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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012538
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】屈曲肘部伸長矯正装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20250117BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61H1/02 K
A61F5/01 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115433
(22)【出願日】2023-07-13
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500202780
【氏名又は名称】アドバンフィット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】小峯 敏文
(72)【発明者】
【氏名】児玉 春生
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将志
【テーマコード(参考)】
4C046
4C098
【Fターム(参考)】
4C046AA08
4C046AA29
4C046AA35
4C046AA45
4C046BB04
4C046BB05
4C046DD13
4C098AA02
4C098BB09
4C098BC02
4C098BC13
4C098BC18
4C098BC45
4C098BD01
(57)【要約】
【課題】装着が簡便で装着後の腕のわずかな屈曲運動に順応しやすく軽量でリハビリに身体的な負荷を無用にかけることなく使用できる腕の屈曲肘部伸長矯正装置を提供せんとする。
【解決手段】腕体の上腕部と前腕部の各外側面の略半身をそれぞれ被覆する上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結し、枢支連結部はラチェット機構を介して枢支連結部を通常一方向にのみ回動すべく構成した屈曲肘部伸長矯正装置において、上腕部ユニットは、上腕部を被覆する上腕部プロテクターと、肘上部を被覆する肘上部プロテクターと、上腕部プロテクターと肘上部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、からなり、前腕部ユニットは、肘下部を被覆する肘下部プロテクターと、前腕部を被覆する前腕部プロテクターと、肘下部プロテクターと前腕部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、から構成したことにより課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕体の上腕部と前腕部の各外側面の略半身をそれぞれ被覆する上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結し、枢支連結部はラチェット機構を介して枢支連結部を通常一方向にのみ回動すべく構成した屈曲肘部伸長矯正装置において、
前記上腕部ユニットは、
上腕部を被覆する上腕部プロテクターと、
肘上部を被覆する肘上部プロテクターと、
前記上腕部プロテクターと前記肘上部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、からなり、
前記前腕部ユニットは、
肘下部を被覆する肘下部プロテクターと、
前腕部を被覆する前腕部プロテクターと、
前記肘下部プロテクターと前記前腕部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、から構成したことを特徴とする屈曲肘部伸長矯正装置。
【請求項2】
前記腕部ユニットと前記前腕部ユニットとを枢支連結する前記枢支連結部の前記ラチェット機構は、前記肘上部プロテクターと前記肘下部プロテクターとにそれぞれ一体に形成された嵌入部を介して固定されることを特徴とする請求項1に記載の屈曲肘部伸長矯正装置。
【請求項3】
前記前腕部プロテクターの先端には、手指伸長装置を連結自在とし、前記手指伸長装置は手掌面と手背面とを挟圧する手掌プロテクター及び手背プロテクターより構成し、前記手背プロテクターの裏面に牽引コードを設け、前記牽引コードの基端を前記前腕プロテクターに取り付け可能としたコード巻取機構に連結し、前記コード巻取機構の巻き取り動作により前記牽引コードを巻き取ることで手の甲側を牽引して反り姿勢方向へ付勢自在としたことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の屈曲肘部伸長矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、この発明は、脳卒中などにより上肢に屈伸障害が生起した場合、特に腕の肘部が屈曲したままで伸長できない症状が発症した場合に肘伸張リハビリに用いられる腕の屈曲肘部伸長矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脳卒中などにより身体の各部所に障害が発症し患者の意のままに動作することが不可能となることは脳卒中などの典型的な症状として日常経験するところである。特に上肢に関しては腕の肘部において屈伸障害が生起する。すなわち、腕の肘部が屈曲したままで伸長できない固まり症状が発症する。
【0003】
かかる症状の治療として肘伸長のリハビリ(屈曲した肘部を装具装着により伸展位状態へする治療)が行われるが、リハビリに用いる腕の肘伸長のための道具(装置)としては肘部分で繋がる上腕カバー体と前腕カバー体とより構成し各カバー体は上腕と前腕の表側と裏側とにそれぞれ装着可能な断面略U字状の硬質プラスチックからなる。そして、上腕カバー体と前腕カバー体とは肘部に該当する枢支部分にはラチェトギアを介して一方向、すなわち、上腕カバー体と前腕カバー体とが伸長する方向には回動するが反対方向の屈曲方向には回動しない作動規制をしているものが一般的に知られている。
【0004】
かかる肘部における一方向回転動作規制により肘部での腕の伸長リハビリを行う構造としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の従来のリハビリ用の器具は上腕カバー体の表側と裏側及び前腕カバー体の表側と裏側の各部材は連結ベルトで表側と裏側を結束するように構成されているので腕の装着構造が全体的に固定的でありいわゆる遊びが全くなく上腕や前腕のわずかな屈伸運動も行えずリハビリにゆとりを生起することができない虞があった。
【0006】
この発明では、装着が簡便で装着後の腕のわずかな屈伸運動に順応しやすく軽量でリハビリに身体的な負荷を無用にかけることなく使用できる腕の屈曲肘部伸長矯正装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、腕体の上腕部と前腕部の各外側面の略半身をそれぞれ被覆する上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結し、枢支連結部はラチェット機構を介して枢支連結部を通常一方向にのみ回動すべく構成した屈曲肘部伸長矯正装置において、上腕部ユニットは、上腕部を被覆する上腕部プロテクターと、肘上部を被覆する肘上部プロテクターと、上腕部プロテクターと肘上部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、からなり、前腕部ユニットは、肘下部を被覆する肘下部プロテクターと、前腕部を被覆する前腕部プロテクターと、肘下部プロテクターと前腕部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、から構成したことを特徴とする。
【0008】
また、上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結する枢支連結部のラチェット機構は、肘上部プロテクターと肘下部プロテクターとにそれぞれ一体に形成された嵌入部を介して固定されることにも特徴を有する。
【0009】
また、前腕部プロテクターの先端には、手指伸長装置を連結自在とし、手指伸長装置は手掌面と手背面とを挟圧する手掌プロテクター及び手背プロテクターより構成し、手背プロテクターの裏面に牽引コードを設け、牽引コードの基端を前腕プロテクターに取り付け可能としたコード巻取機構に連結し、コード巻取機構の巻き取り動作により牽引コードを巻き取ることで手の甲側を牽引して反り姿勢方向へ付勢自在としたことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腕体の上腕部と前腕部の各外側面の略半身をそれぞれ被覆する上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結し、枢支連結部はラチェット機構を介して枢支連結部を通常一方向にのみ回動すべく構成した屈曲肘部伸長矯正装置において、上腕部ユニットは、上腕部を被覆する上腕部プロテクターと、肘上部を被覆する肘上部プロテクターと、上腕部プロテクターと肘上部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、からなり、前腕部ユニットは、肘下部を被覆する肘下部プロテクターと、前腕部を被覆する前腕部プロテクターと、肘下部プロテクターと前腕部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、から構成したことにより肘屈曲筋(上腕二頭筋、上腕筋及び腕橈骨筋)の痙性による力、すなわち、肘部が屈曲に戻ろうと突っ張る力を可撓性ロッドが撓むことで吸収し、患者の負担を最小限に屈曲した肘部を伸ばすリハビリ治療を行うことができる。
【0011】
また、上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結する枢支連結部のラチェット機構は、肘上部プロテクターと肘下部プロテクターとにそれぞれ一体に形成された嵌入部を介して固定されることにより、ラチェット機構は肘上部プロテクターと肘下部プロテクターとで強固に固定され屈曲した肘部を伸ばすリハビリ治療時に枢支連結部に係る多大な応力にも負けず確実な枢支機能を果たすことができる。
【0012】
また、前腕部プロテクターの先端には、手指伸長装置を連結自在とし、手指伸長装置は手掌面と手背面とを挟圧する手掌プロテクター及び手背プロテクターより構成し、手背プロテクターの裏面に牽引コードを設け、牽引コードの基端を前腕プロテクターに取り付け可能としたコード巻取機構に連結し、コード巻取機構の巻き取り動作により牽引コードを巻き取ることで手の甲側を牽引して反り姿勢方向へ付勢自在としたことにより、屈曲した肘部を伸ばすリハビリ治療のみならず手指伸展位の協調的な保持矯正を行うことができ、腕体から手指に至るまでの総合的な不随筋痙性による急激な肘・手首・指等の屈曲状態の治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】屈曲肘部伸長矯正装置の基本的な構成を示す斜視図である。
図2】屈曲肘部伸長矯正装置の実施形態を示す腕外側方向から見た斜視図である。
図3】屈曲肘部伸長矯正装置の実施形態を示す腕内側方向から見た斜視図である。
図4】枢支連結部のラチェット機構の構成を示す説明図である。
図5】手指伸長矯正装置の構成を示す斜視図である。
図6】屈曲肘部伸長矯正装置と手指伸長矯正装置とを連結した状態を示す腕外側方向から見た説明図である。
図7】肘部伸長矯正装置を装着したことで肘部が伸展位状態となった様子を示す腕外側から見た説明図である。
図8】肘部伸長矯正装置を装着したことで肘部が伸展位状態となった様子を示す腕内側から見た説明図である。
図9】手指伸長矯正装置により手指を伸長させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の要旨は、腕体の上腕部と前腕部の各外側面の略半身をそれぞれ被覆する上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結し、枢支連結部はラチェット機構を介して枢支連結部を通常一方向にのみ回動すべく構成した屈曲肘部伸長矯正装置において、上腕部ユニットは、上腕部を被覆する上腕部プロテクターと、肘上部を被覆する肘上部プロテクターと、上腕部プロテクターと肘上部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、からなり、前腕部ユニットは、肘下部を被覆する肘下部プロテクターと、前腕部を被覆する前腕部プロテクターと、肘下部プロテクターと前腕部プロテクターとの間に架張する可撓性ロッドと、から構成したことにある。
【0015】
また、上腕部ユニットと前腕部ユニットとを枢支連結する枢支連結部のラチェット機構は、肘上部プロテクターと肘下部プロテクターとにそれぞれ一体に形成された嵌入部を介して固定されることにも特徴を有する。
【0016】
また、前腕部プロテクターの先端には、手指伸長装置を連結自在とし、手指伸長装置は手掌面と手背面とを挟圧する手掌プロテクター及び手背プロテクターより構成し、手背プロテクターの裏面に牽引コードを設け、牽引コードの基端を前腕プロテクターに取り付け可能としたコード巻取機構に連結し、コード巻取機構の巻き取り動作により牽引コードを巻き取ることで手の甲側を牽引して反り姿勢方向へ付勢自在としたことにも特徴を有する。
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る屈曲肘部伸長矯正装置Mの一実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
図1は、屈曲肘部伸長矯正装置Mの基本的な構成を示す斜視図である。図2は、屈曲肘部伸長矯正装置Mの実施形態を示す腕外側方向から見た斜視図である。図3は、屈曲肘部伸長矯正装置Mの実施形態を示す腕内側方向から見た斜視図である。図4は、枢支連結部500のラチェット機構510の構成を示す説明図である。図5は、手指伸長矯正装置Aの構成を示す斜視図である。図6は、屈曲肘部伸長矯正装置Mと手指伸長矯正装置Aとを連結した状態を示す腕外側方向から見た説明図である。図7は、肘部伸長矯正装置Mを装着したことで肘部が伸展位状態となった様子を示す腕外側から見た説明図である。図8は、肘部伸長矯正装置Mを装着したことで肘部が伸展位状態となった様子を示す腕内側から見た説明図である。図9は、手指伸長矯正装置Aにより手指を伸長させた状態を示す説明図である。
【0019】
本発明に係る屈曲肘部伸長矯正装置Mは、基本的には脳溢血などの後遺症による身体的な疾患として肘部が屈曲固定状態(屈曲したまま痙性した状態)となり、肘部の伸長が困難となった場合にリハビリ治療として肘部の伸長訓練用具としてセラピスト等が使用する者であり、以下の構成部材の組合せよりなる。
【0020】
すなわち、図1に示すように、上腕部を被覆する上腕部プロテクター100と肘上部を被覆する肘上部プロテクター300aと上腕部プロテクター100と肘上部プロテクター300aとの間に架張する可撓性ロッド400とからなる上腕部ユニットU1と、肘下部を被覆する肘下部プロテクター300bと前腕部を被覆する前腕部プロテクター200と肘下部プロテクター300bと前腕部プロテクター200との間に架張する可撓性ロッド400とからなる前腕部ユニットと、上腕部ユニットU1と前腕部ユニットU2とを枢支連結する枢支連結部500とよりなる。
【0021】
各プロテクター(上腕部プロテクター100、肘上部プロテクター300a、肘下部プロテクター300b及び前腕部プロテクター200)は、断面略U字形状とし、患者の腕体Bの対応箇所(上腕部プロテクター100であれば患者の上腕部b1、前腕部プロテクター200であれば患者の前腕部b2)を被覆することができる。
【0022】
上腕部プロテクター100と肘上部プロテクター300aとの間、肘下部プロテクター300bと前腕部プロテクター200との間にはそれぞれ可撓性ロッド400を架張している。すなわち、上腕部プロテクター100と肘上部プロテクター300aとに架張し、上腕部プロテクター100と肘上部プロテクター300aとを一体とすることで患者の上腕部b1全体を覆うことができる上腕部ユニットU1としており、前腕部プロテクター200と肘下部プロテクター300bとに架張し、前腕部プロテクター200と肘下部プロテクター300bとを一体とすることで患者の前腕部b2全体を覆うことができる前腕部ユニットU2としている。
【0023】
また、可撓性ロッド400は、屈曲肘部伸長矯正装置Mを使用して肘部を伸ばすリハビリ治療を行う際に、肘部の伸長時にかかる肘部が屈曲に戻ろうと突っ張る力(肘屈曲筋の痙性による力)を撓むことにより吸収し、患者の負担を最小限にリハビリ治療を行うことができる。
【0024】
枢支連結部500は、図1示すように、一方向にのみ回動自在としたラチェット機構510と、肘上部プロテクター300a及び肘下部プロテクター300bに設けられた嵌入部520と、からなる。なお、ラチェット機構510の回動自在な一方向とは、枢支連結部500の屈曲解除方向、すなわち肘部を伸長する方向である。
【0025】
ラチェット機構510は、図4に示すように、先端を上方へ向けて形成した歯部511aを有する歯基部511と、略L字形状の一方端部に爪部512aをもう一方に解除部512bを有した咬合体512と、咬合体512の解除部512bを付勢力により上方へ押し上げるバネ体513と、咬合体512の屈折部分で枢支するとともにバネ体513を保持する操作基部514と、歯基部511と操作基部514とを回動自在に連結する枢支軸体515とよりなる。
【0026】
ラチェット機構510は、歯部511aの先端を上方へ向けて形成していることで、咬合する爪部512aの噛み合いに規制を行い、歯基部511と操作基部514との回動方向を屈曲状態から伸長状態とする向きにのみ回動可能としている。
【0027】
また、咬合体512の解除部512bは、常時バネ体513の付勢力により上方へ押されることで、歯部511aと爪部512aとの咬合状態を維持している。そのため、伸長状態で固定された歯基部511と操作基部514とを再び屈曲状態とするには、咬合体512の解除部512bをバネ体513の付勢力に抗うように押下することで歯部511aと爪部512aとの咬合状態を解除することで可能となる。
【0028】
また、ラチェット機構510は、肘上部プロテクター300aと肘下部プロテクター300bとにそれぞれ一体に形成された嵌入部520に両端部を嵌入させることで強固な固定を実現している。ラチェット機構510を肘上部プロテクター300aと肘下部プロテクター300bとに強固に固定することで屈曲した肘部を伸ばすリハビリ治療時に枢支連結部500に係る多大な応力にも負けず確実な枢支機能を果たすことができる。
【0029】
また、上腕部プロテクター100及び前腕部プロテクター200の両端縁には、図2及び図3に示すように、患者の腕体Bに固定するための帯状の上腕部緊締バンド体110及び前腕部緊締バンド体210を連設している。上腕部緊締バンド体110及び前腕部緊締バンド体210は、それぞれ対応する上腕部プロテクター100及び前腕部プロテクター200の両端縁にバンド体の基部を固定し、先端部には、例えば面ファスナー等の調整固定具により患者の腕周りに合わせて長さの調整及び着脱操作を自在に構成している。
【0030】
枢支連結部500の左右側面(肘上部プロテクター300aの右端縁と肘下部プロテクター300bの右端縁、肘上部プロテクター300aの左端縁と肘下部プロテクター300bの左端縁)には、それぞれ帯状のバンド体を山型となるように一度捻った状態の山型バンド体311と、山型バンド体311に架張し先端部に設けた調整固定具により患者の腕周りに合わせて長さの調整及び着脱操作を自在とする架張バンド体312と、からなる肘部緊締バンド体310を備えている。
【0031】
すなわち、上腕部ユニットU1と前腕部ユニットU2とを枢支連結する枢支連結部500での患者の腕体Bへの固定を行う肘部緊締バンド体310は、枢支連結部500を跨持する略三角形状の山型バンド体311と山型バンド体311の頂部で互いに絡むように交差して連結する架張バンド体312との特殊な構造のバンド体としている。
【0032】
すなわち、本実施形態の肘部緊締バンド体310では、山型バンド体311の山型頂部にて架張バンド体312と互いに交差し絡めた状態で繋いでいるためにリハビリ治療時に上腕部b1と前腕部b2とを肘屈曲状態から伸長状態に変位した場合に山型バンド体311は伸長し山型形状の頂部において架張バンド体312の端部が互いに引っ張り合ってより緊締を強固に且つ緊密に装着することができる。
【0033】
また、各プロテクター(上腕部プロテクター100、肘上部プロテクター300a、肘下部プロテクター300b及び前腕部プロテクター200)の内側面、すなわち患者の腕体Bと当接する面には、それぞれ上腕部パッド120、肘部内パッド320及び前腕部パッド体220を、例えば面ファスナー等により取り付け可能となっている。
【0034】
各パッド(上腕部パッド120、肘部内パッド320及び前腕部パッド体220)は、硬質なプロテクター(上腕部プロテクター100、肘上部プロテクター300a、肘下部プロテクター300b及び前腕部プロテクター200)から患者の腕体B表面を保護するために取付け、ウレタン樹脂等の柔らかい素材により形成している。
【0035】
また、枢支連結部500の外側面にも、上述した各パッド(上腕部パッド120、肘部内パッド320及び前腕部パッド体220)と同様にウレタン樹脂等の柔らかい素材で形成された肘部外パッド330を取付け可能としている。この、肘部外パッド330は、枢支連結部500の露出したラチェット機構510より巻込み事故等が起こらないように防護するためのものである。肘部外パッド330には、上述した、ラチェット機構510の解除部512bの操作ができるように、対応箇所に操作用の小孔を設けている。
【0036】
また、前腕部プロテクター200の先端には、手指伸長矯正装置Aを着脱自在としている。手指伸長矯正装置Aは、図5に示すように、手の手掌面と手背面とを挟圧する硬質の手掌プロテクター600a及び手背プロテクター600bと、手背プロテクター600bの親指部分に対応する断面略U字形状とした硬質の母指プロテクター600cと、より主体的に構成している。この手指伸長矯正装置Aは、筋収縮症状により掌部や指部の内側屈曲症状(伸長が困難な症状)を呈したときに屈曲と反対の反り返り応力を生成し伸長矯正のリハビリ治療に使用する。
【0037】
手背プロテクター600bと手掌プロテクター600a及び母指プロテクター600cとは、緊締用のバンド体により患者の手掌面と手背面とを挟圧固定する。緊締用のバンド体は、手背プロテクター600bと手掌プロテクター600aとを緊締する手部緊締バンド体610と、手背プロテクター600bと母指プロテクター600cとを緊締する母指緊締バンド体620と、よりなる。
【0038】
手部緊締バンド体610は、手背プロテクター600bの指先端付近に基部を固定する先端手部バンド体611と手掌の略中央部分に基部を固定する中央手部バンド体612とからなる。母指緊締バンド体620は、手背プロテクター600bの母子に対応する箇所に基部を固定している。手部緊締バンド体610と母指緊締バンド体620とは、例えば面ファスナーとバンド中途部に設けた緊締用の長孔形成のリング体等の調整固定具により患者の腕周りに合わせて長さの調整及び着脱操作を自在に構成している。
【0039】
手指伸長矯正装置Aの手背プロテクター600bの裏面側、すなわち手の外側には、細長状の連結杆700を備えている。具体的には、先端手部バンド体611に連結杆700の先端部を固定して中央手部バンド体612を跨ぐように2箇所と母指緊締バンド体620に連結杆700先端部を固定して手首側へ伸びるように1箇所の計3箇所設けられている。
【0040】
連結杆700の後端部には、挿通孔を形成しており、それぞれの挿通孔に牽引コード800を挿通している。牽引コード800は、手掌プロテクター600aの手首部分と前腕部分に設けた巻取補助具910を介して、手掌プロテクター600aの後端部に設けたコード巻取機構910に接続している。
【0041】
コード巻取機構910は、ラチェット機構により形成した一方向にのみ回転可能とした回転ダイアル式としている。すなわち、掌部や指部の内側屈曲症状の度合いに応じてコード巻取機構910の回転ダイアルを回転操作して牽引コード800を巻き取り、連結杆700を後方へ引っ張ることで患者の手掌と指部とを屈曲と反対の反り返り応力を生成し伸長矯正のリハビリ治療を行うことができる。
【0042】
手指伸長矯正装置Aの取り付けに関しては、図6に示すように、コード巻取機構910を前腕部プロテクター200の後方部分に固定するとともに、手掌プロテクター600aの後端部を前腕部プロテクター200の先端部分に設けた挿通孔に挿入することで行う。すなわち、コード巻取機構910を屈曲肘部伸長矯正装置Mにしっかりと固定することで、牽引コード800巻き取りによる伸長リハビリ治療を確実に行うことができる。
【0043】
また、手指伸長矯正装置Aは、母指プロテクター600cを別途設けることで、身長方向が他の指や手掌とやや異なる母子の伸長リハビリ治療を同時に行うことができる。手指の伸長リハビリ治療は、ラチェット機構を用いたコード巻取機構910により牽引コード800の巻き取りを細かく調節することで無理のなく最大限の効果を得ることができる。
【0044】
また、手掌プロテクター600a、手背プロテクター600b及び母指プロテクター600cの内側、すなわち患者の手掌面と手背面とに当接する面には、それぞれ図示しない手掌パッド、手背パッド及び母子パッドを備えることができる。手掌パッド及、手背パッド及び母子パッドは、患者の手指表面を硬質のプロテクターから保護するために設けることができ、ウレタン樹脂等の柔らかい素材により形成される。
【0045】
したがって、屈曲肘部伸長矯正装置Mは、図7及び図8に示すように、患者の上腕部b1及び前腕部b2を被覆し、枢支連結部500のラチェット機構510により、屈曲状態で固定された肘部を伸長させることができる。
【0046】
また、屈曲肘部伸長矯正装置Mに取り付けられる手指伸長矯正装置Aは、図9に示すように、内側屈曲状態となった手首や手指を屈曲方向に反するように反らし伸長させることができる。
【0047】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
M 屈曲肘部伸長矯正装置
U1 上腕部ユニット
U2 前腕部ユニット
A 手指伸長矯正装置
100 上腕部プロテクター
110 上腕部緊締バンド体
120 上腕部パッド
200 前腕部プロテクター
210 前腕部緊締バンド体
220 前腕部パッド
300a 肘上部プロテクター
300b 肘下部プロテクター
310 肘部緊締バンド体
311 山型バンド体
312 架張バンド体
320 肘部内パッド
330 肘部外パッド
400 可撓性ロッド
500 枢支連結部
510 ラチェット機構
511 歯基部
511a 歯部
512 咬合体
512a 爪部
512b 解除部
513 バネ部
514 操作基部
515 枢支軸体
520 嵌入部
600a 手掌プロテクター
600b 手背プロテクター
600c 母子プロテクター
610 手部緊締バンド体
611 先端手部バンド体
612 中央部バンド体
620 母子緊締バンド体
700 連結杆
800 牽引コード
900 コード巻取機構
910 巻取補助具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9