(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012598
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】法務相談支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20250117BHJP
【FI】
G06Q50/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115541
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】517299951
【氏名又は名称】GVA TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC32
5L050CC32
(57)【要約】
【課題】契約書の審査業務や法務相談業務をはじめとする法務相談案件の効率化を図ること。
【解決手段】本発明による法務相談支援システムは、依頼者から取得した相談情報と、当該相談情報に対して法務担当者が回答した回答情報とを格納するデータベースを有する法務相談支援システムであって、
生成系AI上述した相談情報と回答情報とを生成系AIを利用してそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成するステップと、
要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納するステップとを備える法務相談支援システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
依頼者から取得した相談情報と、当該相談情報に対して法務担当者が回答した回答情報とを格納するデータベースを有する法務相談支援システムであって、
生成系AI上述した相談情報と回答情報とを生成系AIを利用してそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成するステップと、
要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納するステップとを備える法務相談支援システム。
【請求項2】
生成された要約相談情報及び要約回答情報に対して修正を受け付けるステップをさらに備える、
請求項1に記載の法務相談支援システム。
【請求項3】
要約相談情報と要約回答情報とを一覧表示するステップをさらに備える、
請求項1に記載の法務相談支援システム。
【請求項4】
依頼者から新たに取得した新規相談情報を分析して、前記要約回答情報を表示する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の法務相談支援システム。
【請求項5】
要約相談情報と要約回答情報とが表示されないように非表示フラグを関連付けるステップをさらに備える、
請求項4に記載の法務相談支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法務相談支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる法務分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)技術として、契約書の審査業務を支援する技術(例えば特許文献1乃至特許文献3)が開示されている。一方、法務担当者と契約担当者(現場担当者)とのコミュニケーションを円滑に行うための技術も開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-013524号公報
【特許文献2】特開2021-174474号公報
【特許文献3】特開2021-117844号公報
【特許文献4】特開2020-166870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、法務相談に関して、例えば、過去に法務担当から回答した質問と同一の質問や、現場からよく質問される頻出質問については、法務担当が過去に(同一の担当者や別の担当者に)伝えた回答を確認できた方が効率的である。また、現場担当が適切な雛形を取得するために行われた法務担当者とのやりとりも、同じようなケースについては過去のやりとりや過去に提供したひな形を参照した方が効率的である。
【0005】
本発明は、契約書の審査業務や法務相談業務をはじめとする法務相談案件の効率化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
依頼者から取得した相談情報と、当該相談情報に対して法務担当者が回答した回答情報とを格納するデータベースを有する法務相談支援システムであって、
生成系AI上述した相談情報と回答情報とを生成系AIを利用してそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成するステップと、
要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納するステップとを備える法務相談支援システムが得られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、契約書の審査業務や法務相談業務をはじめとする法務相談案件の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態による法務相談支援システム(以下「システム」という)の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、以下のような構成を備える。
[項目1]
依頼者から取得した相談情報と、当該相談情報に対して法務担当者が回答した回答情報とを格納するデータベースを有する法務相談支援システムであって、
生成系AI上述した相談情報と回答情報とを生成系AIを利用してそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成するステップと、
要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納するステップとを備える法務相談支援システム。
[項目2]
生成された要約相談情報及び要約回答情報に対して修正を受け付けるステップをさらに備える、
請求項1に記載の法務相談支援システム。
[項目3]
要約相談情報と要約回答情報とを一覧表示するステップをさらに備える、
請求項1に記載の法務相談支援システム。
[項目4]
依頼者から新たに取得した新規相談情報を分析して、前記要約回答情報を表示する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の法務相談支援システム。
[項目5]
要約相談情報と要約回答情報とが表示されないように非表示フラグを関連付けるステップをさらに備える、
請求項4に記載の法務相談支援システム。
【0010】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<概要>
図1に示されるように、本発明による法務相談支援システム1(以下単に「システム」と呼ぶことがある)は、法務担当者端末10(以下「法務担当」と呼ぶことがある)と、依頼者端末20(以下「現場」「現場担当者」などと呼ぶことがある)と、法務相談支援サーバ100とを備えている。システムは、法務相談支援システムにおける質問と回答のデータベースから、FAQ(Frequently Asked Questions)を自動的に生成して提供する技術に関するものである。これにより、一度回答された質問や頻出する質問に対して、過去の回答や提供情報を利用し、効率的な支援を提供することが可能となる(第一の実施の形態)。また、本発明は、特定の依頼者が適切な雛形を取得するための法務相談支援システムに関するものであり、依頼者が要求する適切な雛形を提供することが可能となる(第二の実施の形態)。
【0012】
<第一の実施の形態>
本発明の第一の実施の形態によるシステムは、依頼者から提供される相談情報と、当該相談情報に対する法務担当者の回答情報を格納するデータベースを有する法務相談支援システムを備えている。このシステムは、生成系AIを用いて、上述の相談情報と回答情報をそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成しそれぞれを関連づけて格納する。これにより、同様の問い合わせがあった場合に迅速に対応でき、過去の対応を効率的に活用できる。
【0013】
<データベース>
本発明におけるデータベースは、依頼者から提供される相談情報と、当該相談情報に対する法務担当者の回答情報を格納するものである。このデータベースの構成要素は、主に以下の情報からなる。
【0014】
依頼者から提供される相談情報は、法的な課題や質問、および依頼者の状況を具体的に説明するための詳細情報を含む。これらの情報には、例えば、契約書の作成や解釈、法律に関する一般的な質問、具体的な事件や事例に対する法的意見の求め等が含まれる。依頼者の状況に関する情報には、例えば、依頼者の業種、組織の規模、特定の法律に関連する過去の経験等が含まれていてもよい。
【0015】
当該相談情報に対する法務担当者の回答情報は、その依頼者が抱える法的な課題や質問に対する法的な見解、助言、解釈、提案等を含む。これには、例えば、法律条文の適用方法、先例の解釈、法律上のリスクとその対処法、戦略的な法務の対応等が含まれていてもよい。
【0016】
本発明におけるデータベースは、これらの相談情報と回答情報を格納し、効率的かつ精度の高い法務支援を提供するための情報資源として活用する。依頼者と法務担当者とのやりとりを経て蓄積される情報は、個々の事例に対する具体的な対応だけでなく、一般的な法務課題に対する洞察やパターンを抽出するための重要な基盤ともなる。
【0017】
なお、過去の相談情報と回答情報とは、その会社における過去に実際にあった相談情報と、過去に実際に回答された回答情報であってもよいし、何らかの学習セットに基づくものであってもよい。また、本システムが保有している他社の情報であって匿名化した物や抽象化したものであってもよい。更には、生成系AIに入力された(入力を許可した)情報であってもよい。これらの全ての情報を後述するFAQの根拠とすることができる。
【0018】
<生成系AI>
本発明の一部として、生成系AIを活用して依頼者からの相談情報と法務担当者からの回答情報をそれぞれ要約し、要約相談情報と要約回答情報を生成するステップが含まれている。
【0019】
生成系AIは、自然言語処理(NLP)技術を基に構築され、長文の情報をコンパクトで包括的な形で表現する能力を有している。このAIは、依頼者からの相談情報を入力とし、その内容を精緻に要約する。相談情報が「契約書の特定の条項についての法的意味が理解できない」という文章文であった場合、生成系AIはこれを「契約条項の法的解釈」といった形に要約したり、「所定の業務委託契約における損害賠償条項の金額として当社として譲れないラインはどこまでか?」という文章であった場合には、「業務委託契約と損害賠償条項」といったか形に要約することとしてもよい。
【0020】
様に、法務担当者からの回答情報も生成系AIによって要約される。例えば、依頼者からの相談情報が「契約書の作成について相談したい。具体的には、弊社と特定のA社との間で取り決める条件の条項についてどのように書けば良いのか、また、契約に必要な期間はどのくらいか、等の疑問点を解決したい」といった長い文章であった場合、生成系AIはこの相談情報を「A社との契約書作成に関する条件条項の書き方と必要期間についての相談」といった短い文章に要約することも可能である。
【0021】
また、法務担当者の回答情報が「条件の条項については、相手方との交渉内容により変わりますが、一般的にはサービスの内容、責任の範囲、契約期間、料金、契約終了時の取り扱い等を明記することが求められます。契約に必要な期間は交渉の進行具合によりますが、通常は1ヶ月~3ヶ月程度を見ておくと良いでしょう」といった詳細な文章であった場合、生成系AIはこの回答情報を「条件条項は交渉内容によるが、サービス内容等を明記し、契約期間は1~3ヶ月を見込む」といった短い文章に要約することも可能である。
【0022】
一般に、依頼者と法務担当者との相談のやりとりは複数回のコミュニケーションのやりとりになることがある。特に複雑な案件や、依頼者の基礎的知識がなかった場合、途中で条件や内容が変更された場合にはそのやりとりも長くなってしまう。本実施の形態による生成系AIはそのような場合にも、複数回にまたがるやりとりをまとめて要約することとしてもよい。
【0023】
なお、本実施の形態による生成系AIは、依頼者から取得した相談情報の情報量が少なかったりした場合等、正確な回答情報と結びつけることができなかいと判断した場合には、追加の質問等を行うこととしてもよい。これにより、本来の法務担当者がヒアリングすべき情報を全て依頼者に確認することが可能となる。
【0024】
このように、本発明による要約処理は、特定のテキスト(質問や回答)から重要な情報を抽出し、それを短く表現し直すことを指し、元のテキストの情報を失わずに、その長さを短縮するものである。また、一文の中に複数の論点や法的項目が含まれていた場合には、それぞれを切り出して論点毎や項目毎に整理しなおすこととしてもよい。
【0025】
これらの要約情報は、具体的な相談内容とその回答の核心を端的に伝えることができる。そのため、同じまたは類似の法的問題を抱える他の依頼者が同様の問題に対する解答を素早く見つけることが可能となる。また、これらの要約情報は、法務担当者が過去の相談とその回答のパターンを理解するための有用な情報源ともなる。生成系AIによる要約の生成は、法務相談支援システムの効率性とユーザビリティを大幅に向上させる。
【0026】
<要約相談情報と要約回答情報>
本発明では、生成系AIによって生成された要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納する機能が設けられている。これにより、過去の相談とその回答を効率的に活用し、新たな相談に迅速に対応することが可能となる。
【0027】
具体的には、本発明のシステムでは、生成系AIによって生成された要約相談情報と要約回答情報を一対として管理する。例えば、ある依頼者からの相談情報「契約条項の法的解釈について」に対する法務担当者からの回答情報「契約条項の一般的な解釈と専門家の意見の必要性」があった場合、これらは一対の情報としてデータベースに格納される。
【0028】
このように「対」として管理された要約情報は、同様の法的問題に迅速に対応するためのリソースとなる。新たな依頼者が「契約条項の法的解釈」について問い合わせた場合、システムは過去の要約情報を検索し、対応する要約回答情報を迅速に提示することができる。これにより、過去の相談とその回答を再利用することが可能となり、法務担当者の負担を軽減すると同時に、依頼者への迅速な対応を可能にする。
【0029】
また、例えば、一定期間内に特定の相談が頻繁に発生した場合、これはその法的問題が一般的または普遍的であることを示している可能性がある。このような情報をも活用すれば、法務担当者はより効率的な対応策を計画することができる。
【0030】
<FAQ生成>
以上のような要約相談情報と要約回答情報との対は、新たな依頼者が同様の相談を行った際に参照されるように表示してもよい。例えば、新たな依頼者が提出した相談情報が過去に要約され格納された要約相談情報と類似している場合、その類似した要約相談情報と対応づけられている要約回答情報を参照することで、新たな依頼者に対する回答を迅速に提供することが可能となる。
【0031】
すなわち、過去に提供された相談と回答のペアから学習し、それを利用して新たな相談に対する回答を生成する、という法務FAQの自動生成を実現することとしてもよい。この際、各FAQの項目にスコアや部署などの属性を付与しておき、過去にされた相談の頻度(よくされる相談)、依頼者の関連性(特定の部門に多い相談)、質問者の属性(経験年数や職務等)などの状況に応じて、FAQの順序やスコアに関連付けてもよい。これにより、「よくある質問」「A部署でよくある質問」「未経験者からよくなされる質問」というようなFAQの表示の仕方が可能となる。
【0032】
この機能によれば、(1)法務担当者が同じまたは類似した質問に繰り返し回答する必要性を減らし、それによって得られる時間をより高度なタスクに充てることができる。同時に、自動生成されたFAQにより、依頼者は即座に必要な情報にアクセスでき、迅速な意思決定を可能とすることが可能となり、(2)過去の法律相談や解答のパターンがデータベースに格納され、一元化された知識として組織全体で利用可能になることから、新規メンバーや異なる部門からのアクセスでも、一貫性と精度を持った法務情報が提供可能となり、(3)システムは新しい相談情報や解答情報に基づいて継続的に学習を行うためFAQの内容は時間とともに進化し、より広範で詳細な問題に対応可能となる。
【0033】
<修正受付機能>
本発明では、生成された要約相談情報及び要約回答情報に対して修正を受け付けるステップが更に設けられていてもよい。
【0034】
この修正機能は、システムが自動的に生成した要約情報が完全であるとは限らず、一部のニュアンスや細かい内容が省略される場合があることを考慮したものである。例えば、依頼者が提出した相談情報に特定の法律用語や業界固有の表現が含まれていた場合、生成系AIがその意味を完全に把握することは難しい場合がある。同様に、法務担当者が提供した回答情報も、専門的な知識を要する場合があり、生成系AIがその全てを適切に要約することは困難である可能性がある。
【0035】
このような事態を解決するため、本発明では依頼者や法務担当者が生成された要約相談情報及び要約回答情報を直接修正できる機能を提供する。具体的には、生成された要約情報に対して修正を加えたり、省略された内容を補ったりすることが可能である。例えば、「契約条項の一般的な解釈と専門家の意見の必要性」の要約回答情報が、特定の契約条項の重要な細部を省略していた場合、法務担当者はこれを修正し、その細部を含めることができる。
【0036】
この修正機能は、システムの柔軟性と精度を高めると同時に、依頼者や法務担当者が自身のニーズにより適合した情報を得ることができるようにする。また、修正された情報はデータベースに保存され、システムが学習・改善するための追加的なデータとして活用される。この機能により、本発明の法務相談支援システムは、時間とともにそのパフォーマンスを向上させることが可能となる。
【0037】
<一覧表示機能>
本発明ではオプションとして、要約相談情報と要約回答情報を一覧表示するステップが更に設けられている。
【0038】
この一覧表示機能は、システム内に蓄積された膨大な量の要約情報を、依頼者や法務担当者が効率的に閲覧、検索、利用することを可能にするためのものである。この機能により、ユーザーは特定の要約相談情報とそれに対応する要約回答情報を素早く探すことができる。また、特定の主題やキーワードに基づいて情報をフィルタリングし、関連する相談と回答の一覧を取得することも可能となる。
【0039】
具体的には、ユーザーはシステム上で複数の要約相談情報と要約回答情報を一覧できる。この一覧は通常、日付、相談の主題、依頼者の名前などの情報によって整理される。例えば、「不動産契約」に関連する要約相談情報と要約回答情報を見つけるために、ユーザーはそのキーワードをシステムに入力することができる。システムはその要求を受けて、関連する要約情報を一覧表示し、ユーザーが必要な情報を容易に探すことができる。
【0040】
この一覧表示機能は、依頼者や法務担当者が特定の情報を迅速に検索し、それに対応する適切な要約回答情報を得るために重要である。さらに、この機能は過去の相談のパターンや頻度、回答の傾向を把握するための重要なツールとなり、その情報は法務サービスの提供者にとって価値ある洞察を提供する。
【0041】
<予測回答>
本発明では、オプションとして依頼者から新たに取得した新規相談情報を分析して、予測的に前記要約回答情報を表示するステップが設けられている。
【0042】
本オプションの機能は、依頼者から提供された新規の相談情報をシステムが瞬時に解析し、その内容と関連性が高い過去の要約回答情報を抽出・表示することを可能にするものである。これにより、依頼者は疑問に対する直接的な解答を即座に得られるとともに、法務担当者は新規の問い合わせに対する対応の手助けとなる参照情報を手に入れることができる。
【0043】
具体的には、例えば依頼者が「雇用契約における退職金の規定についての相談」を新規に提出したとする。この新規相談情報がシステムに入力されると、システムはすぐにその情報を分析し始める。これには、自然言語処理(NLP)やテキスト解析技術などのAI技術が使用される可能性がある。システムは新規相談情報の主要な要素やキーワード(この場合、「雇用契約」、「退職金」、「規定」など)を抽出し、これらの要素やキーワードが含まれる過去の要約回答情報をデータベースから検索する。そして、関連性が最も高い要約回答情報を抽出し、依頼者や法務担当者に即座に表示する。
【0044】
このオプション機能により、新規の相談情報に対するリアルタイムで迅速な対応が可能となり、依頼者の問い合わせに対する効率的な回答提供と法務担当者の業務負荷の軽減が図られる。また、同様または類似の問い合わせが再発生した場合には、過去の対応情報を参照し、その解答を改善または再利用することも可能となる。
【0045】
<特定案件の非表示機能>
本発明では、オプションとして要約相談情報と要約回答情報とが表示されないように非表示フラグを関連付けるステップをさらに設けることができる。
【0046】
この非表示フラグの機能は、一部の要約相談情報や要約回答情報が特定の状況下で閲覧されることを防ぐことを可能にする。例えば、個人情報保護、商業秘密、または特定の法律事項に関する敏感な情報を含む相談や回答等が該当する可能性がある。
【0047】
具体的には、個々の要約相談情報及び要約回答情報に対して、特定の条件下でその情報が表示されないように制御する「非表示フラグ」が関連付けられる。例えば、特定の依頼者の要求により、あるいは法務担当者がその情報が特定の法律事項に関する機微な内容を含むと判断した場合等にこの非表示フラグが設定される。
【0048】
非表示フラグが設定された要約相談情報や要約回答情報は、一覧表示画面、検索結果、その他の表示形式では表示されなくなる。ただし、必要な場合には、特定の権限を持つユーザー(例えば、システム管理者)により、その非表示フラグが一時的に無効化され、該当情報が閲覧されることも可能である。
【0049】
この非表示フラグ機能により、個人情報の保護、業務上の秘密の管理、及び適切な情報表示の制御が可能となり、システムの信頼性と法的遵守が保たれる。
【0050】
<実施例>
このシステムを会社の現場担当者と法務担当者との間で導入した場合の実施の流れを詳細に説明する。まず、現場担当者(以下、依頼者)が法務相談支援システムにアクセスし、法務に関する相談情報を入力する。この相談情報には、具体的な法務上の問題点、関連する法令規範、必要な情報などが含まれる。
【0051】
依頼者から提供された相談情報は、システムのデータベースに格納される。ここで、相談情報は原始的な形で保存されるだけでなく、生成系AIによって要約され、要約相談情報として再格納される。
【0052】
その後、法務担当者が依頼者から提出された相談情報を確認し、適切な回答を提供する。この回答情報もシステムによってデータベースに保存され、同時に生成系AIによって要約され、要約回答情報として格納される。
【0053】
システムは要約相談情報と要約回答情報を対応づけて格納する。これにより、同様の問題が再発生した際に、過去の対応を参照することが可能となる。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施の形態による法務相談支援システムによれば、法務担当者が受けた相談案件に類似している相談案件を簡易に検索することができることから、相談案件の対応の効率化を図ることができる。即ち、複数の相談や事案に対して適用された法的意見や解釈を一元的に保管・管理し、迅速な対応を可能とする。具体的には、新たな法律相談が発生した場合、システムは既存の要約情報から最も関連性が高い要約を抽出し、法務担当者が相談に入る前の段階において依頼者に対して即座にレコメンドすることが可能となる。さらに、その要約情報が依頼者の相談内容に完全に対応していない場合や、より詳細な情報が必要な場合には、生成AIが追加でヒアリングを行い、より具体的で詳細な法律的見解を生成する。これにより、法務部門の業務負荷の軽減を図りつつ、依頼者のニーズに迅速かつ正確に対応することが可能となる。また、このシステムは法律相談の内容や法務担当者の回答のパターンを学習し、過去の事例に基づいた高品質な法務アドバイスの生成を実現する。この結果、法務部門が扱う事案の種類や複雑さに関わらず、依頼者は迅速で適切な法務サポートを受けることができ、企業全体としての意思決定の迅速化や正確性の向上に貢献することとなる。
【0055】
<第二の実施の形態>
本発明の第二の実施の形態は、特定の依頼者が適切な雛形を取得するための法務相談支援システムに関するものである。本システムは、依頼者が要求する適切な雛形を提供することを主な目的としている。
【0056】
依頼者においては、業務遂行の過程で様々な種類の雛形が必要となる。しかし、最新の雛形がどこに格納されているか把握できず、手元にある古い雛形を使用してしまうという課題がある。これは、古い雛形が最新の法令や内部規定に対応していない場合、結果としてトラブルを招く可能性がある。また、依頼者が適切な雛形を選択するためには、その雛形が適用可能な具体的な状況を理解する必要があり、これが難しい場合、法務部門が適切な雛形を渡すためのやり取り(どの雛型を求めているのかを特定するためのコミュニケーション)が必要となり、業務の煩雑化を引き起こすという課題も存在する。
【0057】
本システムの前提としては、最新の雛形がデータベースに管理されており、依頼者の依頼や雛型の選択に基づいてこれらの雛形が提供される。依頼者は、雛形を直接選択するか、自然言語で依頼をすることで、適切な最新の雛形を取得することができる。ここで、雛形には取引先名や日付等の具体的な情報が自動的に入力される機能を有している。
【0058】
具体的には、本システムは、システム上で最新の雛形が選択されると、それが自動的にメールやチャット、所定のフォーム、アプリケーションを通じて提供される。これにより、依頼者は最新の雛形を確実に利用することができる(最新の雛型提供機能)。
【0059】
一方、依頼者側が雛型自体を選択できない場合や、適切な雛形を選択するための知識等が不足している場合に、自然言語によってどのような契約を結びたいのか、あるいはどのような情報を必要としているのかという質問を受け付ける。そして、その質問に基づいて生成AIが分析(場合によっては追加のヒアリング)を行い、最適な雛形を推奨したり、必要に応じて直接に雛型自体の提供をする。これにより、依頼者は簡単に適切な雛形を見つけることができ、法務部門との雛型を特定するためだけの煩雑なコミュニケーションを避けることが可能となる。
【0060】
なお、上述したように本システムは、依頼者からの質問や依頼が曖昧な場合に、生成系AIが再度質問を行うことで詳細な情報を引き出す機能も有している。これにより、より正確な雛形の提供や、必要に応じた法務部門への案件の共有を実現する。
【0061】
更に、現状の雛形が存在していない場合や、存在している雛型の内容が現状で適切でない場合や新たな状況が生じた場合には、法務部門が直接担当する案件としてもよい。これにより、依頼者と法務部門との間の連携を強化し、依頼者の業務効率化と法務リスクの管理を同時に達成する。
【0062】
本実施の形態によるシステムは、例えば、次のような機能を有していてもよい。詳しくは、本システムには、法務相談データベースに初回の契約書案から最終版に至るまでの全てのバージョンが蓄積される。それぞれのバージョンには取引先や社内でのコメント、修正履歴等のデータも紐付けて保管される。これらのデータを活用し、新規の契約書雛形の作成や既存の雛形に対する修正案の提案を行うこととしてもよいし、取引先や取引の状況に応じて最適な契約書雛形が生成されたり、修正案がレコメンドされたりしてもよい。また、このような契約書の作成・修正において法律の適合性、自社のリスクヘッジ、取引先の受け入れ可能性といった要素を考慮し、これらの観点から契約書の整理評価を行うこととしてもよい。さらには、契約書雛形は、取引の内容や法令等の変更により随時ブラッシュアップされるべきであるが、これを人手により行うと手間がかかる。本システムは自動作成やレコメンドによりこれを支援し、業務効率化に大きな効果を発揮する。
【0063】
上述の法務相談支援システムは、特許法、商法、労働法等の法務における相談・問い合わせを効率的に処理するためのシステムであるが、これを他の分野に応用することにより、多様な情報サービスに対する対応の効率化・高度化が可能となる。
【0064】
本発明の「雛型」には、例えば、過去の契約書の修正例や法務担当者とのやりとりから、よくある修正、よくある相談、よくある論点、よくあるチェック項目といったように業務に関する活動を画一的に定義した広義の雛形も含まれる。
【0065】
<他の分野への応用>
一つの例として、医療相談や健康相談における情報サービスがある。医療機関や保健所などからの相談情報と、それに対する医療専門家の回答情報をデータベースに格納し、生成系AIを利用して要約を作成する。この要約情報を一覧表示し、新たに相談があった場合、過去の要約回答情報から関連する回答を提示することが可能となる。更に、修正機能を用いて、回答の精度や適合性を向上させることも可能である。他にも、顧客サービスセンターやITサポートセンターなど、様々な問い合わせ・相談が行われる場面においても、本システムは効果的に活用可能である。特に、よくある問い合わせ・トラブルについては、過去の相談情報と回答情報を基に高速で適切な対応を行うことが可能となる。また、教育分野においても応用が考えられる。教師や学習支援者が生徒からの質問に回答する際、過去の質問と回答を要約し、一覧表示することで、効率的に学習支援を行うことが可能となる。
【0066】
以上のように、本発明のシステムは、様々な分野における情報サービスの提供に対し、効率性、高速性、そして精度を向上させる可能性を有している。
【0067】
<ハードウェア構成例>
システムは、インターネットによって互いに通信可能に構成された法務案件管理サーバと、法務担当端末と、契約担当端末とを備えている。なお、本システムは、所定の事業者が提供するクラウド型/ネットワーク型のシステム構成としてもよいし、システム導入企業内で独立して運用されるオンプレミス型のシステム構成としてもよい。
【0068】
なお、上述した機能ブロックのそれぞれは、例えばサーバ装置(端末装置)に備えられたハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロックは、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0069】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
10 法務担当者端末
20 依頼者端末
100 法務相談支援サーバ