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  • 特開-聴触覚呈示装置及び聴触覚呈示方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012365
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】聴触覚呈示装置及び聴触覚呈示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115143
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA76
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC09
5E555CA41
5E555CA47
5E555CB19
5E555CB64
5E555DA23
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】リアリティのある聴触覚を呈示できる聴触覚呈示装置及び聴触覚呈示方法を提供する。
【解決手段】聴触覚呈示装置1は、駆動信号Sの入力を受け付ける受付部21と、駆動信号Sに基づく出力を行う出力部2と、を備え、出力部2は、圧電素子13を含む振動子11によって構成され、振動子11は、駆動信号Sのうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号の入力を受け付ける受付部と、
前記駆動信号に基づく出力を行う出力部と、を備え、
前記出力部は、圧電素子を含む振動子によって構成され、
前記振動子は、前記駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、前記所定周波数以下の信号成分を振動として出力する、聴触覚呈示装置。
【請求項2】
前記所定周波数は、200Hzである、請求項1記載の聴触覚呈示装置。
【請求項3】
前記駆動信号は、デジタル信号である、請求項1記載の聴触覚呈示装置。
【請求項4】
前記駆動信号は、音声信号と、前記音声信号の振幅が所定の閾値を超えた期間に対して設定された振動信号とを重畳した信号である、請求項1記載の聴触覚呈示装置。
【請求項5】
前記振動信号は、正弦波である、請求項4記載の聴触覚呈示装置。
【請求項6】
前記振動信号は、複数の周波数成分を有している、請求項4記載の聴触覚呈示装置。
【請求項7】
前記駆動信号を増幅して前記出力部に出力する増幅部を備える、請求項1記載の聴触覚呈示装置。
【請求項8】
圧電素子を含む振動子によって構成され、当該圧電素子に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく信号を前記駆動信号として生成する信号生成部を備える、請求項1~7のいずれか一項記載の聴触覚呈示装置。
【請求項9】
前記信号生成部からの信号をデジタル信号に変換し、ネットワークを介して前記受付部に送信する変換部と、
前記ネットワークを介して前記受付部が受信した前記デジタル信号を変換前の信号に復元する復元部と、を備える、請求項8記載の聴触覚呈示装置。
【請求項10】
受付部において駆動信号の入力を受け付ける受付ステップと、
圧電素子を含む振動子によって構成された出力部において、前記駆動信号に基づく出力を行う出力ステップと、を備え、
前記出力ステップでは、前記駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、前記所定周波数以下の信号成分を振動として出力する、聴触覚呈示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、聴触覚呈示装置及び聴触覚呈示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動によって触覚を呈示する技術として、例えば特許文献1に記載の入力装置がある。この従来の入力装置では、ユーザの指などによる接触を静電容量式のセンサで検出し、その検出結果に基づいて、圧電アクチュエータに駆動信号を供給する。圧電アクチュエータによって指の接触部分を振動させることで、ユーザに対して入力が受け付けられたことを示す触覚が呈示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-339298公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の装置では、実際に指などで触れた部分に振動による触覚を呈示している。しかしながら、実際の様々な事象に対する感覚は、触覚だけではなく聴覚を含んで構成されおり、リアリティのある聴触覚を呈示できる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、リアリティのある聴触覚を呈示できる聴触覚呈示装置及び聴触覚呈示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る聴触覚呈示装置は、駆動信号の入力を受け付ける受付部と、駆動信号に基づく出力を行う出力部と、を備え、出力部は、圧電素子を含む振動子によって構成され、振動子は、駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。
【0007】
この聴触覚呈示装置では、圧電素子を含む振動子によって出力部が構成されている。圧電素子は、その特性上、所定周波数より大きい信号成分については、音及び振動として出力可能であり、所定周波数以下の信号成分については振動として出力可能である一方、音としての出力が難しい。この聴触覚呈示装置では、かかる圧電素子の特性を利用し、駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。これにより、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせたリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0008】
所定周波数は、200Hzであってもよい。圧電素子において、音としての出力が可能な周波数領域は、典型的には200Hzより大きい領域である。したがって、音声としての出力及び振動としての出力の境界の所定周波数を200Hzとすることで、音による聴覚と、振動による触覚とをより適切に組み合わせることができる。
【0009】
駆動信号は、デジタル信号であってもよい。これにより、駆動信号の格納や受付部への入力の利便性を向上できる。
【0010】
駆動信号は、音声信号と、音声信号の振幅が所定の閾値を超えた期間に対して設定された振動信号とを重畳した信号であってもよい。このような重畳信号を駆動信号とすることで、出力部において、よりリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0011】
振動信号は、正弦波であってもよい。振動信号が正弦波であることで、所定周波数以下の領域において、音声としての出力が振動としての出力に混合してしまうことを抑制できる。
【0012】
振動信号は、複数の周波数成分を有していてもよい。この場合、強弱を付けた振動により、よりリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0013】
聴触覚呈示装置は、駆動信号を増幅して出力部に出力する増幅部を備えていてもよい。これにより、出力部において、より明確な聴触覚の呈示が可能となる。
【0014】
聴触覚呈示装置は、圧電素子を含む振動子によって構成され、当該圧電素子に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく信号を駆動信号として生成する信号生成部を備えていてもよい。この場合、信号生成部で生成された聴触覚を遠隔位置に伝達することができる。
【0015】
聴触覚呈示装置は、信号生成部からの信号をデジタル信号に変換し、ネットワークを介して受付部に送信する変換部と、ネットワークを介して受付部が受信したデジタル信号を変換前の信号に復元する復元部と、を備えていてもよい。この場合、信号生成部で生成された聴触覚を、ネットワークを介して更に遠隔位置に伝達することができる。
【0016】
本開示の一側面に係る聴触覚呈示方法は、受付部において駆動信号の入力を受け付ける受付ステップと、圧電素子を含む振動子によって構成された出力部において、駆動信号に基づく出力を行う出力ステップと、を備え、出力ステップでは、駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。
【0017】
この聴触覚呈示方法では、圧電素子を含む振動子によって出力部を構成している。圧電素子は、その特性上、所定周波数より大きい信号成分については、音及び振動として出力可能であり、所定周波数以下の信号成分については振動として出力可能である一方、音としての出力が難しい。この聴触覚呈示方法では、かかる圧電素子の特性を利用し、駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。これにより、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせたリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、リアリティのある聴触覚を呈示できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の第1実施形態に係る聴触覚呈示装置の構成を示す模式的な図である。
図2】振動子の構成を示す模式的な平面図である。
図3】駆動信号の一例を示す図である。
図4図1の装置による聴触覚呈示方法を示すフローチャートである。
図5】本開示の第2実施形態に係る聴触覚呈示装置の構成を示す模式的な図である。
図6図5の装置による聴触覚呈示方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る聴覚呈示装置及び聴触覚呈示方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る聴触覚呈示装置の構成を示す模式的な図である。図1に示すように、本実施形態に係る聴触覚呈示装置1は、出力部2と、制御部3と、を含んで構成されている。聴触覚呈示装置1は、制御部3に入力される駆動信号Sに基づいて、出力部2において聴触覚を呈示する装置となっている。
【0022】
出力部2は、駆動信号Sに基づく出力を行う部分である。出力部2は、圧電素子13を含む振動子11によって構成されている。図2は、振動子の構成を示す模式的な平面図である。図2に示すように、振動子11は、振動板12と、振動板12の一面側に配置された圧電素子13と、圧電素子13に電気的に接続された配線部材14とを含んで構成されている。振動板12は、平面視において、例えば矩形状をなしている。振動板12の構成材料としては、例えばNi-Fe合金、Ni、黄銅、ステンレス鋼などが挙げられる。
【0023】
圧電素子13は、例えば圧電素体15と、内部電極(付図四)と、一対の外部電極16,16とを備えている。圧電素体15は、例えば扁平な直方体形状をなしている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている形状、角部及び稜線部が丸められている形状も含まれる。なお、振動子11においては、振動板12が省略され、圧電素子13のみによって振動子11が構成されていてもよい。
【0024】
圧電素体15は、複数の圧電体層が積層されて構成されている。圧電体層は、圧電材料によって構成されている。本実施形態では、圧電体層は、圧電セラミック材料によって構成されている。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、チタン酸バリウムなどが挙げられる。圧電体層は、例えば上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。実際の圧電素体15では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。
【0025】
内部電極及び外部電極16,16は、導電性材料によって形成されている。導電性材料としては、例えばAg、Pd、Ag-Pd合金などが挙げられる。内部電極及び外部電極は、例えば上述した導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体によって構成されている。
【0026】
配線部材14は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)によって構成されている。配線部材14は、ベース部材17と、一対の導体18,18と、カバー19とを有している。ベース部材17は、例えばポリイミド樹脂といった電気絶縁性を有する材料によって構成されている。導体18,18は、例えば銅などの導電性を有する材料によって構成されている。導体18,18は、接着等によって、互いに離間した状態でベース部材17に接合されている。
【0027】
カバー19は、ベース部材17と同様に、例えばポリイミド樹脂といった電気絶縁性を有する材料によって構成されている。カバー19は、導体18,18の一部を覆うように配置され、接着等によってベース部材17に接合されている。導体18,18のそれぞれの端部は、カバー19から露出している。導体18,18におけるカバー19からの露出部分には、ニッケル或いは金によるメッキが施されていてもよい。配線部材14の先端部(圧電素子13側の端部の導体18,18)は、外部電極16,16のそれぞれに電気的に接続されている。配線部材14の基端部(制御部3側の端部)は、制御部3に電気的に接続されている。
【0028】
制御部3は、出力部2を構成する振動子11の動作を制御する部分である。制御部3は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、ディスプレイなどを備えて構成されたコンピュータシステムを含んで構成されている。制御部3の構成例としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末)などが挙げられる。
【0029】
制御部3は、図1に示すように、機能的な構成要素として、受付部21と、変換部22と、増幅部23とを備えている。受付部21は、駆動信号Sの入力を受け付ける部分である。駆動信号Sは、例えばデジタル信号である。デジタル信号の一例としては、MP3などの音声ファイルフォーマットを用いて圧縮されたデジタル音声信号が挙げられる。受付部21への駆動信号Sの入力形態は、特に制限はなく、他のパーソナルコンピュータからの受信、記憶媒体からの読み込み、インターネット経由での受信など、任意の形態を採用できる。受付部21は、入力された駆動信号Sを変換部22に出力する。
【0030】
本実施形態では、図3に示すように、駆動信号Sは、音声信号Saと、振動信号Sbとを重畳した信号となっている。音声信号Saは、例えばヒトの可聴域である20Hz~20000Hz程度の周波数成分を含む信号である。音声信号Saは、例えば様々な事象から生じる音を収集することによって生成されたものであってもよく、パーソナルコンピュータなどを用いて人工的に編集して生成されたものであってもよい。図3の例では、音声信号Saは、紙コップの中で氷片を回した場合の音をマイク等で収集することによって生成されている。
【0031】
振動信号Sbは、例えば音声信号Saに基づいて生成される。振動信号Sbは、音声信号Saの振幅が所定の閾値を超えた期間に対して設定される。図3の例では、互いに離間した期間T1,T2,T3において、音声信号Saの振幅が所定の閾値を超えており、期間T1,T2,T3のそれぞれに振動信号Sbがそれぞれ割り当てられている。
【0032】
振動信号Sbは、振動信号Sbは、前述の可聴域のうち、所定周波数以下の周波数成分によって構成されている。所定周波数は、振動子11を構成する圧電素子13の出力特性を考慮し、圧電素子13での音の出力が可能な周波数の下限に基づいて設定される。所定周波数は、例えば200Hzである。振動信号Sbは、正弦波であり、所定周波数である200Hz以下の周波数成分によって構成されている。振動信号Sbは、所定周波数以下の範囲において、複数の周波数成分を有していてもよい。各期間の振動信号Sbの周波数は、音声信号Saの振幅が所定の閾値を超えた期間中の振幅の最大値に比例して、大きくなっていてもよい。図3の例では、期間T1,T2には、200Hzの周波数成分を有する振動信号Sbが割り当てられ、期間T3には、100Hzの周波数成分を有する振動信号Sbが割り当てられている。
【0033】
変換部22は、デジタル信号である駆動信号Sをアナログ信号に変換する部分である。変換部22は、受付部21からデジタル信号である駆動信号Sを受け取ると、当該駆動信号Sを圧電素子13での発生電圧の振幅及び周波数を表すアナログ信号に変換する。変換部22は、アナログ信号に変換した後の駆動信号Sを増幅部23に出力する。
【0034】
増幅部23は、駆動信号Sの値を増幅する部分である。増幅部23は、信号増幅器によって構成されており、変換部22から受け取った駆動信号Sを所定の倍率で増幅して出力部2に出力する。
【0035】
振動子11は、増幅部23から受け取った駆動信号Sに基づいて動作する。より具体的には、振動子11は、駆動信号Sのうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。本実施形態では、振動子11は、図3に示した音声信号Saのうち、200Hzより高い信号成分を音声として出力し、200Hz以下の周波数成分で構成された振動信号Sbを振動として出力する。
【0036】
上述したように、本実施形態の駆動信号Sは、例えば紙コップの中で氷片を回した場合の音及び振動に対する信号である。図1の例では、振動子11は、紙コップCの底面Caに固定されている。駆動信号Sに基づいて振動子11から音声及び振動の出力がなされることで、紙コップの中で氷片を回した場合の音及び振動が、あたかも紙コップCで生じているかのように再現される。
【0037】
図4は、図1の装置による聴触覚呈示方法を示すフローチャートである。図4に示すように、この触覚呈示方法は、受付ステップS01と、変換ステップS02と、増幅ステップS03と、出力ステップS04とを含んで構成されている。
【0038】
受付ステップS01は、受付部21において駆動信号Sの入力を受け付けるステップである。受付ステップS01では、音声信号Saと、振動信号Sbとを重畳したデジタル信号を駆動信号Sとして受付部21に入力する。変換ステップS02は、駆動信号Sの信号形式を変換するステップである。変換ステップS02では、変換部22においてデジタル信号である駆動信号Sをアナログ信号に変換し、増幅部23に出力する。
【0039】
増幅ステップS03は、駆動信号Sの増幅を行うステップである。増幅ステップS03では、変換部22から受け取った駆動信号Sを信号増幅器で所定の倍率で増幅し、出力部2に出力する。出力ステップS04は、圧電素子13を含む振動子11によって構成された出力部2において、駆動信号Sに基づく出力を行うステップである。出力ステップS04では、駆動信号Sのうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。これにより、出力部2では、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせた聴触覚が提示される。
【0040】
以上説明したように、聴触覚呈示装置1及び聴触覚伝達方法では、圧電素子13を含む振動子11によって出力部2が構成されている。圧電素子13は、その特性上、所定周波数より大きい信号成分については、音及び振動として出力可能であり、所定周波数以下の信号成分については振動として出力可能である一方、音としての出力が難しい。聴触覚呈示装置1及び聴触覚呈示方法では、かかる圧電素子13の特性を利用し、駆動信号Sのうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。これにより、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせたリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0041】
本実施形態では、上記所定周波数が200Hzとなっている。圧電素子13において、音としての出力が可能な周波数領域は、典型的には200Hzより大きい領域である。したがって、音声としての出力及び振動としての出力の境界の所定周波数を200Hzとすることで、音による聴覚と、振動による触覚とをより適切に組み合わせることができる。
【0042】
本実施形態では、駆動信号Sは、デジタル信号となっている。これにより、駆動信号Sの格納や受付部21への入力の利便性を向上できる。また、本実施形態では、駆動信号Sは、音声信号Saと、音声信号Saの振幅が所定の閾値を超えた期間に対して設定された振動信号Sbとを重畳した信号となっている。このような重畳信号を駆動信号Sとすることで、出力部2において、よりリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0043】
本実施形態では、振動信号Sbが正弦波となっている。振動信号Sbが正弦波であることで、振動信号Sbが矩形波や鋸波である場合と比較して、所定周波数以下の領域において、音声としての出力が振動としての出力に混合してしまうことを抑制できる。また、本実施形態では、振動信号Sbが複数の周波数成分を有している。このような構成によれば、強弱を付けた振動により、よりリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。
【0044】
本実施形態では、聴触覚呈示装置1は、駆動信号Sを増幅して出力部2に出力する増幅部23を備えている。これにより、出力部2において、より明確な聴触覚の呈示が可能となる。
【0045】
[第2実施形態]
図5は、本開示の第2実施形態に係る聴触覚呈示装置の構成を示す模式的な図である。図5に示すように、第2実施形態に係る聴触覚呈示装置1Aは、駆動信号Sを生成し、生成した駆動信号Sを遠隔位置にある出力部2に伝達可能に構成されている点で、第1実施形態に係る聴触覚呈示装置1と相違している。
【0046】
具体的には、聴触覚呈示装置1Aは、出力部2及び制御部3に加え、信号生成部5と、変換部6とを備えている。また、制御部3は、第1実施形態の変換部22に代えて、復元部25を有している。
【0047】
信号生成部5は、圧電素子33を含む振動子31によって構成されている。本実施形態では、振動子31は、出力部2を構成する振動子11と同一の構成を有している。すなわち、振動子31は、振動板32と、振動板32の一面側に配置された圧電素子33と、圧電素子33に電気的に接続された配線部材34とを含んで構成されている。振動板32、圧電素子33、及び配線部材34の構成は、振動板12、圧電素子13、及び配線部材14と同じであるため割愛する。
【0048】
振動子31は、圧電素子33に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく信号を駆動信号Sとして生成する。ここでの駆動信号Sは、圧電素子13での発生電圧の振幅及び周波数を表すアナログ信号である。図5の例では、振動子31は、紙コップCの底面Caに固定されている。この紙コップCの中で氷片を回すと、その際に圧電素子33に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく駆動信号Sが信号生成部5で生成される。信号生成部5は、生成された駆動信号Sを変換部6に出力する。
【0049】
変換部6は、信号生成部5からの信号をデジタル信号に変換する部分である。変換部6は、物理的には、制御部3と同様、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、ディスプレイなどを備えて構成されたコンピュータシステムである。変換部6は、信号生成部5から受け取ったアナログ信号を、例えばMP3などの音声ファイルフォーマットを用いて圧縮されたデジタル音声信号に変換する。変換部6は、返還後のデジタル信号をネットワークNを介して制御部3に送信する。
【0050】
受付部21は、変換部6からのデジタル信号をネットワークNを介して受信し、復元部25に出力する。復元部25は、ネットワークNを介して受付部21が受信したデジタル信号を変換前のアナログ信号に復元して増幅部23に出力する。増幅部23は、受け取ったアナログ信号を所定の倍率で増幅して出力部2に出力する。出力部2では、駆動信号Sに基づいて振動子11から音声及び振動の出力がなされ、第1実施形態と同様に、紙コップの中で氷片を回した場合の音及び振動が、あたかも振動子11が固定された紙コップCで生じているかのように再現される。
【0051】
図6は、図5の装置による聴触覚呈示方法を示すフローチャートである。図6に示すように、この触覚呈示方法は、信号生成ステップS11と、変換ステップS12と、送信ステップS13と、受付ステップS14と、復元ステップS15と、増幅ステップS16と、出力ステップS17とを含んで構成されている。
【0052】
信号生成ステップS11は、圧電素子33を含む振動子31によって構成された信号生成部5において、発生電圧に基づく信号を駆動信号Sとして生成するステップである。信号生成ステップS11では、振動子31を構成する圧電素子33において、付加される押圧力に応じた電圧を発生させ、当該発生電圧に基づくアナログ信号を駆動信号Sとして生成する。
【0053】
変換ステップS12では、変換部6において、信号生成部5からの信号をデジタル信号に変換する。送信ステップS13では、変換後のデジタル信号をネットワークNを介して受付部21に送信する。受付ステップS14では、受付部21において駆動信号Sの入力を受け付け、入力された駆動信号Sを復元部25に出力する。
【0054】
復元ステップS15は、デジタル信号を変換前の信号に復元するステップである。復元ステップS15では、復元部25において、ネットワークNを介して受付部21が受信したデジタル信号をアナログ信号に復元して増幅部23に出力する。増幅ステップS16では、増幅部23において、復元部25から受け取った駆動信号Sを信号増幅器で所定の倍率で増幅し、出力部2に出力する。出力ステップS17では、圧電素子13を含む振動子11によって構成された出力部2において、駆動信号Sのうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、所定周波数以下の信号成分を振動として出力する。これにより、出力部2では、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせた聴触覚が提示される。
【0055】
このような聴触覚呈示装置1A及び聴触覚呈示方法においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し、音による聴覚と、振動による触覚とを組み合わせたリアリティのある聴触覚の呈示が可能となる。本実施形態では、圧電素子33を含む振動子31によって構成された信号生成部5を備え、圧電素子33に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく信号を駆動信号Sとして生成している。これにより、信号生成部5で生成された聴触覚を遠隔位置に伝達することができる。
【0056】
また、本実施形態では、信号生成部5からの信号をデジタル信号に変換し、ネットワークNを介して受付部に送信する変換部6と、ネットワークNを介して受付部21が受信したデジタル信号を変換前の信号に復元して出力部2に出力する復元部25とが設けられている。このような構成により、信号生成部5で生成された聴触覚を、ネットワークNを介して更に遠隔位置に伝達することができる。
【0057】
本開示の要旨は、以下の[1]~[10]に示すとおりである。
[1]駆動信号の入力を受け付ける受付部と、前記駆動信号に基づく出力を行う出力部と、を備え、前記出力部は、圧電素子を含む振動子によって構成され、前記振動子は、前記駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、前記所定周波数以下の信号成分を振動として出力する、聴触覚呈示装置。
[2]前記所定周波数は、200Hzである、[1]記載の触覚呈示装置。
[3]前記駆動信号は、デジタル信号である、[1]又は「2」記載の聴触覚呈示装置。
[4]前記駆動信号は、音声信号と、前記音声信号の振幅が所定の閾値を超えた期間に対して設定された振動信号とを重畳した信号である、[1]~[3]のいずれか記載の聴触覚呈示装置。
[5]前記振動信号は、正弦波である、[4]記載の聴触覚呈示装置。
[6]前記振動信号は、複数の周波数成分を有している、[4]又は[5]記載の聴触覚呈示装置。
[7]前記駆動信号を増幅して前記出力部に出力する増幅部を備える、[1]~[6]のいずれか記載の聴触覚呈示装置。
[8]圧電素子を含む振動子によって構成され、当該圧電素子に付加された押圧力に応じた発生電圧に基づく信号を前記駆動信号として生成する信号生成部を備える、[1]~[7]のいずれか記載の聴触覚呈示装置。
[9]前記信号生成部からの信号をデジタル信号に変換し、ネットワークを介して前記受付部に送信する変換部と、前記ネットワークを介して前記受付部が受信した前記デジタル信号を変換前の信号に復元する復元部と、を備える、[8]記載の聴触覚呈示装置。
[10]受付部において駆動信号の入力を受け付ける受付ステップと、圧電素子を含む振動子によって構成された出力部において、前記駆動信号に基づく出力を行う出力ステップと、を備え、前記出力ステップでは、前記駆動信号のうち、所定周波数より高い信号成分を音声として出力し、前記所定周波数以下の信号成分を振動として出力する、聴触覚呈示方法。
【符号の説明】
【0058】
1,1A…聴触覚呈示装置、2…出力部、5…信号生成部、6…変換部、11…振動子、13…圧電素子、23…増幅部、25…復元部、31…振動子、33…圧電素子、S…駆動信号、Sa…音声信号、Sb…振動信号、N…ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6