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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012469
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】炭酸カルシウム含有フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20250117BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250117BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20250117BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250117BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250117BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250117BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C08L23/04
B65D65/40 D
B32B27/20 A
B32B27/18 Z
B32B27/32 Z
C08J5/18 CES
C08K3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115323
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗央里
(72)【発明者】
【氏名】渕田 泰司
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB51
4F071AA19
4F071AA82
4F071AB21
4F071AF59Y
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA18
4F100AA18A
4F100AK01A
4F100AK04A
4F100AK63
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00C
4F100DE01
4F100GB15
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JK04
4F100JK04A
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB151
4J002BB232
4J002DE236
4J002FD016
4J002FD202
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明では、少ない樹脂量で、かつ基材、例えば基材として用いられる樹脂フィルムに良好に接着できる、新規な炭酸カルシウム含有フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の炭酸カルシウム含有フィルムは、熱可塑性樹脂及び炭酸カルシウムを含有しており、
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの質量に対して、60質量%超80質量%以下であり、かつ
下記(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす、炭酸カルシウム含有フィルム:
(i)前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂であり、かつ前記ポリエチレン系樹脂の密度が、0.930/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が340MPa以下であること、
(ii)相溶化剤を更に含有していること、及び
(iii)前記炭酸カルシウムのレーザー回折法により測定したD50が、4μm以下であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、かつドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるためのものである、炭酸カルシウム含有フィルムであり、
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの質量に対して、60質量%超80質量%以下であり、かつ
下記(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす、炭酸カルシウム含有フィルム:
(i)前記熱可塑性樹脂が、密度が0.928g/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が330MPa以上である第一のポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂の質量に対して25質量%以上含むこと、
(ii)相溶化剤を更に含有していること、及び
(iii)前記炭酸カルシウムのレーザー回折法により測定したD50が、4.5μm以下であること。
【請求項2】
少なくとも前記(i)を満たす、請求項1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、第二のポリエチレン系樹脂を更に含み、かつ前記熱可塑性樹脂が、前記第一及び第二のポリエチレン系樹脂で構成されている、請求項2に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項4】
少なくとも前記(ii)を満たす、請求項1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項5】
前記相溶化剤が、ポリエチレン系アイオノマーである、請求項4に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項6】
少なくとも前記(iii)を満たす、請求項1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項7】
インフレーションフィルムである、請求項1又は2に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
【請求項8】
炭酸カルシウム含有積層体であって、
請求項1又は2に記載の炭酸カルシウム含有フィルム、及び前記炭酸カルシウム含有フィルムに積層されている他の層を有し、かつ
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有積層体の質量に対して、60質量%超80質量%以下である、
炭酸カルシウム含有積層体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の炭酸カルシウム含有フィルム、及び前記炭酸カルシウム含有フィルムに融着されているシーラント層を有する、シーラント積層体。
【請求項10】
請求項8に記載の炭酸カルシウム含有積層体、及び前記炭酸カルシウム含有積層体の前記他の層に融着されているシーラント層を有する、シーラント積層体。
【請求項11】
包装用積層体であって、
請求項9に記載のシーラント積層体、ドライラミネート接着剤層、及び基材層を有し、
前記基材層が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの前記シーラント層と反対側に、前記ドライラミネート接着剤層を介して前記炭酸カルシウム含有フィルムに接着されており、かつ
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装用積層体の質量に対して、50質量%超である、
包装用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装の目的で、プラスチック製のシートが広く用いられている。このようなシートで得られた包装体は、耐水性に優れる等利点が多いことから、紙製の包装容器に代わる材料として用いられている。一方、環境の観点からは、石油系資源の利用はできる限り抑える必要があるとされている。このような観点から、プラスチック製のシートに炭酸カルシウムを混合することが行われている。
【0003】
特許文献1では、直鎖状低密度ポリエチレン10重量%、低密度ポリエチレン15重量%、炭酸カルシウム75重量%を、溶合剤を注入して高温で攪拌溶合し、還元成型機にて射出成型して樹脂組成物をつくり、この樹脂組成物30重量%と高密度ポリエチレン70重量%を80℃の乾燥機で攪拌溶合し、ポリ吹膜成型機にて成型することを特徴とする家庭用ゴミ袋が開示されている。
【0004】
特許文献2では、シートであって、熱可塑性樹脂と無機物質粒子とを、85:15~20:80の比率で含み、さらに、親水性基を有するポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物によって構成され、シートの弾性率が1,000MPa以上であるシートが開示されている。
【0005】
特許文献3では、ポリエチレン系樹脂に炭酸カルシウムが配合されたポリエチレン系樹脂組成物であって、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの少なくとも一部が、炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂とを含有するEVA系マスターバッチ由来の平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムであり、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合が30質量%以上である、ポリエチレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-114301号公報
【特許文献2】特開2018-48229号公報
【特許文献3】特開2022-6831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、少ない樹脂量で、かつ基材、例えば基材として用いられる樹脂フィルムに良好に接着できる、新規な炭酸カルシウム含有フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉熱可塑性樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、かつドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるためのものである、炭酸カルシウム含有フィルムであり、
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの質量に対して、60質量%超80質量%以下であり、かつ
下記(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす、炭酸カルシウム含有フィルム:
(i)前記熱可塑性樹脂が、密度が0.928g/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が330MPa以上である第一のポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂の質量に対して25質量%以上含むこと、
(ii)相溶化剤を更に含有していること、及び
(iii)前記炭酸カルシウムのレーザー回折法により測定したD50が、4.5μm以下であること。
〈態様2〉少なくとも前記(i)を満たす、態様1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様3〉前記熱可塑性樹脂が、第二のポリエチレン系樹脂を更に含み、かつ前記熱可塑性樹脂が、前記第一及び第二のポリエチレン系樹脂で構成されている、態様2に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様4〉少なくとも前記(ii)を満たす、態様1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様5〉前記相溶化剤が、ポリエチレン系アイオノマーである、態様4に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様6〉少なくとも前記(iii)を満たす、態様1に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様7〉インフレーションフィルムである、態様1~6のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム含有フィルム。
〈態様8〉炭酸カルシウム含有積層体であって、
態様1~7のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム含有フィルム、及び前記炭酸カルシウム含有フィルムに積層されている他の層を有し、かつ
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有積層体の質量に対して、60質量%超80質量%以下である、
炭酸カルシウム含有積層体。
〈態様9〉態様1~7のいずれか一項に記載の炭酸カルシウム含有フィルム、及び前記炭酸カルシウム含有フィルムに融着されているシーラント層を有する、シーラント積層体。
〈態様10〉態様8に記載の炭酸カルシウム含有積層体、及び前記炭酸カルシウム含有積層体の前記他の層に融着されているシーラント層を有する、シーラント積層体。
〈態様11〉 包装用積層体であって、
態様9に記載のシーラント積層体、ドライラミネート接着剤層、及び基材層を有し、
前記基材層が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの前記シーラント層と反対側に、前記ドライラミネート接着剤層を介して前記炭酸カルシウム含有フィルムに接着されており、かつ
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装用積層体の質量に対して、50質量%超である、
包装用積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない樹脂量で、かつ基材、例えば基材として用いられる樹脂フィルムに良好に接着できる、新規な炭酸カルシウム含有フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、本発明の炭酸カルシウム含有フィルムの側面断面図である。図1(b)は、本発明の炭酸カルシウム含有積層体の側面断面図である。
図2】この図は、本発明のシーラント積層体の側面断面図である。
図3】この図は、本発明の包装用積層体の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《炭酸カルシウム含有フィルム》
本発明の炭酸カルシウム含有フィルムは、熱可塑性樹脂及び炭酸カルシウムを含有しており、かつドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるためのものである、炭酸カルシウム含有フィルムであり、
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記炭酸カルシウム含有フィルムの質量に対して、60質量%超80質量%以下であり、かつ
下記(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす、炭酸カルシウム含有フィルム:
(i)前記熱可塑性樹脂が、密度が0.928/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が330MPa以下である第一のポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂の質量に対して25質量%以上含むこと、
(ii)相溶化剤を更に含有していること、及び
(iii)前記炭酸カルシウムのレーザー回折法により測定したD50が、4.5μm以下であること。
【0012】
本発明者らは、上記の(i)~(iii)の少なくとも1つを満たすように炭酸カルシウム含有フィルムを構成することにより、少ない樹脂量で、かつ基材として用いられる樹脂フィルムにドライラミネート接着剤を介して良好に接着させることができることを見出した。
【0013】
本発明の炭酸カルシウム含有フィルム10は、図1(a)に示すような単層の構成を有することができる。
【0014】
炭酸カルシウム含有フィルムは、このフィルムを構成する樹脂組成物を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロール、コニカルミキサー等のバッチ式混練機や、2軸混練機等の連続混練機等を用いて混練し、次いで混練した樹脂を、インフレーション法、Tダイ法等の押出成形法によりフィルム状に成型することにより製造することができる。また、炭酸カルシウム含有フィルムの製造においては、多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、製膜及び積層を同時に行ってもよい。
【0015】
中でも、炭酸カルシウム含有フィルムは、多層インフレーション法により製造した場合、すなわち炭酸カルシウム含有フィルムがインフレーションフィルムである場合には、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させた際の良好なラミネート強度を得ることができる。理論に拘束されることを望まないが、これは、リング状のダイから樹脂組成物がフィルム状に押し出された際に、直ちに冷却が行われ、それによって、炭酸カルシウムが表面に露出することを抑制できることによると考えられる。
【0016】

炭酸カルシウム含有フィルムは、熱可塑性樹脂及び炭酸カルシウムを含有しており、かつドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるための層、より具体的には、上記の(i)~(iii)の少なくとも1つを満足する層である。
【0017】
炭酸カルシウム含有フィルムにおける炭酸カルシウムの含有率は、60質量%超、65質量%以上、又は70質量%以上であることが、包装用積層体を得た際に炭酸カルシウムの含有率を多くし、それによって、樹脂の含有率を低減する観点から好ましい。この含有率は、80質量%以下、75質量%以下、又は73質量%以下であってよい。
【0018】
炭酸カルシウム含有フィルムの厚さは、特に限定されない。本発明の炭酸カルシウム含有フィルムが第一の層のみから構成されている場合には、炭酸カルシウム含有フィルムの厚さは、例えば5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、30μm以上、又は35μm以上であってよく、また100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、又は45μm以下であってよい。
【0019】
また、炭酸カルシウム含有フィルムの厚さは、例えば1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は9μm以上であってよく、また20μm以下、15μm以下、又は12μm以下であってよい。
【0020】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0021】
〈熱可塑性樹脂〉
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0022】
ポリエチレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
特に、熱可塑性樹脂がポリエチレン系樹脂である場合には、ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910g/cm以上、0.915g/cm以上、0.920g/cm以上、0.925g/cm以上、0.928g/cm以上、0.930g/cm以上、又は0.933g/cm以上であってよい。特に、密度が0.928g/cm以上であることが、基材層とのラミネート強度の観点から好ましい。この密度は、0.950g/cm以下、0.945g/cm以下、又は0.940g/cm以下であってよい。
【0025】
また、熱可塑性樹脂がポリエチレン系樹脂である場合には、ポリエチレン系樹脂の、JIS K7171:2016に準拠する曲げ弾性率は、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、150MPa以上、160MPa以上、170MPa以上、180MPa以上、190MPa以上、200MPa以上、220MPa以上、250MPa以上、280MPa以上、300MPa以上、330MPa以上、340MPa以上、350MPa以上、360MPa以上、370MPa以上、380MPa以上、390MPa以上、又は400MPa以上であってよい。中でも、曲げ弾性率が330MPa以上である場合には、基材層とのラミネート強度の観点から好ましい。この曲げ弾性率は、1000MPa以下、900MPa以下、800MPa以下、700MPa以下、600MPa以下、500MPa以下、又は450MPa以下であってよい。
【0026】
熱可塑性樹脂は、第一のポリエチレン系樹脂を含有していることが、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させた際のラミネート強度を良好にする観点から好ましい。ここで、本発明において、「第一のポリエチレン系樹脂」は、上記の(i)の条件を満足するポリエチレン系樹脂、すなわち密度が0.928g/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が330MPa以上であるポリエチレン系樹脂を意味している。
【0027】
第一のポリエチレン系樹脂の上記の密度及び曲げ弾性率によれば、炭酸カルシウムの粒子が樹脂中に閉じ込められやすくなり、それによって、表面に露出する炭酸カルシウムの粒子が少なくなり、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させた際のラミネート強度が良好になると考えられる。
【0028】
第一のポリエチレン系樹脂の含有率は、熱可塑性樹脂の質量に対して、25質量%以上、30質量%以上、33質量%以上、又は35質量%以上であることにより、上記の作用を得ることができる。この含有率は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。
【0029】
熱可塑性樹脂は、第二のポリエチレン系樹脂を更に含有しており、かつ第一及び第二のポリエチレン系樹脂で構成されていてよい。この場合、第二のポリエチレン系樹脂は、上記の密度及び曲げ弾性率を有していなくてもよく、例えば密度が0.928g/cm未満であり、かつ曲げ弾性率が330MPa未満であるポリエチレン系樹脂であってもよい。
【0030】
〈炭酸カルシウム〉
炭酸カルシウムとしては、商業的に入手可能なものを用いることができる。
【0031】
特に、炭酸カルシウムとして、D50が4.5μm以下である炭酸カルシウムを用いた場合には、ヒートシール強度を良好にすることができる。ここで、本明細書において、D50は、レーザー回折・散乱法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)を意味するものである。
【0032】
上記のD50を有する炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム含有フィルムの表面に露出しやすい大きさの粒子が少なく、それゆえ、表面に露出する粒子が少ないと考えられる。これによれば、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させた際のラミネート強度が良好になると考えられる。
【0033】
このD50は、4.3μm以下、4.1μm以下、4.0μm以下、3.8μm以下、3.5μm以下、3.3μm以下、3.1μm以下、3.0μm以下、2.8μm以下、2.5μm以下、2.3μm以下、2.0μm以下、又は1.8μm以下であってよく、また0.5μm以上、0.7μm以上、1.0μm以上、1.2μm以上、又は1.5μm以上であってよい。
【0034】
炭酸カルシウムの比表面積は、11,000m/g以上、11,500m/g以上、又は11,700m/g以上であってよく、また50,000m/g以下、45,000m/g以下、40,000m/g以下、35,000m/g以下、30,000m/g以下、28,000m/g以下、25,000m/g以下、又は23,000m/g以下であってよい。この比表面積は、空気透過法により測定することができる。
【0035】
〈相溶化剤〉
相溶化剤としては、「相溶化剤」として商業的に入手可能な相溶化剤を用いることができる。理論に拘束させることを望まないが、相溶化剤の存在によれば、熱可塑性樹脂中に炭酸カルシウムを良好に分散させ、その結果、炭酸カルシウム含有フィルムの表面に炭酸カルシウムが露出しにくくなることにより、ドライラミネート接着剤による良好な接着性が得られると考えられる。
【0036】
相溶化剤としては、熱可塑性樹脂及び金属化合物、特に金属酸化物のいずれとも親和性のある物質を用いることができる。
【0037】
特に、熱可塑性樹脂がポリエチレン系樹脂で構成されている場合には、相溶化剤は、ポリエチレン系樹脂を含有していることが、上記の作用を得る観点から好ましく、中でもポリエチレン系アイオノマーを用いることが更に好ましい。
【0038】
《炭酸カルシウム含有積層体》
図1(b)に示すように、炭酸カルシウム含有積層体20は、上記の炭酸カルシウム含有フィルム10、及び炭酸カルシウム含有フィルム10に積層されている他の層22を有していてよい。炭酸カルシウムの含有率は、炭酸カルシウム含有積層体の質量に対して、60質量%超80質量%以下である。
【0039】
この場合、他の層22は、熱可塑性樹脂及び炭酸カルシウムを含有している層であってよい。ここで、他の層22は、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるための層とは別個の層である。
【0040】
炭酸カルシウム含有積層体における炭酸カルシウムの含有率は、炭酸カルシウム含有積層体の質量に対して、60質量%超、65質量%以上、又は70質量%以上であることが、包装用積層体を得た際に炭酸カルシウムの含有率を多くし、それによって、樹脂の含有率を低減する観点から好ましい。この含有率は、80質量%以下、75質量%以下、又は73質量%以下であってよい。
【0041】
他の層の熱可塑性樹脂及び炭酸カルシウムの種類及び含有率は、炭酸カルシウム含有フィルムに関する記載を参照することができ、かつ炭酸カルシウム含有フィルムのこれらと同一であってもよく、又は異なっていてもよい。
【0042】
他の層の厚さは、特に限定されず、炭酸カルシウム含有フィルムに関する記載を参照できるが、炭酸カルシウム含有フィルムの厚さの100%以上、150%以上、200%以上、250%以上、300%以上、350%以上、又は380%以上であることが、包装用積層体を得た際に炭酸カルシウムの含有率を多くし、それによって、樹脂の含有率を低減する観点から好ましい。
【0043】
《シーラント積層体》
一態様においては、本発明のシーラント積層体30は、上記の炭酸カルシウム含有フィルム10、及び炭酸カルシウム含有フィルム10に融着されているシーラント層32を有する。
【0044】
別の態様においては、本発明のシーラント積層体30は、炭酸カルシウム含有積層体20、及び炭酸カルシウム含有積層体20の他の層22に融着されているシーラント層32を有する。
【0045】
シーラント積層体は、炭酸カルシウム含有フィルムに関して挙げた方法により製造することができる。特に、多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、炭酸カルシウム含有フィルムと一体として製造することができる。
【0046】
特に、シーラント積層体は、多層インフレーション法により製造した場合、すなわちシーラント積層体がインフレーションフィルムである場合には、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させた際の良好なラミネート強度を得ることができる。
【0047】
〈シーラント層〉
シーラント層は、シーラント樹脂を含有している。シーラント層は、包装袋とした際に、内容物側に位置する層となることができる。
【0048】
シーラント樹脂としては、炭酸カルシウム含有フィルムに関して挙げた熱可塑性樹脂を用いることができ、特に、シーラント樹脂は、この熱可塑性樹脂と同種の樹脂であってもよく、又は異種の樹脂であってもよい。例えば、シーラント樹脂及びこの熱可塑性樹脂は、いずれもポリエチレン系樹脂であってよい。
【0049】
シーラント層における炭酸カルシウムの含有率は、炭酸カルシウム含有フィルムにおける炭酸カルシウムの含有率よりも低く、特に炭酸カルシウム含有フィルムにおける炭酸カルシウムの含有率の1/5以下、1/10以下、1/15以下、1/20以下、1/30以下、1/40以下、若しくは1/50以下であるか、又は0質量%であることが、ヒートシール強度を得る観点から好ましい。
【0050】
シーラント層の厚さは、5μm以上、7μm以上、又は9μm以上であることが、製袋適性の観点から好ましい。この厚さは、20μm以下、17μm以下、15μm以下、又は12μm以下であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。
【0051】
シーラント層の厚さは、シーラント積層体全体の厚さに対して、5%以上、7%以上、又は10%以上であってよく、また25%以下、22%以下、20%以下、15%以下、又は13%以下であってよい。
【0052】
《包装用積層体》
図3(a)及び(b)に示すように、本発明の包装用積層体40は、上記のシーラント積層体30、ドライラミネート接着剤層42、及び基材層44を有し、
前記基材層44が、前記炭酸カルシウム含有フィルム10の前記シーラント層32と反対側に、前記ドライラミネート接着剤層42を介して前記炭酸カルシウム含有フィルム10に接着されており、かつ
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装用積層体40の質量に対して、50質量%超である。
【0053】
包装用積層体における炭酸カルシウムの含有率は、包装用積層体の質量に対して、50質量%超、55質量%以上、又は57質量%以上であることが、包装用積層体を得た際に炭酸カルシウムの含有率を多くし、それによって、樹脂の含有率を低減する観点から好ましい。この含有率は、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0054】
〈ドライラミネート接着剤層〉
ドライラミネート接着剤層としては、例えば2液硬化型のドライラミネート接着剤を用いることができる。
【0055】
〈基材層〉
基材層は、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されていてよい。基材層は、単層であってもよく、又は積層体であってもよい。
【0056】
ビニル系樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0057】
ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0058】
ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0059】
ポリプロピレン系樹脂としては、シーラント積層体の炭酸カルシウム含有フィルムに関して言及する樹脂を用いることができる。
【0060】
基材層の厚さは、7μm以上、又は10μm以上であることが、包装用積層体の機械的強度の観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることが、包装用積層体全体としての炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。
【0061】
基材層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0062】
なお、基材層は、予め成形されたフィルムから作製されることが好ましい。基材層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0063】
〈他の層〉
本発明の包装用積層体は、随意の他の層を有していてよい。他の層としては、バリア層等を用いることができる。基材層と他の層との間には、接着層、及びアンカーコート層等が存在していてもよい。
【0064】
上記の接着層としては、例えばドライラミネート接着剤、ホットラミネート接着剤等を用いることができる。
【0065】
バリア層としては、外部からの水分や有機ガス及び無機ガスがガス吸収層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかるバリア層としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等の単体金属箔層、ステンレス箔等の合金箔層、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。
【0066】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、包装用積層体全体の厚さを薄くする観点、及び包装用積層体全体としての樹脂の含有率を低減させる観点から好ましい。
【0067】
バリア層として金属箔層、バリア性樹脂層を用いる場合、バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、包装用積層体全体の厚さを薄くする観点から好ましい。
【実施例0068】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0069】
《包装用積層体の作製》
〈比較例1〉
インフレーション成形機を用い、共押出インフレーション法により、厚さ10μmの第一の層、厚さ40μmの第二の層、及び厚さ10μmのシーラント層を有する、2種3層のシーラント積層体を得た。第一の層は、本発明の炭酸カルシウム含有フィルムに相当し、及び第二の層は、他の層に相当する。
【0070】
第一及び第二の層としては、80質量%の炭酸カルシウムA(D50:5.2μm、比表面積12,000)及び20質量%のポリエチレンを含有している、90質量部のマスターバッチ、及び10質量部の直鎖状低密度ポリエチレン(PE1、密度0.925g/cm、引張破壊応力20N、曲げ弾性率320MPa)を混練した樹脂組成物を用いた。シーラント層としては、このPE1を単独で用いた。
【0071】
次いで、基材層としての15μmのナイロンフィルムと、得られたシーラント積層体の第一の層とをドライラミネートにより積層させて、実施例1の包装用積層体を得た。ドライラミネートにおいては、ウレタン系二液型ドライラミネート接着剤を用いた。
【0072】
〈実施例1~5〉
第一及び第二の層、並びにシーラント層を、表1に示す構成に変更したことを除き、比較例1と同様にして、実施例1~5の包装用積層体を得た。なお、表1に示す「相溶MB」に含有されている相溶化剤は、金属イオンが亜鉛からなるポリエチレン系アイオノマーである。
【0073】
得られた実施例及び比較例の全てに関し、シーラント積層体(基材層無し)及び包装用積層体(基材層あり)における炭酸カルシウムの含有率は、それぞれ67質量%及び58質量%であった。
【0074】
《ラミネート強度の評価》
各包装用積層体の基材層と第一の層とを、JIS K6854-3:1999に準拠して、幅15mm、チャック間距離50mm、引張速度300mm/minの条件でT形剥離(90度剥離)することにより、これらの層間のラミネート強度を測定した。同様の測定を5回行い、平均値をラミネート強度とした。
【0075】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から、ドライラミネート接着剤を用いて基材を積層させるための面が、下記(i)~(iii)の少なくとも1つを満たす層で構成されている、炭酸カルシウム含有フィルムを用いた実施例1~5の包装用積層体は、良好なラミネート強度を有することが理解できよう:
(i)前記熱可塑性樹脂が、密度が0.928g/cm以上、かつ/又は曲げ弾性率が330MPa以上である第一のポリエチレン系樹脂を、前記熱可塑性樹脂の質量に対して25質量%以上含むこと、
(ii)相溶化剤を更に含有していること、及び
(iii)前記炭酸カルシウムのレーザー回折法により測定したD50が、4.5μm以下であること。
【符号の説明】
【0078】
10 炭酸カルシウム含有フィルム
20 炭酸カルシウム含有積層体
22 他の層
30 シーラント積層体
32 シーラント層
40 包装用積層体
42 ドライラミネート接着剤層
44 基材層
図1
図2
図3