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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012724
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20250117BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20250117BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115788
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 浩一
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D235AA01
3D235BB13
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC12
3D235FF25
3D235HH12
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609RR01
5H609SS22
(57)【要約】
【課題】電気式ポンプの異常時にも冷却性能を確保する。
【解決手段】冷却システム10は、電動車両のモータ11を冷却するとともに冷却媒体をラジエータ12で冷却するもので、電気式ポンプ14Aで冷却媒体を循環させるメイン回路と、機械式ポンプ14Bで冷却媒体を循環させるサブ回路とを有する冷却回路13と、モータ11と機械式ポンプ14Bとの間の動力伝達の断接を行う伝達装置16と、メイン回路を通じて冷却媒体を循環させる第一状態と、サブ回路を通じて冷却媒体を循環させる第二状態とを切り替える切替装置17と、電気式ポンプの異常を検知する検知装置18,19Aと、電気式ポンプ11が正常な場合、切替装置17を第一状態に設定し、また、電気式ポンプ14Aが異常な場合、伝達装置16によりモータ11と機械式ポンプ14Bとをつなぐとともに切替装置17を第二状態に設定する制御装置19と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の駆動用モータを冷却媒体により冷却するとともに前記冷却媒体をラジエータで冷却する冷却システムであって、
電力により駆動される電気式ポンプを用いて前記ラジエータと前記駆動用モータとの間で前記冷却媒体を循環させるメイン回路と、前記駆動用モータにより機械式に駆動される機械式ポンプを用いて前記ラジエータと前記駆動用モータとの間で前記冷却媒体を循環させるサブ回路とを有する冷却回路と、
前記駆動用モータと前記機械式ポンプとの間の動力伝達の断接を行う伝達装置と、
前記冷却回路に付設され、前記メイン回路を通じて前記冷却媒体を循環させる第一状態と、前記サブ回路を通じて前記冷却媒体を循環させる第二状態とを切り替える切替装置と、
前記電気式ポンプの異常を検知する検知装置と、
前記検知装置により前記電気式ポンプの異常が検知されていない場合は、前記切替装置を前記第一状態に設定し、また、前記電気式ポンプの異常が検知された場合は、前記伝達装置により前記駆動用モータと前記機械式ポンプの間を接続するとともに前記切替装置を前記第二状態に設定する制御装置と、を備えた
ことを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電動車両の駆動用モータを冷却媒体により冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用モータを用いて走行する電動車両が知られる。
電動車両には、一般的に、オイルや冷却水等の冷却媒体を循環させる冷却回路により駆動用モータを冷却する液冷式の冷却装置が装備されている。例えば、特許文献1には、冷却媒体としての不凍液を電気式ポンプにより冷却回路内に循環させることで電動機を冷却する冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-75050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の技術では、電気式ポンプにより冷却媒体を循環させているので、万が一、電気回路の故障や電気式ポンプ本体の故障が発生した場合、電気式ポンプが動作せず、電気式ポンプによる駆動用モータの冷却ができなくなる。その場合、電動車両が走行できなくなることが考えられる。
よって、従来の技術では、電気式ポンプが正常に動作しない場合にも冷却性能を確保して電動車両が走行できるようにするうえで改善の余地があった。
本件の冷却システムは、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、電気式ポンプが正常に動作しない場合にも冷却性能を確保して、電動車両が走行できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
【0006】
(1)本適用例は、電動車両の駆動用モータを冷却媒体により冷却するとともに前記冷却媒体をラジエータで冷却する冷却システムであって、電力により駆動される電気式ポンプを用いて前記ラジエータと前記駆動用モータとの間で前記冷却媒体を循環させるメイン回路と、前記駆動用モータにより機械式に駆動される機械式ポンプを用いて前記ラジエータと前記駆動用モータとの間で前記冷却媒体を循環させるサブ回路とを有する冷却回路と、前記駆動用モータと前記機械式ポンプとの間を動力伝達の断接可能につなぐ伝達装置と、前記冷却回路に付設され、前記メイン回路を通じて前記冷却媒体を循環させる第一状態と、前記サブ回路を通じて前記冷却媒体を循環させる第二状態とを切り替える切替装置と、前記電気式ポンプの異常を検知する検知装置と、前記検知装置により前記電気式ポンプの異常が検知されていない場合は、前記切替装置を前記第一状態に設定し、また、前記電気式ポンプの異常が検知された場合は、前記伝達装置により前記駆動用モータと前記機械式ポンプの間を接続するとともに前記切替装置を前記第二状態に設定する制御装置と、を備えている。
【0007】
これによれば、冷却システムの冷却回路には機械式ポンプを用いてラジエータと駆動用モータとの間で冷却媒体を循環させるサブ回路が設けられており、電気式ポンプの異常が検知された場合、機械式ポンプを用いたサブ回路で冷却媒体を循環させることができる。
そのため、電気式ポンプ電力を供給する電気回路の故障や電気式ポンプ体の故障などにより電気式ポンプが正常に動作しなくなった場合であっても、冷却媒体の循環を継続することができる。よって、電気式ポンプが正常に動作しなくなった場合であっても、冷却システムの冷却性能が確保されるので、電動車両は走行することができる。
これにより、例えば、電動車両が路上で停車(路上故障)することなく整備工場まで自力走行を行う、または安全が確保できる場所まで自力走行を行う、などの対応が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本件の冷却システムによれば、電気式ポンプが正常に動作しない場合にも、冷却性能を確保して電動車両が走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】適用例に係る冷却システムの説明図である。
図2】電気式ポンプが正常な場合の冷却システムの説明図である。
図3】電気式ポンプが正常に動作していない場合の冷却システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0011】
[1.構成]
図1は、本適用例に係る冷却システム10の説明図である。
冷却システム10は、図示しない電動車両において動力源として設けられた駆動用モータ11を液体の冷却媒体を用いて冷却するための設備であり、図示しない電動車両に装備されている。冷却システム10に用いる液体冷媒の例としては冷却水(クーラント液)が挙げられる。
駆動用モータ11は、図示しない電動車両の車輪2L,2Rに接続され、車輪2L,2Rを駆動する電動機である。なお、冷却システム10が適用される車種は、特に限定されず、一例として、乗用車、バスあるいはトラックを挙げることができる。
【0012】
この冷却システム10には、冷却媒体を冷却するためのラジエータ12と、駆動用モータ11とラジエータ12との間で冷却媒体を流通させる流路をなす冷却回路13と、冷却回路13内で冷却媒体を強制循環させるポンプ14とが含まれている。
冷却回路13は、駆動用モータ11とラジエータ12とポンプ14とを連結する複数のパイプ15で形成されている。冷却回路13内において冷却媒体を所定の流通方向(図1中、冷却媒体の流通方向を矢印で示す)へ流通する。
ポンプ14は、冷却回路13内に設けられており、冷却回路13内の冷却媒体を圧送し、冷却媒体を強制循環させる圧送機である。
【0013】
冷却回路13内を流通する冷却媒体は、ポンプ14により駆動用モータ11とラジエータ12との間を循環し、駆動用モータ11の図示しないウォータージャケットを通過する過程で駆動用モータ11を冷却する。
ラジエータ12は、冷却回路13において駆動用モータ11の下流側に設けられており、駆動用モータ11の冷却に使用された冷却媒体を放熱するための熱交換器である。ラジエータ12で放熱された冷却媒体は、冷却回路13を通じて駆動用モータ11へ戻り、駆動用モータ11の冷却に用いられる。
【0014】
図1に示すように、冷却システム10には、ポンプ14として、電気式ポンプ14Aと機械式ポンプ14Bとの二つが設けられている。
電気式ポンプ14Aは、図示しない電源装置からの電力により駆動されるポンプである。
機械式ポンプ14Bは、駆動用モータ11に付設され、駆動用モータ11により機械式に駆動されるポンプである。言い換えれば、機械式ポンプ14Bは電源装置からの電力に拠らずに駆動される。
電気式ポンプ14Aが、電気式ポンプ14Aの正常動作時(すなわち通常時に)使用されるメインポンプであるのに対して、機械式ポンプ14Bは、電気式ポンプ14Aに異常が生じた場合に使用されるサブポンプと言える。
【0015】
機械式ポンプ14Bと駆動用モータ11との間にはクラッチ16が設けられている。
クラッチ16は、駆動用モータ11と機械式ポンプ14Bとの間の動力伝達の断接を行う伝達装置である。駆動用モータ11と機械式ポンプ14Bとの間がクラッチ16により接続された状態で、駆動用モータ11の動力が機械式ポンプ14Bへ伝達され、機械式ポンプ14Bが駆動する。駆動用モータ11と機械式ポンプ14Bとの間がクラッチ16により切断された状態では、駆動用モータ11から機械式ポンプ14Bへの動力伝達が遮断され、機械式ポンプ14Bは駆動しない。
【0016】
一例として、機械式ポンプ14Bとクラッチ16とは、駆動用モータ11のケーシング11A内に一体的に設けられている。
この場合、既存の冷却システムに対して機械式ポンプ14Bとクラッチ16を追加する場合のレイアウト検討が不要であることや、駆動用モータ11の動力を機械式ポンプ14Bの駆動に利用しやすいという利点がある。
【0017】
冷却回路13を形成する複数のパイプ15には、駆動用モータ11に繋がる主パイプ15Aと、主パイプ15Aから分岐して電気式ポンプ14Aに繋がる第一分岐パイプ15Bと、主パイプ15Aから分岐して機械式ポンプ14Bに繋がる第二分岐パイプ15Cとが含まれている。
主パイプ15Aは、駆動用モータ11における冷却媒体の流入口と排出口とに接続されるとともに、駆動用モータ11に対して下流側に設けられたラジエータ12における冷却媒体の流入口と排出口とに接続されている。すなわち、駆動用モータ11に対して上流側に位置する主パイプ15Aを通じて駆動用モータ11に冷却媒体が流入し、下流側に位置する主パイプ15Aを通じて駆動用モータ11から冷却媒体が排出される。駆動用モータ11から排出された冷却媒体は主パイプ15Aを通じてラジエータ12に流入し、ラジエータ12から下流側に位置する主パイプ15Aを通じて冷却媒体が排出される。
【0018】
第一分岐パイプ15Bは、一端がラジエータ12の下流側で主パイプ15Aに接続されるとともに、他端が駆動用モータ11の上流側で主パイプ15Aに接続されている。この第一分岐パイプ15Bに電気式ポンプ14Aが介装されている。すなわち、第一分岐パイプ15Bは、主パイプ15Aから分岐して電気式ポンプ14Aを介して再び主パイプ15Aに合流する分岐路である。
第一分岐パイプ15Bと主パイプ15Aとが、電気式ポンプ14Aを用いてラジエータ12と駆動用モータ11との間で冷却媒体を循環させるメイン回路をなす。メイン回路は、電気式ポンプ14Aが正常に動作しているときに利用されるメインの循環回路である。
【0019】
第二分岐パイプ15Cは、第一分岐パイプ15Bとは別の流路であり、一端がラジエータ12の下流側において主パイプ15Aに接続されるとともに、他端が駆動用モータ11の上流側において主パイプ15Aに接続されている。この第二分岐パイプ15Cに機械式ポンプ14Bが介装されている。すなわち、第二分岐パイプ15Cは、主パイプ15Aから分岐して機械式ポンプ14Bを介して再び主パイプ15Aに合流する分岐路である。
第二分岐パイプ15Cと主パイプ15Aとが、機械式ポンプ14Bを用いてラジエータ12と駆動用モータ11との間で冷却媒体を循環させるサブ回路をなす。サブ回路は、電気式ポンプ14Aに異常が生じたときに利用される補助的な循環回路である。
【0020】
図1に示すように、各分岐パイプ15B,15Cは、共通の分岐箇所(接続箇所)で主パイプ15Aから分岐するとともに、共通の合流箇所(接続箇所)で主パイプ15Aに合流している。
冷却回路13において各分岐パイプ15B,15Cの分岐箇所と合流箇所とのそれぞれには、第一切替弁17Aと第二切替弁17B(切替装置)が付設されている。
各切替弁17A,17Bは、メイン回路を通じて冷却媒体を循環させる第一状態と、サブ回路を通じて冷却媒体を循環させる第二状態とを切り替える切替装置である。
【0021】
各切替弁17A,17Bが第一状態に設定されている場合は、冷却媒体は、メイン回路すなわち、主パイプ15Aと第一分岐パイプ15Bとを通じて循環する。この場合、第二分岐パイプ15Cは主パイプ15Aから遮断され、冷却媒体はサブ回路を流通しない。
各切替弁17A,17Bが第二状態に設定されている場合は、冷却媒体は、サブ回路すなわち、主パイプ15Aと第二分岐パイプ15Cとを通じて循環する。この場合、第一分岐パイプ15Bは主パイプ15Aから遮断され、冷却媒体はメイン回路を流通しない。
【0022】
図1に示す各切替弁17A,17Bの具体例として、三つのパイプ15A,15B、15Cが交差する位置に設けられた三方弁(3-2 Way valve)で構成された場合が挙げられる。
この場合、各切替弁17A,17Bには、主パイプ15Aと第一分岐パイプ15Bとの間を開閉する第一ポートと、主パイプ15Aと第二分岐パイプ15Cの間を開閉する第二ポートとが設けられている。第一状態に設定された場合、各切替弁17A,17Bは、第一ポートを開き、第二ポートを閉じる。一方、第二状態に設定された場合、各切替弁17A,17Bは、第一ポートを閉じ、第二ポートを開く。なお、各切替弁17A,17Bは、非通電状態でリレーをOFFにして、主パイプ15Aと第一分岐パイプ15Bを開放し、通電状態でリレーをONにして、主パイプ15Aと第二分岐パイプ15Cを開放するようにしているが、通電と非通電の状態は逆の構成にしてもよい。
【0023】
また、冷却回路13には、電気式ポンプ14Aの異常を検知するためのセンサ18が設けられている。このセンサ18としては、例えば冷却回路13内の冷却媒体の流量を検出する流量センサが挙げられる。
図1のセンサ18は、第一分岐パイプ15Bにおいて電気式ポンプ14Aの下流側に配設されている。
【0024】
本明細書において、電気式ポンプ14Aの異常とは、電気式ポンプ14Aが正常に動作しないときである。電気式ポンプ14Aが正常に動作している場合、メイン回路(冷却回路13)を冷却媒体が循環するが、電気式ポンプ14Aが正常に動作していない場合、メイン回路を冷却媒体が循環しない。そのため、センサ18として用いる流量センサの検出結果から電気式ポンプ14Aが正常に動作しているか否か、すなわち、電気式ポンプ14Aの異常を検知することが可能である。
なお、電気式ポンプ14Aの異常としては、例えば電気式ポンプ14Aに電力を供給する電気回路のショートや断線といった電気回路の故障や、電気式ポンプ14Aへの異物混入やエア混入などによる電気式ポンプ14A本体の故障などが挙げられる。
【0025】
図1において、制御装置19は、冷却システム10を統括制御するための電子制御装置であり、例えばマイクロプロセッサやROM、RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成されている。
制御装置19の入力側には、センサ18が接続されており、センサ18の検出信号Sが入力される。制御装置19の出力側には、電気式ポンプ14Aと、各切替弁17A,17Bと、クラッチ16とが接続されており、制御装置19から各部14A,17A,17B,16へ制御信号C1,C2,C3,C4が出力される。
【0026】
[2.制御]
図1に示すように、制御装置19には、機能的要素として、判定部19Aと、信号生成部19Bとを有している。
これらの要素19A,19Bは、制御装置19の機能を便宜的に分類して示したものである。これらの要素19A,19Bは、独立したプログラムとして各々を記述することができるとともに、複数の要素19A,19Bを合体させた複合プログラムとして記述することもできる。各要素に相当するプログラムは、制御装置19のメモリや記憶装置に記憶され、プロセッサで実行される。
【0027】
判定部19Aは、センサ18の検出信号Sに基づき、電気式ポンプ14Aに異常が発生しているか否かを判定する。センサ18と判定部19Aとが、電気式ポンプ14Aの異常を検知する検知装置である。
例えば、センサ18が流量センサである場合、判定部19Aは、冷却媒体の流量に基づき、電気式ポンプ14Aに異常が生じているか否かを判定する。具体例として、判定部19Aは、冷却媒体の流量が所定値以上である場合に電気式ポンプ14Aが正常に動作していると判定し、冷却媒体の流量が所定値よりも少ない場合に電気式ポンプ14Aに異常が生じていると判定し得る。所定値は、電気式ポンプ14Aの動作が正常か否かを判定し得る所定の流量として予め設定された値である。この所定値は、シミュレーションや実験等に基づき適宜に設定され得る。
【0028】
信号生成部19Bは、判定部19Aの判定結果に基づき、冷却システム10内の電気式ポンプ14Aと、各切替弁17A,17Bと、クラッチ16とへの制御信号C1,C2,C3,C4を生成する。
制御信号C1,C2,C3,C4は、各部14A,17A,17B,16の動作を制御するための指令である。
【0029】
電気式ポンプ14Aに対する制御信号C1は、電気式ポンプ14Aの動作オンオフを切り替える信号である。電気式ポンプ14Aが正常に動作している場合(すなわち異常が検知されていない場合)、信号生成部19Bは電気式ポンプ14Aに動作オンを指示する制御信号C1を出力する。電気式ポンプ14Aの異常が検知された場合、信号生成部19Bは電気式ポンプ14Aに動作オフを指示する制御信号C1を出力する。
【0030】
各切替弁17A,17Bに対する制御信号C2,C3は、切替弁17A,17Bの第一状態と第二状態とを切り替える信号である。
電気式ポンプ14Aが正常に動作している場合、信号生成部19Bは各切替弁17A,17Bを第一状態に設定する制御信号C2,C3を出力する。電気式ポンプ14Aの異常が検知された場合、信号生成部19Bは各切替弁17A,17Bを第二状態に設定する制御信号C2,C3を出力する。具体的には、第一状態と第二状態とに切り替えるために、各切替弁17A,17の前記リレーを通電状態にするか非通電にするかを行うものである。
【0031】
クラッチ16に対する制御信号C4は、クラッチ16の断接を切り替える信号である。電気式ポンプ14Aが正常に動作している場合、信号生成部19Bはクラッチ16に対して動力の遮断を指示する制御信号C4を出力する。電気式ポンプ14Aの異常が検知された場合、クラッチ16に対して動力の伝達を指示する制御信号C4を出力する。
【0032】
図2は、電気式ポンプ14Aが正常な場合の冷却システム10の説明図である。
この場合、判定部19Aがセンサ18の検出信号Sに基づき、電気式ポンプ14Aが正常に動作していると判定する。
信号生成部19Bは、電気式ポンプ14Aに動作オンを指示する制御信号C1(図中「C1:ON」)を出力する。また、信号生成部19Bは、各切替弁17A,17Bを第一状態に設定する制御信号C2,C3(図中「C2:M」,「C3:M」)を出力するとともに、クラッチ16を遮断する制御信号C4(図中「C4:OFF」)を出力する。
【0033】
これにより、各切替弁17A,17Bが第一状態に設定され、メイン回路すなわち、主パイプ15Aと第一分岐パイプ15Bとを通じて冷却媒体が循環する。図2では、冷却媒体が流通しない第二分岐パイプ15C(サブ回路)を破線で示す。
また、クラッチ16が離れるので、駆動用モータ11から機械式ポンプ14Bへ動力が伝達されない。そのため、機械式ポンプ14Bは動作しない。
【0034】
図3は、電気式ポンプ14Aが正常に動作していない場合の冷却システム10の説明図である。
この場合、判定部19Aがセンサ18の検出信号Sに基づき、電気式ポンプ14Aに異常が生じているものと判定する。
信号生成部19Bは、電気式ポンプ14Aに動作オフを指示する制御信号C1(図中「C1:OFF」)を出力する。また、信号生成部19Bは、各切替弁17A,17Bを第二状態に設定する制御信号C2,C3(図中「C2:S」,「C3:S」)を出力するとともに、クラッチ16をつなぐ制御信号C4(図中「C4:ON」)を出力する。
【0035】
これにより、各切替弁17A,17Bが第二状態に設定され、サブ回路すなわち主パイプ15Aと第二分岐パイプ15Cとを通じて冷却媒体が循環する。図3では、冷却媒体が流通しない第一分岐パイプ15B(メイン回路)を破線で示す。
また、クラッチ16がつながるので、駆動用モータ11から機械式ポンプ14Bへ動力が伝達される。そのため、機械式ポンプ14Bが動作する。
【0036】
[3.作用効果]
以上説明した本実施形態は以下のような作用効果を奏する。
本適用例に係る冷却システム10の冷却回路13には、機械式ポンプ14Bを用いてラジエータ12と駆動用モータ11との間で冷却媒体を循環させるサブ回路が設けられており、電気式ポンプ14Aに異常が生じたときは、機械式ポンプ14Bを用いたサブ回路で冷却媒体を循環させることができる。
そのため、電気式ポンプ14Aに電力を供給する電気回路の故障や電気式ポンプ14A本体の故障などにより、電気式ポンプ14Aが正常に動作しなくなった場合であっても、機械式ポンプ14Bを用いたサブ回路により冷却媒体の循環を継続することができる。よって、電気式ポンプ14Aが正常に動作しなくなった場合であっても、冷却システム10の冷却性能が確保されるので、電動車両は走行することができる。
これにより、電動車両の走行中に電気式ポンプ14Aが故障したとしても、例えば、電動車両が路上で停車(路上故障)することなく整備工場まで自力走行を行う、または安全が確保できる場所まで自力走行を行う、などの対応が可能となる。
【0037】
また、サブポンプである機械式ポンプ14Bは電力を用いずに駆動用モータ11の動力で機械式に駆動されるため、電動車両が走行できさえすれば機械式ポンプ14Bを駆動できる、すなわち冷却システム10の冷却性能が確保される。
【0038】
[4.その他]
上記の冷却システム10において、センサ18の配置位置は、第一分岐パイプ15Bにおける電気式ポンプ14Aの下流側に限定されない。例えば、センサ18の配置位置は、第一分岐パイプ15Bにおける電気式ポンプ14Aの上流側であってもよい。
センサ18は、流量センサに限らず、電気式ポンプ14Aの異常を検知し得るセンサであれば、どのようなセンサであってもよい。
また、第一分岐パイプ15Bや、第二分岐パイプ15C,各切替弁17A,17Bのレイアウトは図示の例に限定されない。
切替弁17A,17Bの構造は、上記の三方弁に限らず、メイン回路を通じて冷却媒体を循環させる第一状態と、サブ回路を通じて冷却媒体を循環させる第二状態とを切り替えることができれば、周知の任意の構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
2L,2R 車輪
10 冷却システム
11 駆動用モータ
11A ケーシング
12 ラジエータ
13 冷却回路
14 ポンプ
14A 電気式ポンプ
14B 機械式ポンプ
15 パイプ
15A 主パイプ
15B 第一分岐パイプ
15C 第二分岐パイプ
16 クラッチ(伝達装置)
17A 第一切替弁(切替装置)
17B 第二切替弁(切替装置)
18 センサ(検知装置)
19 制御装置
19A 判定部(検知装置)
19B 信号生成部
C1 制御信号
C2 制御信号
C3 制御信号
C4 制御信号
S 検出信号
図1
図2
図3