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特開2025-125893空気調和システム、制御装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025125893
(43)【公開日】2025-08-28
(54)【発明の名称】空気調和システム、制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20250821BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20250821BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20250821BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/46
F24F11/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022145
(22)【出願日】2024-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AB07
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA16
3L260CA22
3L260CB62
3L260CB63
3L260EA08
3L260FA04
3L260FB02
3L260FC14
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費量を抑制することができる空気調和システム、制御装置および制御方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、第1制御部と、第2制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第1制御部は、空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる上部温度を目標上部温度としたとき、上部温度が目標上部温度に近づくように第1室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度が目標下部温度に近づくように第2室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間を暖房するとき、目標下部温度を目標上部温度より低く設定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、
前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、
前記空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる前記上部温度を目標上部温度としたとき、前記上部温度が前記目標上部温度に近づくように前記第1室内機の運転を制御する、第1制御部と、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度が前記目標下部温度に近づくように前記第2室内機の運転を制御する第2制御部と、を有し、
前記第2制御部は、前記空間を暖房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より低く設定する、
空気調和システム。
【請求項2】
前記空間の外部の温度を外部温度とし、前記目標上部温度と前記目標下部温度との差を目標温度差としたとき、
前記第2制御部は、前記外部温度が第1温度である場合の前記目標温度差を、前記外部温度が前記第1温度よりも高い第2温度である場合の前記目標温度差より、小さく設定する、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、
前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、
前記空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる前記上部温度を目標上部温度としたとき、前記上部温度が前記目標上部温度に近づくように前記第1室内機の運転を制御する、第1制御部と、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度が前記目標下部温度に近づくように前記第2室内機の運転を制御する第2制御部と、を有し、
前記第2制御部は、前記空間を冷房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より高く設定する、
空気調和システム。
【請求項4】
前記第2制御部は、前記下部温度が前記目標下部温度を下回った後に、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整されない風を吹き出す結露防止運転を、前記第2室内機に指示する、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記空間の床下から前記空間の内部に対して吹き出す風の温度を、前記空間の露点温度より高く設定する結露防止運転を、前記第2室内機に指示する、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記第2制御部は、前記結露防止運転時間を冷房運転時間の半分以下に設定する、
請求項4または5に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記第1室内機の定格出力および前記第2室内機の定格出力の合計値に対する、前記第2室内機の定格出力の容量割合は、10%以上50%以下である、
請求項1または3に記載の空気調和システム。
【請求項8】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御装置であって、
前記空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる前記上部温度を目標上部温度としたとき、前記上部温度が前記目標上部温度に近づくように前記第1室内機の運転を制御し、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度が前記目標下部温度に近づくように前記第2室内機の運転を制御し、
前記空間を暖房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より低く設定し、
前記空間を冷房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より高く設定する、
制御装置。
【請求項9】
空間の上部から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第1室内機と、前記空間の床下から前記空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す第2室内機と、を有する空気調和システムの制御方法であって、
前記空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる前記上部温度を目標上部温度としたとき、前記上部温度が前記目標上部温度に近づくように前記第1室内機の運転を制御するステップと、
前記空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる前記下部温度を目標下部温度としたとき、前記下部温度が前記目標下部温度に近づくように前記第2室内機の運転を制御するステップと、
前記空間を暖房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より低く設定するステップと、
前記空間を冷房するとき、前記目標下部温度を前記目標上部温度より高く設定するステップと、を有する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和システム、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1室内機と、第2室内機と、を有する空気調和システムが提案されている。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。空気調和システムには、エネルギー消費量を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3263324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー消費量を抑制することができる空気調和システム、制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の態様1の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、第1制御部と、第2制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第1制御部は、空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる上部温度を目標上部温度としたとき、上部温度が目標上部温度に近づくように第1室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度が目標下部温度に近づくように第2室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間を暖房するとき、目標下部温度を目標上部温度より低く設定する。
【0006】
実施形態の態様2では、態様1に記載の空気調和システムにおいて、空間の外部の温度を外部温度とし、目標上部温度と目標下部温度との差を目標温度差とする。第2制御部は、外部温度が第1温度である場合の目標温度差を、外部温度が第1温度よりも高い第2温度である場合の目標温度差より、小さく設定する。
【0007】
実施形態の態様3の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、第1制御部と、第2制御部と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第2室内機は、空間の床下から空間の内部に対して温度調整された風を吹き出す。第1制御部は、空間の上部の温度を上部温度とし、目標となる上部温度を目標上部温度としたとき、上部温度が目標上部温度に近づくように第1室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間の下部の温度を下部温度とし、目標となる下部温度を目標下部温度としたとき、下部温度が目標下部温度に近づくように第2室内機の運転を制御する。第2制御部は、空間を冷房するとき、目標下部温度を目標上部温度より高く設定する。
【0008】
実施形態の態様4では、態様3に記載の空気調和システムにおいて、第2制御部が、下部温度が目標下部温度を下回った後に、空間の床下から空間の内部に対して温度調整されない風を吹き出す結露防止運転を、第2室内機に指示する。
【0009】
実施形態の態様5では、態様3に記載の空気調和システムにおいて、第2制御部が、空間の床下から空間の内部に対して吹き出す風の温度を、空間の露点温度より高く設定する結露防止運転を、第2室内機に指示する。
実施形態の態様6では、態様4または5に記載の空気調和システムにおいて、第2制御部は、結露防止運転時間を冷房運転時間の半分以下に設定する。
【0010】
実施形態の態様7では、態様1から6のいずれか1つに記載の空気調和システムにおいて、第1室内機の定格出力および第2室内機の定格出力の合計値に対する、第2室内機の定格出力の容量割合が、10%以上50%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の空気調和システムによる空気調和制御の概要を説明するための模式図。
図2】圧縮機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示すグラフ。
図3】実施形態の空気調和システムの全体構成を示すブロック図。
図4】第1室内機の動作を示すフローチャート。
図5】第2室内機の暖房運転の動作を示すフローチャート。
図6】比較例の空気調和システムが暖房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフ。
図7】実施形態の空気調和システムが暖房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフ。
図8】第2室内機の冷房運転の動作を示すフローチャート。
図9】比較例の空気調和システムが冷房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフ。
図10】実施形態の空気調和システムが冷房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の空気調和システム、制御装置および制御方法を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施形態における空気調和システム1による空気調和制御の概要を説明するための模式図である。図1には、空間Sを含む建築物の一部分の垂直断面図が示されている。例えば、建築物はオフィスビルであり、空間Sはオフィスである。空気調和システム1は、空間Sの空気を調和するシステムである。空気調和システム1は、第1室内機(天井吹出し式室内機)10と、第2室内機(床吹出し式室内機)20と、室外機30と、リモコン(リモートコントローラ)25と、を有する。
【0014】
第1室内機10は、天井吹出し式空気調和装置の室内機である。第1室内機10は、熱交換器や送風機、膨張弁などを含む。例えば、第1室内機10は、天井カセット形4方向吹出しタイプの室内機である。第1室内機10は、空間Sの上部である天井から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。複数の第1室内機10が、空間Sの天井に間隔を置いて設置されている。
【0015】
第2室内機20は、床吹出し式空気調和装置の室内機である。第2室内機20は、熱交換器や送風機、膨張弁などを含む。第2室内機20は、空間Sの天井裏に設置されている。空間Sの側壁には、垂直ダクト40が設置されている。空間Sの床下は、二重床になっており、床下給気チャンバー45として機能する。床下給気チャンバー45の代わりに、水平ダクトが設置されてもよい。空間Sの床面には、複数の吹出し口50が設けられている。第2室内機20から吐出された空気は、垂直ダクト40および床下給気チャンバー45を通り、複数の吹出し口50から空間Sに吹き出される。第2室内機20は、空間Sの床下から空間Sの内部に対して温度調整された風を吹き出す。
【0016】
室外機30は、建築物の外側に設置される。室外機30は、圧縮機や四方弁、熱交換器などを含む。室外機30に対して、複数の第1室内機10および第2室内機20が、冷媒配管35を介して並列に接続され、冷凍サイクル装置が形成されている。空気調和システム1は、マルチ型の空気調和システムである。
【0017】
空気調和システム1は、天井吹出し式空気調和装置に加えて、床吹出し式空気調和装置を有する。これにより、空間Sの上下の温度差が小さくなる。足元が暖められるので、快適性が高まる。設定温度が抑えられるので、エネルギー消費量が抑制される。
【0018】
空気調和システム1における第2室内機20の容量割合について説明する。
図2は、圧縮機の部分負荷率とエネルギー効率との関係を示すグラフである。圧縮機の部分負荷率は、定格出力に対する出力比である。エネルギー効率は、冷凍サイクルの成績係数(Coefficient Of Performance:COP)である。図2に示すように、圧縮機の部分負荷率が25~60%(出力比が0.25~0.6)の場合に、冷凍サイクルのエネルギー効率が大きくなる。
【0019】
第1室内機10は、通常、空調エリアに対して馬力の大きいものが選定される。その理由は、極度の高温日の場合でも、冷房運転の能力が不足することを避けるためである。馬力が大きい第1室内機10が設置されると、部分負荷率が小さい状態で圧縮機が運転されやすい。例えば、部分負荷率が10%以下での運転時間が長くなり、25~60%での運転時間が短くなる。また第1室内機10は、主に対流を利用して空調を行うため、目標温度に到達するまでの時間が短い。第1室内機10が目標温度付近で運転および停止を繰り返すと、圧縮機が断続運転されることになる。圧縮機の断続運転は、省エネルギーの観点では好ましくない。
【0020】
一方、第2室内機20では、部分負荷率が25~60%で圧縮機が運転されやすい。ただし、第2室内機20では、床下スラブなど建物躯体に吸収される熱量が多いので、目標温度に到達するまでの時間が長い。そのため、部分負荷率が90%以上で圧縮機が運転される場合もあり、高効率とは言えない。
【0021】
そのため、第1室内機10および第2室内機20を併用することが望ましい。さらに、室外機30の全容量に対する第2室内機20の容量割合を、10%以上50%以下とすることが望ましい。例えば、複数台の第1室内機10の定格出力を12馬力とし、複数台の第2室内機20の定格出力を4馬力とする。両者の定格出力の合計値である16馬力に対して、第2室内機20の定格出力の4馬力は、25%の容量割合である。
【0022】
第2室内機20の容量割合を10%以上とすることで、部分負荷率が25%未満となる圧縮機の断続運転を抑制することができる。第2室内機20の容量割合を50%以下とすることで、部分負荷率が60%を超える圧縮機の高負荷運転を抑制することができる。したがって、第2室内機20の容量割合を10%以上50%以下とすることにより、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0023】
図1に戻り、空気調和システム1は、下部温度センサ21と、吹出温度センサ22と、外部温度センサ31と、を有する。
下部温度センサ(リモートサーモセンサ)21は、空間Sの下部の温度(下部温度)を計測する。例えば、下部温度センサ21は、床上30cmの高さに設置される。下部温度センサ21は、下部温度に対応する信号(下部温度信号)を出力する。空気調和システム1は、下部温度センサ21に替えて、輻射温度センサを有してもよい。輻射温度センサは、天井面などに設置され、床面の輻射温度を計測する。
【0024】
吹出温度センサ22は、吹出し口50から吹き出される空気の温度(吹出温度)を計測する。吹出温度センサ22は、吹出温度に対応する信号(吹出温度信号)を出力する。
外部温度センサ31は、空間Sの外部の温度(外部温度)を計測する。外部温度センサ31は、外部温度に対応する信号(外部温度信号)を出力する。
【0025】
図3は、実施形態の空気調和システム1の全体構成を示すブロック図である。
リモコン25は、空気調和システム1に対するユーザの指示に関する入力を受け付ける入力インタフェースである。リモコン25は、空気調和システム1の運転開始および運転終了の指示(運転指示)に関する入力を受け付ける。リモコン25は、運転指示に対応する信号(運転指示信号)を出力する。リモコン25は、空間Sの設定温度の指示に関する入力を受け付ける。リモコン25は、設定温度に対応する信号(設定温度信号)を、第1室内機10および第2室内機20に出力する。
【0026】
第1室内機10は、吸込温度センサ11と、吸込湿度センサ12と、第1制御部13と、を有する。
吸込温度センサ11は、空間Sから第1室内機10に吸い込まれる空気の温度(吸込温度)を計測する。吸込温度は、空間Sの上部の温度(上部温度)に対応する。吸込温度センサ11は、吸込温度に対応する信号(吸込温度信号)を出力する。
吸込湿度センサ12は、空間Sから第1室内機10に吸い込まれる空気の湿度(吸込湿度)を計測する。吸込湿度センサ12は、吸込湿度に対応する信号(吸込湿度信号)を出力する。
【0027】
第1制御部13は、リモコン25から設定温度信号を受信する。第1制御部13は、吸込温度センサ11から吸込温度信号を受信する。第1制御部13は、設定温度および吸込温度に基づいて、第1室内機10の運転を制御する。複数の第1室内機10の運転が、それぞれの第1制御部13により個別に制御される。
【0028】
図3に示されるように、第2室内機20は、第2制御部(制御部、制御装置)23を有する。
第2制御部23は、リモコン25から設定温度信号を受信する。第2制御部23は、下部温度センサ21から下部温度信号を受信し、外部温度センサ31から外部温度信号を受信し、吸込湿度センサ12から吸込湿度信号を受信し、吹出温度センサ22から吹出温度信号を受信する。第2制御部23は、設定温度、下部温度、外部温度、吸込湿度および吹出温度に基づいて、第2室内機20の運転を制御する。
【0029】
第1制御部13および第2制御部23は、例えば第1室内機10および第2室内機20の連携制御のためのコントローラとして、第1室内機10および第2室内機20とは別に備えるものでもよい。また、室外機30に備えられていてもよい。さらに、室外機30が別途制御部を備える構造でもよい。すなわち、第1制御部13および第2制御部23は、第1室内機10および第2室内機20に制御指示を出すものであればよい。
また、第1制御部13および第2制御部23は、お互いに通信するものでもよいし、その他制御部を介して通信してもよい。
さらに、様々なセンサは、第1制御部13および第2制御部23と、信号の受送信を直接行っていてもよいし、その他の制御部を介して間接的に行っていてもよい。
【0030】
第1制御部13および第2制御部23等の制御部は、例えば、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ、及び補助記憶装置等を備える。第1制御部13および第2制御部23等の制御部は、例えば補助記憶装置からプログラムを読み出して実行する。補助記憶装置は、例えば磁気ハードディスク装置又は半導体記憶装置等の記憶媒体を用いて構成される。例えば、補助記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを用いて構成される。
【0031】
第1制御部13および第2制御部23等の制御部の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0032】
空気調和システム1の制御方法について説明する。
最初に、空気調和システム1が暖房運転を行う場合について説明する。以下には温度の具体例を括弧内に表示する場合がある。
【0033】
まず、第1室内機10の動作について説明する。
図4は、第1室内機10の動作を示すフローチャートである。
第1室内機10の第1制御部13は、設定温度を取得する(S12)。
具体的には、第1制御部13が、リモコン25から設定温度信号を受信する。第1制御部13は、設定温度信号から設定温度(23℃)を取得する。
【0034】
第1制御部13は、目標上部温度TS1を算出する(S14)。
目標上部温度TS1は、空間Sの上部温度の目標値である。暖気の上昇の影響により、空間Sの上部温度は、空間Sの高さ方向の中間部の温度(中間温度)より高くなる。目標上部温度TS1は、設定温度(23℃)に補正値1aを加算した温度である。補正値1aは、例えば空間Sの温まりやすさに応じて設定される。例えば、暖房運転の場合の補正値1aは1℃であり、目標上部温度TS1は24℃である。第1制御部13は、目標上部温度TS1に対応する信号(目標上部温度信号)を第2制御部23に出力する。
【0035】
第1制御部13は、吸込温度T1を取得する(S16)。
具体的には、第1制御部13が、吸込温度センサ11から吸込温度信号を受信して、吸込温度T1を取得する。複数の第1室内機10の第1制御部13が、それぞれの吸込温度センサ11から吸込温度信号を受信して、それぞれの吸込温度T1を取得する。例えば、第1制御部13は、吸込温度T1として18℃を取得する。
【0036】
第1制御部13は、通常温度制御を実施する(S18)。
具体的には、第1制御部13が、目標上部温度TS1(24℃)と吸込温度T1(18℃)との差分に基づいて、第1室内機10の運転を制御する。
【0037】
通常温度制御の具体例は以下の通りである。第1制御部13の補助記憶装置には、第1室内機10に備わる膨張弁の開度に関するテーブルが記録されている。テーブルには、目標上部温度TS1(24℃)と吸込温度T1(18℃)との差分に対応する膨張弁の開度が記録されている。第1制御部13は、テーブルを参照し、目標上部温度TS1と吸込温度T1との差分から、膨張弁の開度を求める。第1制御部13は、求めた膨張弁の開度に基づいて第1室内機10の膨張弁の開度を調整し、第1室内機10の運転を制御する。第1制御部13は、膨張弁の開度の調整に代えて、または膨張弁の開度の調整と共に、第1室内機10に備わる送風機の風量を調整して、第1室内機10の運転を制御してもよい。
【0038】
通常温度制御により、吸込温度T1(18℃)が目標上部温度TS1(24℃)に接近する。吸込温度T1が目標上部温度TS1を上回ったとき、第1制御部13は、第1室内機10の運転を一時停止する。その後、吸込温度T1が目標上部温度TS1(または目標上部温度TS1より少し低い温度)を下回ったとき、第1制御部13は、第1室内機10の運転を再開する。
【0039】
第1制御部13は、第1室内機10の運転終了の要否を判断する(S20)。
具体的には、第1制御部13が、リモコン25から運転指示信号を受信して、空気調和システム1の運転指示を取得する。第1制御部13は、運転終了の指示を取得していない(S20の判断がNoの)場合に、S16以下の処理を繰り返す。第1制御部13は、運転終了の指示を取得した(S20の判断がYesの)場合に、第1室内機10の運転を終了する。
【0040】
次に、第2室内機20の動作について説明する。
図5は、第2室内機20の暖房運転の動作を示すフローチャートである。
第2室内機20の第2制御部23は、設定温度を取得する(S42)。
具体的には、第2制御部23が、リモコン25から設定温度信号を受信する。第2制御部23は、設定温度信号から設定温度(23℃)を取得する。
【0041】
第2制御部23は、目標下部温度TS2を算出する(S44)。
目標下部温度TS2は、空間Sの下部温度の目標値である。第2制御部23は、空間Sを暖房するとき、目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より低く設定する。第2制御部23は、設定温度(23℃)から調整値2aを減算して、目標下部温度TS2を設定する。第2制御部23は、第1制御部13から目標上部温度信号を受信して、目標上部温度TS1を取得する。第2制御部23は、目標下部温度TS2が目標上部温度TS1より低くなるように、調整値2aを設定する。例えば、調整値2aは1℃であり、目標下部温度TS2は22℃である。目標下部温度TS2の22℃は、目標上部温度TS1の24℃より低い。
【0042】
第2制御部23は、下部温度T2を取得する(S46)。
具体的には、第2制御部23が、下部温度センサ21から下部温度信号を受信して、下部温度T2を取得する。例えば、第2制御部23は、下部温度T2として18℃を取得する。
【0043】
第2制御部23は、通常温度制御を実施する(S50)。
具体的には、第2制御部23が、目標下部温度TS2(22℃)と下部温度T2(18℃)との差分に基づいて、第2室内機20の運転を制御する。
【0044】
通常温度制御の具体例は以下の通りである。第2制御部23の補助記憶装置には、第2室内機20に備わる膨張弁の出力に関するテーブルが記録されている。テーブルには、目標下部温度TS2(22℃)と下部温度T2(18℃)との差分に対応する膨張弁の開度が記録されている。第2制御部23は、テーブルを参照し、目標下部温度TS2と下部温度T2との差分から、膨張弁の開度を求める。第2制御部23は、求めた膨張弁の開度に基づいて第2室内機20の膨張弁の開度を調整し、第2室内機20の運転を制御する。第2制御部23は、膨張弁の開度の調整に代えて、または膨張弁の開度の調整と共に、第2室内機20に備わる送風機の風量を調整して、第2室内機20の運転を制御してもよい。
【0045】
通常温度制御により、下部温度T2(18℃)が目標下部温度TS2(22℃)に接近する。下部温度T2が目標下部温度TS2を上回ったとき、第2制御部23は、第2室内機20の運転を一時停止する。その後、下部温度T2が目標下部温度TS2(または目標下部温度TS2より少し低い温度)を下回ったとき、第2制御部23は、第2室内機20の運転を再開する。
【0046】
第2制御部23は、第2室内機20の運転終了の要否を判断する(S52)。
具体的には、第2制御部23が、リモコン25から運転指示信号を受信して、空気調和システム1の運転指示を取得する。第2制御部23は、運転終了の指示を取得していない(S52の判断がNoの)場合に、S46以下の処理を繰り返す。第2制御部23は、運転終了の指示を取得した(S52の判断がYesの)場合に、第2室内機20の運転を終了する。
【0047】
空気調和システム1は、以上のように空間Sを暖房する。空気調和システム1の運転開始直後には、第1室内機10および第2室内機20の両方が運転される。これにより、空間Sの温度が迅速に上昇する。特に、第2室内機20が運転されることにより、ユーザが存在する空間Sの下部が暖められる。
【0048】
前述したように、第2室内機20から吐出された空気(吐出空気)は、垂直ダクト40および床下給気チャンバー45を通り、吹出し口50から空間Sに吹き出される。吐出空気が床下給気チャンバー45を通るとき、吐出空気の熱量の一部が、床下のスラブに吸収される。床下スラブの断熱性能が低い場合には、吐出空気の熱量の多くが床下スラブに吸収され、空間Sの暖房に利用されなくなる。これにより、空気調和システム1のエネルギー消費量が増大する。
【0049】
図6は、比較例の空気調和システムが暖房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフである。図6の上図は、比較例における上部温度(吸込温度)および下部温度の時間変化を示すグラフである。図6の下図は、比較例の第1室内機および第2室内機の処理熱量の時間変化を示すグラフである。
【0050】
比較例では、目標下部温度が目標上部温度と同じ温度(24℃)に設定される。図6の上図に示すように、比較例の第2室内機は、目標下部温度(24℃)を目指し、下部温度が設定温度(23℃)を超えて、上昇する。しかし、前述したように、第2室内機から吐出された空気の熱量は、例えば床下のスラブに吸収されるため、目標下部温度(24℃)に達成せずに継続して運転が行われることがある。そのため、図6の下図に示すように、比較例の第2室内機は、熱量の処理(暖房運転)を継続する。これにより、比較例の空気調和システムにかかるエネルギー消費量が増大する。
【0051】
図7は、実施形態の空気調和システム1が暖房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフである。図7の上図は、実施形態における上部温度(吸込温度T1)および下部温度T2の時間変化を示すグラフである。図7の下図は、実施形態の第1室内機10および第2室内機20の処理熱量の時間変化を示すグラフである。
【0052】
前述したように、実施形態の第2室内機20の第2制御部23は、空間Sを暖房するとき、目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より低く設定する。そのため、図7の上図に示すように、上部温度(吸込温度T1)が目標上部温度TS1に到達する前に、下部温度T2が目標下部温度TS2に到達する。これにより、図7の下図に示すように、第1室内機10より先に、第2室内機20が一時停止する。
【0053】
第2室内機20が先に一時停止することにより、床下スラブに吸収される熱量が減少する。第2室内機20が先に一時停止しても、床下スラブの蓄熱効果により、空間Sの下部温度は低下しにくい。これにより、空気調和システム1のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0054】
外部温度および床下スラブの断熱性能に基づく目標下部温度TS2の設定について説明する。
空間Sの外部の温度(外部温度)が低い場合には、空間Sの内部の熱量が外部に逃げやすい。この場合には、空間Sの上部温度と下部温度との格差(温度ムラ)が大きくなる。そこで、第2制御部23は、外部温度に基づいて、目標下部温度TS2を設定してもよい。
【0055】
具体的には、第2制御部23が、外部温度センサ31から外部温度信号を受信して、外部温度を取得する。第2制御部23の補助記憶装置には、外部温度と調整値2aとの対応関係を含むテーブルが記録されている。テーブルには、外部温度が第1温度である場合の調整値2aが、外部温度が第1温度よりも高い第2温度である場合の調整値2aより、小さく設定されている。第2制御部23は、テーブルを参照して、取得した外部温度に対応する調整値2aを求める。第2制御部23は、設定温度から調整値2aを減算して、目標下部温度TS2を設定する。目標上部温度TS1と目標下部温度TS2との差が目標温度差である。外部温度が第1温度である場合の目標温度差が、外部温度が第2温度である場合の目標温度差より、小さく設定される。これにより、空間Sの温度ムラが抑制される。
【0056】
また、床下スラブの断熱性能が低い場合には、第2室内機20の吐出空気の熱量が床下スラブに吸収されやすい。この場合にも、空間Sの温度ムラが大きくなる。そこで、床下スラブの断熱性能に基づいて、目標下部温度TS2が設定されてもよい。例えば、床下スラブの断熱性能は、断熱材の厚さにより評価される。断熱材が第1厚さである場合の調整値2aが、断熱材が第1厚さよりも厚い第2厚さである場合の調整値2aより、小さく設定される。断熱材が第1厚さである場合の目標温度差が、断熱材が第2厚さである場合の目標温度差より、小さく設定される。これにより、空間Sの温度ムラが抑制される。
【0057】
次に、空気調和システム1が冷房運転を行う場合について説明する。
まず、第1室内機10の動作につき、図4を参照して説明する。
第1制御部13は、設定温度(25℃)を取得する(S12)。
【0058】
第1制御部13は、目標上部温度TS1を算出する(S14)。目標上部温度TS1は、設定温度(25℃)に補正値1aを加算した温度である。例えば、冷房運転の場合の補正値1aは0℃であり、目標上部温度TS1は25℃である。
【0059】
第1制御部13は、吸込温度T1(30℃)を取得する(S16)。
第1制御部13は、通常温度制御を実施する(S18)。通常温度制御により、吸込温度T1(30℃)が目標上部温度TS1(25℃)に接近する。吸込温度T1が目標上部温度TS1を下回ったとき、第1制御部13は、第1室内機10の運転を一時停止する。その後、吸込温度T1が目標上部温度TS1(または目標上部温度TS1より少し高い温度)を上回ったとき、第1制御部13は、第1室内機10の運転を再開する。
【0060】
第1制御部13は、第1室内機10の運転終了の要否を判断する(S20)。第1制御部13は、運転終了の指示を取得した(S20の判断がYesの)場合に、第1室内機10の運転を終了する。
【0061】
次に、第2室内機20の動作について説明する。
図8は、第2室内機20の冷房運転の動作を示すフローチャートである。
第2室内機20の第2制御部23は、設定温度(25℃)を取得する(S62)。
【0062】
第2制御部23は、目標下部温度(目標下部温度)TS2を算出する(S64)。第2制御部23は、空間Sを冷房するとき、目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より高く設定する。第2制御部23は、設定温度(25℃)に調整値2aを加算して、目標下部温度TS2を設定する。第2制御部23は、第1制御部13から目標上部温度信号を受信して、目標上部温度TS1を取得する。第2制御部23は、目標下部温度TS2が目標上部温度TS1より高くなるように、調整値2aを設定する。例えば、調整値2aは1℃であり、目標下部温度TS2は26℃である。目標下部温度TS2の26℃は、目標上部温度TS1の25℃より高い。
【0063】
第2制御部23は、下部温度T2を取得する(S66)。
第2制御部23は、通常温度制御を実施する(S70)。通常温度制御により、下部温度T2(30℃)が目標下部温度TS2(26℃)に接近する。下部温度T2が目標下部温度TS2を下回ったとき、第2制御部23は、第2室内機20の運転を一時停止する。その後、下部温度T2が目標下部温度TS2(または目標下部温度TS2より少し高い温度)を上回ったとき、第2制御部23は、第2室内機20の運転を再開する。
第2制御部23は、結露防止運転を実施する(S71)。結露防止運転の詳細については後述する。
【0064】
第2制御部23は、第2室内機20の運転終了の要否を判断する(S72)。第2制御部23は、運転終了の指示を取得した(S52の判断がYesの)場合に、第2室内機20の運転を終了する。
【0065】
空気調和システム1は、以上のように空間Sを冷房する。空気調和システム1の運転開始直後には、第1室内機10および第2室内機20の両方が運転される。これにより、空間Sの温度が迅速に下降する。特に、第2室内機20が運転されることにより、ユーザが存在する空間Sの下部が冷やされる。
【0066】
前述したように、第2室内機20から吐出された空気(吐出空気)は、垂直ダクト40および床下給気チャンバー45を通り、吹出し口50から空間Sに吹き出される。空気が床下給気チャンバー45を通るとき、床下スラブが冷却される。空間Sの内部の空気の一部が、吹出し口50を通って床下給気チャンバー45に流入する場合がある。この空気の湿度(露点温度)が高い場合には、床下給気チャンバー45の床下スラブ側に結露が生じる可能性がある。
【0067】
図9は、比較例の空気調和システムが冷房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフである。図9の上図は、比較例における上部温度(吸込温度)および下部温度の時間変化を示すグラフである。図9の下図は、比較例の第1室内機および第2室内機の処理熱量の時間変化を示すグラフである。
【0068】
比較例では、目標下部温度が目標上部温度と同じ温度(25℃)に設定される。図9の上図に示すように、比較例の第2室内機は、目標下部温度(25℃)を目指し、下部温度が目標下部温度(25℃)の近くまで下降する。しかし、前述したように、比較例の第2室内機から吐出された空気により、例えば床下のスラブが冷却されるため、目標下部温度(25℃)に達成せずに継続して運転が行われることがある。そのため、図9の下図に示すように、比較例の第2室内機は、熱量の処理(冷房運転)を継続する。これにより、比較例の空気調和システムにかかるエネルギー消費量が増大する。また、床下スラブが過冷却されて、床下給気チャンバー45に結露が生じる可能性が高くなる。
【0069】
図10は、実施形態の空気調和システム1が冷房運転を行う場合の、温度および処理熱量の時間変化を示すグラフである。図10の上図は、実施形態における上部温度(吸込温度T1)および下部温度T2の時間変化を示すグラフである。図10の下図は、実施形態の第1室内機10および第2室内機20の処理熱量の時間変化を示すグラフである。
【0070】
前述したように、実施形態の第2室内機20の第2制御部23は、空間Sを冷房するとき、目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より高く設定する。そのため、図10の上図に示すように、上部温度(吸込温度T1)が目標上部温度TS1に到達する前に、下部温度T2が目標下部温度TS2に到達する。これにより、第1室内機10より先に、第2室内機20が一時停止する。
【0071】
第2室内機20が先に一時停止することにより、床下スラブの過冷却が抑制される。これにより、床下給気チャンバー45に結露が生じる可能性が小さくなる。第2室内機20が先に一時停止しても、第1室内機10から吹き出された冷気が下降することにより、空間Sの下部温度は上昇しにくい。これにより、空気調和システム1のエネルギー消費量を抑制することができる。
【0072】
第2室内機20の結露防止運転について説明する。
前述したように、第2室内機20は熱交換器を有する。第2室内機20が冷房運転を行うとき、熱交換器が吸熱器(蒸発器)として機能する。そのため、熱交換器に結露が発生する。下部温度が目標下部温度TS2を下回ったとき、第2室内機20は一時停止する。これにより、熱交換器の結露水が蒸発し、垂直ダクト40および床下給気チャンバー45の空気の湿度(露点温度)が上昇する。第2室内機20が冷房運転をしていたので、床下給気チャンバー45の床下スラブ側の温度は低下している。床下給気チャンバー45に露点温度の高い空気が滞留すると、床下給気チャンバー45に結露が発生する可能性がある。
【0073】
第2室内機20の第2制御部23は、下部温度が目標下部温度TS2を下回った後に、結露防止運転を実施する(S71)。結露防止運転として、第2制御部23は、空間Sの床下から空間Sの内部に対して温度調整されない風を吹き出すように、第2室内機20の運転を制御する。具体的には、第2制御部23が、室外機30の圧縮機を運転せずに、第2室内機20の熱交換器に対する送風機を運転する。これにより、熱交換器において熱交換が行われずに、空間Sの内部と垂直ダクト40および床下給気チャンバー45との間で空気が循環する。その結果、床下給気チャンバー45に高湿度の空気が滞留しにくくなる。また、熱交換器において温度調整されない空気が床下給気チャンバー45を流れるので、床下スラブの温度が上昇する。したがって、床下給気チャンバー45における結露を抑制することができる。
【0074】
第2制御部23は、結露防止運転の実施時間(送風運転時間)を、冷房運転の実施時間(冷房運転時間)の半分以下に設定する。第2室内機20の熱交換器に発生する結露水の量は、冷房運転時間に比例して増加する。そこで、冷房運転時間に比例して、結露防止運転時間を増加させる。これにより、熱交換器の結露水の蒸発が促進されるとともに、床下給気チャンバー45における高湿度の空気の滞留が抑制される。ただし、発明者の実験によれば、結露防止運転時間が冷房運転時間の半分になる前に、熱交換器が乾燥状態になることが分かった。そこで、結露防止運転時間を冷房運転時間の半分以下に設定することにより、床下給気チャンバー45における結露を抑制することができる。また、結露防止運転時間が短縮されるので、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0075】
第2制御部23は、空間Sの露点温度および吹出温度に基づいて、第2室内機20の結露防止運転を実施してもよい。具体的には、第2制御部23が、吸込湿度センサ12から吸込湿度信号を受信して、吸込湿度を取得する。第2制御部23は、吸込湿度および下部温度に基づいて、空間Sの露点温度を算出する。第2制御部23は、吹出温度センサ22から吹出温度信号を受信して、吹出温度を取得する。吹出温度が空間Sの露点温度より低い場合には、床下給気チャンバー45に結露が発生する可能性が高い。そこで第2制御部23は、吹出温度が空間Sの露点温度を下回った場合に、第2室内機20の冷房運転を一時停止して、結露防止運転を実施する。これにより、吹出温度が上昇するので、床下給気チャンバー45における結露を効果的に抑制することができる。
【0076】
第2制御部23は、結露防止運転として、吹出温度を上昇させる冷房運転を行ってもよい。具体的には、第2制御部23が、目標下部温度TS2を上昇させて冷房運転を行う。例えば、第2制御部23は、設定温度(25℃)に加算する調整値2aを増加させて、目標下部温度TS2を上昇させる。吹出温度を上昇させる冷房運転を行うことにより、床下給気チャンバー45における結露を抑制することができる。
【0077】
上述した実施形態における空気調和システム1の一部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態における空気調和システム1において、第1室内機10および第2室内機20の通常温度制御は、それぞれの室内機に備わる膨張弁の開度の調整や、送風機の風量の調整により制御を行ったがこの限りではない。例えば、室外機30に備わる室外機制御部と連携し、室外機30に備わる圧縮機の出力に基づいて、第1室内機10および第2室内機20の運転を制御してもよい。圧縮機の出力に基づいて第1室内機10および第2室内機20の運転を制御する場合、室外機制御部の補助記憶装置には、室外機30に備わる圧縮機の出力に関するテーブルが記録されている。テーブルには、第1室内機10の目標上部温度TS1と吸込温度T1との差分に対応する圧縮機の出力、および第2室内機20の目標下部温度TS2と下部温度T2との差分に対応する圧縮機の出力が記録されている。室外機制御部は、テーブルを参照し、第1室内機10の目標上部温度TS1と吸込温度T1との差分、および第2室内機20の目標下部温度TS2と下部温度T2との差分から、圧縮機の出力を求める。室外機制御部は、求めた圧縮機の出力に基づいて圧縮機を駆動し、第1室内機10および第2室内機20の運転を制御する。
【0079】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、空間Sを暖房するとき目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より低く設定し、空間Sを冷房するとき目標下部温度TS2を目標上部温度TS1より高く設定する、第2制御部23を持つ。これにより、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
S…空間、T1…吸込温度(上部温度)、T2…下部温度、TS1…目標上部温度、TS2…目標下部温度、1…空気調和システム、10…第1室内機、13…第1制御部、20…第2室内機、23…第2制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10