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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025123906
(43)【公開日】2025-08-25
(54)【発明の名称】検出器、及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20250818BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019682
(22)【出願日】2024-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝野 高志
(72)【発明者】
【氏名】溝下 倫大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏一
(72)【発明者】
【氏名】東 周
(72)【発明者】
【氏名】川端 久美子
(72)【発明者】
【氏名】水野 文明
(57)【要約】
【課題】互いに分子量が接近している第1気体と第2気体から構成された混合気体から、第1気体の濃度を精度よく検出する。
【解決手段】検出器1は、互いに分子量が接近している第1気体と第2気体から構成される第1混合気体が導入されるサンプルガス導入口2と、水晶振動子4D上に形成された吸着膜4Aを有する検出素子4と、第1気体を吸着する吸着材3C、及び吸着材3Cに吸着した第1気体を脱着させる脱着装置3Dを含み、第2気体を第1気体との分子量差が異なる第3気体に交換する交換機構3と、を備え、吸着膜4Aに吸着した第3気体の吸着量と、交換機構3によって第2気体を第3気体に交換した後の第1気体と第3気体から構成される第2混合気体の吸着膜4Aへの吸着量との差分に応じて変化する検出素子4の水晶振動子4Dの周波数変化量を第1気体の濃度として検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、
水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、
前記導入口と前記検出素子との間に設けられ、前記導入口から導入された前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、
を備え、
前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記交換機構によって前記第2気体を前記第3気体に交換した後の前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体の前記吸着膜への吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量を前記第1気体の濃度として検出する
検出器。
【請求項2】
前記交換機構は、前記第1気体を吸着する吸着材と、
前記第3気体が導入された場合に前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させ、前記第2混合気体を生成する脱着装置と、
を備えた請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記第1気体がエチレンであり、
前記吸着膜が多孔質材料によって構成された
請求項1又は請求項2に記載の検出器。
【請求項4】
前記多孔質材料が金属有機構造体である
請求項3に記載の検出器。
【請求項5】
前記第2気体が窒素、乾燥空気、及び空気の何れかであり、前記第3気体が二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、及び酸素の何れかである
請求項4に記載の検出器。
【請求項6】
濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、
水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、
前記導入口と前記検出素子との間に設けられた機構であって、前記第1気体を吸着する吸着材、及び前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させる脱着装置を含み、前記導入口から導入された前記第1混合気体に含まれる前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、
を備えた検出器を用いて、
前記導入口から導入された前記第1混合気体によって前記第1気体が前記吸着材に吸着した後、前記交換機構に導入された前記第3気体が前記吸着膜に接触するように前記交換機構を制御することにより前記第3気体を前記吸着膜に吸着させると共に、前記交換機構への前記第3気体の導入中に前記脱着装置を制御し、前記第1気体を前記吸着材から脱着させることによって前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体を生成して前記第2混合気体を前記吸着膜に吸着させ、
前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記吸着膜に吸着した前記第2混合気体の吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量から、前記第1気体の濃度を検出する処理をコンピュータが実行する
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体の検出器、及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の気体を含む混合気体、例えばにおいを発する第1気体と無臭の第2気体を含む混合気体から第1気体の濃度を検出して、混合気体におけるにおいの強さを測定するにおいセンサが存在する。
【0003】
例えば特許文献1には、におい成分を捕集管で捕集した後、捕集管をヒーターで加熱してにおい成分を捕集管から脱離させた状態で捕集管にキャリアガスを供給することによって、におい成分をセンサで検出する識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-22694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたにおいセンサでは、第1気体の吸着量と混合気体の吸着量との差分から第1気体の濃度、すなわち、におい成分の濃度を測定する。
【0006】
通常、においセンサは大気中で用いられることから、第2気体として窒素ガスや空気が用いられることが多いが、第1気体と第2気体の分子量差が接近している場合、においセンサにおける第1気体の吸着量と混合気体の吸着量との差分が小さくなってしまい、第1気体の濃度の検出精度が低下することがある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに分子量が接近している第1気体と第2気体の混合気体のみを用いて第1気体の濃度を検出する場合と比較して、第1気体の濃度を精度よく検出することができる検出器、及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る検出器は、濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、前記導入口と前記検出素子との間に設けられ、前記導入口から導入された前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、を備え、前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記交換機構によって前記第2気体を前記第3気体に交換した後の前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体の前記吸着膜への吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量を前記第1気体の濃度として検出する。
【0009】
第2態様に係る検出器は、第1態様に係る検出器において、前記交換機構は、前記第1気体を吸着する吸着材と、前記第3気体が導入された場合に前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させ、前記第2混合気体を生成する脱着装置と、を備える。
【0010】
第3態様に係る検出器は、第1態様又は第2態様に係る検出器において、前記第1気体がエチレンであり、前記吸着膜が多孔質材料によって構成される。
【0011】
第4態様に係る検出器は、第3態様に係る検出器において、前記多孔質材料が金属有機構造体である。
【0012】
第5態様に係る検出器は、第4態様に係る検出器において、前記第2気体が窒素であり、前記第3気体が二酸化炭素である。
【0013】
第6態様に係る検出方法は、濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、前記導入口と前記検出素子との間に設けられた機構であって、前記第1気体を吸着する吸着材、及び前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させる脱着装置を含み、前記導入口から導入された前記第1混合気体に含まれる前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、を備えた検出器を用いて、前記導入口から導入された前記第1混合気体によって前記第1気体が前記吸着材に吸着した後、前記交換機構に導入された前記第3気体が前記吸着膜に接触するように前記交換機構を制御することにより前記第3気体を前記吸着膜に吸着させると共に、前記交換機構への前記第3気体の導入中に前記脱着装置を制御し、前記第1気体を前記吸着材から脱着させることによって前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体を生成して前記第2混合気体を前記吸着膜に吸着させ、前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記吸着膜に吸着した前記第2混合気体の吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量から、前記第1気体の濃度を検出する処理をコンピュータが実行する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、互いに分子量が接近している第1気体と第2気体の混合気体のみを用いて第1気体の濃度を検出する場合と比較して、第1気体の濃度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検出器の構成例を示す図である。
図2】水晶振動子の発振周波数の変化と、吸着膜に吸着したガスの吸着量との関係例を示す図である。
図3】エチレンを含んだサンプルガスに含まれるベースガスの種類に応じた検出素子の周波数変化量|Δf|の例を示す図である。
図4】制御装置における電気系統の要部構成例を示す図である。
図5】制御装置によって実行される検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は、本開示に係るにおい成分の検出器1の構成例を示す図である。検出器1は、におい成分を含む混合気体からにおい成分の濃度を検出するセンサであり、「においセンサ」とも称される。以降では、濃度の検出対象であるにおい成分を「目的ガス」、目的ガスと共に存在する無臭の気体を「ベースガス」、目的ガスとベースガスから構成される混合気体を「サンプルガス」という。なお、特定の種類の気体を表すのではなく、気体全般を表す場合には単に「ガス」という。
【0018】
目的ガスは本開示における第1気体の一例であり、ベースガスは本開示における第2気体の一例であり、サンプルガスは本開示における第1混合気体の一例である。
【0019】
図1に示すように、検出器1は、サンプルガス導入口2、交換機構3、検出素子4、中間流路5、バルブ6、排出口7、制御装置8、及び発振回路9を含む。
【0020】
まず、検出器1の構成の概要について説明する。
【0021】
サンプルガス導入口2は、サンプルガスを検出器1に導入するための導入口である。サンプルガス導入口2は交換機構3に接続され、サンプルガス導入口2から導入されたサンプルガスは交換機構3に流入する。
【0022】
交換機構3は、サンプルガスに含まれるベースガスを他の気体に交換する機構を有する。ベースガスの交換に用いられる気体を「交換ガス」という。また、交換機構3によってベースガスが交換ガスに置き換えられたサンプルガスを「交換サンプルガス」という。
【0023】
交換ガスは本開示における第3気体の一例であり、交換サンプルガスは本開示における第2混合気体の一例である。
【0024】
交換機構3と検出素子4とは中間流路5で接続され、中間流路5には中間流路5を開閉するためのバルブ6が設けられている。
【0025】
検出素子4は、交換機構3から中間流路5を通じて流入する交換サンプルガスに含まれる目的ガスの濃度を検出する。検出素子4には排出口7が取り付けられており、検出素子4を通過したガスは排出口7から大気に排出される。
【0026】
次に、交換機構3におけるガス交換の原理について詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、交換機構3には、サンプルガスに含まれている目的ガスを吸着する吸着材3Cが備えられ、サンプルガス導入口2から導入されたサンプルガスが吸着材3Cを通過することによって、サンプルガスに含まれている目的ガスが吸着材3Cに吸着する。目的ガスは吸着材3Cに吸着されるため、吸着材3Cを通過したサンプルガスには目的ガスが取り除かれベースガスが残る。
【0028】
一方、サンプルガスが吸着材3Cを通過した後の交換機構3の流路下流側の空間には、ベースガス排出口3Bが設けられている。したがって、バルブ6によって中間流路5が閉じられている場合、サンプルガスに含まれていたベースガスはベースガス排出口3Bから大気に排出される。交換機構3内のベースガスがベースガス排出口3Bから排出された後、バルブ6が開けられ、交換機構3から検出素子4へのガスの流路が確保される。バルブ6の開閉制御は、例えば制御装置8によって実行される。
【0029】
また、サンプルガスが吸着材3Cを通過する前の交換機構3の流路上流側に位置する空間には、交換ガス導入口3Aが設けられている。したがって、サンプルガス導入口2からのサンプルガスの導入を停止した後、交換ガス導入口3Aから交換ガスを導入すれば、交換機構3内部が交換ガスで充填され、交換ガスが中間流路5を通じて検出素子4に到達する。
【0030】
一方、交換機構3内部が交換ガスで充填された状態において、吸着材3Cに吸着した目的ガスを吸着材3Cから脱着させる脱着装置3Dを稼働させると、目的ガスと交換ガスとから構成される混合ガス、すなわち、サンプルガスに含まれていたベースガスが交換ガスに置き換えられた交換サンプルガスが生成され、交換サンプルガスが中間流路5を通じて検出素子4に到達する。
【0031】
このようにして、交換機構3によって目的ガスを含むサンプルガスのベースガスが交換ガスに交換される。
【0032】
なお、脱着装置3Dには吸着材3Cを加熱することによって吸着材3Cから目的ガスを脱着させるヒーターが用いられるが、脱着装置3Dは、吸着材3Cから目的ガスを脱着させることができるものであればどのような装置であってもよく、ヒーターに限られない。説明の便宜上、脱着装置3Dの一例であるヒーターに対して、脱着装置3Dと同じ符号“3D”を付して「ヒーター3D」と表すことにする。ヒーター3Dのオンオフ制御は図1に示した制御装置8によって実行される。
【0033】
次に、検出素子4における目的ガスの濃度の検出原理について説明する。
【0034】
図1に示すように、検出素子4は、電極4B及び水晶結晶4Cから構成された水晶振動子4D、並びに、水晶振動子4D上に形成された吸着膜4Aを含む。検出素子4の吸着膜4Aにガスが吸着すると、ガスの吸着量に応じて水晶振動子4Dの発振周波数が変化する。水晶振動子4Dの発振周波数と、吸着膜4Aに吸着したガスの吸着量との関係は、(1)式に示すSauerbreyの式によって表される。
【0035】
【数1】
【0036】
(1)式において、Δfは水晶振動子4Dの周波数変化量、nは奇数次高調波、fは基本周波数、Aは吸着膜4Aの面積、ρは水晶結晶4Cの密度、μは水晶結晶4Cの剛性度、Δmは吸着膜4Aに吸着したガスの質量変化量を表す。
【0037】
図2は、(1)式に基づく水晶振動子4Dの発振周波数の変化と、吸着膜4Aに吸着したガスの吸着量との関係例を示す図である。図2の横軸は時間の経過を表し、縦軸は、水晶振動子4Dの基準発振周波数に対する周波数変化量Δfを表す。
【0038】
時刻t1において吸着膜4Aにガスが吸着すると吸着膜4Aの質量が増加するため、Δmが増加することによって周波数変化量Δfが減少する。一方、時刻t2において吸着膜4Aからガスが脱着すると吸着膜4Aの質量が減少するため、Δmが減少することによって周波数変化量Δfが増加する。
【0039】
したがって、検出素子4は、吸着膜4Aに目的ガスを吸着させた前後の水晶振動子4Dの発振周波数をそれぞれ制御装置8に通知する。
【0040】
制御装置8は、各々の発振周波数の差分である周波数変化量Δfから吸着膜4Aに吸着したガスの質量変化量Δmを算出して目的ガスの濃度を検出する。なお、水晶振動子4Dの発振は発振回路9によって行われる。検出素子4は発振回路9を内蔵してもよい。また、図1に示した検出器1は、必ずしも制御装置8を含む必要はなく、制御装置8を検出器1から独立させてもよい。
【0041】
吸着膜4Aは目的ガスを吸着しやすいように多孔質材料によって構成される。具体的には、吸着膜4Aに金属有機構造体(Metal Organic Framework:MOF)が用いられる。具体的には、UiO-66、ZIF-8、MOF-5、MOF-74、及びHKUST-1と、これらの構造体を構成する金属元素をCo2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Al3+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、及びCr6+等に変更したMOFが用いられる。更に、上記に示したMOFにアミノ基、カルボシル基、スルホ基といった官能基を付与したMOFを用いてもよい。
【0042】
なお、吸着膜4Aは金属有機構造体に限定されず、ゼオライト、活性炭、メソポーラスシリカ、多孔性配位高分子(Porous Coodination Polymer:PCP)、シリカゲル、共有結合性有機構造体(Covalent Organic Framework:COF)、粘土鉱物、及び多孔金属を用いてもよい。
【0043】
ここで、検出器1から交換機構3を取り除き、サンプルガス導入口2を検出素子4に直接接続した検出器(「比較検出器」という)を用いてサンプルガスに含まれる目的ガスの濃度を検出する例について検討する。具体的に説明するため、サンプルガスに含まれる目的ガスをエチレンであり、ベースガスを窒素(“N”と表す場合もある)とする。
【0044】
エチレンの分子量は28.01[g/mol]であり、窒素の分子量は28.05[g/mol]であるため、エチレンと窒素との間には0.04[g/mol]の分子量差しかない。また、エチレン及び窒素は、共に物理吸着によって検出素子4の吸着膜4Aに吸着するため、化学吸着によって吸着膜4Aに吸着する場合よりも、吸着膜4Aに質量の変化が伝わりにくい傾向が見られる。したがって、吸着膜4Aにおける窒素の吸着量と、サンプルガスの吸着量との差分が小さくなるため、比較検出器では水晶振動子4Dの発振周波数が検出限界未満の値しか変化せず、エチレンの濃度を検出することができない場合がある。
【0045】
一方、交換機構3を有する図1に示した検出器1では、サンプルガス導入口2からエチレンと窒素から構成されるサンプルガスを導入してエチレンを吸着材3Cに吸着させた後、ベースガス排出口3Bから窒素を排出し、窒素の代わりにベースガスとなる交換ガスを交換ガス導入口3Aから導入する。例えば交換ガスには二酸化炭素(“CO”と表す場合もある)が用いられる。交換ガスは本開示における第3気体の一例である。
【0046】
交換機構3への二酸化炭素の導入によって検出素子4の吸着膜4Aに二酸化炭素が吸着した後に脱着装置3Dを稼働させれば、検出素子4の吸着膜4Aにエチレンと二酸化炭素から構成される交換サンプルガスが吸着することになる。二酸化炭素の分子量は44.01[g/mol]であり、エチレンの分子量に比べて16.00[g/mol]も大きい。
【0047】
したがって、吸着膜4Aにおける二酸化炭素の吸着量と、交換サンプルガスの吸着量との差分が、窒素の吸着量と、サンプルガスの吸着量との差分よりも大きくなるため、水晶振動子4Dの周波数変化量Δfが大きくなり、エチレンの濃度を検出できるようになる。
【0048】
なお、交換ガスに二酸化炭素を用いる場合、他の多孔質材料よりも二酸化炭素を吸着しやすいMOFの一例であるUiO-66を吸着膜4Aに用いることが好ましい。
【0049】
上記の例では交換ガスに二酸化炭素を用いたが、このように交換ガスには目的ガスを含まず、かつ、目的ガスとの分子量差が予め定めた値以上異なる気体を用いる。具体的には、目的ガスとの分子量差が±1[g/mol]以上ある気体を交換ガスに用いれば、目的ガスの濃度を検出できるようになる。
【0050】
図3は、目的ガスであるエチレンを含んだサンプルガスに含まれるベースガスの種類に応じた検出素子4の周波数変化量|Δf|の例を示す図である。図3の横軸はベースガスのモル質量[g/mol]を表し、縦軸は検出素子4の基準発振周波数に対する周波数変化量Δfを表す。また、図3の点P1、点P2、点P3、点P4、及び点P5は、それぞれ窒素、空気、酸素、二酸化炭素、及びアセトン蒸気をベースガスに用いた場合の検出素子4の周波数変化量|Δf|を表す。演算子|Δf|は、周波数変化量Δfの絶対値を表す。
【0051】
図3に示すように、エチレンとの分子量差が±1[g/mol]未満である窒素及び空気をベースガスに用いた場合、検出素子4の周波数変化量|Δf|は0付近を示す。一方、エチレンとの分子量差が±1[g/mol]以上である酸素、二酸化炭素、及びアセトン蒸気をベースガスに用いた場合、検出素子4の周波数変化量|Δf|はエチレンの濃度の検出が可能となる大きさを示す。したがって、検出器1でサンプルガスに含まれるエチレンの濃度を検出する場合、例えば酸素、二酸化炭素、及びアセトン蒸気の何れかの気体を交換ガスとして用いることができる。更に、アルゴン及びヘリウムの何れかの気体もエチレンとの分子量差が±1[g/mol]以上であるため、交換ガスとして用いることができる。ただし、酸素及びアセトン蒸気は可燃性を有するため、検出器1でサンプルガスに含まれるエチレンの濃度を検出する場合、他の気体より入手しやすく不燃性である二酸化炭素を用いることが好ましい。なお、湿度が予め定めた値(例えば30%)以下となる空気を特に「乾燥空気」というが、乾燥空気もエチレンとの分子量差が±1[g/mol]未満となる気体であり、ベースガスとして用いられる場合がある。したがって、乾燥空気をベースガスに用いた場合にも、検出素子4の周波数変化量|Δf|は0付近を示すことになる。
【0052】
こうした検出器1の制御装置8は、例えばコンピュータ10を用いて構成される。
【0053】
図4は、コンピュータ10を用いた制御装置8における電気系統の要部構成例を示す図である。
【0054】
コンピュータ10は、制御装置8の機能を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)10A、CPU10Aの一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)10B、コンピュータ10を検出器1の制御装置8として機能させる検出プログラムを記憶する不揮発性メモリ10C、及び入出力インターフェース(「I/O」という)10Dを備える。CPU10A、RAM10B、不揮発性メモリ10C、及びI/O10Dはバス10Eを介して各々接続されている。
【0055】
不揮発性メモリ10Cは、不揮発性メモリ10Cに供給される電力が遮断されても記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。例えばコンピュータ10の電源がオフされる毎に消去されると困るデータは不揮発性メモリ10Cに記憶される。不揮発性メモリ10Cは必ずしもコンピュータ10に内蔵されている必要はなく、例えばメモリカードのように、コンピュータ10に着脱可能な可搬型の記憶装置であってもよい。また、コンピュータ10は、例えばI/O10Dに接続された通信ユニット(図示省略)を通じて接続された外部装置(図示省略)の不揮発性メモリを不揮発性メモリ10Cとして用いてもよい。
【0056】
一方、I/O10Dには、例えばヒーター3D、検出素子4、バルブ6、及びユーザインタフェース装置(「UI装置」という)11が接続される。
【0057】
UI装置11は、例えばボタン操作等によってユーザからの指示を受け付けると共に、検出した目的ガスの濃度等の情報を表示する画面を備えた装置である。
【0058】
したがって、CPU10Aは、I/O10Dを経由してヒーター3D及びバルブ6の制御を行うと共に、検出素子4から水晶振動子4Dの発振周波数を取得し、検出した目的ガスの濃度をUI装置11に表示する。なお、CPU10Aは、I/O10Dに接続された通信ユニットを経由してUI装置11に接続してもよい。
【0059】
次に、検出器1の動作について説明する。図5は、例えば検出器1の電源がオンになった場合に、制御装置8のCPU10Aによって実行される検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0060】
検出処理を規定する検出プログラムは、例えば図4に示したコンピュータ10の不揮発性メモリ10Cに予め記憶されている。制御装置8のCPU10Aは、不揮発性メモリ10Cに記憶される検出プログラムを読み込み、検出処理を実行する。
【0061】
なお、ここではエチレンと窒素から構成されたサンプルガスからエチレンの濃度を検出する例を用いて検出器1の動作を説明する。交換ガスには一例として二酸化炭素を用いる。
【0062】
ステップS10において、CPU10Aはバルブ6を閉じる制御を行う。これにより、中間流路5が遮断される。
【0063】
ステップS20において、CPU10Aは、サンプルガス導入口2からサンプルガスの導入が開始されたか否かを判定する。CPU10Aは、例えばUI装置11を通じてユーザからサンプルガス導入開始指示を受け付けた場合に、サンプルガスの導入が開始されたと判定すればよい。サンプルガス導入開始指示を受け付けていない場合には、例えばステップS20の判定処理を繰り返し実行して、サンプルガス導入開始指示を受け付けるまで待機する。一方、サンプルガス導入開始指示を受け付けた場合にはステップS30に移行する。
【0064】
交換機構3へのサンプルガスの導入に伴い、吸着材3Cにエチレンが吸着される。また、ステップS10の処理によって中間流路5は遮断されているため、交換機構3に導入されたサンプルガスに含まれる窒素がベースガス排出口3Bから排出される。
【0065】
ステップS30において、CPU10Aは、サンプルガスの導入が終了したか否かを判定する。CPU10Aは、例えばUI装置11を通じてユーザからサンプルガス導入終了指示を受け付けた場合に、サンプルガスの導入が終了したと判定すればよい。サンプルガス導入終了指示を受け付けていない場合には、例えばステップS30の判定処理を繰り返し実行して、サンプルガス導入終了指示を受け付けるまで待機する。一方、サンプルガス導入終了指示を受け付けた場合にはステップS40に移行する。
【0066】
ステップS40において、CPU10Aは、バルブ6を開ける制御を行う。これにより、交換機構3と検出素子4とが中間流路5によって接続される。
【0067】
ステップS50において、CPU10Aは、交換ガス導入口3Aから二酸化炭素の導入が開始されたか否かを判定する。CPU10Aは、例えばUI装置11を通じてユーザから交換ガス導入開始指示を受け付けた場合に、二酸化炭素の導入が開始されたと判定すればよい。交換ガス導入開始指示を受け付けていない場合には、例えばステップS50の判定処理を繰り返し実行して、交換ガス導入開始指示を受け付けるまで待機する。一方、交換ガス導入開始指示を受け付けた場合にはステップS60に移行する。
【0068】
ステップS40の処理によって中間流路5が開いているため、交換機構3に導入された二酸化炭素は検出素子4に到達する。
【0069】
したがって、ステップS60において、CPU10Aは、吸着膜4Aに吸着した二酸化炭素の吸着量に応じて変化する水晶振動子4Dの発振周波数を検出素子4から取得し、RAM10Bに記憶する。
【0070】
ステップS70において、CPU10Aは、ヒーター3Dに対して電源を入れる制御を行う。これにより、吸着材3Cからエチレンが脱着し、交換機構3においてエチレンと二酸化炭素の混合気体が生成される。すなわち、サンプルガスにおけるベースガスが窒素から二酸化炭素に交換された交換サンプルガスが生成される。
【0071】
中間流路5は開いた状態となっているため、交換機構3によって生成された交換サンプルガスは検出素子4に到達する。
【0072】
したがって、ステップS80において、CPU10Aは、吸着膜4Aに吸着した交換サンプルガスの吸着量に応じて変化する水晶振動子4Dの発振周波数を検出素子4から取得し、RAM10Bに記憶する。
【0073】
ステップS90において、CPU10Aは、ステップS60の処理によって取得した発振周波数と、ステップS80の処理によって取得した発振周波数との差分によって表される周波数変化量Δfから、(1)式に示したSauerbreyの式を用いて吸着膜4Aに吸着したガスの質量変化量Δmを算出し、サンプルガスに含まれていたエチレンの濃度を検出する。CPU10Aは、検出したエチレンの濃度を、例えばUI装置11に表示する。以上により、図5に示した検出処理を終了する。
【0074】
このように本開示の検出器1によれば、サンプルガス導入口2と検出素子4との間に交換機構3を設け、サンプルガスにおけるベースガスを交換ガスに交換する。したがって、目的ガスとベースガスとの分子量差が±1[g/mol]未満しかないサンプルガスであっても、ベースガスを目的ガスとの分子量差が±1[g/mol]以上ある交換ガスに交換できるため、サンプルガスに含まれる目的ガスの濃度を検出することができる。
【0075】
なお、分子量差が±1[g/mol]未満しかないガスの組み合わせとしては、エチレンと二酸化炭素の他、例えばメチルアミン(31.10[g/mol])と酸素(32.00[g/mol])、及びアセトアルデヒド(44.05[g/mol])と二酸化炭素(44.01[g/mol])の各組み合わせが存在する。検出器1は、こうした各組み合わせから構成されるサンプルガスのにおい成分(メチルアミン及びアセトアルデヒド)も検出することができる。
【0076】
更に、一酸化炭素(28.01[g/mol])と窒素(28.05[g/mol])から構成されるサンプルガスのように、におい成分を含まないサンプルガスからも何れか一方のガスの濃度を検出することもできる。
【0077】
この他、上記で列挙していない目的ガスとベースガスとの分子量差が±1[g/mol]未満しかない組み合わせによって構成されたサンプルガスに対しても、ベースガスを交換することによって、検出器1がサンプルガスに含まれる何れか一方の種類のガスの濃度を検出できることは言うまでもない。
【0078】
なお、エチレン以外のガスの濃度を検出する場合、濃度の検出対象となるガスを吸着する吸着材3Cを交換機構3に備えることになる。
【0079】
図1に示した検出器1は、ガスの流れに対して吸着材3Cよりも上流側の交換機構3に交換ガス導入口3Aが設けられているが、吸着材3Cよりも下流側で、かつ、吸着材3Cから検出素子4の吸着膜4Aに至るまでの間の流路に交換ガス導入口3Aを設けてもよい。
【0080】
また、必ずしもバルブ6を中間流路5に設ける必要はなく、中間流路5に接続する交換機構3及び検出素子4の何れか一方の接続部にバルブ6を設けてもよい。すなわち、交換機構3及び検出素子4の何れか一方がバルブ6を含んでもよい。
【0081】
また、図1に示した検出器1は、交換機構3にサンプルガスを導入するサンプルガス導入口2と、交換機構3に交換ガスを導入する交換ガス導入口3Aとを有するが、サンプルガス導入口2と交換ガス導入口3Aとを共通にして、同じ導入口から交換機構3にサンプルガスと交換ガスを導入してもよい。
【0082】
また、図1に示した検出器1は、サンプルガスに含まれるベースガスを排出するベースガス排出口3Bと、検出素子4を通過したガスを排出する排出口7とを有するが、ベースガス排出口3Bを設けずに、排出口7からガスを排出してもよい。この場合、必ずしもバルブ6及び中間流路5を設ける必要はなく、交換機構3と検出素子4を隣り合わせて接続すればよい。制御装置8は、サンプルガスが検出素子4を通過しているときの発振周波数は取得せず、交換ガスが交換機構3に導入された後から図5に示したステップS60~S90の各処理を実行すればよい。
【0083】
以上、実施形態を用いて本開示について説明したが、本開示は実施形態に記載の範囲には限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で図5に示した検出処理の内部順序を変更してもよい。
【0084】
実施形態では、一例として検出器1における検出処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、図5に示した検出処理のフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、検出処理をソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
【0085】
このように、検出器1のCPU10Aを例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
【0086】
また、実施形態における検出器1のCPU10Aの動作は、1つのCPU10Aによって実現される形態の他、複数のCPU10Aによって実現されてもよい。更に、実施形態における検出器1のCPU10Aの動作は、それぞれ物理的に離れた位置に存在する複数のCPU10Aの協働によって実現されるものであってもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、検出器1のCPU10Aが読み込む検出プログラムが不揮発性メモリ10Cにインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係る検出プログラムは、コンピュータ10で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば検出プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、検出プログラムをUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。不揮発性メモリ10C、CD-ROM、DVD-ROM、USB、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0088】
更に、検出器1は、通信回線に接続される外部装置から検出プログラムをダウンロードするようにしてもよい。この場合、検出器1のCPU10Aは、外部装置からダウンロードした検出プログラムを読み込んで検出処理を実行する。
【0089】
なお、以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0090】
(付記1)
濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、
水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、
前記導入口と前記検出素子との間に設けられ、前記導入口から導入された前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、
を備え、
前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記交換機構によって前記第2気体を前記第3気体に交換した後の前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体の前記吸着膜への吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量を前記第1気体の濃度として検出する
検出器。
【0091】
(付記2)
前記交換機構は、前記第1気体を吸着する吸着材と、
前記第3気体が導入された場合に前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させ、前記第2混合気体を生成する脱着装置と、
を備えた付記1に記載の検出器。
【0092】
(付記3)
前記第1気体がエチレンであり、
前記吸着膜が多孔質材料によって構成された
付記1又は付記2に記載の検出器。
【0093】
(付記4)
前記多孔質材料が金属有機構造体である
付記3に記載の検出器。
【0094】
(付記5)
前記第2気体が窒素、乾燥空気、及び空気の何れかであり、前記第3気体が二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、及び酸素の何れかである
付記1~付記4の何れか1つに記載の検出器。
【0095】
(付記6)
濃度の検出対象である第1気体と、前記第1気体との分子量差が予め定めた値未満である第2気体から構成される第1混合気体が導入される導入口と、
水晶振動子上に形成された吸着膜を有する検出素子と、
前記導入口と前記検出素子との間に設けられた機構であって、前記第1気体を吸着する吸着材、及び前記吸着材に吸着した前記第1気体を前記吸着材から脱着させる脱着装置を含み、前記導入口から導入された前記第1混合気体に含まれる前記第2気体を、前記第1気体を含まず、かつ、前記第1気体との分子量差が前記予め定めた値以上異なる第3気体に交換する交換機構と、
を備えた検出器を用いて、
前記導入口から導入された前記第1混合気体によって前記第1気体が前記吸着材に吸着した後、前記交換機構に導入された前記第3気体が前記吸着膜に接触するように前記交換機構を制御することにより前記第3気体を前記吸着膜に吸着させると共に、前記交換機構への前記第3気体の導入中に前記脱着装置を制御し、前記第1気体を前記吸着材から脱着させることによって前記第1気体と前記第3気体から構成される第2混合気体を生成して前記第2混合気体を前記吸着膜に吸着させ、
前記吸着膜に吸着した前記第3気体の吸着量と、前記吸着膜に吸着した前記第2混合気体の吸着量との差分に応じて変化する前記検出素子の水晶振動子の周波数変化量から、前記第1気体の濃度を検出する処理をコンピュータが実行する
検出方法。
【符号の説明】
【0096】
1 検出器
2 サンプルガス導入口
3 交換機構
3A 交換ガス導入口
3B ベースガス排出口
3C 吸着材
3D 脱着装置(ヒーター)
4 検出素子
4A 吸着膜
4B 電極
4C 水晶結晶
4D 水晶振動子
5 中間流路
6 バルブ
7 排出口
8 制御装置
9 発振回路
10 コンピュータ
10A CPU
10B RAM
10C 不揮発性メモリ
10D I/O
10E バス
11 UI装置
Δf 周波数変化量
Δm 質量変化量
図1
図2
図3
図4
図5