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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012377
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20250117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20250117BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B01J27/053 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115165
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕之
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA14
3G091BA15
3G091GB05
3G091GB10
4D148AA06
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA08X
4D148BA15X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BA46X
4D148BB02
4D148BB16
4D148DA03
4D148DA20
4D148EA04
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA13B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC16B
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA13
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169EC28
4G169EE09
4G169FA03
4G169FB15
4G169FB19
4G169FB30
(57)【要約】
【課題】高いHC浄化性能及びNOx浄化性能を有する排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置は、上流端及び下流端を有する基材と、前記下流端と第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層と、前記上流端と第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム担持粒子を含む第二触媒層と、前記上流端と第三位置との間の第三領域において前記第二触媒上に設けられた、パラジウム及び硫酸バリウムを含む第三触媒層とを備える。ロジウム担持粒子は、多孔質担体、前記多孔質担体に担持されている単斜晶の二酸化ジルコニウム粒子及びロジウム粒子を含む。第三領域における基材の容量を基準とした硫酸バリウムの総質量は10~20g/Lである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
全長(Ls)を有する基材であって、排ガスが前記基材に流入する上流端及び前記排ガスが前記基材から流出する下流端を有する前記基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離(La)を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層であって、前記第一距離(La)が前記基材の前記全長(Ls)の50%~70%である、第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離(Lb)を隔てた第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム担持粒子を含む第二触媒層であって、前記第二距離(Lb)が前記基材の前記全長(Ls)の50%以上であり、前記ロジウム担持粒子が、多孔質担体、並びに前記多孔質担体に担持されている単斜晶の二酸化ジルコニウム粒子及びロジウム粒子を含む、第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離(Lc)を隔てた第三位置との間の第三領域において前記第二触媒層上に設けられた、パラジウム及び硫酸バリウムを含む第三触媒層であって、前記第三距離(Lc)が前記基材の前記全長(Ls)の40%以下であり、前記第三領域における前記基材の容量を基準とした前記硫酸バリウムの総質量が10~20g/Lである、第三触媒層と、
を備える、排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒として含む排ガス浄化装置が用いられている。
【0003】
特許文献1には、基材と、前記基材に設けられた触媒層とを備える排ガス浄化装置であって、前記触媒層は、多孔質担体と、前記多孔質担体に担持された白金族に属する触媒金属と、前記多孔質担体に担持されたアルカリ土類金属と、前記多孔質担体に担持されないアルカリ土類金属とを含み、前記多孔質担体に担持された前記アルカリ土類金属のうちの少なくとも一部は、前記多孔質担体の内部に担持されたことを特徴とする、排ガス浄化装置が記載され、アルカリ土類金属がHC被毒を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-066935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス規制の強化に伴い、排ガス浄化用装置の浄化性能の向上が求められている。そこで、本開示は、優れたHC浄化性能及びNOx浄化性能を有する排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は以下のものを含む。
[態様1]
排ガス浄化装置であって、
全長(Ls)を有する基材であって、排ガスが前記基材に流入する上流端及び前記排ガスが前記基材から流出する下流端を有する前記基材と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第一距離(La)を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に設けられた、ロジウムを含む第一触媒層であって、前記第一距離(La)が前記基材の前記全長(Ls)の50%~70%である、第一触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第二距離(Lb)を隔てた第二位置との間の第二領域において前記基材上に設けられた、ロジウム担持粒子を含む第二触媒層であって、前記第二距離(Lb)が前記基材の前記全長(Ls)の50%以上であり、前記ロジウム担持粒子が、多孔質担体、並びに前記多孔質担体に担持されている単斜晶の二酸化ジルコニウム粒子及びロジウム粒子を含む、第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離(Lc)を隔てた第三位置との間の第三領域において前記第二触媒層上に設けられた、パラジウム及び硫酸バリウムを含む第三触媒層であって、前記第三距離(Lc)が前記基材の前記全長(Ls)の40%以下であり、前記第三領域における前記基材の容量を基準とした前記硫酸バリウムの総質量が10~20g/Lである、第三触媒層と、
を備える、排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示の排ガス浄化装置は、優れたHC浄化性能及びNOx浄化性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁及びその近傍の構成を模式的に示している。
図2図2は、基材の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、硫酸バリウムの量とHC浄化率及びNOx-T50との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。本願において、「~を含む」は追加の成分を含み得ることを意味し、「~から本質的になる」及び「~からなる」を包含する。「~から本質的になる」は、実質的に悪影響を及ぼさない追加の成分を含み得ることを意味する。「~からなる」は、記載される材料のみを含むことを意味するが、不可避の不純物を含むことを除外しない。
【0010】
実施形態に係る排ガス浄化装置100を、図1、2を参照しながら説明する。実施形態に係る排ガス浄化装置100は、基材10、第一触媒層20、第二触媒層30、及び第三触媒層40を備える。
【0011】
(1)基材10
基材10の形状は特に限定されないが、例えば、基材10は、図2に示すように、枠部12と、枠部12の内側の空間を仕切って複数のセル14を画成する隔壁16から構成されてよい。隔壁16は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセル14を画成する。
【0012】
基材10は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、又はステンレス鋼箔等の金属箔から形成されてよい。
【0013】
図1、2において、破線矢印は、排ガス浄化装置100及び基材10中の排ガスの流れ方向を示す。排ガスは、第一端Iを通って基材10のセル14に流入し、第二端Jを通って基材10のセル14から流出する。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。本明細書において、上流端Iと下流端Jの間の長さ、すなわち基材10の全長をLsと表す。
【0014】
(2)第一触媒層20
第一触媒層20は、下流端Jと、下流端Jから上流端Iに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向と反対の方向に)第一距離Laを隔てた第一位置Pとの間の第一領域Xにおいて、基材10上に形成される。第一距離Laは、基材10の全長Lsの50%~70%である。第一触媒層20は、セル14の延伸方向において、第一距離Laと等しい長さを有してよい。
【0015】
第一触媒層20は、ロジウム(Rh)を含む。Rhは、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。Rhは粒子状であってよい。Rhは担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子は、金属酸化物を含む多孔質粒子であってよい。金属酸化物は、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であってよく、任意選択でイットリア(Y)、ランタナ(La)、ネオジミア(Nd)、又はプラセオジミア(Pr11)の少なくともいずれか一つを添加物としてさらに含んでもよい。イットリア、ランタナ、ネオジミア、及びプラセオジミアは、金属酸化物の耐熱性を向上させることができる。
【0016】
第一触媒層20は、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を貯蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出する酸素貯蔵材料を含んでよい。酸素貯蔵材料の例としては、セリア(CeO)、セリア及び他の酸化物の複合酸化物(例えば、セリア及びジルコニア(ZrO)の複合酸化物(Ce-Zr複合酸化物)、アルミナ(Al)、セリア、及びジルコニアの複合酸化物(Al-Ce-Zr複合酸化物))、これらに添加物を加えた材料、並びにこれらの混合物が挙げられる。添加物は、例えば、ランタナ、イットリア、ネオジミア、又はプラセオジミアの少なくともいずれか1種であってよい。第一触媒層20は、さらに、その他の任意成分を含んでもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0017】
(3)第二触媒層30
第二触媒層30は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第二距離Lbを隔てた第二位置Qとの間の第二領域Yにおいて基材10上に形成される。第二距離Lbは、基材10の全長Lsの50%以上である。第二触媒層30は、セル14の延伸方向において、第二距離Lbと等しい長さを有してよい。
【0018】
第二触媒層30は、Rh担持粒子を含む。Rh担持粒子は、多孔質担体、並びに多孔質担体に担持されている単斜晶の二酸化ジルコニウム(ZrO)粒子及びRh粒子を含む。Rh粒子は、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。多孔質担体は、粒子状であってよく、また、上述した金属酸化物を含んでよい。Rh粒子及びZrO粒子は、多孔質担体の細孔内に担持されてよく、Rh粒子とZrO粒子は接していてよい。
【0019】
このようなRh担持粒子を用いることにより、後述の実施例で示すように、第三触媒層40中の硫酸バリウム(BaSO)の増加に伴うNOx浄化性能の低下を抑制することができる。
【0020】
第二触媒層30は、酸素貯蔵材料を含んでよい。酸素貯蔵材料の例は上述した通りである。第二触媒層30中の酸素貯蔵材料は、パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物及び蛍石型Ce-Zr複合酸化物を含んでよい。第二触媒層30は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0021】
(4)第三触媒層40
第三触媒層40は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第三距離Lcを隔てた第三位置Rとの間の第三領域Zにおいて、第二触媒層30上に形成される。第三触媒層40が第二触媒層30上に形成されることにより、排ガス浄化装置100が高い暖機性を有することができる。第三距離Lcは、基材10の全長Lsの40%以下、特に30%以下である。それにより、排ガス浄化装置100が高い暖機性を有すことができる。第三触媒層40は、セル14の延伸方向において、第三距離Lcと等しい長さを有してよい。
【0022】
第三触媒層40は、パラジウム(Pd)を含む。Pdは、主に、HCを酸化させるための触媒として機能する。パラジウムは粒子状であってよい。Pdは、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子は、上述した金属酸化物を含む多孔質粒子であってよい。
【0023】
第三触媒層40は、BaSOをさらに含む。第三領域における基材の容量を基準としたBaSOの総質量は10~20g/Lである。それにより、後述する実施例で示すように、実施形態に係る排ガス浄化装置100が高いHC浄化性能を有することができる。また、第三触媒層40がこの量でBaSOを含み、且つ、第二触媒層30が上述したRh担持粒子を含むことにより、後述する実施例で示すように、実施形態に係る排ガス浄化装置100が高いHC浄化性能に加えて高いNOx浄化性能も有することができる。
【0024】
第三触媒層40は、酸素貯蔵材料を含んでよい。酸素貯蔵材料の例は上述した通りである。第三触媒層40中の酸素貯蔵材料は、蛍石型Ce-Zr複合酸化物を含んでよい。第三触媒層40は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0025】
実施形態に係る排ガス浄化装置100は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【0026】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想又は技術的範囲を逸脱することなく、種々の変更、追加、及び削除を行うことができる。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
(1)実施例及び比較例で使用した材料
a)基材(ハニカム基材)
材質:コージェライト、容量:875cc、隔壁の厚さ:2mil(50.8μm)、セル密度:1平方インチ当たり600個、セル断面形状:六角形
【0029】
b)材料1:AlにLaを添加して得られた材料(La:1wt%~10wt%)。
【0030】
c)材料2(蛍石型Ce-Zr複合酸化物):Al-CeO-ZrO複合酸化物に、微量のNd、La、及びYを添加して得られた、蛍石型構造を有する材料(CeO:15wt%~30wt%)。
【0031】
d)材料3(パイロクロア型Ce-Zr複合酸化物):CeOとZrOを略等しい物質量で含有する複合酸化物に、微量の希土類金属の酸化物、例えばPr11、La、Y、及びNdを添加し、高温で還元処理して得られた、パイロクロア型構造を有する材料(CeO:45mol%~65mol%、ZrO:45mol%~65mol%)。
【0032】
e)材料4:硝酸パラジウム水溶液
【0033】
f)材料5:硝酸ロジウム水溶液
【0034】
g)材料6:硫酸バリウム
【0035】
h)材料7:単斜晶ZrO粒子分散液(第一稀元素化学工業株式会社製ZSL00013)
【0036】
(2)排ガス浄化装置の作製
比較例1
撹拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料3、及び材料5を加えて混合し、懸濁したスラリー1を調製した。スラリー1を基材の下流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の下流端と、基材の下流端から基材の上流端に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、基材の隔壁がスラリー1でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー1中の水を蒸発させた。次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第一触媒層を形成した。
【0037】
第一領域における基材の容量を基準とした第一触媒層に含まれる材料1の量は80g/L、材料2の量は60g/L、材料3の量は30g/L、材料5に由来するRh粒子の量は0.3g/Lであった。
【0038】
撹拌されている蒸留水に材料1を加え、硝酸を添加してpHを3にした。ここに材料7を加えて撹拌した。得られた混合物を乾燥させ、焼成した。それにより、La添加Al粒子及びそれに担持された単斜晶ZrO粒子からなる、単斜晶ZrO担持Al粒子を得た。
【0039】
撹拌されている蒸留水に、単斜晶ZrO担持Al粒子、材料2、材料3、及び材料5を加えて混合し、懸濁したスラリー2を調製した。スラリー2を基材の上流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の上流端と、基材の上流端から基材の下流端に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、基材の隔壁がスラリー2でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー2中の水を蒸発させ、次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第二触媒層を形成した。
【0040】
第二領域における基材の容量を基準とした第二触媒層に含まれる単斜晶ZrO担持Al粒子の量は66g/L(うち、単斜晶ZrO粒子の量は0.4g/L)、材料2の量は45g/L、材料3の量は9g/L、材料5に由来するRh粒子の量は0.3g/Lであった。
【0041】
撹拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料4、及び材料6を加えて混合し、懸濁したスラリー3を調製した。スラリー3を基材の上流端からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の上流端と、基材の上流端から基材の下流端に向かって基材全長の30%の長さの距離を隔てた第三位置との間の第三領域において、スラリー3の層が形成された。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー3中の水を蒸発させ、次いで電気炉にて500℃で2時間の焼成を行った。それにより、第二触媒層上に第三触媒層を形成した。
【0042】
第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料1の量は30g/L、材料2の量は50g/L、材料4に由来するPd粒子の量は5.0g/L、材料6(硫酸バリウム)の量は5g/Lであった。こうして比較例1の排ガス浄化装置を得た。
【0043】
実施例1、2
第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料6(硫酸バリウム)の量を表1に記載の通りとしたこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0044】
比較例2
単斜晶ZrO担持Al粒子の調製を行わずに、単斜晶ZrO担持Al粒子に代えて材料1を用いたこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0045】
比較例3、4
第三領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料6(硫酸バリウム)の量を表1に記載の通りとしたこと以外は比較例2と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0046】
比較例5
材料6を加えずにスラリー3を調製したこと以外は比較例2と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0047】
(3)エージング処理
実施例及び比較例の排ガス浄化装置を、それぞれ、排気量4.6LのV型8気筒エンジンの排気系に接続した。50時間にわたって、排ガス浄化装置の床温を950℃に維持しながら、該エンジンにストイキの混合気(空燃比A/F=14.6)及び過剰な酸素を含むリーンな混合気(A/F>14.6)を時間比3:1で一定の周期で交互に導入した。それにより、排ガス浄化装置をエージング処理した。
【0048】
(4)リッチ条件継続時のHC浄化率の測定
エージング処理した排ガス浄化装置を排気量2.5LのL型4気筒エンジンの排気系に接続した。エンジンに燃料リッチな混合気(A/F=14.4)を導入し、エンジンからの約550℃の排気を排ガス浄化装置に導入した。混合気の導入開始から約3分経過後の排ガス浄化装置の上流端及び下流端における排気のHC含有量を測定して、HC浄化率を求めた。結果を表1及び図3に示す。
【0049】
第二触媒層中のAl粒子への単斜晶ZrOの担持の有無にかかわらず、第三触媒層中の硫酸バリウムが多いほど燃料リッチ条件下でのHC浄化率が向上した。これはPdのHC被毒を硫酸バリウムが抑制したためと推察される。
【0050】
(5)NOx浄化性能評価
エージング処理した排ガス浄化装置を排気量2.5LのL型4気筒エンジンの排気系に接続した。エンジンに燃料リッチな混合気(A/F=14.4)を導入し、エンジンからの約600℃の排気を熱交換器により200℃に冷却し、排ガス浄化装置に導入した。熱交換器を制御して、排ガス浄化装置に導入される排気の温度を200℃から一定の速度で上昇させ、この間、排ガス浄化装置の上流端及び下流端における排気のNOx含有量を測定して、NOx浄化率を求めた。なお、排ガス浄化装置がガスの流れ方向において常に一様な温度を有するように、排気の流速を十分に大きくするとともに排気の昇温速度を十分に小さくした。NOx浄化率が50%に到達したときの排気の温度(NOx-T50)を表1及び図3に示す。NOx-T50が低いほど、NOx浄化性能が高いことを意味する。
【0051】
第二触媒層中のAl粒子への単斜晶ZrOの担持が無い場合、第三触媒層が硫酸バリウムを含むことによりNOx浄化性能が大きく向上した。しかし、第三触媒層中の硫酸バリウムが多くなるにつれてNOx浄化性能が低下した。これは、Rhが硫酸バリウムと接触して酸化物として安定化したことにより失活したことが原因であると発明者らは推察している。
【0052】
一方、第二触媒層中のAl粒子に単斜晶ZrOが担持されていた場合、第三触媒層中の硫酸バリウムの増加に伴うNOx浄化性能の低下は小さかった。これは、Rhが単斜晶ZrOとともに担体に担持されていることによりRhが安定化し、Rhと第三触媒層中の硫酸バリウムとの相互作用が低減したことによるものであると発明者らは推察している。特に、硫酸バリウムの量が10~20g/Lの範囲内では、硫酸バリウムの増加に伴うNOx浄化性能の低下はほとんどみられなかった。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
10:基材、12:枠部、14:セル、16:隔壁、20:第一触媒層、30:第二触媒層、40:第三触媒層、100:排ガス浄化装置、I:上流端(第一端)、J:下流端(第二端)、P:第一位置、Q:第二位置、R:第三位置、X:第一領域、Y:第二領域、Z:第三領域
図1
図2
図3