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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012546
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/70 20240101AFI20250117BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250117BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20250117BHJP
【FI】
G06T5/00 705
G06T7/00 350B
H04N23/60 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115444
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 直哉
【テーマコード(参考)】
5B057
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057CE11
5B057CE16
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC36
5B057DC40
5C122EA22
5C122FA11
5C122FH18
5C122HA46
5C122HB01
5L096AA02
5L096DA01
5L096EA05
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡単でかつ精度よくノイズを低減可能な学習モデルを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、所定の撮像装置により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデルを生成する。抽出手段は、所定の撮像装置により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、所定の撮像装置の光学系を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域の画像をノイズ画像として抽出する。合成手段は、教師画像に対してノイズ画像を合成して生徒画像を生成する。学習手段は、学習モデルに生徒画像を入力として与えて学習モデルを学習させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像装置により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデルを生成する画像処理装置であって、
前記所定の撮像装置により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、前記所定の撮像装置の光学系を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域の画像をノイズ画像として抽出する抽出手段と、
教師画像に対して前記ノイズ画像を合成して生徒画像を生成する合成手段と、
前記学習モデルに前記生徒画像を入力として与えて前記学習モデルを学習させる学習手段と、
を有する、画像処理装置。
【請求項2】
前記教師画像は、当該教師画像のサイズより小さな複数の部分画像から構成されており、
前記合成手段は、前記教師画像を構成する前記複数の部分画像のそれぞれに対して、前記所定の撮像装置により撮像された前記複数の画像からそれぞれ一つずつ取得された複数のノイズ画像のうち、いずれか一つを合成することで、前記生徒画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成手段は、前記複数の部分画像のそれぞれに対して適用されるノイズ画像を、前記複数のノイズ画像からランダムに選択する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の部分画像のそれぞれに対して適用される各ノイズ画像は重複しないように選択される、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
一つの生徒画像を生成するために使用される複数のノイズ画像を抽出される前記複数の画像は、それぞれ同一の撮像条件で前記所定の撮像装置により取得される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記撮像条件は、前記所定の撮像装置の温度、感度、および露光時間のうちの少なくとも一つを含む、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記学習モデルに入力される画像は、モザイク画像であり、
前記学習モデルから出力される出力画像は、前記モザイク画像に対応するデモザイク画像である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記モザイク画像は、ベイヤー画像である、請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記ベイヤー画像は、RAW画像である、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記合成手段は、
前記教師画像に対して前記ノイズ画像を合成して第一画像を生成し、
前記第一画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第二画像を生成し、
前記第二画像に対して逆ガンマ補正を適用して第三画像を生成し、
前記第三画像に対して逆色変換を適用して第四画像を生成し、
前記第四画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第五画像を生成し、
前記第五画像に対してモザイク化を適用して前記モザイク画像である前記生徒画像を生成する、
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記学習手段において前記出力画像と比較される比較用画像を前記教師画像から生成する生成手段をさらに有し、
前記生成手段は、
前記教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第六画像を生成し、
前記第六画像に対して逆ガンマ補正を適用して第七画像を生成し、
前記第七画像に対して逆色変換を適用して第八画像を生成し、
前記第八画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して前記比較用画像を生成する、
請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記合成手段は、
前記教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第一画像を生成し、
前記第一画像に対して逆ガンマ補正を適用して第二画像を生成し、
前記第二画像に対して逆色変換を適用して第三画像を生成し、
前記第三画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第四画像を生成し、
前記第四画像に対してモザイク化を適用して第五画像を生成し、
前記第五画像に対して前記ノイズ画像を合成して前記モザイク画像である前記生徒画像を生成する、
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記合成手段は、
前記教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第一画像を生成し、
前記第一画像に対して逆ガンマ補正を適用して第二画像を生成し、
前記第二画像に対して逆色変換を適用して第三画像を生成し、
前記第三画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第四画像を生成し、
前記第四画像に対してモザイク化を適用して前記モザイク画像である前記生徒画像を生成し、
前記ノイズ画像は、前記第一画像、前記第二画像、前記第三画像、または、前記第四画像のうちのいずれかに対して合成される、
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記所定の撮像装置により取得される画像は矩形の画像であり、
前記ノイズ画像は、前記矩形の画像において短辺または長辺と平行に存在する矩形のオプティカルブラック領域から抽出される、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記矩形のオプティカルブラック領域の面積は前記ノイズ画像の面積よりも大きく、
前記抽出手段は、
前記矩形のオプティカルブラック領域から抽出される前記ノイズ画像の位置をランダムに決定し、
前記矩形のオプティカルブラック領域において前記決定された位置から前記ノイズ画像を抽出する、請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記所定の撮像装置は、人工衛星に搭載されるカメラであり、
前記ノイズには、宇宙線が前記所定の撮像装置に入射することにより発生する輝点ノイズを含む、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
入力画像に含まれるノイズを低減するノイズ低減装置であって、
請求項1から16のいずれか一項に記載の画像処理装置により生成された学習済みの前記学習モデルに対して、前記所定の撮像装置により取得された画像を入力画像として入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された前記入力画像に対応する出力画像を前記学習モデルから取得する取得手段と、
を有するノイズ低減装置。
【請求項18】
光学系と、
前記光学系を通じて入射する光を画像信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子により取得された画像信号に対応する画像からノイズを低減する、請求項17に記載のノイズ低減装置と、
を有し、
前記撮像素子の長辺は、前記光学系のイメージサークルの直径よりも大きい、撮像装置。
【請求項19】
画像処理装置により実行され、所定の撮像装置により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデルを生成する、学習方法であって、
前記所定の撮像装置により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、前記所定の撮像装置の光学系を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域の画像をノイズ画像として抽出する抽出工程と、
教師画像に対して前記ノイズ画像を合成して生徒画像を生成する合成工程と、
前記学習モデルに前記生徒画像を入力として与えて前記学習モデルを学習させる学習工程と、
を有する、学習方法。
【請求項20】
コンピュータを請求項1から16のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等により取得された画像にはノイズが含まれることがある。従来、このようなノイズはデジタルフィルタなどにより低減されていた。近年、学習モデルにノイズを学習させ、学習済みの学習モデルを用いて画像内のノイズを低減することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-086284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、教師画像に対して付加されるノイズをISO感度に基づき演算し、演算により求められたノイズを教師画像に対して付加して訓練画像(生徒画像)を生成することが提案されている。これにより、多数の生徒画像が得られる利点がある。一方で、撮像素子の温度に依存して発生するノイズ(熱雑音)や宇宙線などの放射線の入射により発生する輝点ノイズは、撮像素子の製品個体差に依存しうる。個体差ごとに、ノイズの演算式を用意することは、きわめて困難である。そこで、本発明は、従来よりも簡単でかつ精度よくノイズを低減可能な学習モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
所定の撮像装置により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデルを生成する画像処理装置であって、
前記所定の撮像装置により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、前記所定の撮像装置の光学系を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域の画像をノイズ画像として抽出する抽出手段と、
教師画像に対して前記ノイズ画像を合成して生徒画像を生成する合成手段と、
前記学習モデルに前記生徒画像を入力として与え、前記学習モデルから出力される出力画像と前記教師画像との差分が小さくなるように前記学習モデルを学習させる学習手段と、
を有する、画像処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来よりも簡単でかつ精度よくノイズを低減可能な学習モデルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】画像処理システムを説明する図
図2】撮像装置を説明する図
図3】情報処理装置を説明する図
図4】現像部を説明する図
図5】教師画像生成装置を説明する図
図6】学習処理装置を説明する図
図7】生徒画像生成装置を説明する図
図8】デモザイク処理を説明する図
図9】ノイズ領域の切り出し方法を説明する図
図10】ノイズ領域の切り出し方法を説明する図
図11】ノイズの付与方法を説明する図
図12】ノイズの付与方法を説明する図
図13】ノイズの付与方法を説明する図
図14】学習方法を説明する図
図15】生徒画像の生成方法を説明する図
図16】生徒画像生成装置を説明する図
図17】効果を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(1)画像処理システム
図1は、画像処理システムを示している。撮像装置100は、静止画像または動画像を取得するデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、または、監視カメラなどである。撮像装置100は、人工衛星または宇宙船に搭載されてもよい。ノイズ画像群101は、撮像装置100により取得される複数のノイズ画像を含む。なお、複数の撮像装置100が存在する場合、複数の撮像装置100のそれぞれについて個別にノイズ画像群101が生成される。元画像セット102は、複数のカラー画像(例:sRGB画像やデバイスRGB形式の画像)からなるデータセットである。このデータセットは、たとえば、インターネット上で提供されているフリー素材であってもよい。なお、デバイスRGB形式の画像とは、sRGB形式の画像が、モニターなどで表示されるRGB色域に調整されたものを指す。
【0010】
情報処理装置110は、パーソナルコンピュータ(PC)などのコンピュータである。図1では、包括的に1つの情報処理装置110が示されているが、実際には情報処理装置110が複数のコンピュータにより形成されていてもよい。情報処理装置110は、複数の機能(生徒画像生成装置111、教師画像生成装置112、学習処理装置115および画像処理装置117)を有する。これらの複数の機能が複数のコンピュータにより実現されてもよい。
【0011】
生徒画像生成装置111は、元画像セット102とノイズ画像群101とから生徒画像群113を生成する。生徒画像群113は、撮像装置100により取得されたノイズを付与された複数のカラー画像を含む。
【0012】
教師画像生成装置112は、元画像セット102から教師画像群114を生成する。なお、元画像セット102がデモザイクRGB形式であった場合のように、元画像セット102が教師画像群114としてそのまま使用できる場合は、教師画像生成装置112が省略される。
【0013】
学習処理装置115は、生徒画像群113を生徒画像として入力し、教師画像群114を教師画像として入力し、学習モデル116を生成する。たとえば、生徒画像群113に含まれる第一生徒画像と、教師画像群114に含まれる第一教師画像とは、それぞれ共通の元画像(元画像セット102に含まれる一つの元画像)から生成されている。学習処理装置115は、学習モデル116に第一生徒画像を入力することで第一出力画像を生成し、第一出力画像と第一教師画像との誤差を誤差関数により求め、誤差が最小となるように学習モデル116内の係数を更新する。この更新処理は、生徒画像群113に含まれるN個の生徒画像と、教師画像群114に含まれ、それぞれN個の生徒画像のうちの一つに対応するN個の教師画像と、について実行される。これにより、学習済みの学習モデル116が生成される。
【0014】
画像処理装置117は、学習済みの学習モデル116を用いて入力画像に含まれるノイズを低減して出力画像を生成する。つまり、画像処理装置117は、ノイズ低減機能を有している。画像処理装置117は、撮像装置100であってもよい。つまり、撮像装置100に学習済みの学習モデル116が書き込まれ、撮像装置100においてノイズ低減処理が実行されてもよい。
【0015】
なお、元画像セット102がデバイスRGB形式の画像データであり、生徒画像群113がRAW形式の画像データであり、かつ、教師画像群114がデバイスRGB形式またはデモザイクRGB形式の画像データである場合、学習モデル116は、デモザイク化(現像)処理とノイズ低減処理とを同時に実行可能なモデルとなる。学習モデル116は、ノイズ低減処理を実現できれば十分であるが、以下では、説明の便宜上、学習モデル116が、デモザイク化(現像)処理とノイズ低減処理とを一括して実行する。
【0016】
(2)撮像装置の構造
図2は撮像装置100の構造を示している。CPU201は、メモリ202に記憶されている制御プログラムにしたがって撮像装置100を制御するプロセッサである。CPU201の画像処理機能等は特定用途集積回路(ASIC)などのハードウエア回路によって実現されてもよい。レンズユニット205は、たとえば、光学レンズと、焦点調節機能と、ズーム機能とを有する。焦点調節機能とズーム機能は省略されてもよい。遮光ユニット206も、オプションであり、絞りやメカニカルシャッターなどの遮光機構を有している。遮光量は、遮光板または絞り羽根をモータ等により移動させることにより、調節されてもよい。撮像素子207は、CMOSイメージセンサなどの、光信号を電気信号に変換する半導体素子である。温度センサ204は、撮像装置100の温度、とりわけ、撮像素子207の温度を検知する。通信回路203は、情報処理装置110と通信するための通信回路である。通信回路203と、情報処理装置110とは直接通信してもよいし、アクセスポイントまたは基地局などを介して間接的に通信してもよい。制御回路208は、CPU201からの指示に従ってレンズユニット205のピントまたは焦点距離、遮光ユニット206の遮光量、および、撮像素子207の露光時間(シャッタースピード)および感度などを制御する。CPU201は、撮像素子207から出力される画像信号に基づきRAWデータ221を生成し、メモリ202に格納する。メモリ202は、ROM、RAM、およびメモリカードなどを含みうる。CPU201は、RAWデータ221を通信回路203により情報処理装置110へ送信してもよい。画像処理装置117が撮像装置100に搭載されている場合、画像処理装置117は、モザイク画像(例:RAWデータ221)を現像し、デモザイクされたカラー画像(デバイスRGBデータ222)を生成する。なお、デバイスRGBデータ222は、デモザイクRGB形式の画像データであってもよい。また、CPU201は、RAWデータ221を取得する際に適用した撮像条件(例:撮像装置100の温度、感度、露光時間、焦点距離)を、RAWデータ221に関連付けて、メモリ202に保存する。以下において、RAWデータ221のファイルフォーマットは、画像データと撮像条件との両方を含むものとする。
【0017】
(3)情報処理装置の構造
図3は情報処理装置110の構造を示している。CPU301は記憶装置302に記憶されているプログラム306にしたがって情報処理装置110を制御する。CPU301は、プログラム306を実行することで、生徒画像生成装置111、教師画像生成装置112、学習処理装置115、および、画像処理装置117を実現してもよい。通信回路303は、撮像装置100と通信するための回路である。入力装置304は、ポインティングデバイスやキーボードなどであり、ユーザからの指示を受け付ける。表示装置305は、ユーザに対して情報を表示するディスプレイである。
【0018】
記憶装置302は、たとえば、ROM、RAM、メモリカード、ソリッドステートドライブ(SSD)、およびハードディスクドライブ(HDD)を記憶するストレージデバイスである。記憶装置302は、さらに、ノイズ画像群101、元画像セット102、生徒画像群113、教師画像群114、および、学習モデル116を記憶してもよい。
【0019】
(4)画像処理装置の機能
図4は画像処理装置117が備える機能を示している。デモザイク部411は、ベイヤータイプのモザイク画像であるRAWデータ221をデモザイク処理して、デモザイク化画像を生成する。デモザイク処理は、よく知られているように、周囲の同一色の画素の画素値から注目画素の画素値を補間演算する処理などを含む。ノイズ低減部412は、デモザイク化画像に含まれるノイズを低減する。このノイズは、撮像素子207とCPU201までの間に設けられる電気回路において生じるノイズを指す。たとえば、撮像素子207の熱に起因するノイズ、宇宙線などの放射線が撮像素子207に照射されることで生じるノイズ、アナログゲインのばらつきに起因するノイズ、セルの感度の差によって生じるノイズなど、様々なノイズを含みうる。また、ノイズ低減部412によってノイズが低減されれば、デモザイク化処理により生じうる偽色などのCPU201またはCPU301での処理中において、ノイズによって生じてしまう偽信号も低減されうる。本実施形態では、学習モデル116は、少なくとも、ノイズ低減部412として動作するが、デモザイク部411とノイズ低減部412との両方として動作してもよい。ノイズ低減部412はデモザイク化画像のノイズを低減してノイズ低減画像を生成する。
【0020】
画像処理部400は、ノイズ低減部412から出力される出力画像からカラー画像(デバイスRGBデータ222)を生成するための画像処理を実行する。たとえば、画像処理部400は、ホワイトバランス部413、色変換部414、γ補正部415、トーンマッピング部416などを有する。ただし、これは、一例であり、画像処理部400は、これらのうち少なくとも一つを有していてもよいし、これらとは異なる画像処理機能を有していてもよい。あるいは、画像処理部400が省略されてもよい。なお、画像処理部400は、これらのうち少なくとも一つを有しているケースとは、たとえば、ホワイトバランス部413のみを有しているケースや、トーンマッピング部416を除く残りの三つの機能を有しているケースなどがある。
【0021】
以下では、一例として、画像処理部400は、ホワイトバランス部413、色変換部414、γ補正部415、トーンマッピング部416を有するものとして説明される。
【0022】
ホワイトバランス部413は、ノイズ低減部412から出力される、ノイズを低減されたカラー画像(例:デモザイクRGB形式の画像データ)のホワイトバランスを調整する。なお、デモザイクRGB形式の画像データは、リニアRGB形式やsRGB形式を含む、ノイズ低減部412から出力される画像データ(ホワイトバランス部413、色変換部414、γ補正部415、トーンマッピング部416で処理される前の画像データ)の形式を指す。色変換部414は、ホワイトバランスを調整されたカラー画像の色を変換する。たとえば、色変換部414は、色補正行列を用いて、入力されたカラー画像の色を補正(変換)する。ガンマ補正部415は、色変換部414から出力されるカラー画像の階調特性を補正する。トーンマッピング部416は、出力デバイスで色調を正確に再現するために、ガンマ補正部415から出力されるカラー画像に含まれる階調の範囲を求め、出力デバイスに応じた狭い範囲の色域にカラー画像の階調を再マッピングし、デバイスRGBデータ222を生成する。
【0023】
(5)教師画像生成装置
図5は教師画像生成装置112の機能を示す。逆画像処理部500は、元画像セット102から教師画像群114を生成するための画像処理を実行する。逆画像処理部500は、画像処理部400において実行される画像処理の逆変換処理を実行するように構成される。たとえば、逆画像処理部500は、逆ホワイトバランス部513、逆色変換部514、逆ガンマ補正部515、逆トーンマッピング部516などを有する。ただし、これは、一例であり、逆画像処理部500は、これらのうち少なくとも一つを有していてもよいし、これらとは異なる画像処理機能を有していてもよい。あるいは、逆画像処理部500が省略さてもよい。いずれにしても逆画像処理部500は、画像処理部400と対になっており、画像処理部400における画像処理に対する反対の画像処理(逆画像処理や逆変換と呼ばれてもよい)を実行するように構成されればよい。極端な場合、画像処理部400が省略され、それに応じて逆画像処理部500も省略される。
【0024】
ここでは、一例として、教師画像生成装置112の反対の画像処理(逆画像処理や逆変換と呼ばれてもよい)は、基本的に、画像処理装置117におけるホワイトバランス部413、色変換部414、ガンマ補正部415およびトーンマッピング部416により実行される画像処理に対して反対の画像処理を実行する。学習モデル116により出力される出力画像は、デモザイク部411とノイズ低減部412とにより処理されたカラー画像(例:デモザイクRGB形式の画像データ)である。したがって、教師画像としては、ホワイトバランス部413、色変換部414、ガンマ補正部415およびトーンマッピング部416が作用する前のカラー画像(例:デモザイクRGB形式の画像データ)が必要となる。
【0025】
逆トーンマッピング部516は、入力される元画像セット102に含まれる一つ一つのカラー画像に対して逆トーンマッピングを実行する。逆ガンマ補正部515は、逆トーンマッピング部516から出力されるカラー画像に対して逆ガンマ補正を実行する。逆色変換部514は、逆ガンマ補正部515から出力されるカラー画像に対して逆色変換を実行する。逆ホワイトバランス部513は、逆色変換部514から出力されるカラー画像に対して逆ホワイトバランス処理を実行する。これにより、学習モデル116により出力される出力画像と比較可能な教師画像群114(例:デモザイクRGB形式の画像データ)が生成される。
【0026】
(6)学習処理装置
図6は学習処理装置115の機能を示している。学習モデル116は、ニューラルネットワークをベースとしており、入力層に与えられた生徒画像群113に基づき、出力層に出力画像群616を出力するモデルである。入力層と出力層との間には中間層(隠れ層)が設けられており、中間層には複数のノードが存在する。あるノードから次のノードにデータを渡すときに係数(重み)が乗算される。したがって、学習モデル116は、複数の係数(ニューラルネットワークにおける複数のノード間に適用される重み)の集合と理解されてもよい。モデル実行部601は、生徒画像群113を学習モデル116に入力して、出力画像群616を出力する。出力層から複数の画素(画素値)は、一つの出力画像を形成する。
【0027】
誤差演算部602は、出力画像群616と教師画像群114とから誤差を求め、誤差を更新部603に渡す。なお、各誤差は、出力画像群616に含まれる一つの出力画像と、教師画像群114における一つの教師画像とから求められる。ここで、一つの出力画像の元になった入力画像(生徒画像)のさらに元になった元画像と、一つの教師画像の元になった元画像は同一である。つまり、つまり、生徒画像および教師画像は、共通の元画像の識別情報に関連付けられて管理されてもよい。
【0028】
更新部603は、誤差演算部602から出力される誤差が小さくなるように、学習モデル116内の係数を更新する。なお、誤差は一画素ずつ求められる。なお、学習の深度が進むにつれて、誤差は小さくなって行く。
【0029】
(7)生徒画像生成装置
図7は生徒画像生成装置の構造を示している。抽出部700は、元画像セット102に含まれる各元画像に対して付与されるノイズ領域をノイズ画像群101から抽出する。抽出部700は、たとえば、撮像条件取得部701、画像選択部702、領域サイズ取得部703およびノイズ領域切り出し部704から構成される。
【0030】
ノイズ画像群101に含まれる複数のノイズ画像のそれぞれは、撮像素子207においてそれぞれ暗電流のみが流れる素子から取得される画像である。暗電流の量は撮像装置100の個体差と撮像条件とに依存して変化し得る。ノイズ画像群101に含まれる複数のノイズ画像のそれぞれが撮像装置100により取得されたときの撮像条件は、同一であったり、類似していたり、全く異なっていたりする。そこで、より近い撮像条件で取得された複数のノイズ画像が必要となる。たとえば、ユーザが実際にノイズを低減したいと考えている撮像条件に対して近い撮像条件で取得された複数のノイズ画像が必要とされてもよい。撮像条件取得部701は、ノイズ画像群101に含まれる各ノイズ画像の撮像条件711を記憶装置302から取得する。ノイズ画像のファイルフォーマットが撮像条件を含むことができるファイルフォーマットである場合、撮像条件取得部701はそのファイルフォーマットからノイズ画像とともに撮像条件711を取得する。画像選択部702は、ノイズ画像群101に含まれる複数のノイズ画像のそれぞれの撮像条件711を比較し、撮像条件711が相互に同一または類似した複数(例:所定個数)のノイズ画像を選択する。領域サイズ取得部703は、ノイズ画像から切り出されるノイズ領域のサイズを取得する。なお、ノイズ領域のサイズは固定値であってもよいし、教師画像のサイズに応じて動的に決定されてもよい。
【0031】
ノイズ領域切り出し部704は、選択された各ノイズ画像からノイズ領域を切り出す。つまり、ノイズ領域のサイズは、ノイズ画像のサイズよりも小さい。
【0032】
ノイズ付与部705は、抽出部700により抽出されたノイズ領域を元画像に付与することで生徒画像を生成する。これにより、元画像セット102に含まれる複数の元画像から、撮像装置100に固有のノイズが付与された複数の生徒画像からなる生徒画像群113が生成される。
【0033】
なお、実際には、ノイズ付与部705から出力される画像はカラー画像(デバイスRGB)であることから、逆画像処理(線形化処理)とモザイク処理が必要となる。そのため、ノイズ付与部705の後段には、上述された逆トーンマッピング部516、逆ガンマ補正部515、逆色変換部514、逆ホワイトバランス部513に加え、モザイク部706が必要となる。逆トーンマッピング部516は、ノイズ付与部705から入力される、ノイズの付与されたカラー画像に対して逆トーンマッピングを実行する。逆ガンマ補正部515は、逆トーンマッピング部516から出力されるカラー画像に対して逆ガンマ補正を実行する。逆色変換部514は、逆ガンマ補正部515から出力されるカラー画像に対して逆色変換を実行する。逆ホワイトバランス部513は、逆色変換部514から出力されるカラー画像に対して逆ホワイトバランス処理を実行する。モザイク部706は、カラー画像をモザイク画像(べイヤー画像)に変換することで生徒画像を生成する。元画像セット102に含まれる複数の元画像について逆画像処理を適用することで、生徒画像群113が生成される。ただし、これは、一例であり、元画像セット102にRAW形式の画像情報が含まれている場合や元画像セット102がデモザイクRGB形式であった場合でもよい。これらの場合、逆画像処理部は、これらのうち少なくとも一つを有していてもよいし、これらとは異なる画像処理機能を有していてもよい。あるいは、逆画像処理部が省略さてもよい。いずれにしても逆画像処理部は、画像処理部と対になっており、画像処理部における画像処理に対する反対の画像処理(逆画像処理や逆変換と呼ばれてもよい)を実行するように構成されればよい。極端な場合、画像処理部が省略され、それに応じて逆画像処理部も省略されてもよい。
【0034】
(8)デモザイク処理
図8はデモザイク部411により実行されるデモザイク処理を示している。ベイヤー配列タイプのカラーフィルタを有する撮像素子207により生成されるRAWデータ221はベイヤーが画像(モザイク画像)となる。ベイヤー画像ではR画素、G画素、B画素のそれぞれで抜けが生じる。そこで、現像処理(デモザイク処理)では、抜けている画素の画素値を周辺画素の画素値により補間演算する。これにより、カラー画像(例:デバイスRGBデータ222)が得られる。補間演算の精度が低い場合、偽色が発生することがある。
【0035】
(9)ノイズ画像の取得
図9はノイズ画像の取得方法を示している。[0]以下において「ノイズ画像」とはノイズを含む画像である。それに対して「ノイズ領域」は、ノイズ画像から切り出される、ノイズを含む画素領域であって、元画像のセットから生徒画像を生成する際に元画像に対して合成される画素領域である。なお、ノイズ領域はノイズ画像の一部であることから、ノイズ領域もノイズ画像と呼ばれてもよい。画素領域900は、撮像素子207における複数の光電変換素子が配置された領域である。イメージサークル901は、レンズユニット205を通過してきた光が結像する領域である。イメージサークル901は、レンズユニット205の焦点距離に応じて変化する。単焦点タイプのレンズユニット205では、イメージサークル901のサイズはほぼ一定である。図9に示された事例では、イメージサークル901の外側に、光が照射されない画素領域が存在する。このような画素領域は、オプティカルブラック領域902と呼ばれることがある。オプティカルブラック領域902では光が照射されないことから、そこに存在する光電変換素子には暗電流しか流れない。つまり、オプティカルブラック領域902では、ノイズ成分のみからなる画像が生成されることになる。この例では、オプティカルブラック領域902から複数のノイズ領域903が切り出されている。図9では、オプティカルブラック領域902が画素領域900の短辺と平行に存在しているが、画素領域900の長辺と平行にオプティカルブラック領域902が存在していてもよい。
【0036】
図10は、図1で説明された遮光ユニット206により意図的に光を遮光することで、画素領域900の全体をオプティカルブラック領域902にすることが可能であることを示している。図10の事例では遮光ユニット206が必要になるものの、一回の撮像によって、より多くのサンプル(ノイズ領域903)を切り出し可能となる。
【0037】
(10)ノイズの付与方法
図11は、ノイズ画像1100と元画像1110とからノイズが付与された生徒画像1120を生成することを示している。ここでは、元画像1110は論理的に複数の画素領域1111に分割されており、各画素領域1111のサイズは、ノイズ領域903のサイズに等しいと、仮定されている。CPU301は、画素領域1111のサイズに基づき、ノイズ領域903の切り出しサイズを決定する。
【0038】
この例では、一つのノイズ画像1100から複数のノイズ領域903が抽出される。複数のノイズ領域903はそれぞれ、元画像1110を構成する複数の画素領域1111のいずれかに対して合成される。複数のノイズ領域903と複数の画素領域1111との関係は、ランダムに決定されてもよいし、何らかのルールに基づいて決定されてもよい。ランダム化を採用することで、特定のノイズに対する過学習を抑制することが可能となろう。
【0039】
この例では、一つのノイズ画像1100から複数のノイズ領域903が抽出されているが、これは、一例にすぎない。
【0040】
図12は、一つのノイズ画像1100からは一つのノイズ領域903のみが抽出されることを示している。図12によれば、ノイズ画像1100aから一つのノイズ領域903aが抽出されている。ノイズ画像1100bから一つのノイズ領域903bが抽出されている。ノイズ画像1100cから一つのノイズ領域903cが抽出されている。
【0041】
この場合、一つのノイズ画像1100a、1100b、1100cから抽出される一つのノイズ領域903a、903b、903cの位置は、同一であってもよいし、異なってもよい。後者の場合、ノイズ領域903a、903b、903cの位置は、重複しないように、ランダムに決定されてもよい。これも過学習を抑制することに役立つであろう。
【0042】
図13が例示するように、複数のノイズ画像1100a、1100b、1100c、...から抽出されるノイズ領域903の個数が異なってもよい。この例では、ノイズ画像1100aから二つのノイズ領域903a、903bが抽出されている。ノイズ画像1100bから二つのノイズ領域903c、903dが抽出されている。ノイズ画像1100cから一つのノイズ領域903eが抽出されている。各ノイズ画像1100から抽出されるノイズ領域903の位置は固定であってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、ランダムに抽出位置が決定されてもよい。
【0043】
このようにして、一つの元画像1110の全体にノイズ領域903が合成されることで、一つの生徒画像1120が完成する。ただし、実際には、この後に、逆画像処理とモザイク処理が適用されることで、生徒画像1120が完成する。
【0044】
(11)フローチャート
図14は、情報処理装置110のCPU301により実行される学習モデル116の学習処理を示すフローチャートである。
【0045】
S1401でCPU301(生徒画像生成装置111、教師画像生成装置112)は記憶装置302から教師用の元画像セット102を取得する。
【0046】
S1402でCPU301(生徒画像生成装置111)は撮像装置100からノイズ画像群101を取得する。
【0047】
S1403でCPU301(生徒画像生成装置111)は元画像セット102とノイズ画像群101とに基づき、生徒画像群113を生成する。S1403の詳細例は、図15を用いて後述される。
【0048】
S1404でCPU301(教師画像生成装置112)は元画像セット102から比較用の教師画像群114を生成する。なお、S1404は、S1401とS1405との間で実行さればよい。S1404は、S1402およびS1403より前に実行されてもよいし、S1402およびS1403より後に実行されてもよいし、S1402およびS1403と並行に実行されてもよい。
【0049】
S1405でCPU301(学習処理装置115)は、生徒画像群113と比較用の教師画像群114とを用いて学習モデル116について学習を実行する。
【0050】
S1406でCPU301は、学習済みの学習モデル116を記憶装置302に保存する。学習モデル116は、画像処理装置117が撮像装置100に搭載される場合、学習済みの学習モデル116は、通信回路303を介して撮像装置100に送信される。撮像装置100は、通信回路203を通じて、学習済みの学習モデル116を受信し、メモリ202に保存する。
【0051】
図15は、生徒画像の生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【0052】
S1501でCPU301(撮像条件取得部701)は、ノイズ画像群101に含まれる複数のノイズ画像1100のそれぞれの撮像条件711を取得する。
【0053】
S1502でCPU301(画像選択部702)は、複数のノイズ画像1100のそれぞれの撮像条件711を比較し、撮像条件711の近い複数のノイズ画像を選択する。ここで、選択されるノイズ画像の個数は予め定められていてもよい。あるいは、相互に近いと判定可能な範囲が予め定められており、その範囲内に属する複数の撮像条件711が選択されてもよい。たとえば、撮像条件711がノイズ画像1100を取得されたときの温度(撮像温度)である場合、下限温度以上でかつ上限温度未満である撮像温度に関連付けられている複数のノイズ画像1100が選択される。
【0054】
S1503でCPU301(ノイズ領域切り出し部704)は、選択された複数のノイズ画像1100からノイズ領域903を切り出す。
【0055】
S1504でCPU301(ノイズ付与部705)は、元画像セット102に対してノイズ領域903を合成する。つまり、元画像セット102に含まれる複数の元画像1110のそれぞれに対してノイズ領域903が合成される。これにより、ノイズが付与されたカラー画像が形成される。
【0056】
S1505でCPU301(逆トーンマッピング部516、逆ガンマ補正部515、逆色変換部514、逆ホワイトバランス部513)は、ノイズが付与されたカラー画像に対して逆画像処理を実行する。
【0057】
S1506でCPU301(モザイク部706)は、逆画像処理を適用されたカラー画像のモザイク化を実行する。これにより、生徒画像1120が生成される。
【0058】
(12)ノイズ付与部の位置の変形例
たとえば、図7では、ノイズ付与部705は逆トーンマッピング部516の前段に配置されているが、これは一例にすぎない。図16はモザイク部706の後段にノイズ付与部705が配置される例を示している。この場合、逆トーンマッピング部516は、元画像セット102に含まれる元画像1110に対して逆トーンマッピングを実行する。また、逆ガンマ補正部515は、逆トーンマッピング部516からの出力画像を処理する。逆色変換部514は逆ガンマ補正部515からの出力画像を処理する。逆ホワイトバランス部513は、逆色変換部514からの出力画像を処理する。モザイク部706は、逆ホワイトバランス部513からの出力画像を処理する。ノイズ付与部705は、モザイク部706からの出力画像に対してノイズ領域903を合成する。これにより、ノイズが付与された生徒画像群113が生成されてもよい。
【0059】
ノイズ成分が後段の画像処理を経て発生する二次的な偽信号を良く再現するという観点では、デバイスRGB形式の画像データとなった段階でノイズがサンプリングされることが好ましい場合がある。この観点からは、ノイズ付与部705は逆トーンマッピング部516の前段からモザイク部706の前段までのどこかに配置されればよいだろう。たとえば、図16において、ノイズ付与部705は、逆トーンマッピング部516と、逆ガンマ補正部515との間に配置されてもよい。図16において、ノイズ付与部705は、逆ガンマ補正部515と逆色変換部514との間に配置されてもよい。図16において、ノイズ付与部705は、逆色変換部514と逆ホワイトバランス部513との間に配置されてもよい。図16において、ノイズ付与部705は、逆ホワイトバランス部513とモザイク部706との間に配置されてもよい。つまり、ノイズ画像は、逆トーンマッピング部516の入力画像に対して付与されてもよいし、逆ガンマ補正部515の入力画像に対して付与されてもよいし、逆色変換部514の入力画像に対して付与されてもよいし、逆ホワイトバランス部513の入力画像に対して付与されてもよいし、モザイク部706の入力画像に対して付与されてもよいし、モザイク部706の出力画像に対して付与されてもよい。
【0060】
なお、ノイズ画像1100のサンプリング箇所は、ノイズ付与部705の配置に対応している。
【0061】
(13)効果の比較
図17は、本実施形態の効果を説明する図である。画像1601は、ノイズの付与されていない生徒画像により学習された学習モデル116(つまり、デモザイク機能のみを有する学習モデル)に対して、人工衛星に搭載された撮像装置100により撮像された画像を入力することで出力された画像を示している。画像1602は、ノイズの付与された生徒画像により学習された学習モデル116(つまり、デモザイク機能とノイズ低減機能を有する学習モデル)に対して、人工衛星に搭載された撮像装置100により撮像された画像を入力することで出力された画像を示している。画像1601ではノイズが残っていることが分かる。画像1602では、学習モデル116によってノイズが低減されていることが分かる。このように、撮像装置100により取得されたノイズ画像を用いて生成された生徒画像を学習モデル116に学習させることで、ノイズが精度よく低減される。
【0062】
(14)実施形態から導き出される技術思想
[観点1]
情報処理装置110は、所定の撮像装置100により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデル116を生成する画像処理装置の一例である。CPU301および抽出部700は、所定の撮像装置100により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、所定の撮像装置100の光学系(例:レンズユニット205)を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域(例:オプティカルブラック領域902、遮光された画素領域900)の画像をノイズ画像(ノイズ画像1100、ノイズ領域903)として抽出する抽出手段として動作する。CPU301およびノイズ付与部705は、教師画像(例:元画像セット102)に対してノイズ画像を合成して生徒画像(例:生徒画像群113)を生成する合成手段として動作する。CPU301および学習処理装置115は、学習モデル116に生徒画像を入力として与えて学習モデルを学習させる学習手段として動作する。
【0063】
観点1によれば、従来よりも簡単でかつ精度よくノイズを低減可能な学習モデル116が提供される。とりわけ、ノイズの低減対象となる画像を生成する撮像装置100により取得された実際のノイズ画像を用いて生徒画像が生成される。つまり、ノイズ画像の生成源と、ノイズの低減対象となる画像の生成源とが一致しているため、高いノイズ低減効果が期待される。なお、学習手法としては、学習モデル116から出力される出力画像が教師画像に近づくように学習モデルを更新するような手法が採用されてもよい。たとえば、学習モデル116から出力される出力画像と教師画像との差分(誤差)が小さくなるように学習モデル(重み係数)を更新するような手法が採用されてもよい。
【0064】
[観点2]
図11ないし図13が例示するように、教師画像(元画像1110)は、当該教師画像のサイズより小さな複数の部分画像(画素領域1111)から構成されてもよい。図12が例示するように、合成手段(ノイズ付与部705)は、教師画像を構成する複数の部分画像のそれぞれに対して、所定の撮像装置100により撮像された複数の画像からそれぞれ一つずつ取得された複数のノイズ画像(ノイズ領域903)のうち、いずれか一つを合成することで、生徒画像を生成してもよい。これにより、特定のノイズ画像1100に対する過学習が起きにくくなり、高いノイズの低減効果が得られるようになろう。
【0065】
[観点3]
図11ないし図13に関連して説明されたように、合成手段(ノイズ付与部705)は、複数の部分画像のそれぞれに対して適用されるノイズ画像を、複数のノイズ画像からランダムに選択してもよい。これにより、特定のノイズ画像1100に対する過学習が起きにくくなり、より高いノイズの低減効果が得られるようになろう。
【0066】
[観点4]
複数の部分画像のそれぞれに対して適用される各ノイズ画像は重複しないように選択されてもよい。これにより、特定のノイズ画像1100に対する過学習が起きにくくなり、さらに高いノイズの低減効果が得られるようになろう。
【0067】
[観点5]
一つの生徒画像を生成するために使用される複数のノイズ画像を抽出される複数の画像(例:ノイズ画像1100a、1100b、...)は、それぞれ同一の撮像条件で所定の撮像装置100により取得される。これにより、撮像条件が等しければノイズの発生傾向は類似するものとなる。よって、撮像条件が等しい複数のノイズ画像が選択されることで、よりノイズの低減効果が高い学習モデル116が得られるであろう。
【0068】
[観点6]
撮像条件は、所定の撮像装置100の温度、感度、および露光時間のうちの少なくとも一つを含みうる。これらは、ノイズの発生に寄与するパラメータであるため、ノイズ画像を選択するための基準として適切であろう。
【0069】
[観点7]
学習モデル116に入力される画像は、モザイク画像であってもよい。学習モデル116から出力される出力画像は、モザイク画像に対応するデモザイク画像であってもよい。この場合、学習モデル116は、ノイズの低減機能に加え、デモザイク機能を同時に実現できる学習モデルとなる。ただし、上述された学習モデル116が、カラー画像(例:デバイスRGB)を入力とし、カラー画像(例:デバイスRGB)を出力とするノイズ低減機能を備え、デモザイク機能を含まないモデルであってもよい。
【0070】
[観点8]
モザイク画像は、ベイヤー画像であってもよい。裏を返せば、ベイヤー配列以外のモザイク画像が適用されてもよい。
【0071】
[観点9]
ベイヤー画像は、RAW画像であってもよい。裏を返せば、RAW画像以外のベイヤー画像が採用されてもよい。
【0072】
[観点10]
合成手段(例:生徒画像生成装置111)は、教師画像に対してノイズ画像を合成して第一画像を生成し(例:ノイズ付与部705)、第一画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第二画像を生成し(例:逆トーンマッピング部516)、第二画像に対して逆ガンマ補正を適用して第三画像を生成し(例:逆ガンマ補正部515)、第三画像に対して逆色変換を適用して第四画像を生成し(例:逆色変換部514)、第四画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第五画像を生成し(例:逆ホワイトバランス部513)、第五画像に対してモザイク化を適用してモザイク画像である生徒画像を生成してもよい(例:モザイク部706)。
【0073】
[観点11]
教師画像生成装置112は、学習手段において出力画像と比較される比較用画像を教師画像から生成する生成手段として動作する。生成手段(例:教師画像生成装置112)は、教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第六画像を生成し(例:逆トーンマッピング部516)、第六画像に対して逆ガンマ補正を適用して第七画像を生成し(例:逆ガンマ補正部515)、第七画像に対して逆色変換を適用して第八画像を生成し(例:逆色変換部514)、第八画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して比較用画像を生成してもよい(例:逆ホワイトバランス部513)。
【0074】
[観点12]
図16が例示するように、合成手段(生徒画像生成装置111)は、教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第一画像を生成し(例:逆トーンマッピング部516)、第一画像に対して逆ガンマ補正を適用して第二画像を生成し(例:逆ガンマ補正部515)、第二画像に対して逆色変換を適用して第三画像を生成し(例:逆色変換部514)、第三画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第四画像を生成し(例:逆ホワイトバランス部513)、第四画像に対してモザイク化を適用して第五画像を生成し(例:逆色変換部514)、第五画像に対してノイズ画像を合成してモザイク画像である生徒画像を生成してもよい(例:ノイズ付与部705)。
【0075】
[観点13]
図7図16が例示するように、合成手段(生徒画像生成装置111)は、教師画像に対して逆トーンマッピング処理を適用して第一画像を生成し、第一画像に対して逆ガンマ補正を適用して第二画像を生成し、第二画像に対して逆色変換を適用して第三画像を生成し、第三画像に対して逆ホワイトバランス処理を適用して第四画像を生成し、第四画像に対してモザイク化を適用してモザイク画像である生徒画像を生成する。ここで、ノイズ画像は、第一画像、第二画像、第三画像、または、第四画像のうちのいずれかに対して合成される。たとえば、図7では、ノイズ付与部705は逆トーンマッピング部516の前段に配置されており、図16ではモザイク部706の後段に配置されているが、これらは例示にすぎない。図16に関して説明されたように、ノイズ付与部705は、逆トーンマッピング部516の前段からモザイク部706の後段までのいずれに配置されてもよい。つまり、ノイズ画像は、逆トーンマッピング部516の入力画像に対して付与されてもよいし、逆ガンマ補正部515の入力画像に対して付与されてもよいし、逆色変換部514の入力画像に対して付与されてもよいし、逆ホワイトバランス部513の入力画像に対して付与されてもよいし、モザイク部706の入力画像に対して付与されてもよいし、モザイク部706の出力画像に対して付与されてもよい。
【0076】
[観点14]
図9が例示するように、所定の撮像装置100により取得される画像は矩形の画像である。ノイズ画像(例:ノイズ領域903)は、矩形の画像において短辺または長辺と平行に存在する矩形のオプティカルブラック領域902から抽出されてもよい。
【0077】
[観点15]
図9が例示するように、矩形のオプティカルブラック領域902の面積はノイズ画像(例:ノイズ領域903)の面積よりも大きい。抽出手段(例:抽出部700)は、矩形のオプティカルブラック領域902から抽出されるノイズ画像の位置をランダムに決定し、矩形のオプティカルブラック領域902において決定された位置からノイズ画像を抽出してもよい。オプティカルブラック領域902は光が照射されない領域であることから、暗電流に起因したノイズ等を含むと考えられる。
【0078】
[観点16]
所定の撮像装置100は、人工衛星に搭載されるカメラであってもよい。この場合、ノイズには、宇宙線が所定の撮像装置100に入射することにより発生する輝点ノイズを含む。これにより、宇宙線に起因した輝点ノイズを精度よく低減することが可能となろう。
【0079】
[観点17]
画像処理装置117は、入力画像に含まれるノイズを低減するノイズ低減装置として機能する。通信回路203、303は、観点1から16のいずれか一項に記載の画像処理装置により生成された学習済みの学習モデル116に対して、所定の撮像装置100により取得された画像を入力画像として入力する入力手段として機能する。CPU201、301は、入力手段から入力された入力画像に対応する出力画像を学習モデル116から取得する取得手段として機能する。
【0080】
[観点18]
レンズユニット205は、光学系の一例である。撮像素子207は、光学系を通じて入射する光を画像信号に変換する撮像素子の一例である。CPU201および画像処理装置117は、撮像素子により取得された画像信号に対応する画像からノイズを低減する、観点17に記載のノイズ低減装置の一例である。図9が例示するように、撮像素子207の長辺は、光学系のイメージサークル901の直径よりも大きい。これにより、遮光ユニット206が無くても、オプティカルブラック領域902からノイズ領域903を取得できるようになろう。
【0081】
[観点19]
画像処理装置により実行され、所定の撮像装置により取得された画像に含まれるノイズを低減する学習モデルを生成する、学習方法であって、
所定の撮像装置により撮像された複数の画像のそれぞれに含まれ、所定の撮像装置の光学系を通過して来た光が照射されないオプティカルブラック領域の画像をノイズ画像として抽出する抽出工程(例:S1501~S1503)と、
教師画像に対してノイズ画像を合成して生徒画像を生成する合成工程(例:S1504~S1506)と、
学習モデルに生徒画像を入力として与えて学習モデルを学習させる学習工程(例:S1405)と、
を有する、学習方法。
【0082】
[観点20]
プログラム306は、コンピュータを観点1から16のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるプログラムの一例である。
【0083】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
100...撮像装置
110...情報処理装置
116...学習モデル
115...学習処理装置
700...抽出部
705...ノイズ付与部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17