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特開2025-125616センサシステム、移動体、センサシステムの制御方法、センサシステムの制御プログラム、および、コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025125616
(43)【公開日】2025-08-28
(54)【発明の名称】センサシステム、移動体、センサシステムの制御方法、センサシステムの制御プログラム、および、コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/023 20120101AFI20250821BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20250821BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20250821BHJP
【FI】
B60W50/023
B60W50/035
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021650
(22)【出願日】2024-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 拓哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BA64
3D241BA66
3D241CD24
3D241CE01
(57)【要約】
【課題】異常状態となった反射型センサの視野を補う。
【解決手段】センサシステムのコントローラは、第1の反射型センサの視野と第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、第1の反射型センサによる検知結果と第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行う。コントローラは、所定の変更条件が満たされた場合、第2の視野パターンに設定する。第2の視野パターンは、第1の方向において、第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の第1の反射型センサの視野と、第1の視野パターンにおける第2の反射型センサの視野との重複領域を、第1の視野パターンよりも増大させたパターンである。コントローラは、第2の視野パターンで、第1の反射型センサによる検知結果に基づき、測定対象に対するセンシングを行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反射型センサと、
第2の反射型センサと、
コントローラと、を備えるセンサシステムであって、
前記コントローラは、
前記第1の反射型センサの視野と前記第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果と前記第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行い、
所定の変更条件が満たされた場合、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第1の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第2の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させた第2の視野パターンに設定し、
前記第2の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果に基づき、前記測定対象に対するセンシングを行う、センサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記所定の変更条件には、前記コントローラが前記第2の反射型センサの異常を検知したことを含む、センサシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
前記コントローラは、
前記第1の視野パターンに対して前記第1の反射型センサの視野角を広くして、前記第2の視野パターンに設定し、
前記第1の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの角度分解能は、前記第2の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの角度分解能よりも高い、センサシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサシステムであって、
更に、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサに対して前記第2の反射型センサとは反対側に位置する第3の反射型センサを備え、
前記コントローラは、
前記第1の反射型センサの視野中心の向きを変更して、前記第2の視野パターンに設定し、
前記第3の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第3の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させる、センサシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のセンサシステムを備える移動体であって、
前記第1の反射型センサと前記第2の反射型センサとは、前記移動体の前側に配置されている、移動体。
【請求項6】
第1の反射型センサと、第2の反射型センサと、を備えるセンサシステムの制御方法であって、
前記第1の反射型センサの視野と前記第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果と前記第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行い、
所定の変更条件が満たされた場合、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第1の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第2の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させた第2の視野パターンに設定し、
前記第2の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果に基づき、前記測定対象に対するセンシングを行う、センサシステムの制御方法。
【請求項7】
第1の反射型センサと、第2の反射型センサと、を備えるセンサシステムが有するコントローラに、
前記第1の反射型センサの視野と前記第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果と前記第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行わせ、
所定の変更条件が満たされた場合、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第1の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第2の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させた第2の視野パターンに設定させ、
前記第2の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果に基づき、前記測定対象に対するセンシングを行わせる、センサシステムの制御プログラム。
【請求項8】
第1の反射型センサと、第2の反射型センサと、を備えるセンサシステムを制御するためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記センサシステムに対して、
前記第1の反射型センサの視野と前記第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果と前記第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行わせ、
所定の変更条件が満たされた場合、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第1の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第2の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させた第2の視野パターンに設定させ、
前記第2の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果に基づき、前記測定対象に対するセンシングを行わせる、コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
AD(Autonomous Driving:自動運転)やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)の進展に伴い、車両の走行時における周囲環境の把握や自己位置推定に用いる測定装置の一つとして、LiDAR(Light Detection And Ranging)の開発研究が進められている。LiDARは、反射型センサを備える。反射型センサは、測定対象にレーザ光を投光(照射)し、レーザ光が測定対象に反射して戻ってくる反射光を受光する。LiDARは、反射型センサがレーザ光を出射した投光タイミングと反射光を受光した受光タイミングとの時間差に基づき測定対象までの距離を測定することにより測定対象に関する情報を出力する。
【0003】
移動体(例えば車両)には、例えば第1の反射型センサと第2の反射型のセンサとを備えるセンサシステムが配置される。第1の反射型センサの視野と第2の反射型センサの視野とは異なる。このため、例えば第2の反射型センサが故障等によりセンシングを正常に行えなくなった場合、第2の反射型センサの視野に対するセンシングを行うことができなくなる。そこで、従来から、補完的な視野を有する補完用のセンサを別途配置する技術が知られている。補完用のセンサは、第2の反射型センサの視野を補完する視野を有している。このため、仮に第2の反射型センサが故障等しても、補完用のセンサによって、第2の反射型センサの視野が補完される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-512092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のセンサシステムでは、補完用のセンサを別途設ける必要があり、改良の余地があった。なお、このような課題は、移動体に配置されるセンサシステムに限らず、互いに視野が異なる複数の反射型センサを備えるセンサシステムに共通する課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるセンサシステムは、第1の反射型センサと、第2の反射型センサと、コントローラと、を備える。前記コントローラは、前記第1の反射型センサの視野と前記第2の反射型センサの視野とが、第1の方向に互いに隣り合う第1の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果と前記第2の反射型センサによる検知結果とに基づき、測定対象に対するセンシングを行い、所定の変更条件が満たされた場合、第2の視野パターンに設定する。第2の視野パターンは、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第1の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第2の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させたパターンである。前記コントローラは、前記第2の視野パターンで、前記第1の反射型センサによる検知結果に基づき、前記測定対象に対するセンシングを行う。本センサシステムによれば、所定の変更条件が満たされた場合、第1の反射型センサの視野中心の方向と視野角との少なくとも一方を変更し、第2の反射型センサの視野を補うことができる。
【0009】
(2)上記センサシステムにおいて、前記所定の変更条件には、前記コントローラが前記第2の反射型センサの異常を検知したことを含む構成としてもよい。本センサシステムによれば、第2の反射型センサに異常が発生した場合、第1の反射型センサの視野中心の方向と視野角との少なくとも一方を変更し、第2の反射型センサの視野を補うことができる。
【0010】
(3)上記センサシステムにおいて、前記コントローラは、前記第1の視野パターンに対して前記第1の反射型センサの視野角を広くして、前記第2の視野パターンに設定し、前記第1の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの角度分解能は、前記第2の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの角度分解能よりも高い構成としてもよい。本センサシステムによれば、例えば、第1の視野パターンにおける第1の反射型センサの角度分解能が、第2の視野パターン時と同じである場合に比べて、第1の視野パターンにおける第1の反射型センサのセンシング精度を向上させることができる。
【0011】
(4)上記センサシステムにおいて、更に、前記第1の方向において、前記第1の反射型センサに対して前記第2の反射型センサとは反対側に位置する第3の反射型センサを備え、前記コントローラは、前記第1の反射型センサの視野中心の向きを変更して、前記第2の視野パターンに設定し、前記第3の反射型センサの視野中心の向きと視野角との少なくとも一方を変更し、変更後の前記第3の反射型センサの視野と、前記第1の視野パターンにおける前記第1の反射型センサの視野との重複領域を、前記第1の視野パターンよりも増大させる構成としてもよい。本センサシステムによれば、第2の視野パターンにおいて、第3の反射型センサの視野中心の方向と視野角との少なくとも一方を変更し、第1の反射型センサの視野を補うことができる。
【0012】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、センサシステム、移動体、センサシステムの制御方法、センサシステムの制御プログラム、および、コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における車両1に設けられた複数の反射型センサ10の基本パターンを示す模式図
図2】反射型センサ10の構成を概略的に示すブロック図
図3】反射型センサ10の視野中心の向きを変更する構成を示す模式図
図4】反射型センサ10の視野角を変更する構成を示す模式図
図5】視野角と測定周期との関係を示す説明図
図6】周囲監視処理を示すフローチャート
図7】複数の反射型センサ10の変更パターンを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
A-1.車両1の構成:
図1は、本実施形態における車両1に設けられた複数の反射型センサ10の基本パターンを示す模式図である。図1および後述する図7には、車両1の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)および右方(RIGHT)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向および左右方向は、互いに直交する方向である。車両1は、移動体の一例である。
【0015】
図1に示すように、車両1は、四輪の自動車である。車両1には、センサシステム11が搭載されている。センサシステム11は、複数の反射型センサ10と、コントローラ60(後述する図2参照)と、を備える。
【0016】
複数の反射型センサ10は、フロントセンターセンサ10Aと、フロントライトセンサ10Bと、フロントレフトセンサ10Cと、リアセンターセンサ10D、リアライトセンサ10Eと、リアレフトセンサ10Fとを含む。図1には、基本パターンにおける各反射型センサ10A~10Fの視野(FOV(Field of View) 図1中の扇状の網掛け部分)が示されている。複数の反射型センサ10のうち、互いの視野Vが隣り合う3つの反射型センサ10は、第1の反射型センサと第2の反射型センサと第3の反射型センサとの一例である。基本パターンは、第1の視野パターンの一例である。
【0017】
フロントセンターセンサ10Aは、車両1の前端部の中央に配置されている。例えば、フロントセンターセンサ10Aは、右フロントランプ2と左フロントランプ2との間に配置されている。基本パターンにおけるフロントセンターセンサ10Aの視野Va1は、車両1の前方正面である。フロントライトセンサ10Bは、車両1の前端部の右側に配置されている。例えば、フロントライトセンサ10Bは、右フロントランプ2の近傍に配置されてもよいし、右フロントランプ2に内蔵されていてもよい。基本パターンにおけるフロントライトセンサ10Bの視野Vb1は、車両1の前方右側である。フロントレフトセンサ10Cは、車両1の前端部の左側に配置されている。例えば、フロントレフトセンサ10Cは、左フロントランプ2の近傍に配置されてもよいし、左フロントランプ2に内蔵されていてもよい。基本パターンにおけるフロントレフトセンサ10Cの視野Vc1は、車両1の前方左側である。
【0018】
リアセンターセンサ10Dは、車両1の後端部の中央に配置されている。例えば、リアセンターセンサ10Dは、右リアランプ4と左リアランプ4との間に配置されている。基本パターンにおけるリアセンターセンサ10Dの視野Vd1は、車両1の後方である。リアライトセンサ10Eは、車両1の後端部の右側に配置されている。例えば、リアライトセンサ10Eは、右リアランプ4の近傍に配置されてもよいし、右リアランプ4に内蔵されていてもよい。基本パターンにおけるリアライトセンサ10Eの視野Ve1は、車両1の右側である。リアレフトセンサ10Fは、車両1の後端部の左側に配置されている。例えば、リアレフトセンサ10Fは、左リアランプ4の近傍に配置されてもよいし、左リアランプ4に内蔵されていてもよい。基本パターンにおけるリアレフトセンサ10Fの視野Vf1は、車両1の左側である。
【0019】
A-2.反射型センサ10の構成:
図2は、反射型センサ10の構成を概略的に示すブロック図である。図2には、センサシステム11のうちの1つの反射型センサ10とコントローラ60とが示されている。コントローラ60には、上記複数の反射型センサ10のそれぞれが通信可能に接続されている。
【0020】
図2に示すように、反射型センサ10は、出射光L1(例えば光ビーム(レーザ光))を測定対象Wに照射する投光器20と、出射光L1が測定対象Wに反射して戻ってくる反射光L2(戻り光)を受光する受光器30とを備え、LiDARとして機能する。反射型センサ10は、投光器20が出射光L1を発したタイミングと受光器30が反射光L2を受光したタイミングとの差(レーザ光の飛行時間 以下、「TOF」(Time of Flight)という)を測定して測定対象Wに関する情報を取得する。
【0021】
反射型センサ10は、例えば、車両1の走行中において、人や他の車両等の物体の検出を補助するとともに、車両の運転者や車両の周囲に存在する者の安全確保、車両の運転中に周囲に存在する物体に与える損傷を低減するために有用な各種の情報を他の装置やユーザに提供する。
【0022】
投光器20は、光源22と投光光学系24と投光制御装置26と電流源28とを有している。
【0023】
光源22は、一つまたは複数の発光素子(図示しない)、もしくは一つまたは複数の発光素子アレイ(例えば、発光素子が線状(一次元的)や面状(二次元的)に配置されたもの)を有する発光源を含む。発光素子は、例えば、レーザダイオード、面発光タイプのレーザ発光素子(例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser 以下、「面発光素子」という)、複数の面発光素子が一次元的又は二次元的に基板(半導体基板、セラミック基板等)に配置された面発光素子アレイ(例えば、VCSELアレイ)等である。
【0024】
電流源28は、投光制御装置26から入力される制御信号に応じた電流を、光源22を構成する発光素子に供給する。電流源28は、例えば、発光素子に流す電流をオンオフするための周期的な方形波の電流を発光素子に供給する。
【0025】
投光制御装置26は、電流源28の制御信号を生成して電流源28に入力することにより、電流源28から発光素子に供給される電流(駆動電流)を制御する。投光制御装置26は、発光素子が発光したタイミング(発光素子が光を発したタイミング。以下、「投光タイミング」という)を示す信号をTOF測定装置40に入力する。投光制御装置26は、例えば、発光素子に流す電流のオンオフを周期的に繰り返す制御を行うことにより、発光素子を周期的に繰り返し発光させる。
【0026】
投光光学系24は、例えば、光源22が発した光に光学的な作用(屈折、散乱、回折等)を与えることにより出射光L1の配光を調節する。投光光学系24は、例えば、コリメートレンズ等の各種レンズ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0027】
受光器30は、受光部32と受光光学系34とを有している。
【0028】
受光光学系34は、投光器20からの出射光L1が測定対象W等で反射して戻ってくる反射光L2を受光部32に集光する。受光光学系34は、例えば、集光レンズ等の各種レンズ、波長フィルタ等の各種フィルタ、反射鏡(ミラー)等の光学部品を用いて構成される。
【0029】
受光部32は、複数の受光素子を有している。受光素子は、例えば、フォトダイオード、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)、バランス型光検出器等である。受光部32は、受光光学系34から入射する反射光L2を光電変換することにより、反射光L2の強度に応じた電流レベルまたは電圧レベルの受光信号を生成する。受光部32は、受光部32を構成する受光素子が反射光L2を受光したタイミング(以下、「受光タイミング」という)を示す信号や、受光素子が生成した受光信号をTOF測定装置40に入力する。
【0030】
反射型センサ10は、さらに、TOF測定装置40と制御回路42と通信I/F(Inter face)50とを備えている。
【0031】
TOF測定装置40は、投光制御装置26から入力される投光タイミングを示す信号と受光部32から入力される受光タイミングを示す信号とに基づきTOFを求める。TOF測定装置40は、例えば、TDC(Time to Digital Converter)回路を搭載した時間測定IC(集積回路:Integrated Circuit)を有している。TOF測定装置40は、求めたTOFと受光部32から入力された受光信号とを制御回路42に入力する。
【0032】
制御回路42は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等)を有している。制御回路42は、TOF測定装置40から入力される受光信号やTOFに基づき、測定対象Wの検出や測距等の各種測定に用いる情報を生成する。当該情報は、例えば、時間相関単一光子計数法(Time Correlated Signal Photon Counting)で用いるヒストグラム、測定対象Wの各点(ポイント)までの距離、ポイントクラウド(点群情報:point cloud)等である。また、制御回路42は、投光制御装置26や受光部32を制御する。制御回路42は、例えば、投光制御装置26や受光部32を制御することにより、ヒストグラムの生成にかかる処理が高速化もしくは最適化されるように、前述した投光タイミングや受光タイミングを制御する。制御回路42によって生成された情報は、通信I/F50を介して、コントローラ60と、当該情報を利用する装置(以下、「各種利用装置」という)とに提供(送信)される。
【0033】
各種利用装置は、例えば、ポイントクラウドによる環境地図の作成、スキャンマッチングアルゴリズム(NDT(Normal Distributions Transform)、ICP(Iterative Closest Point)等)を用いた自己位置推定(SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))等を行う。
【0034】
コントローラ60は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(例えばFGPA(Field Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)を用いて構成される。コントローラ60は、複数の反射型センサ10の動作を制御する。
【0035】
コントローラ60は、複数の反射型センサ10のそれぞれが異常状態であるか否かを個別に判断する。反射型センサ10の異常状態とは、反射型センサ10がセンシングを正常に行えない状態であり、例えば次の状態が挙げられる。
反射型センサ10の故障や断線等によって動作しなくなる。
投光器20の光源22の発光強度が規定値を超えてフィールセーフ機能により反射型センサ10のセンシング(投受光動作)が停止される。
反射型センサ10は正常に動作するが、投光光学系24や受光光学系34に埃等の異物が付着したり、損傷したりして、センシングが正常に行えない(視野が制約されるなど)。
コントローラ60は、受光部32の受光量が所定レベル以下であることや、車両1の中央制御装置(図示しない)から検知信号を受けることにより、上記異常状態の有無を判断することができる。
【0036】
コントローラ60は、記憶装置を含む。記憶装置は、例えばROMやRAM、HDD(hard disk drive)、SSD(solid-state drive)により構成される。記憶装置は、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種の処理を実行する際の作業領域やデータの記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶装置には、測定処理や後述する周囲監視処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されている。このコンピュータプログラムは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(図示せず)に格納された状態で提供され、あるいは、通信インターフェース(図示せず)を介して外部装置から取得可能な状態で提供され、センサシステム11上で動作可能な状態で記憶装置に格納される。
【0037】
A-3.反射型センサ10の視野中心Oの向きおよび視野角を変更するための構成:
図3は、反射型センサ10の視野中心の向きを変更する構成を示す模式図である。図3に示すように、反射型センサ10は、鉛直方向に沿った軸Qを中心に回動可能に車両1に設置されている。このため、反射型センサ10を回動させると、反射型センサ10の視野が、第1の視野V1から第2の視野V2に変更される。第1の視野V1と第2の視野V2とは、視野角θが同じであり、かつ、視野中心Oの向きが異なる。すなわち、反射型センサ10は、反射型センサ10の視野角θを変えることなく、視野中心Oの向きを変えることができるよう構成されている。
【0038】
図4は、反射型センサ10の視野角を変更する構成を示す模式図である。図4に示すように、反射型センサ10は、視野角θ(水平視野の幅)を変えることができるよう構成されている。図4では、反射型センサ10の視野が、第3の視野V3から第4の視野V4に変更されている。第3の視野V3と第4の視野V4とは、視野中心Oの向きが同じであり、かつ、視野角θが異なる(θ1<θ2)。すなわち、反射型センサ10は、視野中心Oの向きを変えることなく、反射型センサ10の視野角θを変えることができるよう構成されている。例えば、制御回路42は、投光器20の投光範囲と受光器30の受光範囲との少なくとも一方を変更することにより反射型センサ10の視野角θを変更することができる。
【0039】
図5は、視野Vと測定周期との関係を示す説明図である。図5の上段には、第3の視野V3が仮想的に示されており、下段には、第4の視野V4が仮想的に示されている。受光器30(受光部32)は、複数の受光素子が二次元的に配置されており、複数の受光素子のそれぞれが、第3の視野V3中の各測定点Pに対応している。
【0040】
第3の視野V3の水平視野角θ1は、第4の視野V4の水平視野角θ2よりも狭い(図4参照)。このため、図5に示すように、第3の視野V3の水平視野は、第4の視野V4の水平視野よりも狭い。第3の視野V3における反射型センサ10の角度分解能は、第4の視野V4における反射型センサ10の角度分解能よりも高い。すわなち、第3の視野V3において、互いに隣り合う測定点P同士の距離(以下、「測定間距離」)R1は、第4の視野V4における測定間距離R2よりも狭い。
【0041】
第3の視野V3の水平視野の測定点Pの数と、第4の視野V4の水平視野の測定点Pの数とは同じである。このため、1フレームにおける第3の視野V3の水平視野の測定周期と、1フレームにおける第4の視野V4の水平視野の測定周期とは同じである。すなわち、第3の視野V3では、第4の視野V4に対して、視野角は狭いが、測定周期を維持しつつ、高い角度分解能で高精度なセンシングを行うことができる。なお、第3の視野V3と第4の視野V4とで、垂直視野は同じである。
【0042】
A-4.周囲監視処理:
図6は、周囲監視処理を示すフローチャートである。周囲監視処理は、複数の反射型センサ10を用いて、車両1の周囲の物体等に対するセンシングを行う処理である。コントローラ60は、例えば利用装置から測定開始の指示を受けると、図6に示す周囲監視処理を実行する。コントローラ60は、センシングタイミングが到来したか否かを判断する(S110)。センシングタイミングは、各反射型センサ10の一フレーム単位の測定処理を開始するトリガーとなるタイミングである。センシング(測定処理)には、例えば、測定対象の検知、測定対象との距離測定、測定対象の形状測定などが含まれる。コントローラ60は、センシングタイミングが到来していないと判断した場合(S110:NO)、そのまま待機する。
【0043】
コントローラ60は、センシングタイミングが到来したと判断した場合(S110:YES)、複数の反射型センサ10の視野パターンを基準パターンに設定して、複数の反射型センサ10のそれぞれにセンシングを実行させる(S120)。基準パターンは、図1に示す視野パターンである。基準パターンは、第1の視野パターンの一例である。基準パターンは、6つの反射型センサ10(センサ10A~10F)を用いて、車両1の周囲を全周にわたってセンシングを行うパターンであり、互いに隣り合う2つの反射型センサ10同士の視野は、ほとんど重なっていない。
【0044】
コントローラ60は、複数の反射型センサ10の中から、異常状態となっている反射型センサ10(以下、「異常センサ」ということがある)の有無を判断する(S130)。コントローラ60は、例えば直前に実行されたセンシングにおける各反射型センサ10の受光結果や、外部装置からの通知信号等に基づき、異常センサの有無を判断する。コントローラ60は、異常センサが無いと判断した場合(S130:NO)、S110に戻り、次のセンシングタイミングが到来したら(S110:YES)、基準パターンを維持したまま、複数の反射型センサ10のそれぞれにセンシングを実行させる(S120)。
【0045】
コントローラ60は、異常センサが有ると判断した場合(S130:YES)、複数の反射型センサ10の視野パターンを、基準パターンから変更パターンに変更する(S140)。変更パターンは、第2の視野パターンの一例である。変更パターンは、基準パターンに対して、正常状態の反射型センサ10(以下、「正常センサ」ということがある)の視野中心の向きと視野角との少なくとも一方が変更され、変更後の正常センサの視野と、基準パターンにおける異常センサの視野との重複領域を増大させたパターンである。変更パターンに設定されることにより、異常センサによって欠落した視野が補完される。
【0046】
図7は、複数の反射型センサ10の変更パターンを示す模式図である。図7には、リアセンターセンサ10Dが異常センサになったときの変更パターンが例示されている。基準パターンにおいて、リアセンターセンサ10Dと視野同士が水平方向で互いに隣り合う反射型センサ10は、リアライトセンサ10Eとリアレフトセンサ10Fである。
【0047】
図7に示すように、変更パターンでは、基準パターンに対して、リアライトセンサ10Eの視野中心Oの向きが変更されることにより、リアライトセンサ10Eの変更後の視野Ve2と、リアセンターセンサ10D(異常センサ)の視野Vd1との重複領域が増大している。換言すれば、リアライトセンサ10Eの視野中心Oの向きが、リアセンターセンサ10Dの視野Vd1側に変更されることにより、リアライトセンサ10Eの変更後の視野Ve2が、リアセンターセンサ10Dの視野Vd1の一部を補完している。変更パターンでは、基準パターンに対して、リアレフトセンサ10Fの視野中心Oの向きが変更されることにより、リアレフトセンサ10Fの変更後の視野Vf2と、リアセンターセンサ10D(異常センサ)の視野Vd1との重複領域が増大している。換言すれば、リアレフトセンサ10Fの視野中心Oの向きが、リアセンターセンサ10Dの視野Vd1側に変更されることにより、リアレフトセンサ10Fの変更後の視野Ve2が、リアセンターセンサ10Dの視野Vd1の一部を補完している。
【0048】
変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントライトセンサ10Bの視野中心Oの向きが変更されることにより、フロントライトセンサ10Bの変更後の視野Vb2と、リアライトセンサ10Eの変更前の視野Ve1との重複領域が増大している。換言すれば、フロントライトセンサ10Bの視野中心Oの向きが、リアライトセンサ10Eの視野Ve1側に変更されることにより、フロントライトセンサ10Bの変更後の視野Vb2が、リアライトセンサ10Eの変更前の視野Ve1の一部を補完している。変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントレフトセンサ10Cの視野中心Oの向きが変更されることにより、フロントレフトセンサ10Cの変更後の視野Vc2と、リアレフトセンサ10Fの変更前の視野Vf1との重複領域が増大している。換言すれば、フロントレフトセンサ10Cの視野中心Oの向きが、リアレフトセンサ10Fの視野Vf1側に変更されることにより、リアレフトセンサ10Fの変更後の視野Vf2が、リアレフトセンサ10Fの変更前の視野Vf1の一部を補完している。
【0049】
変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントセンターセンサ10Aの視野角θが広くなっていることにより、フロントセンターセンサ10Aの変更後の視野Va2と、フロントライトセンサ10Bの変更前の視野Vb1との重複領域が増大している。換言すれば、フロントセンターセンサ10Aの視野が、フロントライトセンサ10Bの視野Vb1側に広がったことにより、フロントセンターセンサ10Aの変更後の視野Va2が、フロントライトセンサ10Bの変更前の視野Vb1の一部を補完している。変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントセンターセンサ10Aの視野角θが広くなっていることにより、フロントセンターセンサ10Aの変更後の視野Va2と、フロントレフトセンサ10Cの変更前の視野Vc1との重複領域が増大している。換言すれば、フロントセンターセンサ10Aの視野が、フロントレフトセンサ10Cの視野Vc1側に広がったことにより、フロントセンターセンサ10Aの変更後の視野Va2が、フロントレフトセンサ10Cの変更前の視野Vc1の一部を補完している。
【0050】
以上のように、変更パターンでは、正常センサの視野中心Oの向きと視野角θとの少なくとも一方を変更することによって、異常センサにより欠落した視野が補完され、かつ、車両1の全周に亘るセンシング(視野)が維持されている。
【0051】
変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントセンターセンサ10Aの視野角θが広くなっており、かつ、測定周期が維持されている。
【0052】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記実施形態における車両1、センサシステム11、反射型センサ10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、移動体は、四輪車両以外の車両(二輪車両等)でもよく、車両以外の移動体(移動式ロボット等)でもよい。センサシステム11は、移動体に限らず、所定の場所に固定して配置されてもよい。センサシステム11は、少なくとも2つの反射型センサを備える構成であればよい。
【0054】
上記実施形態において、図4に示す構成において、反射型センサ10の最大視野角の範囲内において、投光器20の投光範囲と受光器30の受光範囲との少なくとも一方を変更することにより、反射型センサ10の視野角θと視野中心Oの向きとの少なくとも一方を変更してもよい。また、上記実施形態では、第1の方向は、水平方向であったが、これに限らず、水平方向以外の方向(例えば垂直方向や、垂直方向に対して傾斜する方向)でもよい。例えば、第1の反射型センサの視野と第2の反射型センサの視野とが、垂直(鉛直)方向に互いに隣り合うセンサシステムにおいて、第1の反射型センサの垂直視野中心の向きと垂直視野角との少なくとも一方を変更してもよい。また、第1の反射型センサの垂直視野中心の向きと垂直視野角との両方を変更してもよい。
【0055】
上記実施形態の周囲監視処理では、変更条件として、異常センサの検知を例示したが、これに限らず、例えば運転手等による入力操作や車両側の制御装置により変更指示を受けた場合などもよい。上記実施形態において、変更パターンでは、基準パターンに対して、フロントセンターセンサ10Aの測定周期を長くして角度分解能を維持してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:車両 10:反射型センサ 10A(10A~10F):フロントセンターセンサ 11:センサシステム 20:投光器 22:光源 24:投光光学系 26:投光制御装置 28:電流源 30:受光器 32:受光部 34:受光光学系 40:TOF測定装置 42:制御回路 50:通信I/F 60:コントローラ CPU:マルチコア IC:時間測定 L1:出射光 L2:反射光 O:視野中心 P:測定点 Q:沿った軸 W:測定対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7