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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012705
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】精算システム、精算装置及び精算方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/00 20190101AFI20250117BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20250117BHJP
   G07D 11/24 20190101ALI20250117BHJP
   G07G 1/01 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G07D11/00
G07G1/00 331Z
G07D11/24
G07G1/01 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115755
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】檀上 博史
(72)【発明者】
【氏名】土井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 博文
(72)【発明者】
【氏名】陳 楊
(72)【発明者】
【氏名】中川 和俊
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA12
3E141CA20
3E141EA10
3E142EA04
3E142FA35
3E142GA24
(57)【要約】
【課題】貨幣処理装置の装置内で貨幣の過不足が生じにくいようにする。
【解決手段】精算システムを、貨幣の入金処理及び出金処理を実行可能な貨幣処理装置と、ユーザとの取引時に、ユーザとの取引金額に応じて、貨幣処理装置に入金可能な複数金種のうち所定の金種を選択する管理装置とを有し、貨幣処理装置は、管理装置が選択した金種の貨幣を受け付けて入金金額を算出し、入金金額が取引金額を超えた場合には、入金金額及び取引金額から算出した釣銭金額分の貨幣を出金するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣の入金処理及び出金処理を実行可能な貨幣処理装置と、
ユーザとの取引時に、前記ユーザとの取引金額に応じて、前記貨幣処理装置に入金可能な複数金種のうち所定の金種を選択する管理装置と
を有し、
前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣を受け付けて入金金額を算出し、前記入金金額が前記取引金額を超えた場合には、前記入金金額及び前記取引金額から算出した釣銭金額分の貨幣を出金する
ことを特徴とする精算システム。
【請求項2】
前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣のみを受け付けることを特徴とする請求項1に記載の精算システム。
【請求項3】
前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種以外の金種の貨幣は、入金されても受け付けずに装置外へ排出することを特徴とする請求項1に記載の精算システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣のみで入金処理を実行したユーザに特典を付与するための処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の精算システム。
【請求項5】
前記管理装置は、取引金額の範囲と、各範囲で入金を受け付ける1又は複数の金種とが予め設定された設定情報に基づいて、前記所定の金種を選択することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項6】
前記管理装置が選択した金種を表示する表示装置をさらに有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項7】
前記表示装置は、前記管理装置が選択した金種とそれ以外の金種とを区別可能に表示することを特徴とする請求項6に記載の精算システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以下の不足金種を検知し、
前記表示装置は、前記管理装置が選択した金種のうち前記不足金種とそれ以外の金種とを区別可能に表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の精算システム。
【請求項9】
前記表示装置は、前記貨幣処理装置に入金された貨幣の識別結果に基づいて表示内容を更新することを特徴とする請求項6に記載の精算システム。
【請求項10】
前記管理装置は、
前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、
前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以下の不足金種の発生を検知し、
前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記不足金種が含まれていない場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種に前記不足金種を追加する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項11】
前記管理装置は、
前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、
前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以上の余剰金種の発生を検知し、
前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記余剰金種が含まれている場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種から前記余剰金種を除外する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項12】
前記貨幣処理装置は、前記管理装置が取引金額に基づいて選択した金種の貨幣のみを受け付ける第1モードの入金処理と、取引金額によらず、受け付ける金種が予め所定金種に限定された第2モードの入金処理とのうち、ユーザが選択した動作モードで入金処理を実行することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の精算システム。
【請求項13】
前記管理装置は、前記第2モードで入金処理を実行したユーザに特典を付与するための処理を実行することを特徴とする請求項12に記載の精算システム。
【請求項14】
取引金額を取得する取得部と、
前記取引金額に応じて、所定の金種を選択する制御部と、
前記選択した金種の貨幣の入金を推奨する表示を実行する表示部と
を有することを特徴とする精算装置。
【請求項15】
ユーザとの取引時に、前記ユーザとの取引金額に応じて、貨幣処理装置に入金可能な複数金種のうち所定の金種を選択する工程と、
前記貨幣処理装置が、前記取引金額に応じて選択された金種の貨幣を受け付けて入金処理を実行する工程と、
前記入金処理の入金金額が前記取引金額を超えた場合に、前記貨幣処理装置が、前記入金金額及び前記取引金額から算出した釣銭金額分の貨幣を出金する出金処理を実行する工程と
を含むことを特徴とする精算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザとの取引時に取引金額を精算する精算システム、精算装置及び精算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ(客)との取引を行う店舗において、取引金額を精算するために精算装置が利用されている。例えば、商品を販売する店舗で、ユーザが支払う代金の入金を受け付ける入金処理と、ユーザに返す釣銭を払い出す出金処理とを実行可能な貨幣処理装置が精算装置として利用される。貨幣処理装置は、入金された貨幣を装置内の収納部に収納して、釣銭が必要になると収納部から釣銭金額分の貨幣を出金する。収納部が貨幣で満杯になると、収納部の貨幣が装置外へ回収されるまで、貨幣処理装置は入金処理を実行できなくなる。収納部の貨幣が不足すると、収納部へ貨幣が補充されるまで、貨幣処理装置は出金処理を実行できなくなる。このため、貨幣処理装置の収納部で貨幣の過不足が生ずることは好ましくない。
【0003】
特許文献1には、装置内にある貨幣の在高を金種別に管理して、貨幣の過不足を解消するためにユーザに協力を求める貨幣処理装置が開示されている。この貨幣処理装置は、装置内の貨幣枚数が増加して、過多状態を示す枚数以上になった金種と、貨幣枚数が減少して、不足状態を示す枚数以下になった金種とを検知して、過不足解消のためにユーザに協力を求める。入金処理時、貨幣処理装置は、不足している金種の貨幣を入金するようユーザに協力を求める。釣銭の出金処理時、貨幣処理装置は、過多となっている金種の貨幣で出金することを認めるようユーザに協力を求める。ユーザの協力によって、不足状態の金種の貨幣が貨幣処理装置に入金されて、過多状態の金種の貨幣が貨幣処理装置から出金されれば、貨幣の過不足が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-60506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、貨幣処理装置の装置内に収納されている貨幣枚数が所定枚数以上となった後、及び所定枚数以下となった後に、これらを貨幣の過不足とみなして対応するもので、貨幣の過不足が生ずることを回避するものではない。貨幣処理装置が貨幣処理を継続して実行するためには、装置内で貨幣の過不足が生ずるのを待って対応するのではなく、貨幣の過不足が生じにくいようにすることが好ましい。
【0006】
本開示は、上記課題を含む従来技術を鑑みてなされたもので、その目的の1つは、貨幣処理装置の装置内で貨幣の過不足が生じにくいようにユーザとの取引金額の精算処理を実行することができる精算システム、精算装置及び精算方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る精算システムは、貨幣の入金処理及び出金処理を実行可能な貨幣処理装置と、ユーザとの取引時に、前記ユーザとの取引金額に応じて、前記貨幣処理装置に入金可能な複数金種のうち所定の金種を選択する管理装置とを有し、前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣を受け付けて入金金額を算出し、前記入金金額が前記取引金額を超えた場合には、前記入金金額及び前記取引金額から算出した釣銭金額分の貨幣を出金する。
【0008】
上記構成において、前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣のみを受け付けてもよい。
【0009】
上記構成において、前記貨幣処理装置は、前記管理装置が選択した金種以外の金種の貨幣は、入金されても受け付けずに装置外へ排出してもよい。
【0010】
上記構成において、前記管理装置は、前記管理装置が選択した金種の貨幣のみで入金処理を実行したユーザに特典を付与するための処理を実行してもよい。
【0011】
上記構成において、前記管理装置は、取引金額の範囲と、各範囲で入金を受け付ける1又は複数の金種とが予め設定された設定情報に基づいて、前記所定の金種を選択してもよい。前記設定情報に基づいて、前記貨幣処理装置が、取引金額が低い場合には、取引金額が高い場合に比べて、受け付ける金種の数を制限してもよい。前記貨幣処理装置が、取引金額を最小枚数の貨幣で構成する場合に含まれる金種の貨幣のみを受け付けてもよい。前記貨幣処理装置が、取引金額より小さくかつ前記取引金額に最も近い金種の貨幣を基準に、受け付ける貨幣を選択してもよい。例えば、前記貨幣処理装置が、取引金額より小さくかつ前記取引金額に最も近い金種の貨幣と、該貨幣より低額金種の貨幣のみを受け付けてもよい。前記貨幣処理装置が、取引金額より小さくかつ前記取引金額に最も近い金種の次に大きい金種の貨幣と、該貨幣低額金種の貨幣のみを受け付けてもよい。
【0012】
上記構成において、前記管理装置が選択した金種を表示する表示装置をさらに有していてもよい。
【0013】
上記構成において、前記表示装置は、前記管理装置が選択した金種とそれ以外の金種とを区別可能に表示してもよい。
【0014】
上記構成において、前記管理装置は、前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以下の不足金種を検知し、前記表示装置は、前記管理装置が選択した金種のうち前記不足金種とそれ以外の金種とを区別可能に表示してもよい。
【0015】
上記構成において、前記表示装置は、前記貨幣処理装置に入金された貨幣の識別結果に基づいて表示内容を更新してもよい。
【0016】
上記構成において、前記管理装置は、前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以下の不足金種の発生を検知し、前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記不足金種が含まれていない場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種に前記不足金種を追加してもよい。
【0017】
上記構成において、前記管理装置は、前記貨幣処理装置の収納部に収納されている貨幣の金種及び金種別の貨幣量を特定可能な在高情報を管理して、前記在高情報に基づいて、貨幣量が所定閾値以上の余剰金種の発生を検知し、前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記余剰金種が含まれている場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種から前記余剰金種を除外してもよい。
【0018】
上記構成において、前記管理装置は、前記貨幣処理装置内で複数金種の貨幣を混合状態で収納する混合収納部における各金種の貨幣量の割合を示す混合比率を管理して、前記混合比率が所定閾値以下の不足金種の発生を検知し、前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記不足金種が含まれていない場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種に前記不足金種を追加してもよい。
【0019】
上記構成において、前記管理装置は、前記貨幣処理装置内で複数金種の貨幣を混合状態で収納する混合収納部における各金種の貨幣量の割合を示す混合比率を管理して、前記混合比率が所定閾値以上の余剰金種の発生を検知し、前記取引金額に応じて選択した金種の中に前記余剰金種が含まれている場合には、前記貨幣処理装置への入金を受け付ける金種から前記余剰金種を除外してもよい。
【0020】
上記構成において、前記貨幣処理装置は、前記管理装置が取引金額に基づいて選択した金種の貨幣のみを受け付ける第1モードの入金処理と、取引金額によらず、受け付ける金種が予め所定金種に限定された第2モードの入金処理とのうち、ユーザが選択した動作モードで入金処理を実行してもよい。
【0021】
上記構成において、前記管理装置は、前記第2モードで入金処理を実行したユーザに特典を付与するための処理を実行してもよい。
【0022】
本開示に係る精算装置は、取引金額を取得する取得部と、前記取引金額に応じて、所定の金種を選択する制御部と、前記選択した金種の貨幣の入金を推奨する表示を実行する表示部とを有する。
【0023】
本開示に係る精算方法は、ユーザとの取引時に、前記ユーザとの取引金額に応じて、貨幣処理装置に入金可能な複数金種のうち所定の金種を選択する工程と、前記貨幣処理装置が、前記取引金額に応じて選択された金種の貨幣を受け付けて入金処理を実行する工程と、前記入金処理の入金金額が前記取引金額を超えた場合に、前記貨幣処理装置が、前記入金金額及び前記取引金額から算出した釣銭金額分の貨幣を出金する出金処理を実行する工程とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係る精算システム、精算装置及び精算方法によれば、ユーザから貨幣処理装置に受け付ける貨幣の金種を、ユーザとの取引金額に応じて変更することができる。これにより、貨幣処理装置の収納部における貨幣の過不足の発生頻度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本実施形態に係る精算システムの概要を説明するための模式図である。
図2図2は、精算システムの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、貨幣処理装置の構成例を説明するための断面模式図である。
図4図4は、精算システムが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、受付金種設定の例を示す図である。
図6図6は、受付金種設定の別の例を示す図である。
図7図7は、貨幣処理装置の操作端末に表示される画面例を示す図である。
図8図8は、特典付与条件が設定されている場合に表示される画面例を示す図である。
図9図9は、低額金種モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る精算システム、精算装置及び精算方法の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る精算システム1の概要を説明するための模式図である。精算システム1は、店舗と該店舗の客であるユーザとの取引時に取引金額の精算処理を実行する。精算システム1が利用される店舗の種類、及び店舗が客と取引する商品及びサービスの内容は特に限定されないが、以下、商品を客に販売する小売店舗を例に説明を続ける。
【0027】
精算システム1は、貨幣処理装置10と、貨幣処理装置10用の操作端末20と、レジ端末30とを含む。図1は例示であって、貨幣処理装置10、操作端末20及びレジ端末30のうちいずれか2つ又は全てが1つの装置で実現される態様であってもよい。
【0028】
レジ端末30に入力された商品情報に基づいて、客が支払う商品の購入代金、すなわち取引金額が算出される(A)。例えば、客又は店舗の店員が、各商品に付されたコード情報を、レジ端末30が備える読取装置に読み取らせると、客が購入する商品の種類、数及び価格が特定されて、店舗と客の取引金額が確定される。
【0029】
客との取引金額が確定すると、精算システム1は、取引金額に基づいて、貨幣処理装置10への入金を受け付ける貨幣の金種を選択する(B)。金種の選択は、レジ端末30によって実行されてもよいし、貨幣処理装置10によって実行されてもよいし、操作端末20によって実行されてもよい。金種の選択が、貨幣処理装置10、操作端末20及びレジ端末30の少なくともいずれか1つと通信可能に接続された外部装置によって実行されてもよい。
【0030】
金種の選択は、予め準備された設定に基づいて行われる。具体的には、取引金額毎に、貨幣処理装置10への入金を受け付ける1又は複数の金種が予め設定される。この設定に基づいて、貨幣処理装置10に入金可能な複数の金種の中から、貨幣処理装置10が客から入金を受け付ける1又は複数の金種が、客との取引金額に応じて選択される。この結果、取引金額に応じて、貨幣処理装置10に入金可能な複数金種のうち一部の金種が入金できなくなる場合がある。
【0031】
例えば、取引金額が低い場合は、取引金額が高い場合に比べて、貨幣処理装置10が受け付ける金種の数を制限するように設定が準備される。例えば、貨幣処理装置10が、取引金額を最小枚数の貨幣で構成する場合に含まれる金種の貨幣のみを受け付けるように設定が準備される。
【0032】
例えば、貨幣処理装置10が、取引金額より小さくかつ取引金額に最も近い金種の貨幣を基準に、受け付ける貨幣を選択するように設定が準備される。取引金額より小さくかつ取引金額に最も近い金種の貨幣を基準に、この貨幣とこの貨幣より低額金種の貨幣のみを受け付ける設定や、この貨幣の次に大きい金種及び該金種より低額金種の貨幣のみを受け付ける設定が準備される。
【0033】
金種選択に関する設定方法は特に限定されない。取引金額と貨幣の金種との対応を示すテーブルが設定として準備される態様であってもよい。取引金額から貨幣の金種を選択するための方法が設定として準備されて、この方法に基づいて取引金額から金種が選択される態様であってもよい。
【0034】
取引金額に応じて、貨幣処理装置10への入金を受け付ける所定金種を選択した精算システム1は、選択した受付金種を客に報知する(C)。例えば、図1に示すように、操作端末20の画面300に、取引金額と、取引金額に応じて決定された、貨幣処理装置10への入金を受け付ける貨幣の金種とが表示される。
【0035】
操作端末20は、取引金額に応じて決定された貨幣処理装置10の受付金種を表示する表示装置として機能する。受付金種を報知する方法は特に限定されない。例えば、報知が、レジ端末30の表示部を利用して行われる態様であってもよい。精算システム1と通信可能な所定の通信端末の表示部を利用して報知が行われる態様であってもよい。
【0036】
図1の画面300は、客との取引が米国通貨によって行われる場合の表示例を示している。米国通貨による精算処理を実行するため、貨幣処理装置10は、米国通貨の硬貨及び紙幣を入金可能に構成されている。
【0037】
例えば、貨幣処理装置10は、入金処理時に、米国通貨の1ドル紙幣、5ドル紙幣、10ドル紙幣、20ドル紙幣、50ドル紙幣及び100ドル紙幣と、1セント硬貨、5セント硬貨、10セント硬貨及び25セント硬貨とを処理することができる。図1の画面300は、貨幣処理装置10に入金可能なこれら6金種の紙幣及び4金種の硬貨のうち、2ドルの取引金額に応じて、1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣と、1セント硬貨、5セント硬貨、10セント硬貨及び25セント硬貨とが受付金種に選択されたことを示している。
【0038】
この結果、貨幣処理装置10は、客が2ドルの取引金額を支払う入金処理で、硬貨については全ての金種の硬貨を受け付けるが、紙幣については1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣の3金種の紙幣のみを受け付ける。言い換えれば、貨幣処理装置10は、20ドル紙幣、50ドル紙幣、100ドル紙幣の入金は受け付けない。
【0039】
画面300を確認した客が貨幣処理装置10に貨幣を入金すると、貨幣処理装置10は入金処理を実行する(D)。貨幣処理装置10は、客が紙幣処理装置100の紙幣入金部110から入金した紙幣の入金処理と、硬貨処理装置200の硬貨入金部210から入金した硬貨の入金処理とを実行して、入金金額を算出することができる。紙幣の入金金額と硬貨の入金金額との合計金額が、貨幣処理装置10への入金金額となる。
【0040】
入金金額が取引金額を超えている場合、貨幣処理装置10は、入金金額から取引金額を差し引いた釣銭金額分の貨幣を出金する出金処理を実行する(E)。貨幣処理装置10は、釣銭の紙幣を紙幣処理装置100の紙幣出金部120から出金する出金処理と、釣銭の硬貨を硬貨処理装置200の硬貨出金部220から出金する出金処理とを実行することができる。こうして客が貨幣処理装置10に貨幣を入金した後、必要に応じて、貨幣処理装置10から釣銭が出金されて、精算処理、すなわち客との取引が終了する。
【0041】
客が、画面300に表示された受付金種以外の金種の貨幣を貨幣処理装置10に入金した場合、貨幣処理装置10は、この貨幣を受け付けずにリジェクトする。リジェクトされた紙幣は、紙幣処理装置100の紙幣出金部120から客に返却される。リジェクトされた硬貨は、硬貨処理装置200の硬貨出金部220から客に返却される。
【0042】
図1の例では、貨幣処理装置10は、20ドル紙幣、50ドル紙幣及び100ドル紙幣を入金処理で処理可能に構成されているが、2ドルの取引金額に応じて選択されなかったこれらの金種の紙幣の入金を受け付けない。このため、客が貨幣処理装置10に入金しようとした紙幣が、20ドル紙幣、50ドル紙幣及び100ドル紙幣のいずれかであった場合、貨幣処理装置10はこの紙幣の入金を受け付けずに紙幣出金部120からリジェクトして客に返却する。
【0043】
図1に示すように、貨幣処理装置10が入金を受け付ける金種を報知する画面300に、精算処理、すなわち取引を中止するための中止ボタンが表示される。客は、貨幣処理装置10が入金を受け付ける金種の貨幣を持っておらず、取引金額を支払うことができない場合には、中止ボタンを押して取引を中止することができる。
【0044】
取引が中止される際に、精算システム1が、貨幣処理装置10に入金可能な金種を変更する方法を客に報知する設定とすることもできる。例えば、図1に示す例で、取引金額が5ドル以上になれば、画面300に表示された金種に加えて20ドル紙幣も入金可能となる場合、精算システム1は、これを示す情報を画面上に表示して客に報知する。中止ボタンを押して取引を中止した客は、画面300の表示情報を確認して、手持ちの貨幣を貨幣処理装置10に入金できるように、商品を追加して取引金額を増やすといった対応をとることができる。
【0045】
精算システム1が、取引を中止する客に対して、取引金額の範囲と、各金額範囲で貨幣処理装置10に入金可能な金種との対応を報知する態様であってもよい。例えば、図1に示す例で、取引金額が増えて5ドル以上10ドル未満になれば、画面300に表示された金種に加えて20ドル紙幣も入金可能となり、取引金額が10ドル以上になればさらに50ドル紙幣も入金可能となるというように、取引金額と受付金種との対応が報知される態様であってもよい。
【0046】
精算システム1が、現金以外の精算方法を選択するボタンを画面300に表示して、客が現金以外の精算方法で取引金額を支払える設定とすることもできる。精算システム1は、キャッシュレス決済による精算方法を選択するボタンを画面300に表示して、客が選択した方法で精算処理を実行する。キャッシュレス決済による精算方法は特に限定されないが、例えば、電子マネー、プリペイドカード、デビットカード、クレジットカードによる精算方法の少なくともいずれか1つが含まれる。キャッシュレス決済による支払の受付及び精算処理は、従来知られている方法で実行すればよい。
【0047】
このように、精算システム1では、取引金額と受付金種とを関連付けた設定に基づいて、入金処理時に貨幣処理装置10に入金される貨幣の金種を制限することができる。取引金額が少額であるにも拘わらず高額金種の貨幣が入金されると、釣銭として出金する貨幣枚数が多くなる。このような取引が増えると、貨幣処理装置10で貨幣の不足が生じやすくなる。精算システム1は、ユーザである客との取引金額に応じて、ユーザから貨幣処理装置10に受け付ける貨幣の金種を変更することで、貨幣不足の発生頻度を抑制することができる。精算システム1は、取引金額に応じて入金可能な貨幣の金種を制限することで、特定の金種の貨幣のみが数多く入金されることを回避して、装置内で余剰な貨幣が発生する頻度を抑制することもできる。
【0048】
貨幣処理装置10への入金を受け付ける金種を取引金額に応じて制限することで、偽札対策にも寄与できる可能性がある。例えば、高額金種の偽札を使用して低額商品を購入し、多数の釣銭を真の貨幣で受け取るような犯罪が報道されることがある。貨幣処理装置10は、偽札を検知して、釣銭を出金することなく、偽札をリジェクトしたり装置内に保持したりすることができるが、例えば100ドル紙幣を入金して99ドルの釣銭を受け取るような取引自体が不可能であると分かれば、偽札に関する犯罪抑止の効果も期待できる。
【0049】
次に、精算システム1の構成例について説明する。図2は、精算システム1の構成例を示すブロック図である。図2に示す精算システム1は、POS(Point of Sales)システムを利用する例で、図1に示した構成に加えて、POSサーバ50及び管理装置60を含んでいる。
【0050】
例えば、複数のチェックアウトカウンタがある店舗では、各チェックアウトカウンタに精算装置40が設置されて、図2に示すように、各精算装置40がネットワーク2を介してPOSサーバ50と接続して利用される。貨幣処理装置10及び操作端末20を1組として、複数組が1台のレジ端末30と接続されて利用される場合もある。POSシステムを利用して客との取引金額が決定されるが、これについては従来知られているため詳細な説明は省略する。
【0051】
図2に示す例では、紙幣処理装置100及び硬貨処理装置200を含む貨幣処理装置10と、貨幣処理装置10に接続された操作端末20と、POS端末であるレジ端末30とが、精算装置40を構成している。
【0052】
管理装置60は、ネットワーク2を介して各精算装置40と通信可能に接続されている。管理装置60は、制御部61、操作表示部62、通信部63及び記憶部64を含む。例えば、タッチパネル式の液晶表示装置を操作表示部62として備えるコンピュータ装置が、管理装置60として利用される。制御部61に対応するプログラムが専用の記憶装置に予め記憶されており、このプログラムがCPU等のハードウェアによって実行されることにより、制御部61の機能及び動作が実現される。
【0053】
通信部63は、ネットワーク2を介して外部装置と通信を行うために利用される。管理装置60は、通信部63を利用して、精算装置40、すなわち貨幣処理装置10、操作端末20及びレジ端末30と情報を送受信することができる。管理装置60は、通信部63を利用して、POSサーバ50と情報を送受信することもできる。
【0054】
記憶部64は、不揮発性の記憶装置である。記憶部64には、在高情報64a、受付金種設定64b及び特典付与設定64cが保存されている。在高情報64aは、各貨幣処理装置10の装置内に収納されている貨幣の金種及び金種別枚数を特定可能な情報を含む。在高情報64aが、各金種の貨幣量が不足していることを検知するための閾値と、各金種の貨幣量が過多になっていること、すなわち余剰状態にあることを検知するための閾値とを含む場合もある。受付金種設定64bは、取引金額と、貨幣処理装置10に入金可能な貨幣の金種との対応を示す情報を含む。特典付与設定64cは、客に特典を付与する条件である特典付与条件と、特典付与条件を満たした客に付与する特典内容との対応を示す情報を含む。特典付与設定64cが、取引金額によらず貨幣処理装置10に入金可能な金種が制限される別の動作モードに関する設定情報を含む場合もある。
【0055】
店員は、操作表示部62を操作して、記憶部64に保存されている各種情報の確認と、各種設定の変更とを行うことができる。情報確認及び設定変更は、管理装置60と通信接続された操作端末20又はレジ端末30を利用して行われてもよいし、管理装置60と通信接続された通信端末を利用して行われてもよい。
【0056】
図3は、貨幣処理装置10の構成例を説明するための断面模式図である。図3(a)は紙幣処理装置100の内部構成例を示している。図3(b)は硬貨処理装置200の内部構成例を示している。
【0057】
紙幣処理装置100は、紙幣の入金処理及び出金処理を実行することができる。紙幣処理装置100は、紙幣入金部110、紙幣出金部120、紙幣識別部130、紙幣カセット141、紙幣収納部142及び紙幣搬送部150を含む。紙幣搬送部150は、図3(a)に示すように各部を接続する搬送路に沿って紙幣を搬送する。
【0058】
入金処理時には、紙幣入金部110に受けた紙幣が装置内に取り込まれて紙幣搬送部150によって搬送される。紙幣識別部130は紙幣搬送部150が搬送する紙幣を識別する。紙幣識別部130は紙幣の金種を識別する。紙幣識別部130が、紙幣の真偽と、傷み具合を示す正損とを識別してもよい。紙幣識別部130による識別結果に基づいて、入金された紙幣の合計金額が算出される。識別された紙幣のうち、入金できない紙幣は、紙幣出金部120からリジェクトされる。入金可能な紙幣は、紙幣カセット141又は紙幣収納部142に収納される。ここで言う入金可能な紙幣とは、取引金額に応じて貨幣処理装置10に入金を受け付けることが決定された所定金種の紙幣である。入金できない紙幣には、取引金額に応じて入金を受け付けることが決定された所定金種以外の金種の紙幣が含まれる。入金できない紙幣に、金種を識別できない紙幣、真偽を識別できない紙幣が含まれる場合もある。
【0059】
紙幣カセット141及び紙幣収納部142は、紙幣の収納と紙幣の繰り出しとを行うことができる。図3(a)には1つの紙幣収納部142を示しているが、紙幣収納部142の数は特に限定されない。例えば、複数の紙幣収納部142それぞれに、収納する金種が割り当てられて、紙幣が金種別に収納される。紙幣カセット141は、紙幣処理装置100に対して着脱可能に設けられている。例えば、紙幣収納部142が紙幣で満杯の場合に、この紙幣収納部142に収納できなかった紙幣が紙幣カセット141へ収納される。例えば、傷みがひどく再利用できない紙幣は、紙幣収納部142に収納可能であっても紙幣カセット141に収納される。
【0060】
出金処理時には、出金される紙幣が、1又は複数の紙幣収納部142から1枚ずつ順に繰り出されて、紙幣搬送部150によって搬送される。紙幣搬送部150が搬送する紙幣は紙幣出金部120から出金される。紙幣搬送部150が搬送する紙幣が紙幣識別部130で識別され、識別後に出金される態様であってもよい。
【0061】
硬貨処理装置200は、硬貨の入金処理及び出金処理を実行することができる。硬貨処理装置200は、硬貨入金部210、硬貨出金部220、硬貨識別部230、硬貨カセット241、硬貨収納部242、硬貨搬送部250(250a~250c)及び繰出部260を含む。硬貨搬送部250は、上部搬送部250aと、下部搬送部250bと、上部搬送部250aと硬貨カセット241及び硬貨収納部242との間を接続するシュート250cとを含む。
【0062】
入金処理時には、硬貨入金部210に受けた硬貨が繰出部260に落下する。繰出部260は、硬貨入金部210から複数枚の硬貨を受けて1枚ずつ上部搬送部250aへ繰り出すことができる。硬貨識別部230は上部搬送部250aが搬送する硬貨を識別する。硬貨識別部230は硬貨の金種を識別する。硬貨識別部230が、硬貨の真偽と、硬貨の傷み具合を示す正損とを識別してもよい。硬貨識別部230による識別結果に基づいて、入金された硬貨の合計金額が算出される。識別された硬貨のうち、入金できない硬貨は、上部搬送部250aによる搬送を続けられた後、硬貨出金部220からリジェクトされる。入金可能な硬貨は、硬貨カセット241又は硬貨収納部242に収納される。具体的には、シュート250cに対応して上部搬送部250aに設けられた開口部が開いて、硬貨がシュート250c内に落下することにより、各硬貨が硬貨カセット241又は硬貨収納部242に収納される。ここで言う入金可能な硬貨とは、取引金額に応じて貨幣処理装置10に入金を受け付けることが決定された所定金種の硬貨である。入金できない硬貨には、取引金額に応じて入金を受け付けることが決定された所定金種以外の金種の硬貨が含まれる。入金できない硬貨に、金種を識別できない硬貨、真偽を識別できない硬貨が含まれる場合もある。
【0063】
硬貨カセット241及び硬貨収納部242は、硬貨の収納と硬貨の繰り出しとを行うことができる。図3(b)には1つの硬貨収納部242を示しているが、硬貨収納部242の数は特に限定されない。例えば、複数の硬貨収納部242それぞれに、収納する金種が割り当てられて、硬貨が金種別に収納される。硬貨カセット241は、硬貨処理装置200に対して着脱可能に設けられている。例えば、硬貨収納部242が硬貨で満杯の場合に、この硬貨収納部242に収納できなかった硬貨が紙幣カセット141へ収納される。例えば、傷みがひどく再利用できない硬貨は、硬貨収納部242に収納可能であっても硬貨カセット241に収納される。
【0064】
出金処理時には、出金される硬貨が、1又は複数の硬貨収納部242から1枚ずつ順に繰り出されて、下部搬送部250bの上に落下する。下部搬送部250bは、硬貨収納部242から受けた硬貨を繰出部260まで搬送する。例えば、出金される硬貨全てが繰出部260に搬送された後、繰出部260の底面に設けられたゲートが開いて、繰出部260の硬貨が硬貨出金部220に落下して出金される。
【0065】
硬貨が硬貨識別部230で識別されて、識別後に出金される態様であってもよい。この場合、下部搬送部250bが繰出部260へ搬送した硬貨を、繰出部260が1枚ずつ上部搬送部250aへ繰り出して、硬貨識別部230で識別した後に硬貨出金部220から出金すればよい。
【0066】
1又は複数の硬貨収納部242が、複数金種の硬貨を混合状態で収納する態様であってもよい。出金処理時に、出金対象外の金種の硬貨が硬貨収納部242から繰り出される可能性がある場合は、繰り出された各硬貨の金種を硬貨識別部230で識別して、出金対象の硬貨を硬貨出金部220から出金する一方で、出金対象外の硬貨はシュート250cを介して繰出元の硬貨収納部242へ戻せばよい。
【0067】
入金処理時に入金された紙幣の金種及び金種別枚数を示す情報と、出金処理時に出金された紙幣の金種及び金種別枚数を示す情報とが、ネットワーク2を介して貨幣処理装置10から管理装置60へ送信される。同様に、入金処理時に入金された硬貨の金種及び金種別枚数を示す情報と、出金処理時に出金された硬貨の金種及び金種別枚数を示す情報とが、ネットワーク2を介して貨幣処理装置10から管理装置60へ送信される。管理装置60の制御部61は、貨幣処理装置10から受信した情報に基づいて、貨幣処理装置10の在高情報64aを更新する。
【0068】
図3(a)及び図3(b)は例示であって、紙幣処理装置100及び硬貨処理装置200、すなわち貨幣処理装置10の構成を限定するものではない。本実施形態に記載する貨幣処理を実行することができれば、貨幣処理装置10の構成は特に限定されない。
【0069】
次に、精算システム1で行われる処理の流れを説明する。図4は、精算システム1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。店舗で客が商品を購入する際、レジ端末30及びPOSサーバ50によって、客との取引金額が確定される。確定した取引金額がネットワーク2を介して管理装置60へ送信されて、図4に示す処理が開始される。
【0070】
取引金額を認識した管理装置60の制御部61は、記憶部64に保存されている受付金種設定64bに基づいて、貨幣処理装置10への入金を受け付ける金種を選択する(ステップS1)。受付金種は取引金額に応じて選択される。
【0071】
図5は、受付金種設定64bの例を示す図である。受付金種設定64bには、取引金額と、該取引金額の入金処理で貨幣処理装置10が受け付ける金種との対応が設定されている。例えば、図5に示すように、取引金額の範囲と、各金額範囲で入金を受け付ける金種との対応が設定される。
【0072】
図5は、米国通貨の紙幣を対象に設定された受付金種設定64bの例を示している。図5に示す例は、取引金額より大きくかつ取引金額に最も近い金種を特定して、特定した金種の次に高額の金種と、この金種より低額の金種とを、入金受付可能とする受付金種設定64bの例である。
【0073】
具体的には、例えば取引金額が5ドル未満の入金処理では、取引金額より大きくかつ取引金額に最も近い金種の紙幣である5ドル紙幣が特定され、5ドル紙幣の次に高額の10ドル紙幣と、10ドル紙幣より低額である1ドル紙幣及び5ドル紙幣とが入金受付可能に設定される。このため、取引金額が5ドル未満の入金処理では、客は1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣を貨幣処理装置10に入金できるが、20ドル紙幣、50ドル紙幣及び100ドル紙幣は貨幣処理装置10に入金できない。
【0074】
図5に示す例は、取引金額が、5ドル以上10ドル未満の場合は1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣に加えて、20ドル紙幣が貨幣処理装置10に入金可能となり、10ドル以上20ドル未満の場合はさらに50ドル紙幣が入金可能となり、20ドル以上で全ての金種の紙幣が入金可能となることを示している。
【0075】
図6は、受付金種設定64bの別の例を示す図である。図6は、欧州で使用されるユーロ通貨の硬貨を対象に設定された受付金種設定64bの例を示している。図6に示す例では、取引金額のうち1ユーロ未満の金額の範囲、すなわち0.01ユーロから0.99ユーロまでの範囲を複数の金額範囲に分けて、各金額範囲で入金受付可能な硬貨の金種が設定されている。例えば、取引金額が1.01ユーロである場合も、2.01ユーロである場合も、1ユーロ未満の金額部分である0.01ユーロを対象に、図6に示す受付金種設定64bに基づいて、入金受付可能な硬貨の金種が選択される。
【0076】
図6に示す例では、硬貨によって支払われる1ユーロ未満の端数金額部分について、端数金額より大きくかつ端数金額に最も近い金種が特定されて、特定された金種と、この金種より低額の金種とが、入金受付可能に設定されている。
【0077】
具体的には、例えば取引金額のうち1ユーロ未満の端数金額が0.05ユーロ未満の入金処理では、端数金額より大きくかつ端数金額に最も近い金種の硬貨である0.05ユーロ硬貨と、0.05ユーロ硬貨より低額である0.01ユーロ硬貨及び0.02ユーロ硬貨とを入金受付可能に設定される。このため、1ユーロ未満の端数金額が0.05ユーロ未満の入金処理では、客は0.01ユーロ硬貨、0.02ユーロ硬貨及び0.05ユーロ硬貨を貨幣処理装置10に入金できるが、0.1ユーロ以上の金種の硬貨は貨幣処理装置10に入金できない。
【0078】
図6に示す例では、端数金額が0.05ユーロ以上0.1ユーロ未満の場合は0.01ユーロ硬貨、0.02ユーロ硬貨及び0.05ユーロ硬貨に加えて、0.1ユーロ硬貨が貨幣処理装置10に入金可能となる。端数金額が0.1ユーロ以上0.2ユーロ未満の場合はさらに0.2ユーロ硬貨が入金可能となり、端数金額が0.2ユーロ以上0.5ユーロ未満の場合はさらに0.5ユーロ硬貨が入金可能となり、端数金額が0.5ユーロ以上1ユーロ未満の場合はさらに1ユーロ硬貨が入金可能となる。
【0079】
なお、図6は、1ユーロ未満の端数部分に基づく受付金種設定64bを示しているため、2ユーロ硬貨を入金可能な金額範囲が含まれていないが、2ユーロ硬貨は、例えば取引金額が2ユーロ以上である場合に入金可能に設定される。例えば、取引金額が2.01ユーロである場合、貨幣処理装置10は、2ユーロ硬貨と、図6で端数の0.01ユーロに対応する金額範囲で設定された0.05ユーロ硬貨、0.02ユーロ硬貨及び0.01ユーロ硬貨との入金を受け付ける。
【0080】
例えば、米国通貨の入金処理を実行可能な貨幣処理装置10に入金を受け付ける貨幣の金種が、図5に示す受付金種設定64bに基づいて選択される。このとき、硬貨の受付金種設定64bが準備されていなければ、貨幣処理装置10は、取引金額によらず、米国通貨の全ての金種の硬貨を受け付ける。一方、図6と同様に、取引金額のうち1ドル未満の端数部分について、貨幣処理装置10に入金を受け付ける米国通貨の硬貨金種を設定した受付金種設定64bが予め準備されている場合は、入金を受け付ける硬貨の金種が選択される。この場合、貨幣処理装置10は、取引金額に応じて選択された金種の紙幣と、取引金額のうち1ドル未満の端数部分に応じて選択された金種の硬貨とを受け付けることになる。
【0081】
こうして、管理装置60の制御部61は、取引金額と、予め記憶部64に保存されている受付金種設定64bとに基づいて、貨幣処理装置10に受け付ける貨幣の金種を選択する(図4ステップS1)。
【0082】
制御部61は、貨幣処理装置10に収納されている貨幣の在高に基づいて、入金を受け付ける金種を選択する必要があるか否かを判定する(ステップS2)。記憶部64に保存されている貨幣処理装置10の在高情報64aには、貨幣処理装置10に収納されている貨幣の金種及び各金種の貨幣枚数と、第1閾値と、第2閾値とが含まれる。第1閾値は、貨幣量の不足を判定するための閾値である。第2閾値は、貨幣量が過多になっていること、すなわち貨幣の余剰を判定するための閾値である。第1閾値及び第2閾値は金種別に設定される。
【0083】
制御部61は、貨幣処理装置10内の貨幣枚数が減少して第1閾値に達した不足金種がある場合に、在高に基づく金種の選択が必要であると判定する(ステップS2;Yes)。制御部61は、貨幣枚数が増加して第2閾値に達した余剰金種がある場合も、在高に基づく金種の選択が必要であると判定する(ステップS2;Yes)。
【0084】
貨幣枚数が減少して第1閾値に達した不足金種がある場合、制御部61は、入金処理の受付金種に不足金種を追加する(ステップS3)。例えば、取引金額が5ドル未満で、図5に示す受付金種設定64bに基づいて、1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣が受付金種として選択されたものとする。このとき、貨幣処理装置10内の20ドル紙幣の枚数が減少して第1閾値以下になっていた場合、在高情報64aに基づいてこれを検知した制御部61は、不足金種である20ドル紙幣を受付金種に追加する。この結果、貨幣処理装置10が受け付ける金種は、1ドル紙幣、5ドル紙幣、10ドル紙幣及び20ドル紙幣に変更される。紙幣枚数が第1閾値以下となった不足金種が、取引金額及び受付金種設定64bに基づいて選択された金種に既に含まれている場合は、受付金種が変更されることなく処理が進められる。
【0085】
貨幣枚数が増加して第2閾値に達した余剰金種がある場合、制御部61は、入金処理の受付金種から余剰金種を除外する(ステップS3)。例えば、取引金額5ドル未満で、図5に示す受付金種設定64bに基づいて、1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣が受付金種として選択されたものとする。このとき、貨幣処理装置10内の10ドル紙幣の枚数が増加して第2閾値以上になっていた場合、在高情報64aに基づいてこれを検知した制御部61は、余剰金種である10ドル紙幣を受付金種から除外する。この結果、貨幣処理装置10が受け付ける金種は、1ドル紙幣及び5ドル紙幣に変更される。紙幣枚数が第2閾値以上となった余剰金種が、取引金額及び受付金種設定64bに基づいて選択された金種に含まれていない場合は、受付金種が変更されることなく処理が進められる。
【0086】
貨幣枚数が減少して第1閾値に達した不足金種、及び、貨幣枚数が増加して第2閾値に達した余剰金種がない場合(ステップS2;No)、在高情報64aに基づく金種の選択、すなわち不足金種の追加及び余剰金種の除外は行われない。
【0087】
こうして、入金処理で貨幣処理装置10に受け付ける金種の選択を終えた制御部61は、選択した金種の報知処理を実行する(ステップS4)。具体的には、管理装置60で選択された金種を示す情報が、管理装置60からネットワーク2を介して貨幣処理装置10又は操作端末20に送信されて、操作端末20の画面上に表示される。操作端末20は、管理装置60の制御部61が取引金額に応じて選択した金種を表示する表示装置として機能する。
【0088】
図7は、貨幣処理装置10の操作端末20に表示される画面例を示す図である。図7(a)は、全ての金種の貨幣が、貨幣処理装置10の受付金種に選択された場合の画面例を示している。図7(b)は、受付金種が制限された場合の画面例を示している。図7以降に示す画面例は、米国通貨を対象に、図5に示す受付金種設定64bに基づいて、取引金額に対応する受付金種が選択された場合の例である。
【0089】
図7(a)は、取引金額が47.92ドルである場合の画面例を示している。図7(a)に示すように、客との取引金額が支払金額として画面上に表示される。
【0090】
画面上に、貨幣処理装置10の紙幣入金部110がグラフィック表示されて、紙幣入金部110に対応して、貨幣処理装置10が入金を受け付ける紙幣の金種が表示される。同様に、貨幣処理装置10の硬貨入金部210がグラフィック表示されて、硬貨入金部210に対応して、貨幣処理装置10が入金を受け付ける硬貨の金種が表示される。画面を確認した客は、紙幣入金部110に入金可能な紙幣金種と、硬貨入金部210に入金可能な硬貨金種とを容易に認識することができる。
【0091】
図7(a)は、米国通貨を対象とする画面例であるため、各硬貨の金種が、ドル単位で示す数値と共に、0.25ドル硬貨を示すクオーターの頭文字「Q」、0.1ドル硬貨を示すダイムの頭文字「D」、0.05ドル硬貨を示すニッケルの頭文字「N」、及び0.01ドル硬貨を示すペニーの頭文字「P」で表示されている。
【0092】
画面上には、さらに、貨幣処理装置10に入金された貨幣の金額を示す入金金額と、支払金額(取引金額)から入金金額を差し引いて算出される釣銭金額とが表示される。図7は、入金前の画面であるため入金金額及び釣銭金額が0(ゼロ)となっているが、客が貨幣処理装置10に貨幣を入金すると、入金金額及び釣銭金額の表示内容が入金金額に基づいて更新される。画面上には、中止ボタンが表示され、客は中止ボタンを押して取引を中止することもできる。入金処理の途中で中止ボタンが押された場合、取引が中止されて、入金済みの貨幣が貨幣処理装置10の装置外へ排出される。
【0093】
図7(b)は、取引金額が6.59ドルである場合の画面例を示している。取引金額が5ドル以上10ドル未満であるため、図5に示す受付金種設定64bに基づいて、貨幣処理装置10に受付可能な紙幣として1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣が選択されている。図7(a)に示す画面例とは異なり、一部の金種の貨幣は入金できないため、図7(b)に示すように、入金できない金種の表示311が、入金可能な金種の表示301と区別可能に表示される。
【0094】
図7(b)に示す画面例では、貨幣処理装置10に入金できない紙幣金種を示す矩形枠内が、金種を読み取れないように黒く塗り潰して表示されている。画面下部に表示された情報320は、金種を示す枠内が塗り潰されて金種を示す数字や文字が表示されていない紙幣及び硬貨は、貨幣処理装置10に入金できないことを示している。
【0095】
図7に示す画面を確認した客が、貨幣処理装置10に貨幣を入金すると、貨幣処理装置10は、客が入金した貨幣を識別する(図4ステップS5)。貨幣処理装置10は、入金された貨幣が、管理装置60の制御部61で選択された受付金種の貨幣でない場合(ステップS6;No)、この貨幣を客に返却する(ステップS7)。具体的には、紙幣識別部130で識別された紙幣及び硬貨識別部230で識別された硬貨のうち、取引金額に応じて選択された所定金種以外の金種の紙幣及び硬貨は、それぞれ紙幣出金部120及び硬貨出金部220からリジェクトされて客に返却される。
【0096】
一方、入金された貨幣が受付金種の貨幣である場合(ステップS6;Yes)、貨幣処理装置10は、この貨幣を装置内に収納すると共に、この貨幣の金種が在高情報64aに基づいて選択された不足金種であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0097】
入金された貨幣の金種が、貨幣処理装置10の在高情報64aに基づいて選択された不足金種であった場合(ステップS8;Yes)、貨幣処理装置10は、この貨幣の入金が、特典付与設定64cに設定された特典付与条件を満たすか否かを判定する(ステップS9)。
【0098】
店員は、管理装置60の記憶部64に保存されている特典付与設定64cで、貨幣を入金した客に特典を付与するか否かを判定するための特典付与条件を設定することができる。例えば、店員は、管理装置60の制御部61が在高情報64aに基づいて不足金種を検知した場合に、この不足金種の貨幣の入金枚数に応じて所定の特典を付与するように特典付与条件を設定する。
【0099】
例えば、不足金種の貨幣を所定枚数以上入金した客には、所定のクーポンを付与するように特典付与条件が設定される。例えば、店舗の利用客に取引金額に応じたポイントを付与する店舗で、不足金種の貨幣を所定枚数以上入金した客には、付与するポイント数を増やすように特典付与条件が設定される。特典付与条件が、入金枚数によらず特典を付与するように設定される場合もある。
【0100】
特典付与設定64cに不足金種に関する特典付与条件が設定されている場合、管理装置60の制御部61は、取引金額に応じて選択した金種の情報を貨幣処理装置10へ送信する際に、特典付与条件も合わせて送信する。貨幣処理装置10は、受信した特典付与条件に基づく判定を実行して(ステップS9)、不足金種の貨幣の入金が特典付与条件を満たした場合に(ステップS9;Yes)、特典が付与されることを客に報知する(ステップS10)。
【0101】
図8は、特典付与条件が設定されている場合に表示される画面例を示す図である。図8(a)は、一取引の入金処理中に不足金種5枚を入金した客に特典を付与する特典付与条件が設定されている場合の画面例である。
【0102】
図5に示す受付金種設定64bに基づいて図7(b)に示す画面が表示される取引時に、0.05ドル硬貨及び1ドル紙幣が不足金種として検知されていた場合、図7(b)に示す画面に代えて、図8(a)に示す画面が表示される。
【0103】
図8(a)に示すように、不足金種が検知された場合の画面には、特典付与条件を示す情報330が表示される。例えば、客がどの金種の貨幣を何枚入金すれば、客にどのような特典が付与されるかを示す情報330が表示される。
【0104】
貨幣処理装置10に入金を受け付ける金種のうち、特典付与の対象となる金種の表示331、332が、他の受付金種の表示301、302と区別可能に表示される。例えば、特典付与の対象となる金種の表示331、332が、他の金種の表示301、302と異なる色で表示される。例えば、特典付与の対象となる金種の表示331、332が、他の金種の表示301、302と異なり、点滅表示される。
【0105】
図8(a)に示す例では、特典付与対象の0.05ドル硬貨と、他の受付金種の硬貨とが異なる表示態様で表示され、特典付与対象の1ドル紙幣と、他の受付金種の紙幣とが異なる表示態様で表示されている。
【0106】
貨幣処理装置10は、特典付与対象の貨幣が入金される度に入金枚数をカウントする。貨幣処理装置10は、貨幣が入金されると入金金額を操作端末20の画面上に表示するが、入金金額とは別に、特典付与対象の貨幣のカウント数を表示する。貨幣処理装置10は、カウント数、すなわち特典付与対象の貨幣の入金枚数が特典付与条件を満たすと、これを客に報知する。
【0107】
図8(b)は、特典付与条件を満たした場合の画面例である。図8(b)に示すように、画面上には、入金金額を示す情報340とは別に、特典付与対象の貨幣の金種及び該金種の貨幣の入金枚数を示す情報341が表示される。特典付与対象の貨幣の入金枚数が特典付与条件を満たすと、貨幣処理装置10は、図8(b)に示すように、これを示す情報342を画面上に表示して客に報知する。
【0108】
特典付与条件を満たしたことで、特典付与の対象となる不足金種が変更される場合、貨幣処理装置10は、この変更に応じて画面を更新する。例えば、図8(a)に示す画面を確認した客が1ドル紙幣5枚を入金して特典付与条件を満たすと、画面が更新されて、図8(b)に示す画面が表示される。1ドル紙幣の特典付与条件を満たしたことで、特典付与対象の金種が0.05ドル硬貨のみとなるため、特典付与条件を示す情報330が、図8(a)に示す0.05ドル硬貨及び1ドル紙幣を含む表示内容から、図8(b)に示す0.05ドル硬貨のみを含む表示内容に更新される。また、特典付与対象の金種であることを客に報知するために、図8(a)に示す画面で色を変えたり点滅させたりして強調表示されていた1ドル紙幣の金種の表示332が、図8(b)に示すように、特典付与対象外である他の受付金種の表示301と同じ表示態様に更新される。
【0109】
入金処理の途中で、入金金額に応じて、受付金種の表示を更新する設定とすることもできる。入金開始時には、図5に示す受付金種設定64b及び取引金額6.59ドルに基づいて、図8(a)に示すように、1ドル紙幣、5ドル紙幣、10ドル紙幣、20ドル紙幣が受付可能な紙幣金種として表示される。
【0110】
客が貨幣処理装置10に5ドル紙幣を入金すると、客がさらに入金すべき金額は、取引金額の6.59ドルから入金金額5ドルを差し引いた残り1.59ドルになる。図5に示す受付金種設定64bでは、残りの金額1.59ドルに対応する紙幣金種は1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣になる。このため、入金受付可能な紙幣金種から20ドル紙幣が除外されて、入金を受け付ける1ドル紙幣、5ドル紙幣及び10ドル紙幣の表示と、入金を受け付けない20ドル紙幣とが区別可能に表示される。例えば、図8(a)に示す画面で、5ドル紙幣の入金後は、20ドル紙幣の表示が、入金できない金種の表示311と同様に表示される。20ドル紙幣の表示が、処理途中で受け付けられなくなったことが分かるように、入金可能な金種の表示及び入金できない金種の表示の両方と区別可能に表示される態様であってもよい。
【0111】
客が特典を獲得した場合は、さらに受付金種が制限される態様であってもよい。特典を獲得した金種の貨幣が釣銭として出金されることがないように、受付金種が制限される。例えば、残りの金額を、最小枚数の貨幣で構成する場合に含まれる金種の貨幣のみを受け付けるように、受付金種が制限される。
【0112】
例えば、客が取引金額6.59ドルのうち、1ドル紙幣5枚を貨幣処理装置10に入金して特典を獲得した場合、残りの金額1.59ドルを最小枚数の貨幣で構成する場合に含まれる紙幣の金種は1ドル紙幣であるため、入金受付可能な紙幣金種が1ドルのみに制限される。特典獲得後に例えば5ドル紙幣の入金を受け付けて、釣銭に1ドル紙幣を出金することになれば客に特典を付与できなくなる。精算システム1は、客が特典を獲得した後は、獲得した特典が維持されるように、客からの入金を受け付ける貨幣の金種を制限する。このため、特典獲得後に客が5ドル紙幣を入金しようとしてもリジェクトされる。
【0113】
図8(b)に示す例では、1ドル紙幣5枚を入金して特典を獲得した客がさらに入金可能な金種は、全ての金種の硬貨と1ドル紙幣とに制限されて、入金不可となった5ドル紙幣、10ドル紙幣及び20ドル紙幣の表示333が、受付金種の表示301、302、331と区別可能に表示される。
【0114】
具体的には、受付金種の表示301、302と、受付可能かつ特典付与対象の金種の表示331と、入金処理の途中で受付不可となった金種の表示333と、入金処理の開始時から受付不可であった金種の表示311とが、それぞれ異なる表示態様で表示される。
【0115】
例えば、入金処理の途中で貨幣処理装置10が入金を受け付けなくなった金種の表示333は、最初から入金を受け付けなかった金種の表示311とは異なり、金種の数値を読取可能に表示されるが、受付金種の表示301、302及び特典付与対象の金種の表示331とは異なる色で表示される。
【0116】
残りの入金金額が1.59ドルになって図8(b)に示す画面が表示された場合、貨幣処理装置10は、5ドル紙幣、10ドル紙幣及び20ドル紙幣の入金を受け付けなくなる。客が5ドル紙幣、10ドル紙幣及び20ドル紙幣を入金しようとしても、貨幣処理装置10は入金を受け付けずに装置外へリジェクトする。
【0117】
図4に示すように、客が貨幣処理装置10に入金した貨幣が、在高情報64aに基づいて選択された不足金種の貨幣でなかった場合(ステップS8;No)、及び不足金種の貨幣であるが特典付与条件を満たさなかった場合は(ステップS9;No)、特典付与の報知は行われないが、入金金額に基づいて操作端末20の画面の表示内容が更新される(ステップS11)。
【0118】
貨幣処理装置10への貨幣の入金は、入金金額が取引金額以上になるまで続けられる(ステップS12;No)。入金金額が取引金額以上になると(ステップS12;Yes)、貨幣処理装置10は、入金処理中に特典付与条件が満たされたか否かを判定する(ステップS13)。特典付与条件が満たされていた場合(ステップS13;Yes)、特典付与に関する処理が実行される(ステップS14)。例えば、貨幣処理装置10が、特典付与条件を満たしたことを示す情報を管理装置60に送信して、管理装置60が特典付与に関する処理を実行する。管理装置60は、特典付与設定64cに基づいて、客へポイントを付与するための処理やクーポンを発行するための処理を実行する。特典付与条件が満たされなかった場合(ステップS13;No)、特典付与に関する処理は実行されない。
【0119】
貨幣処理装置10は、釣銭の出金処理が必要であるか否かを判定する(ステップS15)。入金金額が取引金額と一致する場合、貨幣処理装置10は釣銭の出金は不要と判定して(ステップS15;No)、処理を終了する。入金金額が取引金額を超えている場合、貨幣処理装置10は、釣銭の出金が必要と判定して(ステップS15;Yes)、入金金額から取引金額を差し引いて得られた釣銭金額分の貨幣を出金して(ステップS16)、処理を終了する。
【0120】
図4では、在高情報64aに基づいて不足金種を検知して、不足金種の貨幣を所定枚数以上入金した客に特典を付与する例を説明したが、精算システム1では、客に特典を付与して入金を求める金種を、在高情報64aによらず、店員が予め設定することも可能となっている。
【0121】
貨幣処理装置10は、低額金種の貨幣を釣銭の出金に使用することが多いため、低額金種の貨幣は不足しやすい傾向にある。これに対応するため、精算システム1では、上述したように取引金額に基づいて入金可能な金種を自動選択する通常モードに加えて、取引金額によらず店員が予め手動選択した所定金種の貨幣のみを受け付ける低額金種モードで貨幣処理装置10を動作させることができる。
【0122】
低額金種モードに関する設定は、例えば特典付与設定64cに含まれる。店員は、特典付与設定64cの設定画面で、低額金種モードで客に入金を求める1又は複数の金種と、特典を付与する各金種の貨幣の入金枚数と、金種及び入金枚数に応じて客に付与する特典の内容とを設定することができる。貨幣処理装置10は、ネットワーク2を介して、管理装置60の記憶部64に保存された特典付与設定64cから低額金種モードの設定情報を取得して、低額金種モードで動作することができる。
【0123】
図9は、低額金種モードを説明するための図である。低額金種モードを利用する店舗では、上述したように通常モードで動作する貨幣処理装置10の操作端末20の画面上に、図9(a)に示すように、低額金種モードに関する情報350が表示される。具体的には、低額金種モードで入金処理を実行することで客に特典が付与されることを示す情報350と、低額金種モードへ移行するためのボタン351とが画面上に表示される。
【0124】
図9(a)に示す画面は、図7(b)と同様に、取引金額が6.59ドルで、全ての金種の硬貨と、1ドル紙幣、5ドル紙幣、10ドル紙幣及び20ドルの紙幣とを入金受付可能な通常モードの画面を示している。図9(a)に示す画面で客がボタン351を押すと、貨幣処理装置10の動作モードが通常モードから低額金種モードへ移行して、操作端末20が図9(b)に示す画面を表示する。
【0125】
図9(b)に示すように、画面上には、低額金種モードで客が入金できる所定金種と、貨幣を入金した場合に付与される特典とを示す情報350が表示される。図9(b)は、硬貨及び1ドル紙幣による入金処理を実行した客には、入金枚数によらず、特典が付与される例を示している。入金枚数に応じて付与される特典が変わる場合には、これを示す情報が表示されることになる。
【0126】
通常モードであれば入金受付可能であるが低額金種モードでは入金を受け付けられない金種の表示353が、他の金種の表示301、302、311と区別可能に表示される。
【0127】
具体的には、通常モード及び低額金種モードの両方で受け付けられない金種の表示311と、通常モード及び低額金種モードの両方で受け付けられる金種の表示301、302と、低額金種モードでは受け付けられないが通常モードに戻れば受け付けられる金種の表示353とが、異なる表示態様で表示される。図9(a)に示す通常モードの画面で、低額金種モードに移行すると入金できなくなる金種が分かるように、該金種が他の金種と表示態様を変えて表示される態様であってもよい。客は、各金種の受付可否を確認して、低額金種モードで入金処理を開始するか、通常モードに戻って入金処理を開始するかを容易に検討することができる。
【0128】
図9(b)に示すように、画面上には、通常モードへ戻るためのボタン352が表示される。客が通常モードに戻ることを決めてボタン352を押した場合、操作端末20の画面が図9(a)に示す画面に戻り、客は通常モードで入金処理を開始することができる。
【0129】
客が低額金種モードで入金処理を開始することを決めた場合、客が貨幣処理装置10に貨幣を入金することにより入金処理が開始され、店員が予め設定した低額金種の貨幣を対象に、通常モードと同様に処理が進められる。
【0130】
具体的には、貨幣処理装置10は、客が入金した貨幣を識別して、入金を受け付ける金種の貨幣は装置内に収納して、入金を受け付けない金種の貨幣はリジェクトして客に返却する。入金金額に応じて操作端末20の画面の表示内容が更新される。入金金額が取引金額以上になると、貨幣処理装置10は入金処理を終了して、低額金種モードで貨幣を入金した客に特典を付与するための処理を実行する。入金金額が取引金額を超えている場合、貨幣処理装置10は出金処理を実行して釣銭を出金する。
【0131】
図9は、入金枚数によらず客に特典が付与される例を示しているが、所定の入金枚数を超えた場合に特典が付与される設定や、入金枚数に応じて特典が変更される設定としてもよい。この場合、図4の処理と同様に、入金枚数がカウントされて、カウント結果に基づいて特典付与に関する判定処理が実行される。入金処理の終了後には、入金枚数に応じて客に特典を付与するための処理が実行される。
【0132】
精算システム1では、図9(a)に示した低額金種モードに関する情報350及びボタン351が、通常モードで入金処理を開始した際に常に表示される設定の他、取引金額が所定の閾値金額以下である場合にのみ表示される設定とすることもできる。店員が、低額金種モードに関する設定で、低額金種による支払は困難と考える閾値金額を設定すれば、取引金額が閾値金額以下の場合にのみ、低額金種モードに関する情報350及びボタン351が表示されるようになる。
【0133】
本実施形態の図4では、取引金額に基づく金種の選択と、在高情報64aに基づく金種の選択とが実行される例を示したが、精算システム1では、取引金額に基づく金種の選択のみを実行する設定とすることもできる。この場合、ステップS2及びS3、ステップS8~S10、ステップS13及びS14の処理は実行されない。
【0134】
在高情報64aに基づく金種の選択に関し、精算システム1は、硬貨処理装置200の混合収納部における混合比率に応じて、貨幣量が不足している不足金種及び貨幣量が過多になっている余剰金種を選択することもできる。管理装置60は、硬貨処理装置200の硬貨収納部242が、複数金種の硬貨を混合状態で収納する混合収納部として利用されている場合に、在高情報64aに基づいて、混合収納部における各金種の硬貨枚数の割合を示す混合比率を管理する。
【0135】
管理装置60は、混合比率が、予め設定された所定閾値以下の硬貨金種を不足金種として検知することができる。客との取引時に取引金額に応じて受付金種を選択した管理装置60は、不足金種が受付金種の中に含まれているか否かを判定して、含まれていない場合には、不足金種を受付金種に追加する。
【0136】
管理装置60は、混合比率が、予め設定された所定閾値以上の硬貨金種を余剰金種として検知することができる。客との取引時に取引金額に応じて受付金種を選択した管理装置60は、余剰金種が受付金種の中に含まれているか否かを判定して、含まれている場合には受付金種から余剰金種を除外する。
【0137】
店員が、不足金種を検知するための混合比率の閾値と、余剰金種を検知するための混合比率の閾値とを設定すれば、設定に基づいて、不足金種が受付金種に追加されて、余剰金種が受付金種から除外される。これにより、混合収納部において、ある金種の貨幣枚数だけが増加することを回避することができる。
【0138】
本実施形態では、在高情報64aに基づいて不足金種及び余剰金種の両方が検知される例を説明したが、精算システム1では、不足金種と余剰金種のいずれか一方のみを検知する設定とすることもできる。この場合、上述した処理のうち、不足金種と余剰金種のいずれか一方に関する処理のみが実行される。
【0139】
本実施形態では、客が取引金額を支払うために貨幣処理装置10に貨幣を入金する入金処理を中心に説明を行ったが、客が入金処理を終えて必要に応じて釣銭の出金処理が実行された後、レシートの発行等、従来行われている取引と同様の処理が行われる。
【0140】
本実施形態では、1台の貨幣処理装置10を例に説明を行ったが、図2に示すように精算システム1に複数台の精算装置40が接続されている場合は、各精算装置40の貨幣処理装置10で、上述した各処理が実行される。
【0141】
本実施形態では、貨幣処理装置10が、紙幣処理装置100及び硬貨処理装置200を含み、紙幣と硬貨の両方を処理する場合を例に説明を行ったが、貨幣処理装置10が、紙幣処理装置100と硬貨処理装置200のいずれか一方のみを含み、紙幣と硬貨のいずれか一方のみを処理する態様であってもよい。
【0142】
本実施形態では、取引金額に応じて選択された所定金種以外の金種の貨幣は、貨幣処理装置10が入金を受け付けない例を示したが、取引金額に応じて選択された所定の金種を推奨金種としてもよい。例えば、入金を受け付ける金種を報知する際、貨幣処理装置10が対応している全ての金種を操作端末20の画面上に表示して、画面上で、推奨金種を他の金種と色を変えて表示するなどして、ユーザが、入金が推奨されている金種を認識できるようにしてもよい。この場合、貨幣処理装置10は、推奨金種以外の金種の貨幣が入金された場合も、該貨幣をリジェクトすることなく受け付ける。客が推奨金種のみを入金した場合に、客に特典を付与するようにしてもよい。推奨金種を所定枚数以上入金した場合に特典を付与するようにしてもよい。これにより、店舗は、必要な金種の入金を客に促しつつ、選択された所定金種の貨幣を客が持ち合わせていないために取引の機会を失う頻度を低減できる。
【0143】
本実施形態では、精算システム1が、貨幣処理装置10、操作端末20、レジ端末30及び管理装置60を含む例を示したが、該構成は機能概略的なものであり、精算システム1の構成が物理的に該構成に限定されるものではない。例えば、図2に示した例において、貨幣処理装置10又は操作端末20が、上述した管理装置60の機能及び動作の一部又は全部を実現する態様であってもよい。各装置の分散・統合の形態は上述した例に限定されず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。なお、本実施形態に記載した貨幣処理装置10、操作端末20及びレジ端末30の機能及び動作は、精算装置40による機能及び動作を示すものである。
【0144】
このように、精算システムでは、店舗と店舗の客であるユーザとの取引金額に応じて、ユーザが貨幣処理装置に入金可能な貨幣の金種を選択することができる。店舗の店員が、取引金額と、該取引金額で入金可能な1又は複数の金種との対応を予め設定すれば、この設定に基づいて、貨幣処理装置に入金可能な貨幣の金種が選択される。これにより、各店舗の運用に応じて、貨幣処理装置に入金可能な金種を制限することができる。例えば、低額商品の購入時に高額金種の貨幣が貨幣処理装置に入金されて、釣銭を出金するために多数の貨幣が出金されてしまうことを防止することができる。また、高額金種の偽札を使用して低額商品を購入することによって釣銭をだまし取ろうとするような犯罪の抑止にも貢献できる可能性がある。
【符号の説明】
【0145】
1 精算システム
10 貨幣処理装置
20 操作端末
30 レジ端末
40 精算装置
50 POSサーバ
60 管理装置
100 紙幣処理装置
200 硬貨処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9