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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001272
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用LiDARシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/931 20200101AFI20241225BHJP
【FI】
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100769
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小暮 真也
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084BA13
5J084DA01
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】照射範囲において最大強度のレーザー光の出射方向が照射装置の光軸方向と異なっている場合に、照射範囲の消費総光量を低減しつつ、必要な探索を確保することができる車両用LiDARシステムを提供する。
【解決手段】LiDARシステム10は、レーザー光を照射範囲13に照射する照射装置12と、受光範囲15のうちの探索範囲17からの反射光46を受光する受光装置14とを備えている。照射範囲13において、最大強度のレーザー光の進路に相当する照射側主光軸41は、照射範囲13の中心線上を延在する照射側中心光軸40に対して偏倚するように設定され、受光範囲15の中心線上を延在する受光側中心光軸42は、照射側主光軸41より受光側中心光軸42に接近するように、設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を所定の照射範囲に向けて出射する照射装置と、
前記照射範囲に重なる範囲を探索範囲として含む所定の受光範囲を有し、前記探索範囲の対象物に対する前記レーザー光の反射光を受光する受光装置と、
を備える車両用LiDARシステムであって、
前記照射範囲において最大強度の前記レーザー光の進路としての照射側主光軸は、前記照射範囲において照射側画角の中心線に沿って延在する照射側中心光軸に対して偏倚しており、
前記受光範囲において受光側視点から受光側画角の中心線に沿って延在する受光側中心光軸は、前記照射側主光軸より前記照射側中心光軸に接近するように、設定されている、車両用LiDARシステム。
【請求項2】
前記照射装置は、前記レーザー光を出射する少なくとも1つ光源と、前記光源から入射する最大強度の前記レーザー光の進路を前記照射側中心光軸から前記照射側主光軸の方へ偏倚させる光学素子と、を有している、請求項1に記載の車両用LiDARシステム。
【請求項3】
前記照射装置は、各々が前記レーザー光を出射する複数の光源と、前記複数の光源から入射する前記レーザー光を前記照射範囲の対応方向へ出射する照射側光学系と、を有し、
前記複数の光源は、各光源からのレーザー光が前記照射側光学系から出射する対応出射方向が前記照射側中心光軸よりも前記照射側主光軸の方向に密になるように、配列されている、請求項1に記載の車両用LiDARシステム。
【請求項4】
前記照射装置及び前記受光装置は、前記車両の前部の車幅方向の端部に取り付けられ、
前記照射装置は、鉛直方向に前記受光装置より上に位置し、
前記照射側主光軸及び前記照射側中心光軸は、それぞれ前記車両の側方視で前記受光側中心光軸に対して離反及び接近するように、前記車両の前方に向かって延在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用LiDARシステム。
【請求項5】
前記受光側中心光軸は、前記車両の平面視で前方に向かって前記車幅方向に斜め外側で前記鉛直方向に斜め下側に向かって延在している、請求項4に記載の車両用LiDARシステム。
【請求項6】
前記照射側主光軸は、前記車両の側方視で前方に向かって前記受光側中心軸より上向きで、前記車両の平面視で前方に向かって前記車幅方向に前記受光側中心軸より車幅方向に内向きで延在している、請求項5に記載の車両用LiDARシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用LiDAR(Light Detection And Ranging)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて、車両前方の歩行者や先行車や対向車等のターゲット(対象物)を探知するLiDARシステムが知られている。
【0003】
特許文献1は、車両に搭載されて車両前方の障害物を検知する電波式レーダー装置を開示する。この電波式レーダー装置では、送信アンテナと受信アンテナとは、個々の指向性の偏りが互いに向き合うように車両に配置されて、車両の前後方向中心線に対して左右対称の形状の検出エリア(探索エリア)を生成している。
【0004】
特許文献2は、車両に装備されて前方物体からの超音波を前方以外の方向からの超音波と区別して先行車との車間距離を計測する超音波車間距離計測装置を開示する。この超音波車間距離計測装置では、2つの超音波受信器の受信感度角度分布が送信波の進行方向に対して対称に分布するように構成し、音圧比較回路で両超音波受信器の超音波受信回路の音圧の大きさの差が閾値以下であるときは前方物体からの反射波であると判断し、閾値を超えるときはノイズと判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-9922号公報
【特許文献2】特開平07-333332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のLiDARシステムでは、照射装置からのレーザー光の出射強度は、照射側画角の中心線の方向としての光軸方向が最大で、この光軸方向から偏倚した方向ほど、低下している。一方、車両用LiDARシステムでは、照射装置によるレーザー光の照射範囲として、車幅方向及び車高方向に車両のまっすぐ前方から前方斜め横の走行レーンの車線までの範囲を確保する必要がある。また、レーザー光の到達必要距離は、車両のまっすぐ前方が最大(例:前方約100m)、斜め前方の斜め下の車線の方向が最小距離(例:約数m)となる。
【0007】
従来の車両用LiDARシステムでは、要求される照射範囲を確保すると、車両のまっすぐ前方へのレーザー光の強度が不足し、すなわち、車両のまっすぐ前方の対象物の探索が困難となり、また、車両のまっすぐ前方へのレーザー光の強度を確保しようとすると、その分、車両のまっすぐ前方から外れた中心光軸方向へのレーザー光の強度を不必要に大きくする必要があり、消費総光量が増大していた。
【0008】
特許文献1の電波式レーダー装置及び特許文献2の超音波車間距離計測装置は、共に、送信範囲の中心線に相当する指向方向(LiDARシステムでは、光軸方向)が最大強度となっている。
【0009】
本発明の目的は、照射範囲において最大強度のレーザー光の出射方向が照射装置の光軸方向と異なっている場合に、照射範囲の消費総光量を低減しつつ、必要な探索を確保することができる車両用LiDARシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用LiDARシステムは、
レーザー光を所定の照射範囲に向けて出射する照射装置と、
前記照射範囲に重なる範囲を探索範囲として含む所定の受光範囲を有し、前記探索範囲の対象物に対する前記レーザー光の反射光を受光する受光装置と、
を備える車両用LiDARシステムであって、
前記照射範囲において最大強度の前記レーザー光の進路としての照射側主光軸は、前記照射範囲において照射側画角の中心線に沿って延在する照射側中心光軸に対して偏倚しており、
前記受光範囲において受光側視点から受光側画角の中心線に沿って延在する受光側中心光軸は、前記照射側主光軸より前記照射側中心光軸に接近するように、設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照射側主光軸は、照射側中心光軸に対して偏倚し、かつ照射範囲及び受光範囲は、受光側中心光軸は、照射側主光軸より前記照射側中心光軸に接近するように、設定されている。これにより、照射範囲の消費総光量を低減しつつ、必要な探索を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】LiDARシステムを前部の右端部に装備する車両が前方に生成する照射範囲及び受光範囲について車両の側方視で示す図である。
図2】LiDARシステムを前部の右端部に装備する車両が前方に生成する照射範囲及び受光範囲について車両の平面視で示す図である。
図3】LiDARシステムのブロック図である。
図4】照射装置が照射範囲に生成する配光パターンを示す図である。
図5A】従来のLiDARシステムにおける平面視の照射範囲の全体概略図である。
図5B】従来のLiDARシステムにおける平面視の受光範囲の全体概略図である。
図6A】実施形態のLiDARシステムにおける平面視の照射範囲の全体概略図である。
図6B】実施形態のLiDARシステムにおける平面視の受光範囲の全体概略図である。
図7A】車両が道路を走行中に車両の右前部に搭載されている照射装置からのレーザー光の出射により車両の前方を含む周囲に設定する右側の照射範囲を示す図である。
図7B】車両が道路を走行中に車両の右前部及び左前部にそれぞれ搭載されている照射装置からのレーザー光の出射により車両の前方に設定する照射範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、当業者の設計事項の範囲内で実施形態を種々変更した構成形態を包含する。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、全図を通して同一の符号を使用する。
【0014】
(照射範囲、受光範囲及び探索範囲)
図1及び図2は、LiDARシステム10を前部の右端部に装備する車両20が前方に生成する照射範囲13及び受光範囲15について車両20の側方視及び平面視でそれぞれ示す図である。典型的には、車両20は、LiDARシステム10を前部の左端部及び右端部の両方に装備している。この車両20は、右ハンドル車を想定している。LiDARシステムには、フラッシュ方式とスキャン方式とがあるが、このLiDARシステム10は、フラッシュ方式を採用している。
【0015】
前後方向中心線24は、車幅方向に車両20の中心に位置し、車高方向には、運転席の運転手の目の高さに設定している。前後方向中心線24は、路面26に対して平行に、すなわち水平に車両20の前後方向に延在している。
【0016】
LiDARシステム10は、照射装置12及び受光装置14を備えている。照射装置12は、車体22の前部に装着されている右の前照灯23のハウジング内に前照灯23の本来の光源(路面26を白色の可視光で照射する光源)と共に収容されている。受光装置14は、前照灯23の外において鉛直方向(上下方向)に前照灯23より少し下の車体22の箇所に取り付けられている。
【0017】
照射装置12からは、レーザー光が照射範囲13に向けて出射される。受光装置14は、照射装置12から出射したレーザー光の照射光45(図3)がターゲット(対象物)28(図3)に当たって戻って来た反射光46(図3)を受光する。受光装置14が反射光46を検出できるのは、照射装置12からの照射光45に対する反射光46に限られる。したがって、LiDARシステム10が検出できるターゲット28は、照射範囲13と受光範囲15とが重なる探索範囲17に存在するターゲット28に限られる。
【0018】
図1及び図2の照射範囲13において、照射側中心光軸40は、照射装置12を視点として照射範囲13を見たときのFOI(Field Of Ilunination/照視野)の画角の中心線(縦画角及び横画角の共通の二等分線でもある。)に沿って延在している。照射側主光軸41は、FOIの視点から出射する最大強度のレーザー光の進路である。受光側中心光軸42は、受光装置14を視点として受光範囲1を見たときのFOV(Field Of View/受光視野)の画角の中心線(縦画角及び横画角の共通の二等分線でもある。)に沿って延在している。
【0019】
図1において、水平面25は、照射側中心光軸40及び受光側中心光軸42の傾斜角を示すために、図示されている。この水平面25は、前後方向中心線24及び路面26の両方に平行である。γa1(>0)は、水平面25に対する照射側中心光軸40の下向きの傾斜角である。γa2(>0)は、水平面25に対する受光側中心光軸42の下向きの傾斜角である。γa3(>0)は、側方視で照射側中心光軸40に対する照射側主光軸41の上向きの傾斜角である。γa1<γa2の関係がある。すなわち、車両20の側方視で、照射側中心光軸40の方が受光側中心光軸42より上向きになっている。
【0020】
γa3-γa1>0である。すなわち、照射側主光軸41は、車両20から前方を見て、水平面25に対して上向きになっている。照射装置12は、車両20において前後方向中心線24より鉛直方向の下側に配設されているものの、照射側主光軸41は、車両20から前方へ向かうに連れて少しずつ上昇し、前後方向中心線24に接近していく。
【0021】
αv1は、照射装置12を視点とするFOIの垂直画角(縦画角)である。αv2は、受光装置14を視点とするFOVの垂直画角(縦画角)である。αv1>αv2の関係がある。したがって、γa1<γa2であっても(図1)、車両20の側方視で照射側中心光軸40の方が受光側中心光軸42より上向きであっても、車両20の側方視で照射範囲13の下側境界線の下向きの傾斜角は、受光範囲15の下側境界線の下向きの傾斜角より大となる。
【0022】
L0は、照射装置12から照射範囲13に出射するレーザー光の起点位置に引いた鉛直補助線である。L1は、受光範囲15が車両20の前方において路面26に到達する地点に引いた鉛直補助線である。照射範囲13は、少なくとも鉛直補助線L1を含む、鉛直補助線L1より手前、すなわち車両20側において路面26に到達する。鉛直補助線L1は、また、路面26上の探索範囲17において車両20の前後方向に車両20に最短距離となる地点である。好ましくは、照射範囲13も、受光範囲15と同じく鉛直補助線L1において路面26に到達する。その方が照射範囲13内で探索範囲17が占める割合が増え、照射範囲13の消費総光量を低減することができるからである。
【0023】
図2において、受光装置14は、照射装置12の下に隠れているが、受光装置14は、車幅方向に照射装置12とほぼ同一位置にある。同一位置にある方が、探索範囲17を広くすることができるからである。
【0024】
αh1は、FOIの水平画角(横画角)である。αh2は、FOVの水平画角(横画角)である。αh1≒αh2であるものの、αh1>αh2の関係がある。照射装置12より受光装置14の方が高価であり、FOVを増大するより、FOIを増大して探索範囲17を拡大する方がコスト的に有利となるからである。
【0025】
γb1(>0)は、平面視で照射側中心光軸40に対する前後方向中心線24側への照射側主光軸41の傾斜角である。照射側中心光軸40は、車両20から見て車幅方向外向きであるのに対し、照射側主光軸41は、前後方向中心線24に接近するように、内向きとなっている。照射装置12から照射範囲13に出射されるレーザー光の強度は、平面視における方向によって相違するので、照射範囲13の遠方境界線は、図6Aに図示するように、照射側主光軸41の方向が最大遠方距離となる。
【0026】
(LiDARシステム)
図3は、LiDARシステム10のブロック図である。LiDARシステム10は、LiDARシステム10の外の制御装置30により制御される。制御装置30は、LiDARシステム10とは別に車両20に搭載されている。この制御装置30は、LiDARシステム10の制御だけでなく、車両20に搭載されているその他の電子機器(図示せず)の制御(例:ADB(Adaptive Driving Beam)、AFS(Adaptive Front-Lighting System)又は空調温度制御)も併せて実施可能な統括的な制御装置である。
【0027】
照射装置12は、光源装置32及び照射側光学系36を備えている。光源装置32は、さらに、少なくとも1つ(図示の例では2つ)の光源33を有している。このLiDARシステム10は、フラッシュ型のLiDARシステムであるため、制御装置30は、所定の周期で複数の光源33を同時に発光させる。各光源33は、レーザー光を照射側光学系36に向けて出射する。複数の光源33の光軸34は、相互に平行である。
【0028】
照射側光学系36は、光源装置32からのレーザー光の入射光を所定の強度分布(所定の配光パターンでもある。)で照射範囲13に出射する。強度の大きいレーザー光程、照射光45として遠方のターゲット28に到達して、ターゲット28から所定値以上の強度の反射光46をLiDARシステム10に戻すことができる。
【0029】
受光装置14は、受光側光学系50及びセンサ52を備えている。センサ52は、格子状に配列された複数のセンサ素子を有している。受光側光学系50は、探索範囲17から受光した反射光46を、反射光46の入射方向に対応するセンサ52のセンサ素子に入射させる。制御装置30は、反射光46がセンサ52のどのセンサ素子に入射したかに基づき各反射光46の入射方向を検出することができる。
【0030】
制御装置30は、また、光源33のフラッシュ点灯時刻と、受光装置14におけるセンサ52の各センサ素子における反射光46の受光時刻との差分に基づいてTOF(Time of Flight)に従ってターゲット28までの距離を測距する。こうして、制御装置30は、反射光46の入射方向と各反射光46の反射元のターゲット28までの測距に基づいて各ターゲット28の位置を検出する。
【0031】
さらに、反射光46の強度は、LiDARシステム10からターゲット28までの距離だけでなく、ターゲット28の反射率にも関係する。そして、ターゲット28の反射率は、ターゲット28の種別に関係する。例えば、ターゲット28の種別として路面26上で車両20の走行車線を区画する区画線(例:白線)があり、路面26上の区画線がどこにあるかを反射率から判別することができる。
【0032】
従来のLiDARシステムでは、照射側主光軸41は照射側中心光軸40に一致している。これに対し、このLiDARシステム10では、照射側光学系36からのレーザー光の出射により生成される照射範囲13において照射側主光軸41が照射側中心光軸40から偏倚している。照射側主光軸41を照射側中心光軸40に対して偏倚させるために、照射装置12の具体例は、次のとおりである。
【0033】
(a)光源装置32は、少なくとも1つの光源33を備えている。光源33が複数であるときは、複数の光源33の光軸は相互に平行になっている。一方、照射側光学系36は、照射側主光軸41の方に出射するレーザー光の強度が照射側中心光軸40の方に出射するレーザー光の強度より強まるように変換する光学素子を有している。具体的な光学素子としては、例えば、光源装置32からのレーザー光の入射光を末広がりに出射した光路の横断面の複数の区画に分割してから、区画ごとに相互に相違する区画別照射範囲を生成するディフューザとすることができる。光学素子としてのディフューザは、受光範囲15において、照射側主光軸41の方向には、照射側中心光軸40の方向より区画別照射範囲の重なり数が増大するように、すなわち、レーザー光の強度が増大するように、設定されている。
【0034】
(b)光源装置32は、複数の光源33を備えている。複数の光源33の配置位置又は配置密度は、照射側中心光軸40に対する照射側主光軸41の偏倚に対応するように設定される。これにより、複数の光源33からのレーザー光は、例えば1つの共通レンズを通過後、照射側中心光軸40より照射側主光軸41の方向に集めることができる。
【0035】
(配光パターン)
図4は、照射装置12が照射範囲13に生成する配光パターンを示す図である。図4の配光パターンは、図2に示すように、車両20の前部の右端部に配備されたLiDARシステム10が生成するものを想定している。この配光パターンは、また、車両20の前方の所定距離離れた箇所に車両20に正対して立設された仮想スクリーン上に生成されるものを示している。
【0036】
図4は、カラーの配光パターンをモノクロのグレースケールに表示変換している。カラーの配光パターンでは、レーザー光の強度の大から小へ赤(暖色)から青(寒色)に変化している。このため、図4のグレースケールでは、最大強度の赤が、最小強度の群青と同様に黒っぽく表示されて、中間の黄色が白っぽく表示されている。すなわち、濃淡がかならずしも照度に対応していない。
【0037】
図4において、横軸は方位角、縦軸は仰角である。すなわち、仮想スクリーンにおける横方向及び縦方向の長さを、車両20に搭載されたLiDARシステム10からの方位角(左右方向の角度)及び仰角(上下方向の角度)に換算している。原点O(方位角=0°及び仰角=0°)は、前後方向中心線24に平行な方向を意味する。
【0038】
補助線V0,H0は、図4において原点Oで交差している。補助線V0に対し左側及び右側は車幅方向の左側(l:left)及び右側(r:right)に対応する。補助線H0に対して上側及び下側は、前後方向中心線24を通る水平面に対して上側(u:up)及び下側(d:down)に対応する。
【0039】
図4では、補助線V0,H0の他に、複数の補助線Vl2,Vl1,Vh1,Vh2,Hd,Huを示すとともに、補助線間の角度間隔が記入されている。照射範囲13は、仰角で上側20°~下側20°の範囲、方位角で左側65°~右側75°の範囲を占めている。なお、一般的には、照射範囲13の方位角範囲は、120°~140°である。
【0040】
(対比)
図5A及び図5Bは、従来のLiDARシステム110における平面視の照射範囲113及び受光範囲115の全体概略図である。図6A及び図6Bは、本発明の実施形態のLiDARシステム10における平面視の照射範囲13及び受光範囲15の全体概略図である。
【0041】
従来のLiDARシステム110において、照射装置112及び受光部114は、それぞれLiDARシステム10の照射装置12及び受光装置14に対応している。従来のLiDARシステム110において、照射範囲113及び受光範囲115は、LiDARシステム10の照射範囲13及び受光範囲15に対応している。また、光源装置132、照射側光学系136、受光側光学系150及びマトリクスセンサ152は、LiDARシステム10の光源装置32、照射側光学系36、受光側光学系50及びセンサ52に対応している。
【0042】
図5Aの照射範囲113及び図6Aの照射範囲13では、各方向へレーザー光の出射強度がモノクロの濃淡で示されている。この濃淡では、濃い(黒っぽい)場所ほど、LiDARシステム110,10から強度の大きいレーザー光が出射されたことを意味している。なお、前述の図4のグレースケールでは、濃い場所ほど、LiDARシステムの強度が低い場所(暗い場所)を示しており、図5A及び図6Aの濃淡とは逆になっている。
【0043】
図5A及び図6Aでは、照射範囲113,13において照射装置112,12から各方位への終端側の境界線は、各出射方向のレーザー光の最大到達距離点(レーザー光が定格値以上の照度で到達できる最大遠方点)を意味している。従来の照射装置112では、出射方向に関係なく、レーザー光の出射強度は一律であるので、レーザー光の到達点側の照射範囲113の境界線は、照射側光学系136を中心とする同一の円弧上に存在している。これに対し、照射範囲13では、照射装置12からのレーザー光の出射強度は、照射側主光軸41の方向が最大で、照射側主光軸41の方向からずれた方向ほど、低下している。このため、レーザー光の到達点側の照射範囲13の境界線も、照射側主光軸41の方向が照射側光学系36から最も遠方となり、照射側主光軸41の方向からずれた方向ほど、照射側光学系36に近づいている。
【0044】
照射範囲113(図5A)では、全体が均一な強度分布(配光パターン)になっているので、照射側主光軸141は、照射側中心光軸140に重なっている。これに対し、照射範囲13(図6A)では、照射装置12から最強度のレーザー光の出射方向としての照射側主光軸41が、図2で説明したように、照射側中心光軸40に対して車幅方向内側に偏倚しつつ、照射側主光軸41は、照射範囲13において照射側光学系36から最遠方まで到達している。
【0045】
図5B及び図6Bでは、受光範囲115及び照射装置112は、平面視で受光側光学系150,50を中心とする扇形となっている。図6Bの扇形の半径は、図6Aにおいて照射側主光軸41の長さにほぼ等しく設定されている。すなわち、受光装置14は、図6Aにおける最遠方地点からの反射光46も検知可能になっている。
【0046】
(設定探索範囲)
図7Aは、車両20が道路を走行中に車両20の右前部に搭載されている照射装置12rからのレーザー光の出射により車両20の前方を含む周囲に設定する右側の照射範囲13rを示している。実際に、LiDARシステム10は、車両20の前部の右端部に搭載されて、照射範囲13rを生成するように、例えば図4に示した配光バターンを生成するように設定されている。
【0047】
図7Aにおいて時計回りに放射方向に延在している補助線Vl2,V0,Vr1,Vr2は、図4において縦方向に延在している補助線Vl2,V0,Vr1,Vr2にそれぞれ対応している。
【0048】
図7Aに記入されている”数値+m”は、照射装置12lからのレーザー光が定格強度以上で到達する距離を単位をm(メートル)として示している。”deg”は、角度の単位の”°”を意味する。
【0049】
図7Bは、車両20が道路を走行中に車両20の右前部及び左前部にそれぞれ搭載されている照射装置12r,12lからのレーザー光の出射により車両20の前方に設定する照射範囲13r,13lを示している。
【0050】
図7Bにおいて、補助線Vle,Vreは、それぞれ照射範囲13lの左端及び右端の境界線であり、照射範囲13rの補助線Vl2,Vr2に対応している。円周角で補助線Vl2~Vq2の扇形範囲は、照射範囲13l,13rが重なっている範囲である。
【0051】
(変形例及び補足)
実施形態のLiDARシステム10では、フラッシュ方式が採用されているが、本発明の車両用LiDARシステムにおける照射方式は、フラッシュ方式に限定されず、スキャン方式やその他であってもよい。
【0052】
照射装置12は、最初から前照灯23のハウジング内に組み込まれていてもよい。車両20の製造者は、受光装置14と照射装置12入りの前照灯23とを1セットとしてではなく、別々に用意することもできる。
【0053】
実施形態の車両20は、普通自動車であるが、LiDARシステム10が搭載される車両は、路面26を走行する自動車に限定されず、工場や施設内を走行するロボット車両であってもよい。また、本発明のLiDARシステムが搭載される車両は、有人及び無人のどちらであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10・・・LiDARシステム、12・・・照射装置、13・・・照射範囲、14・・・受光装置、15・・・受光範囲、17・・・探索範囲、20・・・車両20、23・・・前照灯、28・・・ターゲット、32・・・光源装置、36・・・照射側光学系、40・・・照射側中心光軸、41・・・照射側主光軸、42・・・受光側中心光軸、45・・・照射光、46・・・反射光、50・・・受光側光学系、52・・・センサ。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B