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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012619
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20250117BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250117BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/44
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/67
A61K8/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115591
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 明穂
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健志
(72)【発明者】
【氏名】森山 昌明
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB242
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC552
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083BB46
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ナイアシンアミドを配合しながらも、使用感に優れた皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】(A)ナイアシンアミド、(B)トラネキサム酸、及びD-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、並びに、(C)多価アルコール、(D)増粘剤、及び(E)油剤から選ばれる少なくとも2種を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナイアシンアミド、
(B)トラネキサム酸、及び、D-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、
並びに、
(C)多価アルコール、(D)増粘剤、及び、(E)油剤から選ばれる少なくとも2種、
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに、(F)グリチルリチン酸ジカリウムを含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
さらに、(G)紫外線防御剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
(A)の含有量が5質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
粘度が5,000mPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
水中油型であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイアシンアミドと、トラネキサム酸及びD-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種と、多価アルコール、増粘剤、及び油剤から選ばれる少なくとも2種を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイアシンアミドは、美白、抗シワ、アンチエイジングとしての効果を有することから、ナイアシンアミドを配合した様々な皮膚外用剤が提案されている(特許文献1)。ナイアシンアミドの有する効果を享受する目的で、日焼け止め化粧料やオールインワンジェルといった化粧料への配合が検討されているが、このような皮膚外用剤は塗布後のきしみの発生、しっとり感の低さといった使用感に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-063061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、ナイアシンアミドを含有しながらも、使用感に優れた皮膚外用剤の提供を課題として、種々の検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その結果、本発明者らは、ナイアシンアミドと共にトラネキサム酸及びD-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種と、多価アルコール、増粘剤、及び油剤から選ばれる少なくとも2種を含有する皮膚外用剤とすることで、使用感に優れた皮膚外用剤の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
【0007】
<1>
(A)ナイアシンアミド、
(B)トラネキサム酸、及び、D-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、
並びに、
(C)多価アルコール、(D)増粘剤、及び、(E)油剤から選ばれる少なくとも2種、
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
<2>
(A)ナイアシンアミド、
(B)トラネキサム酸、及び、D-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、
(C)多価アルコール、
(D)増粘剤、
及び、
(E)油剤、
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
<3>
さらに、(F)グリチルリチン酸ジカリウムを含有することを特徴とする、<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<4>
さらに、(G)紫外線防御剤を含有することを特徴とする、<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<5>
(A)の含有量が5質量%以上であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<6>(B)の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<7>
粘度が5,000mPa・s以上であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<8>
水中油型であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれかに記載の皮膚外用剤。
<9>
日焼け止め用であることを特徴とする<4>に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ナイアシンアミドと共にトラネキサム酸及びD-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、並びに、多価アルコール、増粘剤、及び油剤から選ばれる少なくとも2種を含有することにより、塗布時の伸びの良さ、きしみのなさ、しっとり感といった使用感に優れた皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の皮膚外用剤ついて詳細を説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
<(A)ナイアシンアミド>
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミドを含有することを特徴とする。ナイアシンアミドはナイアシン(ニコチン酸/ビタミンB)のアミドであり、ビタミンB群の1種で水溶性ビタミンである。本発明において、ナイアシンアミドは、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0011】
本発明の皮膚外用剤において、ナイアシンアミドの含有量は特に制限はなく、例えば、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、使用感に優れ、かつ、ナイアシンアミドの効果を享受できる観点から、5質量%以上が特に好ましい。その上限は特に制限はないが30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるナイアシンアミドの含有量は、例えば液体クロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、例えば医薬部外品原料規格2021に記載されるニコチン酸アミドの定量法に準じて定量することができる。
【0012】
<(B)トラネキサム酸、D-パントテニルアルコール>
本発明の皮膚外用剤は、トラネキサム酸、及び、D-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。以下、各成分について説明する。
【0013】
(トラネキサム酸)
トラネキサム酸は、人工合成されたアミノ酸の一種であり、止血剤や抗炎症剤などとして使用される。本発明において、トラネキサム酸は、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤において、トラネキサム酸の含有量は特に制限はなく、例えば、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、使用感に優れ、かつ、トラネキサム酸の効果を享受できる観点から、1質量%以上が特に好ましい。その上限は特に制限はないが20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるトラネキサム酸の含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、例えば第十八改正日本薬局方に記載されるトラネキサム酸の定量法に準じて定量することができる。
【0015】
(D-パントテニルアルコール)
D-パントテニルアルコールはパンテノールとも呼ばれ、ビタミンB5(パントテン酸)の誘導体であり、ビタミンB群の1種で水溶性ビタミンである。本発明において、D-パントテニルアルコールは、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0016】
本発明の皮膚外用剤において、D-パントテニルアルコールの含有量は特に制限はなく、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、使用感に優れ、かつ、D-パントテニルアルコールの効果を享受できる観点から、0.1質量%以上が特に好ましい。その上限は特に制限はないが5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるナイアシンアミドの含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、例えば医薬部外品原料規格2021に記載されるD-パントテニルアルコールの定量法に準じて定量することができる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤において、(A)ナイアシンアミドと(B)トラネキサム酸又はD-パントテニルアルコールとの配合比は特に限定されないが、質量比で(A):(B)=1:0.001~30が好ましく、1:0.005~20がより好ましく、1:0.01~10が特に好ましい。特に、(B)がトラネキサム酸である場合、(A)ナイアシンアミドとの配合比は質量比で(A):(B)=1:0.01~30が好ましく、1:0.05~20がより好ましく、1:0.1~10が特に好ましい。また、(B)がD-パントテニルアルコールである場合、(A)ナイアシンアミドとの配合比は質量比で(A):(B)=1:0.001~10が好ましく、1:0.005~5がより好ましく、1:0.01~1が特に好ましい。
【0018】
<(C)多価アルコール、(D)増粘剤、(E)油剤>
本発明の皮膚外用剤は、(C)多価アルコール、(D)増粘剤、(E)油剤から選ばれる少なくとも2種を含有することを特徴とする。ここで、(C)多価アルコール、(D)増粘剤、(E)油剤から選ばれる少なくとも2種とは、(C)のみを2種以上、(D)のみを2種以上、(E)のみを2種以上であってもよいが、(C)と(D)からそれぞれ1種以上、(D)と(E)からそれぞれ1種以上、(C)と(E)からそれぞれ1種以上の成分を配合することが好ましく、(C)、(D)、(E)それぞれから1種以上の成分を配合することが特に好ましい。
以下、(C)、(D)、(E)以外の成分について詳述する。
【0019】
[(C)多価アルコール]
本発明において多価アルコールとは、価数2~3のアルコールのことを言う。本発明における多価アルコールは通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば炭素数2~20の2価又は3価のアルコールが好ましく、炭素数2~16の2価又は3価のアルコールがより好ましく、炭素数2~10の2価又は3価のアルコールが特に好ましい。このような多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジール、カプリリルグリコール、デシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。本発明においては、プロピレングリコール(PG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジール、グリセリン、ポリエチレングリコールが好ましく、プロピレングリコール(PG)、1,3-ブチレングリコール(BG)、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,2-ヘキサンジオール、グリセリンが特に好ましい。
【0020】
本発明の皮膚外用剤において多価アルコールを配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは1質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは35質量%以下である。なお、多価アルコールを2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0021】
[(D)増粘剤]
本発明の皮膚外用剤で使用できる増粘剤としては、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等で使用できる水溶性成分であれば特に限定されるものでなく、合成高分子、半合成高分子、天然高分子、粘度鉱物等が使用できる。
【0022】
合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド/ポリアクリルアミドコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする親水性合成高分子が挙げられる。
【0023】
半合成高分子は、セルロース誘導体としては例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩類、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スルホン化セルロース誘導体などが挙げられる。その他の半合成高分子として、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸エチレングリコールエステル、デキストリン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0024】
天然高分子としては、多糖類及びその誘導体、例えば、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース類、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、タマリンドガム、寒天、アガロース、マンナン、カードラン、アルギン酸又はその塩類、アラビアゴム、ペクチン、クインシード、デンプン、アルゲコロイド、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブロイン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性タンパク質が挙げられる。
【0025】
粘土鉱物としては、ラポナイト、ベントナイト、スメクタイトカオリナイト、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0026】
本発明の皮膚外用剤において増粘剤を配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。なお、増粘剤を2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0027】
[(E)油剤]
本発明において使用できる油剤は、通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されないが、25℃で液状の油剤が好ましく、不揮発性であることが特に好ましい。具体的には、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油類;イソステアリン酸、オレイン酸、ポリヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;オクチルドデカノール、テトラデシルデカノール等の高級アルコール類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸デシル、イソステアリン酸ラウリル、イソデカン酸イソデシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコ-ル、ジカプリン酸プロピレングリコ-ル、ジカプリル酸プロピレングリコ-ル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、セバシン酸ジエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸エチル、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-グルタミン酸ジ(コレステリル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-サルコシン-イソプロピル等のエステル油類;ジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等のシリコーン油類;等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用することができる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤において油剤を配合する場合、その含有量は特に制限はなく、例えば0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは3質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、油剤を2種以上配合する場合は、その合計量である。
【0029】
<(F)グリチルリチン酸ジカリウム>
本発明の皮膚外用剤は、グリチルリチン酸ジカリウムを含有することが好ましい。グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸とカリウムの塩であり、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸2K、グリチルリチン酸K2、グリチノンK2とも呼ばれ、カンゾウ(甘草)に含まれることが知られる抗炎症作用を有する成分である。本発明において、グリチルリチン酸ジカリウムは、通常化粧品や医薬部外品等で使用されているものを用いることができ、例えば、天然物から抽出したもの、それを精製したもの、公知の方法によって合成したものなど、市販品を使用することもできる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸ジカリウムの含有量は特に制限はなく、例えば0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、使用感に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは0.05質量%以上である。また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。本発明の皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸ジカリウムの含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより分析することができ、その条件としては、例えば医薬部外品原料規格2021に記載のグリチルリチン酸ジカリウムの定量法に準じて定量することができる。
【0031】
<(G)紫外線防御剤>
本発明の皮膚外用剤は、好ましい形態の1つとして、紫外線防御剤を含有することを特徴とする。本発明において使用できる紫外線防御剤としては、通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0032】
紫外線散乱剤としては、紫外線を散乱する効果が高い点から、無機化合物が好ましく、金属酸化物がより好ましい。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウムから選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0033】
また、本発明で使用する紫外線散乱剤は疎水化処理を行っているものが好ましい。表面を疎水化することにより、油中への分散性や耐水性を向上させることができる。紫外線散乱剤の疎水化処理は、疎水化される公知の表面処理剤を用いて行えばよいが、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;アルキルシラン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0034】
本発明で使用する紫外線散乱剤は、その平均粒子径が1~1000nmのものが好ましく、5~500nmがより好ましく、使用感及び日焼け止め効果に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、10~300nmが特に好ましい。本発明で使用する紫外線散乱剤の平均粒子径は動的光散乱法により測定したものである。
【0035】
また、紫外線吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等が挙げられる。これらの中でも、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンから選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
【0036】
本発明の皮膚外用剤における紫外線防御剤の含有量は特に制限はなく、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、使用感及び日焼け止め効果に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。なお、紫外線防御剤を2種以上使用する場合は、その合計量である。
【0037】
また、本発明の皮膚外用剤における紫外線散乱剤の含有量は特に制限はなく、1質量以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、使用感及び日焼け止め効果に優れた皮膚外用剤が得られる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。なお、紫外線散乱剤を2種以上使用する場合は、その合計量である。
【0038】
<その他成分>
本発明の皮膚外用剤には、上記成分以外に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、低級アルコール、高級アルコール、糖アルコールといった多価アルコール以外のアルコール類、防腐剤、香料、界面活性剤、皮膜形成剤、pH調整剤、消臭剤、キレート剤、酸化防止剤、抗菌剤、防菌防かび剤、抗炎症剤、美白剤等の有効成分、動物エキス、植物エキス、ナイアシンアミド、D-パントテニルアルコール以外のビタミン類などの美容成分や薬効成分等、通常皮膚外用剤に使用される成分の一種以上が挙げられる。
【0039】
<皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、皮膚に塗布し、使用する組成物である。本発明の皮膚外用剤は粘度が高いものが好ましく、好ましくは3,000mPa・s以上であり、より好ましくは、5,000mPa・s以上であり、使用感に優れる観点から、特に好ましくは8,000mPa・s以上である。本発明の皮膚外用剤の粘度は、例えばB型粘度計(Brookfield回転粘度計、温度:25℃、回転数:5rpm)で測定することができる。
【0040】
また、本発明の皮膚外用剤はpHが4~8が好ましく、使用感に優れる観点から5~7がより好ましい。本発明の皮膚外用剤のpHは、例えばpH計を用いてガラス電極法にて測定することができる。
【0041】
本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品に用いることができ、例えば化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液などのスキンケア化粧料、化粧下地、日焼け止め、ファンデーションなどのメイクアップ化粧料に用いることができる。
【0042】
本発明の皮膚外用剤は、通常の方法に従って製造することができる。例えば、水中油型組成物を得る場合、水に(A)ナイアシンアミド、(B)トラネキサム酸及び/又はD-パントテニルアルコール、及び(C)多価アルコール、(D)増粘剤、及び、任意に乳化剤などを均一に分散させた水相を調製し、あらかじめ均一化した(E)油剤を含む油相を投入し、ホモミキサーなどで均一に乳化を行い、必要に応じてpHを調整する事で本発明の皮膚外用剤を得ることができる。(F)グリチルリチン酸ジカリウムを配合する場合は水相の調製の際に添加し、油相を投入して均一化することで皮膚外用剤を得ることができる。(G)紫外線防御剤を配合する場合はあらかじめ油相に分散して均一化し、水相と乳化することで皮膚外用剤を得ることができる。することで製造することができる。
【実施例0043】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。なお、実施例で使用する各成分の量は特に断りが無い限り、質量%である。
【0044】
[皮膚外用剤の評価(1)水中油型日焼け止め用皮膚外用剤]
<皮膚外用剤の調製>
表1に従い、比較例1~3、実施例1~7の水中油型の日焼け止め用皮膚外用剤を下記の方法で調製した。具体的には、水に(A)、(B)、(C)、(D)と、ポリソルベート20、PEG-60水添ヒマシ油を均一に溶解させた水相に、(G)を(E)に均一分散した油相を加え、ホモミキサーなどで均一に乳化し、クエン酸ナトリウムを用いてpHを調整し、フェノキシエタノールを加えて調製した。(F)を配合する場合は(A)~(D)と共に水相に加え、均一に溶解させた。
【0045】
【表1】
【0046】
<保存安定性の評価>
(1)粘度測定
得られた日焼け止め用皮膚外用剤について、製造直後、製造後50℃で7日間保管後の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製 RVT型、温度:25℃、回転数:5rpm)を用いて測定した。下記式に基づき粘度の減衰率を算出した。減衰率が小さいほど保存安定性に優れていることを示す。
[式]減衰率(%)=(製造直後の粘度-50℃7日間保管後の粘度)/(製造直後の粘度)
(粘度の減衰率)
・20%未満:保存安定性に非常に優れている
・20%以上40%未満:保存安定性に優れている
・40%以上:保存安定性が悪く、商品化には不向き
結果を表2に示す。
【0047】
(2)pH測定
得られた皮日焼け止め用膚外用剤について、製造直後、製造後50℃7日保管後のpHを、pH計(堀場製作所社製 pHメーターF71型)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0048】
(3)外観の変化
得られた皮日焼け止め用膚外用剤について、製造後50℃7日保管後の外観を目視にて確認した。製造直後と比較して変色がないものを〇、製造直後と比較して明らかな変色が認められるものを×として評価した。結果を表2に示す。
【0049】
<使用感の評価>
得られた日焼け止め用皮膚外用剤の使用感を評価した。被験者として、年齢が20代~30代の5名を無作為に選出した。被験者の顔に上記皮膚外用剤を使用し、使用感(塗布時の伸びのよさ、塗布後のきしみのなさ)を評価項目として総合的に判断し、5段階の評価基準に基づいてアンケートを行った。アンケートの各項目の平均値を算出し、評価した。
(塗布時の伸びのよさ)
・5:とても良い(なめらかに伸びる)
・4:良い(伸びがよい)
・3:どちらでもない(使用の際には気にならない程度の伸びである)
・2:悪い(伸びが悪く、使用の際に気になる)
・1:とても悪い(伸びが悪く、使用に不向き)
(塗布後のきしみのなさ)
・5:とても良い(塗布後にきしみを感じずとてもしっとりしている)
・4:良い(塗布後にきしみをほぼ感じずしっとりしている)
・3:どちらでもない(塗布後にきしみを少し感じるが、使用の際には気にならない)
・2:悪い (塗布後にきしみを感じる)
・1:とても悪い(塗布後にきしみを強く感じ、使用に不向き)
結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
本発明の組成物は、製造時の粘度が1,800~20,000mPa・s、pHは6.1~6.4であった。50℃7日間保管後は、比較例1~3は粘度の減衰率は40%未満であり、pHの変動は0.3~0.4、比較例2では変色が観察された。一方、実施例1~7は粘度の減衰率は40%未満であり、pHの変動は0~0.2と比較例より小さく、変色も発生していないことから、いずれも比較例1~3に比べて高い保存安定性を示した。特に、粘度が5,000mPa・s以上である実施例3~7は、粘度の減衰率が11%以下と非常に小さく、比較例1~3と比べて保存安定性に優れた皮膚外用剤であった。また、比較例1~3の皮膚外用剤は塗布後のきしみを感じやすいものであったが、本発明である実施例1~7の皮膚外用剤はいずれも塗布時の伸びが良く、塗布後のきしみをほぼ感じずしっとりしており、使用感に優れたものであった。特に、粘度が5,000mPa・s以上である実施例3~7は、比較例1~3のみならず実施例1,2と比べても塗布時ののびが良く、塗布後のきしみもなくしっとりしており、使用感に優れるものであった。
【0052】
[皮膚外用剤の評価(2)水中油型ジェル状皮膚外用剤]
<皮膚外用剤の調製>
表3に従い、比較例4~6、実施例8~14の水中油型ジェル状皮膚外用剤を下記の方法で調製した。具体的には、水に(A)、(B)、(C)、(D)と、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリルを均一に溶解させた水相に、(E)を均一分散した油相を加え、ホモミキサーなどで均一に乳化し、水酸化ナトリウムを用いてpHを調整し、フェノキシエタノールを加えて調製した。(F)を配合する場合は(A)~(D)と共に水相に加え、均一に溶解させた。
【0053】
<物性測定>
(1)粘度測定
得られたジェル状皮膚外用剤の粘度を、B型粘度計(ブルックフィールド社製 RVT型、温度:25℃、回転数:5rpm)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0054】
(2)pH測定
得られたジェル状皮膚外用剤のpHを、pH計(堀場製作所社製 pHメーターF71型)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0055】
<使用感の評価>
得られたジェル状皮膚外用剤の使用感を評価した。被験者として、年齢が20代~30代の5名を無作為に選出した。被験者の顔に上記皮膚外用剤を使用し、使用感(塗布時の伸びの良さ、しっとり感)を評価項目として総合的に判断し、5段階の評価基準に基づいてアンケートを行った。アンケートの各項目の平均値を算出し、評価した。
(塗布時の伸びの良さ)
・5:とても良い(滑らかによく伸びる)
・4:良い(伸びがよい)
・3:どちらでもない(使用の際には気にならない程度の伸びである)
・2:悪い(伸びが悪く、使用の際に気になる)
・1:とても悪い(伸びがとても悪く、使用に不向き)
(塗布後のしっとり感)
・5:とても良い(塗布後にとてもしっとりしている)
・4:良い(塗布後にしっとりしている)
・3:どちらでもない(塗布後のしっとり感を少し感じる)
・2:悪い (塗布後のしっとり感をほとんど感じない)
・1:とても悪い(塗布後のしっとり感を感じられず、使用に不向き)
【0056】
【表3】
【0057】
本発明の組成物は、製造時の粘度が1,680~9,400mPa・s、pHは6~6.6であった。比較例4~6の皮膚外用剤は塗布後のしっとり感を感じないものであったが、本発明である実施例8~14の皮膚外用剤はいずれも塗布時の伸びが良く、塗布後しっとりしており、使用感に優れたものであった。特に、粘度が5,000mPa・s以上である実施例10~14は、比較例4~6のみならず実施例8,9と比べても塗布時ののびが良く、塗布後にしっとりしており、使用感に優れるものであった。
【0058】
<皮膚外用剤の調製>
表4~6に記載された水中油型の日焼け止め用皮膚外用剤を実施例1と同様の方法で調製した。得られた皮膚外用剤は、いずれも粘度が5,000mPa・s以上、pHが5~8であり、塗布時の伸びが良く、塗布後のきしみがなくしっとりしたものであり、使用感に優れるとともに、日焼け止め効果にも優れるものである。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
<皮膚外用剤の調製>
表7~表10に記載された水中油型のジェル状皮膚外用剤を実施例と同様の方法で調製した。得られた皮膚外用剤は、いずれも粘度が5,000mPa・s以上、pHが5~8であり、塗布時の伸びが良く、塗布後もしっとりしており、使用感に優れるものである。
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の皮膚外用剤は、ナイアシンアミドと、トラネキサム酸及びD-パントテニルアルコールから選ばれる少なくとも1種、並びに、(C)多価アルコール、(D)増粘剤、及び(E)油剤から選ばれる少なくとも2種を含有することにより、使用感に優れた皮膚外用剤を提供することができ、産業上の利用の可能性が高いものである。