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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012434
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】盛土材料、脱水ケーキの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/06 20060101AFI20250117BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20250117BHJP
   C09K 17/00 20060101ALI20250117BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C09K17/06 P
C02F11/121 ZAB
C09K17/00 P
E02D17/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115270
(22)【出願日】2023-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】523267689
【氏名又は名称】一般社団法人カネタ土壌改修評議機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中野 康志
(72)【発明者】
【氏名】岡林 季大
【テーマコード(参考)】
2D044
4D059
4H026
【Fターム(参考)】
2D044CA00
4D059AA30
4D059BD18
4D059BE13
4D059BE14
4D059BE31
4D059BE35
4D059BE54
4D059BE62
4D059CB06
4D059CC04
4D059DA04
4D059DA05
4D059DA70
4D059EB01
4D059EB07
4H026CA02
4H026CB01
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境負担の軽減に貢献しつつ、石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキを有効活用しうる盛土材料、脱水ケーキの処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】砂利と、石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を含有し前記石灰石洗浄工程は、石灰石への散水工程と、前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み、前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下であることを特徴とする盛土材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂利と、
石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を含有し
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下であることを特徴とする盛土材料。
【請求項2】
突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最大乾燥密度が、2.15g/cm3以上2.8g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1記載の盛土材料。
【請求項3】
前記突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最適含水比が、5%以上10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の盛土材料。
【請求項4】
粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における礫分の割合が、55%以上65%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における砂分の割合が、20%以上30%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における細粒分の割合が、10%以上20%以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の盛土材料。
【請求項5】
石灰石洗浄工程を実施し、
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み
砂利と、前記石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を混合して盛土材料を得る混合工程を実施し、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下であることを特徴とする脱水ケーキの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土材料、脱水ケーキの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰石は、日本各地で採掘され、毎年高い生産量を誇る日本の資源の一つである。一方で、該石灰石の製造工程における洗浄工程では、脱水ケーキといわれる産業廃棄物が大量に発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
石灰石の製造工程における洗浄工程で大量に発生する脱水ケーキの廃棄にかかる費用や環境への負荷がこれまで問題とされてきている。しかしながら、その処理方法についての報告は皆無である。
【0004】
本発明は、環境負担の軽減に貢献しつつ、石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキを有効活用しうる盛土材料および脱水ケーキの処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る盛土材料は、
砂利と、
石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を含有し
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下である。
【0006】
前記盛土材料が上記構成であることにより、産業廃棄物である前記脱水ケーキを有効活用することができ、環境負荷の低減に貢献する。
【0007】
前記盛土材料では、
突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最大乾燥密度が、2.15g/cm3以上2.8g/cm3以下である。
【0008】
前記盛土材料が上記構成であることにより、施工された盛土の崩壊に対する安定性が向上する。
【0009】
前記盛土材料では、
前記突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最適含水比が、5%以上10%以下である。
【0010】
前記盛土材料が上記構成であることにより、施工された盛土への荷重に対する支持力を確保できる。
【0011】
前記盛土材料では、
粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における礫分の割合が、55%以上65%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における砂分の割合が、20%以上30%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における細粒分の割合が、10%以上20%以下である。
【0012】
前記盛土材料が上記構成であることにより、施工された盛土の沈下や変化を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る脱水ケーキの処理方法は、
石灰石洗浄工程を実施し、
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み
砂利と、前記石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を混合して盛土材料を得る混合工程を実施し、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下である。
【0014】
上記方法によれば、前記脱水ケーキを盛土材料として有効活用しうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境負担の軽減に貢献しつつ、石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキを有効活用しうる盛土材料および脱水ケーキの処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実施形態に係る脱水ケーキの処理方法のフロー図を示す。
図2図2は、実施例における上方からみた状態の試験ヤードの平面全体図を示す。
図3図3は、実施例1における試験盛土の表面沈下量の測定結果を示す。
図4図4は、比較例1における試験盛土の表面沈下量の測定結果を示す。
図5図5は、比較例2における試験盛土の表面沈下量の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る盛土材料の一実施形態について、説明する。
盛土材料は、砂利と、石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を備える。
前記砂利としては、川の川床に堆積しているものを好適に使用しうる。一実施形態においては、高知県の仁淀川もしくは物部川における川床の砂利を用いることができる。
前記石灰石洗浄工程に使用される石灰石は、日本各地で採掘されるものである。一実施形態においては、高知県の土佐山鉱山もしくは白木谷鉱山で採掘される石灰石を採用することができ、該石灰石を前記石灰石洗浄工程に用いた場合に発生する脱水ケーキを用いることができる。
【0018】
前記石灰石洗浄工程は、石灰石の原石を精製する石灰石製造工程に付随する工程である。前記石灰石製造工程は、図1に示す如く、一部の工程が、前記石灰石洗浄工程と重複する。なお、図1には前記石灰石製造工程を併せて記載しているが、本発明に係る石灰石洗浄工程については、前記石灰石製造工程は必須ではない。
【0019】
前記石灰石洗浄工程と、前記石灰石製造工程とは、石灰石の原石を洗浄するための散水工程を含む。前記散水工程では、石灰石の原石を振動スクリーンで移動させつつ、石灰石の原石に対してシャワーで散水することにより、石灰石の原石を洗浄する。
振動スクリーンには搬送部材が備えられており、洗浄された石灰石の原石は該搬送部材上を移動する。また、該搬送部材にはふるい目が備えられ、振動により該原石のサイズごとにふるいにかけられる。該原石のサイズが30mm以上のものはそのまま該搬送部材上を下流に向かって移動する。該原石のサイズが2.5mm以上30mm未満のものは振動スクリーンのふるい目に落下して分離される。石灰石の原石又は石灰石の原石に付着した土であって、そのサイズが2.5mm以下のものは、散水した水とともに第1排水として振動スクリーン上から排出される。
その後、洗浄された石灰石の原石のサイズが30mm以上のもの、および、該原石のサイズが2.5mm以上30mm未満のものは、その後精製されて石灰石となる。
【0020】
前記石灰石洗浄工程は、前記散水工程により生じた第1排水から汚泥を分別する工程を含む。具体的には、前記第1排水を第2排水と固形物とに分別する第1分別工程と、前記第2排水を上澄みと汚泥とに分別する第2分別工程と、の連続して実施される複数の分別工程を含む。
【0021】
第1分別工程ではスクリューコンベアが用いられる。スクリューコンベアとは、筒状のパイプの中に軸を有し、該軸の周囲に螺旋状の羽根が取り付けられた装置であって、該軸及び該羽根が回転することにより処理物を運搬する装置である。
前記第1排水に含まれる固形物は、該羽根の回転に伴ってスクリューコンベア内を下流側へ移動する。一方、前記第1排水に含まれる液体(前記第2排水)は、該羽根を回転させても該固形物とともに移動せず、重力に従い下方に移動する。これにより、前記第1排水から該固形物と第2排水と、が分別される。該固形物は、その後、乾燥させることにより、砂となる。該砂は、骨材などの用途で使用され得る。
【0022】
前記第2分別工程では、前記第2排水を沈降分離により、前記第2排水に含まれる浮遊混濁物(前記汚泥)と、上澄みと、に分別する。
具体的には、前記第2排水を水槽に貯め、静置することで前記汚泥を水槽下方に沈殿させる。この際、水槽内に複数の傾斜板を設けてもよい。水槽内に複数の傾斜板を設けることで、沈殿効率を上げることができる。水槽下方に沈殿した前記汚泥は、固化を防ぐために緩やかにかき混ぜられ、その後上澄みと分離して取り出される。
一方、上澄みは、溢水により水槽から排出される。その後、上澄みは、再度前記散水工程で石灰石を洗浄する水として再利用される。
【0023】
前記石灰石洗浄工程は、前記汚泥を濾別により脱水する工程(以下、「脱水工程」)を含む。具体的には、前記汚泥をフィルターろ過により脱水する。
一実施形態においては、前記第2分別工程で使用された水槽の底全面にフィルターを設置する方法を採用することができる。すなわち、該フィルターにより該フィルター上面に沈殿した汚泥を捕捉し、該フィルターを介して水槽中の上澄みを該フィルター下面に移動させることにより、前記脱水工程を実施することができる。上澄みを該フィルター下面に移動させる際には、真空ポンプを用いて該フィルター下面から吸引することにより、前記脱水工程を実施してもよい。前記汚泥は、脱水されることにより、前記脱水ケーキとなる。
前記脱水工程を実施した直後の前記脱水ケーキには、一定の割合で水分が残留している。そのため、前記脱水ケーキをさらに乾燥させるために、野積みにより自然乾燥させてもよい。野積みとは、戸外に物を積み置くことをいう。
【0024】
一般的な沈降分離において、浮遊混濁物の沈殿が十分に発現されず、十分な分離ができない場合は、任意の凝集剤を使用することがある。凝集剤の使用により、浮遊混濁物の沈殿を促進し、上澄みとの分離性能を向上させることが可能である。
本実施形態においては、前記第2分別工程において、該凝集剤を使用してもよく、又は該凝集剤を使用しなくてもよい。該凝集剤を使用しなかった場合、盛土材料に該凝集剤が不純物として混入することを防げるため、盛土材料の性能の低下を防ぐことができる。
【0025】
前記第2分別工程においては、凝集剤のほか、前記脱水工程における脱水効率を向上させるために、消石灰を添加することが可能である。前記第2排水の粘度が低い場合、該消石灰の添加は、脱水効率の向上に対して非常に有効である。
本実施形態においては、前記第2分別工程において、該消石灰を使用してもよく、又は該消石灰を使用しなくてもよい。
【0026】
前記散水工程及び前記分別工程を実施することで、処理対象物のサイズは小さくなる。そのため、前記石灰石洗浄工程で最終的に生じる前記脱水ケーキは、非常に粒度の細かいものとして得られる。
前記脱水ケーキのうち、95%(w/w)以上の前記脱水ケーキの粒度の下限は、特に限定はされないが、1μm以上であることが好ましい。また、前記脱水ケーキのうち、95%(w/w)以上の前記脱水ケーキの粒度の上限は、100μm以下であり、好ましくは75μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
上記のように、粒度の細かい前記脱水ケーキを盛土材料に使用することで、好適な条件の粒度分布を有する盛土材料を調整することが可能となる。
【0027】
前記脱水ケーキの主成分は土粒子である。一方、石灰石の主成分は炭酸カルシウムである。そのため、前記石灰石洗浄工程で得られる前記脱水ケーキには、洗浄の過程で石灰石表面から溶出し、削り出された炭酸カルシウムが含まれている。また、前記脱水工程直後の前記脱水ケーキに残留している水分にも炭酸カルシウムが含まれており、野積みにより該水分が蒸発する過程で前記脱水ケーキ中に炭酸カルシウムがさらに析出する。なお、上記の通り、石灰石の主成分は炭酸カルシウムであるが、日本で採掘される石灰石の成分の詳細については、採掘される地域ごとに多少の差異がみられる。
析出した炭酸カルシウムは、盛土材料の砂粒子間の結合力を強化し、砂粒子間の噛み合わせを良くし、摩擦強化の効果を発揮させる。このような盛土材料を用いて施工した盛土は安定的な強度を発揮することが可能となる。
【0028】
本実施形態に係る盛土材料は、前記砂利と、前記石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を混合する混合工程を実施することにより得られる。
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合の下限は、23質量部以上であり、好ましくは24質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上である。また、前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合の上限は、40質量部以下であり、好ましくは、35質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下である。
【0029】
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物は、任意の添加物を含んでもよい。例えば、該混合物は、生石灰、消石灰などの任意の添加物を含むことができる。
【0030】
本実施形態にかかる盛土材料の突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最大乾燥密度の下限は、2.15g/cm3以上であり、好ましくは、2.17g/cm3以上であり、より好ましくは、2.19g/cm3以上である。また、前記突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最大乾燥密度の上限は、2.8g/cm3以下であり、好ましくは、2.5g/cm3以下であり、より好ましくは、2.3g/cm3以下である。
該最大乾燥密度が高いほど、盛土材料の粒度分布が広くなり、さらに、盛土材料を締固めるのに必要なエネルギー(以下、「締固めエネルギー」)が高くなることが知られている。すなわち、該締固めエネルギーが低くなるほど、盛土を施工する際に、盛土材料を締め固めるために必要なエネルギーの値も減少し、安定した強度の盛土を施工することができなくなる。逆に、該締固めエネルギーが高い場合には、十分なエネルギーによって盛土を締め固めることができるようになるため、安定した強度の盛土を施工することが可能となる。
従って、該最大乾燥密度が上記範囲内であることにより、盛土材料の粒度分布が好適な条件を満たし、最適な条件で盛土材料を締固めることができるため、このような盛土材料を用いて施工した盛土は安定的な強度を発揮することが可能となる。
【0031】
前記突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最適含水比の下限は、5%以上であり、好ましくは、6%以上であり、より好ましくは、6.5%以上である。また、 前記突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最適含水比の上限は、10%以下であり、好ましくは、8%以下であり、より好ましくは、7.5%以下である。
該最適含水比が上記範囲内であることにより、より強固な盛土の施工が可能となる。
【0032】
盛土材料の最大乾燥密度と最適含水比は、JIS A1210:2020「突固めによる土の締固め試験方法」のB法によって求めることができる。
【0033】
本実施形態にかかる盛土材料の粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における礫分の割合の下限は、55%以上であり、好ましくは、57%以上であり、より好ましくは、59%以上である。また、前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における礫分の割合の上限は、65%以下であり、好ましくは、63%以下であり、より好ましくは、61%以下である。
【0034】
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における砂分の割合の下限は、20%以上であり、好ましくは、21%以上であり、より好ましくは、23%以上である。また、前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における砂分の割合の上限は、30%以下であり、好ましくは、28%以下であり、より好ましくは、26%以下である。
【0035】
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における細粒分の割合の下限は、10%以上であり、好ましくは、12%以上であり、より好ましくは、14%以上である。また、前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における細粒分の割合の上限は、20%以下であり、好ましくは、18%以下であり、より好ましくは、16%以下である。
盛土材料に含まれる礫分、砂分、細粒分の割合が上記範囲内であることにより、盛土材料の粒度分布が好適な条件を満たすため、このような盛土材料を用いて施工した盛土は安定的な強度を発揮することが可能となる。
【0036】
盛土材料の粒度(礫分、砂分、細粒分)は、JIS A1204:2020「土の粒度試験方法」によって求めることができる。
【0037】
本実施形態にかかる盛土材料の現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される平均含水比の下限は、1%以上であり、好ましくは、1.5%以上、より好ましくは、2%以上である。また、前記現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される平均含水比の上限は、10%以下であり、好ましくは、7%以下であり、より好ましくは、5%以下である。
【0038】
前記現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される締固め度の下限は、85%以上であり、好ましくは、90%以上であり、より好ましくは、95%以上である。また、前記現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される締固め度の上限は、特に限定されないが、99.9%以下であることが好ましい。
【0039】
前記現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される平均乾燥密度の下限は、2.00g/cm3以上であり、好ましくは、2.05g/cm3以上であり、より好ましくは、2.10g/cm3以上である。また、前記現場密度試験(JIS A 1214)によって測定される平均乾燥密度の上限は、2.50g/cm3以下であり、好ましくは、2.45g/cm3以下であり、より好ましくは、2.40g/cm3以下である。
【0040】
盛土材料の平均含水比、締固め度、平均乾燥密度は、JIS A1214:2013「砂置換法による土の密度試験方法」によって求めることができる。
【実施例0041】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
高知県の白木谷鉱山で採掘された石灰石の原石に対して、散水工程、第1分別工程、第2分別工程、脱水工程を実施し、脱水ケーキを得た。
高知県の仁淀川にて採掘された砂利75質量部に対して、前記脱水ケーキ25質量部を混合し、盛土材料Aを調整した。
試験盛土を実施する前に、基盤を転圧施工し、整地を行った。その後、図2に示す如く、盛土材料Aを用いて巻出しを行い、試験ヤード10を施工した。このときの巻出し厚さは30cmとした。
振動ローラー(3t)を用いてさらに複数回転圧し、締固めを行った。転圧回数は2、4、6、8、10回で行った。巻出し後の盛土の高さを基準として、各転圧後に盛土の高さを測定し、図2中の表面沈下量測定点12a乃至12dの4箇所において表面沈下量を評価した。
その後、図2における3つの締固め密度測定点11において締固め密度を測定し、現場密度試験(JIS A 1214)を実施した。
別途、盛土材料Aについて、突固め試験(JIS A 1210)、粒度試験(JIS A 1204)を実施した。
【0043】
(比較例1)
盛土材料Aに代えて、砂利100質量部で構成される盛土材料Bを用いた点以外は、実施例1と同様に試験をおこなった。
【0044】
(比較例2)
盛土材料Aに代えて、砂利75質量部に対して、石灰石洗浄工程で発生した脱水ケーキ22.5質量部と、消石灰2.5質量部とを混合し、調整した盛土材料Cを用いた点以外は、実施例1と同様に試験をおこなった。
【0045】
試験、評価についての結果を表1、図3乃至図5に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
図3乃至図5より、実施例1の表面沈下量は、他の比較例のものと比べて測定位置ごとの表面沈下量の差が少ない。すなわち、実施例1の盛土は、測定位置ごとに強度の差がみられず、全体的に均等な強度を有しており、盛土としての安定性に優れていることがわかる。
【0048】
表1より、実施例1の盛土材料Aは、他の比較例の盛土材料よりも、最大乾燥密度が高く、各粒分の含量から広い粒度分布を有していることがわかる。前記脱水ケーキが適量添加されたことにより、該粒度分布が他の比較例よりも好適な条件となり、結果として、盛土の機能向上にも貢献していることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
1:石灰石洗浄工程、2:石灰石製造工程、10:試験ヤード、11:締固め密度測定点、12a:表面沈下量測定点、12b:表面沈下量測定点、12c:表面沈下量測定点、12d:表面沈下量測定点
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂利と、
石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を含有し
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下であることを特徴とする盛土材料。
【請求項2】
突固め試験(JIS A 1210)によって測定される最大乾燥密度が、2.15g/cm3以上2.8g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1記載の盛土材料。
【請求項3】
固め試験(JIS A 1210)によって測定される最適含水比が、5%以上10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の盛土材料。
【請求項4】
粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における礫分の割合が、55%以上65%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における砂分の割合が、20%以上30%以下であり、
前記粒度試験(JIS A 1204)によって測定される盛土材料における細粒分の割合が、10%以上20%以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の盛土材料。
【請求項5】
石灰石洗浄工程を実施し、
前記石灰石洗浄工程は、
石灰石への散水工程と、
前記散水工程により生じた排水から汚泥を分別する分別工程と、
前記汚泥を濾別により脱水する脱水工程と、を含み
砂利と、前記石灰石洗浄工程で発生する脱水ケーキと、を混合して盛土材料を得る混合工程を実施し、
前記脱水ケーキは、石灰石由来の炭酸カルシウムを含み、
前記砂利と前記脱水ケーキの混合物100質量部に対する前記脱水ケーキの割合が、23質量部以上40質量部以下であることを特徴とする脱水ケーキの処理方法。