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特開2025-1274波長変換部材およびそれを用いた照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001274
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】波長変換部材およびそれを用いた照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241225BHJP
   H10H 20/855 20250101ALI20241225BHJP
   H10H 20/851 20250101ALI20241225BHJP
   H10H 20/856 20250101ALI20241225BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20241225BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20241225BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241225BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20241225BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241225BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/58
H01L33/50
H01L33/60
G02B5/26
G02B5/28
G02B5/00 Z
F21V9/32
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100775
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】川上 康之
(72)【発明者】
【氏名】前村 要介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 啓次郎
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊介
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
5F142
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA19
2H042AA21
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA19
2H148AA22
2H148AA24
2H148AA25
2H148FA01
2H148FA09
2H148FA15
2H148FA22
2H148FA24
2H148GA01
2H148GA12
2H148GA24
2H148GA32
2H148GA61
5F142AA26
5F142BA32
5F142CA11
5F142CD16
5F142CE06
5F142CE15
5F142DA02
5F142DA14
5F142DA73
5F142DB20
5F142DB30
5F142FA24
5F142FA28
5F142GA21
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】
ナノアンテナを介して出射された光に色ムラが生じることを抑制することが可能な波長変換装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】
励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体を含む平板状の蛍光体部と、蛍光体部の1の面に垂直な方向から見た平面視において、1の面上の複数の領域のそれぞれにおいて格子状の配列パターンを形成するように設けられ、金属材料または誘電体材料から構成される複数のナノアンテナと、を有し、複数の領域のうち1の領域における複数のナノアンテナの配列パターンは、他の領域における複数のナノアンテナの配列パターンを1の面に垂直な軸回りに回転させたパターンである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体を含む平板状の蛍光体部と、
前記蛍光体部の1の面に垂直な方向から見た平面視において、前記1の面上の複数の領域のそれぞれにおいて格子状の配列パターンを形成するように設けられ、金属材料または誘電体材料から構成される複数のナノアンテナと、を有し、
前記複数の領域のうち1の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンは、他の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンを前記1の面に垂直な軸回りに回転させたパターンであることを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
前記複数のナノアンテナは、前記複数の領域のそれぞれにおいて三角格子状の配列パターンを形成するように設けられ、
前記1の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンは、前記他の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンに対して60°の倍数以外の角度で回転させたパターンであることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記複数のナノアンテナは、前記複数の領域のそれぞれにおいて正方格子状の配列パターンを形成するように設けられ、
前記1の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンは、前記他の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンに対して90°の倍数以外の角度で回転させたパターンであることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記複数の領域は、前記平面視において各々が1の方向に沿って配列された短冊状の領域であることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記複数の領域は、前記平面視においてマトリクス状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記蛍光体部の前記1の面に形成され、前記蛍光の波長域における一部波長域の蛍光成分を反射するように構成された誘電体多層膜を有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記蛍光は480~700nmの波長域を有し、
前記誘電体多層膜は、480~530nmの波長域の蛍光成分を反射するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の波長変換装置。
【請求項8】
前記誘電体多層膜は、前記蛍光成分に対して60%以下の反射率を有することを特徴とする請求項7に記載の波長変換装置。
【請求項9】
前記複数のナノアンテナは、前記複数の領域のそれぞれにおいて420nm以上520nm以下の周期で配されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項10】
前記複数のナノアンテナは、前記複数の領域のそれぞれにおいて円柱状又は円錐状若しくは円錐台状を有しかつ底面の径が前記周期の75%以上85%以下であることを特徴とする請求項9に記載の波長変換装置。
【請求項11】
前記複数のナノアンテナは、前記複数の領域のそれぞれにおいて225nm以上325nm以下の高さを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の波長変換装置。
【請求項12】
請求項1に記載の波長変換装置と、
前記蛍光体部の前記1の面と反対の他の面に向けて前記励起光を出射する光源と、
を有することを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材およびそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズのアンテナ(以下、ナノアンテナと称する)を用いて出射光のコリメート化をなす装置が開示されている。例えば、特許文献1には、青色光を出射する光源と光源から出射された光によって励起されて蛍光を発する蛍光体層と蛍光体層の上面に格子状に設けられた複数のナノアンテナとを有する照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-13688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のような照明装置から出射された光を照明装置から離れた位置に設けられたスクリーンに照射した場合、蛍光体層から放出された蛍光のうち一部の波長域の蛍光成分がナノアンテナの作用によって強く増強されるために、スクリーンに照射された光に色ムラが生じてしまうという問題点が挙げられる。
【0005】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、ナノアンテナを介して出射された光に色ムラが生じることを抑制することが可能な波長変換装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による波長変換装置は、励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体を含む平板状の蛍光体部と、前記蛍光体部の1の面に垂直な方向から見た平面視において、前記1の面上の複数の領域のそれぞれにおいて格子状の配列パターンを形成するように設けられ、金属材料または誘電体材料から構成される複数のナノアンテナと、を有し、前記複数の領域のうち1の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンは、他の領域における前記複数のナノアンテナの配列パターンを前記1の面に垂直な軸回りに回転させたパターンであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に係る照明装置の上面図である。
図2】実施例1に係る照明装置の断面図である。
図3】実施例1に係る照明装置から出射された光をスクリーンに照射した際の状態を模式的に示す図である。
図4】実施例1に係る照明装置において蛍光体部から出射される蛍光の出射角度を変えたときの種々の回折線を示すグラフである。
図5】可視光の波長域の光に対する視感度を示すグラフである。
図6】実施例1の変形例に係る照明装置の上面図である。
図7】実施例2に係る照明装置の断面図である。
図8】実施例2に係る照明装置における誘電体多層膜の可視光に対する反射率を示すグラフである。
図9】蛍光体部における蛍光体の励起光に対するスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照して具体的に説明する。なお、図面において同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例0009】
[実施例1の照明装置]
図1及び図2を用いて、実施例1に係る照明装置100の構成について説明する。図1は、実施例1に係る照明装置100の上面図である。また、図2は、図1における照明装置100の2-2線に沿った断面図である。なお、図1中左右方向が照明装置100の幅方向であり、図2中上下方向が照明装置100の高さ方向である。
【0010】
照明装置100は、実装基板11と実装基板11上に設けられた発光層を含む発光素子12と発光素子12上に設けられ、上記発光層から放出された光を受けて蛍光を発する蛍光体部を含む波長変換装置13とを含んで構成される。
【0011】
[実装基板]
まず、実装基板11について説明する。実装基板11は、上面形状が矩形を有する平板状の基板である。実装基板11は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)や酸化アルミニウム(Al)等の、発光素子12の駆動時に生じる熱を効率的に逃がすことが可能な高い熱伝導率と電気絶縁性とを有する材料からなる。
【0012】
[発光素子]
次に、光源としての発光素子12の構成について説明する。発光素子12は、実装基板11の上面に設けられており、上面形状が矩形の発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)である。
【0013】
発光素子12は、発光層を有する半導体構造層15と半導体構造層15の上面に配された支持基板16と半導体構造層15の下面に配されかつ実装基板11に接合されたp電極17及びn電極18とを含んで構成されている。すなわち、発光素子12は、実装基板11にフリップチップ実装されている。
【0014】
半導体構造層15は、各々が窒化ガリウム(GaN)を主材料とするn型半導体層、発光層及びp型半導体層(いずれも図示せず)からなる半導体積層体である。発光素子12の駆動時には、半導体構造層15の発光層からピーク波長が450nmの青色光が出射される。
【0015】
支持基板16は、上面形状が矩形の平板状の基板である。支持基板16は、例えばサファイア(Al)やGaN等の、半導体構造層15の発光層から放出される青色光に対して透光性を有する材料からなる。支持基板16の上面は、半導体構造層15の発光層から放出された青色光が発光素子12から出射される際の光出射面である。
【0016】
p電極17は、半導体構造層15のp型半導体層と電気的に接続されている電極である。p電極17は、実装基板11の上面に形成されているp側配線(図示せず)に導電性の接合部材(図示せず)を介して接合されている。
【0017】
n電極18は、半導体構造層15の発光層及びp型半導体層を上下方向に貫通しかつ側面が絶縁体で覆われた貫通電極(図示せず)を介して、n型半導体層と電気的に接続されている電極である。言い換えれば、n電極18は、n型半導体層のみに電気的に接続され、発光層及びp型半導体層と絶縁されている。n電極18は、実装基板11の上面に形成されているn側配線(図示せず)に導電性の接合部材(図示せず)を介して接合されている。
【0018】
[波長変換装置]
次に、波長変換装置13の構成について説明する。波長変換装置13は、発光素子12から出射された光を受けて波長の異なる蛍光を発する波長変換機能を有する装置である。波長変換装置13は、蛍光体部21と蛍光体部21上に形成された複数のナノアンテナ22とを含んで構成される。
【0019】
蛍光体部21は、上面形状が矩形を有する板状体である。蛍光体部21は、照明装置100を上から見た平面視において、発光素子12の支持基板16の外縁と重なるように支持基板16の上面に設けられている。
【0020】
蛍光体部21は、発光素子12から出射される励起光としての青色光によって励起されて蛍光を発する蛍光体からなる。青色光によって励起された際に蛍光体から生じる蛍光は、480~700nmに亘るブロードな緑色~橙色の波長域を有し、520~570nmにおいて黄色のピーク波長を有する。
【0021】
蛍光体部21は、例えば、セリウム(Ce)を賦活剤としたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体からなる単結晶の透明なセラミックス蛍光体プレートである。
【0022】
なお、蛍光体部21は、単結晶のYAG:Ce蛍光体から構成される蛍光体プレートに限らないが、内部で散乱の生じにくい構成であることが好ましい。そのため、単一材料からなる単相の蛍光体プレートであることが好ましく、この場合において、多結晶であっても良い。
【0023】
蛍光体部21に発光素子12から出射された青色光が入射すると、その一部はそのまま蛍光体部21を透過し、一部は蛍光体を励起することで当該励起された蛍光体から蛍光が発せられる。
【0024】
従って、蛍光体部21の上面からは、蛍光の発生に寄与せずに蛍光体部21を通過した励起光と、蛍光体から放出された蛍光とが出射される。これにより、照明装置100からは蛍光体部21の上面から出射する青色光と黄色蛍光とが混じり合った白色光が取り出される。
【0025】
ナノアンテナ22は、ナノサイズの微小な柱状または錘状の突起である。本実施例において、ナノアンテナ22は、蛍光体部21の上面に形成されている円柱状の構造体である。蛍光体部21の上面において、ナノアンテナ22は、複数形成され、それらが所定周期で配列している。ナノアンテナ22は、蛍光体部21の蛍光体から放出される蛍光のピーク波長よりも小さい周期で配列される。
【0026】
ナノアンテナ22は、図1に示すように、蛍光体部21の上面において第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3の3つの領域に分かれて形成されており、当該3つの領域のそれぞれにおいて三角格子状の配列パターンを有している。
【0027】
第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3は、蛍光体部21の上面に垂直な方向から見た平面視において各々が図1中左右方向を長手方向とする短冊状を有しており、図1中上下方向に沿ってこの順で設けられている。
【0028】
第1の領域A1におけるナノアンテナ22は、ナノアンテナ22の各々が配列線AL1に沿って配列されることで三角格子状の配列パターンを形成している。配列線AL1は、後述する第2の領域A2及び第3の領域A3におけるナノアンテナ22の配列パターンの基準となる線である。
【0029】
第2の領域A2におけるナノアンテナ22は、ナノアンテナ22の各々が配列線AL2に沿って配列されることで三角格子状の配列パターンを形成している。配列線AL2は、配列線AL1に平行な参照線RLと角度θA2を有している。
【0030】
言い換えれば、第2の領域A2におけるナノアンテナ22の配列パターンは、第1の領域A1におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに角度θA2だけ回転させたパターンである。照明装置100において、角度θA2は60°の整数倍以外の角度であり、例えば19°である。
【0031】
第3の領域A3におけるナノアンテナ22は、ナノアンテナ22の各々が配列線AL3に沿って配列されることで三角格子状の配列パターンを形成している。配列線AL3は、上述した参照線RLと角度θA3を有している。
【0032】
言い換えれば、第3の領域A3におけるナノアンテナ22の配列パターンは、第1の領域A1におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに角度θA3だけ回転させたパターンである。照明装置100において、角度θA3は60°の整数倍以外の角度かつ角度θA2と異なる角度であり、例えば41°である。
【0033】
ナノアンテナ22の各々は、図2に示すように互いに同一の周期Pで形成されている。ナノアンテナ22の周期Pは、上述した蛍光体部21の蛍光体から放出される蛍光のピーク波長よりも小さい周期であることが好ましく、例えば420nm~520nmであることが好ましい。
【0034】
また、ナノアンテナ22の各々は、互いに同一の径Wを有している。ナノアンテナ22の径Wは、例えば上述した周期Pの75%~85%であることが好ましい。具体的には、例えば周期Pが500nmであるとき、ナノアンテナ22の径Wは375nm~425nmである。
【0035】
また、ナノアンテナ22の各々は、互いに同一の蛍光体部21の上面からの高さHを有している。ナノアンテナ22の高さHは、例えば225nm~325nmであることが好ましい。
【0036】
ナノアンテナ22の各々は、誘電体材料または金属材料から構成される。誘電体としてより具体的には、ナノアンテナ22は、可視光領域の波長の光を吸収しにくくかつ屈折率が高い材料で構成される。例えば、ナノアンテナ22は、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化ランタン(La)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)等の透明な誘電体材料からなる。
【0037】
ナノアンテナ22は、空気との屈折率差が大きい方が散乱効率が高くなるため、屈折率が高い方が好ましく、特に屈折率1.9以上のものが好ましい。金属材料としてより具体的には、ナノアンテナ22は、表面プラズモン共鳴のプラズマ周波数を有する材料、並びにこれらを含む合金又は積層体で構成される。例えば、ナノアンテナ22は、表面プラズモン共鳴のプラズマ周波数を有する材料として、ナノアンテナ22は、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pt(プラチナ)、Pd(パラジウム)、Al(アルミニウム)及びNi(ニッケル)等の金属材料からなる。
【0038】
なお、上記した周期P、径W、高さH及びナノアンテナ22の構成材料については、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3のそれぞれにおけるナノアンテナ22において全て共通である。
【0039】
ここで、ナノアンテナ22による光の狭角化作用について説明する。蛍光体部21の上面に蛍光が臨界角以上の角度で到達すると、蛍光は蛍光体部21の上面で全反射される。全反射が起きた際には、蛍光体部21の上面から低屈折率媒質側へしみ出すエバネッセント波が生ずる。このエバネッセント波は、蛍光体部21の上面に沿って、言い換えれば蛍光体部21と空気との界面に沿って伝播する。
【0040】
蛍光体部21の上面に沿って伝播したエバネッセント波は、ナノアンテナ22に達すると、上記した周期Pによって決まる回折条件に適合した方向に蛍光と同波長の可視光の形で放射される。この現象により、蛍光が回折条件に適合した角度範囲に発せられ、蛍光体部21の上面から出射される蛍光の狭角化が促される。ナノアンテナ22による蛍光の狭角化とは、例えば、ナノアンテナ22の作用によって±30°以内の配光角度で出射される蛍光が増加させられることを指し示す。
【0041】
なお、図1及び図2に示した各領域におけるナノアンテナ22の配置態様は、ナノアンテナ22を説明するために模式的に示したに過ぎない。蛍光体部21は例えば1mm角であり、その場合、ナノアンテナ22は、図1及び図2に示しているものよりも多く設けられている。
【0042】
[照明装置から出射された光の色ムラの抑制]
ここで、図3図5を用いて、本実施例における照明装置100から出射された光の色ムラの抑制について説明する。
【0043】
図3は、本実施例の照明装置100から出射された光を照明装置100から離れた場所に位置するスクリーンSに照射した際の状態を模式的に示す図である。図3において、スクリーンS上には、照明装置100から出射された光が照射されることで円状の照射パターンIPが形成されている。照射パターンIPは青色光と黄色蛍光とが混じり合った白色光のパターンである。
【0044】
また、スクリーンS上には、照射パターンIPに重なるように、照射パターンIPの中心から輝線が60°ごとに放射状に広がっている輝線パターンBP1(図中破線)、輝線パターンBP2(図中点線)及び輝線パターンBP3(図中一点鎖線)がそれぞれ表れている。
【0045】
ここで、図4を参照しつつ図3に示した輝線パターンについて説明する。輝線パターンBP1、輝線パターンBP2及び輝線パターンBP3の各々は、ナノアンテナ22によって増強された特定の波長域の蛍光成分が、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3のそれぞれにおけるナノアンテナ22の配置態様に起因して表れたものである。
【0046】
図4は、回折次数が(m,m(m,mは整数))で表される回折条件において、蛍光体部21の上面から出射される蛍光の出射角度θemごとに算出される波長をプロットした結果を示すグラフである。図4においては、YAG:Ce蛍光体からなる蛍光体部21の上面にTiO(屈折率2.4)からなるナノアンテナ22を420nmの周期Pで形成したものをモデルとしている。なお、蛍光体部21の上面に垂直な方向に出射される蛍光の出射角度θemを0°としている。
【0047】
図4において斜線で示した領域は、蛍光体部21内で生じて蛍光体部21の上面に達した蛍光がナノアンテナ22によって増強される領域である。特に、図中二点鎖線で示した領域HAは、ナノアンテナ22によって蛍光が強く増強される領域である。
【0048】
具体的には、蛍光体部21の上面に達した蛍光のうち480~550nmの波長の蛍光成分が20°~40°の出射角度θemで出射された際に強く増強される。この480~550nmの波長は可視光のうち緑色の波長域に相当する。すなわち、照明装置100においては、緑色の蛍光成分が上記した角度で蛍光体部21の上面から出射された際にナノアンテナ22によって強く増強される。
【0049】
図5は、可視光の波長域において人の目が光を感じ取る強さの度合を示す視感度を表すグラフである。図5に示すように、可視光の波長域における視感度は、550nm近傍の黄色光をピークとして緑色~橙色の波長域において高くなる傾向を示している。
【0050】
再び図3を参照する。上述したように、蛍光体部21内にて生じた蛍光のうち蛍光体部21の上面から20°~40°の出射角度θemで出射された緑色の蛍光成分は、ナノアンテナ22によって強く増強される。
【0051】
従って、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3のそれぞれにおいてナノアンテナ22によって増強された緑色の蛍光成分は、各領域において三角格子状に配列されたナノアンテナ22の配列方向に沿った輝線パターン、すなわち60°ごとに輝線が放射状に広がった輝線パターンBP1、輝線パターンBP2及び輝線パターンBP3となってスクリーンS上にそれぞれ表れる。
【0052】
上述したように、第2の領域A2及び第3の領域A3におけるナノアンテナ22の配列パターンは、第1の領域A1におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに互いに異なる角度で回転させたパターンである。本実施例の照明装置100によれば、ナノアンテナ22がこのような配置態様を有することにより、照明装置100から出射された光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0053】
ここで、例えば、照明装置100において、ナノアンテナ22が一様に第1の領域A1におけるナノアンテナ22の配置態様を有している場合、言い換えれば第2の領域A2及び第3の領域A3における配列パターンが回転していない場合、スクリーンS上に表れるのは1つの輝線パターンのみとなる。言い換えれば、スクリーンS上には、輝線パターンBP1、輝線パターンBP2及び輝線パターンBP3が互いにずれなく重なった状態で表れる。
【0054】
スクリーンSにおいて輝線パターン同士がこのように重なっている場合、図5に示した可視光領域における視感度の高さも相まって、人の目から見た際に輝線パターンが表れている部分とそうでない部分との色味の差が大きくなる。具体的には、照射パターンIPが白色であるのに対して互いに重なった輝線パターンは強い緑色を示す。従って、照明装置100からスクリーンSに照射された光には色ムラが強く表れ得る。
【0055】
本実施例の照明装置100によれば、第2の領域A2及び第3の領域A3における配列パターンは第1の領域A1における配列パターンをそれぞれ角度θA2及び角度θA3だけ回転させたものであるために、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域のそれぞれにおけるナノアンテナ22の配列方向は、照明装置100を上から見た平面視において互いに異なっている。
【0056】
従って、スクリーンS上に表れる輝線パターンBP2は、第2の領域A2における配列パターンを回転させた角度θA2だけ輝線パターンBP1からずれている。同様に、スクリーンS上に表れる輝線パターンBP3は、第3の領域における配列パターンを回転させた角度θA3だけ輝線パターンBP1からずれている。すなわち、輝線パターンBP1、輝線パターンBP2及び輝線パターンBP3は、図3に示すようにスクリーンS上において互いに重ならない態様となっている。
【0057】
従って、本実施例の照明装置100によれば、領域ごとにナノアンテナ22の配置態様を変えることで輝線パターンが互いに重ならないために、ナノアンテナ22が一様な配置態様を有している場合と比べて色ムラを目立ちにくくすることができる。
【0058】
言い換えれば、ナノアンテナ22の配列方向が領域ごとに異なることでスクリーンS上において輝線が細かく分散されるために、スクリーンSに照射された光に色ムラが生じにくくなる。よって、本実施例の照明装置100によれば、ナノアンテナ22を介して照明装置100から出射された光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0059】
なお、本実施例の照明装置100から出射された光は、上述したようなナノアンテナ22を全て一様な配置態様とした場合の照明装置から出射された光と比べて同様の光束を有している。例えば、ナノアンテナ22を全て一様な配置態様とした場合の照明装置から出射された光の光束は231lm/Wであるのに対し、本実施例の照明装置100から出射された光の光束は232lm/Wであった。
【0060】
従って、本実施例の照明装置100によれば、照明装置100から出射される光の光束を維持しつつ当該光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0061】
なお、本実施例の照明装置100において、図1に示した第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3の3つの領域は一例に過ぎず、出射光に色ムラが生じることを抑制することが可能であれば領域の数及び領域ごとに形成されるナノアンテナ22の数は限定されない。例えば、第1の領域A1と第2の領域A2の2つのみであってもよい。
【0062】
また、例えば、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3の並びを1セットとしてこれを蛍光体部21の上面において複数セット形成する態様としてもよい。このとき、領域全体に占める各領域の数はなるべく均等に分けられていることが好ましい。
【0063】
なお、単位領域あたりの大きさは、少なくとも10周期分のナノアンテナ22を形成可能なサイズであることが好ましく、例えば各格子軸方向に単位領域の一辺が5μm以上を有していることが好ましい。
【0064】
本実施例の照明装置100において、第2の領域A2における配列パターンの回転角である角度θA2は19°であり、第3の領域A3における配列パターンの回転角である角度θA3は41°であるとしたが、ナノアンテナ22が三角格子状の配列パターンを有する場合には60°の倍数以外の角度を有していればよく、これに限られない。例えば、角度θA2を5°とし、角度θA3を50°としてもよい。
【0065】
なお、隣り合う領域同士の回転角度の差は、20°ごと、好ましくは10°ごと、より好ましくは5°以下ごとにするのが望ましい。隣り合う領域同士で角度差をなるべくなくすように配置することにより、隣り合う領域のそれぞれにおいてなるべく多くのナノアンテナ22を形成することができる。
【0066】
本実施例の照明装置100において、ナノアンテナ22は、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3のそれぞれにおいて三角格子状の配列パターンを有するとしたが、これに限られず、例えば正方格子状の配列パターンを有していてもよい。
【0067】
ナノアンテナ22が各領域において正方格子状の配列パターンを有する場合、スクリーンに照射された照明装置100からの出射光の照射パターンIPには、輝線が90°ごとに放射状に表れる輝線パターンによって色ムラが生じ得る。従って、このような場合には、上述した角度θA2及び角度θA3を互いに異なる角度としつつ90°の倍数以外の角度とすることにより、出射光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0068】
本実施例の照明装置100において、ナノアンテナ22は、円柱状を有するとしたがこれに限られず、他の形状を有していてもよい。例えば、ナノアンテナ22は、円錐や円錐台形状を有していてもよい。この場合、円錐又は円錐台形状を有するナノアンテナの底面の径が上述したナノアンテナ22の径Wに相当する。
【0069】
本実施例の照明装置100において、波長変換装置13は、光源としての発光素子12からの励起光を受けて蛍光を発するとしたが、光源はこれに限られず、例えばレーザ光を発するレーザ光源を用いてもよい。その場合、照明装置100において、波長変換装置13と光源とが分離されて構成されているとしてもよい。
【0070】
[波長変換装置の作製方法]
以下に、図1及び図2を用いて、本実施例における照明装置100の波長変換装置13の作製方法について説明する。
【0071】
まず、電子ビーム蒸着やスパッタリング成膜により、平板状の蛍光体部21の上面に亘ってTiOの透明誘電体からなる誘電体層を形成する。このとき、誘電体層の厚みがナノアンテナ22の高さHとなる。
【0072】
次に、蛍光体部21の上面に形成した誘電体層上にアルミニウム(Al)からなる金属膜を形成し、当該金属膜上に樹脂からなるレジスト膜を塗布する。その後、複数の孔が設けられたナノインプリント用モールドを用いて、当該モールドをレジスト膜に圧着させた後に剥離することで、レジスト膜に対して所望のパターニングを実施する。
【0073】
当該パターニングにおいては、ナノインプリント用モールドにおける複数の孔の各々の周期及び径を上述したナノアンテナ22の周期P及び径Wに合わせることにより、本実施例におけるナノアンテナ22の配置態様に応じた形状のレジスト膜を形成することができる。
【0074】
このとき、上述した第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3ごとにナノインプリント用モールドを所定の角度に回転させつつパターニングを実施することにより、第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3のそれぞれにおけるナノアンテナ22の配置態様に応じた形状のレジスト膜を形成することができる。
【0075】
次に、パターニングされたレジスト膜をマスクとして、ナノアンテナ22を形成しない領域の金属膜をドライエッチングによりエッチングすることにより、誘電体層をエッチングするためのメタルマスクを形成する。
【0076】
続いて、メタルマスクが形成された誘電体層をドライエッチングによりエッチングする。例えば、金属膜がAlからなり、透明誘電体がTiOからなる場合には、金属膜に対しては塩素(Cl)及びアルゴン(Ar)のエッチングガスを使用し、透明誘電体に対しては四フッ化炭素(CF)、Ar及び酸素(O)等のエッチングガスを使用する。
【0077】
最後に、上記工程において残ったメタルマスクをドライエッチング又はウェットエッチングにより取り除くことにより、上述した配置態様を有するナノアンテナ22を備える波長変換装置13を作製することができる。
【0078】
なお、金属膜がAlからなり、透明誘電体がTiOからなる場合に、CF、Ar及びOのエッチングガスを用いて誘電体層のドライエッチングを行うと、金属膜も部分的にエッチングされる。従って、誘電体層上において金属膜の厚みを予め薄く形成するとエッチング時に誘電体層の端部から金属膜及び誘電体層が除去されていくために、当該方法によって円錐形状や円錐台形状を有するナノアンテナを形成することができる。
【0079】
[照明装置の変形例]
以下に、図6を用いて実施例1に係る照明装置100の変形例について説明する。図6は、実施例1の変形例に係る照明装置110の上面図である。照明装置110は、ナノアンテナ22の配置態様が実施例1と異なっており、それ以外の点、例えばナノアンテナ22の周期Pや径W、高さHなどは実施例1と同様である。
【0080】
本変形例の照明装置110において、ナノアンテナ22は、マトリクス状に設けられた第4の領域A4~第12の領域A12の9つの領域のそれぞれにおいて三角格子状の配列パターンで形成されている。第5の領域A5~第12の領域A12のそれぞれにおけるナノアンテナ22の配列パターンは、第4の領域A4における配列パターンに対して蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに互いに異なる回転角度で回転している。
【0081】
第4の領域A4におけるナノアンテナ22は、上述した第1の領域A1におけるナノアンテナ22と同様の配置態様を有しており、配列線AL4に沿って配列されることで三角格子状の配列パターンを有している。
【0082】
また、第5の領域A5~第12の領域A12のそれぞれにおけるナノアンテナ22は、配列線AL5~AL12に沿ってそれぞれ配列されることで三角格子状の配列パターンを有している。配列線AL5~AL12の各々は、配列線AL4に平行な参照線(図6には図示せず)と7°の倍数の角度を有している。なお、当該角度は領域ごとに異なっておりかつ60°の倍数以外の角度である。
【0083】
言い換えれば、第5の領域A5~第12の領域A12のそれぞれにおけるナノアンテナ22の配列パターンは、第4の領域A4におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに7°の倍数の角度だけ回転させたパターンとなっている。
【0084】
具体的には、例えば、第5の領域A5におけるナノアンテナ22の配列パターンは、第4の領域A4におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに7°回転させたパターンであり、第6の領域A6におけるナノアンテナ22の配列パターンは、第4の領域A4におけるナノアンテナ22の配列パターンを蛍光体部21の上面に垂直な軸回りに14°回転させたパターンである。
【0085】
すなわち、照明装置110を上から見た平面視において、第5の領域A5~第12の領域A12において隣り合う領域におけるナノアンテナ22の配列パターンは互いに7°の回転角度を有している。
【0086】
本変形例の照明装置110のように、マトリクス状に設けられた領域のそれぞれにおいてナノアンテナ22の配列パターンを回転させた態様とした場合においても、ナノアンテナ22を介して照明装置110から出射された光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0087】
なお、本変形例の照明装置110において、第5の領域A5~第12の領域A12におけるナノアンテナ22の配列パターンは、互いに異なる角度で回転しているとしたが、全ての領域で異なっている必要はなく、複数の領域が同じ角度を有する態様としてもよい。例えば、それぞれ7°、28°、49°の角度で回転している配列パターンを有する領域が3つずつある態様としてもよい。
【実施例0088】
[実施例2の照明装置]
次に、図7図9を用いて、実施例2に係る照明装置200の構成について説明する。図7は、図1の2-2線と同様の位置に沿った照明装置200の断面図である。照明装置200は、波長変換装置13が多層膜反射鏡23を有する点で実施例1と異なっており、それ以外の点、例えば第1の領域A1~第3の領域A3におけるナノアンテナ22の配置態様は実施例1と同様である。
【0089】
多層膜反射鏡23は、蛍光体部21の上面に亘って形成されており、相対的に低屈折率を有する誘電体材料と高屈折率を有する誘電体材料とが互いに複数積層されて構成されている反射鏡である。多層膜反射鏡23の上面には、実施例1に示した態様でナノアンテナ22の各々が形成されている。
【0090】
多層膜反射鏡23は、例えば、低屈折率の誘電体材料として酸化ケイ素(SiO)やAlが用いられ、高屈折率の誘電体材料としてTiO、ZrO、Nb、La、Ta、HfOが用いられる。
【0091】
照明装置200において、多層膜反射鏡23は、可視光領域の光のうち緑色の波長域の光を所定の反射率で反射し、それ以外の波長の光を透過させる。すなわち、多層膜反射鏡23は、蛍光体部21にて生じた蛍光のうち緑色の波長域の蛍光成分のみを反射し、緑色の波長域以外の蛍光成分及び蛍光体部21を透過してきた励起光としての青色光を透過させる。
【0092】
図8は、多層膜反射鏡23における可視光の波長の光に対する反射率の一例を示すグラフである。図8に示すように、多層膜反射鏡23は、およそ480~530nmの緑色の波長域の光に対して60%以下の反射率を有している。
【0093】
従って、本実施例の照明装置200においては、多層膜反射鏡23が蛍光体部21の上面に亘って形成されていることにより、上述した色ムラの要因となり得る緑色の波長域の蛍光が多層膜反射鏡23に到達した際に、当該蛍光の一部を蛍光体部21内へと反射させることができる。
【0094】
図9は、蛍光体部21における蛍光体の励起光に対する励起スペクトルを示すグラフである。図9において、横軸は波長を示しており、縦軸は強度を示している。図9において、一点鎖線にて示した領域は、緑色の波長域の光を示す領域である。図9に示すように、緑色の波長域の光は、青色光に比べて強度が低下しているものの蛍光体部21の蛍光体を励起し得る。
【0095】
従って、本実施例の照明装置200においては、蛍光体部21の上面に緑色の波長域の蛍光成分を反射させる多層膜反射鏡23を形成することにより、多層膜反射鏡23によって反射された当該蛍光成分を再び蛍光体部21の蛍光体を励起させる励起光として用いることができる。
【0096】
よって、本実施例の照明装置200によれば、ナノアンテナ22の配列パターンを領域ごとに回転させることによる出射光の色ムラの抑制効果に加えて、多層膜反射鏡23により緑色の波長域の蛍光成分の一部が蛍光体部21から出射されることを防ぐことによっても出射光の色ムラを抑制することができる。従って、本実施例の照明装置200によれば、ナノアンテナ22を介して照明装置200から出射された光に色ムラが生じることを抑制することができる。
【0097】
なお、多層膜反射鏡23の緑色の波長域の光に対する反射率は、上述した反射率に限られず適宜設定してもよい。当該反射率は、例えば、ナノアンテナ22の配列パターンごとの領域の数に応じて設定してもよく、照明装置200から出射された光の光束が低下しない程度に適宜調整してもよい。
【符号の説明】
【0098】
100、110、200 照明装置
11 実装基板
12 発光素子
13 波長変換装置
15 半導体構造層
16 支持基板
17 p電極
18 n電極
21 蛍光体部
22 ナノアンテナ
23 誘電体多層膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9