(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012659
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】棒材供給装置
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
B23B13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115669
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】北沢 孝一郎
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC04
3C045FC14
(57)【要約】
【課題】棒材加工装置に供給される棒材の残り加工可能数や残り加工時間といった作業者が必要とする情報を自動で計算して表示することができる棒材供給装置を提供する。
【解決手段】棒材を搬送するための駆動手段と、当該駆動手段の駆動力によって前記棒材を長手方向に搬送する搬送手段と、を備え、前記長手方向の一端側に配置される棒材加工装置に前記棒材を供給する棒材供給装置において、前記棒材加工装置の加工開始情報を取得する加工開始情報取得手段と、加工時間を計測する加工時間計測手段と、前記加工時間内に前記棒材を搬送した搬送長さを測定する搬送長さ測定手段と、前記搬送長さから、残り加工可能数を算出する残り加工可能数算出手段と、前記残り加工可能数及び前記加工時間から残り時間を算出する残り時間算出手段と、前記残り時間及び、前記残り加工可能数を表示する表示手段と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材を搬送するための駆動手段と、
当該駆動手段の駆動力によって前記棒材を長手方向に搬送する搬送手段と、を備え、
前記長手方向の一端側に配置される棒材加工装置に前記棒材を供給する棒材供給装置において、
前記棒材加工装置の加工開始情報を取得する加工開始情報取得手段と、
加工時間を計測する加工時間計測手段と、
前記加工時間内に前記棒材を搬送した搬送長さを測定する搬送長さ測定手段と、
前記搬送長さから、残り加工可能数を算出する残り加工可能数算出手段と、
前記残り加工可能数及び前記加工時間から残り時間を算出する残り時間算出手段と、
前記残り時間及び、前記残り加工可能数を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする棒材供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の棒材供給装置において、
前記加工開始情報取得手段は、前記棒材加工装置の判別信号を受信することを特徴とする棒材供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の棒材供給装置において、
前記判別信号は、前記棒材加工装置のチャック開信号であることを特徴とする棒材供給装置。
【請求項4】
請求項1に記載の棒材供給装置において、
前記棒材の加工前の全長を取得する全長取得手段を備えることを特徴とする棒材供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の棒材供給装置において、
前記残り加工可能数算出手段は、前記全長を前記搬送長さで除して前記残り加工可能数を算出することを特徴とする棒材供給装置。
【請求項6】
請求項2に記載の棒材供給装置において、
前記判別信号は、加工開始のタイミングを示す専用信号であることを特徴とする棒材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤などの棒材加工装置に被加工材である棒材を自動で供給する棒材供給装置に係り、特に、棒材の残り加工可能数や残り加工時間などの情報を表示することができる棒材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒材供給装置は、細長い棒材を把持して自動旋盤などの棒材加工装置に連続的に送り込むとともに、棒材加工装置の稼働中にあっては、棒材を回転支承するものである。棒材加工装置はその主軸及びチャックにより棒材を把持して回転し、刃物で棒材を切削することとなる。
【0003】
この棒材供給装置は、上述したように、棒材加工装置に棒材を供給する装置であり、供給される棒材は、これ以上、新たな部材を加工することができない長さとなると、フィンガーチャックによって端部が把持された把持代を含んだ残材として排出される。その後、新たな棒材が供給されて、当該新たな棒材を棒材加工装置に向けて供給する。
【0004】
このように、棒材供給装置は、所定長さの棒材を棒材加工装置に供給し、棒材加工装置では、供給された棒材を加工する加工品の長さに応じて加工を行い、その余の棒材は、次の加工品の加工を行って、連続的に加工品の加工を行っている。
【0005】
このような棒材供給装置は、種々の形態が知られており、例えば、特許文献1に記載された棒材供給装置が知られている。
【0006】
特許文献1に記載された棒材供給装置は、棒材を搬送するための駆動手段と、当該駆動手段の駆動力によって前記棒材をその長手方向に搬送する搬送手段と、を備え、前記棒材の長手方向一端側に配置される棒材加工装置に前記棒材をその長手方向に搬送して供給する棒材供給装置において、前記搬送手段の直線変位量を電気信号に変換して出力する変位検出手段と、前記電気信号から前記棒材の搬送量を算出する搬送量算出手段と、前記算出された搬送量を棒材の初期の長さから減算して残り材料長さを算出する算出手段と、算出された残り材料長さをミリメートル単位に変換して表示するミリメートル変換表示手段と、を備えている。
【0007】
このような棒材供給装置によれば、変位検出手段により搬送手段の直線変位量、すなわち棒材の移動量を検出して電気信号の形態で出力し、当該電気信号に基づいて棒材の搬送量が算出されるので、棒材の移動量を正確に求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の棒材供給装置によると、棒材の移動量は把握することができたものの、現在加工中の棒材の残り加工可能数や残り加工時間といった具体的な数値を直接知ることができず、作業者が手作業で計算等をしてこれらの情報を得る必要があった。
【0010】
通常、作業者は、これらの計算等をする作業のほか、次の段取り作業のタイミングや別作業に割く時間の管理など複数の作業を行う必要があり、生産性の悪化が指摘されていた。また、手作業による計算によると、寸法チェックなどで棒材加工装置を1サイクル停止した場合や途中で加工プログラムを変更した場合には、新たに計算をする必要があり、作業者の負担となっていた。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決することを目的としており、棒材加工装置に供給される棒材の残り加工可能数や残り加工時間といった作業者が必要とする情報を自動で計算して表示することができる棒材供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る棒材供給装置は、棒材を搬送するための駆動手段と、当該駆動手段の駆動力によって前記棒材を長手方向に搬送する搬送手段と、を備え、前記長手方向の一端側に配置される棒材加工装置に前記棒材を供給する棒材供給装置において、前記棒材加工装置の加工開始情報を取得する加工開始情報取得手段と、加工時間を計測する加工時間計測手段と、前記加工時間内に前記棒材を搬送した搬送長さを測定する搬送長さ測定手段と、前記搬送長さから、残り加工可能数を算出する残り加工可能数算出手段と、前記残り加工可能数及び前記加工時間から残り時間を算出する残り時間算出手段と、前記残り時間及び、前記残り加工可能数を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る棒材供給装置において、前記加工開始情報取得手段は、前記棒材加工装置の判別信号を受信すると好適である。
【0014】
また、本発明に係る棒材供給装置において、前記判別信号は、前記棒材加工装置のチャック開信号であると好適である。
【0015】
また、本発明に係る棒材供給装置において、前記棒材の加工前の全長を取得する全長取得手段を備えると好適である。
【0016】
また、本発明に係る棒材供給装置において、前記残り加工可能数算出手段は、前記全長を前記搬送長さで除して前記残り加工可能数を算出すると好適である。
【0017】
また、本発明に係る棒材供給装置において、前記判別信号は、加工開始のタイミングを示す専用信号であると好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、棒材加工装置の加工開始情報を取得する加工開始情報取得手段と、加工時間を計測する加工時間計測手段と、加工時間内に棒材を搬送した搬送長さを測定する搬送長さ測定手段と、搬送長さから、残り加工可能数を算出する残り加工可能数算出手段と、残り時間及び、残り加工可能数を表示する表示手段と、を備えるので、残り時間や残り加工可能数について、作業者が電卓などを用いて手作業で計算する必要がなくなり、作業者への負担軽減を図ることでき、生産性向上につなげることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る棒材供給装置の模式図。
【
図2】本発明の実施形態に係る棒材供給装置の構造を説明する概略図。
【
図3】本発明の実施形態に係る棒材供給装置の制御方法を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る棒材供給装置の模式図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る棒材供給装置の構造を説明する概略図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る棒材供給装置の制御方法を説明するためのフロー図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の棒材供給装置10は、一例として旋盤と称される棒材加工装置20に材料を供給するものであって、棒材加工装置20に隣接して配置されている。
【0023】
棒材加工装置20は、例えば自動旋盤であり、
図2に示すように、その主軸21の中心軸がフィンガーチャック、該フィンガーチャックにより把持された棒材2等の中心軸の延長線に合致するようにこの棒材供給装置10の長手方向の一端側に配置されている。
【0024】
棒材供給装置10は、棒材加工装置20に材料としての棒材2を供給する本体5と、この本体5を所定の高さで支持する基台7と、を備える。また、本体5には、後述する残り加工可能数算出手段及び残り時間算出手段として機能する制御部4及び、表示手段として機能する操作パネル6を備えている。
【0025】
図2に示すように、本体5は、供給される棒材2を搬送するための駆動力を付与する駆動手段11と、駆動手段11によって押し出された棒材2を搬送する搬送手段12と、棒材2の中心軸を棒材加工装置20の主軸21と一致させるように保持する支持ユニット13とを備えている。
【0026】
駆動手段11は、図示しない駆動モータによって駆動力を付与されて搬送手段12の長手方向に沿って移動可能なスライダ11aと、スライダ11aに連結されたプッシュロッド11bと、プッシュロッド11bの先端に取り付けられ、棒材2を把持するフィンガーチャック11cとを備えている。
【0027】
スライダ11aは、棒材2の搬送長さを測定する搬送長さ測定手段を備えている。搬送長さ測定手段は、従来周知の種々の機構を用いることができるが、例えば、エンコーダが好適に用いられる。さらに、本体5には、棒材加工装置20の加工時間を計測する加工時間計測手段を備えており、加工時間の計測は、後述する判別信号がオンとなったことを受信することで測定を開始し、判別信号がオフとなった後、スライダ11aが1サイクル送出量を送出して再度判別信号がオンになるまでの1サイクルタイムの計測を行う。
【0028】
また、本体5は、供給された棒材2の加工前の全長を取得する全長取得手段を備えており、全長取得手段は、棒材供給装置10に棒材2が供給された際に棒材2の全長を自動で計測するように構成しても構わないし、操作パネル6を作業者が操作して手動で棒材2の長さを取得するように構成しても構わない。また、予め棒材2の全長が判明している場合には、作業者がその全長を手動で入力しても構わない。
【0029】
制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及び、RAM(Random Access Memory)とを有しており、制御部4は、CPUが、ROMやRAMなどに記憶された各種プログラムを読み出して後述する残り加工可能数算出手段及び残り時間算出手段として機能する。
【0030】
操作パネル6は、液晶表示素子またはEL(Electro Luminescence)素子などによって構成されたディスプレイや、各種操作ボタンを有する従来周知の種々の操作パネルを用いることができる。
【0031】
なお、本体5には、供給される棒材2を棒材供給装置10に適宜供給する図示しない棒材供給部を備えているが、従来から公知であるためその詳細は省略する。
【0032】
一方、棒材加工装置20は、棒材2が通過可能な筒状の主軸21を備え、この主軸21には、棒材2の先端部を把持するチャック22が設けられている。棒材2は、当該チャック22によって把持された状態で回転され、図示しない所定の切削工具(例えば、バイト)によって加工される。
【0033】
また、棒材加工装置20は、チャック22が開いたタイミングでチャック開信号を発する判別信号送信手段を備えており、当該判別信号送信手段によって発せられたチャック開信号は、棒材供給装置10の制御部4へ送信される。この際、チャック開信号は、無線で送信しても構わないし、有線で送信しても構わない。
【0034】
次に、
図3を参照して本実施形態に係る棒材供給装置10の動作について説明を行う。まず、棒材供給装置10の操作パネル6を操作して、棒材加工装置20へ棒材2を供給する動作を開始して自動運転を開始する(S101)。
【0035】
自動運転が開始すると1サイクル送出量の計測を開始する(S102)。その後、棒材加工装置20のチャック22が開くと、棒材加工装置20は、判別信号送信手段からチャック開信号がオンとなったことを棒材供給装置10の制御部4へ送信する(S103)。
【0036】
棒材供給装置10はチャック開信号を受信し、判別信号がオンであることを判別すると、1サイクルタイムの計測を開始する(S104)と同時に、棒材加工装置20の図示しないストッパーまで棒材2を送出する。棒材2の送出が完了すると、棒材供給装置10は棒材加工装置20へ送出完了信号を送信する。その後、棒材加工装置20が送出完了信号を受信し、送出完了信号がオンである事を判別すると棒材加工装置20はチャック22を閉じる。この時、棒材加工装置20はチャック開信号がオフとなったことを判別信号送信手段から送信し、判別信号がオフであることを棒材供給装置10へ送信する(S105)。
【0037】
判別信号がオフであることを受信すると、棒材供給装置10は、1サイクル送出量の計測を終了する(S106)。1サイクル送出量の計測が終了すると、当該計測結果Sを任意の記憶領域へ保存し(S107)、現在値のリセットを行って(S108)、次の1サイクル送出量の計測を開始する。この時、棒材加工装置20のチャック22は閉じている為、送出量はカウントされないまま、次のチャック開信号を待つ(S108~S102)。
【0038】
また、チャック22が閉じると棒材加工装置20は棒材2の加工を開始する。その後、加工が終了すると、棒材加工装置20は加工した製品を突っ切り、次のサイクルを開始する。この時、棒材加工装置20のチャック22が再度開き、チャック開信号を棒材供給装置10へ送信する(S109)。棒材供給装置10は、再度、チャック開信号を受信すると、1サイクルタイムの計測を終了し(S110)、1サイクルタイムの計測結果Aを任意の記憶領域に保存し(S111)、現在値をリセットのリセットを行って(S112)、次の1サイクルタイムの計測を開始する(S104)と同時に、再度、棒材加工装置20の図示しないストッパーまで棒材2を送出する。棒材加工装置20と棒材供給装置10における、これらの一連の動作はスライダ11aの現在位置が棒材供給装置10の設定値であるバーエンドに到達するまで繰り返し行われる。ここでバーエンドとは棒材2の全長から残材として排出される長さを減算した長さと定義する。また、残り材料長さとは前記バーエンドからスライダ11aの現在位置を減算した長さと定義する。
【0039】
1サイクル送出量の計測結果Sによって、残り加工可能数を算出する残り加工可能数算出手段(S114)を行う。残り加工可能数算出工程(S114)は、当該残り材料長さを1サイクル送出量の計測結果Sで除して残り加工可能数Bを算出する。ここで、加工できる数は自然数であるので、残り加工可能数Bの整数部分を残り加工数Bとして記憶する。なお、残り材料長さは、任意の記憶領域に保存される。
【0040】
また、1サイクルタイムの計測結果Aによって、残り時間Cを算出する残り時間算出手段(S113)を行う。残り時間算出手段(S113)は、残り加工可能数Bに1サイクルタイムの計測結果Aを乗じることで棒材2のバーエンドまでの加工に必要な残り時間Cを算出する。
【0041】
その後、1サイクルタイムA、残り加工可能数B及びバーエンドまでの残り時間Cを操作パネル6に表示する(S115)。
【0042】
このように、本実施形態に係る棒材供給装置10によれば、現在加工中の棒材2の残り加工可能数Bや残り時間Cを自動で計算して表示することができるので、作業者の作業負担を軽減して生産性の向上に寄与することができる。
【0043】
なお、上述した本実施形態に係る棒材供給装置10は、棒材加工装置20から受信する加工開始情報としてチャック開信号を判別信号として用いた場合について説明を行ったが、棒材加工装置20が通常有しているチャック開信号を判別信号として用いることで、棒材加工装置20の大幅な改修を行うことなく、本実施形態に係る棒材供給装置10に適用することができるので、低コストで本実施形態に係る棒材供給装置10を提供することが可能となる。
【0044】
また、判別信号として用いる加工開始情報は、チャック開信号に限らず、例えば、棒材加工装置20が加工開始のタイミングを示す専用信号を出力することができれば、当該専用信号を用いても構わない。また、加工時間や1サイクル送出量は、棒材供給装置10の動作から算出する場合について説明を行ったが、予めこれらの値が判明している場合には、手入力で入力するように構成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0045】
10 棒材供給装置, 11 駆動手段, 12 搬送手段, 13 支持ユニット, 20 棒材加工装置, 21 主軸, 22 チャック。