IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ウオールナットの特許一覧 ▶ 公立大学法人首都大学東京の特許一覧

<>
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図1
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図2
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図3
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図4
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図5
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図6
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図7
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図8
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図9
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図10
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図11
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図12
  • 特開-被覆経路生成方法及び移動体 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001270
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】被覆経路生成方法及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241225BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100766
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】394019370
【氏名又は名称】株式会社ウオールナット
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】新 弘治
(72)【発明者】
【氏名】比留間 純一
(72)【発明者】
【氏名】三門 ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼根沢 皓誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩樹
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA06
5H301AA10
5H301BB01
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG09
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】直交する二方向からの効率的な被覆経路を生成可能な被覆経路生成方法及びその被覆経路により作業領域を効率よく移動できる移動体を提供する。
【解決手段】被覆経路生成方法は、作業領域1を示す二次元マップMを、障害物3を基準として所定の第一の方向に沿う線と第一の方向と直交する第二の方向に沿う線とにより複数のセルに分割する分割工程と、セル毎にジグザグ経路を生成する経路生成工程と、隣接するセルのジグザグ経路間を移動経路により繋いで被覆経路を生成する移動経路生成工程と、を有する。分割工程と、経路生成工程と、移動経路生成工程と、を実施して第一の被覆経路を生成した後、二次元マップMを所定の方向に90°回転させ、その回転させた二次元マップMに対し、分割工程と、経路生成工程と、移動経路生成工程と、を再実施して第二の被覆経路を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の周辺に設定される作業領域に移動体による被覆経路を設定する被覆経路生成方法であって、
前記作業領域を示す二次元マップを、前記障害物を基準として所定の第一の方向に沿う線と前記第一の方向と直交する第二の方向に沿う線とにより複数のセルに分割する分割工程と、
前記セル毎にジグザグ経路を生成する経路生成工程と、
隣接する前記セルの前記ジグザグ経路間を移動経路により繋いで被覆経路を生成する移動経路生成工程と、を有し、
前記分割工程と、前記経路生成工程と、前記移動経路生成工程と、を実施して第一の被覆経路を生成した後、前記二次元マップを所定の方向に90°回転させ、その回転させた前記二次元マップに対し、前記分割工程と、前記経路生成工程と、前記移動経路生成工程と、を再実施して第二の被覆経路を生成する
ことを特徴とする被覆経路生成方法。
【請求項2】
分割工程と経路生成工程との間に、隣接するセルを結合して新たなセルとする結合工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項1記載の被覆経路生成方法。
【請求項3】
二次元マップを所定の方向に90°回転させる際に、前記二次元マップを反転させる
ことを特徴とする請求項1記載の被覆経路生成方法。
【請求項4】
第一の被覆経路及び第二の被覆経路を、二次元マップのセルを所定の周回方向に辿るように生成する
ことを特徴とする請求項1記載の被覆経路生成方法。
【請求項5】
第一の被覆経路及び第二の被覆経路を、四角形状の二次元マップの所定の角部を含むセルから、そのセルに対し所定の周回方向とは反対方向に最も近いセルまで、所定の周回方向に辿るように生成する
ことを特徴とする請求項4記載の被覆経路生成方法。
【請求項6】
本体と、
この本体を移動させる移動手段と、
請求項1ないし5いずれか一記載の被覆経路生成方法により生成された第一の被覆経路と第二の被覆経路とに沿って前記本体を作業領域で移動させるように前記移動手段を制御する制御手段と、
作業するための作業手段と、
を備えることを特徴とする移動体。
【請求項7】
作業手段は、作業領域下を探査するためのレーダ装置である
ことを特徴とする請求項6記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物の周辺に設定される作業領域に移動体による被覆経路を設定する被覆経路生成方法及びこれを用いて移動する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
路面下の空洞による陥没事故の防止のため、地中レーダ機器を用いた空洞探査が必要とされている。現在、車道部分は空洞探査車によって探査が行われているのに対し、歩道や道路脇においては人力での探査が余儀なくされており、ロボットによる作業の軽労化・自動化が期待されている。
【0003】
歩道における空洞探査には、障害物を回避しながら探査を行う領域をすべて網羅するような経路が求められる。このような経路を生成する問題は被覆経路計画(Coverage Path Planning)と呼ばれる。
【0004】
例えば、従来、自律走行する掃除作業車において、作業の作業領域を複数の四角形領域に分割し、それぞれの領域に対し、ジグザグ状の経路を設定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-286910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、レーダを用いた路面下の空洞探査においては、探査用のレーダの特性により、詳細な探査情報を得るために直交する二方向から探査してそれらの反射波に基づき空洞と埋設管等の非空洞とを識別することが可能となる。
【0007】
この点、上記特許文献1に記載された発明では、清掃という一度の被覆で遂行可能な作業であることから、同じ作業領域に対し、複数の方向から被覆を行う場合が考慮されていない。そのため、領域の各点において被覆する方向が異なり、二度目の被覆で領域の各点において直交する二方向からの被覆を行うことが難しく、また、仮に二度の被覆を行う場合であっても、一度目の被覆から二度目の被覆への移行については考慮されていない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、直交する二方向からの効率的な被覆経路を生成可能な被覆経路生成方法及びその被覆経路により作業領域を効率よく移動できる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の被覆経路生成方法は、障害物の周辺に設定される作業領域に移動体による被覆経路を設定する被覆経路生成方法であって、前記作業領域を示す二次元マップを、前記障害物を基準として所定の第一の方向に沿う線と前記第一の方向と直交する第二の方向に沿う線とにより複数のセルに分割する分割工程と、前記セル毎にジグザグ経路を生成する経路生成工程と、隣接する前記セルの前記ジグザグ経路間を移動経路により繋いで被覆経路を生成する移動経路生成工程と、を有し、前記分割工程と、前記経路生成工程と、前記移動経路生成工程と、を実施して第一の被覆経路を生成した後、前記二次元マップを所定の方向に90°回転させ、その回転させた前記二次元マップに対し、前記分割工程と、前記経路生成工程と、前記移動経路生成工程と、を再実施して第二の被覆経路を生成するものである。
【0010】
請求項2記載の被覆経路生成方法は、請求項1記載の被覆経路生成方法において、分割工程と経路生成工程との間に、隣接するセルを結合して新たなセルとする結合工程をさらに有するものである。
【0011】
請求項3記載の被覆経路生成方法は、請求項1記載の被覆経路生成方法において、二次元マップを所定の方向に90°回転させる際に、前記二次元マップを反転させるものである。
【0012】
請求項4記載の被覆経路生成方法は、請求項1記載の被覆経路生成方法において、第一の被覆経路及び第二の被覆経路を、二次元マップのセルを所定の周回方向に辿るように生成するものである。
【0013】
請求項5記載の被覆経路生成方法は、請求項4記載の被覆経路生成方法において、第一の被覆経路及び第二の被覆経路を、四角形状の二次元マップの所定の角部を含むセルから、そのセルに対し所定の周回方向とは反対方向に最も近いセルまで、所定の周回方向に辿るように生成するものである。
【0014】
請求項6記載の移動体は、本体と、この本体を移動させる移動手段と、請求項1ないし5いずれか一記載の被覆経路生成方法により生成された第一の被覆経路と第二の被覆経路とに沿って前記本体を作業領域で移動させるように前記移動手段を制御する制御手段と、作業するための作業手段と、を備えるものである。
【0015】
請求項7記載の移動体は、請求項6記載の移動体において、作業手段は、作業領域下を探査するためのレーダ装置であるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、直交する二方向からの効率的な被覆経路を生成可能となるとともに、その被覆経路により作業領域を効率よく移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態の被覆経路生成方法の作業領域を示す二次元マップの例を示す説明図である。
図2】同上被覆経路生成方法の一回目の分割工程を示す説明図である。
図3】同上被覆経路生成方法の一回目の結合工程を示す説明図である。
図4】同上被覆経路生成方法の一回目の経路生成工程を示す説明図である。
図5】同上被覆経路生成方法の一回目の移動経路生成工程を示す説明図である。
図6】同上被覆経路生成方法の回転工程を示す説明図である。
図7】同上被覆経路生成方法の二回目の各工程を示す説明図である。
図8】同上被覆経路生成方法で生成された第一及び第二の被覆経路の例を示す説明図である。
図9】同上被覆経路生成方法を用いる移動体を示すブロック図である。
図10】第2の実施の形態の被覆経路生成方法で生成された第一の被覆経路の例を示す説明図である。
図11】同上被覆経路生成方法の回転工程における二次元マップの反転を示す説明図である。
図12】同上被覆経路生成方法の回転工程における二次元マップの回転を示す説明図である。
図13】同上被覆経路生成方法で生成された第二の被覆経路の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施の形態の被覆経路生成方法は、図1に示す作業領域1を移動体2により被覆するための被覆経路を生成するものである。
【0020】
作業領域1は、任意の形状としてよいが、本実施の形態では、外形が四角形状の二次元領域を仮定する。作業領域1が仮に四角形状でない場合であっても、作業領域1を複数の四角形状に分割し、それら個々の領域を新たに作業領域1として、それらを繋げることで、四角形状以外の形状の作業領域1にも本実施の形態の被覆経路生成方法を適用可能である。
【0021】
作業領域1は、移動体2より大きい凸形状の障害物3の周辺にある。また、障害物3間にも移動体2が通れる隙間として作業領域1が存在する。障害物3は、移動体2の移動を妨げるものであり、障害物3上を移動体2は移動することができないものとする。つまり、四角形状の領域から障害物3を除いた部分が、移動体2により被覆される対象である作業領域1となっている。作業領域1の大きさ、障害物3の形状及び配置は既知であるものとする。
【0022】
図9に示すように、移動体2は、本体5と、本体5を移動させる移動手段6と、移動手段6を制御する制御手段7と、作業するための作業手段8と、を有する。そして、本実施の形態において、移動体2としては、歩道等の作業領域を走行しつつ作業領域下の空洞等を検出する探査装置を例に挙げる。
【0023】
本体5は、例えば外形が正方形状等の四角形状とする。また、移動手段6は、例えば車輪やクローラ等の走行手段でもよいし、歩行手段等でもよい。移動手段6により、本体5または移動体2が、二次元の全方向移動が可能である。
【0024】
なお、移動体2が例えばドローン等の飛行体である場合には、移動手段6はプロペラ等の飛行手段でもよいし、水上や水中での探査を行うドローン等である場合には、移動手段6はスクリュ等のスラスタでもよい。
【0025】
制御手段7は、中央処理装置としてのCPUや、一時記憶装置としてのRAM、記憶装置としてのEEPROM、ROMや、入出力インタフェース等がバスを介して接続されたマイクロコンピュータ等が好適に用いられる。
【0026】
作業手段8は、本体5に配置され、移動しながら作業領域へと偏波を照射しその反射波を取得するレーダ装置が用いられる。作業手段8は、基本的に、本体5または作業手段8の幅分の範囲に対する作業が可能であり、本実施の形態では、本体5または作業手段8の幅分の探査情報を取得可能となっている。
【0027】
また、作業手段8は、レーダ装置以外でも、移動体2の用途に応じて任意に設定でき、例えば移動体2が掃除機である場合には、吸引手段等の集塵手段が用いられてよいし、例えば移動体2が農薬等の散布装置である場合には、スプレー手段等が用いられてよい。
【0028】
また、移動体2は、自己位置を得るための自己位置推定手段9を有する。自己位置推定手段9は、移動手段6に紐付けられたエンコーダ等でもよいし、周辺環境を撮像するためのカメラや、GPS等の位置情報取得手段を用いてもよい。
【0029】
そして、移動体2は、制御手段7が移動手段6を制御することで、本実施の形態の被覆経路生成方法により生成された被覆経路に沿って移動する。
【0030】
被覆経路生成方法を実施するためのプログラムが、移動体2に備えられる制御手段7あるいはその他の実行手段により実行されて移動体2において被覆経路が生成されてもよいし、移動体2とは別個のPC等の生成装置によりプログラムが実行されて生成された被覆経路を、制御手段7が有線あるいは無線等により間接的または直接的に取得してもよい。すなわち、移動体2は、実際の移動前に作業領域1とその被覆経路とを含むマップ情報を制御手段7に有するものとする。
【0031】
そして、本実施の形態の被覆経路生成方法は、セル分割法を基盤とする。セル分割法とは、作業領域を複数の小領域(セル)に分割する手法である。セル分割法の被覆経路計画における利用法としては、例えばBCD(Boustrophedon Cellular Decomposition)が挙げられる。BCDでは、作業領域をジグザグな経路により被覆可能な形状のセルに分割し、各セルを順番に被覆することで領域全体を被覆する。
【0032】
被覆経路生成方法は、分割工程と、経路生成工程と、移動経路生成工程と、を有する。好ましくは、被覆経路生成方法は、結合工程を分割工程と経路生成工程との間にさらに有する。
【0033】
分割工程は、作業領域1を示す二次元マップM(図1)を、障害物3を基準として所定の第一の方向に沿う線と第一の方向と直交する第二の方向に沿う線とにより複数のセルCに分割する工程である(図2)。二次元マップMは、例えば、第一の方向と第二の方向とで作られる二次元直交座標系に配置される。二次元マップMは、四角形状であるため、好ましくは、一対の辺に平行な方向を第一の方向、他の一対の辺に平行な方向を第二の方向に沿わせ、所定の角部、例えば本実施の形態では左下の角部を原点位置に合わせて二次元直交座標系に配置される。図中では、第一の方向を矢印D1、第二の方向を矢印D2で示す。図示される例では、第一の方向が上下方向、第二の方向が左右方向であるが、第一の方向が左右方向、第二の方向が上下方向でもよい。「障害物3を基準として」とは、障害物3の形状に基づく障害物3の輪郭に対して接する線や障害物3の輪郭と連なる線を生成することを言うものとする。
【0034】
結合工程は、隣接する複数のセルCを結合して新たな大きいセルCとする工程である(図3)。このとき、セルCの結合の要否は、例えば結合されて生成される新たなセルCの広さが所定以上であるか否か、新たなセルCの形状が単純であるか、及び/または、経路生成工程においてジグザグ経路が連なって生成できるか否か等に基づいて判断される。すなわち、結合されたセルCに第一の方向及び/または第二の方向に段差が生じていると、ジグザグ経路が不連続に生成されることが想定されるため、互いに段差が生じていないセルC同士、または、セルCの大きさと比較して大きな段差がないセルC同士は結合し、それ以外のセルCは結合しない。例えば、図示される例においては、左下の三つのセルC同士には段差が生じておらず、右下の二つのセルC同士には大きな段差が生じていないとともに、それぞれ結合後のセルCの広さが所定以上の略四角形であるため、これらは結合する。また、右上の二つのセルC同士には、結合後のセルCの大きさと比較して大きな段差が生じており、左上の三つのセルC同士については、第一の方向に段差が生じる複雑な形状であるため、それぞれ結合しない。
【0035】
経路生成工程は、セルC毎にジグザグ経路ZPを生成する工程である(図4)。ジグザグ経路ZPの生成に当たっては、セルC毎に、そのセルCの角部を始点とし、第一の方向または第二の方向に直線状にセルCの境界まで経路を生成した後、セルCの境界に沿って直線状の経路を、所定の距離生成し、さらに第一の方向または第二の方向に直線状にセルCの境界まで経路を生成し、という処理を、セルCを被覆するまで繰り返す。なお、第一の方向または第二の方向にセルCが隣接する場合、第一の方向または第二の方向の境界を越えた位置まで経路を延ばし、その隣接するセルC同士の経路の一部が互いに重なるように生成してもよい。「所定の距離」については、移動体2の作業手段8による作業範囲に基づいて設定されている。つまり、作業手段8により作業領域1に対して隙間なく作業できるように、作業手段8による作業幅以下の所定の一定距離に設定されている。
【0036】
ここで、被覆経路の生成については、二次元マップMのセルCを所定の周回方向、例えば時計回り方向または反時計回り方向に、いわば「一筆書き」状に辿るように生成することが好ましい。そのため、経路生成工程では、個々のセルCにおけるジグザグ経路ZPについても、被覆経路の周回方向に始点から終点へと延びていくように生成することが好ましい。
【0037】
例えば、被覆経路の始点は、二次元直交座標系における固定点、例えば原点とすることが好ましい。本実施の形態では、二次元マップMの左下の角部またはその近傍が被覆経路の始点として設定される。
【0038】
図示される例では、被覆経路が二次元マップMの左下のセルCから反時計回り方向に順次セルCを辿り、左上のセルCで終了するように、被覆経路が生成される。この場合、経路生成工程において、被覆経路の始点を含む左下のセルC、及び右下のセルCについては、左から右に向かってジグザグ経路ZPが延びるように生成し、右上のセルCから左上のセルCについては、右から左に向かってジグザグ経路ZPが延びるように生成する。
【0039】
また、各ジグザグ経路ZPの始点については、被覆経路が二次元マップMのセルCを周回する方向、つまり時計回り方向または反時計回り方向に隣接するセルCに近接した角部とすることが好ましい。例えば、図中の左下のセルCについては、左下の角部またはその近傍がそのセルCでのジグザグ経路の始点となり、同時に被覆経路の始点となる。
【0040】
移動経路生成工程は、隣接するセルCにおいて、被覆経路において先順となる一のセルCのジグザグ経路ZPの終点と後順となる他のセルCのジグザグ経路ZPの始点とを繋ぐ移動経路MPを生成する工程である(図5)。移動経路MPは、基本的に作業手段8による作業のための経路ではないため、効率よい被覆のためには可能な限り短く、ジグザグ経路ZPと可能な限り重複しないことが好ましい。そのため、移動経路MPは、直線状に形成することが好ましい。移動経路MPを移動する間、作業手段8による作業はしていてもよいし、していなくてもよい。このようにセルC毎のジグザグ経路ZPを移動経路MPによって所定の周回方向に順次繋ぐことにより、始点S1から終点E1までの一連の第一の被覆経路CP1を、作業領域1の全体を被覆するように生成する。図示される例では、始点S1が二次元マップMの左下の角部、終点E1が二次元マップMの左上の角部であり、これら始点S1と終点E1とが四角形状の二次元マップMの同一辺近傍にある。
【0041】
そして、本実施の形態の被覆経路生成方法では、二次元マップMを二次元直交座標系において90°(略90°も含む)回転させる回転工程を用い、左下の角部を原点位置に合わせた状態(図6)で、その回転させた二次元マップMに対し、分割工程、結合工程、経路生成工程、移動経路生成工程を再度実施することで、始点S2から終点E2までの一連の第二の被覆経路CP2を生成する(図7)。その後、二次元マップMを90°回転させて元に戻す(戻し工程)。そのため、生成された第二の被覆経路CP2は、第一の被覆経路CP1の終点を始点とし、第一の被覆経路CP1に対して基本的に直交した経路となっている(図8)。
【0042】
第二の被覆経路CP2を生成する前に二次元マップMを回転する方向は、経路生成工程において、被覆経路が二次元マップMのセルCを辿る所定の周回方向(時計回り方向または反時計回り方向)と同方向であることが好ましい。
【0043】
このように、本実施の形態の被覆経路生成方法によれば、作業領域1を示す二次元マップMと、それを90°回転させた二次元マップMと、に対し、障害物3を基準として二次元マップMを分割したセルCを所定の周回方向に辿るように、二次元直交座標系の固定点を始点とし、各セルCに生成したジグザグ経路ZPを移動経路MPで繋ぐという、同一のアルゴリズムを用いてそれぞれ被覆経路を生成することにより、直交する二方向からの効率的な被覆経路を生成可能となる。
【0044】
分割工程と経路生成工程との間に、隣接するセルCを結合して新たなセルCとする結合工程をさらに有することで、セルC間の移動経路MPを減らすことができ、より短時間で効率的に被覆経路を生成可能となる。
【0045】
第一の被覆経路CP1及び第二の被覆経路CP2を、二次元マップMのセルCを所定の周回方向に辿るように生成することで、すべてのセルCを重複なく順番に辿ることができ、被覆済みのセルCを重複して通過する不要な経路が生成されにくくなる。
【0046】
このとき、四角形状の二次元マップMの所定の角部を含むセルCから、そのセルCに対し所定の周回方向とは反対方向に最も近いセルCまで、所定の周回方向に辿るように生成することで、第一の被覆経路CP1の終点と第二の被覆経路CP2の始点とを近づけることができ、第一の被覆経路CP1の終点から第二の被覆経路CP2の始点への不要な移動経路を削減でき、作業領域1を効率よく被覆することが可能になるとともに、移動体2が効率的に作業領域1を移動可能となる。
【0047】
特に、セルCの角部またはその近傍を被覆経路の始点及び終点として設定することで、第一の被覆経路CP1と第二の被覆経路CP2とを同一のアルゴリズムで生成したときに、第一の被覆経路CP1の終点E1と第二の被覆経路CP2の始点S2とを近づけ、これらの間の不要な移動経路を生成せずに済み、移動体2の移動距離を抑制できるとともに、第一の被覆経路CP1と第二の被覆経路CP2とを簡単な処理で効率的に生成可能となる。
【0048】
一例として、上記の第1の実施の形態では、二次元マップMの左下のセルCの左下の角部を二次元直交座標系の原点とし、この原点を始点、左上のセルCの左上の角部を終点、として被覆経路を生成するアルゴリズムを採用することで、第一の被覆経路CP1の生成後、反時計回りに90°回転させた二次元マップMの左下の角部を二次元直交座標系の原点に合わせると、第一の被覆経路CP1の終点E1であった点がそのまま第二の被覆経路CP2の始点S2となる。したがって、第一の被覆経路CP1から第二の被覆経路CP2への移動経路が基本的に不要となり、その生成のための二次元マップMの探索等に要する時間を削減できる。
【0049】
そして、移動体2は、制御手段7において、自己位置推定手段9により自己位置を推定しつつ、生成された第一の被覆経路CP1に沿って本体5または移動体2を移動させるように移動手段6を制御し、第一の被覆経路CP1の移動が終了すると、続いて第二の被覆経路CP2に沿って本体5または移動体2を移動させるように移動手段6を制御する。この移動の間、作業手段8により必要に応じて作業を行うことで、作業領域1全体に対して、作業を行う。
【0050】
このように、生成された第一の被覆経路CP1と第二の被覆経路CP2とを用いて、作業領域1を略隙間なく短時間に最短距離で効率よく移動できるとともに、作業領域1の全体に亘り、同一地点に対して直交する二方向からの作業が可能な移動体2を提供できる。
【0051】
特に、作業手段8をレーダ装置とすることで、第一の被覆経路CP1を移動したときと第二の被覆経路CP2を移動したときとで、同一地点に対して直交する二方向からレーダを照射できる。そのため、これらのそれぞれで得られた反射波に基づき、作業領域1の下の空洞の有無を識別できるとともに、それぞれの反射波の受信強度を比較することで、作業領域1の下にあるのが空洞なのか、埋設管等の非空洞なのか、を容易に識別でき、探査精度が向上し、かつ、歩道や道路脇等の作業領域1における探査作業の軽労化及び自動化を実現できる。
【0052】
また、例えば作業手段8が吸引手段等の掃除手段である場合には、直交する二方向から被覆しつつ作業を行うことで、絨毯等の作業領域1の目の向き等に拘らず、入念で丁寧な自動掃除が可能になる。
【0053】
次に、第2の実施の形態について、図10ないし図13を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施の形態の被覆経路生成方法では、第1の実施の形態の回転工程において、二次元マップMを所定の方向に回転させる際に、二次元マップMを反転させる。
【0055】
この方法は、例えば第一の被覆経路CP1の始点S1と終点E1とが、四角形状の二次元マップMの対角に位置する場合に有効となる方法である。
【0056】
すなわち、二次元マップMは、作業領域1における障害物3の配置によって、被覆経路の生成の際に、所定の周回方向にセルを辿るよりも、セルを第一の方向または第二の方向に交互に蛇行するように辿るほうが効率よい場合がある。その場合、例えば、第一の被覆経路CP1の始点S1と終点E1とが二次元マップMにおいて互いに遠い位置、例えば対角等となることがあり(図10)、第1の実施の形態と同様に、二次元マップMを単に所定の方向に90°回転させた状態で、第一の被覆経路CP1の生成と同一のアルゴリズムで第二の被覆経路CP2を生成しようとすると、第一の被覆経路CP1の終点と第二の被覆経路CP2の始点とが遠く離れ、被覆効率が悪くなる。
【0057】
そこで、本実施の形態では、回転工程において、二次元マップMを反転させる(図11)とともに所定の方向に90°回転させ(図12)、その回転させた二次元マップMに対し、分割工程と、経路生成工程と、移動経路生成工程と、を再実施することで、第二の被覆経路CP2を生成する(図13)。反転させる際には、第一の方向または第二の方向に平行(略平行も含む)な所定の仮想線L(図10)を基準として反転させる。図示される例では、回転工程において、二次元マップMを反時計回り方向に回転させる、つまり「所定の方向」が反時計回り方向であるため、所定の仮想線Lは第一の方向に平行な線とするが、「所定の方向」が時計回りの場合には、第二の方向に平行な線としてもよい。つまり、回転方向における所定の方向に応じて、反転させる基準となる所定の仮想線Lを設定する。仮想線Lは、二次元マップMの中心線とすることで、二次元座標系において、反転後の二次元マップMの外枠の位置が反転前と変化しない。なお、本実施の形態では、二次元マップMを反転させてから回転させている例を示しているが、回転させてから反転させても構わない。
【0058】
その後、戻し工程において、二次元マップMを反転及び90°回転させて元に戻す。そのため、生成された第二の被覆経路CP2は、第一の被覆経路CP1の終点を始点とし、第一の被覆経路CP1に対して基本的に直交した経路となっている。
【0059】
このようにすることで、作業領域1を示す二次元マップMと、それを反転及び90°回転させた二次元マップMと、に対し、障害物3を基準として二次元マップMを分割したセルを蛇行して辿るように、二次元直交座標系の固定点を始点とし、各セルに生成したジグザグ経路を移動経路で繋ぐという、同一のアルゴリズムを用いてそれぞれ被覆経路を生成することにより、直交する二方向からの効率的な被覆経路を生成可能となる等、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
なお、第1の実施の形態の方法と第2の実施の形態の方法とは、両方実施できるようにしておき、二次元マップMの被覆効率に基づきいずれかを選択するようにしてもよい。また、被覆経路全体を第1の実施の形態の方法のみ、または、第2の実施の形態の方法のみで生成してもよいし、被覆経路をさらに細分化し、細分化した被覆経路の生成について、第1の実施の形態の方法と第2の実施の形態の方法とのいずれかを選択することで、被覆経路全体として、第1の実施の形態の方法と第2の実施の形態の方法とを組み合わせて生成してもよい。
【0061】
さらに、各実施の形態において、移動体2は、ロボットやドローン等の小型の移動体に限らず、農作業機や建設機械等の大型の作業機械等も含むものとする。
【符号の説明】
【0062】
1 作業領域
2 移動体
3 障害物
5 本体
6 移動手段
7 制御手段
8 作業手段
C セル
CP1 第一の被覆経路
CP2 第二の被覆経路
M 二次元マップ
MP 移動経路
ZP ジグザグ経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13