(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012331
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】培養装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115091
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉置 裕一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 英昭
(72)【発明者】
【氏名】不破 敦宣
(72)【発明者】
【氏名】朝山 文博
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】外部空間から培養室への微粒子等の異物の侵入を抑制しつつ、培養装置内で生じた微粒子が外部空間に漏洩することを抑制できる培養装置を提供する。
【解決手段】培養装置は、培養室を有する内箱と、培養室の開口部を覆う開閉可能な内扉と、内扉を外側から覆う開閉可能な外扉と、内箱の周囲に収容空間を形成するカバー部と、収容空間に設けられ、収容空間の空気をろ過した清浄空気を外部に吹き出す清浄装置と、を備え、清浄装置は、外部から収容空間に外気を吸い込み、内扉よりも前方且つ上方において、下方に向けて清浄空気を吹き出す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養室を有する内箱と、
前記培養室の開口部を覆う開閉可能な内扉と、
前記内扉を外側から覆う開閉可能な外扉と、
前記内箱の周囲に収容空間を形成するカバー部と、
前記収容空間に設けられ、前記収容空間の空気をろ過した清浄空気を外部に吹き出す清浄装置と、を備え、
前記清浄装置は、
外部から前記収容空間に外気を吸い込み、
前記内扉よりも前方且つ上方において、下方に向けて前記清浄空気を吹き出す、
培養装置。
【請求項2】
前記収容空間は、一部に、前記外部に対して陰圧である陰圧空間を有する、
請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
前記清浄装置は、前記内扉よりも前方且つ下方において、前記外部から前記収容空間に前記外気を吸い込む、
請求項1又は2に記載の培養装置。
【請求項4】
前記陰圧空間は、前記内箱を少なくとも下側、後側、及び上側から囲む空間に設けられている、
請求項2に記載の培養装置。
【請求項5】
前記陰圧空間に設けられた、デバイス、前記デバイス用の配線部材、及び断熱材のうちの何れか一つの部材を、更に備える、
請求項2に記載の培養装置。
【請求項6】
前記カバー部は、前記清浄装置により前記清浄空気が前記収容空間から吹き出される吹出口を有し、
前記清浄装置は、
前記吹出口よりも上流側に設けられた送風機と、
前記送風機よりも下流側に設けられ、前記送風機から送り出された空気をろ過して前記清浄空気を生成するフィルタと、を有する、
請求項2に記載の培養装置。
【請求項7】
前記収容空間は、
前記内箱の下方に設けられた下側収容空間と、
前記内箱の後方に設けられた後側収容空間と、
前記内箱の上方に設けられた上側収容空間と、を含み
前記送風機及び前記フィルタは、前記上側収容空間に設けられている、
請求項6に記載の培養装置。
【請求項8】
前記清浄装置は、前記下側収容空間に、通過する空気に抵抗を作用する第二フィルタを、更に有し、
前記陰圧空間は、前記送風機と前記第二フィルタとの間に設けられている、
請求項7に記載の培養装置。
【請求項9】
前記清浄装置は、前記陰圧空間を陰圧に保ちつつ、前記外扉の閉状態における前記清浄空気の吹出量を、前記外扉の開状態における前記清浄空気の吹出量よりも、少なくする、
請求項2に記載の培養装置。
【請求項10】
前記外扉の閉状態において前記収容空間に吸い込まれる前記外気に作用する通風抵抗が、前記外扉の開状態において前記収容空間に吸い込まれる前記外気に作用する通風抵抗よりも大きい、請求項9に記載の培養装置。
【請求項11】
前記収容空間は、一部に、前記外部に対して陽圧である陽圧空間を有し、
前記内箱は、
前記陽圧空間と前記培養室とを連通する第一ポートと、
前記内箱よりも外側の空間であって前記収容空間以外の空間と前記培養室とを連通する第二ポートと、
前記第二ポートに着脱可能に装着され、前記第二ポートを塞ぐキャップと、を有する、
請求項1又は2に記載の培養装置。
【請求項12】
前記清浄装置は、
前記外扉の閉状態において、前記外扉よりも上方且つ前記外扉の上面と上下方向に対向する位置から、前記清浄空気を吹き出し、
前記外扉の開状態において、前記内扉の前方を流れる前記清浄空気によりエアカーテンを構成する、
請求項1又は2に記載の培養装置。
【請求項13】
前記清浄装置は、前記外扉の閉状態における前記清浄空気の吹出量を、前記外扉の開状態における前記清浄空気の吹出量よりも、少なくする、
請求項12に記載の培養装置。
【請求項14】
前記培養室内の空気を循環させる室内送風機を、更に備え、
前記室内送風機は、前記外扉の開状態において、送風動作を停止する、
請求項1又は2に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたような、培養装置が知られている。このような培養装置は、培養室を有する箱部を有する。又、培養装置は、箱部の開口部を開閉する扉部を有する。
【0003】
又、培養装置は、培養装置を構成するデバイス、及び、このデバイスに接続された配線を有している。このようなデバイス及び配線は、箱部の外側に形成された収容空間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような培養装置の稼働時において、扉部が開くと、外部空間から培養室に微粒子等の異物が侵入する可能性がある。
【0006】
又、上述のような培養装置の稼働時において、収容空間に収容されたデバイスや断熱材から生じた微粒子が、収容空間から外部空間に漏洩する可能性がある。このような微粒子の漏洩は、培養装置が所謂クリーンルームで使用される場合、クリーンルームを汚染してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部空間から培養室への微粒子等の異物の侵入を抑制しつつ、培養装置内で生じた微粒子が外部空間に漏洩することを抑制できる培養装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る培養装置の一態様は、
培養室を有する内箱と、
培養室の開口部を覆う開閉可能な内扉と、
内扉を外側から覆う開閉可能な外扉と、
内箱の周囲に収容空間を形成するカバー部と、
収容空間に設けられ、収容空間の空気をろ過した清浄空気を外部に吹き出す清浄装置と、を備え、
清浄装置は、
外部から収容空間に外気を吸い込み、
内扉よりも前方且つ上方において、下方に向けて清浄空気を吹き出す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部空間から培養室への微粒子等の異物の侵入を抑制しつつ、培養装置内で生じた微粒子が外部空間に漏洩することを抑制できる培養装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る培養装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、外扉が閉じた状態の培養装置の断面図である。
【
図3】
図3は、外扉が開いた状態の培養装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る培養装置について説明する。尚、同じ構成要素には同じ符号を付している。添付の図面と共に以下に記載される事項は、例示的な実施形態を説明するためのものであり、唯一の実施形態を示すためのものではない。
【0012】
[実施形態]
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係る培養装置1について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る培養装置1の斜視図である。又、
図2は、外扉13が閉じた状態の培養装置1の断面図である。具体的には、
図2は、外扉13が閉じた状態の培養装置1を、
図1に示すC-C線で切断した状態を示す断面図である。
【0014】
又、
図3は、外扉13が開いた状態の培養装置1を、
図1に示すC-C線で切断した状態を示す断面図である。尚、
図3において、外扉13は省略されている。
【0015】
図1~
図3においては、使用時にユーザが正対する側は、培養装置1の前側(正面側)である。又、培養装置1の前側(正面側)と反対側が、培養装置1の後側(背面側)である。又、ユーザが培養装置1を前方から見たときの左側及び右側は、培養装置1の左側及び右側である。更に、培養装置1を前方から見た時の上側及び下側は、培養装置1の上側(天面側)及び下側(底面側)である。
【0016】
培養装置1は、略箱状の筐体10の内部に形成されている培養室20において、細胞又は微生物等の培養物を培養する装置である。培養室20は、培養物の培養に適切な雰囲気となるように、温度、湿度、O2(酸素)濃度、及びCO2(二酸化炭素)濃度がそれぞれ適切な範囲に保持される。
【0017】
培養装置1は、筐体10、加熱部30、制御部40、カバー50、及び空気清浄装置60を有する。
【0018】
筐体10は、
図2に示すように、内箱11、外箱12、外扉13、内扉14、及び前板15を有する。
【0019】
内箱11は、箱部の一例に該当し、略箱状である。内箱11は、内側に、培養室20を有する。内箱11は、前面に開口部110を有する。開口部110は、培養室20の開口でもある。つまり、内箱11及び培養室20は、前方に開口している。
【0020】
内箱11は、左側壁部(不図示)、右側壁部(不図示)、後側壁部11a、上側壁部11b、及び下側壁部11cを有する。
【0021】
外箱12は、略箱状であり、内箱11の前面(つまり、開口部110)及び前板15以外の部位を、外側から覆っている。外箱12は、循環用送風機23のモータ部を格納する穴Hを有する。
【0022】
穴Hは、内箱11と外箱12との間の断熱材16が保持されている空間と、収容空間500Aとを、空気が移動可能な状態で連通している。よって、内箱11と外箱12との間の断熱材16を収容している空間は、収容空間500Aの一部と捉えてよい。
【0023】
尚、内箱11は、金属製の複数の板によって構成されている。内箱11を構成する各板同士は、溶接により接合されている。よって、内箱11は、気密構造を有する。
【0024】
断熱材16は、内箱11と外箱12との間に設けられている。断熱材16は、接着剤によって互いに接着された複数の板状の断熱部材、又は、繊維と繊維の間に空気を閉じ込めることで熱を伝わりにくくする繊維系断熱材により構成される。
【0025】
外扉13及び内扉14は、開口部110を開閉する。外扉13は、外扉部の一例に該当し、内扉14を外側から覆っている。外扉13は、外箱12に回動可能な状態で支持されている。外扉13は、開閉可能である。
【0026】
内扉14は、扉部の一例に該当する。内扉14は、回動可能な状態で、内箱11に支持されている。内扉14は、開閉可能である。換言すれば、培養室20は、内扉14により開閉可能である。
【0027】
外扉13の後側面の外縁部には、パッキンPが配置されている。パッキンPは、正面視で、矩形枠状である。尚、正面視は、培養装置1を前方(正面側)から見ることを意味する。
【0028】
内箱11の開口端には、パッキンP3が配置されている。パッキンP3は、環状(具体的には、矩形枠状)である。パッキンP3は、内箱11の開口端に沿うように配置されている。内扉11を閉めた際、内扉11の縁部がパッキンP3を圧縮することにより培養室20は密閉される。
【0029】
又、外扉13は、下面に、パッキンP2を有する。パッキンP2は、外扉13の下部左右方向の全長にわたり設けられている。外扉13の閉状態において、パッキンP2の先端部(つまり、下端部)は、後述の下側カバー部501の前端部と、僅かな隙間を介して対向している。
【0030】
一方、外扉13の開状態において、パッキンP2は、下側カバー部501の前端部から大きく離れる。
【0031】
このようにパッキンP2は、外扉13の閉状態(
図2に示す状態)において、外部空間9と後述の吸込口501aとを連通する空間(流路)の一部の断面積を狭くしている。換言すれば、パッキンP2は、外扉13の閉状態において、後述の予備空間501dの入り口(吸込口)を狭くしている。
【0032】
このため、外扉13の閉状態において、外部空間9から収容空間500に吸い込まれる空気に作用する抵抗(通風抵抗)は、外扉13の開状態において、外部空間9から収容空間500に吸い込まれる空気に作用する抵抗(通風抵抗)よりも大きい。
【0033】
以上のように、パッキンP2は、外扉13の閉状態(
図2に示す状態)において、後述の収容空間500に吸い込まれる空気の量を、外扉13の開状態(
図3に示す状態)において、収容空間500に吸い込まれる空気の量よりも、少なくするための部材である。尚、収容空間500に吸い込まれる空気の量は、単位時間(1分)当たりに収容空間500に吸い込まれる空気の量(体積)を意味する。
【0034】
換言すれば、パッキンP2は、外扉13の閉状態(
図2に示す状態)において、後述の予備空間501dに流入する空気の量を、外扉13の開状態(
図3に示す状態)において、予備空間501dに流入する空気の量よりも、少なくするための部材である。尚、予備空間501dに流入する空気の量は、単位時間(1分)当たりに予備空間501dに流入する空気の量(体積)を意味する。
【0035】
前板15は、内箱11及び外箱12の前面に配置され、開口部110の周縁において内箱11と外箱12とを接続する。前板15は、外周が略方形である枠状の板部材であり、内箱11の前端と外箱12の前端とを開口部110の全周に亘って接続する。
【0036】
又、筐体10は、上壁部(内箱11の上側壁部11bを含む部分)に、当該上壁部を上下方向に貫通する、第一ポート100を有する。
【0037】
第一ポート100は、培養室20と後述のフィルタ配置空間500eとを連通している。具体的には、第一ポート100は、フィルタ配置空間500eにおいて第一フィルタ62が配置された部分よりも下流側の空間と培養室20と、を連通している。
【0038】
尚、フィルタ配置空間500eにおいて第一フィルタ62が配置された部分よりも下流側の空間は、後述の空気清浄装置60の駆動状態(第一駆動状態及び第二駆動状態)において、外部空間9に対して陽圧になる空間(つまり、陽圧空間)である。
【0039】
又、筐体10は、内扉14に、第二ポート101を有する。第二ポート101は、内扉14を前後方向(換言すれば、内扉14の厚さ方向)に貫通している。第二ポート101は、培養室20と内扉14よりも前方の空間(以下、「内扉14の前方空間」と称する。)と、を連通している。
【0040】
換言すれば、第二ポート101は、内箱11よりも外側の空間であって後述の収容空間500以外の空間(つまり、内扉14の前方空間)と培養室20と、を連通している。
【0041】
筐体10は、第二ポート101に着脱可能に装着されたキャップ102を有する。キャップ102は、第二ポート101に装着された状態で、第二ポート101を塞ぐ。キャップ102が第二ポート101から外された状態で、第二ポート101は、培養室20と内扉14の前方空間と、を連通する。
【0042】
培養装置1のユーザは、第二ポート101からキャップ102を外すことにより、内扉14の前方空間から、培養室20にアクセスできる。ユーザは、第二ポート101を介して、培養室20の空気を取得できる。ユーザは、取得した空気を分析することにより、培養室20内の空気の状況を知ることができる。
【0043】
加熱部30は、培養室20を加熱する。加熱部30の動作は、後述の制御部40により制御される。制御部40は、培養室20内の温度センサ24の検出値に基づいて、加熱部30の動作を制御してよい。
【0044】
加熱部30は、複数のヒータ31、32、33、34を有する。複数のヒータ31、32、33、34はそれぞれ、板状である。
【0045】
ヒータ31は、内箱11における上側壁部11bの上面に設けられている。ヒータ32は、内箱11における下側壁部11cの下面に設けられている。ヒータ33は、内箱11における後側壁部11aの後側面に設けられている。
【0046】
ヒータ34は、外扉13の後側面に設けられている。尚、加熱部30は、内箱11における左側壁部(不図示)に設けられたヒータ(不図示)、及び、内箱11における右側壁部(不図示)に設けられたヒータ(不図示)も有している。
【0047】
上述のような構成を有する加熱部30は、後述の制御部40の制御下で、培養室20の温度分布が均一になるように動作する。
【0048】
尚、上述した加熱部30は加熱部の一例であり、加熱部を構成するヒータの個数、配置、及びヒータの構成等は、適宜に変更可能である。
【0049】
培養室20には、内箱11の内側の後面に上下に延在するダクト22が配置されている。ダクト22は、上端部に吸込口221を有する。又、ダクト22は、下端部に吹出口222を有する。
【0050】
ダクト22の内部には、気体通路220が形成されている。気体通路220には循環用送風機23が配置されている。
【0051】
循環用送風機23は、室内送風機の一例に該当する。循環用送風機23は、ダクト22の吸込口221から培養室20の空気を気体通路220に吸い込む。循環用送風機23の動作は、後述の制御部40により制御される。
【0052】
気体通路220に吸い込まれた空気は、気体通路220内を下方に進む。そして、循環用送風機23は、気体通路220内の空気を、ダクト22の吹出口222から培養室20に吹き出す。これにより、
図2に太矢印で示されるように、培養室20の空気が、循環する。
【0053】
又、ダクト22内には、温度センサ24及びガス供給装置25a、25bが設けられている。
【0054】
温度センサ24は、培養室20の温度を検出する。温度センサ24は、具体的には、吸込口221の付近に配置されている。温度センサ24は、吸込口221から吸い込まれた空気の温度を検出する。
【0055】
ガス供給装置25a、25bは、培養室20のO2ガス濃度及びCO2ガス濃度を調整する調整用ガス(O2ガス、N2(窒素)ガス及びCO2ガス)を、培養室20に供給する。
【0056】
又、培養室20の内側の後面には、湿度センサ(不図示)が配置されている。湿度センサは、培養室20の湿度を検出する。湿度センサは、培養室20の内側の後面の下部において、吹出口222の周囲に配置されている。
【0057】
ダクト22の下部と内箱11の底面との間には、加湿用の蒸気となる液体(具体的には水)を貯溜する加湿皿Dが設置される。加湿皿Dに貯留されている水(以降、貯留水と呼ぶ)は、UVランプ(不図示)によって紫外線が照射されることで、殺菌される。
【0058】
加湿皿Dの貯留水は、当該水の温度に応じた飽和蒸気圧と培養室20内の気相の水の蒸気圧との差に略比例して、蒸発(自然気化)する。このように、加湿皿Dは、自然気化により培養室20に蒸気を供給する自然気化式の蒸気供給部を構成する。
【0059】
自然気化式の蒸気供給部は、自然気化により培養室20に蒸気を供給する。このため、自然気化式の蒸気供給部により供給される蒸気量は、培養室20の湿度に応じて変化する。又、培養室20の湿度は、最終的には、所定の湿度で平衡状態となる。
【0060】
尚、加湿皿Dの貯留水は、ヒータ32により加温されてもよい。この場合、加湿皿D及びヒータ32が、自然気化により培養室20に蒸気を供給する自然気化式の蒸気供給部を構成する。
【0061】
又、加湿皿Dの貯留水の温度は、水温センサ28により検出される。ここでは、ヒータ32は、加湿皿Dの貯留水を沸点未満の温度に温めるので、加温と呼ぶ。加湿皿Dの貯留水は、ヒータ32により加温されて、自然気化する。
【0062】
尚、目標値とする培養室20の湿度が比較的高くない場合には、ヒータ32を用いず(加温せず)、加湿皿Dのみにより構成される自然気化式の蒸気供給部により、培養室20を加湿してよい。
【0063】
一方、目標値とする培養室20の湿度が比較的高い場合には、加湿皿Dとヒータ32とにより構成される自然気化式の蒸気供給部により、培養室20を加湿してよい。
【0064】
カバー50は、カバー部の一例に該当し、内箱11の周囲に収容空間500を形成している。カバー50は、内箱11の一部を覆っている。換言すれば、カバー50は、筐体10(具体的には、外箱12)の一部を覆っている。
【0065】
具体的には、カバー50は、内箱11の下面、後側面、及び上面を覆っている。換言すれば、カバー50は、筐体10(具体的には、外箱12)の下面、後側面、及び上面を覆っている。
【0066】
カバー50は、下側カバー部501、後側カバー部502、及び上側カバー部503を有する。
【0067】
下側カバー部501は、筐体10(具体的には、外箱12)よりも下方に設けられている。下側カバー部501は、筐体10(具体的には、外箱12)の下面に固定されている。この状態で、下側カバー部501は、筐体10(具体的には、外箱12)の下面を、下方から覆っている。下側カバー部501は、下側収容空間500aを有する。
【0068】
下側収容空間500aは、内箱11の下方に設けられた直方体状の空間である。下側収容空間500aは、収容空間500の一部を構成している。下側収容空間500aは、上下方向において、筐体10(具体的には、外箱12)の下面の全面と対向している。
【0069】
下側カバー部501は、培養装置1(換言すれば、カバー50)よりも外側の外部空間9(以下、単に「外部空間9」と称する。)の空気を、収容空間500に吸い込むための吸込口501aを有する。吸込口501aは、下側カバー部501の前端部に設けられている。
【0070】
換言すれば、吸込口501aは、下側カバー部501において、内箱11及び外箱12よりも前方に突出した部分(以下、下側突出部501bと称する。)に設けられている。
【0071】
下側突出部501bは、下側突出部501bの上面を構成する上側板部501cを有する。吸込口501aは、上側板部501cに設けられている。具体的には、吸込口501aは、上側板部501cを上下方向に貫通する複数の貫通孔により構成されている。
【0072】
図2に示すように、吸込口501aは、外扉13及び内扉14の閉状態において、外扉13及び内扉14の下方に設けられている。
【0073】
吸込口501a(換言すれば、上側板部501c)と外扉13の下面との間には、予備空間501dが設けられている。予備空間501dは、収容空間500と外部空間9とを接続する空間と捉えてよい。予備空間501dは、収容空間500及び外部空間9に連通している。
【0074】
後側カバー部502は、筐体10(具体的には、外箱12)よりも後方に設けられている。後側カバー部502は、筐体10(具体的には、外箱12)の後側面に固定されている。この状態で、後側カバー部502は、筐体10(具体的には、外箱12)の後側面を、後方から覆っている。後側カバー部502は、後側収容空間500bを有する。
【0075】
後側収容空間500bは、直方体状の空間である。後側収容空間500bは、収容空間500の一部を構成している。後側収容空間500bは、前後方向において、筐体10(具体的には、外箱12)の後側面の全面と対向している。後側収容空間500bの下端部は、下側収容空間500aの後端部と連通している。
【0076】
ここで、後側収容空間500bに配置されたデバイスについて説明する。後側収容空間500bには、電子デバイス及び非電子デバイスを含む種々のデバイスが配置されている。
【0077】
又、後側収容空間500bには、デバイスに接続された配線又は配管が配置されている。後側収容空間500bは、各種デバイスを配置するためのデバイス配置空間と捉えることもできる。後側収容空間500bは、後述するように、外部空間9に対して陰圧となる空間(つまり、陰圧空間500A)である。
【0078】
以下、後側収容空間500bに配置されたデバイスについて説明する。先ず、後側収容空間500bには電装ボックス17が配置されている。電装ボックス17には、制御部40等が収容されている。制御部40は、培養装置1の動作を統括制御する。
【0079】
電装ボックス17には、孔又は隙間H2が設けられている。このような孔又は隙間は、電装ボックス17に収容されたデバイス類から出た熱を、収容空間500(具体的には、後側収容空間500b)に放散するためのものである。
【0080】
又、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)には、培養装置1が備える蒸気供給装置18の一部のデバイスが配置されている。
【0081】
このような蒸気供給装置18は、培養室20に蒸気を供給するための装置である。蒸気供給装置18の動作は、後述の制御部40により制御される。蒸気供給装置18は、蒸気発生部18a及び蒸気供給部18bを有する。
【0082】
蒸気発生部18aは、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)に配置されている。蒸気発生部18aは、ヒータ(不図示)を有している。
【0083】
蒸気供給部18bは、管状であり、蒸気発生部18aで発生した蒸気を培養室20に供給する。蒸気供給部18bの一部も、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)に設けられている。
【0084】
又、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)には、培養装置1が備える除湿部材19の一部のデバイスが配置されている。除湿部材19は、培養室20内での結露を防止するように培養室20内の除湿を行う。除湿部材19は、調湿部として機能する。
【0085】
又、除湿部材19には、除湿部材19を冷却する冷却装置19a(例えば、ペルチェ素子)が設けられている。冷却装置19aは、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)に配置されている。このような冷却装置19aの動作は、制御部40により制御される。
【0086】
具体的には、制御部40は、培養室20内の温度センサ24及び外気温センサ27のそれぞれの検出値に基づいて、冷却装置19aの動作を制御する。制御部40は、湿度センサ(不図示)の検出値を、冷却装置19aの制御に用いてもよい。
【0087】
除湿部材19には、断熱材19bが巻かれている。断熱材19bの一部は、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)に配置されている。
【0088】
又、電装ボックス17(つまり、後側収容空間500b)には、培養装置1が備える外気温センサ27が配置されている。外気温センサ27は、培養装置1の周囲の温度を検出する。
【0089】
以上のような後側収容空間500bに配置されたデバイスはそれぞれ、微粒子の発生源となりうる。これらのデバイスから発生した微粒子が、後側収容空間500bから外部空間9に漏洩すると、外部空間9を汚染してしまう可能性がある。
【0090】
以下、カバー50の説明に戻る。上側カバー部503は、筐体10(具体的には、外箱12)よりも上方に設けられている。上側カバー部503は、筐体10(具体的には、外箱12)の上面に固定されている。この状態で、上側カバー部503は、筐体10(具体的には、外箱12)の上面を、上方から覆っている。上側カバー部503は、上側収容空間500cを有する。
【0091】
上側収容空間500cは、直方体状の空間である。上側収容空間500cは、収容空間500の一部を構成している。上側収容空間500cは、上下方向において、筐体10(具体的には、外箱12)の上面の全面と対向している。
【0092】
上側収容空間500cは、送風機配置空間500d、及び、フィルタ配置空間500eを有する。
【0093】
送風機配置空間500dは、上側収容空間500cにおける前側半部且つ上側半部の空間である。送風機配置空間500dは、後述の空気清浄装置60の送風機61が配置される空間である。送風機配置空間500dは、上側収容空間500cにおいてフィルタ配置空間500eよりも上流側の空間である。
【0094】
尚、収容空間500に関して、上流側及び下流側は、収容空間500における空気の流れに関する上流側及び下流側を意味する。収容空間500において、空気は、後述の空気清浄装置60の送風機61により、
図2の矢印A
21、A
22、A
23、A
24が示す方向に流れる。
【0095】
換言すれば、収容空間500において、空気は、後述の空気清浄装置60の送風機61により、吸込口501aから後述の吹出口503cに向かって流れる。収容空間500において、吸込口501aに近い側が上流側である。収容空間500において、吹出口503cに近い側が下流側である。
【0096】
一方、フィルタ配置空間500eは、上側収容空間500cにおける前側半部且つ下側半部の空間である。フィルタ配置空間500eには、後述の空気清浄装置60の第一フィルタ62が配置される空間である。フィルタ配置空間500eは、上側収容空間500cにおいて送風機配置空間500dよりも下流側の空間である。
【0097】
本実施形態の場合、フィルタ配置空間500eと送風機配置空間500dとは、上下に並んでいる。そして、送風機配置空間500dとフィルタ配置空間500eとは、上側カバー部503を構成する仕切り板部503aにより仕切られている。
【0098】
但し、仕切り板部503aは、一部に、貫通孔により構成された通風口503bを有する。通風口503bは、送風機配置空間500dとフィルタ配置空間500eとを、空気の移動を可能な状態で連通している。よって、空気は、送風機配置空間500dとフィルタ配置空間500eとの間で移動可能である。
【0099】
尚、送風機配置空間500dとフィルタ配置空間500eとは、仕切り板により仕切られている必要はない。つまり、仕切り板部503aは、省略されてもよい。この場合、後述の空気清浄装置60の第一フィルタ62の構成も適宜変更されてよい。
【0100】
又、上側カバー部503は、収容空間500の空気を外部空間に吹き出すための吹出口503cを有する。換言すれば、カバー50は、後述の空気清浄装置60により清浄空気が収容空間から吹き出される吹出口503cを有する。吹出口503cは、上側カバー部503の前端部に設けられている。
【0101】
具体的には、吹出口503cは、上側カバー部503において、内箱11及び外箱12よりも前方に突出した部分(以下、上側突出部503dと称する。)に設けられている。上側突出部503dは、上側突出部503dの下面を構成する下側板部503eを有する。吹出口503cは、下側板部503eを上下方向に貫通する貫通孔により構成されている。
【0102】
図2に示すように、吹出口503cは、外扉13の閉状態において、外扉13の上方に設けられている。換言すれば、吹出口503cは、外扉13の閉状態において、外扉13の上面と上下方向において対面する。
【0103】
吹出口503cの一部は、外扉13の閉状態において、外扉13の上面により下方から塞がれている。よって、外扉13の閉状態において、吹出口503cから吹き出した空気は、
図2の矢印A
24が示すように、吹出口503cにおいて外扉13の上面により塞がれていない部分から外部空間9に流れる。
【0104】
又、
図3に示すように、外扉13の開状態において、吹出口503cの下方には、外扉13の上面が存在しない。つまり、吹出口503cは、外扉13の上面により塞がれない。外扉13の開状態において、吹出口503cから吹き出した空気は、
図3の矢印A
34が示すように、吹出口503cから下方に向かう気流を形成する。このような気流は、所謂エアカーテンを構成する。
【0105】
吹出口503cから下方に向かう気流(エアカーテン)は、内扉14よりも前方に形成される。換言すれば、吹出口503cから下方に向かう気流(エアカーテン)は、閉状態の外扉13が存在する位置に形成される。
【0106】
空気清浄装置60は、清浄装置の一例に該当し、収容空間500に設けられている。空気清浄装置60は、収容空間500の空気をろ過した清浄空気を生成する。そして、空気清浄装置60は、生成した清浄空気を外部空間9に吹き出す。
【0107】
このような空気清浄装置60は、内箱11よりも前方且つ下方において、外部空間9から収容空間500に外気を吸い込む。つまり、空気清浄装置60は、吸込口501aにおいて、外部空間9から収容空間500に外気を吸い込む。
【0108】
そして、空気清浄装置60は、内箱11よりも前方且つ上方において、下方に向けて清浄空気を吹き出す。つまり、空気清浄装置60は、吹出口503cから下方に向けて清浄空気を吹き出す。
【0109】
具体的には、空気清浄装置60は、送風機61、第一フィルタ62、及び第二フィルタ63を有する。
【0110】
送風機61は、収容空間500において、吹出口503cよりも上流側に設けられている。具体的には、送風機61は、収容空間500における上側収容空間500c(具体的には、送風機配置空間500d)に設けられている。送風機61は、仕切り板部503aの通風口503bに、上方から対面している。
【0111】
送風機61は、収容空間500において送風機61よりも上流側の空気を、送風機61よりも下流側に送り出す。送風機61から送り出された空気は、通風口503bを通って、フィルタ配置空間500eに流入する。送風機61の具体的な動作については後述する。
【0112】
尚、送風機の数は、1個でも良いし、1個より多くてもよい。送風機の数は、収容空間500の大きさに応じて決定されてよい。送風機の数が1個より多い場合、上側カバー部503は、送風機の数に対応する数の通風口を有してよい。
【0113】
第一フィルタ62は、所謂HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)である。第一フィルタ62は、第一フィルタ62を通過する空気に含まれる微粒子を捕集できる高機能なエアフィルタである。
【0114】
第一フィルタ62は、吹出口503cと送風機61との間に設けられている。第一フィルタ62は、送風機61から送り出された空気に含まれる微粒子を捕集する。第一フィルタ62は、送風機61から送り出された空気をろ過して清浄空気を生成する。第一フィルタ62を通過した空気が、清浄空気である。
【0115】
具体的には、第一フィルタ62は、収容空間500における上側収容空間500c(具体的には、フィルタ配置空間500e)に設けられている。第一フィルタ62は、仕切り板部503aの通風口503bに、下方から対面している。第一フィルタ62は、前後方向及び左右方向に平行な板状のフィルタである。
【0116】
第一フィルタ62の周面(つまり、左右方向における両面、及び、前後方向における両面)は、上側カバー部503においてフィルタ配置空間500eを形成する部分に隙間なく嵌合している。
【0117】
よって、フィルタ配置空間500eから吹出口503cに向かう空気は、全て第一フィルタ62を通過する。換言すれば、フィルタ配置空間500eから吹出口503cに向かう空気は、全て第一フィルタ62によりろ過される。
【0118】
第二フィルタ63は、下側収容空間500aに設けられている。第二フィルタ63は、第二フィルタ63を通過する空気に抵抗を作用する。第二フィルタ63は、下側収容空間500aにおける上流側の端部の近傍に設けられている。第二フィルタ63は、下側収容空間500aにおいて、吸込口501aの下流側の近傍に設けられている。
【0119】
第二フィルタ63の捕集能力は、第一フィルタ62の捕集能力よりも低い。よって、第二フィルタ63は、第一フィルタ62により捕集される微粒子よりも大きい物質を捕集する。
【0120】
第二フィルタ63は、上下方向及び左右方向に平行な板状のフィルタである。第二フィルタ63の周面(つまり、上下方向における両面、及び、左右方向における両面)は、下側カバー部501の内面に隙間なく嵌合している。
【0121】
以下、空気清浄装置60の動作について説明する。空気清浄装置60の動作は、制御部40により制御される。換言すれば、制御部40は、送風機61の動作を制御することにより、空気清浄装置60の動作を制御する。
【0122】
具体的には、制御部40は、培養装置1の駆動状態において、常時、送風機61を駆動する。
【0123】
但し、制御部40は、外扉13の状態に応じて、送風機61の動作状態を切り換える。具体的には、制御部40は、外扉13の開状態(
図3に示す状態)において、送風機61を第一駆動状態で駆動する。
【0124】
一方、制御部40は、外扉13の閉状態(
図2に示す状態)において、送風機61を第二駆動状態で駆動する。
【0125】
第一駆動状態で駆動する送風機61の出力は、第二駆動状態で駆動する送風機61の出力よりも大きい。換言すれば、第一駆動状態において送風機61から送り出される空気の量(風量)は、第二駆動状態において送風機61から送り出される空気の量(風量)よりも大きい。送風機61の風量は、単位時間(1分)当たりに送り出される空気の量(体積)を意味する。
【0126】
更に換言すれば、第一駆動状態において送風機61により収容空間500から吹き出される空気の量(吹出量)は、第二駆動状態において送風機61により収容空間500から吹き出される空気の量(吹出量)よりも大きい。
【0127】
吹出量は、単位時間(1分)当たりに収容空間500から吹き出される空気の量(体積)を意味する。尚、送風機61の第一駆動状態及び第二駆動状態において、後述の陰圧空間500Aの気圧は、常時陰圧に保たれる。一方、送風機61が駆動していない状態(送風機61の非駆動状態とも称する。)において、陰圧空間500Aの気圧は、陰圧には保たれない。
【0128】
換言すれば、空気清浄装置60の駆動状態(第一駆動状態及び第二駆動状態)において、陰圧空間500Aの気圧は、常時陰圧に保たれる。一方、空気清浄装置60の非駆動状態において、陰圧空間500Aの気圧は、陰圧に保たれない。空気清浄装置60の非駆動状態における陰圧空間500Aの気圧は、外部空間9の気圧と同じ気圧であってよい。
【0129】
このような構成は、外扉13の閉状態(
図2に示す状態)における消費電力の低減を図りつつ、収容空間500内の空気が外部空間9に漏洩することを抑制できる。つまり、このような構成は、省エネを図りつつ、外部空間9の汚染を抑止できる。
【0130】
以下、
図3を参照して、外扉13の開状態における空気清浄装置60の動作、及び、収容空間500の状態について説明する。
【0131】
外扉13の開状態において、空気清浄装置60(具体的には、送風機61)は、第一駆動状態で動作する。尚、外扉13の開状態において、循環用送風機23は、送風動作を停止する。このような構成は、内扉14が開かれた状態で、培養室20内の空気が、外部空間9に流出することを抑制できる。この結果、外部空間9が、培養室20内の空気により汚染されることが抑制される。
【0132】
送風機61が第一駆動状態で駆動すると、
図3に矢印A
31で示すように、外部空間9から吸込口501aを通って、外気が収容空間500(具体的には、下側収容空間500a)に吸い込まれる。
【0133】
下側収容空間500aに吸い込まれた空気は、第二フィルタ63を通過する。この際、空気は、第二フィルタ63から抵抗を受ける。本実施形態の場合、空気清浄装置60(具体的には、送風機61)の第一駆動状態において、送風機61の送風量が、第二フィルタ63を通過する空気の量(以下、「第二フィルタ通過量」と称する。)よりも大きい。
【0134】
このため、収容空間500において送風機61と第二フィルタ63との間の空間の気圧が、外部空間9に対して陰圧となる。よって、収容空間500は、一部に、外部空間9に対して陰圧である陰圧空間500Aを有する。
【0135】
陰圧空間500Aは、下側収容空間500aの一部の空間、後側収容空間500b、上側収容空間500cの一部の空間、及び外箱12の隙間や穴を介して空気が移動可能な内箱11と外箱12の間の空間により構成されている。換言すれば、陰圧空間500Aは、内箱11を左側、右側、下側、後側、及び上側から囲む空間でもある。
【0136】
尚、陰圧空間500Aは、少なくとも、内箱11を下側、後側、及び上側から囲む空間であればよい。尚、吸込口501aの位置によって、陰圧空間500Aの位置は変わってよい。例えば、陰圧空間500Aは、少なくとも、内箱11を後側及び上側から囲む空間であってもよい。更に。陰圧空間500Aは、少なくとも、内箱11を上側から囲む空間であってもよい。
【0137】
このような構成は、陰圧空間500Aの空気が、カバー50の隙間を通り抜けて、外部空間9に漏洩することを抑制できる。この結果、陰圧空間500Aの空気に含まれる微粒子が、外部空間9に漏洩することも抑制できる。
【0138】
又、第二フィルタ63を通過した空気は、
図3の矢印A
32、A
33が示すように、下側収容空間500a、後側収容空間500b、及び上側収容空間500cを通り、送風機61に吸い込まれる。
【0139】
送風機61よりも上流側の空気には、後側収容空間500bに配置されたデバイス、デバイスに接続された配線及び配管、並びに、断熱材16等から発生する微粒子が含まれている。尚、断熱材16から発生する微粒子は、外箱12の隙間を通り抜けて、後側収容空間500bに侵入する。
【0140】
送風機61から送り出された空気は、通風口503bを通って、第一フィルタ62に送り込まれる。そして、送風機61から送り出された空気は、第一フィルタ62を通過する。
【0141】
第一フィルタ62は、第一フィルタ62を通過する空気に含まれる微粒子を捕集する。よって、第一フィルタ62を通過した空気は、清浄空気である。このように空気清浄装置60は、収容空間500の空気をろ過して清浄空気を生成する。
【0142】
収容空間500(具体的には、フィルタ配置空間500e)において、第一フィルタ62よりも下流側の空間には、第一フィルタ62を通過した空気が流入する。つまり、第一フィルタ62よりも下流側の空間の空気は、清浄空気である。
【0143】
本実施形態の場合、第一フィルタ62を通過する空気の量は、収容空間500(具体的には、吹出口503c)から吹き出される空気の量(つまり、吹出量)よりも大きい。
【0144】
よって、収容空間500(具体的には、フィルタ配置空間500e)において、第一フィルタ62よりも下流側の空間の気圧は、外部空間9に対して陽圧となる。換言すれば、収容空間500は、一部に、外部空間9に対して陽圧である陽圧空間500Bを有する。
【0145】
陽圧空間500Bは、第一ポート100を介して、培養室20に連通している。よって、空気清浄装置60の第一駆動状態において、培養室20の気圧は、外部空間9に対して陽圧である。
【0146】
このため、第二ポート101からキャップ102が外された場合でも、内扉14の前方空間(つまり、外部空間9)の空気(つまり、外気)が、第二ポート101を通って培養室20に流入することが抑制される。この結果、培養室20に、外気に含まれる粒子が流入することも抑制される。よって、培養室20の環境が、適切な状態で維持される。
【0147】
又、陽圧空間500Bの清浄空気は、送風機61により、吹出口503cから下方に向けて吹き出される。吹出口503cから吹き出された清浄空気は、
図3の矢印A
34が示すように、内扉14の前方に、上方から下方に向かう気流を形成する。
【0148】
この気流は、所謂エアカーテンを構成する。エアカーテンは、左右方向において、内扉14の全長にわたり形成される。又、エアカーテンは、上下方向において、内扉14の全長にわたり形成される。エアカーテンは、内扉14の開状態及び閉状態において、形成される。
【0149】
このようなエアカーテンは、内扉14の開状態において、外部空間9の空気が、培養室20に流入することを抑制する。この結果、培養室20に、外気に含まれる粒子が流入することも抑制される。よって、培養室20の環境が、適切な状態で維持される。
【0150】
尚、制御部40は、内扉14の状態(開状態及び閉状態)に応じて、送風機61の動作を制御してもよい。具体的には、制御部40は、内扉14の開状態における送風機61の送風量を、内扉14の閉状態における送風機61の送風量よりも大きくしてよい。このような構成は、内扉14の開状態において外気が培養室20に流入することを抑制できるとともに、内扉14の閉状態において消費電力の低減を図れる。
【0151】
又、エアカーテンを構成する空気は、清浄空気である。よって、エアカーテンを構成することに起因して、外部空間9が汚染されることもない。
【0152】
本実施形態の場合、エアカーテンを構成する空気が向かう方向に、吸込口501aが設けられている。よって、内扉14の開状態において、エアカーテンを構成する空気は、再び、吸込口501aから収容空間500に吸い込まれる。このように、本実施形態の場合、内扉14の開状態において、収容空間500内の空気が、
図3の矢印A
31~A
34の順に循環する。
【0153】
次に、
図2を参照して、外扉13の閉状態における空気清浄装置60の動作、及び、収容空間500の状態について説明する。
【0154】
外扉13の閉状態において、空気清浄装置60(具体的には、送風機61)は、第二駆動状態で動作する。
【0155】
空気清浄装置60の第二駆動状態における送風機61の出力は、空気清浄装置60の第一駆動状態における送風機61の出力よりも小さい。換言すれば、空気清浄装置60の第二駆動状態における送風機61の風量は、空気清浄装置60の第一駆動状態における送風機61の風量よりも小さい。
【0156】
但し、空気清浄装置60の第二駆動状態において、空気清浄装置60の第一駆動状態と同様に、収容空間500には、陰圧空間500A及び陽圧空間500Bが形成される。換言すれば、送風機61は、空気清浄装置60の第二駆動状態において、収容空間500に陰圧空間500A及び陽圧空間500Bを形成可能な出力で駆動する。
【0157】
送風機61が第二駆動状態で駆動すると、
図2に矢印A
21で示すように、外部空間9から吸込口501aを通って、外気が収容空間500(具体的には、下側収容空間500a)に吸い込まれる。
【0158】
外扉13の閉状態において、吸込口501aを通って収容空間500に吸い込まれる空気の量は、外扉13の開状態において、吸込口501aを通って収容空間500に吸い込まれる空気の量よりも少ない。
【0159】
又、外扉13の閉状態において、収容空間500に吸い込まれる空気(つまり、外気)に作用する通風抵抗は、外扉13の開状態において、収容空間500に吸い込まれる空気(つまり、外気)に作用する通風抵抗よりも大きい。この理由は、外扉13の下面に設けられたパッキンP2により、予備空間501dの入り口(吸込口)が狭くなっているからである。
【0160】
このように、外扉13の閉状態において、空気は、収容空間500に吸い込まれにくい。よって、送風機61が、第一駆動状態と比べて出力が小さい第二駆動状態で駆動している場合であっても、収容空間500に陰圧空間500Aが形成される。
【0161】
下側収容空間500aに吸い込まれた空気は、第二フィルタ63を通過する。この際、空気は、第二フィルタ63から抵抗を受ける。本実施形態の場合、空気清浄装置60(具体的には、送風機61)の第二駆動状態において、送風機61の送風量が、第二フィルタ63を通過する空気の量(つまり、第二フィルタ通過量)よりも大きい。
【0162】
このため、収容空間500において送風機61と第二フィルタ63との間の空間の気圧が、外部空間9に対して陰圧となる。換言すれば、収容空間500は、一部に、外部空間9に対して陰圧である陰圧空間500Aを有する。
【0163】
陰圧空間500Aは、下側収容空間500aの一部の空間、後側収容空間500b、及び上側収容空間500cの一部の空間により構成されている。換言すれば、陰圧空間500Aは、内箱11を下側、後側、及び上側から囲む空間でもある。
【0164】
このような構成は、陰圧空間500Aの空気が、カバー50の隙間を通り抜けて、外部空間9に漏洩することを抑制できる。この結果、陰圧空間500Aの空気に含まれる微粒子が、外部空間9に漏洩することも抑制できる。
【0165】
本実施形態の場合、外扉13の開状態及び閉状態において、陰圧空間500Aが形成される。このため、外扉13の開状態及び閉状態において、陰圧空間500Aの空気が、カバー50の隙間を通り抜けて、外部空間9に漏洩することを抑制できる。
【0166】
又、第二フィルタ63を通過した空気は、
図3の矢印A
22、A
23が示すように、下側収容空間500a、後側収容空間500b、及び上側収容空間500cを通り、送風機61に吸い込まれる。
【0167】
送風機61よりも上流側の空気には、後側収容空間500bに配置されたデバイス、デバイスに接続された配線及び配管、並びに、断熱材16等から発生する微粒子が含まれている。
【0168】
送風機61から送り出された空気は、通風口503bを通って、第一フィルタ62に送り込まれる。そして、送風機61から送り出された空気は、第一フィルタ62を通過する。
【0169】
第一フィルタ62は、第一フィルタ62を通過する空気に含まれる微粒子を捕集する。よって、第一フィルタ62を通過した空気は、清浄空気である。このように空気清浄装置60は、収容空間500の空気をろ過して清浄空気を生成する。
【0170】
収容空間500(具体的には、フィルタ配置空間500e)において、第一フィルタ62よりも下流側の空間には、第一フィルタ62を通過した空気が流入する。つまり、第一フィルタ62よりも下流側の空間の空気は、清浄空気である。
【0171】
本実施形態の場合、第一フィルタ62を通過する空気の量は、収容空間500(具体的には、吹出口503c)から吹き出される空気の量(つまり、吹出量)よりも大きい。
【0172】
よって、収容空間500(具体的には、フィルタ配置空間500e)において、第一フィルタ62よりも下流側の空間の気圧は、外部空間9に対して陽圧となる。換言すれば、収容空間500は、一部に、外部空間9に対して陽圧である陽圧空間500Bを有する。
【0173】
陽圧空間500Bは、第一ポート100を介して、培養室20に連通している。よって、空気清浄装置60の第一駆動状態において、培養室20の気圧は、外部空間9に対して陽圧である。
【0174】
尚、送風機61の第一駆動状態及び第二駆動状態において、陽圧空間500Bの気圧は、常時陽圧に保たれる。一方、送風機61の非駆動状態において、陽圧空間500Bの気圧は、陽圧には保たれない。
【0175】
換言すれば、空気清浄装置60の駆動状態(第一駆動状態及び第二駆動状態)において、陽圧空間500Bの気圧は、常時陽圧に保たれる。一方、空気清浄装置60の非駆動状態において、陽圧空間500Bの気圧は、陽圧に保たれない。空気清浄装置60の非駆動状態における陽圧空間500Bの気圧は、外部空間9の気圧と同じ気圧であってよい。
【0176】
又、陽圧空間500Bの清浄空気は、送風機61により、吹出口503cから下方に向けて吹き出される。但し、外扉13の閉状態において、吹出口503cの一部は、外扉13の上面により下方から塞がれている。
【0177】
このため、吹出口503cから下方に向けて吹き出された空気は、外扉13の上面に当たった後、
図2の矢印A
24が示すように、外扉13の前方に向かって流れる。このため、内扉14の前方に、エアカーテンは形成されない。
【0178】
尚、本実施形態の場合、外扉13の閉状態において、空気清浄装置60により吹出口503cから吹き出される空気の量は、外扉13の開状態において、空気清浄装置60により吹出口503cから吹き出される空気の量よりも少ない。
【0179】
又、外扉13の閉状態において、吹出口503cから吹き出される空気は、清浄空気である。よって、外扉13の閉状態において、空気が吹出口503cから吹き出されることに起因して、外部空間9が汚染されることはない。
【0180】
(本実施形態の作用・効果)
以上のような構成を有する本実施形態に係る培養装置1によれば、外部空間9から培養室20への微粒子等の異物の侵入を抑制しつつ、培養装置1内で生じた微粒子が外部空間9に漏洩することを抑制できる。この理由については上述の通りである。又、その他、本実施形態に係る培養装置1から得られる作用・効果についても、上述の通りである。
【0181】
[付記]
本発明に係る培養装置を実施する場合に、収容空間に配置されるデバイスは、上述のデバイスに限定されない。又、収容空間に、空気清浄装置以外のデバイスが配置されていない構成も、本発明の技術的範囲に含まれる。具体的には、収容空間に清浄装置以外のデバイスが配置されない構成として、内箱の周囲に設けられたダクトが挙げられる。
【0182】
又、本発明に係る培養装置を実施する場合に、培養装置は、上述の総ての構成を備えている必要はない。技術的に矛盾しない範囲において、培養装置が備える構成は、適宜選択されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、種々の培養装置に適用できる。
【符号の説明】
【0184】
1 培養装置
10 筐体
100 第一ポート
101 第二ポート
102 キャップ
11 内箱
110 開口部
11a 後側壁部
11b 上側壁部
11c 下側壁部
12 外箱
13 外扉
14 内扉
15 前板
16 断熱材
17 電装ボックス
18 蒸気供給装置
18a 蒸気発生部
18b 蒸気供給部
19 除湿部材
19a 冷却装置
19b 断熱材
20 培養室
22 ダクト
220 気体通路
221 吸込口
222 吹出口
23 循環用送風機
24 温度センサ
25a、25b ガス供給装置
27 外気温センサ
28 水温センサ
30 加熱部
31、32、33、34 ヒータ
40 制御部
50 カバー
500 収容空間
500a 下側収容空間
500b 後側収容空間
500c 上側収容空間
500d 送風機配置空間
500e フィルタ配置空間
500A 陰圧空間
500B 陽圧空間
501 下側カバー部
501a 吸込口
501b 下側突出部
501c 上側板部
501d 予備空間
502 後側カバー部
503 上側カバー部
503a 仕切り板部
503b 通風口
503c 吹出口
503d 上側突出部
503e 下側板部
60 空気清浄装置
61 送風機
62 第一フィルタ
63 第二フィルタ
9 外部空間
P、P2、P3 パッキン
D 加湿皿
H 穴
H2 穴又は隙間