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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025124531
(43)【公開日】2025-08-26
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20250819BHJP
【FI】
E04F13/14 102C
E04F13/14 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020648
(22)【出願日】2024-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和則
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110BB22
2E110BB38
2E110GB22W
2E110GB23W
(57)【要約】
【課題】複数の建築板を並べて接合させて壁体を形成したときに、接合部を目立たせないようにすることが可能となる建築板を提供する。
【解決手段】建築板1は、左右方向D1に延び、少なくとも一部が曲面21A,21Bで構成される凹部を形成する溝部21と、上下方向D2における溝部21の端部21A1側及び端部21B1側に位置し、左右方向D1に延びる平坦部22と、溝部21内に形成され、左右方向D1に延びる突出部30,40と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に意匠面を有する、平面視矩形状の建築板であって、
前記建築板の一辺に沿った第1方向に延び、少なくとも一部が曲面で構成される内面を有する溝部と、
前記建築板の前記溝部と前記溝部の間に位置し、前記第1方向に延びるリブ部と、
前記溝部内に形成され、前記第1方向に延びる突出部と、を備え、
前記突出部は、前記溝部の第2方向における一端側及び他端側のうちのいずれか一方側から前記第2方向に延びる前記リブ部の表面と平行な平坦面およびその前記平坦面の前記他方側の端部から前記溝部の内面に延び、前記内面に接する傾斜面とを有する第1突出部と、
前記溝部の前記一端側及び前記他端側のうちのいずれか一方側から前記建築板の表面側に傾斜して延びる第1傾斜面と、
前記溝部の前記他方側から前記建築板の表面に傾斜して延びる第2傾斜面とを有する第2突出部と、を含む、ことを特徴とする
建築板。
【請求項2】
前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記第1突出部及び前記第2突出部のそれぞれは、前記意匠面上にランダムに配置されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記第1突出部の前記平坦面の前記第2方向における幅は、前記傾斜面の前記第2方向における幅より広く形成され、
前記複数の第1突出部のうち、少なくとも一部の第1突出部の前記平坦面の表面には、凹凸が形成されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項4】
前記溝部の底に接し、かつ前記リブ部の表面と平行な仮想平面と
前記平坦面との成す第1角度は、前記仮想平面と前記傾斜面との成す第2角度より小さく、
前記仮想平面と第3平面との成す第3角度と、前記仮想平面と前記第4平面と成す第4角度とは異なる、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項5】
前記第3角度>前記第4角度の場合、
前記第3角度の上限は70°であり、
前記第4角度の上限は20°であり、
前記第3角度<前記第4角度の場合、
前記第3角度の上限は20°であり、
前記第4角度の上限は70°である、ことを特徴とする
請求項4に記載の建築板。
【請求項6】
前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記複数の第1突出部のうち、少なくとも一部の第1突出部の前記平坦面は、前記リブ部の表面と平行に形成されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項7】
前記溝部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記複数の溝部のうち、少なくとも一部の溝部は、前記意匠面の前記第1方向における一端部から他端部に亘って延びる貫通溝であり、
前記突出部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記複数の突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、前記貫通溝の端部に形成されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【請求項8】
前記リブ部は、前記意匠面上に複数形成され、
前記複数のリブ部のうち、少なくとも一部のリブ部の表面には、溝が形成されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁体等を形成するための建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目地中に突起を設けることにより、建築板の表面の立体感を保ちながら、施工者が建築板を運搬する際の破断を抑制するようにした建築板が記載されている。
特許文献1に記載の建築板は、縦目地に沿って建築板が破断することを抑制するために、縦溝に突起が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-137662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の建築板では、複数の建築板を並べて接合させて壁体を形成したときに、目地中に突起を設けても、建築板の表面の立体感を保つことができないことがあった。
【0005】
本発明は、複数の建築板を並べて接合させて壁体を形成したときに、目地中に突起を設けて、建築板の表面の立体感を保つことが可能となる建築板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によると、表面に意匠面を有する、平面視矩形状の建築板であって、建築板の一辺に沿った第1方向に延び、少なくとも一部が曲面で構成される内面を有する溝部と、建築板の溝部と溝部の間に位置し、第1方向に延びるリブ部と、溝部内に形成され、第1方向に延びる突出部と、を備え、突出部は、溝部の一端側及び他端側のうちのいずれか一方側から他方側に延びる第1平面と、その第1平面の他方側の端部から下方に傾斜して、溝部の他方側に接する第2平面とを有する第1突出部と、溝部上端と隣接せず、かつ溝部の一端側及び他端側のうちのいずれか一方側から他方側に上方に傾斜して延びる第3平面と、溝部の他方側から一方側に上方に傾斜して延びる第4平面とを有する第2突出部と、を含む。また、溝部の底は壁面裏面と平行な底面を有し、底面に接し、かつリブ部を形成する平面と平行な仮想平面と平行な第1平面との成す角度は、仮想平面と第2平面と成す角度より小さく、仮想平面と第3平面との成す第3角度と、前記仮想平面と前記第4平面と成す第4角度とは異なっている。
本発明の第1の態様の建築板は、建築板を第2方向に接合させた場合、第1方向に延びた溝部とリブ部とにより、建築板と建築板との接合部を目立たせないようにすることが可能となる。また、溝部は、少なくとも一部が曲面で構成されているので、陰影感が豊かになる。さらに、突出部を溝部内に形成したので、溝部が実寸より深く見えるようになる。
【0007】
本発明の第2の態様の建築板は、第1突出部及び第2突出部は、意匠面上に複数形成され、第1突出部及び第2突出部のそれぞれは、意匠面上にランダムに配置されている。
これにより、建築板を第1方向に接合させた場合、溝部の第2方向のずれを目立たせないようにすることが可能となる。
【0008】
本発明の第3の態様の建築板は、第1突出部及び第2突出部は、意匠面上に複数形成され、第1突出部の第1平面の第2方向における幅は、第2平面の第2方向における幅より広く形成され、複数の第1突出部のうち、少なくとも一部の第1突出部の第1平面の表面には、凹凸が形成されている。これにより、建築板を第1方向に接合させた場合、溝部の第2方向のずれを目立たせないようにすることが可能となる。
【0009】
本発明の第4の態様の建築板は、第2角度の上限が70°であることが好ましい。
【0010】
本発明の第5の態様の建築板は、第3角度>第4角度の場合、第3角度の上限は70°であり、第4角度の上限は20°であり、第3角度<第4角度の場合、第3角度の上限は20°であり、第4角度の上限は70°である、ことが好ましい。
これにより、溝部は、少なくとも一部が曲面で構成されているので、陰影感が豊かになる。さらに、突出部を溝部内に形成したので、溝部が実寸より深く見えるようになる。
【0011】
本発明の第6の態様の建築板は、第1突出部及び第2突出部は、意匠面上に複数形成され、複数の第1突出部のうち、少なくとも一部の第1突出部の第1平面は、リブ部を形成する平面と平行に形成されている、ことが好ましい。これにより、建築板を第1方向に接合させた場合、溝部の第2方向のずれを目立たせないようにすることが可能となる。
【0012】
本発明の第7の態様の建築板は、溝部は、意匠面上に複数形成され、複数の溝部のうち、少なくとも一部の溝部は、意匠面の第1方向における一端部から他端部に亘って延びる貫通溝であり、突出部は、意匠面上に複数形成され、複数の突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、貫通溝の端部に形成されている、ことが好ましい。これにより、建築板を第1方向に接合させた場合、溝部の第2方向のずれを目立たせないようにすることが可能となる。
【0013】
本発明の第8の態様の建築板は、リブ部は、意匠面上に複数形成され、複数のリブ部のうち、少なくとも一部のリブ部の表面には、溝が形成されかつ表面に凹凸が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の第9の態様の建築板は、第1方向の上端面および下端面に合決り加工された接合部を形成し、前記下端面側はリブ部を有し、前記上端側は溝部が設けられていることが好ましい。これにより、建築板施工時の第1方向の接合部が目立ちにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る建築板の平面図である。
図2図1の建築板の側面図である。
図3図2に含まれる1本の溝部に形成された突出部の拡大側面図である。
図4図3の溝部とは異なる1本の溝部に形成された第1突出部、第2突出部の拡大側面図である。
図5図3の溝部とは異なる1本の溝部に形成された第2突出部の拡大側面図である。
図6図2(Z)に含まれる突出部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、水平左右方向D1の右方向を右と表示し、左方向を左と表示し、垂直上下方向D2の上方向を上と表示し、下方向を下と表示する。また、図1において、紙面手前を表とし、紙面奥を裏とし、左右方向D1及び上下方向D2と直交する方向を表裏方向D3とする。そして、図2以降の各図に示す方向は、図1に対応させて表示する。
本実施形態に係る建築板1は、例えば、建築物の外壁を構成するための外壁材である。建築板1は、略矩形状の建築用板材であり、本実施形態では横長の長方形状である。建築板1は、例えば、セメント等からなる原料がプレス成形されて製造された窯業系材料からからなる。
建築板1の大きさは、例えば、横寸法が約3030mm、縦寸法が約455mmである。横寸法及び縦寸法は、これに限られるものではない。例えば、横寸法は約1800~約3030mmの範囲内であり、縦寸法は約455~約1000mmの範囲内で各種の寸法を選択し得る。また、建築板1の厚み(表裏方向D3の距離)は、例えば、14~30mmである。
【0017】
建築板1は、例えば、上下合決り構造のものである。建築板1は、上下方向D2において上方に隣接する建築板1と重ね合わされる接合部として、建築板1の上端面11において裏面側で上方に突出した下実部60を有する。
また、建築板1は、下方に隣接する建築板1と重ね合わせられる接合部として、建築板1の下端面12において裏面側が凹んだ上実部50を有する。
【0018】
この構成により、上下方向D2において隣接する建築板1は、下側の建築板1の下実部に、上側の建築板1の上実部を重ね合わされることにより、接合されるようになっている。上下の建築板1の接合は、コーキング材や金具を用いて行うこともできる。
【0019】
建築板1は、左側面14及び右側面13においては、接合部を有していない。左右方向D1において建築板1を接合する場合、左側の建築板1の右側面13と右側の建築板1の左側面14とをシーリング材を介在させて接合させるようになっている。これに限らず、左側面14及び右側面13にも、左右方向に延びた実部(接合部)を有する構成とし、左右合決り構造としてもよい。
【0020】
建築板1は、図1、2に示すように、表面側に意匠面2を有すると共に、裏面側が平坦な平面である裏面3となっている。
意匠面2は、建築板1を施工した際の外側の面であり、建築板1の模様や柄を構成する部分である。本実施形態では、意匠面2は、上下方向D2において、下側面12の表面側の端部から上側面11の表面側の端部までの領域を占め、左右方向D1において、左側面14の表面側の端部から右側面13の表面側の端部までの領域を占めている。
このように本実施形態の場合、建築板1における表側の面の全体が意匠面2となっているが、表側の面の一部分を意匠面2とする構成としても良い。
【0021】
意匠面2には、左右方向D1に延びる複数(図2では14本)の溝部21が形成されている。各溝部21は、図1の本実施形態では、意匠面2の左側面14から右側面13まで左右方向D1に貫通しているが、これに限らず、左右方向D1の一部に形成されていてもよい。
図3から図6に基づいて溝部21の構成を説明する。
図3(a)は、溝部21を建築板1の側方から見た図1X-Xの矢視図、下実部60であり、溝部21等の意匠面2の側面形状を説明するための図である。このため、図3は意匠面2の側面形状のみを示しており、上述した下実部50及び上実部60等の意匠面2を構成する以外の部分は図示されていない。
図3(b)は、図3(a)の側面図から、後述する第1突出部30及び第2突出部40を除外した図である。
図3(c)は、図3(a)の側面図から第1突出部30のみを抜き出した図である。図3(c)において、1つの溝部21に2つの第1突出部30が形成されている場合は、左側に形成された第1平坦突出部30Aを上側に、右側に形成された第1平坦突出部30Bを下側に図示している。
図3(d)は、図3(a)の側面図から後述する第1傾斜突出部40Aのみを抜き出した図である。図3(e)は、図3(a)の側面図から後述する第2傾斜突出部40Bのみを抜き出した図である。
各溝部21は、図3(b)に示すように、少なくとも一部は曲面21A,21Bによって構成されている。即ち、各溝部21は、上端側と下端側に裏面に向かって凸となるは曲面21A,21Bを有している。曲面21Aと曲面21Bの裏面側の端部は、略平坦な底面21Cに接続されている。
【0022】
また、上下方向D2に隣接する溝部21と溝部21は、リブ部22を介して接続されている。リブ部22は、溝部21と同様に、左右方向D1に延び、意匠面2上、右側面13から左側面14に亘って形成されている。
【0023】
リブ部22の上下方向D2の上端部22Aと溝部21とは、第2曲面21Bにより連結され、リブ部22の上下方向D2の下端部22Bと溝部21とは、第1曲面21Aにより連結されている。
リブ部22には、その平坦面上にV字状の溝(以下「V溝」という)23A,23Bが形成されているものと、V溝23A,23Bが形成されていないものとがある。さらに、V溝23Aの溝は、V溝23Bの溝に比べて深く形成されている。以下、深いV溝23Aを溝23Aといい、浅いV溝23Bを溝23Bという。つまり、リブ部22としては、V溝のないもの、溝23Aが形成されたもの、及び溝23Bが形成されたものの3種類が設けられている。これら3種類のリブ部22のいずれを意匠面2上のどの位置に配置するかは、ランダムに決定されている。即ち、3種類のリブ部22は、意匠面2上に特定の規則に従って配置されているものではない。
なお、溝23A,23Bは、規則的に配置されても良い。また、リブ部22上に、溝23A,23Bを設けなくとも良いし、一種類のV溝を設けることや、3種類以上のV溝を設けても良い。更には、リブ部22に形成される溝の断面形状はV字状に限られず、円弧状や逆台形状等の四角形状でも良い。
【0024】
溝部21内には、左右方向D1に延びた複数種類の突出部が形成されている。図3(c)~図3(e)に示すように、複数種類の突出部には、大きく分けて、第1突出部30と第2突出部40とがある。第1突出部30は、第1平面31と第1平面31の上下方向D2の一方の端部から裏面3へ向けて傾斜する第2平面32とを有する突出部である。
第1突出部30は、第1平面31が上下方向D2の上側にある第1平坦突出部30Aと、第1平面31が上下方向D2の下側にある第2平坦突出部30Bとに分けられる。
【0025】
図4は、図3の上下方向D2の上から1番目の溝部21に形成された第1及び第2平坦突出部30A,30Bと第1傾斜突出部40Aの拡大側面図を示している。第1及び第2平坦突出部30A,30Bと第1傾斜突出部40Aは、図3(a)に示すように、同じ溝部21に形成されているので、側面図では重なって見えるが、それでは各突出部の側面形状が見難いので、図3では、各突出部を分離して図示している。
【0026】
図4において、第1平坦突出部30Aは、溝部21の上下方向D2下側の端部21B1(=リブ部22の上下方向D2の上端部22A)から上下方向D2上側に延びる第1A平面31Aと、第1A平面31Aの上下方向D2上側の端部31A1から表裏方向D3裏側へ向けて傾斜する第2A平面32Aとを有する。そして、第2A平面32Aの他方の端部32A2は、溝部21の底面21Cと接している。溝部21の底面21Cに接し、上記リブ部22を構成する平坦面と平行な仮想平面Pと、略平行である第1A平面31Aとの成す角度θ1Aは、図示例では、0°である。また、仮想平面Pと第2A平面32Aとの成す角度θ2Aは、図示例では、60°である。
【0027】
一方、第2平坦突出部30Bは、溝部21の上下方向D2上側の端部21A1(=リブ部22の上下方向D2の下端部22B)から上下方向D2下側に延びる第1B平面31Bと、第2B平面31Bの上下方向D2下側の端部31B1から表裏方向D3裏側へ向けて傾斜する第2B平面32Bとを有する。そして、第2B平面32Bの他方の端部32B2は、溝部21の第2曲面21Bと接している。また、図示例では、仮想平面Pと略平行である第1B平面31Bとの成す角度θ1Bは、0°であり、仮想平面Pと第2B平面32Bとの成す角度θ2Bは、60°である。
【0028】
このように、第1及び第2平坦突出部30A,30Bではいずれも、角度θ1A,θ1Bは、角度θ2A,θ2Bより小さく設定している。また、平坦面31A,31Bの各幅は、傾斜面32A,32Bの各幅より広く設定している。さらに、複数の第1突出部30のうちの少なくとも一部の第1A平面31A、第1B平面31Bに凹凸を付けている。この凹凸を強調するため、第1A平面31A、第1B平面31Bの幅を第2A平面32A、第2B平面32Bの幅より広くし、第1A平面31A、第1B平面31Bと仮想平面Pとの成す角度θ1A、θ1Bを第2A平面32A、第2B平面32Bと仮想平面Pとの成す角度θ2A、θ2Bより小さく設定している。
【0029】
第2突出部40は、表裏方向D3の裏面側から表面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面41と、傾斜面41の表面側端部から裏面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面42とを有する突出部である。
第2突出部40は、傾斜面41の傾きが傾斜面42の傾きより急な第1傾斜突出部40Aと、傾斜面41の傾きが傾斜面42の傾きより緩やかな第2傾斜突出部40Bとに分けられる。
第1傾斜突出部40Aは、溝部21の上下方向D2下側の第2曲面21Bの途中から表裏方向D3表側へ向けて傾斜する第3A平面41Aと、溝部21の上下方向D2上側の第1曲面21Aの途中から表裏方向D3表側へ向けて傾斜する第4A平面42Aとを有する。そして、図示例では、仮想平面Pと第3A平面41Aとの成す角度θ3Aは、約60°であり、仮想平面Pと第4A平面42Aとの成す角度θ4Aは、約10°である。
【0030】
図4は、図2の上下方向D2の上から2番目の溝部21に形成された第1及び第2傾斜突出部40A,40Bの拡大側面図を示している。図5の第1傾斜突出部40Aは、図4の第1傾斜突出部40Aと同様の構成であるので、その構成の説明は省略する。
【0031】
図5において、第2傾斜突出部40Bは、溝部21の上下方向D2下側の第2曲面21Bの途中から表裏方向D3表側へ向けて傾斜する第3B面41Bと、溝部21の上下方向D2上側の第1曲面21Aの途中から表裏方向D3表側へ向けて傾斜する第4B面42Bとを有する。そして、図示例では、仮想平面Pと第3B平面41Bとの成す角度θ3Bは、約10°であり、仮想平面Pと第4B平面42Bとの成す角度θ4Bは、約60°である。
【0032】
このように、角度θ3A,θ3Bと角度θ4A,θ4Bとは、それぞれ異なる角度に設定している。そして、θ3A>θ4Aの場合と、θ3B<θ4Bの場合とが例示されている。θ3A>θ4Aの場合、第3角度θ3Aの上限は70°であり、第4角度θ4Aの上限は20°であることが好ましい。また、θ3B<θ4Bの場合、第3角度θ3Bの上限は20°であり、第4角度θ4Bの上限は70°であることが好ましい。
【0033】
なお、突出部30,40は、図1に示すように、意匠面2上に複数配置されている。これら複数の突出部30,40のいずれを意匠面2上のどの位置に配置するかは、ランダムに決定される。もちろん、ランダムではなく、所定の規則に沿って配置するようにしてもよい。また、複数の突出部30,40のうち、少なくとも一部は、意匠面2上、溝部21の左右方向D1における端部に形成されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の建築板1は、表面に意匠面2を有する、平面視矩形状の建築板1であって、建築板1の一辺に沿った左右方向D1に延び、少なくとも一部が曲面21A,21Bで構成される凹部を形成する溝部21と、建築板1の一辺と直交する他の一辺に沿った上下方向D2における溝部21の端部21A1側及び端部21B1側に位置し、左右方向D1に延びるリブ部22と、溝部21内に形成され、左右方向D1に延びる突出部30,40と、を備え、突出部30,40は、溝部21の端部21A1側及び端部21B1側のうちのいずれか一方側から他方側に延びる平坦面31と、その平坦面31の他方側の端部から下方に傾斜して、溝部21の他方側に接する傾斜面32とを有する第1突出部30と、溝部21の端部21A1側及び端部21B1側のうちのいずれか一方側から他方側に上方に傾斜して延びる第1傾斜面41と、溝部21の他方側から一方側に上方に傾斜して延びる第2傾斜面42とを有する第2突出部40と、を含む、ことを特徴とする。
このように本実施形態の建築板1は、建築板1を上下方向D2に接合させた場合、左右方向D1に延びた溝部21とリブ部22とにより、建築板1と建築板1との接合部を目立たせないようにすることが可能となる。また、溝部21は、少なくとも一部が曲面21A,21Bで構成されているので、陰影感が豊かになる。さらに、突出部30,40を溝部21内に形成したので、溝部21が実寸より深く見えるようになる。
【0035】
また、第1突出部30及び第2突出部40は、意匠面2上に複数形成され、第1突出部30及び第2突出部40のそれぞれは、意匠面2上に複数配置されている、ことを特徴とする。
これにより、建築板1を左右方向D1に接合させた場合、意匠面2上に複数形成された第1突出部30及び第2突出部40が意匠面2上に複数配置されていることで、溝部21の上下方向D2のずれを目立たせないようにすることが可能となる。
【0036】
また、第1突出部30及び第2突出部40は、意匠面2上に複数形成され、第1突出部30の平坦面31の上下方向D2における幅は、傾斜面32の上下方向D2における幅より広く形成され、複数の第1突出部30のうち、少なくとも一部の第1突出部30の平坦面31の表面には、凹凸が形成されている、ことを特徴とする。
【0037】
また、溝部21の底に接し、かつリブ部22を形成する平面と略平行な仮想平面Pと平坦面31との成す第1角度θ1は、仮想平面Pと傾斜面32との成す第2角度θ2より小さく、かつ第2角度の上限は70°であり、仮想平面Pと傾斜面41との成す第3角度θ3と、仮想平面Pと傾斜面42と成す第4角度θ4とは異なる、ことを特徴とする。
【0038】
また、第3角度θ3A>第4角度θ4Aの場合、第3角度θ3Aの上限は70°であり、第4角度θ4Aの上限は20°であり、第3角度θ3B<第4角度θ4Bの場合、第3角度θ3Aの上限は20°であり、第4角度θ4Aの上限は70°である、ことを特徴とする。
【0039】
また、第1突出部30及び第2突出部40は、意匠面2上に複数形成され、複数の第1突出部30のうち、少なくとも一部の第1突出部30の平坦面31は、リブ部22を形成する平面と平行に形成されている、ことを特徴とする。
【0040】
また、溝部21は、意匠面2上に複数形成され、複数の溝部21のうち、少なくとも一部の溝部21は、意匠面2の左右方向D1における一端部から他端部に亘って延びる貫通溝であり、突出部30,40は、意匠面2上に複数形成され、複数のピース30,40のうち、少なくとも一部の突出部30,40は、貫通溝の端部に形成されている、ことを特徴とする。
【0041】
また、リブ部22は、意匠面2上に複数形成され、複数のリブ部22のうち、少なくとも一部のリブ部22の表面には、V溝23A,23Bが形成されている、ことを特徴とする。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
(1)上記実施形態の建築板は、外壁板だけでなく、内壁材等、他の用途の建築用板材に用いることができる。
(2)上記実施形態の建築板は、窯業系材料からなる板に限らず、金属サイディングなどの金属を用いた板や、コンクリート板や、木質板等でもよい。
(2)上記実施形態では、本発明の建築板を横張りする場合を想定しているが、これに限らず、縦張りするようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、第1突出部30の平坦面31に石柄を付けるようにしたが、付ける模様は、石柄に限らず、例えば凹凸であってもよい。さらに、模様を付けないようにしてもよい。
(4)上記実施形態では、仮想平面Pと第1突出部30および第2突出部40の左右方向の成す角度は、左側θ5と右側の成す角度θ6の上限は70°であることが好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1…建築板、
2…意匠面、
3…裏面、
11…上側面、
12…下側面、
13…右側面、
14…左側面、
21…溝部、
21A…第1曲面(溝部21の上下方向D2の上端側)、
21B…第2曲面(溝部21の上下方向D2の下端側)、
21C…底面(溝部21の底面)、
22…リブ部、
22A…リブ部22の上下方向D2の上端部、
22B…リブ部22の上下方向D2の下端部
23A…溝23A(溝23Aは、溝23Bより溝が深い)
23B…溝23B
30、40…突出部(30:第1突出部、40:第2突出部)
30A…第1平坦突出部(第1突出部30のうち、第一面31が溝部21の上下方向の下側にある突出部)
30B…第2平坦突出部(第1突出部30のうち、第一面31が溝部21の上下方向の上側にある突出部)、
31…第1平面(第1突出部30の平坦面)、
32…第2平面(第1突出部30の平坦面の上下方向D2の一方の端部から裏面3へ向けて傾斜する傾斜面)、
31A…第1A平面(第1平坦突出部30Aの平坦面)、
32A…第2A平面(第1平坦突出部30Aの平坦面の上下方向D2の一方の端部から裏面3へ向けて傾斜する傾斜面)、
31B…第1B平面(第2平坦突出部30Bの平坦面)、
32B…第2B平面(第2平坦突出部30Bの平坦面の上下方向D2の一方の端部から裏面3へ向けて傾斜する傾斜面)、
40A…第1傾斜突出部(第1傾斜面41の傾きが第2傾斜面42の傾きより急)、
40B…第2傾斜突出部(第1傾斜面41の傾きが第2傾斜面42の傾きより緩やか)、
41…第3平面(第2突出部の表裏方向D3の裏面側から表面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
42…第4平面(第2突出部の傾斜面41の表面側端部から裏面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
41A…第3A平面(第1傾斜突出部40Aの表裏方向D3の裏面側から表面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
42A…第4A平面(第1傾斜突出部40Aの傾斜面41Aの表面側端部から裏面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
41B…第3B平面(第1傾斜突出部40Bの表裏方向D3の裏面側から表面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
42B…第4B平面(第1傾斜突出部40Bの傾斜面41Bの表面側端部から裏面側へ向かう方向に傾斜して延びる傾斜面)、
50…上実部
60…下実部
D1…左右方向、
D2…上下方向、
D3…表裏方向、
P…仮想平面。
θ1…第1角度
θ2…第2角度
θ3…第3角度
θ4…第4角度
θ5…第5角度
θ6…第6角度
方向、P…仮想平面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6