(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001236
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】燃料噴射弁の取り付け構造
(51)【国際特許分類】
F02M 61/14 20060101AFI20241225BHJP
F02M 69/04 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F02M61/14 320K
F02M69/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100716
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 智也
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA67
(57)【要約】
【課題】燃料噴射弁を挿入孔に組み付けるためのアダプタを小型化する。
【解決手段】燃料噴射弁20は、シリンダヘッド11に設けられる挿入孔40に対してアダプタ30を介して取り付けられる。アダプタ30にあって燃料噴射弁20の噴射孔側の先端領域が挿入される部位の外周面には雄ねじが形成されている。また、挿入孔40にはアダプタ30の雄ねじが螺号する雌ねじが形成されている。そして、それら雄ねじ及び雌ねじが螺号する部位はシール構造を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドまたはインテークマニホールドに設けられる挿入孔に対してアダプタを介して取り付けられる燃料噴射弁の取り付け構造であって、
前記アダプタにあって前記燃料噴射弁の噴射孔側の先端領域が挿入される部位の外周面には雄ねじが形成されており、
前記挿入孔には前記アダプタの前記雄ねじが螺号する雌ねじが形成されており、
前記雄ねじ及び前記雌ねじが螺号する部位はシール構造を有する
燃料噴射弁の取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の内燃機関は、シリンダヘッドに形成された挿入孔に対してアダプタを介して燃料噴射弁を取り付けるようにしている。また、アダプタの外周面に設けたシール部材用の溝と、この溝に収容されるシール部材とで構成されるシール構造を採用することにより、挿入孔とアダプタとの間のシール性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アダプタの外周面にシール部材用の溝を設ける場合には、当該溝を形成するために必要な肉厚の分だけアダプタが径方向に大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料噴射弁の取り付け構造は、シリンダヘッドまたはインテークマニホールドに設けられる挿入孔に対してアダプタを介して取り付けられる燃料噴射弁の取り付け構造である。前記アダプタにあって前記燃料噴射弁の噴射孔側の先端領域が挿入される部位の外周面には雄ねじが形成されており、前記挿入孔には前記アダプタの前記雄ねじが螺号する雌ねじが形成されており、前記雄ねじ及び前記雌ねじが螺号する部位はシール構造を有している。
【発明の効果】
【0006】
この燃料噴射弁の取り付け構造は、燃料噴射弁を挿入孔に組み付けるためのアダプタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる燃料噴射弁の取り付け構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、同実施形態の変更例にかかる燃料噴射弁の取り付け構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、燃料噴射弁の取り付け構造にかかる実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
<燃料噴射弁の取り付け構造について>
図1に示すように、内燃機関10のシリンダヘッド11には、吸気ポート12が形成されている。また、シリンダヘッド11には、吸気ポート12に燃料を噴射する燃料噴射弁20を当該シリンダヘッド11に組み付けるための挿入孔40が形成されている。
【0009】
挿入孔40は、吸気ポート12に開口している円柱状の挿入孔小径部41と、この挿入孔小径部41よりも内径が大きい円柱状の挿入孔大径部42とを有している。挿入孔小径部41の内周面には雌ねじが形成されている。
図2に示すように、挿入孔小径部41と挿入孔大径部42とが繋がる部位は、挿入孔40の径方向に広がる第1平面座44になっている。
【0010】
図1に示すように、燃料噴射弁20は、略円柱状である。燃料噴射弁20は、先端に噴孔が形成された噴射弁小径部21を有している。噴射弁小径部21の先端は吸気ポート12内に突き出ている。噴射弁小径部21にあって、吸気ポート12内に突き出している端部とは反対側の端部には、噴射弁小径部21よりも外径が大きい噴射弁大径部22が接続されている。噴射弁小径部21と噴射弁大径部22とが繋がる部位は、燃料噴射弁20の径方向に広がる第2平面座24になっている。
【0011】
図1や
図2に示すように、噴射弁小径部21の先端領域における外周面には、シール部材であるガスケット51を収容する溝50が形成されている。
図1に示すように、燃料噴射弁20は、円筒状のアダプタ30を介して挿入孔40に組み付けられている。
【0012】
アダプタ30は、例えば金属で構成されている。なお、アダプタ30は、金属以外の材料、例えば樹脂、又はセラミックなどで形成してもよい。アダプタ30は、外周面に雄ねじが形成されたアダプタ小径部31と、このアダプタ小径部31の端部が繋がっており当該アダプタ小径部31よりも外径が大きいアダプタ大径部32とを有している。アダプタ小径部31に形成された雄ねじは、挿入孔小径部41の上記雌ねじに螺号するねじである。
【0013】
アダプタ小径部31の雄ねじ及び挿入孔小径部41の雌ねじが螺号する部位は、シール構造を有している。本実施形態では、そうしたシール構造として、アダプタ小径部31の雄ねじ及び挿入孔小径部41の雌ねじにシール剤が塗布されている。
【0014】
アダプタ大径部32の外径は、挿入孔大径部42の内径よりも小さい。また、アダプタ30には、アダプタ小径部31及びアダプタ大径部32を貫通する貫通孔33が形成されている。貫通孔33の中心軸とアダプタ30の中心軸とは同軸である。貫通孔33には、噴射弁小径部21が挿入される。
【0015】
アダプタ30に燃料噴射弁20を組み付けた状態では、アダプタ大径部32の末端が燃料噴射弁20の上記第2平面座24に当たっており、これによりアダプタ30と燃料噴射弁20との軸方向における位置関係が固定されている。なお、燃料噴射弁20の末端は、燃料を分配する図示しないデリバリパイプに押し当てられており、これにより、燃料噴射弁20の軸方向の位置が固定されている。
【0016】
アダプタ大径部32の軸方向における長さL1は、吸気ポート12内に突き出る噴射弁小径部21の先端の突き出し量が適正な量となるように、当該突き出し量と噴射弁小径部21の軸方向における長さとを考慮して設定されている。
【0017】
アダプタ小径部31の軸方向における長さL2は、噴射弁小径部21の上記溝50がアダプタ小径部31の内周面に対向する位置となるように設定されている。
図2に示すように、アダプタ小径部31とアダプタ大径部32とが繋がる部位は、アダプタ30の径方向に広がる第3平面座34になっている。挿入孔40にアダプタ30を組み付けた状態では、アダプタ30の上記第3平面座34が挿入孔40の上記第1平面座44に当たっている。これにより挿入孔40に対するアダプタ30の軸方向における位置が固定されている。
【0018】
貫通孔33の内径D1は、噴射弁小径部21の外径よりもやや大きく、かつガスケット51の潰れ代が適正な量となるように設定されている。また、アダプタ小径部31の外径D2、つまり雄ねじ径は、強度上必要な肉厚を確保した径に設定されている。
【0019】
<作用及び効果について>
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)アダプタ30にあって燃料噴射弁20の噴射孔側の先端領域が挿入される部位の外周面、つまりアダプタ小径部31の外周面には雄ねじが形成されている。また、挿入孔小径部41にはアダプタ30の上記雄ねじが螺号する雌ねじが形成されている。そして、それら雄ねじ及び雌ねじが螺号する部位は、シール剤の塗布によるシール構造を有している。従って、本実施形態では、アダプタ30と挿入孔40とのシール性が、シール構造を有したねじの螺号によって確保される。そのため、アダプタ30は、シール部材用の溝を備える必要がなく、そうした溝を備えるシール構造を有したアダプタよりも小型化することができる。
【0020】
(2)シール部材用の溝を備えるアダプタの場合、アダプタと挿入孔との間の隙間であってそうした溝に収容されるシール部材の手前まで燃焼ガスや凝縮水などが侵入する可能性があり、アダプタなどの腐食などが懸念される。この点、本実施形態のアダプタ30は、そうした溝を備えておらず、シール構造を有したねじの螺号によってシール性が確保されている。従って、アダプタ30などの腐食を抑えることができる。
【0021】
(3)アダプタ小径部31の雄ねじ及び挿入孔小径部41の雌ねじは、挿入孔40においてできる限り吸気ポート12に開口する部位の近くに形成されている。従って、挿入孔40において吸気ポート12に開口する部位から遠い位置にそれら各ねじを形成する場合と比較して、アダプタ30と挿入孔40との間の隙間であって燃焼ガスや凝縮水などが侵入する経路は短くなる。そのため、これによってアダプタ30などの腐食を抑えることができる。
【0022】
(4)燃料噴射弁20は、アダプタ30を介して挿入孔40に組み付けられる。そのため、アダプタ30を変更することにより、形状の異なる様々な燃料噴射弁を挿入孔40に組み付けることができる。例えば、液体燃料を噴射する燃料噴射弁を備えている内燃機関に対して、気体燃料を噴射する燃料噴射弁を組み付けることも可能になる。また、古いタイプの燃料噴射弁を、外形形状が異なる最新型の燃料噴射弁に交換することも可能になる。
【0023】
(5)アダプタに設けた溝とその溝に収容するガスケットにて、アダプタと挿入孔とのシール性を確保する場合において、アダプタを種々用意する場合には、そうしたガスケットも種々用意する必要がある。この点、本実施形態では、アダプタ30と挿入孔40とのシール性が、シール構造を有したねじの螺号によって確保される。そのため、アダプタ30を種々用意する場合において、ガスケットを種々用意する必要もない。
【0024】
<変更例について>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0025】
・
図3に示す取り付け構造を採用してもよい。すなわち、内燃機関に使用される燃料がハイオクガソリンや天然ガスなどの腐食が起きにくい燃料である場合には、
図3に示すように、アダプタ小径部31の雄ねじ及び挿入孔小径部41の雌ねじを省略して、挿入孔小径部41にアダプタ小径部31を緩挿させる。そして、アダプタ30と挿入孔40との間におけるシール性を確保するために、アダプタ30の上記第3平面座34と挿入孔40の上記第1平面座44とが当たる部位にガスケット等を有したシール構造S1を設けてもよい。
【0026】
また、燃料噴射弁20が上記溝50及びガスケット51を有していない場合において、内燃機関に使用される燃料が上述した腐食の起きにくい燃料である場合には、
図3に示すような変更例を採用することができる。すなわち、アダプタ30と燃料噴射弁20との間におけるシール性を確保するために、アダプタ大径部32の末端と燃料噴射弁20の上記第2平面座24とが当たる部位にガスケット等を有したシール構造S2を設けてもよい。
【0027】
・挿入孔40をインテークマニホールドに設けてもよい。
・挿入孔小径部41を、内燃機関のシリンダヘッドに設けられた燃焼室の壁面に開口するように設けてもよい。この場合において挿入孔40に組み付けられる燃料噴射弁は、内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁になる。
【0028】
・アダプタ小径部31の雄ねじ及び挿入孔小径部41の雌ねじが螺号する部位のシール構造として、他の構造を採用してもよい。例えば雄ねじ及び雌ねじをテーパねじで形成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…内燃機関
11…シリンダヘッド
12…吸気ポート
20…燃料噴射弁
21…噴射弁小径部
22…噴射弁大径部
24…第2平面座
30…アダプタ
31…アダプタ小径部
32…アダプタ大径部
33…貫通孔
34…第3平面座
40…挿入孔
41…挿入孔小径部
42…挿入孔大径部
44…第1平面座
50…溝
51…ガスケット