(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012461
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】現示器、現示システム、および現示方法
(51)【国際特許分類】
F41J 5/20 20060101AFI20250117BHJP
F41J 5/02 20060101ALI20250117BHJP
F41G 3/26 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F41J5/20
F41J5/02
F41G3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115313
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000221155
【氏名又は名称】東芝電波プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】武部 良
(72)【発明者】
【氏名】原 健太郎
(57)【要約】
【課題】 訓練実施前には、受光器とのペアリング設定や、受光器の設置位置の登録を、容易かつ誤りなく実施することができ、訓練実施中には、受光器との通信を無線で行うことによって、受光器との間の配線を不要とし、訓練に支障を及ぼすこともなく、かつ次回の訓練実施のための準備に、修理等の余分な作業も発生しないようにすること。
【解決手段】 実施形態によれば、現示器は、受光器と有線接続される有線接続部と、有線接続部に有線接続された受光器との無線通信のためのペアリング設定を行うペアリング設定部と、ペアリング設定された受光器が設置される位置を、指定入力に応じて登録する設置位置登録部と、設置位置を登録され、有線接続部から切断された受光器からの受光情報を、無線通信で受信する無線通信部と、受光情報の送信元の受光器の設置位置を表示するための表示データを生成する表示データ生成部とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現示器であって、
受光器と有線接続される有線接続部と、
前記有線接続部に有線接続された受光器との無線通信のためのペアリング設定を行うペアリング設定部と、
前記ペアリング設定された受光器が設置される位置を、指定入力に応じて登録する設置位置登録部と、
設置位置を登録され、前記有線接続部から切断された受光器からの受光情報を、前記無線通信で受信する無線通信部と、
前記受光情報の送信元の受光器の設置位置を表示するための表示データを生成する表示データ生成部と
を備えた、現示器。
【請求項2】
前記受光器は、損耗を感知し、
前記受光情報は、前記感知された損耗の度合に関する情報を含んでいる、
請求項1に記載の現示器。
【請求項3】
前記受光器は複数あり、それぞれ異なる位置に設置される、
請求項2に記載の現示器。
【請求項4】
前記表示データは、前記損耗の度合を含んでいる、
請求項2または3に記載の現示器。
【請求項5】
前記有線接続部は、複数の受光器と同時に有線接続できる、
請求項1に記載の現示器。
【請求項6】
前記有線接続部に、前記複数の受光器が同時に有線接続されている場合、前記設置位置登録部は、前記複数の受光器がそれぞれ設置される位置を、指定入力に応じてそれぞれ登録できる、
請求項5に記載の現示器。
【請求項7】
前記無線通信部は、複数の受光器からの受光情報を同時に受信できる、
請求項1に記載の現示器。
【請求項8】
前記表示データを表示する表示部をさらに備えた、
請求項1に記載の現示器。
【請求項9】
受光器と現示器とを備えた現示システムであって、
前記現示器は、
前記受光器と有線接続される有線接続部と、
前記有線接続部に有線接続された受光器との無線通信のためのペアリング設定を行うペアリング設定部と、
前記ペアリング設定された受光器が設置される位置を、指定入力に応じて登録する設置位置登録部と、
設置位置を登録され、前記有線接続部から切断された受光器からの受光情報を、前記無線通信で受信する無線通信部と、
前記受光情報の送信元の受光器の設置位置を表示するための表示データを生成する表示データ生成部とを備え、
前記受光器は、
レーザエネルギを感知して、前記感知したレーザエネルギを、電気信号に変換する受光部と、
前記電気信号を含む前記受光情報を送信する送信部とを備えた、
現示システム。
【請求項10】
前記現示器は、前記表示データを表示する表示部をさらに備えた、
請求項9に記載の現示システム。
【請求項11】
前記設置位置登録部を動作させるスイッチを備えた、請求項9または10に記載の現示システム。
【請求項12】
前記スイッチを、前記受光器に備えた、
請求項11に記載の現示システム。
【請求項13】
前記現示器と前記受光器とを有線接続しながら収納する収納ケースをさらに備えた、請求項9または10に記載の現示システム。
【請求項14】
前記設置位置登録部を動作させるスイッチを前記収納ケースに備えた、請求項13に記載の現示システム。
【請求項15】
それぞれ異なる位置に設置された複数の受光器からの受光情報に基づいて、各位置における損耗の度合を現示器において現示する方法であって、
前記複数の受光器と前記現示器とが有線接続された状態で、前記複数の受光器と前記現示器との無線通信のためのペアリング設定を行う第1のステップと、
前記有線接続された状態で、前記複数の受光器が設置される各位置を、前記現示器に登録する第2のステップと、
前記現示器との有線接続が切断されて、前記登録された位置に設置された各受光器が、損耗を感知すると、前記損耗の度合を含む受光情報を送信する第3のステップと、
前記複数の受光器のうちいずれかから前記受光情報が送信された場合、前記送信されたセンシング信号を、前記現示器が、前記無線通信を介して受信する第4のステップと、
前記現示器が、前記受信したセンシング信号に基づいて、前記受光情報の送信元の受光器の設置位置と、前記損耗の度合とを示す第5のステップと
を含む、現示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交戦訓練における損耗を現示する現示器、現示システム、および現示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交戦訓練では、小銃、重機関銃、装甲車両、およびヘリコプタ等の射撃を、レーザに置き換え、火砲の射撃を、電波に置き換え、訓練者に装着した受光器で、レーザや電波を受けることで、訓練者の損耗を模擬している。
【0003】
訓練者には、この損耗を表示する現示器が装備されている。
【0004】
この種の現示器は、レーザエネルギを感知して、電気信号に変換する受光器と、レーザで撃たれた部位を表示する表示部とを備えている。これら受光器および表示部は、防弾チョッキの形状に模擬され、防弾チョッキと一体化されており、外衣の中で有線接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-174272号公報
【特許文献2】米国特許出願第2012/183928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交戦訓練では、十分な訓練効果を得るために、現示器に対して以下のことが求められる。
【0007】
先ず、実装備との乖離を可能な限り小さくすることである。例えば、実戦時に装着する器材と訓練時に装着する器材との形状の乖離が大きいと、訓練者の基礎動作の演練を制約してしまうからである。
【0008】
また、弾着を現示できる必要がある。なぜなら、敵射撃の弾着を隊員が認識できなければ、適切な退避行動の演練とはならないからである。
【0009】
さらには、現示器の設定等の事前準備に要する時間を、可能な限り短くする必要がある。例えば、現示器の設定等の事前準備に時間がかかり過ぎては、その分、訓練に費やすことができる時間が短くなるからである。
【0010】
しかしながら、従来の現示器では、前述したように、受光器と表示器とが、外衣の中で有線接続されている。受光器の数が、例えば1個のように、少数であれば、受光器と表示器との間で有線接続されていても、構成はさほど複雑にはならない。
【0011】
しかしながら、着弾を提示するためには、受光器は複数必要となる。着弾した場所が、例えば、頭部なのか、右腕なのか、左腕なのか、胴部なのか、右足なのか、左足なのかを把握するためには、それだけの数の受光器が必要となる。
【0012】
したがって、着弾した場所を精度よく把握するためには、それに応じて多くの受光器が必要となる。しかしながら、受光器の数が増えるほど、配線の数も増えてしまう。外衣の中に、多くの配線を配置させることは、現示器の構成を複雑化させることになり、好ましいことではない。配線の数が増えると、訓練によって断線が生じるリスクも高くなる。断線が生じた場合、次の訓練までに修理し、準備する必要があるが、修理のために、断線場所を特定するだけでも手間と時間とを要する。当然ながら、修理を含めた準備に、手間と時間とを要することは好ましことではない。
【0013】
また、訓練の目的や内容に応じて、受光器の数や、設置位置を変える場合もあり得る。したがって、現示器は、受光器の数の増減や、設置位置の変更に対して容易に対応できる柔軟性を有した構成であることが好ましい。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、訓練実施前には、受光器の数や、設置位置に変更が生じた場合でも、受光器とのペアリング設定や、受光器の設置位置の登録を、容易かつ誤りなく実施することができ、訓練実施中には、受光器との通信を無線で行うことによって、受光器との間の配線を不要とし、構成を簡素化することによって、訓練に支障を及ぼすこともなく、また、断線のリスクも排除することで、次回の訓練実施のための準備に、修理等の余分な作業も発生しないようにした現示器、現示システム、および現示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態の現示器は、受光器と有線接続される有線接続部と、有線接続部に有線接続された受光器との無線通信のためのペアリング設定を行うペアリング設定部と、ペアリング設定された受光器が設置される位置を、指定入力に応じて登録する設置位置登録部と、設置位置を登録され、有線接続部から切断された受光器からの受光情報を、無線通信で受信する無線通信部と、受光情報の送信元の受光器の設置位置を表示するための表示データを生成する表示データ生成部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の現示システムが使用される状態を示す概念図である。
【
図2】
図2は、ペアリング設定のために現示器と受光器とが有線接続された状態を示す概念図である。
【
図3】
図3は、現示器の電子構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、設置位置登録時の現示器の表示画面を示す概念図である。
【
図5】
図5は、表示部から表示データが表示されている現示器の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、ペアリング設定および設置位置の登録を無線で行う場合を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態の現示システムの構成例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の現示システムの別の構成例を示す概念図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の現示システムのさらに別の構成例を示す概念図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の現示システムのさらにまた別の構成例を示す概念図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態の現示システムに適用される収納ケースの構成例を示す側断面図である。
【
図13】
図13は、収納ケースの別の構成例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明や、重複した説明は適宜省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の現示システムについて説明する。
【0019】
図1は、第1の実施形態の現示システムが使用される状態を示す概念図である。
【0020】
本実施形態の現示システムは、現示器10と、1つまたは複数の受光器40とを備えている。
【0021】
現示器10は、交戦訓練時に訓練者Sによって使用される。現示器10は、例えばスマートフォン等の小型で可搬性に優れた携帯端末で実現できる。したがって、訓練者Sは、外衣または防弾チョッキのポケットに、現示器10を収納した状態で交戦訓練を行うことができる。また、スマートフォンは機能拡張性に優れているので、この特徴を使って、表示情報を容易に拡充することができる。
【0022】
受光器40は、交戦訓練中、現示器10と無線通信可能な状態で、訓練者Sの各部位に設置される。例えば、受光器40(1)は、訓練者Sの頭部に(ヘルメットに装着して)設置され、受光器40(2)は、胴体に設置され、受光器40(3)は、右足に設置され、受光器40(4)は、右腕に設置されるという具合である。
【0023】
なお、受光器40は4つに限定されず、1つ以上であれば3つ以下でも、5つ以上であってもよい。また、訓練内容に応じて、設置位置を変えることもできる。
【0024】
受光器40は、レーザエネルギを感知すると、レーザエネルギを、例えば電圧(V)のような電気信号に変換し、受光情報として出力するので、交戦訓練時に砲弾の代わりに使用されるレーザで撃たれると、受光情報を生成して現示器10へ送信する。したがって、受光器40の数が多ければ、より詳細な情報を交戦訓練から得ることができる。ただし、受光器40の数が多くなるほど、訓練者Sの機動性が低下する。したがって、受光器40の数は、交戦訓練の内容に応じて都度決定される。
【0025】
各受光器40を、交戦訓練中、現示器10と無線通信可能にするためには、各受光器40を、交戦訓練前に、現示器10と予めペアリング設定しておく必要がある。このペアリング設定は、各受光器40を、現示器10に有線接続した状態で行う。
【0026】
図2は、ペアリング設定のために現示器と受光器とが有線接続された状態を示す概念図である。
【0027】
現示器10は、ケーブル50を介して、複数の受光器40(例えば、受光器40(1)~(4))と同時に有線接続できる有線接続部17を備えている。現示器10は、有線接続部17の他にも様々な機能を備えている。これを
図3を用いて説明する。
【0028】
図3は、現示器の電子構成例を示すブロック図である。
【0029】
例えばスマートフォン等の携帯端末で実現できる現示器10は、バス11によって互いに接続されたCPU12、記録媒体読取部14、表示部16、有線接続部17、無線通信部18、各種プログラムが格納されたメモリ20、および記憶装置30を備えている。
【0030】
CPU12は、コンピュータであって、メモリ20に記憶されているプログラムに従い現示器10内の各部の動作を制御する。
【0031】
記憶装置30は、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等で実現できる。
【0032】
表示部16は、例えばタッチパネル機能付きの液晶ディスプレイとすることができ、各受光器40からの受光情報に基づく表示(現示)をしたり、ユーザが、現示器10に対する必要な操作入力を行うことができる。なお、ユーザは、一般に、訓練者Sであることが多い。したがって、以下の説明において、ユーザとは、訓練者Sとは、同一人物とみなしてもよい。
【0033】
メモリ20は、現示器10を実現するための各種プログラムを記憶しており、これらプログラムによって、ペアリング設定部21、設置位置登録部22、表示データ生成部23を実現する。
【0034】
ペアリング設定部21、設置位置登録部22、表示データ生成部23のプログラムは、メモリ20に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカード等の外部記録媒体13から記録媒体読取部14を介してメモリ20に読み込まれて記憶されたものであってもよい。ペアリング設定部21、設置位置登録部22、表示データ生成部23のプログラムは、書き換えできない。
【0035】
メモリ20には、このような書き換え不可能なプログラムが記憶されたエリアの他に、書き換え可能なデータを記憶するエリアとして、書込可能データエリア29が確保されている。
【0036】
ペアリング設定部21は、有線接続部17に有線接続された各受光器40と現示器10との無線通信のためのペアリング設定を行う。
【0037】
設置位置登録部22は、ペアリング設定部21によってペアリング設定された受光器40の設置位置を、ユーザからの指定入力に応じて登録する。この指定入力は、対象の受光器40が現示器10に有線接続された状態で、ユーザによってなされる。この指定入力を、
図4を用いて説明する。
【0038】
図4は、設置位置登録時の現示器の表示画面を示す概念図である。
【0039】
設置位置登録部22は、表示部16から、設置位置登録用の表示画面を表示させる。設置位置登録用の表示画面からは、設置位置マップ100とメニュー欄110とが表示される。
【0040】
設置位置マップ100には、訓練者Sの体の部位が簡略表示されている。また、メニュー欄110には、現示器10に操作情報を入力するための様々なメニューが表示されている。
【0041】
受光器40の設置位置を登録する場合、ユーザは、メニュー欄110のうち「設定」110aをタップする。さらに、設置位置マップ100に示される体の部位から、設置する部位をタップする。これによって、この受光器40のID情報が、タップされた部位に対応する設置位置に登録される。なお、受光器40のID情報は、各受光器40毎に予め付与されている。
【0042】
登録が終了すると、ユーザは、メニュー欄110から「登録」をタップする。これによって、設置位置登録部22は、設置位置とID情報とが紐付けられた紐付け情報を生成し、生成した紐付け情報を、記憶装置30に記憶させる。
【0043】
設置位置登録部22は、受光器40のID情報を登録された部位を、ユーザに知らせるために、設置位置マップ100において、未登録部位とは異なる色で表示させる。これによって、ユーザは、未登録部位を容易に認識できるので、次の受光器40の設置位置の登録処理を効率的に進めることができる。
【0044】
なお、
図4では、簡略のために、現示器10には、1つの受光器40しか有線接続されていないが、
図2に例示するように、複数の受光器40が現示器10に有線接続された状態で、複数の受光器40の設置位置の登録処理をそれぞれ行うことも可能である。複数の受光器40が現示器10に有線接続された状態であっても、登録処理は、1つの受光器40毎に行われるが、この場合、
図4のように1つの受光器40しか有線接続できない場合とは異なり、ケーブル50の差し替えを、1つの受光器40の登録処理の完了の都度行う必要はなくなるので、ケーブル50の差し替えに要する手間を減らすことができる。
【0045】
複数の受光器40が現示器10に有線接続された状態で、1つの受光器40毎に登録処理を行うためには、例えば、
図2に示す分岐ケーブル50(1)~(4)に優先順位を予め付与しておき、第1優先順位の分岐ケーブル50(1)に接続された受光器40(1)の登録処理が終了すると、第2優先順位の分岐ケーブル50(2)に接続された受光器40(2)の登録処理を行うという具合に順番に行う。しかしながら、複数の受光器40が現示器10に有線接続された状態で、1つの受光器40毎に登録処理を行うための方式は、この方式に限定されず、他の任意の方式で実施してもよい。
【0046】
このように、受光器40の現示器10とのペアリング、および、受光器40の設置位置の登録処理が完了すると、ユーザ(訓練者S)は、有線接続部17から受光器40を切断する。これは、有線接続部17からケーブル50を抜き、さらに、各分岐ケーブル50(1)~(4)を各受光器40(1)~(4)から抜くことによって実施される。訓練者Sは、その後、各受光器40(1)~(4)を、登録した設置位置に設置する。これによって交戦訓練の準備が完了する。
【0047】
受光器40は、レーザエネルギを感知して、感知したレーザエネルギを、例えば電圧(V)のような電気信号に変換する受光部と、この電気信号とID情報とを含む受光情報を送信する送信部とを備えている。
【0048】
無線通信部18は、受光器40と、例えばBLUETOOTH(登録商標)のような無線機能を使って無線通信することができる。したがって、無線通信部18は、受光器40から送信された受光情報を、この無線機能を使って受信する。無線通信部18はさらに、受信した受光情報を、バス11を介してメモリ20へ出力する。
【0049】
なお、無線通信部18は、複数の受光器40から受光情報が同時に送信された場合には、複数の受光器40から送信された複数の受光情報を同時に受信し、各受光情報を、バス11を介してメモリ20へ出力することができる。
【0050】
メモリ20へ受光情報が出力されると、表示データ生成部23は、受光情報からID情報を取得する。そして、取得したID情報が含まれている紐付け情報を、記憶装置30から検索する。紐付け情報は、設置位置とID情報とを紐付けている情報であるので、表示データ生成部23は、紐付け情報を検索することによって、送信元の受光器40の設置位置を特定する。そして、特定した設置位置を、損耗の度合が分かるように表示するための、表示データを生成する。
【0051】
損耗の度合が分かるように表示するには、限定される訳ではないが、一例として、受光情報に含まれる電気信号が示す電圧の大きさに応じて、色の濃さを変えて表示することが挙げられる。したがって、表示データ生成部23は、例えば、電気信号で示される電圧の値が大きいほど、濃く表示するように表示データを生成する。
【0052】
表示データ生成部23は、このように、特定された設置位置と、濃さとが指定された表示データを生成し、表示部16へ出力する。
【0053】
表示部16は、表示データに基づく表示を行う。
【0054】
図5は、表示部から表示データが表示されている現示器の一例を示す図である。
【0055】
図5には、表示データに基づく表示が表示部16からなされた状態も示されている。
図5の例では、頭部の部位が濃く塗り潰され、右足の部位が薄く塗り潰されて表示されている。このような表示を見ることによって、訓練者Sは、撃たれた場所は、頭部と右足であり、頭部は損耗が大きく、右足は損耗が小さいことを容易に認識することができる。
【0056】
このように、現示器10では、バス11、CPU12、記録媒体読取部14、表示部16、有線接続部17、無線通信部18、メモリ20、および記憶装置30等のハードウェアと、メモリ20に記憶されている各プログラムであるソフトウェアとが協働して動作する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の現示システムによれば、訓練前に、有線接続を用いて各受光器40と現示器10との無線通信のためのペアリング設定および設置位置の登録を行う。そして、各受光器40を現示器10との有線接続から外し、登録した設置位置に設置して訓練に臨む。訓練中は、訓練者Sがレーザで撃たれると、受光器40によって、レーザエネルギが感知され、それに応じて生成された受光情報が、BLUETOOTH(登録商標)などによる無線通信によって現示器10へ送信される。
【0058】
これによって現示器10では、訓練者Sのそれぞれ異なる位置に設置された複数の受光器40からの受光情報に基づいて、訓練者Sの各位置における損耗の度合を現示することができる。これによって、訓練者Sは、訓練中の弾着を認識でき、適切な退避行動の演練を実施することが可能となる。
【0059】
このように本実施形態の現示システムの特徴は、訓練実施前の準備として行うペアリング設定および設置位置の登録を、有線で行い、訓練実施中には、受光器40から送信される受光情報の受信を、無線で行うというものである。
【0060】
ペアリング設定および設置位置の登録も無線で行うことができるが、本実施形態の現示システムでは、それは敢えてしない。なぜなら、ペアリング設定および設置位置の登録を無線で行う場合、かえって煩雑になり、ペアリング設定や、設置位置の登録にミスが生じる恐れが高いからである。
【0061】
例えば、現示器10と受光器40とが有線接続で物理的に接続されていれば、訓練者Sは、どの受光器40がペアリング設定の対象であるかを明示的に把握することができる。
【0062】
それに対して、ペアリング設定および設置位置の登録を無線で行う場合、現示器10と受光器40とは物理的に接続されていないので、どの受光器40がペアリング設定の対象であるかを明示的に把握することは困難である。これを、
図6を用いて分かり易く説明する。
【0063】
図6は、ペアリング設定および設置位置の登録を無線で行う場合を説明するための図である。
【0064】
例えば、現示器10がBLUETOOTHによって受光器40とのペアリングを行う場合、現示器10は、BLUETOOTHで無線通信可能な近傍の受光器40をすべて認識する。この中には、ある訓練者S(例えば、
図6に示す訓練者A)が自分で使用する受光器40のみならず、他の訓練者(例えば、
図6に示す訓練者B,C)が使用する受光器40も含まれてしまう。この場合、現示器10は、無線通信している多数の受光器40を表示部16から一覧表示する。
【0065】
訓練者Sは、このように他の訓練者によって使用される受光器40も含めて一覧表示された中から、まず、自分が使用する受光器40を把握する必要がある。しかしながら、現示器10の表示部16から一覧表示される受光器40は、訓練者A,B,C毎に分類されずに表示される。
【0066】
したがって、現示器10の無線通信範囲内に存在する受光器40の数が非常に多い場合には、表示された受光器40のうち、自分が使用する受光器40がどれであるのかを正しく把握するために手間を要する。したがって、誤って把握するリスクもある。
【0067】
このように、ペアリング設定および設置位置の登録も無線で行うことは、誤って他の訓練者の受光器40とペアリングしてしまうというミスが生じる恐れもある。
【0068】
このようなミスに気が付いた場合には、修正のために余分な時間を要してしまい、訓練時間を圧迫することになる。また、ミスに気が付くことなく、そのまま訓練を実行する可能性も排除できない。この場合、訓練の成果を正しく評価できなくなるなど、及ぼす影響は大きい。
【0069】
しかしながら、本実施形態の現示システムは、ペアリング設定および設置位置の登録を有線で行うので、どの受光器40がペアリング設定の対象であるかを容易に把握できる。したがって、訓練者Sは、ペアリング設定および設置位置の登録を無線で行う場合に必要とされる、多数の受光器40の中から、自分が使用する受光器40を正しく把握せねばならないということは不要となる。このため、受光器40のペアリング設定や、設置位置の登録を、他の訓練者の受光器40と取り違えることもなく、正しく行うことが容易となる。
【0070】
さらに、本実施形態の現示システムは、訓練時には、受光器40と現示器10との間の通信を無線で行うので、構成を簡素化することができることに加えて、訓練時に配線が断線するなどといったリスクからも解放される。
【0071】
また、訓練の目的や内容に応じて、受光器の数や、設置位置を変える場合であっても、配線を増設したり、引き直したりする必要もなく、容易に対応できる柔軟性を有している。
【0072】
このように、本実施形態の現示システムによれば、有線接続と無線接続との両方の利点を活用することによって、訓練実施前には、受光器40と現示器10とを有線接続することによって、受光器40の数や、設置位置に変更が生じた場合でも、受光器40とのペアリング設定や、受光器40の設置位置の登録を、誤りなく容易に実施することができ、訓練中には、受光器40と現示器10とを無線接続することによって、受光器40と現示器10との間の配線を不要とし、断線のリスクを排除することで、次回の訓練実施のための準備に、修理等の余分な作業が発生しないようにすることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の現示システムについて説明する。
【0074】
第2の実施形態の現示システムは、第1の実施形態の現示システムを一部変形したものであるので、以下では、第1の実施形態と異なる点について説明し、同一部位については、同一番号を用いて説明し、重複説明を避ける。
【0075】
図7は、第2の実施形態の現示システムの構成例を示す概念図である。
【0076】
本実施形態の現示システムは、現示器10および受光器40に加えて、スイッチ51を備えている。スイッチ51は、設置位置登録部22を動作させるものである。
【0077】
図7は、ケーブル50の途中に、ボタン式のスイッチ51を備えた例を示している。
【0078】
前述した第1の実施形態では、ユーザによって、受光器40の設置位置が設定されると、ユーザが、メニュー欄110から「登録」をタップすることによって、設置位置登録部22は、設置位置とID情報とを紐付ける紐付け情報を生成し、生成した紐付け情報を、記憶装置30に記憶させている。
【0079】
このようなソフトウェア的な操作では、ユーザが、タップする位置を誤って、別のメニューを選択したり、タップしたつもりがタップされておらず、設置位置登録をしたつもりであったのに、設置位置登録部22が動作していなかったという恐れもある。
【0080】
そこで、本実施形態では、ユーザが、メニュー欄110から「登録」をタップするというソフトウェア的な操作ではなく、スイッチ51のボタンを押すという機械的な操作によって、設置位置登録部22を動作させる。
【0081】
スイッチ51は、ボタンを押されると、設置位置登録部22を動作させる信号を、ケーブル50を介して現示器10に伝える。この信号を受けて、設置位置登録部22が動作する。
【0082】
このような機械的な操作によれば、前述したソフトウェア的な操作に起因する誤操作の可能性を排除することができる。
【0083】
なお、
図7は、1つの受光器40が接続されるケーブル50に、スイッチ51が設けられている構成例を示しているが、以下に、
図8~
図10を用いて、別の構成例について説明する。
【0084】
図8は、第2の実施形態の現示システムの別の構成例を示す概念図である。
【0085】
図8のように、複数の受光器40が接続されるケーブル50に、スイッチ51を設けることもできる。
【0086】
図9は、第2の実施形態の現示システムのさらに別の構成例を示す概念図である。
【0087】
図9に示すように、スイッチ51を、ケーブル50にではなく、受光器40に設けることもできる。
【0088】
図10は、第2の実施形態の現示システムのさらにまた別の構成例を示す概念図である。
【0089】
図10に示すように、スイッチ51を設けられた複数の受光器40(1)~(4)を、複数の受光器40を接続できるケーブル50によって、現示器10に接続することもできる。
【0090】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の現示システムについて説明する。
【0091】
第3の実施形態の現示システムは、第1または第2の実施形態の現示システムを一部変形したものであるので、以下では、第1または第2の実施形態と異なる点について説明し、同一部位については、同一番号を用いて説明し、重複説明を避ける。
【0092】
図11は、第3の実施形態の現示システムに適用される収納ケースの構成例を示す側断面図である。
【0093】
本実施形態の現示システムは、現示器10および受光器40に加えて、収納ケース60を備えている。
【0094】
図12は、収納ケース60の構成例を示す斜視図である。
【0095】
収納ケース60には、受光器40を収納するための凹部61と、現示器10を収納するための凹部63とが設けられている。
【0096】
図11は、
図12において、凹部61に受光器40が収納され、凹部63に現示器10が収納された場合におけるA-A線に沿った断面図に相当する。
【0097】
凹部61の底面には、凹部61に受光器40が収納されると、受光器40の通信端子と接触し、受光器40と電気的に接続される接続端子62が設けられている。
【0098】
凹部63の底面には、凹部63に現示器10が収納されると、現示器10の通信端子と接触し、現示器10と電気的に接続される接続端子64が設けられている。
【0099】
接続端子62と接続端子64とは、ケーブル50で接続されている。
【0100】
これによって、収納ケース60は、現示器10と受光器40とを、ケーブル50によって、有線接続しながら収納することができる。
【0101】
図13は、収納ケースの別の構成例を示す側断面図である。
【0102】
図13に示すように、収納ケース60には、第2の実施形態で説明したようなスイッチ51を設けることもできる。
【0103】
図13に示すスイッチ51もまた、収納ケース60の内部でケーブル50に接続されている。ボタンを押されると、設置位置登録部22を動作させる信号が、ケーブル50を介して現示器10に伝えられる。この信号を受けて、設置位置登録部22が動作する。
【0104】
以上説明したように、本実施形態の現示システムによれば、現示器10と受光器40とを、収納ケース60に収納することによって、有線接続することができるので、第1および第2の実施形態の現示システムで奏される効果に加えて、ケーブル50の繋ぎ替えを行う必要がなくなり、手間を省くことが可能となる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
10 現示器
11 バス
12 CPU
13 外部記録媒体
14 記録媒体読取部
16 表示部
17 有線接続部
18 無線通信部
20 メモリ
21 ペアリング設定部
22 設置位置登録部
23 表示データ生成部
29 書込可能データエリア
30 記憶装置
40 受光器
50 ケーブル
51 スイッチ
60 収納ケース
61 凹部
62 接続端子
63 凹部
64 接続端子
100 設置位置マップ
110 メニュー欄
S 訓練者