(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012735
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】高周波部品実装ユニット、高周波部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20250117BHJP
H01P 3/08 20060101ALN20250117BHJP
H01P 5/08 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
H01L23/12 301Z
H01P3/08 100
H01P5/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115802
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】赤石 憲道
【テーマコード(参考)】
5J014
【Fターム(参考)】
5J014CA42
5J014CA53
(57)【要約】
【課題】金属ケース内の凹部内に高周波基板と接続された金属板を設けた高周波部品実装ユニットにおいて、金属板や凹部に対する高い加工精度を不要とする。
【解決手段】金属板61の上面側は水平面を構成するが、金属板61の下面側はテーパー形状とされる。具体的には、下面側において、端部側に向かうに従って厚さを減少させるような傾斜面61A、61Bが、図中左右端部側にそれぞれ形成される。金属板61の下面における傾斜面61Aと傾斜面61Bの間の領域は、底面61Cが形成される。凹部の内面の形状も、このような金属板61の下面側の形状に対応した形状とされる。金属板61を凹部中に収容する際には、傾斜面61Aと傾斜面10AA、傾斜面61Bと10AB、底面61Cと底面10ACが、それぞれ対向し、
図2に示された構造が実現される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に高周波部品が実装された基板と、
前記基板の裏面側において前記基板と接合された金属板と、
前記金属板を収容することにより前記高周波部品を内部で固定する凹部を内部の底面に具備し、前記高周波部品を介して高周波信号を水平面内における一方向に沿って内部で伝送させる金属ケースと、
を具備する高周波部品実装ユニットであって、
前記凹部は、底部側の凹部側底面と、前記一方向における端部側において前記凹部側底面から当該端部側に向けて上昇するように水平面から傾斜した凹部側傾斜面と、を具備し、
前記金属板は、前記凹部側底面と対向し前記凹部側底面と平行な金属板側底面と、前記凹部側傾斜面と対向し前記凹部側傾斜面と平行な金属板側傾斜面と、を具備し、
前記金属ケース内において、前記凹部側傾斜面と前記金属板側傾斜面とが当接した状態で前記金属板が前記凹部に収容されたことを特徴とする高周波部品実装ユニット。
【請求項2】
前記凹部側傾斜面及び前記金属板側傾斜面は、前記一方向における両端部側にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項1に記載の高周波部品実装ユニット。
【請求項3】
前記凹部側底面と前記金属板側底面は導電性材料を介して接することを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波部品実装ユニット。
【請求項4】
高周波部品を基板の表側に搭載して金属ケース内に実装する、高周波部品の実装方法であって、
前記金属ケース内において前記高周波部品を介して高周波信号を水平面内における一方向に沿って内部で伝送させ、
前記基板の裏面側において金属板を前記基板と接合し、
前記金属ケース内部の底面に、前記金属板を収容する凹部を形成し、
前記凹部において、底部側の凹部側底面と、前記一方向における端部側において、前記凹部側底面から当該端部側に向けて上昇するように水平面から傾斜した凹部側傾斜面と、を設け、
前記金属板において、前記凹部側底面と対向し前記凹部側底面と平行な金属板側底面と、前記凹部側傾斜面と対向し前記凹部側傾斜面と平行な金属板側傾斜面と、を設け、
前記金属ケース内において、前記凹部側傾斜面と前記金属板側傾斜面とを当接させた状態で前記金属板を前記凹部に収容することを特徴とする、高周波部品の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の伝送経路で用いられる高周波部品を金属ケース中に有する高周波部品実装ユニット、この高周波部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特にミリ波や準ミリ波等の高周波帯の信号に対する動作をする高周波部品(増幅器等)が組み合わされて用いられる際には、複数の高周波部品が、全体をシールドする金属ケース中に実装されて用いられる。このような構成を具備する高周波部品実装ユニットの構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
ここでは、高周波部品は絶縁性の基板の表面に実装された高周波基板の形態とされ、この基板の表面に、信号を伝送させる経路(配線)となるストリップラインも形成される。この基板の裏面側全体にGNDとなる金属層が形成された上で、更に金属板に接合された状態で、金属ケース内の底面である金属ベースに固定される。この金属ケース内には、信号の進行方向に沿って複数の高周波部品が配列され、隣接する基板(高周波基板)上のストリップラインが連結されることによって、各種の高周波回路を実現することができる。
【0004】
図6は、このような高周波部品実装ユニット900の一例の平面的な構成を示す上面図である。ここでは、上面が開口された矩形体形状の箱状の金属ケース910内に高周波領域で機能する増幅素子(高周波部品)21~23が直列に接続されて設置される。金属ケース910には、入力コネクタ31、出力コネクタ32から信号がそれぞれ入力、出力され、入力コネクタ31、出力コネクタ32には外部から同軸ケーブルが接続される。ここで、増幅素子21は基板41に、増幅素子22は基板42に、増幅素子23は基板43に、それぞれ搭載されている。また、ここでは、能動素子は搭載されないが、信号経路としてのみ機能する基板44、45も設けられる。全ての基板は絶縁性材料で構成されるが、基板41、44、45の表面には、信号経路(配線)となるストリップライン50が形成されている。
【0005】
この構成により、入力コネクタ31から入力した高周波信号は増幅素子21、22、23により増幅されて出力コネクタ32から出力される。金属ケース910が接地されることにより、この際のノイズが低減され、安定した動作を行わせることができる。この際、入力コネクタ31と基板41、基板41と基板42、基板42と基板44、基板44と基板43、基板43と基板45、基板45と出力コネクタ32との間は、それぞれピン状の接続端子70で電気的に接合される。
【0006】
ここで、増幅素子の中では増幅素子21が主たる役割を果たすものとし、
図7は、この周囲の構造を詳細に示す分解斜視図である。
図7の上側に示されるように、増幅素子21は、表面にストリップライン50が形成された絶縁性の基板41上に搭載された高周波基板20の形態とされる。基板41の裏面側全面には薄い金属層が形成され、この金属層が接地電位(GND)とされるため、この高周波基板20における接地電位が確保される。
【0007】
この高周波基板20は裏面側で金属板961に導電性接着剤等(図示せず)によって接合された状態で、この金属板961が金属ケース910内の底面に更に導電性接着剤等(図示せず)によって接合される。この際、図示されるように、ネジ80を更に用いて高周波基板20と金属板961との間の接合、金属ケース910と金属板961との間の接合を強固にすることができる。これによって、基板41の裏面側は金属板961、金属ケース910を介して接地電位に保持され、増幅素子21による信号の増幅をノイズの混入を抑制しつつ行わせることができる。
【0008】
この構成では、高周波基板20と金属ケース910との間の接触の状態が信号の伝送特性に影響を及ぼす。例えば、特許文献1に記載されるように、この構成においては、例えば金属板961に反りが存在する場合には、伝送特性は大きく劣化する。このため、特許文献1に記載の技術においては、金属板961と金属ケース910の底面の間に、金属板の接合時に押し潰される金属薄板を挿入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術においては、鉛直方向における高周波基板(金属板)の金属ケースに対する位置関係の精度の劣化による伝送特性の劣化が補償された。一方、
図6に示されたように特に金属ケース内に複数の高周波部品が設けられる場合には、水平方向(信号が伝送される方向)における高周波基板(金属板)の金属ケースに対する位置関係の精度も、伝送特性に影響を与える。
【0011】
図8は、金属ケース910内の構造を示す、
図6におけるA-A方向の断面図である。ここでは、入力コネクタ31、基板41(増幅素子21)、金属板961、基板42(増幅素子22)の金属ケース910内における位置関係が示されている。実際には入力コネクタ31に接続された接続端子70と金属ケース910との間は絶縁されているが、この絶縁のための構造の記載は省略されている。また、
図7における基板41上のストリップライン50の記載も省略されている。
【0012】
特に高周波部品実装ユニット900を量産する際には、基板41(高周波基板20)の金属ケース910内における水平方向の位置を定めることが要求される。このためには、通常知られるように、
図7、
図8に示されるように、金属ケース910の底面において金属板961を収容する凹部910Aを設けることが有効である。理想的には、凹部910A内に金属板961が嵌合するように構成すれば、この位置を高精度で定めることができる。通常は金属板961は板状(薄い矩形体形状)とされるため、凹部910Aもこの形状とされる。
【0013】
しかしながら、実際には、金属板961や凹部910Aには、その加工精度によって寸法のばらつきが存在し、これにより例えば金属板961が凹部910Aの幅よりも長くなった場合には、金属板961(高周波基板20)を金属ケース910内に収容することができない。このため、実際には凹部910Aと金属板961の間には、
図8中の領域X中に示されるような隙間が存在するような設定とされる。すなわち、実際には金属板961は凹部910Aの幅よりも僅かに短く設定され、金属板961は凹部910Aに対して遊嵌した状態となるように設計される。
【0014】
この影響について簡単な計算によって調べた結果について説明する。
図8において、凹部910A内における金属板961の図中左右方向(信号の伝送方向)における左右の隙間をLとし、凹部910Aの深さをDとする。すなわち、ここでは、金属板961の左右に、幅L、深さDの空隙が形成されるものとする。凹部910Aの深さDは金属板961の厚さにほぼ対応し、ここでは3.8mmとする。高周波基板20は、単純に特性インピーダンスが50Ωの線路であるものとし、Lを0~0.3mmとした場合のVSWR(電圧定在波比)を計算した。
【0015】
図9は、信号の周波数が5~15GHzにおけるVSWRを、Lが0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmの場合に算出した結果である。この結果より、信号の伝送方向に沿った金属板961と凹部910Aの内面との間の隙間の幅Lが小さい方がVSWRを一様に1に近くすることができる。ここで、L=0mmは理想的な場合でありVSWRは周波数によらずに1となるが、前記のように現実的にL=0mmは実現が困難である。一方、Lが0.1mmよりも大きくなると、VSWRは1から顕著に上昇する。前記のように金属板961と凹部910Aとの間を遊嵌とした場合には、Lは0.1mm~0.3mmとなりうる。
【0016】
すなわち、凹部910Aの長さを基準にした際に、金属板961が理想的な場合よりも長くなった場合には金属板961を凹部910Aに収容することができず、金属板961が理想的な場合よりも短すぎた場合には伝送特性が大きく劣化した。このため、金属板961、凹部910Aに対して高い加工精度が要求された。
【0017】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、表側に高周波部品が実装された基板と、前記基板の裏面側において前記基板と接合された金属板と、前記金属板を収容することにより前記高周波部品を内部で固定する凹部を内部の底面に具備し、前記高周波部品を介して高周波信号を水平面内における一方向に沿って内部で伝送させる金属ケースと、を具備する高周波部品実装ユニットであって、前記凹部は、底部側の凹部側底面と、前記一方向における端部側において前記凹部側底面から当該端部側に向けて上昇するように水平面から傾斜した凹部側傾斜面と、を具備し、前記金属板は、前記凹部側底面と対向し前記凹部側底面と平行な金属板側底面と、前記凹部側傾斜面と対向し前記凹部側傾斜面と平行な金属板側傾斜面と、を具備し、前記金属ケース内において、前記凹部側傾斜面と前記金属板側傾斜面とが当接した状態で前記金属板が前記凹部に収容されている。
また、前記凹部側傾斜面及び前記金属板側傾斜面は、前記一方向における両端部側にそれぞれ形成されていてもよい。
また、前記凹部側底面と前記金属板側底面は導電性材料を介して接していてもよい。
また、本発明は、高周波部品を基板の表側に搭載して金属ケース内に実装する、高周波部品の実装方法であって、前記金属ケース内において前記高周波部品を介して高周波信号を水平面内における一方向に沿って内部で伝送させ、前記基板の裏面側において金属板を前記基板と接合し、前記金属ケース内部の底面に、前記金属板を収容する凹部を形成し、前記凹部において、底部側の凹部側底面と、前記一方向における端部側において、前記凹部側底面から当該端部側に向けて上昇するように水平面から傾斜した凹部側傾斜面と、を設け、前記金属板において、前記凹部側底面と対向し前記凹部側底面と平行な金属板側底面と、前記凹部側傾斜面と対向し前記凹部側傾斜面と平行な金属板側傾斜面と、を設け、前記金属ケース内において、前記凹部側傾斜面と前記金属板側傾斜面とを当接させた状態で前記金属板を前記凹部に収容する。
【発明の効果】
【0019】
金属ケース内の凹部内に高周波基板と接続された金属板を設けた高周波部品実装ユニットにおいて、金属板や凹部に対する高い加工精度を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の高周波部品実装ユニットにおけるVSWR(電圧定在波比)を、金属板と凹部との間に形成される隙間の深さを0.8mmとし、隙間の幅毎に計算した結果である。
【
図2】実施の形態に係る高周波部品実装ユニットにおいて、金属板の長さが理想的である場合における、金属ケース内の構造を示す部分的な断面図である。
【
図3】実施の形態に係る高周波部品実装ユニットにおける、金属板と、金属ケースの部分的な断面図である。
【
図4】実施の形態に係る高周波部品実装ユニットにおいて、金属板の長さが理想的である場合よりも長い場合における、金属ケース内の構造を示す部分的な断面図である。
【
図5】実施の形態に係る高周波部品実装ユニットの変形例において、金属板の長さが理想的である場合における、金属ケース内の構造を示す部分的な断面図である。
【
図6】高周波部品実装ユニットの一例の平面的な構成を示す上面図である。
【
図7】従来の高周波部品実装ユニットの一例の構成を示す部分的な分解斜視図である。
【
図8】従来の高周波部品実装ユニットの一例における、金属ケース内の構造を示す部分的な断面図である。
【
図9】従来の高周波部品実装ユニットにおけるVSWRを、金属板と凹部との間に形成される隙間の深さを3.8mmとし、隙間の幅毎に計算した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。ここでは、前記のような金属板や凹部の寸法ばらつきが存在しても、金属板と凹部との間の隙間に起因する伝送特性の劣化を抑制するための方策について説明する。
【0022】
図9においては、信号の伝搬方向における金属板961の両端部と凹部910Aの内面との間に形成される隙間の幅Lを0~0.3mm、高さ(深さ)Dを3.8mmとした際の、VSWRのL依存性が示された。ここでは、
図8における隙間の深さ(凹部910Aの深さ)Dを0.8mmと
図9の場合よりも浅くした場合において、
図9と同様の特性を算出した結果を
図1に示す。この結果より、Lが同等であっても、凹部910Aの深さ(隙間の深さ)Dを小さくすることによっても、伝送特性(VSWR)の劣化を小さくすることができる。
【0023】
ただし、前記の通り、
図7、
図8の形態では、凹部910Aの深さは、金属板961の厚さに対応する。この際、金属板961の厚さは数mmとされ、
図1の計算において用いられた0.8mmよりも厚い。このため、例えば凹部をこのように浅くすることは好ましくない。
【0024】
このため、本発明の実施の形態に係る高周波部品実装ユニット、あるいは高周波部品の実装方法においては、金属板とこれに対応した凹部の断面形状が、この隙間の深さが実質的に浅くなるような形状とされる。ここで、前記のように金属板等の寸法には、製造上のばらつきが存在するところ、このように金属板等の長さにばらつきが存在しても、実質的な隙間の幅Lを大きくすることなく、かつ実質的な深さDが小さな状態が保たれる。このため、金属板や凹部の長さにばらつきが存在しても、金属板を凹部に収容する際に、このばらつきに起因する伝送特性の劣化が発生しにくい。
【0025】
図2は、この高周波部品実装ユニット1の一部の断面を示す、
図8に対応した断面図である。ここでは、
図8の場合と同様に、入力コネクタ31、増幅素子(高周波部品)21、基板41、金属板61、基板42(増幅素子22)、金属ケース10、接続端子70が設けられている。
図8と同様に、入力コネクタ31に接続された接続端子70と金属ケース10との間は絶縁のための構造、基板41上のストリップラインの記載は省略されている。
【0026】
図3は、組立前における金属ケース10と金属板61の
図2に対応した形状を示す断面図である。ここで、前記の金属板961は通常の板状(高さ方向で薄い矩形体形状)であり、その上面、下面がそれぞれ水平な平面(水平面)を構成するのに対して、この金属板61の上面側は金属板961同様に水平面を構成するが、金属板61の下面側はテーパー形状とされる。具体的には、下面側において、端部側に向かうに従って厚さを減少させるような傾斜面(金属板側傾斜面)61A、傾斜面(金属板側傾斜面)61Bが、図中左右端部側にそれぞれ形成される。金属板61の下面における傾斜面61Aと傾斜面61Bの間の領域は、金属板961の底面と同様に水平面である底面(金属板側底面)61Cが形成される。傾斜面61A、61Bは共に平面で構成され、水平面が図に示されたように傾斜した構成とされる。このため、
図2においては信号の伝搬方向に沿った1箇所での断面が示されているが、傾斜面61A、61B、底面61Cはそれぞれ紙面と垂直に形成されるため、これらの形状は紙面垂直方向で金属板61のこの方向の幅の範囲にわたり一様である。
【0027】
凹部10Aの内面の形状も、このような金属板61の下面側の形状に対応した形状とされる。すなわち、
図2における左側の端部側において左側に向けて上昇する傾斜面(金属ケース側傾斜面)10AA、右側の端部側において右側に向けて上昇する傾斜面(金属ケース側傾斜面)10ABが形成され、これらの間に水平面である底面(金属ケース側底面)10ACが形成されている。傾斜面10AAの水平からの傾斜角と傾斜面61Aの水平からの傾斜角、傾斜面10ABの水平からの傾斜角と傾斜面61Bの水平からの傾斜角は、それぞれ等しくされる。これにより、金属板61を凹部10A中に収容する際には、傾斜面61Aと傾斜面10AA、傾斜面61Bと10AB、底面61Cと底面10ACが、それぞれ対向し、
図2に示された構造が実現される。
【0028】
図2においては、左右方向(信号の伝搬方向)における、金属板61の底面61Cの長さと、金属ケース10(凹部10A)の底面10ACの長さが等しい理想的な場合が示されている。この場合には、図示されるように、金属板61側の傾斜面61A、61B、底面61Cと、金属ケース10(凹部10A)側の傾斜面10AA、10AB、底面10ACは、それぞれ面接触する。この場合における、
図7における金属板961と凹部910Aの内面との間の隙間に対応する領域Xは、
図7の場合と比べると無視できる程度に小さく、特に隙間の高さDが小さくなる。このため、この場合における伝送特性の劣化は極めて小さい。
【0029】
一方、
図4は、左右方向において、金属板61の底面61Cが、金属ケース10(凹部10A)の底面10ACよりも僅かに長い場合における、
図2と同様の状況が示されている。ここでは、ネジ80の記載は省略されている。この場合においては、底面61Cと底面10ACの間には隙間は形成されるが、傾斜面61A、61Bと傾斜面10AA、10ABが面接触する状況は
図2の場合と変わらない。一方、領域Xにおける隙間は、
図2の場合と同様に小さく、特にその高さDは更に小さくなる。
【0030】
図8の構造の場合には、金属板961が凹部910Aより長い場合には金属板961(高周波基板20)を凹部910A中に収容することができない。このため、金属板961と凹部910Aの内面との間の隙間が存在するような設定とされ、これによって伝送特性の劣化が生じた。これに対し、
図2の構造の場合には、金属板61の長さが理想的な場合(
図2)より長くとも、傾斜面同士を当接させた状態で高周波基板20を凹部10Aに収容することができ、かつ、少なくとも深い隙間が形成されることはないため、この隙間に起因して伝送特性が劣化することはない。このため、金属板61や凹部10Aの加工精度(寸法精度)が悪い場合でも、これに起因する伝送特性の劣化を抑制することができる。あるいは、金属板61あるいは凹部10Aの長さが理想的な場合(底面61Cの長さが底面10ACと等しい場合)から、金属板61の長さがこれよりも僅かに長い場合あるいは凹部10Aがこれよりも僅かに短い場合にかけて、伝送特性の劣化が生じにくい。このため、金属板61、凹部10Aの加工精度に対する許容範囲が広くなる。
【0031】
また、底面61Cと底面10ACとの間を導電性接着剤で接合する、あるいはこれらの間に薄い導電性樹脂材料シートを介在させることにより、
図4の状態における底面61Cと底面10ACとの間の隙間を導電性材料で埋めることができる。仮にこの隙間に起因する伝送特性の劣化がありうる場合にも、これによりこの劣化は抑制できる。あるいは、ネジ80によって金属板61が凹部10A(金属ケース10)に固定されれば、ネジ80によってもこれらの間の電気的接合をとることができるため、同様である。
【0032】
図8に示された従来の構造における左右に形成された幅L、深さDの隙間に対しても同様に導電性接着剤、導電性樹脂材料シートを用いることも不可能ではない。しかしながら、この場合に形成される隙間は基板の上側にある増幅素子等に近接するため、これらによって増幅素子等が悪影響を受けるおそれがあり、実際には適用は困難である。上記の構成においては、問題となる隙間は底面側に形成されるため、この導電性接着剤等により増幅素子等が影響を受けることはなく、この隙間を埋めるために各種の導電性材料を容易に用いることができる。
【0033】
上記の高周波部品実装ユニット1において、前記のような金属板61、凹部10Aにおける傾斜面は
図2等における左右方向(信号の伝搬方向)の左右にそれぞれ設けられたが、このような傾斜面を左右の一方においてのみ設けてもよい。
図5は、本発明の実施の形態に係る高周波部品実装ユニットのこのような変形例となる高周波部品実装ユニット2の構造を
図2に対応させて示す。
【0034】
この場合においては、金属板161の下面側は、図中右側においてのみテーパー形状とされる。具体的には、金属板161の図中左側の側面は鉛直面である側面(金属板側側面)161Aとされ、金属板161の右側においてのみ前記と同様の傾斜面(金属板側傾斜面)161Bが設けられる。金属板161の下面側における傾斜面161B以外の領域は水平面である底面(金属板側底面)161Cとされる。これに対応して、凹部110Aの内面においても、側面161Aに対応した側面(金属ケース側側面)110AA、傾斜面161Bに対応した傾斜面(金属ケース側傾斜面)110AB、底面161Cに対応した底面(金属ケース側底面)110ACが形成されている。
【0035】
図5においては、左右方向(信号の伝搬方向)における、金属板161の底面161Cの長さと、金属ケース110(凹部110A)の底面110ACの長さが等しい理想的な場合が示されている。この場合には、図示されるように、金属板61側の側面161A、傾斜面161B、底面161Cと、金属ケース110(凹部110A)側の側面110AA、傾斜面110AB、底面110ACは、それぞれ面接触する。この場合において、右側の領域X1における隙間は、
図2の場合と同様であり、従来の場合(
図8)よりも小さくなる。一方、左側の領域X2における隙間は、側面161Aと側面110AAとが面接触するために、形成されない。このため、
図2の構造と同様に、この場合には伝送特性の劣化は極めて小さい。
【0036】
一方、
図4の場合と同様に金属板161が
図5の場合よりも僅かに長い場合においては、左側の領域X2において隙間が形成されない状況は変わらず、
図4と同様に右側の領域X1において傾斜面161Bと傾斜面110ABが面接触する状況も変わらない。
図4と同様に底面161Cと底面110ACとの間に隙間が形成されるが、この隙間による伝送特性への悪影響は小さい、あるいは仮に悪影響がある場合においては、この隙間を容易に埋めることができる。このため、この場合においても、金属板161、金属ケース110(凹部110A)の可能精度(寸法精度)に起因して伝送特性が劣化することが抑制される。
【0037】
なお、
図2、
図5の構成において、これらの構造は紙面方向で一様に形成される、すなわち、各傾斜面、各底面等は紙面と垂直な平面として形成されるものとした。しかしながら、金属板側と凹部(金属ケース)側の傾斜面同士、底面同士が対向して当接する場合には、
図2、
図5における各傾斜面、各底面が必ずしも紙面と垂直である必要はない。あるいは、各傾斜面、各底面が平面で構成される必要もない。
【0038】
同様に、上記の構成において、金属板の上面(高周波基板が接合される側の面)は平面であるものとしたが、伝送特性に悪影響を及ぼさない限りにおいて、この上面の構成も任意である。また、金属ケースにおける凹部の内面の形状以外の構成についても同様であり、これは、内部に配置される高周波素子の構成に応じて適宜設定される。
【0039】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0040】
1、2、900 高周波部品実装ユニット
10、110、910 金属ケース
10A、110A、910A 凹部
10AA、10AB、110AB 傾斜面(金属ケース側傾斜面)
10AC、110AC 底面(金属ケース側底面)
20 高周波基板
21、22、23 増幅素子(高周波部品)
31 入力コネクタ
32 出力コネクタ
41~45 基板
50 ストリップライン
61、161、961 金属板
61A、61B、161B 傾斜面(金属板側傾斜面)
61C、161C 底面(金属板側底面)
70 接続端子
110AA 側面(金属ケース側側面)
161A 側面(金属板側側面)