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特開2025-1235セッティング支援装置、及びセッティング支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001235
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】セッティング支援装置、及びセッティング支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241225BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100715
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】運転レベルに応じた車両のセッティングパラメータを提案する。
【解決手段】サーバは、実行装置と、記憶装置とを備えている。記憶装置は、基準走行データと、規定データと、を記憶している。実行装置は、特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである走行データを取得する。実行装置は、取得した走行データ、及び記憶装置に記憶されている基準走行データの比較に基づいて、複数段階の運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定する(S53)。実行装置は、特定した運転レベルを規定データに当てはめることにより、運転レベルに応じたセッティングパラメータを出力する(S62)。なお、実行装置は、機械学習により予め学習された学習済みモデルを用いることにより、運転レベルを特定してもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行装置と、記憶装置とを備え、
前記記憶装置は、
予め定められた特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである基準走行データと、
車両において調整可能なパラメータであって当該車両の走行特性に影響するパラメータを、セッティングパラメータとしたとき、予め定められた複数段階の運転レベルそれぞれと、前記セッティングパラメータと、の関係を規定している規定データと、
を記憶しており、
前記実行装置は、
前記特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである走行データを取得することと、
取得した前記走行データ、及び前記記憶装置に記憶されている前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、
特定した前記運転レベルを前記規定データに当てはめることにより、前記運転レベルに応じた前記セッティングパラメータを出力することと、
を実行する
セッティング支援装置。
【請求項2】
前記実行装置は、
取得した前記走行データの中から、当該走行データが取得された車両の周囲の予め定められた基準範囲内に他車両が存在しないときの前記走行データを抽出することと、
抽出しなかった前記走行データを除外した上で、抽出した前記走行データ及び前記記憶装置に記憶されている前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、
を実行する
請求項1に記載のセッティング支援装置。
【請求項3】
前記走行データは、当該走行データが取得された車両の周囲の映像データを含み、
前記実行装置は、
前記映像データに基づいて、取得した前記走行データの中から、当該走行データが取得された車両の周囲の前記基準範囲内に他車両が存在しないときの前記走行データを抽出すること、
を実行する
請求項2に記載のセッティング支援装置。
【請求項4】
前記記憶装置は、複数の前記基準走行データを記憶しており、
前記実行装置は、
前記記憶装置に記憶されている複数の前記基準走行データの中から、取得した前記走行データに基づいて、当該走行データに最も類似する前記基準走行データを特定することと、
取得した前記走行データ、及び特定した前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、
を実行する
請求項1に記載のセッティング支援装置。
【請求項5】
実行装置と、記憶装置とを備えるセッティング支援装置を対象とし、
前記記憶装置は、
予め定められた特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである基準走行データと、
車両において調整可能なパラメータであって当該車両の走行特性に影響するパラメータを、セッティングパラメータとしたとき、予め定められた複数段階の運転レベルそれぞれと、前記セッティングパラメータと、の関係を規定している規定データと、
を記憶しており、
前記実行装置に、
前記特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである走行データを取得することと、
取得した前記走行データ、及び前記記憶装置に記憶されている前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、
特定した前記運転レベルを前記規定データに当てはめることにより、前記運転レベルに応じた前記セッティングパラメータを出力することと、
を実行させる
セッティング支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セッティング支援装置、及びセッティング支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のシステムは、車両の運転者に運転操作を指導する。このシステムは、車両と、スマートフォンと、サーバとを備えている。車両は、運転操作の指導の対象とする運転者が運転する車両である。また、スマートフォンは、例えば車両の車室内に取り付けられたものである。サーバは、好ましい運転操作がされたときの車両の走行データを記憶している。また、サーバは、現在走行している車両から走行データを繰り返し取得する。サーバは、取得した走行データと好ましい運転操作がされたときの走行データとの比較に基づいて、運転操作に関する通知が必要であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-140159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、例えば取得した走行データと好ましい運転操作がされたときの走行データとが乖離している状況で運転操作に関する通知が必要であると判定される。そのため、特許文献1に記載のシステムによれば、車両の運転者の運転の習熟度などのような運転レベルを間接的に把握可能である。
【0005】
ところで、例えば車両専用のサーキット場を車両が走行する状況などでは、車両の運転者の運転レベルに応じて、その車両に設定するべき各種のセッティングパラメータが変わり得る。ここでいうセッティングパラメータとは、例えばサスペンションの硬さ及びタイヤの種類といった、車両の走行特性を左右するパラメータである。しかし、特許文献1に記載のシステムでは、車両の運転者の運転レベルに応じた車両のセッティングパラメータに関して何ら着目していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのセッティング支援装置は、実行装置と、記憶装置とを備え、前記記憶装置は、予め定められた特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである基準走行データと、車両において調整可能なパラメータであって当該車両の走行特性に影響するパラメータを、セッティングパラメータとしたとき、予め定められた複数段階の運転レベルそれぞれと、前記セッティングパラメータと、の関係を規定している規定データと、を記憶しており、前記実行装置は、前記特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである走行データを取得することと、取得した前記走行データ、及び前記記憶装置に記憶されている前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、特定した前記運転レベルを前記規定データに当てはめることにより、前記運転レベルに応じた前記セッティングパラメータを出力することと、を実行する。
【0007】
上記課題を解決するためのセッティング支援プログラムは、実行装置と、記憶装置とを備えるセッティング支援装置を対象とし、前記記憶装置は、予め定められた特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである基準走行データと、車両において調整可能なパラメータであって当該車両の走行特性に影響するパラメータを、セッティングパラメータとしたとき、予め定められた複数段階の運転レベルそれぞれと、前記セッティングパラメータと、の関係を規定している規定データと、を記憶しており、前記実行装置に、前記特定区間を車両が走行したときに当該車両に搭載されたセンサによって取得された時系列データである走行データを取得することと、取得した前記走行データ、及び前記記憶装置に記憶されている前記基準走行データの比較に基づいて、複数段階の前記運転レベルのうちのどのレベルに該当するのかを特定することと、特定した前記運転レベルを前記規定データに当てはめることにより、前記運転レベルに応じた前記セッティングパラメータを出力することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、運転レベルに応じた車両のセッティングパラメータを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、セッティング支援システムの概略構成図である。
図2図2は、取得制御を示すシーケンス図である。
図3図3は、特定制御を示すシーケンス図である。
図4図4は、配信制御を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<セッティング支援システムの概略構成>
以下、本発明の一実施形態を図1図4にしたがって説明する。先ず、セッティング支援システム100の概略構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、セッティング支援システム100は、複数の車両10を備えている。車両10としては、例えばユーザが所有する自動車である。なお、図1では、1つの車両10のみを代表して図示している。
【0012】
車両10は、アクセル操作量センサ31、舵角センサ32、ブレーキ操作量センサ33、車速センサ34、及び加速度センサ35を備えている。
アクセル操作量センサ31は、運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCを検出する。舵角センサ32は、運転者が操作するステアリングホイールの角度位置である舵角RAを検出する。ブレーキ操作量センサ33は、運転者が操作するブレーキペダルの操作量であるブレーキ操作量BRAを検出する。車速センサ34は、車両10の速度である車速SPを検出する。
【0013】
加速度センサ35は、いわゆる三軸センサである。すなわち、加速度センサ35は、前後加速度GX、左右加速度GY、及び上下加速度GZを検出可能である。前後加速度GXは、車両10の前後軸に沿う加速度である。左右加速度GYは、車両10の左右軸に沿う加速度である。上下加速度GZは、車両10の上下軸に沿う加速度である。
【0014】
また、車両10は、GNSS受信機36、カメラ37、変速スイッチ38、及びディスプレイ39を備えている。
GNSS受信機36は、図示しないGNSS用の衛星との通信により車両10が位置する地点の座標である位置座標PCを検出する。なお、「GNSS」は、Global Navigation Satellite Systemの略称である。
【0015】
カメラ37は、被写体の映像である映像データDPを検出する。本実施形態において、カメラ37は、車両10の周囲のうち当該車両10に対して前側の領域の映像を、映像データDPとして検出する。変速スイッチ38は、図示しない変速機を操作するためのスイッチである。なお、変速スイッチ38は、いわゆるパドルシフトスイッチと呼称されるものである。ディスプレイ39は、各種の情報を表示可能である。また、ディスプレイ39は、いわゆるタッチパネルディスプレイである。したがって、ユーザは、ディスプレイ39を介して各種の情報を入力することも可能である。
【0016】
車両10は、制御装置20を備えている。制御装置20は、アクセル操作量センサ31、舵角センサ32、ブレーキ操作量センサ33、車速センサ34、加速度センサ35、及びGNSS受信機36から各種の値を示す信号を取得する。また、制御装置20は、カメラ37、変速スイッチ38、及びディスプレイ39から各種の信号を取得する。制御装置20は、変速スイッチ38からの信号に基づいて変速機で設定すべき設定変速段GSを算出する。なお、設定変速段GSは、変速スイッチ38の操作に応じて変速機で設定すべき変速段、例えば「1速」、「2速」などの1つの変速段を示すものである。さらに、制御装置20は、ディスプレイ39に制御信号を出力することにより、ディスプレイ39において各種の情報を表示する。
【0017】
制御装置20は、実行部21、記憶部22、及び通信部23を備えている。通信部23は、通信ネットワーク200を介して車両10の外部の機器と無線通信可能である。記憶部22は、読み出しのみが可能なROMと、読み出し及び書き込みが可能な揮発性のRAMと、読み出し及び書き込みが可能な不揮発性のストレージとを含んでいる。記憶部22は、制御装置20が取得した情報等を記憶する。また、記憶部22は、各種のプログラムを予め記憶している。実行部21の一例は、CPUである。実行部21は、記憶部22のプログラムを読み込むことにより、各種の処理を実行する。
【0018】
図1に示すように、セッティング支援システム100は、サーバ50を備えている。サーバ50は、実行部51、記憶部52、及び通信部53を備えている。通信部53は、通信ネットワーク200を介してサーバ50の外部の機器と通信可能である。記憶部52は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶部52は、サーバ50が取得した情報等を記憶する。また、記憶部52は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。記憶部52は、各種のプログラムの一つとして、支援プログラム52Aを予め記憶している。また、記憶部52は、各種のデータとして、規定データ52B、写像データ52C、複数の基準走行データDDS、複数の基準環境データDES、及び複数の基準セッティングパラメータPASを予め記憶している。なお、規定データ52B、写像データ52C、複数の基準走行データDDS、複数の基準環境データDES、及び複数の基準セッティングパラメータPASの詳細は後述する。また、図1では、1つの基準走行データDDS、1つの基準環境データDES、及び1つの基準セッティングパラメータPASのみを代表して図示している。実行部51の一例は、CPUである。実行部51は、記憶部52の支援プログラム52Aを読み込むことにより、セッティング支援装置に関する各種の処理を実行する。すなわち、本実施形態において、サーバ50は、セッティング支援装置の一例である。また、実行部51は、実行装置の一例である。記憶部52は、記憶装置の一例である。さらに、支援プログラム52Aは、セッティング支援プログラムの一例である。
【0019】
図1に示すように、セッティング支援システム100は、複数の個人端末70を備えている。個人端末70の一例は、車両10のユーザが所有するスマートフォンである。なお、図1では、1つの個人端末70のみを代表して図示している。
【0020】
個人端末70は、実行部71、記憶部72、通信部73、及びディスプレイ74を備えている。通信部73は、通信ネットワーク200を介して個人端末70の外部の機器と無線通信可能である。記憶部72は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶部72は、個人端末70が取得した情報等を記憶する。また、記憶部72は、各種のプログラムを予め記憶している。記憶部72は、後述する配信制御を実行するために、個人端末70のユーザに紐づけられた車両10に関する情報を予め記憶している。実行部71の一例は、CPUである。実行部71は、記憶部72のプログラムを読み込むことにより、各種の処理を実行する。ディスプレイ74は、各種の情報を表示可能である。また、ディスプレイ74は、いわゆるタッチパネルディスプレイである。したがって、ユーザは、ディスプレイ74を介して各種の情報を入力することも可能である。
【0021】
<取得制御>
次に、図2を参照して、車両10の制御装置20及びサーバ50が実行する取得制御について説明する。取得制御は、1つのサーバ50と複数の車両10の制御装置20との間でそれぞれ実行される。この取得制御は、サーバ50が後述する走行データDDを取得するための制御である。本実施形態において、車両10の制御装置20は、予め定められたサーキット場の走行エリアを車両10が走行し終わった後に、取得制御を実行する。例えば、制御装置20の実行部21は、サーキット場内で位置座標PCが変化し続けた後、位置座標PCが変化していない状態が一定期間継続した場合に、取得制御を開始する。なお、サーキット場の走行エリアは、特定区間の一例である。
【0022】
図2に示すように、制御装置20の実行部21は、取得制御を開始すると、ステップS11の処理を実行する。ステップS11において、制御装置20の実行部21は、ステップS11の処理時点から予め定められた所定期間前までに制御装置20が取得した時系列データを、走行データDDとして生成する。本実施形態において、走行データDDは、アクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、位置座標PC、設定変速段GSなどの各種の値についての時系列データを含んでいる。また、走行データDDは、映像データDPについての時系列データを含んでいる。なお、所定期間の一例は、数分~十数分程度である。したがって、車両10がサーキット場を複数回に亘って周回走行した状況において、走行データDDは、車両10がサーキット場を複数回に亘って周回走行しているときの時系列データを含んでいる。本実施形態において、走行データDDは、後述する運転レベルLDの特定対象とする運転者が車両10を走行させたときに当該車両10に搭載されたセンサによって取得された各種の値についての時系列データである。ステップS11の後、制御装置20の実行部21は、処理をステップS12に進める。
【0023】
ステップS12において、制御装置20の実行部21は、走行データDDを、サーバ50に送信する。その結果、サーバ50の実行部51は、走行データDDを取得する。このとき、サーバ50の実行部51は、送信元の車両10と紐づけた状態で走行データDDを記憶部52に記憶する。さらに、サーバ50の実行部51は、走行データDDに紐づけて環境データDEを記憶部52に記憶する。ここで、環境データDEは、走行データDDが取得されたときの、例えばサーキット場の天気情報IW及びサーキット場の路面温度TRを含むものである。なお、サーバ50の実行部51は、例えばサーキット場に設置されたセンサにより天気情報IW及び路面温度TRを取得可能である。ステップS12の後、サーバ50の実行部51は、今回の取得制御を終了する。
【0024】
<特定制御>
次に、図3を参照して、サーバ50が実行する特定制御について説明する。この特定制御は、車両10のセッティングパラメータPAを特定するための制御である。ここで、セッティングパラメータPAは、車両10において調整可能なパラメータであって当該車両10の走行特性に影響するパラメータである。具体的には、セッティングパラメータPAは、例えば、車両10のサスペンションの硬さ、車両10のタイヤの種類、車両10のタイヤの空気圧などの複数のパラメータを含むものである。本実施形態において、サーバ50は、取得制御により走行データDDを取得する度に、取得した走行データDDに基づいた特定制御を開始する。
【0025】
図3に示すように、サーバ50の実行部51は、特定制御を開始すると、ステップS31の処理を実行する。ステップS31において、サーバ50の実行部51は、走行データDDの中から、当該走行データDDが取得された車両10について予め定められた前提条件を満たすデータを、抽出走行データDDEとして抽出する。具体的には、サーバ50の実行部51は、以下の条件(1)~条件(3)の全てを満たす場合に、前提条件を満たすデータであると判定する。
【0026】
条件(1):車両10が走行したサーキット場の2周目以降のデータであり、かつ、最終周目よりも前のデータであること。
条件(2):車両10の周囲の予め定められた基準範囲内に他車両が存在しないときのデータであること。
【0027】
条件(3):条件(1)及び条件(2)を満たし、かつ、車両10が走行したサーキット場の最も初期の周回走行のデータであること。
例えば、サーバ50の実行部51は、走行データDDに含まれる位置座標PCの時系列データに基づいて、条件(1)を満たすか否かを判定する。また、例えば、サーバ50の実行部51は、走行データDDに含まれる映像データDPの時系列データに基づいて、条件(2)を満たすか否かを判定する。なお、上記の基準範囲の一例は、車両10を中心とした半径数メートル~半径数十メートルの範囲である。例えば、車両10によるサーキット場の2周目、3周目、及び4週目の周回走行のデータが条件(1)及び条件(2)を満たしている場合、サーバ50の実行部51は、条件(3)を満たす2周目の周回走行のデータを、抽出走行データDDEとして抽出する。ステップS31の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS41に進める。
【0028】
ステップS41において、サーバ50の実行部51は、記憶部52が記憶している複数の基準走行データDDSから、抽出走行データDDEに対応する基準走行データDDSを抽出する。サーバ50の実行部51は、例えば以下のように抽出走行データDDEに対応する基準走行データDDSを抽出する。先ず、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに対応する車両10が走行したサーキット場と同じサーキット場についての基準走行データDDSを抽出する。本実施形態において、基準走行データDDSは、車両10の運転に一定以上習熟した運転者が車両10を走行させたときに当該車両10に搭載されたセンサによって取得された各種の値についての時系列データである。なお、基準走行データDDSに対応する車両10の車種は、抽出走行データDDEに対応する車両10の車種と同じである。また、車両10の運転に一定以上習熟した運転者の一例は、レーシングドライバーである。基準走行データDDSは、走行データDDと同様に、アクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、位置座標PC、設定変速段GSなどの各種の値についての時系列データを含んでいる。このステップS41において、例えば、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに含まれる位置座標PC及び基準走行データDDSに含まれる位置座標PCを比較することにより、同じサーキット場についての基準走行データDDSを抽出できる。さらに、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに紐づけられた環境データDE、基準走行データDDSに紐づけられた基準環境データDESに基づいて、近い環境で車両10が走行したときの基準走行データDDSを抽出する。ここで、基準環境データDESは、環境データDEと同様に、基準走行データDDSが取得されたときの、例えばサーキット場の天気情報IW及びサーキット場の路面温度TRを含むものである。このステップS41において、例えば、抽出走行データDDEに紐づけられた環境データDEの天気情報IWが「晴れ」を示すものである場合、サーバ50の実行部51は、基準環境データDESの天気情報IWが「晴れ」を示すものを特定する。さらに、サーバ50の実行部51は、特定した基準環境データDESに紐づけられた基準走行データDDSを抽出する。その結果、ステップS41において、サーバ50の実行部51は、同じサーキット場のデータであり、かつ、近い環境のデータであるものを、抽出走行データDDEに対応する基準走行データDDSとして抽出する。ステップS41の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS42に進める。
【0029】
ステップS42において、サーバ50の実行部51は、ステップS41で抽出した基準走行データDDSの中から、抽出走行データDDEに基づいて、当該抽出走行データDDEに最も類似する基準走行データDDSを特定する。例えば、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに含まれる位置座標PCの時系列データに対して、基準走行データDDSに含まれる位置座標PCの時系列データが最も類似しているものを、基準走行データDDSとして特定する。換言すると、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに対応する車両10がサーキット場を走行したときの経路に対して、最も近い経路であるものを、抽出走行データDDEに最も類似する基準走行データDDSとして特定する。ステップS42の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS43に進める。
【0030】
ステップS43において、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに対応する車両10の運転者の走行スタイルを特定する。ここで、走行スタイルは、例えば、アンダーステアリング、オーバーステアリング、ニュートラルステアリングといった、運転者のステアリング操作の傾向を示すものである。サーバ50の実行部51は、例えば以下のように走行スタイルを特定する。前提として、記憶部52は、基準走行データDDS毎に紐づけられた走行スタイルを記憶している。実行部51は、ステップS42で特定した基準走行データDDSに紐づけられた走行スタイルを記憶部52から取得する。そして、実行部51は、取得した走行スタイルを、抽出走行データDDEに対応する車両10の運転者の走行スタイルとして特定する。ステップS43の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS51に進める。
【0031】
ステップS51において、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDE、及びステップS42で特定した基準走行データDDSを入力変数として生成する。ここで、サーキット場において、車両10の進行方向に沿ってN個の特定地点が予め定められているとする。なお、「N」は、2以上の整数である。また、サーキット場のスタート地点からゴール地点へと向かう順に、第1地点のデータ、第2地点のデータ、・・・第N地点のデータとする。さらに、上述したように、走行データDDは、アクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、位置座標PC、設定変速段GSなどの各種の値についての時系列データを含んでいる。ここで、抽出走行データDDEは、合計M種の値を含んでいるとする。なお、「M」は、2以上の整数である。ステップS51において、サーバ50の実行部51は、入力変数x(1)~入力変数x(M)に、抽出走行データDDEのうち第1地点のデータに含まれる合計M種の値を1つずつ順に代入する。同様に、サーバ50の実行部51は、入力変数x(M+1)~入力変数x(M×2)に、抽出走行データDDEのうち第2地点のデータに含まれる合計M種の値を1つずつ順に代入する。上と同じ要領で入力変数を生成することにより、サーバ50の実行部51は、入力変数x(1)~入力変数x(M×N)を生成する。
【0032】
また、基準走行データDDSは、アクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、位置座標PC、設定変速段GSなどの各種の値についての時系列データを含んでいる。すなわち、基準走行データDDSは、抽出走行データDDEと同様に、合計M種の値を含んでいる。そして、サーバ50の実行部51は、入力変数x(M×N+1)~入力変数x(M×(N+1))に、基準走行データDDSのうち第1地点のデータに含まれる合計M種の値を1つずつ順に代入する。また、サーバ50の実行部51は、入力変数x(M×(N+1)+1)~入力変数x(M×(N+2))に、基準走行データDDSのうち第2地点のデータに含まれる合計M種の値を1つずつ順に代入する。上と同じ要領で入力変数を生成することにより、サーバ50の実行部51は、入力変数x(M×N+1)~入力変数x(M×N×2)を生成する。なお、以下では、ステップS51で生成された入力変数の種類の数を、「Z」として記載する。
【0033】
なお、入力変数に代入するアクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、設定変速段GSの値は、各種の値を数値に変換したものである。また、入力変数に代入する位置座標PCの値は、上記の特定地点について、サーキット場における車両10の進行方向に直交する方向の位置を示す数値である。ステップS51の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS52に進める。
【0034】
ステップS52において、サーバ50の実行部51は、写像データ52Cで記述された写像に、入力変数x(1)~入力変数x(Z)及びバイアスパラメータとしての入力変数x(0)を入力することによって、出力変数y(i)の値を算出する。
【0035】
写像データ52Cで記述された写像の一例は、関数近似器であり、中間層が1層の全結合順伝搬型のニューラルネットワークである。具体的には、写像では、入力変数x(1)~入力変数x(Z)及びバイアスパラメータとしての入力変数x(0)が、係数wFjk(j=1~m、k=0~Z)によって規定される線形写像にて変換された「m」個の値のそれぞれが活性化関数fに代入される。その結果、中間層のノードの値が定まる。また、係数wSij(i=1)によって規定される線形写像によって中間層のノードの値が変換された値のそれぞれが活性化関数gに代入されることによって、出力変数y(1)が定まる。ここで、出力変数y(1)は、例えば車両10の運転者の運転の習熟度を示す数値である。また、出力変数y(1)の値が大きいほど、車両10の運転者の運転の習熟度は高いことを示す。なお、抽出走行データDDEに含まれる各種の値と基準走行データDDSに含まれる各種の値とが一致しているほど、出力変数y(1)が高くなる。したがって、抽出走行データDDE及び基準走行データDDSの比較に基づいて出力変数y(1)が定まる。また、抽出走行データDDEはステップS31で抽出した走行データDDであるため、ステップS31で抽出しなかった走行データDDが除外された上で、ステップS31で抽出した走行データDDに基づいて出力変数y(1)が定まる。本実施形態において、活性化関数fの一例は、ReLU関数である。また、活性化関数gの一例は、シグモイド関数である。すなわち、出力変数y(1)は、「0」~「1」の範囲で変化し得る。
【0036】
写像データ52Cで記述された写像は、例えば以下のように予め学習されたものである。先ず、様々な運転者によりサーキット場を車両10で走行してもらいつつ、上記と同じ要領で複数の抽出走行データDDEを抽出する。また、複数の抽出走行データDDEのうち、サーキット場を1周する時間が最も短いものを、基準走行データDDSとする。さらに、上と同じ要領で、基準走行データDDSを用いて、入力変数x(M×N+1)~入力変数x(M×N×2)を生成する。ここで、入力変数x(M×N+1)~入力変数x(M×N×2)と同じものを、入力変数x(1)~入力変数x(M×N)として生成した場合には、出力変数y(1)の値を「1」とする。また、複数の抽出走行データDDEのうち、基準走行データDDSの各種の値との類似度が最も低いものを特定する。ここで、上と同じ要領で、特定した抽出走行データDDEを用いて、入力変数x(1)~入力変数x(M×N)を生成する。このとき、出力変数y(1)の値を「0」とする。このようなデータを写像に入力することで、機械学習により写像を学習する。ステップS52の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS53に進める。
【0037】
ステップS53において、サーバ50の実行部51は、出力変数(1)に基づいて、予め定められた複数段階の運転レベルLDのうちのどの運転レベルLDに該当するかを特定する。本実施形態において、複数段階の運転レベルLDは、「初級」、「中級」、「上級」、「プロ級」といった4段階のレベルである。例えば出力変数(1)が「0.50」未満である場合、サーバ50の実行部51は、運転レベルLDを「初級」として特定する。例えば出力変数(1)が「0.50」以上であって「0.75」未満である場合、サーバ50の実行部51は、運転レベルLDを「中級」として特定する。例えば出力変数(1)が「0.75」以上であって「0.90」未満である場合、サーバ50の実行部51は、運転レベルLDを「上級」として特定する。例えば出力変数(1)が「0.90」以上である場合、サーバ50の実行部51は、運転レベルLDを「プロ級」として特定する。ステップS53の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS61に進める。
【0038】
ステップS61において、サーバ50の実行部51は、基準走行データDDSに基づいて、基準セッティングパラメータPASを特定する。サーバ50の実行部51は、例えば以下のように基準セッティングパラメータPASを特定する。ここで、基準セッティングパラメータPASは、基準走行データDDSを取得した車両10において採用されていた調整可能なパラメータであって当該車両10の走行特性に影響するパラメータである。すなわち、基準セッティングパラメータPASは、基準走行データDDSを取得した車両10に対応するセッティングパラメータである。基準セッティングパラメータPASは、基準走行データDDSに予め紐づけられている。そして、サーバ50の実行部51は、ステップS42で特定した基準走行データDDSに紐づけられた基準セッティングパラメータPASを、ステップS42で特定した基準走行データDDSに対応する基準セッティングパラメータPASとして特定する。ステップS61の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS62に進める。
【0039】
ステップS62において、サーバ50の実行部51は、車両10の運転者についての現在の運転レベルLDを規定データ52Bに当てはめることにより、現在の運転レベルLDに応じたセッティングパラメータPAを出力する。ここで、現在の運転レベルLDは、ステップS53で特定した運転レベルLDである。サーバ50の実行部51は、例えば以下のようにセッティングパラメータPAを特定する。ここで、規定データ52Bは、複数段階の運転レベルLDそれぞれと、セッティングパラメータPAとの関係を規定している。具体例として、規定データ52Bは、運転レベルLD毎に予め定められた係数を含んでいる。ステップS62において、サーバ50の実行部51は、基準セッティングパラメータPASに含まれる車両10のサスペンションの硬さに、現在の運転レベルLDに応じた規定データ52Bの係数を乗算することで、サスペンションの硬さを補正する。そして、サーバ50の実行部51は、補正したサスペンションの硬さを、セッティングパラメータPAに含まれるサスペンションの硬さとして特定する。例えば、サーバ50の実行部51は、運転レベルLDが低いほど、セッティングパラメータPAに含まれるサスペンションの硬さを柔らかくする。なお、セッティングパラメータPAに含まれる複数のパラメータのうち、サスペンションの硬さ以外の他のパラメータは、基準セッティングパラメータPASと同じである。ステップS62の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS63に進める。
【0040】
ステップS63において、サーバ50の実行部51は、1つ上の運転レベルLDを規定データ52Bに当てはめることにより、1つ上の運転レベルLDに応じたセッティングパラメータPAを出力する。ここで、1つ上の運転レベルLDは、ステップS53で特定した運転レベルLDよりも1つだけ高い運転レベルLDである。例えば、ステップS53で特定した運転レベルLDが「初級」である場合、1つ上の運転レベルLDは「中級」である。ステップS63において、サーバ50の実行部51は、ステップS62と同様に、セッティングパラメータPAを特定する。すなわち、サーバ50の実行部51は、基準セッティングパラメータPASに含まれる車両10のサスペンションの硬さに、1つ上の運転レベルLDに応じた規定データ52Bの係数を乗算することで、サスペンションの硬さを補正する。そして、サーバ50の実行部51は、補正したサスペンションの硬さを、セッティングパラメータPAに含まれるサスペンションの硬さとして特定する。ステップS63の後、サーバ50の実行部51は、今回の特定制御を終了する。なお、ステップS53で特定した運転レベルLDが「プロ級」である場合、サーバ50の実行部51は、ステップS63の処理を実行せずに、今回の特定制御を終了する。
【0041】
<配信制御>
次に、図4を参照して、サーバ50及び個人端末70が実行する配信制御について説明する。配信制御は、1つのサーバ50と複数の個人端末70との間でそれぞれ実行される。この配信制御は、セッティングパラメータPA等に関する情報をサーバ50から個人端末70に送信するための制御である。本実施形態において、個人端末70は、当該個人端末70のディスプレイ74を介してユーザがセッティングパラメータPA等の配信を要求する操作を行う度に、配信制御を開始する。
【0042】
図4に示すように、個人端末70の実行部71は、配信制御を開始すると、ステップS81の処理を実行する。ステップS81において、個人端末70の実行部71は、セッティングパラメータPA等を要求する信号をサーバ50に送信する。また、個人端末70の実行部71は、個人端末70のユーザに紐づけられた車両10に関する情報を示す信号をサーバ50に送信する。その結果、サーバ50の実行部51は、セッティングパラメータPA等を要求する信号、及び個人端末70のユーザに紐づけられた車両10に関する情報を示す信号を取得する。ステップS81の後、サーバ50の実行部51は、処理をステップS82に進める。
【0043】
ステップS82において、サーバ50の実行部51は、特定制御で特定した各種の情報を示す信号を個人端末70に送信する。ここで、各種の情報は、ステップS53で特定した運転レベルLD、ステップS43で特定した走行スタイル、ステップS62で特定したセッティングパラメータPA、ステップS63で特定したセッティングパラメータPAを含んでいる。その結果、個人端末70の実行部51は、各種の情報を取得する。そして、個人端末70の実行部71は、ディスプレイ74に制御信号を出力することにより、ディスプレイ74において各種の情報を表示する。ステップS82の後、個人端末70の実行部71は、今回の配信制御を終了する。
【0044】
<本実施形態の作用>
図2に示すように、取得制御において、サーバ50の実行部51は、走行データDDを取得する。その後、図3に示すように、サーバ50の実行部51は、特定制御を実行する。ステップS51~ステップS53において、サーバ50の実行部51は、取得した走行データDDと、記憶部52に記憶されている基準走行データDDSの比較に基づいて、複数段階の運転レベルLDのうちのどの運転レベルLDに該当するかを特定する。また、ステップS62において、サーバ50の実行部51は、特定した運転レベルLDを規定データ52Bに当てはめることにより、車両10の運転者についての現在の運転レベルLDに応じたセッティングパラメータPAを出力する。
【0045】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態によれば、ステップS62において車両10の運転者についての現在の運転レベルLDに応じたセッティングパラメータPAが出力される。これにより、対象とする運転者についての現在の運転レベルLDに応じたセッティングパラメータPAを提案できる。
【0046】
(2)例えば運転レベルLDの特定対象とする運転者が運転操作する車両10が他車両を追従して走行しているときの走行データDDに基づいて運転レベルLDを特定すると、本来の運転レベルLDを適切に特定できない可能性がある。この理由は、他車両の動きに邪魔をされることで、車両10の運転者が本来の操作を行えない場合があるからである。
【0047】
この点、ステップS31において、サーバ50の実行部51は、走行データDDの中から、車両10の周囲の予め定められた基準範囲内に他車両が存在しないときのデータであることを必要条件として、抽出走行データDDEを抽出する。そして、ステップS51~ステップS53において、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDE及び基準走行データDDSの比較に基づいて、運転レベルLDを特定する。その結果、他車両による影響を除いた抽出走行データDDEに基づくことで、運転レベルLDをより正確に特定できる。
【0048】
(3)ステップS31において、サーバ50の実行部51は、走行データDDに含まれる映像データDPの時系列データに基づいて、車両10の周囲の予め定められた基準範囲内に他車両が存在しないときの抽出走行データDDEを抽出する。このように映像データDPに基づくことで、抽出走行データDDEをより正確に抽出できる。
【0049】
(4)運転者毎に、例えば、アンダーステアリング、オーバーステアリング、ニュートラルステアリングといった走行スタイルが異なる。仮に、異なる走行スタイルの抽出走行データDDE及び基準走行データDDSに基づいて運転レベルLDを特定すると、例えば車両10がサーキット場を走行するときの経路が乖離することに起因して運転レベルLDを正確に特定できない可能性がある。
【0050】
この点、ステップS41及びステップS42において、サーバ50の実行部51は、複数の基準走行データDDSの中から、抽出走行データDDEに基づいて、当該抽出走行データDDEに最も類似する基準走行データDDSを特定する。そして、ステップS51~ステップS53において、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDE、及び特定した基準走行データDDSの比較に基づいて、運転レベルLDを特定する。このように抽出走行データDDEに最も類似する基準走行データDDSを用いて運転レベルLDが特定される。そのため、例えば走行スタイルに起因して、具体的には車両10がサーキット場を走行するときの経路が乖離することに起因して運転レベルLDを正確に特定できない、といった事態が発生することは抑制できる。
【0051】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・上記実施形態において、取得制御は変更してもよい。
例えば、走行データDDは、アクセル操作量ACC、舵角RA、ブレーキ操作量BRA、車速SP、前後加速度GX、左右加速度GY、上下加速度GZ、位置座標PC、設定変速段GSに代えて、又は加えて、他の値を含んでいてもよい。この場合、同様に、基準走行データDDSが含む値を変更すればよい。
【0053】
・上記実施形態において、特定制御は変更してもよい。
例えば、ステップS31において、サーバ50の実行部51は、走行データDDに含まれる映像データDPの時系列データに代えて、又は加えて、他の値の時系列データに基づいて、条件(2)を満たすか否かを判定してもよい。具体例として、サーバ50の実行部51は、いわゆるLIDARが検出した検出値の時系列データに基づいて、条件(2)を満たすか否かを判定してもよい。
【0054】
・例えば、ステップS31において、サーバ50の実行部51は、条件(1)~条件(3)のうち一部の条件のみを採用してもよい。すなわち、条件(2)に係わらず、サーバ50の実行部51は、車両10の周囲の予め定められた基準範囲内に他車両が存在するときのデータを含む抽出走行データDDEを抽出してもよい。なお、サーバ50の実行部51は、例えば、サーキット場の1週未満のデータ、又はサーキット場の2周以上のデータを、抽出走行データDDEとして抽出してもよい。すなわち、特定区間の長さは、サーキット場の1周分に限らず変更してもよい。さらに、特定区間は、必ずしもサーキット場に限らず変更でき得る。
【0055】
・例えば、ステップS41において、基準走行データDDSを抽出する仕方は変更してもよい。具体例として、ステップS41において、実行部51は、同じサーキット場のデータであり、かつ、天気情報IWが同じであり、かつ、路面温度TRが近いデータであるものを、抽出走行データDDEに対応する基準走行データDDSとして抽出してもよい。
【0056】
・例えば、ステップS42において、基準走行データDDSを特定する仕方は変更してもよい。具体例として、ステップS42において、サーバ50の実行部51は、抽出走行データDDEに紐づけられた環境データDEの路面温度TRに基づいて、抽出走行データDDEに最も類似する基準走行データDDSを特定してもよい。このとき、実行部51は、抽出走行データDDEに紐づけられた環境データDEの路面温度TRと、基準走行データDDSに紐づけられた基準環境データDESの路面温度TRとの差が最も小さいものを、最も類似する基準走行データDDSとして特定できる。
【0057】
・例えば、ステップS51において、生成する入力変数は変更してもよい。具体例として、写像データ52Cで記述された写像によっては、抽出走行データDDEに含まれる各種の値、及びステップS42で特定した基準走行データDDSに含まれる各種の値の差の絶対値を入力変数として採用でき得る。なお、写像データ52Cで記述された写像は、機械学習により予め学習されたものに限らない。
【0058】
・例えば、ステップS62において、セッティングパラメータPAの出力の仕方は変更してもよい。具体例として、サーバ50の実行部51は、基準セッティングパラメータPASに対して、サスペンションの硬さに代えて、車両10のタイヤの空気圧などの他のパラメータを変更したセッティングパラメータPAを出力してもよい。すなわち、車両10の走行特性に影響するパラメータであれば、基準セッティングパラメータPASに対して変更するパラメータになり得る。また、具体例として、サーバ50の実行部51は、基準セッティングパラメータPASに対して、2以上のパラメータを変更したセッティングパラメータPAを出力してもよい。なお、基準セッティングパラメータPASに対して2以上のパラメータを変更する構成において、仮に一部のパラメータが調整できない状況では、残りの他のパラメータのみを変更したセッティングパラメータPAを出力してもよい。
【0059】
・上記実施形態において、配信制御は変更してもよい。
例えば、車両10の制御装置20及びサーバ50が配信制御を実行してもよい。この場合、ステップS82において、サーバ50の実行部51は、特定制御で特定した各種の情報を示す信号を車両10の制御装置20に送信すればよい。
【0060】
・上記実施形態において、セッティング支援システム100の構成は変更してもよい。
例えば、新たなサーキット場で車両10が走行可能になったり、車両10の新たなパーツが販売されたりした状況では、その度に、新たな基準走行データDDS、基準環境データDES、及び基準セッティングパラメータPASを記憶部52に記憶させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両 20…制御装置 31…アクセル操作量センサ 32…舵角センサ 33…ブレーキ操作量センサ 34…車速センサ 35…加速度センサ 36…GNSS受信機 37…カメラ 38…変速スイッチ 39…ディスプレイ 50…サーバ 51…実行部 52…記憶部 52A…支援プログラム 52B…規定データ 52C…写像データ 53…通信部 70…個人端末 100…セッティング支援システム 200…通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4