IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-管理システム及び管理方法 図1
  • 特開-管理システム及び管理方法 図2
  • 特開-管理システム及び管理方法 図3
  • 特開-管理システム及び管理方法 図4
  • 特開-管理システム及び管理方法 図5
  • 特開-管理システム及び管理方法 図6
  • 特開-管理システム及び管理方法 図7
  • 特開-管理システム及び管理方法 図8
  • 特開-管理システム及び管理方法 図9
  • 特開-管理システム及び管理方法 図10
  • 特開-管理システム及び管理方法 図11
  • 特開-管理システム及び管理方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012520
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】管理システム及び管理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115404
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】牧野 良保
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA56
3C100AA58
3C100AA62
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB27
(57)【要約】
【課題】加工機械の状態に関する情報を取得する。
【解決手段】管理システム(100)は、加工設備を管理するシステムであり、製品(20)に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機と、異物に関する情報を処理可能な管理装置(40)と、を備える。管理装置は、異物検出機から異物に関する情報を取得し、異物に関する情報に基づいて、加工機械の状態に関する情報を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工設備を管理する管理システムであって、
前記加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機と、
前記異物検出機によって検出された前記異物に関する情報を処理可能なプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
前記異物検出機から前記異物に関する情報を取得し、
前記異物に関する情報に基づいて、前記加工機械の状態に関する情報を取得する、
管理システム。
【請求項2】
前記加工機械の状態に関する情報は、複数の加工機械の中から対象となる加工機械の特定情報である、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記加工機械の状態に関する情報は、前記加工機械のメンテナンス時期の予測情報である、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項4】
前記異物検出機は、磁力線を利用して前記異物を検出する装置であり、
前記プロセッサは、
前記異物に関する情報に基づいて、前記異物の形状を推測し、
前記異物の形状を、予め記憶された前記加工機械を構成する部品のデータに照らし合わせて前記複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定する、
請求項2に記載の管理システム。
【請求項5】
前記異物検出機は、磁力線を利用して前記異物を検出する第1異物検出機であり、
X線を利用して前記異物を検出する第2異物検出機を更に備え、
前記プロセッサは、
前記第1異物検出機及び前記第2異物検出機から前記異物に関する情報を取得し、
前記異物に関する情報に基づいて、前記異物の形状を推測し、
前記異物の形状を、予め記憶された前記加工機械を構成する部品のデータに照らし合わせて前記複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定する、
請求項2に記載の管理システム。
【請求項6】
前記異物に関する情報は、前記異物の大きさが所定の大きさ以下の粉体であることを示す情報であり、
前記プロセッサは、
時間経過に伴って増加する前記粉体の検出量に基づいて前記加工機械のメンテナンス時期を予測する、
請求項3に記載の管理システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
取得した前記加工機械の状態に関する情報をディスプレイに表示する処理を行う、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項8】
前記異物検出機の検出対象である前記製品の包装体には、前記異物検出機によって異物検査処理が行われた日時と場所を示す情報、異物検査結果を示す情報、及び前記製品を検査した事業者を示す情報を格納した2次元コードが付与される、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項9】
前記異物は、金属異物である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項10】
加工設備を管理する管理方法であって、
前記加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機から前記異物に関する情報を取得する工程と、
前記異物に関する情報に基づいて、前記加工機械の状態に関する情報を取得する工程と、
を含む管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システム及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品などを加工したり製造したりする加工設備において、生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する技術(異物検出機)として、金属検出機やX線異物検出機が知られている。例えば、特許文献1には、製品に混入した強磁性体の異物を検出するための金属検出機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5779273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの異物検出機で異物が検出されると、異物が混入した製品は製造ラインから除外される。そして、異物の混入の頻度や異物の種類によっては製造ラインを止めて製造ラインを点検する必要がある。ここで、加工設備の稼働状況、加工設備の異常、加工設備の異常箇所の特定、又は加工設備が複数の加工機械から構成される場合には異常が生じた加工機械の特定などの加工機械の状態に関する情報を取得するためには、センサや撮像装置などの検出手段を複数設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、加工設備に複数の検出手段を設けると、コストが増加する要因になり、更に管理が煩雑になり加工設備の作業員の負担も増加する。そこで、すでに加工設備に設置されている異物検出機を利用することによって加工機械の状態に関する情報を取得することができれば、複数の検出手段を設ける必要がなくなり、これらの問題を解決可能であることに発明者らは着目した。特許文献1にはこの点については何ら言及されていない。
【0006】
本開示の一態様は、加工機械の状態に関する情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る管理システムは、加工設備を管理する管理システムである。この管理システムは、異物検出機と、プロセッサと、を備える。異物検出機は、加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する。プロセッサは、異物検出機によって検出された異物に関する情報を処理する。そして、プロセッサは、異物検出機から異物に関する情報を取得し、この異物に関する情報に基づいて、加工機械の状態に関する情報を取得する。
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る管理方法は、加工設備を管理する管理方法である。この管理方法は、以下の2つの工程を含む。
(1)異物に関する情報を取得する工程。この工程は、加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機から取得する。
(2)加工機械の状態に関する情報を取得する工程。この工程は、異物に関する情報に基づいて取得する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、加工機械の状態に関する情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態1に係る管理システムの概略構成図である。
図2】本開示の実施形態1に係る管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】部品データベースの一例を説明する図である。
図4】本開示の実施形態1に係る管理装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図5】本開示の実施形態1に係る管理装置の一動作例を説明するフローチャートである。
図6】本開示の実施形態1の変形例に係るハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】X線透過像データと磁気変化量データとの関係を示すグラフである。
図8】本開示の実施形態1の変形例に係る管理装置の一動作例を説明するフローチャートである。
図9】本開示の実施形態2に係る管理装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図10】検査データと時間の関係を示す時系列グラフである。
図11】本開示の実施形態2に係る管理装置の一動作例を説明するフローチャートである。
図12】2次元コードが付与された製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1に係る管理システム100について図面を参照しながら詳細に説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0012】
(管理システム100の構成例)
図1は、管理システム100の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、管理システム100は、金属検出機10と、管理装置40とを含む。
【0013】
金属検出機10及び管理装置40が設置される場所は、特に限定されないが、例えば金属検出機10及び管理装置40は、食品を加工するための食品加工設備に設置される。以下では、金属検出機10及び管理装置40は、食品加工設備に設置されている場合を例に挙げて説明するが、金属検出機10及び管理装置40は飲料、医薬品、化粧品、日用品、又は衣料などを加工したり製造したりする設備に設置されてもよい。
【0014】
金属検出機10は、食品加工設備で生産された製品20に金属異物30が混入していないか検査するための装置である。金属検出機10は、外部から視認することが難しい製品20の内部に混入した金属異物30を検出する。本実施形態では、金属異物30の検出方式の一例として、いわゆる磁気バイアス型磁力線方式を採用する。「磁気バイアス型磁力線方式」について説明すると、金属検出機10には、上下方向において生産ラインを挟むようにマグネット(不図示)が設けられている。金属異物30がマグネット間を通過すると、マグネットから発せられる磁力線に変化が生ずる。磁気バイアス型磁力線方式ではこの磁力線の変化に基づいて金属異物30を検出する。なお、金属異物30は、金属元素のみで構成される異物であってもよく、金属元素と非金属元素とで構成される異物であってもよい。また、金属元素は、単一の元素であってもよく、複数の元素(いわゆる合金)であってもよい。
【0015】
磁気バイアス型磁力線方式によれば、従来のいわゆるサーチコイル方式と比較して、紙、ビニール、プラスチック包装だけでなく、レトルト食品などの包装にアルミニウムが蒸着されている製品、カレーのルー、醤油などの塩分濃度が高い液体食品などにおいても高精度な金属異物検出が実現する。
【0016】
製品20に混入する可能性がある金属異物30としては、加工機械の部品が挙げられる。加工機械の部品の一例として、金属製のボルトやナットやネジ、磁性粉末が混入された樹脂製の結束バンドなどが挙げられる。一般に食品加工は多数の工程から成り立っており、工程ごとに専用の加工機械が用いられる。
【0017】
加工機械の種類としては、材料をスライスしたりカットしたりするカット機械、材料を攪拌する攪拌機械、飲料をパウチ袋などに充填する充填機械、加工した製品を包装する包装機械などが挙げられる。
【0018】
検査対象物である製品20の一例として、包装体や容器などに充填されている食品、飲料などが挙げられる。
【0019】
食品加工設備の稼働中において、加工機械からサビや組み付けの緩み、金属疲労などによってボルト、ナット、ネジなどが脱落する場合がある。このようにして脱落した金属が製品20に混入した場合、金属異物30として金属検出機10によって検出されることになる。
【0020】
金属検出機10によって金属異物30が検出されたとき、その後の一般的な処理としては、例えば、次のような処理が考えられる。
【0021】
まず、金属異物30が検出された旨が食品加工設備で従事する作業者に通知される。通知を受けた作業者は、例えば、金属異物30が混入した製品20を生産ラインから取り除くとともに、全ての加工機械を停止させる。その後、作業者は、全ての加工機械の点検を開始する。
【0022】
ここで、加工機械の点検を開始する前に、製品20に混入した金属異物30が、どの加工機械から脱落したものか知ることができれば、加工機械の点検に要する時間及びコストを大幅に削減することが可能となり、作業者の負担は軽減する。作業者は、対象となる加工機械だけを点検して修理すれば再度加工機械を稼働させることができ、安全に生産活動を再開できる。
【0023】
そこで、本実施形態では、製品20に混入した金属異物30が、どの加工機械から脱落したかを推測して特定し、その結果を作業者に通知する構成とした。これにより、上述したように加工機械の点検に要する時間及びコストを大幅に削減することが可能となり、作業者の負担は軽減する。以下、特定方法及び通知方法の一例について順を追って説明する。なお、以下では、「推測して特定する」を単に「特定する」と称する場合がある。
【0024】
金属検出機10は、生産ラインに乗って流れてくる製品20を検査した際、金属異物30の検出の有無に関わらず、検査に関するデータを電気信号に変換し、所定の通信方式を用いて管理装置40に送信する。金属異物30が検出された場合は、金属検出機10は、磁力線の変化などの異物検出に関するデータを電気信号に変換して、管理装置40に送信することになる。「磁力線の変化などの異物検出に関するデータ」の一例は、金属異物30によって変化する磁界と相対変化する電気信号に基づく電圧幅や時間幅による電圧波形である。通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、通信方式は任意でよい。本実施形態では、金属検出機10と管理装置40との通信は、Wi-Fi(登録商標)を用いて行われるものとして説明する。
【0025】
(管理装置40のハードウェア構成)
次に、図2を参照して管理装置40のハードウェア構成について説明する。図2は、管理装置40のハードウェア構成を示すブロック図である。管理装置40は、例えば、汎用のコンピュータである。
【0026】
図2に示すように、管理装置40は、プロセッサ41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、記憶装置44、通信I/F(インターフェース)46、及びディスプレイ47を備える。各構成は、バス45を介して相互に通信可能に接続されている。
【0027】
プロセッサ41は、各種プログラムを実行する演算ユニットであり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ41は、ROM42又は記憶装置44からプログラムを読み出し、RAM43を作業領域として各種プログラムを実行する。
【0028】
ROM42は、各種プログラム及び各種データを記憶する。RAM43は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。なお、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ROM42及びRAM43に限定されず、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable ROM)などが含まれてもよい。
【0029】
記憶装置44は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリなどにより構成され、各種プログラム及び各種データを記憶する。記憶装置44には、部品データベース441が記憶されている。部品データベース441とは、食品加工設備に設置される加工機械を構成する部品の情報が格納されたデータベースである。「加工機械を構成する部品」として、例えば、金属製の部品(ボルトやナットやネジなど)や、金属を含む非金属製の部品(磁性粉末が混入された樹脂製の結束バンドなど)などが挙げられる。
【0030】
ここで、図3を参照して、部品データベース441の一例について説明する。図3に示すように、部品データベース441には、各部品の名称、各部品の形状、及び各部品が取り付けられている加工機械が記憶されている。例えば、攪拌機械にはボルトB1、ナットN1、及びネジS1が取り付けられている。充填機械には、ボルトB2、ナットN2、及びネジS2が取り付けられている。包装機械には、ボルトB3、ナットN3、及びネジS3が取り付けられている。各部品の形状は、例えばJIS規格に則った大きさを示すものであり、φ(直径)、長さ、ピッチなどで示される。なお、ボルトB1~B3、ナットN1~N3、及びネジS1~S3の外形も部品データベース441に記憶されていてもよい。本実施形態において「部品の形状」は、「部品の大きさ」及び「部品の外形」の両方を意味する。
【0031】
図2に戻り、ディスプレイ47は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどで構成され、各種情報を表示する。
【0032】
通信I/F46は、ネットワークアダプタなどのハードウェア、通信用ソフトウェア、及びこれらの組み合わせとして実装され、金属検出機10と通信を行う。
【0033】
(管理装置40のプロセッサ41の機能)
次に、図4を参照して、管理装置40のプロセッサ41の機能について説明する。図4は、管理装置40のプロセッサ41の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の管理装置40では、プロセッサ41が、特定のプログラムを実行することにより、検査データ取得部411、加工機械データ取得部412、及び出力部413として機能する。
【0034】
検査データ取得部411は、通信I/F46を介して金属検出機10から検査に関するデータを取得し、取得したデータを記憶装置44に記憶する。加工機械データ取得部412は、検査データ取得部411によって取得されたデータに基づいて、加工機械の状態に関する情報を取得する。加工機械の状態に関する情報の一例として、金属異物30がどの加工機械から脱落したかが特定された情報が含まれる。なお、加工機械データ取得部412は、検査データ取得部411によって取得されたデータに基づいて、金属異物30がどの加工機械から脱落したかを特定する機能を有する、と言い換えられてもよい。出力部413は、加工機械データ取得部412によって取得された加工機械に関する情報をディスプレイ47に表示して食品加工設備の作業者に通知する。
【0035】
次に、図5のフローチャートを参照して、管理装置40の一動作例について説明する。図5に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0036】
ステップS101において、管理装置40のプロセッサ41は、通信I/F46を介して金属検出機10から検査に関するデータを取得する。検査に関するデータには、例えば金属異物30が検出されたことを示すデータや異物検出に関するデータなどが含まれる。
【0037】
ステップS101の処理で取得されたデータに金属異物30が検出されたことを示すデータが含まれていた場合(ステップS102でYES)、処理はステップS103に進む。一方で、ステップS101の処理で取得されたデータに金属異物30が検出されたことを示すデータが含まれていない場合(ステップS102でNO)、一連の処理は終了する。
【0038】
ステップS103において、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS101の処理で取得された異物検出に関するデータに基づいて金属異物30の形状を推測する。例えば、上述したように、異物検出に関するデータが、金属異物30によって変化する磁界と相対変化する電気信号に基づく電圧幅や時間幅による電圧波形である場合、管理装置40のプロセッサ41は、このデータに基づいて金属異物30の形状を推測することができる。管理装置40のプロセッサ41は、推測した金属異物30の形状に関するデータと部品データベース441に記憶されているデータとを照らし合わせ、検出された金属異物30と一致又はほぼ一致する部品を推測する。ここで、例えば、ステップS101の処理で取得された金属異物30の形状と、図3に示したボルトB3の形状が一致又はほぼ一致したと仮定する。この場合、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した金属異物30はボルトB3であると特定することができる(ステップS104)。また、管理装置40のプロセッサ41は、部品データベース441を参照することにより、ボルトB3が取り付けられている加工機械は包装機械であると把握することができる。したがって、ステップS104の処理において、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した金属異物30はボルトB3であると特定し、かつ、そのボルトB3は包装機械から脱落したと特定することができる。
【0039】
処理はステップS105に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS104で特定された結果をディスプレイ47に表示して作業者に通知する。例えば、ディスプレイ47には、「検出された金属異物は、包装機械から脱落したボルトB3である可能性が高いです。」と表示される。ディスプレイ47を確認した作業者は、製品20に混入した金属異物30がどの加工機械から脱落したかを知ることができる。
【0040】
なお、図5で説明した処理の流れは一例であり、主旨を逸脱しない範囲内においてステップを削除したり、新たなステップを追加したり、又は、ステップの順序を入れ替えたりしてもよい。
【0041】
(変形例)
次に、図6を参照して、実施形態1の変形例について説明する。変形例では、図6に示すように、管理装置40は、2つの金属検出機10,11から検査に関するデータを取得する。金属検出機10は、実施形態1と同じである。金属検出機11は、X線方式で金属異物30を検出する機械である。X線方式は、電磁波の一種であるX線を製品20に照射して透過量の違いで金属異物30を検出する方式である。透過量は厚みや密度に左右され、厚みがあり密度が大きいほどX線を遮る。金属は密度が高く、被検査品よりも色が濃く映るため異物として検出することができる。
【0042】
変形例では、金属異物30の検出方式として、磁気バイアス型磁力線方式とX線方式の2つの方式を併用する。2つの方式を併用することにより、磁気バイアス型磁力線方式のみを用いる場合と比較して、金属異物30の形状を精度よく推測することが可能となる。
【0043】
(異物の推定方法の一例)
磁気バイアス型磁力線方式及びX線方式によって検出された異物がどのような異物であるのか推定する方法の一例について説明する。変形例では、異物サンプルを使った実験やシミュレーションなどを通じて得られたX線透過像データ及び磁気変化量データに基づいて、異物がどのような異物であるのか、異物の種類を推定するための閾値を設定する。
【0044】
閾値について、図7を参照して説明する。図7は、X線透過像データと磁気変化量データとの関係を示すグラフである。図7の縦軸は、X線方式によるX線透過像データを示し、横軸は磁気バイアス型磁力線方式による磁気変化量データを示す。なお、図7において、異物には金属異物の他に樹脂異物も含まれる。すなわち、本実施形態において、検出対象となる異物は、金属異物に限定されず、樹脂異物が含まれてもよい。
【0045】
X線透過像データには、一例として、X線透過量や透過サンプル面積などが含まれる。磁気変化量データには、一例として、電圧波形の振幅、電圧の時間積分、単位時間当たりの電圧変化量などが含まれる。予め異物サンプルを使った実験やシミュレーションなどを通じて得られたX線透過像データ及び磁気変化量データから、いわゆるMT法(Maharanobis Taguchi)を用いてマハラノビス距離を設定する。変形例では、一例として、マハラノビス距離を異物がどのような異物であるのか、異物の種類を推定するための閾値として用いる。MT法によって、図7に示すように、円で示される閾値A~Dが設定される。以下、特に断らない限り、閾値A~Dを「閾値円A~D」と称する。
【0046】
磁気バイアス型磁力線方式及びX線方式によって検出されたデータが、閾値円A~Dの内、どの円内に存在するか否かに応じて異物の種類が推定される。具体的には、検査に関するデータが、閾値円A内に存在する場合、異物は樹脂などの有機系異物であると推定される。また、検査に関するデータが、閾値円B内に存在する場合、異物はボルト、ナット、ネジなどの金属異物であると推定される。また、検査に関するデータが、閾値円C内に存在する場合、異物は針金、線上の切粉などの金属異物であると推定される。また、検査に関するデータが、閾値円D内に存在する場合、異物は検出されていないと推定される。なお、これらの閾値円A~Dから遠く離れた位置に検査に関するデータが存在する場合、管理装置40のプロセッサ41は、食品加工設備に突発的な異常が発生したと判定し、ディスプレイ47にその旨を表示してもよい。
【0047】
次に、図8のフローチャートを参照して、変形例における管理装置40の一動作例について説明する。図8に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。また、図7で説明した閾値円A~Dは予め設定されているものとする。
【0048】
ステップS201において、管理装置40のプロセッサ41は、通信I/F46を介して金属検出機10及び金属検出機11から検査に関するデータを取得する。
【0049】
ステップS202において、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS201の処理で取得されたデータが図7のグラフ上のどこに存在するかを演算する。
【0050】
ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円A~Dから遠く離れた位置に存在する場合(ステップS203でYES)、管理装置40のプロセッサ41は、食品加工設備に突発的な異常が発生したと判定し、ディスプレイ47にその旨を表示して、作業者に通知する(ステップS215)。
【0051】
ステップS203の結果がNOである場合、処理はステップS204に進む。ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円A内に存在する場合(ステップS204でYES)、処理はステップS205に進み、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した異物は樹脂などの有機系異物であると推定する。
【0052】
処理はステップS206に進み、管理装置40のプロセッサ41は、異物の形状に関するデータと部品データベース441に記憶されているデータとを照らし合わせる。
【0053】
処理はステップS207に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS206の比較結果に基づいて製品20に混入した異物がどの加工機械から脱落したかを推測し、特定する。
【0054】
処理はステップS215に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS207で特定された結果をディスプレイ47に表示して作業者に通知する。
【0055】
ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円A内に存在しない場合(ステップS204でNO)、処理はステップS208に進む。ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円B内に存在する場合(ステップS208でYES)、処理はステップS209に進み、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した異物はボルト、ナット、ネジなどの金属異物30であると推定する。
【0056】
処理はステップS210に進み、管理装置40のプロセッサ41は、金属異物30の形状に関するデータと部品データベース441に記憶されているデータとを照らし合わせる。
【0057】
処理はステップS211に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS210の比較結果に基づいて製品20に混入した金属異物30がどの加工機械から脱落したかを推測し、特定する。
【0058】
処理はステップS215に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS211でされた結果をディスプレイ47に表示して作業者に通知する。
【0059】
ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円B内に存在しない場合(ステップS208でNO)、処理はステップS212に進む。ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円C内に存在する場合(ステップS212でYES)、処理はステップS213に進み、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した異物は針金、線上の切粉、微細な金属粉などの金属異物であると推定する。
【0060】
処理はステップS214に進み、管理装置40のプロセッサ41は、ステップS213の推定結果に基づいて予測処理を行う。この予測処理の詳細については後述の実施形態2で説明する。
【0061】
ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円C内に存在しない場合(ステップS212でNO)、すなわち、ステップS201の処理で取得されたデータが閾値円D内に存在する場合、管理装置40のプロセッサ41は、異物は検出されていないと推定し、一連の処理は終了する。
【0062】
なお、図8で説明した処理の流れは一例であり、主旨を逸脱しない範囲内においてステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0063】
(作用効果)
以上説明したように、実施形態1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0064】
管理システム100は、加工設備を管理するシステムであり、加工設備における加工機械によって生産された製品20に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機と、異物検出機によって検出された異物に関する情報を処理可能な管理装置40のプロセッサ41と、を備える。
【0065】
管理装置40のプロセッサ41は、異物検出機から異物に関する情報を取得し、異物に関する情報に基づいて、加工機械の状態に関する情報を取得する。ここでいう「異物」には、少なくとも金属異物30及び樹脂異物が含まれる。異物検出機の一例は、金属検出機10,11である。
【0066】
上述したように、加工設備が複数の加工機械から構成される場合には異常が生じた加工機械の特定などの加工機械の状態に関する情報を取得するためには、センサや撮像装置などの検出手段を複数設ける必要があるが、コストの増加や作業員の負担増加といった問題がある。発明者らは、すでに加工設備に設置されている異物検出機を利用することによって加工機械の状態に関する情報を取得することに着目した。上記構成によれば、複数の検出手段を設けることなく、加工機械の状態に関する情報を取得することができるため、コスト削減に寄与し、更に作業員の負担を軽減することが可能となる。
【0067】
加工機械の状態に関する情報は、複数の加工機械の中から対象となる加工機械の特定情報であってもよい。ここでいう「対象となる加工機械」とは、異物が脱落した加工機械を指す。また、異物は、金属異物30であってもよい。
【0068】
製品20に金属異物30が混入していることが検出されたとき、作業者は、全ての加工機械を停止させ、全ての加工機械の点検を開始する。ここでいう点検とは、金属異物30がどの加工機械から脱落したものか探す作業である。点検は、食品加工設備を熟知したベテランの作業者によって行われると考えられるが、現場の人手不足や日々の生産に追われる現状において、金属異物30が混入した製品20の市場流出は防止できたとしても、混入した要因そのものの対応に遅れが発生してしまうおそれがある。
【0069】
上記構成によれば、管理装置40のプロセッサ41は、製品20に混入した金属異物30がどの加工機械から脱落したかを特定することができる。管理装置40のプロセッサ41は、特定された結果をディスプレイ47に表示して作業者に通知してもよい。ディスプレイ47を確認した作業者は、製品20に混入した金属異物30がどの加工機械から脱落したかを知ることができる。これにより、加工機械に知見の無い作業者であっても即座に混入の要因となった加工機械を特定することができる。これにより、加工機械の点検に要する時間及びコストを大幅に削減することが可能となり、作業者の負担は軽減する。作業者は、対象となる加工機械だけを点検して修理すれば再度加工機械を稼働させることができ、早期かつ安全に生産活動を再開できる。
【0070】
また、異物検出機は、磁力線を利用して異物を検出する装置であってもよい。管理装置40のプロセッサ41は、異物に関する情報に基づいて、異物の形状を推測し、異物の形状を予め記憶された部品のデータに照らし合わせて複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定してもよい。
【0071】
上記構成によれば、多数の加工機械の中から異物が脱落した加工機械を特定することが可能となる。
【0072】
また、金属異物30を検出する方式として、磁気バイアス型磁力線方式を用いることにより、紙、ビニール、プラスチック包装だけでなく、アルミ包装内の金属異物30を検出することが可能となる。磁気バイアス型磁力線方式によればアルミ包装などの導電性包装材表面に発生する渦電流の強弱によって、包装の溶着具合などの包装異常を検出することも可能である。これにより、対象となる加工機械の特定の他に、導電性包装材の異常検出結果に基づいて包装機械の異常を検出することも可能となる。
【0073】
また、金属検出機10は磁力線を利用して異物を検出する第1金属検出機であってもよく、管理システム100はX線を利用して異物を検出する第2金属検出機を更に備えてもよい。管理装置40のプロセッサ41は、第1金属検出機及び第2金属検出機から異物に関する情報を取得し、異物に関する情報に基づいて、異物の形状を推測し、異物の形状を予め記憶された部品のデータに照らし合わせて複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定してもよい。なお、第2金属検出機は金属検出機11に対応してもよい。
【0074】
上記構成によれば、管理装置40のプロセッサ41は、磁気バイアス型磁力線方式及びX線方式によって検出された情報を用いて、異物の形状を推測する。2つの方式を併用することによって、どちらか一方の方式を用いる場合と比較して、異物の形状の推測精度が向上する。管理装置40のプロセッサ41は、推測された異物の形状と、事前に部品データベース441に記憶された加工機械の部品情報とを照らし合わせることにより、製品20に混入した異物がどの加工機械から脱落したかを特定する。異物の形状の推測精度が向上しているため、加工機械の特定精度も向上する。
【0075】
〔実施形態2〕
次に、図9~11を参照して本開示の実施形態2について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
図9は、実施形態2に係る管理装置40のプロセッサ41の機能ブロック図である。実施形態1と異なるのは、実施形態2の管理装置40では、プロセッサ41が、特定のプログラムを実行することにより、予測部414として更に機能することである。
【0077】
予測部414は、例えば、X線方式又は磁気バイアス型磁力線方式による検査データに基づいて、加工機械に設けられる金属製のブレードの交換時期を予測する。食品の混錬や撹拌に用いられるブレードは、材料が投入される金属製の容器との摩擦やブレードそのものの経年劣化などにより摩耗する。この摩耗によって生ずる微細な金属粉である粉体が製品20に混入する場合がある。ブレードの使用期間が長くなるほど摩耗によって生ずる粉体が増えていき、交換が必要な時期が来る。予測部414は、このような交換時期を予測する。ブレードの交換時期の予測方法の一例について図10を参照して説明する。粉体は、一例として、所定の大きさ以下の微細な金属粉とする。所定の大きさについては、例えば実験やシミュレーションなどを通じて算出される。なお、粉体は、所定の大きさ以下の微細な樹脂粉であってもよい。
【0078】
(交換時期の予測方法の一例)
図10は、X線方式又は磁気バイアス型磁力線方式による検査データと時間の関係を示す時系列グラフである。図10の縦軸はX線方式又は磁気バイアス型磁力線方式による検査データを示し、横軸は時間を示す。縦軸をX線方式による検査データとする場合、その検査データの一例は、X線透過像データである。縦軸を磁気バイアス型磁力線方式による検査データとする場合、その検査データの一例は、磁気変化量データである。
【0079】
図10に示すように、ブレードの使用時間が経過するにしたがい、検査データに変化が生ずる。図10から明らかなように、検査データが増加傾向にあることがわかる。この変化は、ブレードと容器との摩擦やブレードの経年劣化により、ブレードの摩耗によって生ずる微細な金属粉が多くなることに起因する。管理装置40のプロセッサ41は、プロットされた検査データについて、例えば単回帰分析を用いて直線71で近似することにより、検査データが異常値を示す閾値70に到達するタイミングTをブレードを交換する時期として予測することができる。なお、直線71の演算には例えば最小二乗法が用いられてもよい。また、検査データの分析方法は、単回帰分析に限定されず、重回帰分析でもよく、機械学習でもよい。
【0080】
実施形態2に係る管理装置40の一動作例について、図11のフローチャートを参照して説明する。ここで、実施形態1の変形例で説明したように、図11のフローチャートは、図8のステップS214の処理に対応する。
【0081】
ステップS301において、管理装置40のプロセッサ41は、X線方式又は磁気バイアス型磁力線方式による検査データが増加傾向にあるか否かを判定する。検査データが増加傾向にある場合(ステップS301でYES)、処理はステップS302に進み、管理装置40のプロセッサ41は、例えば上述した単回帰分析を用いてブレードの交換時期を予測し、予測結果をディスプレイ47に表示して作業者に通知する。
【0082】
なお、交換時期予測の対象となる金属製の部品としてブレードを取り上げて説明したが、これに限定されず、摩耗が生じる金属製の部品であれば交換時期予測の対象となる。
【0083】
また、予測の対象として、ブレードの交換時期を予測したが、これに限定されない。例えば、予測の対象は、ブレードの点検時期であってもよい。つまり、予測の対象は、交換や点検などを含めたブレードのメンテナンス時期であってもよい。
【0084】
(作用効果)
以上説明したように、実施形態2によれば、以下の作用効果が得られる。
【0085】
管理装置40のプロセッサ41は、異物検出機から異物に関する情報を取得し、異物に関する情報に基づいて、加工機械のメンテナンス時期を予測してもよい。つまり、加工機械の状態に関する情報は、加工機械のメンテナンス時期の予測情報であってもよい。なお、「加工機械のメンテナンス時期」は、「加工機械を構成する部品のメンテナンス時期」と言い換えられてもよい。
【0086】
部品の一例は、上述した食品の混錬や撹拌に用いられる金属製のブレードである。このようなブレードは、食品が投入される金属製の容器との摩擦やブレードそのものの経年劣化により摩耗する。磨耗度合いの確認については、作業者の目視によって行われるケースが多く、したがって、保全業務に携わる作業員の確保や一定の在庫を確保するとった課題が挙げられる。上記構成によれば、ブレードのメンテナンス時期を予測し、予測結果を作業員に通知することにより、作業員の確認作業の負担を軽減したり、ブレードの在庫の数量を限定して管理したりすることが可能となる。
【0087】
異物に関する情報は、異物の大きさが所定の大きさ以下の粉体であることを示す情報であってもよい。管理装置40のプロセッサ41は、時間経過に伴って増加する粉体の検出量に基づいて加工機械のメンテナンス時期を予測してもよい。
【0088】
上記構成によれば、粉体混入の連続的な発生が判明した場合に、管理装置40のプロセッサ41は、要因となる加工機械を構成する部品のメンテナンス時期を予測し、予測結果を作業員に通知することができる。これにより、作業員は適切な時期に部品を交換したり、部品の在庫の数量を限定して管理したりすることができる。
【0089】
〔実施形態3〕
次に、図12を参照して本開示の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0090】
図12に示すように、製品20の包装体には2次元コード80が付与されてもよい。2次元コード80には、所定の情報が格納される。所定の情報の一例は、異物検出機によって異物検査処理が行われた日時と場所を示す情報、異物検査結果を示す情報、及び製品20を検査した事業者を示す情報である。
【0091】
製品20に2次元コード80を付与することにより、製品20がいつ、どこで、どの事業者によって検査されたか、検査結果はどうであったかを消費者は知ることができる。
【0092】
異物の混入は、加工機械の部品の破損又は脱落による混入だけではなく、製品20が小売りなどの市場へ出回った際に消費者側が故意に異物を混入する事例もある。このため、生産者側における異物検査データの収集及び管理だけでは不十分な場合がある。製品ごとに異物検査データを2次元コード80で付与することで市場での異物混入発生時に異物検査結果を即座に確認することが可能となり、食品生産時における安全性を確認することが可能となる。
【0093】
なお、2次元コード80の種類は、特に限定されないが、例えばQRコード(登録商標)が用いられてもよい。これにより、消費者はスマートフォンなどを用いて容易に情報を取得することができる。
【0094】
上述の実施形態1及び実施形態2において、管理装置40のプロセッサ41は、金属異物30に関する情報に基づいて対象となる加工機械を特定する、又は、金属異物30に関する情報に基づいて部品のメンテナンス時期を予測する、と説明した。これらの構成は、次のように言い換えられてもよい。すなわち、管理装置40のプロセッサ41は、金属異物30に関する情報に基づいて、加工機械の状態を推測する、と言い換えられてもよい。
【0095】
「加工機械の状態を推測すること」は、「対象となる加工機械を特定すること」及び「加工機械に設けられる部品のメンテナンス時期を予測すること」を含む。以下、この点について説明する。
【0096】
「対象となる加工機械を特定すること」に関し、上述の実施形態1において金属異物30の情報から特定する一例を説明した。この特定処理を行いながら、管理装置40のプロセッサ41のバックグラウンド処理では、例えば金属異物30の情報から加工機械の状態を判定することができる。加工機械の状態の具体例は、正常か異常かである。すなわち、管理装置40のプロセッサ41のバックグラウンド処理において、例えば、「攪拌機械:正常」、「充填機械:正常」、「包装機械:異常」といった判定処理を行うことができる。ここで、包装機械が異常と判定されているのは、上述したように、ボルトB3が包装機械から脱落していると特定されているからである。
【0097】
このように、「金属異物30が脱落した対象となる加工機械を特定すること、すなわち、金属異物30は包装機械から脱落したと特定すること」は、「加工機械の状態を推測すること、すなわち、包装機械は異常な状態であると推測すること」と、いえる。
【0098】
続いて、「加工機械に設けられる部品のメンテナンス時期を予測すること」に関し、上述の実施形態2において金属異物30の情報から予測する一例を説明した。部品のメンテナンス時期を予測するということは、換言すれば、部品の劣化がどの程度進んでいるか、あるいはこのまま使用を続けた場合に将来的に劣化がどこまで進むかを推測することである。また、部品は「加工機械の一部」であるから、「部品のメンテナンス時期を予測すること」は、「加工機械の状態の推測すること」と、いえる。
【0099】
〔ソフトウェアによる実現例〕
管理装置40としての機能は、管理装置40としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、管理装置40の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0100】
この場合、管理装置40は、プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。コンピュータがプログラムを実行することにより、各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0101】
プログラムは、一時的ではなく、コンピュータが読み取り可能な、1又は複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、管理装置40が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、プログラムは、有線又は無線の任意の伝送媒体を介して管理装置40に供給されてもよい。
【0102】
また、各制御ブロックの機能の一部又は全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0103】
また、各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは管理装置40で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータ又はクラウドサーバなど)で動作するものであってもよい。
【0104】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0105】
〔付記事項〕
また、本開示は下記のように表現する事もできる。
【0106】
本開示の態様1に係る管理システムは、加工設備を管理する管理システムであって、前記加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機と、前記異物検出機によって検出された前記異物に関する情報を処理可能なプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記異物検出機から前記異物に関する情報を取得し、前記異物に関する情報に基づいて、前記加工機械の状態に関する情報を取得する、構成である。
【0107】
本開示の態様2に係る管理システムは、上記の態様1において、前記加工機械の状態に関する情報は、複数の加工機械の中から対象となる加工機械の特定情報であってもよい。
【0108】
本開示の態様3に係る管理システムは、上記の態様1において、前記加工機械の状態に関する情報は、前記加工機械のメンテナンス時期の予測情報であってもよい。
【0109】
本開示の態様4に係る管理システムは、上記の態様2において、前記異物検出機は、磁力線を利用して前記異物を検出する装置であり、前記プロセッサは、前記異物に関する情報に基づいて、前記異物の形状を推測し、前記異物の形状を、予め記憶された前記加工機械を構成する部品のデータに照らし合わせて前記複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定する構成としてもよい。
【0110】
本開示の態様5に係る管理システムは、上記の態様2又は4において、前記異物検出機は、磁力線を利用して前記異物を検出する第1異物検出機であり、X線を利用して前記異物を検出する第2異物検出機を更に備え、前記プロセッサは、前記第1異物検出機及び前記第2異物検出機から前記異物に関する情報を取得し、前記異物に関する情報に基づいて、前記異物の形状を推測し、前記異物の形状を、予め記憶された前記加工機械を構成する部品のデータに照らし合わせて前記複数の加工機械の中から対象となる加工機械を特定する構成としてもよい。
【0111】
本開示の態様6に係る管理システムは、上記の態様3において、前記異物に関する情報は、前記異物の大きさが所定の大きさ以下の粉体であることを示す情報であり、前記プロセッサは、時間経過に伴って増加する前記粉体の検出量に基づいて前記加工機械のメンテナンス時期を予測する構成としてもよい。
【0112】
本開示の態様7に係る管理システムは、上記の態様1~6のいずれかにおいて、前記プロセッサは、取得した前記加工機械の状態に関する情報をディスプレイに表示する処理を行う構成としてもよい。
【0113】
本開示の態様8に係る管理システムは、上記の態様1~7のいずれかにおいて、前記異物検出機の検出対象である前記製品の包装体には、前記異物検出機によって異物検査処理が行われた日時と場所を示す情報、異物検査結果を示す情報、及び前記製品を検査した事業者を示す情報を格納した2次元コードが付与される構成としてもよい。
【0114】
本開示の態様9に係る管理システムは、上記の態様1~8のいずれかにおいて、前記異物は、金属異物である構成としてもよい。
【0115】
本開示の態様10に係る管理方法は、加工設備を管理する管理方法であって、前記加工設備における加工機械によって生産された製品に異物が混入しているか否かを検出する異物検出機から前記異物に関する情報を取得する工程と、前記異物に関する情報に基づいて、前記加工機械の状態に関する情報を取得する工程と、を含む。
【符号の説明】
【0116】
100 管理システム、10,11 金属検出機、20 製品、30 金属異物、40 管理装置、41 プロセッサ、47 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12