(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012562
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 39/28 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B29C39/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115471
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA01
4F202CB01
4F202CK87
4F202CK90
4F202CL46
4F202CL50
(57)【要約】
【課題】バリの発生を防止できる成形型を提供する。
【解決手段】成形型10は、キャビティ12aを区画するシール部14を備え、第1方向に分割する分割型12と、第1方向に交差する第2方向から、シール部14を押す押圧手段16と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを区画するシール部を備え、第1方向に分割する分割型と、
前記第1方向に交差する第2方向から、前記シール部を押す押圧手段と、
を備える成形型。
【請求項2】
前記分割型は、第1型と、前記第1型との間に前記キャビティを形成する第2型とを含み、
前記シール部において、前記第2型は前記第1型よりも内側に配置され、
前記押圧手段は、前記第1型の外面を押す請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記シール部に沿って複数設けられている請求項1に記載の成形型。
【請求項4】
前記押圧手段の押圧量を調整可能な調整手段を備える請求項1に記載の成形型。
【請求項5】
前記分割型は、鋳造型である請求項1~4の何れか一項に記載の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形型では、上型と下型との間に形成されるキャビティに樹脂材料が注入されて、成形品が成形される。上型と下型とが当接するパーティング面に樹脂材料が侵入すると、バリが生じてしまうため、ゴムなどの弾性体からなるシールをパーティング面に配置することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールは、成形を繰り返し行うと、割れや削れやヘタリなどが生じて、バリが発生してしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、バリの発生を防止できる成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成形型の第1態様は、
キャビティを区画するシール部を備え、第1方向に分割する分割型と、
前記第1方向に交差する第2方向から、前記シール部を押す押圧手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明に係る成形型の第2態様は、前記第1態様において、
前記分割型は、第1型と、前記第1型との間に前記キャビティを形成する第2型とを含み、
前記シール部において、前記第2型は前記第1型よりも内側に配置され、
前記押圧手段は、前記第1型の外面を押すようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る成形型の第3態様は、前記第1態様又は前記第2態様において、
前記押圧手段は、前記シール部に沿って複数設けられていてもよい。
【0009】
本発明に係る成形型の第4態様は、前記第1態様、前記第2態様又は前記第3態様の何れか1つにおいて、
前記押圧手段の押圧量を調整可能な調整手段を備えていてもよい。
【0010】
本発明に係る成形型の第5態様は、前記第1態様、前記第2態様、前記第3態様又は前記第4態様の何れか1つにおいて、
前記分割型は、鋳造型であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る成形型によれば、バリの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る成形型を示す側面図である。
【
図5】実施例の成形型の要部を示す拡大端面図である。
【
図6】実施例の成形型で成形された発泡成形品を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一例を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0014】
図1及び
図2に示すように、実施例に係る成形型10は、分割可能な分割型12と、分割型12におけるキャビティ12aを区画するシール部14を押す押圧手段16とを備えている。成形型10は、キャビティ12aに供給された樹脂原料を発泡成形することで、シートクッションなどの発泡成形品50(
図6参照)を製造する。
【0015】
図3及び
図4に示すように、分割型12は、第1型20と、第1型20との間にキャビティ12aを形成する第2型22とを備えている。実施例の分割型12において、第1型20が下型であり、第2型22が、型閉じ時に第1型20の上側に配置される上型である。分割型12は、第2型22を上側に移動することで、第1型20及び第2型22を互いに分割させて型開きする。実施例では、分割型12を分割する第1方向に、上下方向である縦方向が対応し、第1方向と交差する第2方向が、前後方向及び左右方向を含む横方向に対応する。
【0016】
分割型12は、金属の切削加工型であってもよいが、例えばアルミニウムやニッケルなどを電気鋳造して形成される鋳造型であることが好ましい。分割型12が鋳造型であることで、第1型20及び第2型22の板厚を薄く形成することができ、後述する押圧手段16の押圧によって、シール部14を効果的に封止することができる。
【0017】
図3及び
図4に示すように、第1型20は、発泡成形品50を成形する第1型面部24と、第1型面部24から上側に延びる第1型合わせ部26と、第1型合わせ部26から屈曲して横方向外側へ延びる第1フランジ部28と、第1支持部36とを備えている。第1型面部24、第1型合わせ部26及び第1フランジ部28は、薄板状の金属材料で構成されている。第1型面部24は、上側に開口する凹形状に形成されている。第1型合わせ部26は、第1型面部24の外周部に連なり、下側から上側に向かうにつれて外側へ開くように傾いている。
【0018】
第1支持部36は、例えば第1フランジ部28の外縁から下側へ延び、第1型合わせ部26の横方向外側を囲う壁状に配置されている。第1支持部36は、第1型20を支持する。なお、第1型面部24の外面から下側へ延びる第1支持部36が設けられていてもよい。第1支持部36は、第1型合わせ部26よりも板厚が大きく、第1型合わせ部26よりも剛性が高い。
【0019】
第2型22は、発泡成形品50を成形する第2型面部30と、第2型面部30から上側に延びる第2型合わせ部32と、第2型合わせ部32から屈曲して横方向外側へ延びる第2フランジ部34と、第2支持部38とを備えている。第2型面部30、第2型合わせ部32及び第2フランジ部34は、薄板状の金属材料で構成されている。第2型面部30は、下側に開口する凹形状に形成されている。第2型面部30が第1型面部24の上側に配置され、第2型面部30の下端と第1型面部24の上端が合わさることで、キャビティ12aが形成される。
【0020】
第2型合わせ部32は、下向きに延びる第2型面部30の外周部に連なると共に、該外周部から曲がって上向きに延びている。第2型合わせ部32は、第1型合わせ部26と同様に、下側から上側に向かうにつれて外側へ開くように傾いている。また、第2型合わせ部32は、分割型12を型閉じした際に、第1型合わせ部26の横方向内側に配置される。分割型12では、分割型12を型閉じした際に、第2型合わせ部32における第2型面部30に繋がる根元部分の外面が、第1型合わせ部26における第1型面部24に繋がる根元部分の内面に当接し、第2フランジ部34が第1フランジ部28の上側に重なる。
【0021】
第2支持部38は、例えば第2フランジ部34の外縁から上側へ延びる壁状に形成されている。第2支持部38は、第2型22を補強する。なお、第2型面部30の外面から上側へ延びる第2支持部38が設けられていてもよい。
【0022】
図5に示すように、シール部14は、分割型12を型閉じした際に、互いに当接する第1型合わせ部26と第2型合わせ部32とによって構成される。シール部14において、第2型22の第2型合わせ部32が第1型20の第1型合わせ部26よりも内側に配置され、第1型合わせ部26と第2型合わせ部32とが横方向において内外に重なり合っている。分割型12を型閉じした際に、シール部14は、第1型面部24と第2型面部30との合わせ目を封止する。シール部14において、第1型合わせ部26と第2型合わせ部32との間にゴム等の緩衝材が配置されておらず、金属材料で構成された比較的硬い第1型合わせ部26と第2型合わせ部32とが直接当接している。シール部14は、第1型面部24と第2型面部30との合わせ目に沿って、合わせ目の全周に設けられている。このように、シール部14は、縦方向(第1方向)と交差する周方向に沿って延びている。
【0023】
図1及び
図4に示すように、成形型10は、第1支持部36の一縁部と第2支持部38の一縁部とを繋ぐヒンジ40を備えている。分割型12では、ヒンジ40を支点として、第2型22が第1型20に対して開閉する。
【0024】
図3及び
図4に示すように、押圧手段16は、第1型合わせ部26の横方向外側に配置された第1支持部36に設けられている。押圧手段16は、分割型12のシール部14を横方向(第2方向)から押す。より具体的には、押圧手段16は、第1型20における第1型合わせ部26の外面を、横方向外側から内側へ向けて押す。
【0025】
図1及び
図2に示すように、押圧手段16は、シール部14に沿って複数設けられている。具体的には、第1型合わせ部26を前後左右から取り囲む各第1支持部36には、複数の押圧手段16が、シール部14に沿って互いに間隔をあけて配置されている。
【0026】
図5(a)に示すように、実施例の押圧手段16は、ボルトが用いられている。押圧手段16には、ナット42が取り付けられており、ナット42が取り付けられた押圧手段16が、第1支持部36の外面に形成された雌ネジ孔44により第1支持部36に取り付けられている。
図5(b)に示すように、押圧手段16は、自身が回転されることで、押圧手段16の雄ネジと雌ネジ孔44の雌ネジとの噛み合い構造により、横方向に移動する。押圧手段16を横方向内側に移動することで、押圧手段16の先端を第1型合わせ部26の外面に押し当てて、シール部14に対する押圧手段16の押圧量が増すように変更できる。これに対して、押圧手段16を横方向外側に移動することで、シール部14に対する押圧手段16の押圧量が減るように変更できる。このように、成形型10は、シール部14に対する押圧手段16の押圧量を変更可能に構成されている。
【0027】
押圧手段16の押圧量が変更されると、押圧手段16に取り付けられたナット42が第1支持部36の外面に押し当てられる。
図5(b)に示すように、ナット42は、自身が回転されることで、押圧手段16の雄ネジとナット42の雌ネジとの噛み合い構造により、横方向に移動し、第1支持部36の外面に押し当てられる。ナット42が第1支持部36の外面に押し当てられることで、第1支持部36に対する押圧手段16の移動が規制される。この結果、押圧手段16の押圧量が維持される。このように、成形型10は、シール部14に対する押圧手段16の押圧量を調整可能な調整手段を備え、実施例の調整手段は、第1支持部36の外面に形成された雌ネジ孔44とナット42によるものである。
【0028】
前述した成形型10によれば、分割型12におけるキャビティ12aを区画するシール部14を、分割型12が分離する縦方向と交差する横方向から、押圧手段16で押すことで、シール部14の隙間を無くしてシール部14のシール性を向上できる。これにより、成形型10で製造される発泡成形品50のパーティングラインPLに、バリが発生することを防止できる(
図6参照)。また、分割型12のシール部14を押圧手段16で押すので、シール部14を削ってシール部14の当たりをすり合わせる作業や、ゴム等のシール材を定期的に更新する作業を省略することができ、成形型10による発泡成形品50の生産性を向上できる。更に、分割型12のシール部14を押圧手段16で押して、シール部14のシール性を確保できるので、分割型12の間にゴム等のシール材を挟んでシールする構成のように、シール部14が経時的に劣化することはなく、シール部14の耐久性を向上できる。
【0029】
シール部14において、第2型22の第2型合わせ部32が第1型20の第1型合わせ部26よりも内側に配置されているので、押圧手段16が、第1型合わせ部26の外面を押すことで、第1型合わせ部26が内側の第2型合わせ部32に向けて押し付けられて、シール部14のシール性を向上できる。
【0030】
成形型10において、押圧手段16が、シール部14に沿って複数設けられているので、複数の押圧手段16によってシール部14をバランスよく押さえて、シール部14の周方向におけるシール性を向上できる。また、シール部14の当たり具合に合わせて、個々の押圧手段16の押圧量を変更することで、第1型20と第2型22との周長差をバランスよく分散できる。
【0031】
成形型10は、押圧手段16の押圧量を調整可能な調整手段を備えているので、シール部14の当たり具合に応じて変更した押圧手段16の押圧量を維持することができる。これにより、押圧手段16の緩み等によりシール部14のシール性が変化することを回避できる。また、シール部14のシール性が経時的に変化した場合には、調整手段による押圧手段16の移動の規制を一時的に解除し、押圧手段16の押圧量を変更し、再び調整手段により押圧手段16の移動を規制する。これにより、シール部14のシール性が経時的に変化した場合でも、シール性が高い状態を維持することができる。
【0032】
分割型12が、鋳造型であることで、第1型20の第1型合わせ部26を薄くすることができ、押圧手段16の押圧によって第1型合わせ部26を内側の第2型合わせ部32に向けて変形させることができる。このように、押圧手段16による第1型20の押圧をシール部14に効果的に作用させることができ、シール部14のシール性を向上できる。
【0033】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施例では、押圧手段としてボルトを用いたが、これに限らず、例えば油圧などの流体圧シリンダを押圧手段に用いてもよい。
(2)実施例では、成形型として、発泡成形品を成形する発泡成形型を挙げたが、これに限らず、本開示の成形型を、射出成形品を成形する射出成形型に適用してもよい。