積層したセル積層体3と、セル積層体3を収容するケース2とを備える。セル積層体3は、正極端子31と、負極端子32と、正極バスバー33と、負極バスバー34とを有する。正極バスバー33及び負極バスバー34は、一端部が正極端子31又は負極端子32に接続され、他端部が互いに隣接するようにアッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置に引き出される。ケース2は、上記角部の中央位置におけるアッパーカバー22に上面開口部26を有し、上記角部の中央位置における第1側壁23に側面開口部25を有する。正極バスバー33及び負極バスバー34は、上面開口部26及び側面開口部25を介してケース外部とそれぞれ接続可能とされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを積層したセル積層体と、前記セル積層体を収容するケースと、を備える燃料電池スタックであって、
前記セル積層体は、正極端子と、負極端子と、正極バスバーと、負極バスバーと、を有し、
前記正極バスバー及び前記負極バスバーは、一端部が前記正極端子又は前記負極端子に接続されており、他端部が互いに隣接するように前記ケースの天板と側壁とからなる角部の中央位置に引き出されており、
前記ケースは、前記角部の中央位置における前記天板に第1開口部を有し、前記角部の中央位置における前記側壁に第2開口部を有し、
前記正極バスバー及び前記負極バスバーは、前記第1開口部及び前記第2開口部を介して前記ケースの外部とそれぞれ接続可能とされることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記正極バスバー及び前記負極バスバーのそれぞれの他端部に固定され、前記セル積層体の角部に対向して前記セル積層体の変位を規制する規制部を備える請求項1に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野として、例えば特許文献1に記載されるものがある。特許文献1に記載の燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを積層したセル積層体と、セル積層体の一端に位置する第1電極ターミナルと、セル積層体の他端に位置する第2電極ターミナルと、第1電極ターミナルと同じ側の端に位置する第1接続端子及び第2接続端子と、第2電極ターミナルと第2接続端子とを導通する導電部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池スタックを販売する場合において、ユーザによって異なる搭載要求が求められている。例えば、ユーザ側の接続先ユニットを燃料電池スタックの上方に搭載する要求もあれば、燃料電池スタックの側方(例えば、左側又は右側)に搭載する要求もある。しかし、上述の燃料電池スタックは、このような搭載要求に対応し切れない問題がある。
【0005】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、ユーザごとに異なる搭載要求に対応できる燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを積層したセル積層体と、前記セル積層体を収容するケースと、を備える燃料電池スタックであって、前記セル積層体は、正極端子と、負極端子と、正極バスバーと、負極バスバーと、を有し、前記正極バスバー及び前記負極バスバーは、一端部が前記正極端子又は前記負極端子に接続されており、他端部が互いに隣接するように前記ケースの天板と側壁とからなる角部の中央位置に引き出されており、前記ケースは、前記角部の中央位置における前記天板に第1開口部を有し、前記角部の中央位置における前記側壁に第2開口部を有し、前記正極バスバー及び前記負極バスバーは、前記第1開口部及び前記第2開口部を介して前記ケースの外部とそれぞれ接続可能とされることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る燃料電池スタックでは、角部の中央位置における天板に第1開口部、角部の中央位置における側壁に第2開口部がそれぞれ設けられるので、これらの開口部を介してケースの外部から正極バスバー及び負極バスバーにそれぞれ接続することが可能になる。従って、燃料電池スタックの上方又は/及び側方からユーザ側の接続先ユニットを搭載することができるので、ユーザごとに異なる搭載要求に対応することができる。
【0008】
本発明に係る燃料電池スタックにおいて、前記正極バスバー及び前記負極バスバーのそれぞれの他端部に固定され、前記セル積層体の角部に対向して前記セル積層体の変位を規制する規制部を備えることが好ましい。このようにすれば、正極バスバー及び負極バスバーの剛性を利用しセル積層体の変位を規制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザごとに異なる搭載要求に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る燃料電池スタックの構造を示す斜視図である。
【
図2】アッパーカバーを外した状態の燃料電池スタックを示す平面図である。
【
図3】(a)は上面開口部から見た正極バスバー、負極バスバー及び端子台を示す平面図であり、(b)は側面開口部から見た正極バスバー、負極バスバー及び端子台を示す平面図である。
【
図4】(a)は接続先ユニットの搭載パターン1を示す模式断面図あり、(b)は接続先ユニットの搭載パターン2を示す模式断面図である。
【
図5】(a)は接続先ユニットの搭載パターン3を示す模式断面図あり、(b)は接続先ユニットの搭載パターン4を示す模式断面図である。
【
図6】端子台とセル積層体の角部との位置関係を示す拡大模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る燃料電池スタックの実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複説明を省略する。また、以下の説明において、燃料電池セルの積層方向を「積層方向X」、燃料電池セル内のガス流れ方向を「左右方向Y」、積層方向X及び左右方向Yに直交する方向を「上下方向Z」とする。
【0012】
図1は実施形態に係る燃料電池スタックの構造を示す斜視図であり、
図2はアッパーカバーを外した状態の燃料電池スタックを示す平面図である。
図3(a)は上面開口部から見た正極バスバー、負極バスバー及び端子台を示す平面図であり、
図3(b)は側面開口部から見た正極バスバー、負極バスバー及び端子台を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の燃料電池スタック1は、箱状のケース2と、ケース2の内部に収容されたセル積層体3とを備えている。
【0013】
セル積層体3は、複数の燃料電池セルを一定の方向に積層してなるセルスタックであり、固体高分子電解質型燃料電池を構成する。図示しないが、燃料電池セルは、高分子電解質膜がアノード電極及びカソード電極により挟持されてなる膜/電極接合体と、該膜/電極接合体を両側から挟み込む一対のセパレータとを有する。そして、燃料電池セルは、カソード電極側のセパレータを介して供給された空気中の酸素ガスと、アノード電極側のセパレータを介して供給された水素ガスとの酸化還元反応により発電する。
【0014】
ケース2は、例えばアルミニウムなどの金属材料によって矩形箱状に形成されている。このケース2は、有底角筒状のケース本体21と、ケース本体21の開口を塞ぐアッパーカバー22とを有する。アッパーカバー22は、特許請求の範囲に記載の「天板」に相当するものであり、ボルト締めでケース本体21と固定されている。ケース本体21は、底板部と、積層方向Xに沿って延在するとともに互いに対向する一対の第1側壁23と、左右方向Yに沿って延在するとともに互いに対向する一対の第2側壁24とで構成されている。
【0015】
図1に示すように、ケース2の天板及び側壁には、隣接する一対の開口部が設けられている。より具体的には、アッパーカバー22には、後述する正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部や端子台4の一部を露出するための上面開口部(第1開口部)26が形成されている。第1側壁23には、正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部や端子台4の一部を露出するための側面開口部(第2開口部)25が形成されている。上面開口部26は、アッパーカバー22のうち、第1側壁23とで構成する角部の中央位置に形成されている。それと対応するように、側面開口部25は、第1側壁23のうち、アッパーカバー22とで構成する角部の中央位置に形成されている。そして、上面開口部26は上面蓋部材28、側面開口部25は側面蓋部材27によってそれぞれ塞がれている。
【0016】
上面開口部26及び側面開口部25は、共通の形状を有するように形成されてもよく、異なる形状を有するように形成されてもよい。共通の形状を有する場合は、これらの開口部の加工作業を共通化でき、且つ、開口部を塞ぐための上面蓋部材28及び側面蓋部材27を共通することができるので、部品原価の低減を図ることが可能である。
【0017】
セル積層体3は、正極端子31と、負極端子32と、正極バスバー33と、負極バスバー34とを有する。これらの端子及びバスバーは、それぞれアルミニウムなどの金属材料により板状に形成されている。正極端子31と負極端子32とは、互いに対向するように燃料電池セルの積層方向Xの両側に配置されている。すなわち、正極端子31は、対向する一対の第2側壁24の一方の近く配置され、負極端子32は、対向する一対の第2側壁24の他方の近く配置されている。
【0018】
正極バスバー33及び負極バスバー34は、一端部が正極端子31又は負極端子32に接続されており、他端部が互いに隣接するようにケース2のアッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置に引き出されている。そして、アッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置の近傍には、端子台4が配置されている。正極バスバー33及び負極バスバー34のそれぞれの他端部は、端子台4と固定されている。
【0019】
具体的には、正極バスバー33は、正極端子31と端子台4とを電気的に接続するように、正極端子31と端子台4との間に架け渡されている。
図2及び
図3に示すように、正極バスバー33は、アッパーカバー22と平行に配置されるとともに湾曲した形状を有する平板部331と、アッパーカバー22と平行する部分及び第1側壁23と平行する部分を有するL字状部332とを有する。平板部331の一端部はボルト締めで正極端子31と固定され、他端部はボルト100を介してL字状部332及び端子台4と固定されている。一方、L字状部332は、そのアッパーカバー22と平行する部分がボルト100を介して平板部331の他端部及び端子台4と固定されており、その第1側壁23と平行する部分がボルト101を介して端子台4と固定されている。
【0020】
負極バスバー34は、負極端子32と端子台4とを電気的に接続するように、負極端子32と端子台4との間に架け渡されている。
図2及び
図3に示すように、負極バスバー34は、アッパーカバー22と平行に配置されるとともに湾曲した形状を有する平板部341と、アッパーカバー22と平行する部分及び第1側壁23と平行する部分を有するL字状部342とを有する。平板部341の一端部はボルト締めで負極端子32と固定され、他端部はボルト102を介してL字状部342及び端子台4と固定されている。一方、L字状部342は、そのアッパーカバー22と平行する部分がボルト102を介して平板部341の他端部及び端子台4と固定されており、その第1側壁23と平行する部分がボルト103を介して端子台4と固定されている。
【0021】
なお、正極バスバー33及び負極バスバー34は、必ずしも平板部331,341とL字状部332,342とを有するように形成される必要がなく、例えば平板部331及びL字状部332は一枚の板部材によって一体的に形成されてもよい。
【0022】
端子台4は、アルミニウム等の金属材料に形成されており、ケース2と電気的に絶縁された状態で該ケース2に固定されている。
【0023】
本実施形態において、セル積層体3の積層方向Xの両端に配置された正極端子31と負極端子32とは、正極バスバー33と負極バスバー34とにより、アッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置の近傍に配置された端子台4に集約されるので、燃料電池スタック1にユーザ側の接続先ユニットを組み付ける際に、接続に必要な開口部(すなわち、側面開口部25又は上面開口部26)を小さくできる。このため、例えばバスバーがセル積層体3の積層方向Xの両端に配置される場合と比べて、接続先ユニットの形状は積層方向Xの両端まで広がる必要がないので、接続先ユニットを小型化することができる。
【0024】
また、アッパーカバー22に正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出するための上面開口部26が形成されているので、該上面開口部26を介してケース2の外部から正極バスバー33及び負極バスバー34にそれぞれ接続することが可能になる。これによって、ケース2の上方(言い換えれば、燃料電池スタック1の上方)にユーザ側の接続先ユニットを搭載することができる。
【0025】
また、第1側壁23には、正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出するための側面開口部25が形成されているので、該側面開口部25を介してケース2の外部から正極バスバー33及び負極バスバー34にそれぞれ接続することが可能になる。これによって、ケース2の側方(言い換えれば、燃料電池スタック1の側方)にユーザ側の接続先ユニットを搭載することができる。
【0026】
このように、ケース2の上方又は/及び側方からユーザ側の接続先ユニットを搭載することができるので、ユーザごとに異なる搭載要求に対応することができる。その結果、接続先ユニットの搭載のロバスト性を向上することができる。
【0027】
以下、
図4及び
図5を基に、燃料電池スタック1に接続先ユニットを搭載するパターンを説明する。
【0028】
[搭載パターン1]
図4(a)に示す搭載パターン1は、燃料電池スタック1の側方に接続先ユニット5を搭載するパターンである。このパターンでは、接続先ユニット5に備え付けられた接続用バスバー51は、ケース2の側面開口部25から挿入され、正極バスバー33又は負極バスバー34の平板部331,341の上面に載せた状態でボルト100,102を介して正極バスバー33又は負極バスバー34と固定されている。なお、接続用バスバー51は、ストレート状の金属板からなる。
【0029】
このように燃料電池スタック1の側方に接続先ユニット5を搭載する際に、まず、燃料電池スタック1の側面蓋部材27及び上面蓋部材28を外して正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出させる。続いて、接続用バスバー51を側面開口部25からケース2の内部に挿入するように、ケース2の側方から接続先ユニット5を燃料電池スタック1に組み付ける。続いて、ケース2の上面開口部26から締結用工具を挿入し、ボルト100,102で接続用バスバー51と正極バスバー33又は負極バスバー34の平板部331,341とを締結する。締結後、上面蓋部材28でケース2の上面開口部26を塞ぐ。
【0030】
搭載パターン1では、接続先ユニット5をケース2の側方から燃料電池スタック1に組み付け、ケース2の上方から締結用工具で接続用バスバー51を燃料電池スタック1の正極バスバー33又は負極バスバー34と締結するので、接続先ユニット5の搭載作業を容易に行うことができる。また、接続先ユニット5に締結用工具を挿入するためのサービス穴が不要であるので、接続先ユニット5にサービス穴を設ける場合と比べて原価低減を図ることができる。
【0031】
[搭載パターン2]
図4(b)に示す搭載パターン2は、燃料電池スタック1の側方に接続先ユニット5を搭載するパターンである。このパターンでは、接続先ユニット5に備え付けられた接続用バスバー52は、ケース2の側面開口部25から挿入され、正極バスバー33又は負極バスバー34のL字状部332,342と当接した状態でボルト101,103を介して正極バスバー33又は負極バスバー34と固定されている。なお、接続用バスバー52は、左右方向Yに沿って延びる部分521と上下方向Zに沿って延びる部分522とを有するように、断面L字状の金属板からなる。なお、その上下方向Zに沿って延びる部分522は、ケース2の側面開口部25を挿通できるサイズを有する。
【0032】
このように燃料電池スタック1の側方に接続先ユニット5を搭載する際に、まず、燃料電池スタック1の側面蓋部材27を外して正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出させる。続いて、接続用バスバー52を側面開口部25からケース2の内部に挿入するように、ケース2の側方から接続先ユニット5を燃料電池スタック1に組み付ける。続いて、接続先ユニット5に形成されたサービス穴53に締結用工具を挿入し、ボルト101,103で接続用バスバー52の部分522と正極バスバー33又は負極バスバー34のL字状部332,342とを締結する。
【0033】
搭載パターン2では、接続先ユニット5をケース2の側方から燃料電池スタック1に組み付け、ケース2の側方から接続先ユニット5のサービス穴53を利用して接続用バスバー52を正極バスバー33又は負極バスバー34と締結するので、ケース2の上方からの作業は不要である。従って、上面開口部26の上方に他部品6を配置してもよい。
【0034】
[搭載パターン3]
図5(a)に示す搭載パターン3は、燃料電池スタック1の上方に接続先ユニット5を搭載するパターンである。このパターンでは、接続先ユニット5に備え付けられた接続用バスバー54は、ケース2の上面開口部26から挿入され、正極バスバー33又は負極バスバー34のL字状部332,342と重ねた状態でボルト101,103を介して正極バスバー33又は負極バスバー34と固定されている。なお、接続用バスバー54は、ストレート状の金属板からなる。
【0035】
このように燃料電池スタック1の上方に接続先ユニット5を搭載する際に、まず、燃料電池スタック1の側面蓋部材27及び上面蓋部材28を外して正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出させる。続いて、接続用バスバー54を上面開口部26からケース2の内部に挿入するように、ケース2の上方から接続先ユニット5を燃料電池スタック1に組み付ける。続いて、ケース2の側面開口部25から締結用工具を挿入し、ボルト101,103で接続用バスバー54と正極バスバー33又は負極バスバー34のL字状部332,342とを締結する。締結後、側面蓋部材27でケース2の側面開口部25を塞ぐ。
【0036】
搭載パターン3では、接続先ユニット5をケース2の上方から燃料電池スタック1に組み付け、ケース2の側方から締結用工具で接続用バスバー54を燃料電池スタック1の正極バスバー33又は負極バスバー34と締結するので、接続先ユニット5の搭載作業を容易に行うことができる。また、接続先ユニット5に締結用工具を挿入するためのサービス穴が不要であるので、接続先ユニット5にサービス穴を設ける場合と比べて原価低減を図ることができる。
【0037】
[搭載パターン4]
図5(b)に示す搭載パターン4は、燃料電池スタック1の上方に接続先ユニット5を搭載するパターンである。このパターンでは、接続先ユニット5に備え付けられた接続用バスバー55は、ケース2の上面開口部26から挿入され、正極バスバー33又は負極バスバー34の平板部331,341と当接した状態でボルト100,102を介して正極バスバー33又は負極バスバー34と固定されている。なお、接続用バスバー55は、上下方向Zに沿って延びる部分551と左右方向Yに沿って延びる部分552とを有するように、断面L字状の金属板からなる。なお、その左右方向Yに沿って延びる部分552は、ケース2の上面開口部26を挿通できるサイズを有する。
【0038】
このように燃料電池スタック1の上方に接続先ユニット5を搭載する際に、まず、燃料電池スタック1の上面蓋部材28を外して正極バスバー33及び負極バスバー34の他端部を露出させる。続いて、接続用バスバー55を上面開口部26からケース2の内部に挿入するように、ケース2の上方から接続先ユニット5を燃料電池スタック1に組み付ける。続いて、接続先ユニット5に形成されたサービス穴56に締結用工具を挿入し、ボルト100,102で接続用バスバー55の左右方向Yに沿って延びる部分552と正極バスバー33又は負極バスバー34の平板部331,341とを締結する。
【0039】
搭載パターン4では、接続先ユニット5をケース2の上方から燃料電池スタック1に組み付け、ケース2の上方から接続先ユニット5のサービス穴56を利用して接続用バスバー55を正極バスバー33又は負極バスバー34と締結するので、ケース2の側方からの作業は不要である。従って、側面開口部25の側方に他部品6を配置してもよい。
【0040】
また、本実施形態の端子台4は、セル積層体3の変位を規制する規制部として役割を果たしている。以下、
図6を参照してそれを説明する。
【0041】
具体的には、
図6に示すように、端子台4は、それに隣接するセル積層体3の角部35に合わせるように、断面L字状を呈している。端子台4は、左右方向Yに沿って延びる第1部分40と上下方向Zに沿って延びる第2部分41とを有する。
【0042】
ここで、端子台4を断面L字状にする経緯を説明する。
【0043】
ケース2において、セル積層体3の積層方向Xの両端部はそれぞれケース2に固定されているが、両端部間の部分はケース2に固定されずに、浮く状態となっている。このため、燃料電池スタック1に外力が印加されると、セル積層体3の積層方向Xの両端部間の部分は動く(すなわち、変位する)。そして、セル積層体3の積層方向Xの両端部間の中央部分は最も変位する。また、最近では、燃料電池スタックの出力を増加させるために、燃料電池セルの積層枚数の増加が検討されている。しかし、燃料電池セルの積層枚数が増えると、セル積層体3の質量が増加し、外力が印加される際のセル積層体3の変位量も増加する。そして、隣り合う燃料電池セル同士の許容ズレ量を超えてしまうと、シール不良が発生して水漏れ、水素漏れの不具合を招く。
【0044】
このような問題を解決するため、本願発明者は鋭意研究を重ねた結果、外力によって最も変位するセル積層体3の積層方向Xの中央部分に対応するケース2の位置(より具体的には、アッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置の近傍)に端子台4を配置し、端子台4をセル積層体3の上面と側面とそれぞれ対応する部分を有するL字状にし、該端子台4でセル積層体3における左右方向Y及び上下方向Zの変位を抑える(言い換えれば、規制する)ことで、セル積層体3の変位量を許容値以下に規制できることを見出した。
【0045】
従って、
図6に示すように、端子台4は、セル積層体3の角部35と合わせるように、そのL字状の角部の内側がセル積層体3の角部35に対向するように配置されている。そして、例えば外力によってセル積層体3が上下方向Zに変位すると、端子台4の第1部分40と干渉することで、上下方向Zの変位を抑制することができる。また、外力によってセル積層体3が左右方向Yに変位すると、端子台4の第2部分41と干渉することで、左右方向Yの変位を抑制することができる。
【0046】
また、端子台4は、ケース2と固定されるとともに、正極バスバー33及び負極バスバー34を介しセル積層体3の積層方向Xの両端と連結されてセル積層体3の積層方向Xの両端に固定されているので、バスバーの剛性を利用し変位に対する端子台4の耐力を高めることができる。従って、端子台4がセル積層体3の変位を抑制し、燃料電池セルのズレ量を許容値以下にすることができる。
【0047】
また、最も変位するセル積層体3の積層方向Xの中央部分に対応するケース2の位置(より具体的には、アッパーカバー22と第1側壁23とからなる角部の中央位置の近傍)に端子台4を配置することで、セル積層体3の変位量を最も効率良く抑えることができる。そして、セル積層体3の変位がピークになる幅と端子台4の抑えられる幅とが同等以上であれば(言い換えれば、変位ピークの幅よりも端子台4の幅が大きければ)、端子台4がセル積層体3の抑えるべき領域を抑制できる。
【0048】
更に、端子台4がセル積層体3の変位の規制する規制部を兼ねるため、変位を規制する専用部品の配置は不要となり、コストアップを抑制する効果も奏する。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0050】
1:燃料電池スタック、2:ケース、3:セル積層体、4:端子台、5:接続先ユニット、21:ケース本体、22:アッパーカバー、23:第1側壁、24:第2側壁、25:側面開口部、26:上面開口部、27:側面蓋部材、28:上面蓋部材、31:正極端子、32:負極端子、33:正極バスバー、34:負極バスバー、35:角部、40:第1部分、41:第2部分、51,52,54,55:接続用バスバー、331,341:平板部、332,342:L字状部