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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025124313
(43)【公開日】2025-08-26
(54)【発明の名称】バッテリーパックシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/249 20210101AFI20250819BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20250819BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20250819BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250819BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20250819BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
H01M50/249
H01M50/284
H01M50/298
B60L50/60
B60L53/80
H01Q1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020278
(22)【出願日】2024-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】三谷 健一
【テーマコード(参考)】
5H040
5H125
5J047
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H125AA01
5H125AC12
5H125CC01
5H125FF06
5J047AA03
5J047AA09
5J047AA12
5J047EF05
(57)【要約】
【課題】パックケース内のスペースを有効利用できるようにすることを目的とする。
【解決手段】バッテリーパックシステム20は、パックケース32と、パックケースに収容される複数のバッテリーモジュール36と、複数のバッテリーモジュールと有線接続される複数の無線子機38と、複数のバッテリーモジュールと有線接続されるモジュール制御装置40と、複数の無線子機からの電波を受信する親側アンテナ46と、親側アンテナとモジュール制御装置とを有線接続するアンテナ用配線48と、を備える。複数のバッテリーモジュールと複数の無線子機とモジュール制御装置とがパックケースに収容され、親側アンテナがパックケースの外に配置され、アンテナ用配線の少なくとも一部がパックケースの外を経由している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パックケースと、
前記パックケースに収容される複数のバッテリーモジュールと、
前記複数のバッテリーモジュールと有線接続される複数の無線子機と、
前記複数のバッテリーモジュールと有線接続されるモジュール制御装置と、
前記複数の無線子機からの電波を受信する親側アンテナと、
前記親側アンテナと前記モジュール制御装置とを有線接続するアンテナ用配線と、
を備え、
前記複数のバッテリーモジュールと前記複数の無線子機と前記モジュール制御装置とが前記パックケースに収容され、
前記親側アンテナが前記パックケースの外に配置され、
前記アンテナ用配線の少なくとも一部が前記パックケースの外を経由している、バッテリーパックシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記モジュール制御装置は、前記親側アンテナを介して、前記複数の無線子機との間で無線通信処理を行うための無線通信処理部を含み、
前記アンテナ用配線は、前記モジュール制御装置と前記親側アンテナとを接続するアンテナ線である、バッテリーパックシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記パックケースの外側から前記アンテナ用配線が接続されるアンテナ用コネクタをさらに備える、バッテリーパックシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記パックケースの外側から外側制御用配線が接続される外部コネクタをさらに備え、
前記パックケースが、前記アンテナ用コネクタと前記外部コネクタとを隣り合う位置で支持している、バッテリーパックシステム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記パックケースが車両から取り外された状態で、前記車両に保持される車両保持部品を更に含み、
前記親側アンテナが前記車両保持部品に保持されている、バッテリーパックシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記車両保持部品は、前記パックケースの外側を通過する配線を保護するプロテクタである、バッテリーパックシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のバッテリーパックシステムであって、
前記アンテナ用配線の少なくとも一部が前記配線に沿っている、バッテリーパックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリーパックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パックケースと、複数個のバッテリーモジュールと、複数個のスレーブモジュールと、マスタモジュールと、導波管と、を含むバッテリーパックを開示している。特許文献1では、パックケースの下部プレートには、バッテリーモジュール、マスタモジュール、バッテリー遮断ユニットなどが載置されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2023-504158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パックケース内にマスタモジュールを配置すると、パックケース内のスペースが圧迫される。パックケース内のスペースを有効利用できるようにすることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、パックケース内のスペースを有効利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のバッテリーパックシステムは、パックケースと、前記パックケースに収容される複数のバッテリーモジュールと、前記複数のバッテリーモジュールと有線接続される複数の無線子機と、前記複数のバッテリーモジュールと有線接続されるモジュール制御装置と、前記複数の無線子機からの電波を受信する親側アンテナと、前記親側アンテナと前記モジュール制御装置とを有線接続するアンテナ用配線と、を備え、前記複数のバッテリーモジュールと前記複数の無線子機と前記モジュール制御装置とが前記パックケースに収容され、前記親側アンテナが前記パックケースの外に配置され、前記アンテナ用配線の少なくとも一部が前記パックケースの外を経由している、バッテリーパックシステムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、パックケース内のスペースを有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る車両に組付けられたバッテリーパックシステムを示す概略図である。
図2図2はバッテリーパックシステムを示す斜視図である。
図3図3はバッテリーパックシステムを示す概略平面図である。
図4図4はバッテリーパックシステムを示す概略側面図である。
図5図5はバッテリーパックの取外し、取付け作業例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のバッテリーパックシステムは、次の通りである。
【0011】
(1)パックケースと、前記パックケースに収容される複数のバッテリーモジュールと、前記複数のバッテリーモジュールと有線接続される複数の無線子機と、前記複数のバッテリーモジュールと有線接続されるモジュール制御装置と、前記複数の無線子機からの電波を受信する親側アンテナと、前記親側アンテナと前記モジュール制御装置とを有線接続するアンテナ用配線と、を備え、前記複数のバッテリーモジュールと前記複数の無線子機と前記モジュール制御装置とが前記パックケースに収容され、前記親側アンテナが前記パックケースの外に配置され、前記アンテナ用配線の少なくとも一部が前記パックケースの外を経由している、バッテリーパックシステムである。
【0012】
このバッテリーパックシステムによると、親側アンテナが前記パックケースの外に配置されている。このため、パックケース内のスペースを圧迫せずに、親側アンテナを、複数の無線子機との無線通信に適した位置に配置し易い。また、アンテナ用配線の少なくとも一部がパックケースの外を経由している。このため、親側アンテナの位置に拘わらず、アンテナ用配線がパックケース内のスペースを圧迫し難い。これにより、パックケース内のスペースを有効利用できる。
【0013】
(2)(1)のバッテリーパックシステムであって、前記モジュール制御装置は、前記親側アンテナを介して、前記複数の無線子機との間で無線通信処理を行うための無線通信処理部を含み、前記アンテナ用配線は、前記モジュール制御装置と前記親側アンテナとを接続するアンテナ線であってもよい。
【0014】
この場合、モジュール制御装置と親側アンテナとを簡易なアンテナ線で接続すればよい。
【0015】
(3)(1)または(2)のバッテリーパックシステムであって、前記パックケースの外側から前記アンテナ用配線が接続されるアンテナ用コネクタをさらに備えてもよい。
【0016】
これにより、複数のバッテリーモジュールと複数の無線子機とモジュール制御装置とを収容するパックケースと、親側アンテナとを別扱いとし易い。これにより、複数のバッテリーモジュールと複数の無線子機とジュール制御装置とを収容するパックケースの着脱、メンテナンス性、交換作業性が向上する。
【0017】
(4)(3)のバッテリーパックシステムであって、前記パックケースの外側から外側制御用配線が接続される外部コネクタをさらに備え、前記パックケースが、前記アンテナ用コネクタと前記外部コネクタとを隣り合う位置で支持してもよい。
【0018】
これにより、例えば、同じ経路に沿うアンテナ用配線と外側制御用配線とを、隣り合うアンテナ用コネクタと外部コネクタに接続でき、パックケースの着脱、メンテナンス性及び交換作業性がより向上する。
【0019】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのバッテリーパックシステムであって、前記パックケースが車両から取り外された状態で、前記車両に保持される車両保持部品を更に含み、前記親側アンテナが前記車両保持部品に保持されていてもよい。
【0020】
この場合、親側アンテナを車両に保持させた状態のまま、複数のバッテリーモジュールと複数の無線子機とジュール制御装置とを収容するパックケースを、車両から着脱できる。これにより、バッテリーモジュールを交換しても親側アンテナを続けて使用でき、バッテリーパックシステムのメンテナンスコストを低くできる。
【0021】
(6)(5)のバッテリーパックシステムであって、前記車両保持部品は、前記パックケースの外側を通過する配線を保護するプロテクタであってもよい。
【0022】
これにより、プロテクタによって親側アンテナを保持できる。
【0023】
(7)(6)のバッテリーパックシステムであって、前記アンテナ用配線の少なくとも一部が前記配線に沿っていてもよい。
【0024】
これにより、アンテナ用配線を、プロテクタで保護される配線と同じように車両に組み込み易い。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のバッテリーパックシステムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
[実施形態]
以下、実施形態に係るバッテリーパックシステムについて説明する。
【0027】
<全体構成>
図1は車両10に組付けられたバッテリーパックシステム20を示す概略図である。
【0028】
車両10は、電気モータを動力として走行する自動車である。自動車は、ハイブリッド自動車(HV)であってもよいし、バッテリー式電気自動車(BEV)であってもよい。
【0029】
車両10に、電気部品16が搭載されている。電気部品16は、例えば、走行のための電気モータ、インバータ回路等の駆動回路及び電気制御ユニット等である。
【0030】
車両10に、バッテリーパックシステム20が組付けられる。バッテリーパックシステム20は、バッテリーパック30を備えるシステムである。バッテリーパック30は、電気モータに電気エネルギーを供給するエネルギー源である。バッテリーパック30は、例えば、フロア12の下側に支持される。例えば、バッテリーパック30は、前側の車輪13と後側の車輪14との間で、フロア12の下側に支持される。
【0031】
フロア12の下側にフロア下配線22が配置される。フロア下配線22は、複数の線状伝送部材を含む。線状伝送部材は、例えば、被覆電線、同軸ケーブル又はフラットケーブルである。線状伝送部材は、電力線、信号線又はアース線である。図1以下の各図において1本の線で示される配線は、実際には、複数の線状伝送部材を含む場合があり得る。
【0032】
フロア下配線22は、例えば、フロア12とバッテリーパック30との間に、前後方向に沿って配策される。フロア下配線22は、例えば、車両10のうちの前部に配置される電気部品16と、車両10のうちの後部に配置される電気部品16とを接続する。
【0033】
また、フロア下配線22の一部は、車両10の前後方向中間部で他のフロア下配線22から分岐する。分岐するフロア下配線22は、バッテリーパック30に接続されたり、後述する親側アンテナ46に接続されたりする。
【0034】
<バッテリーパックシステムについて>
図2はバッテリーパックシステム20を示す斜視図である。図2においてフロア12が2点鎖線で示される。図3はバッテリーパックシステム20を示す概略平面図である。図4はバッテリーパックシステム20を示す概略側面図である。
【0035】
バッテリーパックシステム20は、パックケース32と、複数のバッテリーモジュール36と、複数の無線子機としてのスレーブ機器38と、モジュール制御装置40と、親側アンテナ46と、アンテナ用配線48とを備える。
【0036】
パックケース32は、バッテリーモジュール36を収容するケースである。パックケース32は、上下方向に扁平な直方体状に形成されてもよい。
【0037】
例えば、パックケース32は、ケース本体33と、カバー34とを含む。ケース本体33は、上方が開口する扁平な直方体状に形成される。ケース本体33は、金属によって形成されてもよい。
【0038】
カバー34は、ケース本体33の上方開口を閉じることができる板状に形成される。例えば、カバー34は、方形板状に形成される。カバー34は、樹脂によって形成されるとよい。カバー34には、位置決め突部34pが形成されてもよい。例えば、カバー34の幅方向中央に位置決め突部34pが形成される。
【0039】
カバー34がケース本体33の上方開口を閉じた状態で、カバー34がケース本体33にネジ止等によって固定される。パックケース32は、フロア12に対してネジ止等で固定される。
【0040】
バッテリーモジュール36は、ケースと、当該ケース内に収容された複数のバッテリーセルを含む。複数のバッテリーセルは、ケース内で直列または並列接続されている。ケースは、例えば、直方体箱状に形成される。複数のバッテリーモジュール36は、パックケース32内に、縦横に並べられた状態で収容される。
【0041】
バッテリーモジュール36は、バッテリーセルの状態を監視する監視センサを備える。監視センサは、例えば、バッテリーセルの温度を検出する温度センサ、バッテリーセルの電圧を監視する電圧センサである。
【0042】
無線子機としてのスレーブ機器38は、バッテリーモジュール36と有線接続されている。より具体的には、スレーブ機器38は、バッテリーモジュール36内の監視センサと有線接続された無線端末装置である。スレーブ機器38は、バッテリーモジュール36内の監視センサによる検出結果を、無線方式で出力する。
【0043】
複数のスレーブ機器38は、複数のバッテリーモジュール36に対して1対1の関係で対応付けられていてもよいし、1対複数または複数対1の関係で対応付けられていてもよい。スレーブ機器38は、バッテリーモジュール36のケース内に収容されていてもよいし、ケース外に取付けられていてもよい。
【0044】
モジュール制御装置40は、上記複数のバッテリーモジュール36に有線接続される。例えば、モジュール制御装置40は、上記複数のバッテリーモジュール36に、電源線36a及びアース線36bを介して有線接続される。モジュール制御装置40は、複数のバッテリーモジュール36を、車両10の電気部品16から切離したり、電源経路を切替えたりする切離し、切替え機能を有することが考えられる。また、モジュール制御装置40は、スレーブ機器38と無線通信を行って、複数のバッテリーモジュール36の状態を監視する機能を有することが考えられる。複数のバッテリーモジュール36の状態は、切離し、切替えを行うための判断処理に供されてもよいし、バッテリーモジュール36の統括制御を行う電気制御ユニットに供されてもよい。
【0045】
親側アンテナ46は、複数のスレーブ機器38からの無線信号を受信するアンテナである。アンテナ用配線48は、親側アンテナ46とモジュール制御装置40とを有線接続する配線である。
【0046】
つまり、モジュール制御装置40と複数のバッテリーモジュール36との間において、電源線36a及びアース線36bを含む電源経路については、有線方式で接続されている。モジュール制御装置40と複数のバッテリーモジュール36との間において、電源経路をオンオフする信号回路についても有線方式で接続されてもよい。モジュール制御装置40及び複数のバッテリーモジュール36に接続したり、パックケース32内に組込んだりする作業を容易に行うためには、モジュール制御装置40は、パックケース32外よりもパックケース32内に収容されることが好ましい。
【0047】
また、モジュール制御装置40と複数のバッテリーモジュール36との間において、バッテリーモジュール36を監視する監視センサの結果を受信する信号経路については、部分的に無線化されている。監視センサの結果を受信する信号経路を、部分的に無線化することで、モジュール制御装置40と複数のバッテリーモジュール36とを接続する個別の信号経路が簡略化され、バッテリーパック30の構成が簡易化される。
【0048】
上記のように、パックケース32内にバッテリーモジュール36が縦横に並べられた状態で配置されると、スレーブ機器38も、パックケース32内で縦横に並んで分散して配置されることが想定される。このように、複数のバッテリーモジュール36と複数のスレーブ機器38とモジュール制御装置40とがパックケース32に収容された構成物を、バッテリーパック30と称してもよい。
【0049】
親側アンテナ46は、複数のスレーブ機器38との通信に適した位置に配置される。例えば、親側アンテナ46は、平面視において、パックケース32の中央に配置されることが想定される。
【0050】
ここで、モジュール制御装置40は、バッテリーモジュール36の統括制御を行う電気制御ユニット18にも有線方式で接続されることが想定される。バッテリーモジュール36の統括制御を行う電気制御ユニット18は、例えば、PCM(Power-train control module)である。モジュール制御装置40からの外部への配線の引出を容易にするため、モジュール制御装置40は、パックケース32内においていずれかの側面になるべく広い領域で接することができる位置に配置されることが考えられる。図3において、モジュール制御装置40は、パックケース32内において1つのコーナー近くに配置されている。仮に親側アンテナがモジュール制御装置40と一体化されていると、親側アンテナ用がパックケース32内において1つのコーナー近くに配置されてします。この場合、反対側のコーナー近くに位置するバッテリーモジュール36との通信距離が遠くなってしまう。
【0051】
また、仮に親側アンテナを、モジュール制御装置40と分離させて、パックケース32内に配置することを考える。この場合、親側アンテナとモジュール制御装置40とを、アンテナ用配線で接続しつつ、当該親側アンテナを通信に適した位置に配置することになる。この場合、パックケース32内に、親側アンテナ及び当該アンテナ用配線の敷設に適したスペース確保することになるし、また、パックケース32内にアンテナ用配線を組込む作業が生じる。
【0052】
なお、特許文献1では、複数個のスレーブモジュールとマスタモジュールとの間の無線通信経路を形成する導波管を用いている。特許文献1では、導波管の分、バッテリーパックが大型化するし、構成も複雑となる。
【0053】
そこで、親側アンテナ46を、パックケース32の外に配置する。これにより、パックケース32内に親側アンテナ46を配置するためのスペースを確保しなくてもよくなる。
【0054】
親側アンテナ46とモジュール制御装置40とを接続するアンテナ用配線48の少なくとも一部を、パックケース32外を経由するように敷設できる。このため、アンテナ用配線48が、パックケース32内の空間を圧迫し難い。また、限られたパックケース32内にアンテナ用配線を組込む場合と比較して、当該アンテナ用配線48の敷設作業が容易となる。
【0055】
<モジュール制御装置について>
モジュール制御装置40の具体例ついて説明する。モジュール制御装置40は、親側アンテナ46を介して、複数のスレーブ機器38との間で無線通信処理を行うための無線通信処理部としてルータ42を有してもよい。ルータ42は、無線ルータであり、無線通信回路と、ルータ処理部とを含む。無線通信回路は、スレーブ機器38との間で無線通信を行う回路である。ルータ42は、複数のスレーブ機器38との間で無線通信を行う親無線機器である。ルータ処理部は、複数のスレーブ機器38と無線通信回路との間のネットワークと、複数のスレーブ機器38からの検出結果に基づきバッテリーモジュール36を制御するためのネットワークとの間で、データを中継する機能を有する。複数のスレーブ機器38からの検出結果に基づきバッテリーモジュール36を制御するための機能は、モジュール制御装置40及び電気制御ユニット18の両方又は一方が有している。このため、複数のスレーブ機器38からの検出結果に基づきバッテリーモジュール36を制御するためのネットワークは、無線通信回路を、モジュール制御装置40及び電気制御ユニット18の両方又は一方に接続する有線経路を含むことが考えられる。
【0056】
モジュール制御装置40がルータ42を含む場合、アンテナ用配線48として、モジュール制御装置40と親側アンテナ46とを接続するアンテナ線を用いることができる。アンテナ線としては、例えば、同軸ケーブルを用いることができる。同軸ケーブルは、例えば、内部導体を、絶縁層で囲み、その周りをさらに筒状のシールドで覆った通信ケーブルである。
【0057】
なお、ルータは、バッテリーパック30の外に位置してもよい。例えば、親側アンテナ46とルータとが一体化されて、バッテリーパック30外に配置されてもよい。この場合、バッテリーパック30外のルータとモジュール制御装置とが有線の通信経路を介して接続されてもよい。
【0058】
モジュール制御装置40は、BDU(Battery Disconnect Unit)44を含んでもよい。BDU44は、リレーまたは半導体スイッチ等を含み、電力経路を遮断したり、切替えたりするユニットである。バッテリーパック30外の電気モータ及び充電のための給電回路等が、BDU44を介してバッテリーモジュール36に接続される。
【0059】
<コネクタについて>
上記のように、モジュール制御装置40と親側アンテナ46とがアンテナ用配線48によって接続される。そこで、バッテリーパック30は、パックケース32の外側からアンテナ用配線48が接続されるアンテナ用コネクタ41aを備える。
【0060】
アンテナ用コネクタ41aは、パックケース32に支持されており、モジュール制御装置40内のルータ42と導電線を介して接続されていてもよい。アンテナ用コネクタ41aは、モジュール制御装置40のケースに支持されており、当該アンテナ用コネクタ41aを外部に露出させる状態で、モジュール制御装置40がパックケース32に組込可能とされていてもよい。この場合、アンテナ用コネクタ41aは、モジュール制御装置40のケースを介してパックケース32に支持されているといえる。
【0061】
アンテナ用コネクタ41aは、例えば、同軸コネクタであってもよい。この場合、同軸ケーブルであるアンテナ用配線48の端部に取付けられた相手側同軸コネクタ48aが当該アンテナ用コネクタ41aに接続されるとよい。
【0062】
また、モジュール制御装置40は、バッテリーパック30外の電気制御ユニット18と接続されることが考えられる。そこで、バッテリーパック30は、パックケース32の外側から外側制御用配線19の端部のコネクタ19aが接続される外部コネクタ41bを備えてもよい。外部コネクタ41bは、アンテナ用コネクタ41aと同様に、パックケース32に直接支持されていてもよいし、モジュール制御装置40のケースを介してパックケース32に支持されていてもよい。
【0063】
パックケース32は、アンテナ用コネクタ41aと外部コネクタ41bとを隣り合う位置で支持していることが好ましい。
【0064】
<バッテリーパック外における配線経路について>
バッテリーパック30の外において、アンテナ用配線48及び外側制御用配線19は、どのような経路に沿っていてもよい。また、親側アンテナ46は、バッテリーパック30によって支持されていてもよいし、バッテリーパック30ではない他の部材によって支持されていてもよい。
【0065】
例えば、親側アンテナ46は、バッテリーパック30ではない車両保持部品によって支持されていてもよい。
【0066】
すなわち、バッテリーパックシステム20は、パックケース32が車両10から取り外された状態で、車両10に保持される車両保持部品を更に含む。換言すれば、車両保持部品は、パックケース32を車両10から取外しても、車両10に取付けたままの状態に保てる部品である。
【0067】
親側アンテナ46が当該車両保持部品に保持されることで、バッテリーパック30を車両から取外しても、親側アンテナ46を車両10に取付けたままの状態とすることができる。
【0068】
車両保持部材は、例えば、バッテリーパック30の外側を通過する配線を保護するプロテクタ50であってもよい。
【0069】
すなわち、フロア下配線22がフロア12とバッテリーパック30との間に、前後方向に沿って配策されている。フロア下配線22が、バッテリーパック30の外側を通過する配線の一例である。
【0070】
フロア下配線22とバッテリーパック30との間にプロテクタ50が配置される。プロテクタ50は、樹脂で形成されている。プロテクタ50は、例えば、前後方向に長い長方形状に形成されている。プロテクタ50上に、当該プロテクタ50の延在方向に沿ってフロア下配線22が配置される。プロテクタ50は、フロア下配線22を側方または上から囲む囲い部を有していてもよい。プロテクタ50とフロア下配線22とが結束バンド等の結束部材によって結束保持されていてもよい。
【0071】
プロテクタ50上にフロア下配線22が配置されることで、当該フロア下配線22が保護される。
【0072】
フロア下配線22が上記外側制御用配線19を含む。外側制御用配線19の一端は、プロテクタ50の端部側延びて電気制御ユニット18に接続される。外側制御用配線19の他端は、プロテクタ50の延在方向中間部で当該プロテクタ50から引出されて、上記外部コネクタ41bに接続される。
【0073】
親側アンテナ46がプロテクタ50に保持される。例えば、プロテクタ50のうちバッテリーパック30の中央に位置する部分にアンテナ保持部52が形成される。アンテナ保持部52は、例えば、親側アンテナ46の周囲に引っ掛って当該親側アンテナ46を保持する構成であってもよい。アンテナ保持部52は、接着またはネジ止等によって親側アンテナ46をプロテクタ50に対して保持する部分であってもよい。
【0074】
アンテナ用配線48の少なくとも一部がフロア下配線22に沿っていてもよい。例えば、プロテクタ50に保持された親側アンテナ46とからアンテナ用配線48が延出している。アンテナ用配線48のうち親側アンテナ46側の部分は、プロテクタ50上で、フロア下配線22に沿う。親側アンテナ46の少なくとも一部は、フロア下配線22と同様構成によって、プロテクタ50に保持されていてもよい。
【0075】
アンテナ用配線48の他端は、プロテクタ50の延在方向中間部で当該プロテクタ50から引出されて、上記アンテナ用コネクタ41aに接続される。
【0076】
バッテリーパック30において、アンテナ用コネクタ41aと外部コネクタ41bとが隣合っていれば、アンテナ用配線48と電気制御ユニット18とを、プロテクタ50上で同じ箇所または近い箇所で引きさせばよいし、また、バッテリーパック30に対するコネクタ接続作業を同じ側面に対して容易に実施できる。
【0077】
プロテクタ50は、次の構成によって、車両10に取付けられてもよい。すなわち、プロテクタ50に仮位置決め孔50h1及び固定用孔50h2が形成される。仮位置決め孔50h1は、パックケース32の位置決め突部34pが挿入される孔である。固定用孔50h2は、フロア12の下側に突出する固定突部12pが挿入固定される孔である。固定突部12pは、例えば、スタッドボルトである。固定用孔50h2は、締結作業無く固定突部12pを固定可能な構成であることが好ましい。例えば、固定用孔50h2は、スタッドボルトの周囲の溝に弾性的に係止可能な係止爪を有する構成であってもよい。また、固定突部12pが、固定用孔50h2を突出た状態で当該固定突部12pの周縁部に抜止め係止可能な弾性係止爪を有する構成であってもよい。
【0078】
そして、バッテリーパック30上に、フロア下配線22を保持するプロテクタ50が配置される。プロテクタ50には、外側制御用配線19及びアンテナ用配線48も保持される。また、外側制御用配線19及びアンテナ用配線48は、外部コネクタ41b及びアンテナ用コネクタ41aに接続される。さらに、バッテリーパック30の位置決め突部34pが仮位置決め孔50h1に挿入されることで、バッテリーパック30に対してプロテクタ50が位置決めされる。
【0079】
この状態で、バッテリーパック30がフロア12の下側から当該フロア12に向けて持上げられる。すると、固定突部12pが固定用孔50h2に係止し、プロテクタ50がフロア12に対して支持される。バッテリーパック30は、別途ネジ止等によってフロア12に固定される。
【0080】
バッテリーパック30をメンテナンスまたは交換のために取外す際には、図5に示すように、外側制御用配線19及びアンテナ用配線48が、外部コネクタ41b及びアンテナ用コネクタ41aから外される。
【0081】
そして、フロア12に対してバッテリーパック30を取外し、バッテリーパック30をフロア12の下方に移動させる。プロテクタ50は、固定突部12pによる固定構造によってフロア12に固定された状態に保たれる。このため、外側制御用配線19、親側アンテナ46及びアンテナ用配線48がフロア12の下側でプロテクタ50に残ったまま、バッテリーパック30がフロア12から分離できる。
【0082】
メンテナンス後のバッテリーパック30または交換されたバッテリーパック30として、外側制御用配線19、親側アンテナ46及びアンテナ用配線48が接続されないものが準備される。
【0083】
当該バッテリーパック30がプロテクタ50の下側に配置され、フロア12にネジ止等で固定される。フロア12の下でプロテクタ50によって外側制御用配線19、親側アンテナ46及びアンテナ用配線48が保持された状態とされている。外側制御用配線19及び親側アンテナ46が外部コネクタ41b及びアンテナ用コネクタ41aに接続されることで、バッテリーパック30のメンテナンスまたは交換作業が終了する。
【0084】
<効果等>
以上のように構成されたバッテリーパックシステム20によると、親側アンテナ46がパックケース32の外に配置されている。このため、パックケース32内のスペースを圧迫せずに、親側アンテナ46を、スレーブ機器38との無線通信に適した位置に配置し易い。例えば、平面視において、パックケース32の中央に配置し易い。また、アンテナ用配線48の少なくとも一部がパックケース32の外を経由している。このため、親側アンテナ46の位置に拘わらず、アンテナ用配線48がパックケース32内のスペースを圧迫し難い。これらにより、パックケース32内のスペースを有効利用できる。また、バッテリーパック30の組立作業向上も可能となる。
【0085】
また、ルータ42と親側アンテナ46とが分離されているので、ルータ42を自由な位置に配置でき、例えば、モジュール制御装置40がルータ42を有する構成とできる。これにより、モジュール制御装置40と親側アンテナ46とを簡易なアンテナ線で接続すればよくなり、構成の簡易化が可能となる。
【0086】
また、バッテリーパック30が、アンテナ用コネクタ41aを備えるため、バッテリーパック30と、親側アンテナ46とを別扱いとし易い。これにより、バッテリーパック30の着脱、メンテナンス性及び交換作業性が向上する。
【0087】
また、バッテリーパック30が外部コネクタ41bを備え、アンテナ用コネクタ41aと外部コネクタ41bとが隣合っている。このため、例えば、同じ経路に沿うアンテナ用配線48と外側制御用配線19とを、隣り合うアンテナ用コネクタ41aと外部コネクタ41bに接続でき、バッテリーパック30の着脱、メンテナンス性及び交換作業性がより向上する。
【0088】
また、親側アンテナ46が車両保持部品としてのプロテクタ50に保持されている。このため、親側アンテナ46を車両10に保持させた状態のまま、バッテリーパック30を、車両10から着脱できる。これにより、バッテリーパック30を交換しても親側アンテナ46を続けて使用でき、バッテリーパックシステム20のメンテナンスコストを低くできる。
【0089】
また、車両保持部品がフロア下配線22を保護するプロテクタであるため、当該プロテクタ50によって親側アンテナ46を保護できる。
【0090】
また、アンテナ用配線48の少なくとも一部がフロア下配線22に沿っている。このため、アンテナ用配線48を、プロテクタで保護されるフロア下配線22と同じように車両10に組み込み易い。
【0091】
[変形例]
なお、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 車両
12 フロア
12p 固定突部
13、14 車輪
16 電気部品
18 電気制御ユニット
19 外側制御用配線
19a コネクタ
20 バッテリーパックシステム
22 フロア下配線
30 バッテリーパック
32 パックケース
33 ケース本体
34 カバー
34p 位置決め突部
36 バッテリーモジュール
36a 電源線
36b アース線
38 スレーブ機器
40 モジュール制御装置
41a アンテナ用コネクタ
41b 外部コネクタ
42 ルータ
44 BDU
46 親側アンテナ
48 アンテナ用配線
48a 相手側同軸コネクタ
50 プロテクタ
50h1 仮位置決め孔
50h2 固定用孔
52 アンテナ保持部
図1
図2
図3
図4
図5