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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012743
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】自動ドア
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/48 20060101AFI20250117BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20250117BHJP
【FI】
E05D15/48 B
E05F15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115814
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000199201
【氏名又は名称】千蔵工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政利
(72)【発明者】
【氏名】田代 和史
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA18
2E052EB01
2E052EC03
2E052KA06
(57)【要約】
【課題】通常開閉動作時にはスライドドアがFIXドアに沿って走行し、全開放動作時にはFIXドアとスライドドアが室外方向に回動される全開放(フルオープン)型の自動ドアにおいて、スライドドアの上下の回動軸の位置ずれを防止し回動時の動作を安定させる。
【解决手段】全開放時にスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸をそれぞれ所定の位置に係止するスライドドア上部回動軸係止部とスライドドア下部係止部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両縦枠間にFIXドアとスライドドアを配設し、通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時には前記スライドドアが前記FIXドアに沿って閉位置から通常開位置の範囲で開閉し、全開放動作時には前記スライドドアが前記通常開位置より更に開方向の全開位置まで移動すると、FIXドア回動ロック部による前記FIXドアの回動の規制とスライドドア回動ロック部による前記スライドドアの回動の規制がともに解除されて、前記FIXドアをFIXドア上部回動軸とFIXドア下部回動軸を中心に回動できるとともに、前記スライドドアをスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸を中心に回動できる自動ドアにおいて、
前記全開位置で、前記スライドドア上部回動軸を所定の位置に位置させるスライドドア上部回動軸係止部と、前記スライドドア下部回動軸を所定の位置に位置させるスライドドア下部回動軸係止部と、
を具備することを特徴とする自動ドア。
【請求項2】
前記スライドドアは、前記スライドドアの開閉に伴い下レールに沿って移動する振れ止めにより、前記スライドドアがその下部に固定された前記スライドドア下部回動軸回りに回動可能に支持され、
前記スライドドア下部回動軸係止部は、前記全開位置で前記振れ止めを前記下レール内の所定の位置に係止することで、前記スライドドア下部回動軸を所定の位置に位置させることを特徴とする請求項1に記載の自動ドア。
【請求項3】
前記スライドドア下部回動軸係止部は、
前記FIXドア側の縦枠近傍の前記下レール内に配設され、前記スライドドアが前記全開位置まで移動したとき、前記振れ止めの更なる開方向への移動を規制して所定の位置で停止させるストッパ部と、
前記全開位置で前記振れ止めの閉方向への移動を規制して所定の位置に係止する板ばねと、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の自動ドア。
【請求項4】
前記振れ止めは凹部を、前記板ばねは凸部をそれぞれ有し、
前記全開位置で前記凹部と前記凸部が係合することで、前記振れ止めが前記板ばねに係止される
ことを特徴とする請求項3に記載の自動ドア。
【請求項5】
前記スライドドアは、前記スライドドアの開閉に伴い上レールに沿って移動するハンガー部により、前記スライドドアがその上部に固定された前記スライドドア上部回動軸回りに回動可能に支持され、
前記スライドドア上部回動軸係止部は、前記全開位置で前記ハンガー部を前記上レール上の所定の位置に係止することで、前記スライドドア上部回動軸を所定の位置に位置させることを特徴とする請求項1に記載の自動ドア。
【請求項6】
前記スライドドア上部回動軸係止部は、
前記ハンガー部の前記FIXドア側の縦枠に近い側に配設された吸着板と、
前記FIXドア側の縦枠近傍の前記吸着板に対向する位置に配設されたマグネットと、
を具備し、
前記全開位置で前記吸着板が前記マグネットに吸着されることを特徴とする請求項5に記載の自動ドア。
【請求項7】
前記吸着板は前記ハンガー部に対し、ダンパー部を介して固定されていることを特徴とする請求項6に記載の自動ドア。
【請求項8】
操作するための全開放スイッチをさらに具備し、
前記全開放スイッチは、通常開閉動作時に前記全開放スイッチをONにすると、前記スライドドアの位置によらず前記スライドドアはモータの駆動により前記全開位置まで移動して停止し、前記FIXドアと前記スライドドアのうちの何れかを回動すると前記モータの駆動が停止された状態を維持し、その後前記FIXドアと前記スライドドアを共に回動前の状態に戻してから前記全開放スイッチをOFFにすると、前記モータの駆動による前記スライドドアの閉方向への移動により、前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部による前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸の所定の位置へ位置させた状態がともに解除されるものである
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動ドア。
【請求項9】
前記スライドドアは、前記スライドドアを前記全開位置まで移動させた場合、前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部により、前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸はそれぞれ所定の位置に位置され、前記FIXドアと前記スライドドアを回動した後に再度回動前の状態に戻してから、前記スライドドアを閉方向に移動させると、前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部による前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸の係止はともに解除される
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア、詳しくは、出入口にFIXドアとスライドドアを配設し、スライドドアをFIXドアに沿い走行可能に吊架して出入口を開閉させるとともに、必要に応じてFIXドアとスライドドアを回動(スイング)させて出入口を全開放(フルオープン)させる自動ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の自動ドアは、通常時はスライドドアがFIXドアに沿って通常開度以内で開閉するが、大きな荷物の出し入れ時や火災等の非常時にはスライドドアを通常開度以上にスライドすることで、スライドドアとFIXドア両方の回動ロック機構を解除させ、その状態で幅方向に重なった両ドアを室内側から手動で押圧することにより、両ドアをそれぞれの支持軸(ピン)を支点に略90度回動(スイング)させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2527353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自動ドアでは、スライドドアの回動中心となる上下の回動軸(ピン)は開閉するスライドドアに固定されている。全開放(フルオープン)動作時にスライドドアは通常開度以上にスライドした全開位置まで移動して停止しているものの、上下の回動軸を所定の全開位置に係止する手段を持たないため、スライドドアを手動で回動させる際の押し方等によっては、上下の回動軸の位置がずれてしまい、スライドドアが傾いて床面に擦るなどして、回動しにくくなることがあった。それでも従来は、ドアの大きさや重量がそれほど大きくなかったため、そのような現象が起きることは稀であった。
【0005】
特許文献1の自動ドアは自動車販売店の店舗にも多く採用され、店舗内の自動車を入れ替える際に全開放動作が利用されるが、車高の高い自動車が増えてきたこと等を背景に、最近はFIXドアとスライドドアのドア高さ、ドア幅、ドア重量の大きな全開放型自動ドアの需要が高まっている。そこで特許文献1と同種の自動ドアに大型のFIXドアとスライドドアを装着して実験したところ、手動で回動させる際にスライドドアの上下の回動軸の位置がずれる現象が起き易くなり、最悪の場合スライドドアが回動できなくなることが起きることも分かった。またスライドドア上部の回動軸のみを所定の全開位置に係止する手段を設けて実験したところ、大型のドアを手動で回動させても上下の回動軸の位置がずれないほど強力な上部回動軸係止機構を付加してしまうと、停電の際にスライドドアを全開位置から閉方向に手動で移動させて、通常開閉位置まで戻すのが難しくなることも分かった。
【0006】
本発明の自動ドアは以上のような事情に鑑み、その不具合を解消すべく、全開位置で、スライドドア上部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア上部回動軸係止部と、前記スライドドア下部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア下部回動軸係止部と、を具備する。これにより従来よりも大型のFIXドアとスライドドアを使用した場合でも、手動でFIXドアとスライドドアを回動させる際に、スライドドアの上下の回動軸の位置がずれずにスムーズな全開放動作ができるとともに、停電時にスライドドアを全開位置から閉方向に手動で移動することも比較的容易にできる、信頼性と操作性がともに高い全開放型の自動ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の自動ドアは、左右両縦枠間にFIXドアとスライドドアを配設し、通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時には前記スライドドアが前記FIXドアに沿って閉位置から通常開位置の範囲で開閉し、全開放動作時には前記スライドドアが前記通常開位置より更に開方向の全開位置まで移動すると、FIXドア回動ロック部による前記FIXドアの回動の規制とスライドドア回動ロック部による前記スライドドアの回動の規制がともに解除されて、前記FIXドアをFIXドア上部回動軸とFIXドア下部回動軸を中心に回動できるとともに、前記スライドドアをスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸を中心に回動できる自動ドアにおいて、前記全開位置で、前記スライドドア上部回動軸を所定の位置に位置させるスライドドア上部回動軸係止部と、前記スライドドア下部回動軸を所定の位置に位置させるスライドドア下部回動軸係止部とを具備する。
【0008】
これにより通常の開閉動作に加えて回動による全開放動作が可能な自動ドアにおいて、全開位置で、スライドドア上部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア上部回動軸係止部と、スライドドア下部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア下部回動軸係止部と、を具備することにより、従来と比べて大型の(高さ、幅、重量が大きい)ドアを使用する場合でも、手動によりスライドドアを回動させる時に、上部回動軸と下部回動軸の位置がずれることがなくなり、安定した全開放動作が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明の自動ドアは。請求項1に記載の発明に対し、前記スライドドアの開閉に伴い下レールに沿って移動する振れ止めにより、前記スライドドアがその下部に固定された前記スライドドア下部回動軸回りに回動可能に支持され、前記スライドドア下部回動軸係止部は、前記全開位置で前記振れ止めを前記下レール内の所定の位置に係止することで、前記スライドドア下部回動軸を所定の位置に係止する。
【0010】
これによりスペース的に直接係止することが難しいスライドドア下部回動軸でなく、周囲のスペースに余裕のある振れ止めを係止することで、間接的にスライドドア下部回動軸を係止するので、比較的簡単かつ安価な機構でスライドドア回動時のスライドドア下部回動軸の位置ずれを防止でき、安定した全開放動作が可能となる
【0011】
請求項3に記載の発明の自動ドアは、請求項2に記載の発明に対し、前記スライドドア下部回動軸係止部は、前記FIXドア側の縦枠近傍の前記下レール内に配設され、前記スライドドアが前記全開位置まで移動したとき、前記振れ止めの更なる開方向への移動を規制して所定の位置で停止させるストッパ部と、前記全開位置で前記振れ止めの閉方向への移動を規制して所定の位置に係止する板ばねと、を具備する。
【0012】
これにより板ばねを1個追加すると共に、既存の振れ止めと振れ止めストッパの形状を一部変更するだけで、スライドドア回動時のスライドドア下部回動軸の位置ずれを防止でき、安定した全開放動作を実現できる。
【0013】
請求項4に記載の発明の自動ドアは、請求項3に記載の発明に対し、前記振れ止めは凹部を、前記板ばねは凸部をそれぞれ有し、前記全開位置で前記凹部と前記凸部が係合することで、前記振れ止めが前記板ばねに係止される。
【0014】
これにより板ばねの弾性を利用した安価で安定した方法で、スライドドア回動時のスライドドア下部回動軸の位置ずれを防止でき、安定した全開放動作を実現できる。
【0015】
請求項5に記載の発明の自動ドアは、請求項1に記載の発明に対し、前記スライドドアの開閉に伴い上レールに沿って移動するハンガー部により、前記スライドドアがその上部に固定された前記スライドドア上部回動軸回りに回動可能に支持され、前記スライドドア上部回動軸係止部は、前記全開位置で前記ハンガー部を前記上レール上の所定の位置に係止することで、前記スライドドア上部回動軸を所定の位置に係止する。
【0016】
これにより直接係止しようとすると係止機構が複雑になりやすく、スペース的にも制約の大きいスライドドア上部回動軸でなく、周囲のスペースに余裕があり、係止方法の自由度も大きいハンガー部を係止することで、間接的にスライドドア上部回動軸を係止するので、比較的簡単かつ安価な機構でスライドドア回動時のスライドドア上部回動軸の位置ずれを防止でき、安定した全開放動作が可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明の自動ドアは、請求項5に記載の発明に対し、前記スライドドア上部回動軸係止部は、前記ハンガー部の前記FIXドア側の縦枠に近い側に配設された吸着板と、前記FIXドア側の縦枠近傍の前記吸着板に対向する位置に配設されたマグネットと、を具備し、前記全開位置で前記吸着板が前記マグネットに吸着される。
【0018】
これによりハンガー部の吸着板を縦枠近傍のマグネットに吸着させるだけの簡単な機構により、スライドドア回動時のスライドドア上部回動軸の位置ずれを防止でき、安定した全開放動作を実現できる。また吸着板をマグネットに対して傾けることで、吸着板のマグネットへの吸着は比較的容易に解除できるので、停電時にもスライドドアを手動で全開位置から通常開閉位置へ容易に移動させることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明の自動ドアは、請求項6に記載の発明に対し、前記吸着板は前記ハンガー部に対し、ダンパー部を介して固定されている。
【0020】
これにより吸着板がマグネットに吸着される際の衝撃によるマグネットの破壊を防止できるとともに、吸着される際の衝撃音を低減することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明の自動ドアは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明に対し、操作するための全開放スイッチをさらに具備し、通常開閉動作時に前記全開放スイッチをONにすると、前記スライドドアの位置によらず前記スライドドアはモータの駆動により前記全開位置まで移動して停止し、前記使用者が前記FIXドアと前記スライドドアのうちの何れかを回動すると前記モータの駆動が停止された状態を維持し、その後前記使用者が前記FIXドアと前記スライドドアを共に回動前の状態に戻してから前記全開放スイッチをOFFにすると、前記モータの駆動による前記スライドドアの閉方向への移動により前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部による前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸の所定の位置へ位置させた状態がともに解除されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動ドア。
【0022】
これにより通常の開閉動作に加えて回動による全開放動作が可能な自動ドアにおいて、全開放スイッチをONにすると、モータの駆動によりスライドドアが全開位置に移動し、スライドドア上部回動軸係止部とスライドドア下部回動軸係止部によりスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸が所定の位置に係止される。これにより手動によりスライドドアを回動させる際にスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸の位置がずれにくくなるので、従来よりも高さ、幅、重量が大きいドアを使用する場合でも、安定した全開放動作が可能となる。FIXドアとスライドドアのうち1枚でも回動している時にスライドドアを閉方向に移動させると不具合が発生するだけでなく危険なので、モータの駆動は停止した状態を維持する。FIXドアとスライドドアを全て回動前の状態に戻してから、全開放スイッチをOFFにすると、モータの駆動によるスライドドアの全開位置から閉方向への移動により、スライドドア上部回動軸係止部とスライドドア下部回動軸係止部によるスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸の所定の位置への係止が解除され、モータの駆動による更なる閉方向への移動が可能となる。
【0023】
請求項9に記載の発明の自動ドアは、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明に対し、停電時に使用者が前記スライドドアを手動で前記全開位置まで移動させた場合も、前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部により前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸はそれぞれ所定の位置に位置され、前記FIXドアと前記スライドドアを回動した後に再度回動前の状態に戻してから、手動で前記スライドドアを閉方向に移動させると、前記スライドドア上部回動軸係止部と前記スライドドア下部回動軸係止部による前記スライドドア上部回動軸と前記スライドドア下部回動軸の係止はともに解除される。
【0024】
これにより通常の開閉動作に加えて回動による全開放動作が可能な自動ドアにおいて、
停電時に使用者がスライドドアを手動で全開位置まで移動させた場合も、スライドドア上部回動軸係止部とスライドドア下部回動軸係止部により、スライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸はそれぞれ所定の位置に係止される。これにより手動によりスライドドアを回動させる際にスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸の位置がずれにくくなるので、従来よりも高さ、幅、重量が大きいドアを使用する場合でも、安定した全開放動作が可能となる。またFIXドアとスライドドアを手動で回動した後、再度回動前の状態に戻してから、手動でスライドドアを閉方向に移動させると、スライドドア上部回動軸係止部とスライドドア下部回動軸係止部によるスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸の係止はともに解除され、手動によるスライドドアの更なる閉方向への移動が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、左右両縦枠間にFIXドアとスライドドアを配設し、通常開閉動作に加えて全開放動作が可能で、通常開閉動作時にはスライドドアがFIXドアに沿って閉位置から通常開位置の範囲で開閉し、全開放動作時にはスライドドアが通常開位置より更に開方向の全開位置まで移動すると、FIXドア回動ロック部によるFIXドアの回動の規制とスライドドア回動ロック部によるスライドドアの回動の規制がともに解除されて、FIXドアをFIXドア上部回動軸とFIXドア下部回動軸を中心に回動できるとともに、スライドドアをスライドドア上部回動軸とスライドドア下部回動軸を中心に回動できる自動ドアにおいて、全開位置で、スライドドア上部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア上部回動軸係止部と、スライドドア下部回動軸を所定の位置に係止するスライドドア下部回動軸係止部と、を具備することにより、自動ドアの操作性と信頼性を向上させることができる。FIXドアとスライドドアを手動で回動させる際に、スライドドアの上下の回動軸の位置ずれを防止してスムーズな全開放動作を可能にすると共に、停電時にスライドドアを全開位置から閉方向に手動でスムーズに移動することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1に係る両引き両開きの自動ドア1の動作を示し、(a)は閉状態を示す室内側から見た正面図、(b)は全開状態を示す室内側から見た平面図、(c)は全開放状態を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る片引き片開きの自動ドア1aの閉状態における無目と下レールの内部構造を示す室内側から見た正面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る片引き片開きの自動ドア1aの全開状態における無目と下レールの内部構造を示す室内側から見た正面図である。
図4】スライドドア4が全開位置まで移動した後、スライドドア4を手動で回動し始めた時のスライドドア上部回動軸係止部32とその周辺を拡大した斜視図である。
図5】スライドドア4が全開位置まで移動した時のスライドドア下部回動軸係止部36とその周辺を正面から見た断面図である。
図6】スライドドア4が全開位置まで移動した時のスライドドア下部回動軸係止部36とその周辺を拡大した斜視図である。
図7】本発明の自動ドアにおける下レール内部のスライドドア下部回動軸係止部36の実施形態1と変形例1~5を比較可能に示す平面図であり、(a)実施形態1、(b)変形例1、(c)変形例2、(d)変形例3、(e)変形例4、(f)変形例5、である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の自動ドアに係る実施形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)(両引き全開放ドアの動作)
本発明の実施形態1の自動ドア1について説明する。図1の自動ドア1は、左右両縦枠2、2の間にFIXドア3a、3bとスライドドア4a、4bが配設されている。
左右のスライドドア4a、4bは、それぞれ隣接するFIXドア3a、3bに沿って閉位置から通常開位置の範囲で走行して開閉する通常開閉動作を行う。加えて、左右のスライドドア4a、4bは、通常開位置より更に開方向の全開位置まで移動すると、左右のFIXドア回動ロック部10a、10bによる左右のFIXドア3a、3bの回動の規制と、左右のスライドドア回動ロック部11a、11bによる左右のスライドドア4a、4bの回動の規制とが共に解除される。そして、規制解除された左右それぞれのFIXドア3a、3bとスライドドア4a、4bは、室外方向に回動(スイング)する全開放動作が可能な両引き両開きの全開放型自動ドア1(フルオープナー)になる。全開放動作時に左右のFIXドア3a、3bはFIXドア上部回動軸6a、6bとFIXドア下部回動軸7a、7bを中心に回動する。左右のスライドドア4a、4bはスライドドア上部回動軸8a、8bとスライドドア下部回動軸9a、9bを中心に回動する。図1(a)は閉状態を示す正面図で、図の手前側が室内、奥側が室外である。また図1(b)はスライドドア4a、4bが全開位置まで移動し、全開放動作が可能な状態を示す正面図である。図1(c)はスライドドア4a、4bが全開位置まで移動した図1(b)の状態から、左右それぞれのFIXドア3a、3bとスライドドア4a、4bを回動(スイング)させた状態を示す平面図である。
【0028】
(ドアサイズの拡大)
図1(a)において、DH1、DW1はFIXドア3a、3bのドア高さとドア幅であり、DH2、DW2はスライドドア4a、4bのドア高さとドア幅である。従来の全開放型自動ドア1ではFIXドア3a、3bのDH1は最大2100mm程度、DW1は最大1000mm程度、扉重量は最大60kg程度までが主流であったが、近年ではDH1は最大2700mm程度、DW1は最大1250mm程度、扉重量は最大100kg程度と大型のものが求められている。スライドドア4a、4bのDH2もFIXドア3a、3bと同様で最大2700mm程度、DW2は全開位置と通常開位置の差分程度FIXドア3a、3bよりやや小さめとされることが多いが、従来よりも大型のものが求められていることに違いはない。
【0029】
図1図2、3、片引きと両引き)
図2図3図1の自動ドア1の無目(枠体)5の内部と床面12に埋設された下レール33内部の構造を含めて説明するための図である。図2図3は、見やすくするために両縦枠2、2間にFIXドア3とスライドドア4を配設した左勝手の片引き片開きの自動ドア1aとしている。図1の自動ドア1と図2図3の自動ドア1aで異なるのは、1つのモータ21で1枚のスライドドア4を駆動するか左右2枚のスライドドア4a、4bを駆動するかという駆動装置のみである。それ以外の部分の違いはFIXドア3とスライドドア4が1枚ずつしかないのが図2、3の片引き片開きの全開放型自動ドア1aであり、閉状態の(両引き全開放ドアの動作)
スライドドア4の戸先を対称軸としてスライドドア4a、4bとFIXドア3a、3bを線対称に配置したのが図1の両引き両開きの自動ドア1である。
以下は片引き片開きの自動ドア1aを中心に説明し、必要に応じて両引き両開きの自動ドア1について補足する。
図2は閉状態における無目5と下レール33の内部構造を合せて示す正面図であり、図3はスライドドア4が全開位置まで移動した状態における内部構造を示す正面図である。
【0030】
(駆動部の構成、片引きと両引き)
図2において、図示省略したカバーで覆われた無目5の内部には減速機構を含むモータ21、駆動プーリ23、従動プーリ24、ベルト25等からなる駆動装置、及びモータ21の駆動を制御してスライドドア4を開閉させるコントローラ22が配設されている。
またスライドドア4の上部にはハンガー部26が設けられている。ハンガー部26はベルト掴み29を介してベルト25の上下一方の側に接続されている。コントローラ22により制御されるモータ21は、駆動によりベルト25を回動させ、ハンガー部26が牽引され、ハンガー部26上に軸支された複数個の戸車27が上レール28上を走行する。これにより、ハンガー部26に懸架されたスライドドア4は、開閉動作を行なう。図2、3の例は、戸車27の個数を4個にしているが、これには限定されず、スライドドア4の重量やハンガー部26の強度等に応じて最適となるように変更してもよい。また図1の両引き両開きの全開放型自動ドア1に適用する場合には、駆動装置の従動プーリ24の位置を反対側と駆動プーリ23の位置を、それぞれFIXドア3aとFIXドア3bの上方に設け、ベルト25を従動プーリ24と駆動プーリ23の間に架け渡す。駆動プーリ23を回動させると、ベルト25の上側とベルト25下側は反対方向に動く。一方のスライドドア4aのハンガー部26をベルト掴み29を介してベルト25の上側に取付け、他方のスライドドア4bのハンガー部26をベルト掴み29を介してベルト25の下側に取り付ける。これにより、1つのモータ21で駆動プーリ23を回動させるだけで、一方のスライドドア4aと他方のスライドドア4bは、互いに反対方向に動き、開いてゆく。
また、スライドドア4a、4bは、ベルト25、従動プーリ24、駆動プーリ23及びモータ21からなる駆動装置をそれぞれに設けることができる。このようにすると、スライドドア4a、4bを選択的にあるいは同時に開閉するように構成することが可能になる。また駆動装置に関連する部分以外は、図2と左右対称に配置したものを追加すればよい。
【0031】
(スライドドア回動ロック部とスライドドア位置決め部)
スライドドア4はスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9を中心に、ハンガー部26と振れ止め34に対して回動可能に取付けられているが、通常開閉時にはスライドドア回動ロック部11により、ハンガー部26と振れ止め34に対するスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9回りのスライドドア4の回動は規制されている。スライドドア回動ロック部11には、特許文献1の図4図5図7等と同様の周知の機構を採用可能であるため、詳細の図や説明は省略する。このとき更にスライドドア位置決め部14により、ハンガー部26に対してスライドドア4を位置決めしてもよい。例えばスライドドア4にばねに押圧されたボールを設けて、ハンガー部26に設けた係合孔に弾性的に係合して位置決めをすることで、スライドドア4のがたつきを無くすことにより、自動ドア1aの品位を高めることができる。なお逆にハンガー部26にばねに押圧されたボールを設けて、スライドドア4に設けた係合孔に弾性的に係合して位置決めしてもよい。
【0032】
(FIXドア回動ロック部とFIXドア位置決め部)
またFIXドア3はFIXドア上部回動軸6とFIXドア下部回動軸7を中心に、無目5と床面12に対して回動可能に取付けられている。FIXドア3は通常は閉に設定されており、FIXドア回動ロック部10により、無目5と床面12に対するFIXドア上部回動軸6とFIXドア下部回動軸7回りのFIXドア3の回動は規制されている。FIXドア回動ロック部10は、特許文献1の図6図8等と同様の周知の機構を採用可能であるため、詳細の図や説明は省略する。このとき更にFIXドア位置決め部13により、無目5に対するFIXドア3の位置決めをしてもよい。FIXドア位置決め部13の構造は、例えばFIXドア3にばねに押圧されたボールを設けて、無目5に設けた係合孔に弾性的に係合する構造を例示することができる。FIXドア位置決め部13は、ボールと係合孔が嵌り合うことでFIXドア3と無目5の位置が定まり、かつ、FIXドア3のがたつきを無くすよう位置決めができる。さらに、FIXドア位置決め部13は、がたつきを無くすことで、自動ドア1aの品位を高めることができる。なおFIXドア位置決め部13の構造は、逆に無目5にばねに押圧されたボールを設けて、FIXドア3に設けた係合孔に弾性的に係合して位置決めする構造を採用してもよい。
【0033】
(FIXドア回動ロック部解除)
図3のようにスライドドア4が全開位置まで移動すると、FIXドア回動ロック部10による無目5に対するFIXドア3の回動の規制が解除されて、FIXドア3はFIXドア上部回動軸6とFIXドア下部回動軸7回りに回動可能となる。またFIXドア回動ロック部10によるFIXドア3の回動の規制が解除された後、手動で無目5に対してFIXドア3を回動させると、FIXドア位置決め部13による無目5の係合孔に対するFIXドア3に設けられたボールの弾性的な係合も解除される。
【0034】
(スライドドア回動ロック部解除)
同様にスライドドア4が全開位置まで移動すると、スライドドア回動ロック部11によるハンガー部26に対するスライドドア4の回動の規制も解除されて、スライドドア4はスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9回りに回動可能となる。またスライドドア回動ロック部11によるスライドドア4の回動の規制が解除された後、手動でハンガー部26に対してスライドドア4を回動させると、スライドドア位置決め部14によるハンガー部26の係合孔に対するスライドドア4に設けられたボールの弾性的な係合も解除される。
【0035】
(ハンガー部係止⇒スライドドア上部回動軸係止)
また図3の上部に示すように、モータ21の駆動によりスライドドア4を懸架するハンガー部26が上レール28に沿って移動し、スライドドア4が全開位置まで移動したとき、ハンガー部26のスライドドア4の戸尻側(FIXドア3が配設された側の縦枠2に近い側)の端部に配設された吸着板31が、縦枠2に固定されたマグネット30に吸着されて、ハンガー部26は上レール28上の所定の(全開時の)位置に所定の力で係止される。スライドドア上部回動軸8はスライドドア4に固定されるとともに、上下のスラスト軸受を介してハンガー部26に回動可能に支持されており、ハンガー部26が所定の(全開時の)位置に係止されると、ハンガー部26に支持されたスライドドア上部回動軸8も所定の(全開時の)位置に係止される。すなわちスライドドア4が全開位置において、吸着板31とマグネット30はその吸着力により、ハンガー部26を上レール28上の所定の(全開時の)位置に係止することで、スライドドア上部回動軸8を所定の(全開時の)位置に係止するスライドドア上部回動軸係止部32を形成する。
またスライドドア上部回動軸係止部32によるスライドドア上部回動軸8の係止は、モータ21の駆動によりスライドドア4を全開位置から閉方向に移動させることで解除することができる。
【0036】
(ハンガー部係止⇒スライドドア上部回動軸係止)
図4はスライドドア4が全開位置まで移動した後、スライドドア4を手動で回動し始めた時のスライドドア上部回動軸係止部32とその周辺を拡大した斜視図であり、説明する部分が見やすくなるようにFIXドア3とその関連部品等は図示省略している。
ハンガー部26は、スライドドア4に取付けられたスライドドア上部回動軸8を上下2つのスラスト軸受を介して回動可能に支持することで、回動時にもスライドドア4を1箇所で懸架する。ハンガー部26はスライドドア開閉時に上レール28上を走行する複数の戸車27を具備するとともに、縦枠2側の端部には吸着板31がダンパー部37を介して取付けられている。また縦枠2にはマグネット30が取付けられ、スライドドア4が全開位置に移動すると、吸着板31がマグネット30に吸着される。吸着板31とマグネット30の吸着により、ハンガー部26が所定の(全開時の)位置に所定の力で係止されるので、ハンガー部26の所定の位置に回動自在に支持されるスライドドア上部回動軸8は、所定の(全開時の)位置に係止される。
【0037】
(マグネットの保護、マグネットと吸着板の逆配置)
マグネット30は例えば円柱形に形成し、円周面と吸着面の背面側はヨークで覆って磁力を吸着面に集中させて吸着力を向上させるとともに、ヨークの円周面をマグネット30の吸着面よりほんの少しだけ突出させて、吸着板31がマグネット30に直接当たらないようにして、マグネット30を保護するようにしてもよい。また吸着板31はダンパー部37を介して取付けることで、吸着時のマグネット30への衝撃を低下させて、マグネット30を保護するとともに、吸着時に発生する衝撃音を低下させるようにしてもよい。また、マグネット30と吸着板31の配置は、ハンガー部26の側にマグネット30を取り付け、縦枠側に吸着板31を取り付けてもよい。ただし、ハンガー部26にマグネット30を取り付ける場合は、FIXドア回動ロック部10やスライドドア回動ロック部11等の機構部品の動作に対する磁力の影響を確認する必要がある。
【0038】
(マグネット式上部回動軸係止部とばね式の比較)
またスライドドア上部回動軸係止部32にマグネット30と吸着板31を使用する代りに、ばねの弾性を利用したロック機構を採用してもよい。ただしばねの弾性を利用したロック機構を解除するには、一般的にハンガー部26を徐々に増加するばね力に逆らってロックが解除できる位置まで移動させる必要があるため、モータ21の駆動力で解除する場合は問題ないが、停電時にハンガー部26のロックを手動で解除するには大きな力が必要となり、容易に動かせるとは言えない。これに対してマグネット30と吸着板31を使用した場合、マグネット30に対して吸着板31が傾くような力を与えて、マグネット30と吸着板31の一端が少しでも離れれば急激に吸着力が低下するため、ハンガー部26の吸着板31のマグネット30に対する係止は停電時にも手動で比較的容易に解除することができる。
またマグネット30と吸着板31を使用したスライドドア上部回動軸係止部32は省スペースであり、スライドドア上部回動軸8の位置に制約を与えない点でも優れており、全開放時の開口幅を最大化することができる。ばねの弾性を利用したロック機構はマグネット30等を使用する場合と比較して、簡単に外れにくいという利点がある。
【0039】
また図3の下部に示すように、スライドドア4の開閉に伴い下レール33に沿って移動する振れ止め34により、スライドドア4はその下部に固定されたスライドドア下部回動軸9回りに回動可能に支持されている。
図5及び図6を参照されたい。図5はスライドドア4が全閉位置まで移動した時のスライドドア下部回動軸係止部36とその周辺を正面から見た断面図であり、説明する部分が見やすくなるようにFIXドア下部回動軸7等は図示省略している。図6は同様にスライドドア4が全開位置まで移動した時のスライドドア下部回動軸係止部36とその周辺の斜視図であり、説明する部分が見やすくなるようにスライドドア4やFIXドア3等は図示省略している。
スライドドア4が全開位置まで移動したとき、振れ止め34の更なる開方向への移動を規制するストッパ部35と、振れ止め34の閉方向への移動を規制する板ばね39により、振れ止め34は下レール33内の所定の(全開時の)位置に所定の力で係止される。振れ止め34が所定の(全開時の)位置に係止されると、振れ止め34に支持されたスライドドア下部回動軸9も所定の(全開時の)位置に係止される。すなわちスライドドア4が全開位置において、ストッパ部35と板ばね39により、振れ止め34を下レール33内の所定の(全開時の)位置に係止することで、スライドドア下部回動軸9を所定の(全開時の)位置に係止するスライドドア下部回動軸係止部36が形成される。
またスライドドア下部回動軸係止部36によるスライドドア下部回動軸9の係止は、モータ21の駆動によりスライドドア4を全開位置から閉方向に移動させることで解除することができる。
【0040】
(スライドドア下部回動軸係止部の構成)
図5図6に示すようにスライドドア4の開閉に伴い下レール33に沿って移動する振れ止め34は、スライドドア内部構造部材41に取り付けられたスライドドア下部回動軸9にスペーサ38を介して回動可能に支持されている。また下レール33内のスライドドア4の戸尻側の縦枠2の端部にストッパ部35が図示省略したねじで固定されている。ストッパ部35の振れ止め34に対向する面には、板ばね39の取付部を挟んで板ばね固定板40が皿ネジ2本で固定されている。
【0041】
(板ばねによる係止)
スライドドア4が全開位置にきた時、振れ止め34は板ばね固定板40に接した状態で停止する。すなわち板ばね固定板40は、スライドドア4の振れ止め34の更なる開方向への移動を規制して所定の(全開時の)位置で停止させるストッパ部35として機能する。また振れ止め34は側面に凹部を有し、板ばね39は側面に凸部を有し、スライドドア4が全開位置まで移動したとき、振れ止め34の凹部と板ばね39の凸部を係合させることで、振れ止め34の閉方向への移動を規制して所定の(全開時の)位置に係止する。
【0042】
(下部にマグネットと吸着板)
以上のように本発明の実施形態において、スライドドア下部回動軸係止部36には、低コストの板ばね39の弾性を利用したロック機構を採用したが、スライドドア上部回動軸係止部32と同様にマグネット30と吸着板31を利用して、振れ止め34を下レール33内の所定の(全開時の)位置に係止してもよい。
【0043】
(上部と下部の回動軸係止の効果)
図3のように全開位置で手動によるスライドドア4の回動が行なわれる前の状態では、スライドドア4には自重による半時計回りのモーメントが働くため、ハンガー部26にはハンガー部26をスライドドア4の閉方向に移動させようとする力が働いている。この力はユーザ要求によるドア高さ、ドア幅、ドア重量の増大に伴って大きくなるが、スライドドア上部回動軸係止部32を設けて、ハンガー部26を所定の(全開時の)位置に係止することで、ハンガー部26の動きは充分抑制できる。一方、振れ止め34には振れ止め34をスライドドア4の開方向に移動させようとする力が発生しているが、この状態では振れ止め34はストッパ部35に押付けられて所定の(全開時の)位置で停止しているので開くことはない。しかしスライドドア4を回動させると、前記モーメントによる振れ止め34をストッパ部35に押付ける力は急激に小さくなってしまうことに加えて、スライドドア4の大型化に伴い、手動でスライドドア4を回動させる際の押し方によって、振れ止め34とスライドドア下部回動軸9を閉方向に移動させる力が働き、それによってスライドドア4が傾いてしまうことがあった。またスライドドア上部回動軸係止部32を追加しても、それだけでは振れ止め34の動きは抑制できず、スライドドア上部回動軸8の係止が外れてしまうこともあった。しかしスライドドア上部回動軸係止部32によりハンガー部26を所定の(全開時の)位置に係止することに加えて、スライドドア下部回動軸係止部36により振れ止め34を所定の(全開時の)位置に係止することで、このような現象は起きなくなることも分かった。
【0044】
(停電時手動解除の必要性)
以上のようにスライドドア上部回動軸係止部32とスライドドア下部回動軸係止部36を具備することにより、スライドドア4を手動で回動させる際に上下の回動軸の位置がずれなくなるため、安定した全開放動作が可能となる。しかし火災等の非常時に全開放して避難が完了した後に、ドアを閉める際に停電が起きていた場合は、回動したFIXドア3とスライドドア4を手動で全開位置まで戻し、更にスライドドア4を手動で通常開位置まで移動させる必要がある。このときスライドドア上部回動軸係止部32とスライドドア下部回動軸係止部36によるスライドドア4の係止は、手動でスライドドア4を閉方向に移動させて解除できることが望ましい。
【0045】
(上下回動軸係止部の係止力の例)
スライドドア上部回動軸係止部32による係止力は、スライドドア4のドア高さ、ドア幅、ドア重量の仕様から想定されるスライドドア4の自重による最大のモーメントに対してある程度の余裕をもって決めればよい。今回想定した最大ドアを使用する場合の係止力は、マグネット30と吸着板31の吸着力を利用し、例えば300~400N程度とするとよい。一方、スライドドア下部回動軸係止部36による係止力は、人がスライドドア4を手動で回動させるときの力によって位置がずれなければよいので、それほど大きい力は必要でなく、板ばね39の弾性力を利用し、例えば50N~100N程度とするとよい。
【0046】
(停電時の解除方法)
このような条件下で、停電時に人がスライドドア4のスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9の間の動かしやすい高さ付近を手動で閉方向に動かすと、まずスライドドア下部回動軸係止部36による振れ止め34の係止が解除される。更に手動でスライドドア4を閉方向に動かすと、マグネット30の吸着面に対して吸着板31を斜めに傾けようとする力が働き、吸着板31の下端部がマグネット30から少しでも離間すると磁力による吸着力が急減して、スライドドア上部回動軸係止部32によるハンガー部26の係止が解除される。解除の際には梃子の原理も働くことから、比較的容易にスライドドア上部回動軸係止部32による係止は解除される。上部と下部の回動軸の係止が解除された後は、スライドドア4を手動で通常開位置まで移動させることで、FIXドア回動ロック部10とスライドドア回動ロック部11によるFIXドア3とスライドドア4の回動をロックし、更には閉完了の位置までスライドドア4を容易に移動させることができる。
【0047】
このようにスライドドア上部回動軸係止部32にマグネット30と吸着板31の吸着力を利用することにより、停電時の手動による解除を比較的容易に実現できる。これに対しスライドドア上部回動軸係止部32に、ばねの弾性を利用したロック機構を採用した場合、手動でスライドドア4を閉方向に移動させようとすると、移動するに従って徐々に増加するばね力に逆らってロックが解除される位置までハンガー部26を移動させる必要があるため、停電時の手動による解除はマグネット30と吸着板31を利用する場合と比較してかなり大変となる。
【0048】
(自動ドアの動作1)
次に本発明の実施形態1に係る全開放型自動ドア1、1aの動作について説明する。
図2の自動ドア1aのスライドドア4が閉位置から通常開位置の範囲を走行して開閉する通常開閉動作をしているとき、図示省略した全開放スイッチをONにすると、スライドドア4の位置によらず(すなわちスライドドア4が停止しているか、走行しているかにもよらず)スライドドア4はモータ21の駆動により全開位置まで(FIXドア回動ロック部10とスライドドア回動ロック部11によるFIXドア3とスライドドア4の回動の規制が共に解除され、スライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9が共に所定の位置に係止されるまで、すなわち例えばスライドドア4がそれ以上開方向に動かなくなるまで)移動して停止する。
【0049】
(自動ドアの動作2)
その後使用者がFIXドア3とスライドドア4を室外方向に回動させるが、このときFIXドア3とスライドドア4のうちの何れか(両引き両開きの全開放型自動ドア1の場合は、FIXドア3a、3b、スライドドア4a、4bのうちの何れか)が回動していると、図示省略した光線スイッチ等の検出部から回動信号が出力される。回動信号が出力されている間は(仮に使用者が全開放スイッチをOFFにしても)モータ21の駆動は停止された状態を維持する。その後使用者が回動したFIXドア3とスライドドア4を共に回動前の状態に戻してから、全開放スイッチをOFFにすると、所定の時間(設定により変更可能)後にモータ21の駆動によるスライドドア4の閉方向への移動が開始される。スライドドア4が通常開位置に移動した後は、FIXドア回動ロック部10とスライドドア回動ロック部11によりFIXドア3とスライドドア4の回動が共に規制された状態で通常閉動作を継続する。通常閉動作中に通行人が検出されなければスライドドア4は閉位置で停止する。
【0050】
(自動ドアの停電時の動作1)
次に本発明の実施形態1に係る全開放型自動ドア1、1aの停電時の動作について説明する。この自動ドア1、1aは火災等の緊急時に停電していた場合も、手動により全開放させて避難できるとともに、避難完了後に手動で閉鎖することもできる。
停電時には使用者がスライドドア4を手動で通常開位置まで移動させた後、手動で更に全開位置まで移動させると、FIXドア回動ロック部10によるFIXドア3の回動の規制とスライドドア回動ロック部11によるスライドドア4の回動の規制が共に解除された後、スライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9はそれぞれ所定の(全開時の)位置に係止される。この状態ではFIXドア3とスライドドア4を手動でスムーズに回動させて全開放状態とすることができるので、全開放された大きな開口部からスムーズな避難が可能となる。
【0051】
(自動ドアの停電時の動作2)
避難が完了したら、手動で回動された全てのFIXドア3とスライドドア4(両引き両開きの全開放型自動ドア1の場合は、回動された全てのFIXドア3a、3bとスライドドア4a、4b)を回動前の位置に戻してから、スライドドア4を閉方向に所定の力で動かすと、スライドドア下部回動軸係止部36によるスライドドア下部回動軸9の係止と、スライドドア上部回動軸係止部32によるスライドドア上部回動軸8の係止が比較的容易に解除される。その後スライドドア4を閉方向に通常開位置まで移動させると、FIXドア回動ロック部10とスライドドア回動ロック部11によるFIXドア3とスライドドア4の回動が共に規制されるので、あとは手動で閉位置までスライドドア4を移動させることにより、開口部を閉鎖することができる。
なお、避難完了後に停電になった場合も、全く同じ手順で開口部を閉鎖することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態1に係る両引き両開きの自動ドア1と片引き片開きの自動ドア1aについて、まとめて説明した。特に本願の要部であるスライドドア上部回動軸係止部32とスライドドア下部回動軸係止部36の構成は両引き両開きの自動ドア1と片引き片開きの自動ドア1aで共通であり、片引き片開きの自動ドア1aでは1セットで使用されるのに対し、両引き両開きの自動ドア1では左右対称の2セットで使用される点のみ異なるため、一部説明を省略している箇所がある。
【0053】
実施例のスライドドア上部回動軸係止部32とスライドドア下部回動軸係止部36は、所定の力でスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9を係止させている。これにより、スライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9は所定の位置に位置される。所定の力によるスライドドア上部回動軸8とスライドドア下部回動軸9の係止はスライドドア4を閉方向に動かすだけで解除できるので好適である。なお、所定の位置に位置させる態様は、所定の力による係止を含め様々であり得る。例えば電動や手動の専用解除手段により解除するロック機構を用いてもよく、スライドドア4を閉方向に移動させる際の力を大幅に低減できる。
次にスライドドア下部回動軸係止部36の変形例について説明する。変形例1~5はいずれもスライドドア下部回動軸係止部36の構成のみが異なり、他の構成については実施形態1と同じ構成のため、説明を省略する。
なお、実施例は、全開放スイッチなどのスイッチを使用者が操作するように説明してきた。しかし、全開放スイッチなどのスイッチ類は誰が操作してもよく、ビルの保安室の係員が遠隔で操作してもよい。また、スイッチ類の操作は、遠隔操作のように手動である必要もない。
【0054】
図7(a)は変形例との比較のため、実施形態1のスライドドア下部回動軸係止部36の構成を示す平面図であり、説明する部分が見やすくなるようにスライドドア4やFIXドア3に関連する部分等は図示省略している。実施形態1の振れ止め34は平面視で点対称となっている点に特徴がある。振れ止め34はスライドドア4に取付けられたスライドドア下部回動軸9に対して回動可能に取付けられているため、施工時にスライドドア4を吊り込む際、振れ止め34が180度反転して下レール33に装着される可能性があるが、その場合でも振れ止め34の凹部が板ばね39の凸部に嵌合するようにして、作業性を向上させることが目的である。
【0055】
(変形例1)
図7(b)はスライドドア下部回動軸係止部36の変形例1を示す図である。この振れ止め34は図7(a)の実施形態1と異なり点対称になっていないため、施工時にスライドドア4を吊り込む際、振れ止め34が180度反転して下レール33に装着されないように注意する必要があり作業性は少し悪くなる反面、振れ止め34の加工が容易であり、コストを低減できるものである。
【0056】
(変形例2)
図7(c)はスライドドア下部回動軸係止部36の変形例2を示す図である。図7(a)の実施形態1では振れ止め34の凹部と板ばね39の嵌合部が、ストッパ部35の方向に対して左側にあるのに対して、変形例3では右側にある点のみ異なる。しかし効果、作業性、コストも含めて大きな違いはなく、どちらを採用してもよい。
【0057】
(変形例3)
図7(d)はスライドドア下部回動軸係止部36の変形例3を示す図である。図7(a)の実施形態1では振れ止め34の凹部と板ばね39の嵌合部が1箇所であるのに対して、変形例3では左右2箇所にある点で異なる。1箇所では係止力が不足する場合は、この例のようにすることで比較的容易に係止力を高めることができる。
【0058】
(変形例4)
図7(e)はスライドドア下部回動軸係止部36の変形例4を示す図である。図7(a)の実施形態1では振れ止め34の側面に設けた凹部と板ばね39の凸部を嵌合させているのに対し、変形例4では振れ止め34の底面に設けた凹部と板ばね39の凸部を嵌合させている点で異なる。下レール33内の板ばね39を目立たせたくない場合はこのようにしてもよい。
【0059】
(変形例5)
図7(f)はスライドドア下部回動軸係止部36の変形例5を示す図である。図7(a)の実施形態1ではストッパ部35に板ばね39を固定しているが、変形例5では振れ止め34に板ばね39を固定している点で異なり、ストッパ部35の側面に設けた凹部と振れ止め34に取り付けた板ばね39の凸部を嵌合させている。他の自動ドアで使用されていた振れ止め34を流用する場合等は、このようにそれぞれの形状や寸法に応じて適宜組合せを変えてもよい。
【0060】
スライドドア下部回動軸係止部36については、これ以外にも色々な方式を採用可能である。例えばスライドドア上部回動軸係止部32のように、マグネット30と吸着板31を使用してもよく、性能的にはそちらの方がよい可能性もある。しかしコスト的には板ばね39の方が安いので、性能が許容範囲であれば板ばね39を選択するとよい。
【0061】
以上のように本発明は通常のスライド開閉動作と回動(スイング)による全開放動作が可能な全開放型自動ドア1、1aに、方式によらず幅広く適用が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1a:自動ドア
2:縦枠
3,3a,3b:FIXドア
4,4a,4b:スライドドア
5:無目
6,6a,6b:FIXドア上部回動軸
7,7a,7b:FIXドア下部回動軸
8,8a,8b:スライドドア上部回動軸
9,9a,9b:スライドドア下部回動軸
10,10a,10b:FIXドア回動ロック部
11,11a,11b:スライドドア回動ロック部
12:床面
13,13a,13b:FIXドア位置決め部
14,14a,14b:スライドドア位置決め部
21:モータ
22:コントローラ
23:駆動プーリ
24:従動プーリ
25:ベルト
26:ハンガー部
27:戸車
28:上レール
29:ベルト掴み
30:マグネット
31:吸着板
32:スライドドア上部回動軸係止部
33:下レール
34:振れ止め
35:ストッパ部
36:スライドドア下部回動軸係止部
38:スペーサ
39:板ばね
40:板ばね固定部
41:スライドドア内部構造部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7