(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001277
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】光輝性塗料組成物及び光輝性塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 5/02 20060101AFI20241225BHJP
C09D 5/36 20060101ALI20241225BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241225BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241225BHJP
【FI】
C09D5/02
C09D5/36
C09D7/61
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100778
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】千崎 卓美
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CA011
4J038CA021
4J038CC021
4J038CF021
4J038CG011
4J038HA066
4J038HA136
4J038HA146
4J038HA206
4J038HA376
4J038HA446
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4J038KA08
4J038KA20
4J038MA02
4J038MA10
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA23
4J038NA24
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】塗装後に大粒径の光輝性顔料のずり落ちが生じにくく、大粒径の光輝性顔料による新規な外観を有し、付着性に優れる塗膜を形成できる光輝性塗料組成物を提供する。
【解決手段】樹脂エマルションを含む外相成分と、ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む光輝性塗料組成物であり、前記光輝性顔料が、粒径0.35mm以上の光輝性顔料を含み、前記粒径0.35mm以上の光輝性顔料の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、0.1~5.0質量部であり、前記ゲル状粒子の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、20~50質量部である、光輝性塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションを含む外相成分と、ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む光輝性塗料組成物であり、
前記光輝性顔料が、粒径0.35mm以上の光輝性顔料を含み、
前記粒径0.35mm以上の光輝性顔料の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、0.1~5.0質量部であり、
前記ゲル状粒子の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、20~50質量部である、光輝性塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、5~35質量部である、請求項1に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光輝性塗料組成物の塗膜である、光輝性塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性塗料組成物及び光輝性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック顔料やマイカ等の光輝性顔料を含む光輝性塗料は様々な分野で広く用いられている。
特許文献1には、樹脂エマルションを含む外相成分と、ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む光輝性塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新規な外観を表現するために、これまで塗料に用いられなかったような大粒径の光揮性顔料を特許文献1の光輝性塗料組成物に含有させたところ、光輝性顔料に重みがあるため、壁面などの垂直面に光輝性塗料組成物を塗装した後に光輝性顔料がずり落ちる問題が生じることがあった。
また、光輝性顔料の表面積が大きいため、光輝性塗料組成物をスプレーなどにより霧化して塗装する際、霧化した光輝性塗料組成物が被塗物に塗着する前に光輝性顔料表面の溶媒が乾燥してしまい、光輝性顔料が被塗物に塗着しない問題が生じることがあった。
さらに、大粒径の光輝性顔料が分散した塗膜は、それ自体の強度が劣り、外部の力に対して脆くなる傾向もあった。
【0005】
本発明は、塗装後に大粒径の光輝性顔料のずり落ちが生じにくく、大粒径の光輝性顔料による新規な外観を有し、付着性に優れる塗膜を形成できる光輝性塗料組成物、及びこれを用いた光輝性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]樹脂エマルションを含む外相成分と、ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む光輝性塗料組成物であり、
前記光輝性顔料が、粒径0.35mm以上の光輝性顔料を含み、
前記粒径0.35mm以上の光輝性顔料の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、0.1~5.0質量部であり、
前記ゲル状粒子の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、20~50質量部である、光輝性塗料組成物。
[2]前記樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量が、前記外相成分及び前記ゲル状粒子の合計100質量部に対し、5~35質量部である、[1]に記載の光輝性塗料組成物。
[3][1]又は[2]に記載の光輝性塗料組成物の塗膜である、光輝性塗膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塗装後に大粒径の光輝性顔料のずり落ちが生じにくく、大粒径の光輝性顔料による新規な外観を有し、付着性に優れる塗膜を形成できる光輝性塗料組成物、及びこれを用いた光輝性塗膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る光輝性塗料組成物は、樹脂エマルションを含む外相成分と、ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む。ゲル状粒子及び光輝性顔料はそれぞれ、外相成分に分散している。
光輝性顔料は、粒径0.35mm以上の光輝性顔料(以下、「大粒径光輝性顔料」とも記す。)を含む。光輝性顔料は、粒径0.35mm未満の光輝性顔料(以下、「小粒径光輝性顔料」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
各成分については後で詳しく説明する。
【0009】
光輝性塗料組成物において、大粒径光輝性顔料の含有量は、外相成分及びゲル状粒子の合計100質量部に対し、0.1~5.0質量部であり、0.17~3.0質量部が好ましい。大粒径光輝性顔料の含有量が0.1質量部以上であると、大粒径光輝性顔料による効果が充分に発現し、新規な外観の塗膜を形成できる。大粒径光輝性顔料の含有量が5.0質量部以下であると、塗装後の大粒径光輝性顔料のずり落ちを抑制できる。また、ゲル状粒子間に存在する大粒径光輝性顔料が少なくなることで、塗膜が脆くならず、塗膜の付着性に優れる。
【0010】
全ての光輝性顔料(大粒径光輝性顔料及び小粒径光輝性顔料の合計)の含有量は、外相成分及びゲル状粒子の合計100質量部に対し、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
光輝性顔料は比重が4以下であることが好ましい。
【0011】
ゲル状粒子の含有量は、外相成分及びゲル状粒子の合計100質量部に対し、20~50質量部であり、25~45質量部が好ましい。ゲル状粒子の含有量が20質量部以上であると、塗装後の大粒径光輝性顔料のずり落ちを抑制できる。ゲル状粒子の含有量が50質量部以下であると、塗膜の付着性に優れる。
【0012】
外相成分中の樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量は、外相成分及びゲル状粒子の合計100質量部に対し、5~35質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量が5質量部以上であると、形成される塗膜において、乾燥したゲル状粒子間の付着性が良好となる。また、ゲル状粒子間に存在する大粒径光輝性顔料が相対的に少なくなるため、塗膜が脆くならず、塗膜の付着性に優れる。樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量が35質量部以下であると、ゲル状粒子を充分に含有させることができ、塗装後の大粒径光輝性顔料のずり落ちを抑制できる。
【0013】
<外相成分>
外相成分は、光輝性塗料組成物を構成する成分のうち、ゲル状粒子及び光揮性顔料を除いた成分である。
外相成分は、樹脂エマルションを含み、液状である。
外相成分は、必要に応じて、樹脂エマルションに由来しない水、体質顔料、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0014】
樹脂エマルションは、樹脂を形成材料とする粒子(懸濁粒子又は乳化粒子)と、これらの粒子を分散させる分散媒と、を有する。
樹脂としては、塗料用樹脂として使用できるものであれば特に種類は問わない。樹脂の例としては、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然ゴム、合成ゴム、及びこれらの共重合体(例えば、アクリル・スチレン共重合体)が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂エマルションの分散媒は、水が好ましい。
樹脂エマルションとしては、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。
【0015】
体質顔料は、塗料に用いられる無彩色顔料の総称である。体質顔料としては、例えば、タルク、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪砂等が挙げられる。体質顔料は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
添加剤としては、公知の添加剤を使用でき、例えば、防藻剤、防カビ剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、凍結防止剤、湿潤剤、水溶性樹脂、浸透助剤、防腐剤、抗菌剤、殺虫剤、忌避剤、撥水剤、撥油剤、親水化剤、防錆剤、難燃剤、表面調整剤、艶消剤、遮熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
外相成分において、樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量は、外相成分の固形分に対し、55質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量が上記下限値以上であると、塗膜の付着性に優れる。
外相成分が樹脂エマルションの樹脂分以外の固形分(体質顔料、添加剤等)を含む場合、樹脂エマルションの樹脂分換算の含有量は、外相成分の固形分に対し、例えば90質量%以下である。
【0018】
外相成分中の体質顔料の含有量は、外相成分の固形分に対し、例えば0~30質量%である。
外相成分中の添加剤の含有量は、外相成分の固形分に対し、例えば0~45質量%である。
【0019】
外相成分の固形分は、外相成分から樹脂エマルションの分散媒及び水を除いた部分である。
外相成分の固形分は、外相成分の総質量に対し、10~50質量%が好ましく、12~45質量%がより好ましい。
外相成分の非固形分(樹脂エマルションの分散媒及び水の合計)は、外相成分の総質量に対し、45~85質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。
【0020】
<ゲル状粒子>
ゲル状粒子は、ゲルで構成された粒子である。ゲル状粒子は、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の顔料、その他の各種の成分を含んでいてもよい。
【0021】
ゲル状粒子の一例として、樹脂エマルション及び親水性コロイド形成物質を含む液滴と、液滴の表面を覆うゲル化膜とを有するものが挙げられる。かかるゲル状粒子は、詳しくは後述するが、簡易な工程で製造することができる。
【0022】
液滴における樹脂エマルションとしては、外相成分における樹脂エマルションと同様のものが挙げられる。液滴における樹脂エマルション樹脂と外相成分における樹脂エマルションは同一でも異なっていてもよい。
【0023】
親水性コロイド形成物質は、ゲル化剤と反応し、ゲル化膜を形成可能な物質である。ゲル化剤については後述する。
親水性コロイド形成物質としては、例えば、セルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、天然高分子(カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等)等を含有する水溶液が挙げられる。親水性コロイド形成物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
親水性コロイド形成物質としては、グアルゴムの水溶液が好ましい。
【0024】
親水性コロイド形成物質の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対し、0.05~5.0質量部が好ましく、1.0~4.0質量部がより好ましい。親水性コロイド形成物質の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
【0025】
液滴は、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の顔料、その他各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、防藻剤、防カビ剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、凍結防止剤、湿潤剤、水溶性樹脂、浸透助剤、防腐剤、抗菌剤、殺虫剤、忌避剤、撥水剤、撥油剤、親水化剤、防錆剤、難燃剤、表面調整剤、艶消剤、遮熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0026】
ゲル化膜は、液滴の表面を覆い、ゲル状粒子の輪郭を形成している。ゲル化膜は、液滴に含まれる親水性コロイド形成物質と、ゲル化剤とが反応し架橋することで形成された三次元的網状組織を含む。ゲル化膜は、液滴よりも流動性が低下している。
【0027】
ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム等が挙げられる。中でもホウ酸塩の水溶液が好ましい。ゲル化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ゲル状粒子の大きさは、乾燥時の厚みが10μm以上、長手方向の長さが1.0mm以上であることが好ましい。ゲル状粒子がこのような大きさであると、光揮性顔料の塗着時のずり落ちを効果的に防止することができる。乾燥時の厚みの上限は、形成しようとする塗膜の厚み以下であればよいが、例えば200μmである。乾燥時の長手方向の長さの上限は、特に限定されないが、例えば30.0mmである。
乾燥時の厚み及び長手方向の長さは以下のようにして測定される。
ゲル状粒子の分散液(光輝性塗料組成物であってもよい)をローラー塗装もしくはスプレー塗装によって水平面上に塗布し、乾燥して、ゲル状粒子の乾燥物(以下、「乾燥ゲル状粒子」とも記す。)を含む塗膜を形成する。この塗膜の厚さ方向の断面をマイクロスコープによって観察し、塗膜の厚さ方向における乾燥ゲル状粒子の最大幅を乾燥時の厚み、塗膜の厚さ方向と直交する方向(塗膜の面内方向)における乾燥ゲル状粒子の最大幅を乾燥時の長手方向の長さとする。
ゲル状粒子の乾燥時の平均粒径は、2.0~15.0mmが好ましい。
乾燥時の平均粒径は、上記のようにして形成される塗膜に含まれる複数の乾燥ゲル状粒子それぞれの長手方向の長さの平均値である。
【0029】
<光揮性顔料>
光揮性顔料としては、公知の光輝性顔料を使用でき、例えば、マイカ顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、その他の金属粉が挙げられる。マイカ顔料としては、例えば、マイカ(雲母)、マイカを金属又は金属酸化物で被覆した被覆マイカが挙げられる。マイカを被覆する金属又は金属酸化物としては、例えば酸化チタンが挙げられる。これらの光輝性顔料は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
光揮性顔料は、粒径0.35mm以上の大粒径光輝性顔料を含む。大粒径光輝性顔料の粒径の上限は特に限定されないが、例えば5.0mmである。
光揮性顔料は、粒径0.35mm未満の小粒径光輝性顔料を含んでいてもよい。小粒径光輝性顔料の粒径の下限は特に限定されないが、例えば0.02mmである。
【0031】
光揮性顔料の粒度分布において、光揮性顔料全体に対する大粒径光輝性顔料が占める割合は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。大粒径光輝性顔料が占める割合が上記下限値以上であると、光輝性塗料組成物中の大粒径でない光輝性顔料の量が抑えられ、塗膜の光輝感が良好なものとなる。
光揮性顔料は、大粒径光輝性顔料のなかでも、粒径0.50mm以上の光輝性顔料を含むことが好ましく、粒径0.70mm以上の光輝性顔料を含むことがより好ましい。
光揮性顔料の粒度分布において、光揮性顔料全体に対する粒径0.50mm以上の光輝性顔料が占める割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
光揮性顔料の粒度分布において、光揮性顔料全体に対する粒径0.70mm以上の光輝性顔料が占める割合は、10質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
光揮性顔料の粒度分布は、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック)等により測定される。
光輝性顔料は、6Mesh(目開き3.35mm)のふるいで振るった時の残分が0.1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
<光揮性塗料組成物の製造方法>
光輝性塗料組成物は、例えば、ゲル状粒子の分散液と、樹脂エマルションと、光輝性顔料とを混合することにより製造できる。このとき、必要に応じて、添加剤、水等を混合してもよい。
【0033】
ゲル状粒子の分散液は、例えば、以下の製造方法で製造することができる。
まず、樹脂エマルションと親水性コロイド形成物質の水溶液とを混合し、エマルション塗料を調製する。親水性コロイド形成物質の水溶液の濃度は、0.5質量%以上7質量%以下が好ましく、1.0質量%以上5質量%以下がより好ましい。このとき、必要に応じて、顔料、他の添加剤、水等を混合してもよい。
次いで、ゲル化剤と水と、必要に応じて親水性コロイド形成物質とを混合したゲル化剤水溶液を調製する。ゲル化剤水溶液の濃度は0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましい。ゲル化剤水溶液におけるゲル化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、安定してゲル化膜が得られる。このとき、必要に応じて、体質顔料、他の添加剤等を混合してもよい。
次いで、ゲル化剤水溶液を分散機で撹拌しながら、ゲル化剤水溶液にエマルション塗料を添加する。
エマルション塗料をゲル化剤水溶液中で撹拌すると、エマルション塗料に含まれる親水性コロイド形成物質と、ゲル化剤水溶液に含まれるゲル化剤とが反応し、架橋することで三次元的網状組織(ゲル化膜)を形成する。また、エマルション塗料は、ゲル化剤との反応によって凝集しながら、撹拌により細分化される。細分化の過程においても、継続的に親水性コロイド形成物質とゲル化剤とが反応し、三次元的網状組織(ゲル化膜)を形成する。これにより、エマルション塗料からなる液滴がゲル化膜で被覆されたゲル状粒子の分散液を得ることができる。
このように、親水性コロイド形成物質とゲル化剤とが反応しながら、エマルション塗料の凝集体が細分化されることにより、ゲル化剤水溶液にゲル状粒子が分散した分散液が得られる。
【0034】
<塗装方法>
光輝性塗料組成物を基材上に塗装し、乾燥することで、塗膜(光輝性塗膜)が形成される。得られる塗膜は、樹脂エマルション由来の樹脂を含む外相と、乾燥ゲル状粒子と、光輝性顔料とを含む。
【0035】
基材としては、特に制限はなく、窯業系サイディングボード、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、石膏ボード等の窯業建材板や、アルミニウム、鉄及びステンレス等の金属建材板、モルタル、プラスチック、木材、紙など、種々の対象物に塗布することが可能である。また、これらの表面にシーラーやプライマー等による下地処理が施されているものであってもよい。
【0036】
光輝性塗料組成物の塗装方法に特に制限はなく、刷毛、こて、ローラー、スプレーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング等の公知の塗装方法を適用できる。
光輝性塗料組成物の塗装量(乾燥前)は、200~1200g/m2が好ましく、250~1000g/m2がより好ましい。塗装量が前記下限値以上であれば、塗膜性能が良好で、前記上限値以下であれば、塗装作業性が良好である。
【0037】
乾燥は、常温乾燥でも加熱乾燥でもよい。乾燥温度は、光輝性塗料組成物中の媒体(水等)を除去できればよく、例えば5~90℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば5分間~48時間である。
【0038】
以上説明した光輝性塗料組成物は、これまで塗料に用いられていなかったような大粒径の光輝性顔料を含むため、新規な外観を有する塗膜を形成できる。また、塗装面が垂直面であっても、塗装後の大粒径の光輝性顔料のずり落ちを抑制できる。また、形成される塗膜は、基材への付着性にも優れる。
本実施形態の光揮性塗料組成物では、ゲル状粒子、光輝性顔料がそれぞれ、液状の外相成分に分散しているため、光揮性塗料組成物が塗装された直後の塗膜においては、ゲル状粒子とゲル状粒子との間に、光揮性顔料が分散した外相成分が存在する。ゲル状粒子は液状ではないため、外相成分中の光輝性顔料はゲル状粒子中には移行せず、ゲル状粒子とゲル状粒子の間もしくは塗膜の表層面にのみ存在する。このため、ゲル状粒子を含まない通常の塗料(外相成分に光輝性顔料が分散された塗料)よりも、少ない量の光輝性顔料で同じような光輝度を得ることができる。
光輝性顔料の量が少なくなることで、外相成分中の樹脂エマルションの樹脂分と乾燥ゲル状粒子により連続的な樹脂層が形成され、光輝性顔料を含む通常の塗膜よりも強度のある塗膜となる。
光輝性顔料の量が少ないことは塗装作業性にも影響を与える。特に表面積の大きい大粒径光輝性顔料の量が少ないことで、スプレー塗装時に光輝性顔料が乾燥して舞ってしまう現象が抑えられる。
さらに、光揮性塗料組成物が垂直面に塗装されたときに、ゲル状粒子によって質量の大きい大粒径光輝性顔料のずり落ちが抑えられ、光輝性顔料のずり落ちに伴う外観の悪化も抑えられる。
【実施例0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。特に記載のない場合、「%」、「部」はそれぞれ「質量%」、「質量部」である。
【0040】
<使用材料>
アクリル・スチレン系樹脂エマルション:大日本インキ化学工業社製、商品名「ボンコートEC-888」、樹脂分50%。
非イオン性グアルガム誘導体の1.5%水溶液:SteinHall&Co.製、商品名「Jaguar J2S1」。
黒顔料:大日精化社製、商品名「ダイピロキサイド Black9596」。
青顔料:大日精化社製、商品名「ダイピロキサイド Blue9410」。
白顔料:石原産業社製、商品名「タイペークCR95」。
アニオン性高分子分散剤:日本アクリル化学社製、商品名「オロタン731」、不揮発分25%。
【0041】
光輝性顔料1:ヤマグチマイカ社製、商品名「メタルライト1132」、酸化金属被覆雲母、粒径0.35mm以上の割合:90.63%。
光輝性顔料2:ヤマグチマイカ社製、商品名「メタルライト932」、酸化金属被覆雲母、粒径0.35mm以上の割合:37.67%。
光輝性顔料3:ヤマグチマイカ社製、商品名「メタルライト931」、酸化金属被覆雲母、粒径0.35mm以上の割合:72.48%。
光輝性顔料における粒径0.35mm以上の割合は、光輝性顔料全体に対する割合である。該割合は、レーザ回折・散乱式粒子径分布(粒度分布)測定装置により測定した粒度分布から求めた。
【0042】
<調製例1:分散液Aの調製>
表1に示す配合(単位:部)に従って、含水ケイ酸マグネシウムの4%水分散液と、重ホウ酸アンモニウムの5%水溶液と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1%水溶液とを配合し、激しく攪拌混合した後、水を加えて希釈し、分散液Aを得た。
【0043】
【0044】
<調製例2:エマルション塗料B-1(黒色エマルション塗料)の調製>
表2に示す配合(単位:部)に従って、アクリル・スチレン系樹脂エマルションと、非イオン性グアルガム誘導体の1.5%水溶液と、黒顔料と、アニオン性高分子分散剤と、水とを充分に攪拌混合して、エマルション塗料B-1を得た。
【0045】
<調製例3:エマルション塗料B-2(青色エマルション塗料)の調製>
黒顔料の代わりに青顔料を用いた以外は調製例2と同様にして、エマルション塗料B-2を得た。
【0046】
<調製例4:エマルション塗料B-3(白色エマルション塗料)の調製>
黒顔料の代わりに白顔料を用いた以外は調製例2と同様にして、エマルション塗料B-3を得た。
【0047】
【0048】
<調製例5:ゲル状粒子(黒色ゲル状粒子)の分散液C-1の調製>
上記分散液Aの40部の攪拌下に、エマルション塗料B-1の60部を混合し、エマルション塗料B-1の粒子サイズが3~5mmになるまでゆるやかに攪拌し、ゲル状粒子の分散液C-1を得た。
作製した分散液C-1を、水平に配置した400mm×300mmの板上に、ローラーを用いて塗布し、乾燥した後、形成された塗膜の断面を観察したところ、塗膜中の複数の乾燥ゲル状粒子それぞれの厚みは5.0~25.0μm、長手方向の長さは0.3~21.0mmであった。また、長手方向の長さの平均値として平均粒径を求めたところ5.0mmであった。
【0049】
<調製例6:ゲル状粒子(青色ゲル状粒子)の分散液C-2の調製>
エマルション塗料B-1の代わりにエマルション塗料B-2を用いた以外は調製例5と同様にして、ゲル状粒子の分散液C-2を得た。
作製した分散液C-2を、水平に配置した400mm×300mmの板上に、ローラーを用いて塗布し、乾燥した後、形成された塗膜の断面を観察したところ、塗膜中の複数の乾燥ゲル状粒子それぞれの厚みは5.0~23.5μm、長手方向の長さは0.3~22.5mmであった。また、長手方向の長さの平均値として平均粒径を求めたところ5.5mmであった。
【0050】
<調製例7:ゲル状粒子(白色ゲル状粒子)の分散液C-3の調製>
エマルション塗料B-1の代わりにエマルション塗料B-3を用いた以外は調製例5と同様にして、ゲル状粒子の分散液C-3を得た。
作製した分散液C-3を、水平に配置した400mm×300mmの板上に、ローラーを用いて塗布し、乾燥した後、形成された塗膜の断面を観察したところ、塗膜中の複数の乾燥ゲル状粒子それぞれの厚みは4.5~24.0μm、長手方向の長さは0.3~22.0mmであった。また、長手方向の長さの平均値として平均粒径を求めたところ5.3mmであった。
【0051】
【0052】
<実施例1~16、比較例1~4>
表4、表5に示す配合に従って、ゲル状粒子の分散液C-1~C-3及びその他の材料を混合攪拌し、光輝性塗料組成物を得た。
表4、表5に、ゲル状粒子の含有量、外相成分の含有量(総量及び樹脂エマルションの樹脂分換算)、粒径0.35mm以上の光輝性顔料それぞれの含有量を示す。各含有量は、外相成分及びゲル状粒子の合計100部に対する割合である。
【0053】
得られた光輝性塗料組成物を、垂直に配置したスレート板上に、スプレーを用いて300g/m2塗装した。塗装後、ウェット状態の塗膜を目視で観察し、以下の基準で塗装後の光輝性顔料のずり落ちを評価した。その後、塗膜を23℃、3.0時間の条件で乾燥した。乾燥後の塗膜を目視で観察し、以下の基準で外観と付着性を評価した。結果を表4、表5に示す。
【0054】
「塗装後の光輝性顔料のずり落ちの評価基準」
○:光輝性顔料の分布が均一である。
△:光輝性顔料の分布に一部わずかな偏りがみられる。
×:光輝性顔料の分布に明らかな偏りがみられる。
【0055】
「外観の評価基準」
塗膜の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:ゲル状粒子が均一に分布している。
△:ゲル状粒子に偏りが見られ谷状の部分はできているが塗膜は連続している。
×:ゲル状粒子が自重でずれて連続塗膜になっていない。
【0056】
「付着性の評価基準」
○:剥離部分の面積が15%以下。
△:剥離部分の面積が15%を超えるが35%を上回らない。
×:剥離部分の面積が35%を上回る。
剥離部分の面積はJIS K5600-5-6に従い評価した。
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1~16は、塗装後の光輝性顔料のずり落ちの評価、外観の評価、付着性の評価のいずれも×は見られなかった。
一方、外相成分及びゲル状粒子の合計100部に対し、ゲル状粒子の含有量が20部未満の比較例1は、塗装後の光輝性顔料のずり落ちの評価が×であった。
外相成分及びゲル状粒子の合計100部に対し、ゲル状粒子の含有量が50部超の比較例2は、付着性の評価が×であった。
外相成分及びゲル状粒子の合計100部に対し、ゲル状粒子の含有量が20部未満、粒径0.35mm以上の光輝性顔料の含有量が0.1部未満の比較例3は、外観の評価が×であった。
外相成分及びゲル状粒子の合計100部に対し、粒径0.35mm以上の光輝性顔料の含有量が5.0部超の比較例4は、塗装後の光輝性顔料のずり落ちの評価と付着性の評価が×であった。