(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012835
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】排液処理システムおよび排液処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/127 20190101AFI20250117BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20250117BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20250117BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20250117BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20250117BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20250117BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20250117BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20250117BHJP
C02F 1/38 20230101ALI20250117BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20250117BHJP
B04B 1/02 20060101ALI20250117BHJP
B04B 13/00 20060101ALI20250117BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20250117BHJP
【FI】
C02F11/127 ZAB
B01D61/14 500
B01D61/44 500
B01D61/58
B01D63/00
C02F1/44 F
B01D63/06
C02F1/469
C02F1/38
C02F1/42 D
B04B1/02
B04B13/00
C02F9/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115964
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲也
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D057
4D059
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA18
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4D006HA47
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4D059EB20
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4D061EA09
4D061EB01
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA20
(57)【要約】
【課題】多量の薬剤を使わず物理的な濾過濃縮分離方式で消化液等の排液を濃縮処理して所望の液体肥料を得ることができる排液処理システムを提供する。
【解決手段】排液処理システムは、有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離装置と、遠心分離装置により分離された液相を濾過して固形分を除去する濾過装置と、濾過装置により濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析装置と、を備える。遠心分離装置は、排液を貯留する貯留槽と、壁部を含み、貯留槽の上方に配置されており、開口が設けられており、所定の速度で回転する回転容器と、貯留槽に貯留される排液を回転容器の内壁面に向かって吐出する吐出部と、を含む。遠心分離装置は、開口を下向きにした状態で回転容器を回転させながら吐出部により貯留槽から排液を壁部の内壁面に向かって吐出し、遠心力により固相を壁部の内壁面に付着させることにより固相と液相とを分離する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離装置と、
前記遠心分離装置により分離された前記液相を濾過して固形分を除去する濾過装置と、
前記濾過装置により濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析装置と、を備え、
前記遠心分離装置は、
前記排液を貯留する貯留槽と、
壁部を含み、前記貯留槽の上方に配置されており、開口が設けられており、所定の速度で回転する回転容器と、
前記貯留槽に貯留される前記排液を前記回転容器の内壁面に向かって吐出する吐出部と、を含み、
前記遠心分離装置は、前記開口を下向きにした状態で前記回転容器を回転させながら前記吐出部により前記貯留槽から前記排液を前記壁部の内壁面に向かって吐出し、遠心力により前記固相を前記壁部の内壁面に付着させることにより固相と液相とを分離する、排液処理システム。
【請求項2】
前記回転容器の回転数は、4000rpm以上7000rpm以下である、請求項1に記載の排液処理システム。
【請求項3】
前記回転容器に発生させる遠心力は、2200G以上6800G以下である、請求項1または請求項2に記載の排液処理システム。
【請求項4】
前記吐出部の吐出方向から見て、前記壁部の周縁は、前記貯留槽の内側に配置される、請求項1または請求項2に記載の排液処理システム。
【請求項5】
前記濾過装置は、チューブ状の限外濾過膜を含み、
前記限外濾過膜の表面に対して平行方向に液を流すタンジェンシャルフロー方式濾過を行い、
前記液相を前記限外濾過膜の内部に流し、前記限外濾過膜を透過した透過液を濾液として回収し、前記電気透析装置に送る、請求項1または請求項2に記載の排液処理システム。
【請求項6】
前記濾過装置は、
前記濾過装置を循環する前記液相の粘度を測定する粘度センサと、
前記濾過装置を循環する前記液相の流量を測定する流量計と、を含み、
前記粘度センサにより測定された前記液相の粘度が所定値以上となった場合または前記流量計により測定された前記液相の流量が所定値未満となった場合に濾過を停止するように制御される、請求項5に記載の排液処理システム。
【請求項7】
前記電気透析装置の前に配置されるキレート樹脂を含む金属イオン除去装置をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の排液処理システム。
【請求項8】
有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離工程と、
前記遠心分離工程の後に、分離された前記液相を濾過して固形分を除去する濾過工程と、
前記濾過工程の後に濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析工程と、を含み、
前記遠心分離工程は、前記排液を貯留する貯留槽から、開口を下向きに配置した状態で、所定の速度で回転する回転容器の壁部の内壁面に向かって前記排液を吐出し、遠心力により前記固相を前記壁部の内壁面に付着させ、液相を前記貯留槽に回収することにより固相と液相とを分離する、排液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排液処理システムおよび排液処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物のメタン発酵により生じた消化液の処理に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-13909号公報
【特許文献2】特開2019-131432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
畜産廃棄物や生ごみ等の有機性廃棄物を発酵させ、消化液からメタンを主成分とするバイオガスを回収してリサイクルエネルギーとして利用することが昨今行われている。メタン発酵の消化液には植物の栄養成分が含まれているため、液体肥料として活用することが検討されている。
【0005】
消化液に含まれる栄養成分の濃度はそのままでは薄いため、液体肥料として用いる場合、多量に散布する必要があるが、消化液の運搬費用や散布費用が高くなるため十分に活用されていない。ここで、消化液中の水分を蒸発させることにより肥料成分の濃度を濃くする手法が考えられるが、水分を蒸発させるために莫大なエネルギー負荷がかかり、液体肥料には本来必要でない夾雑物も同時に濃縮されるため好ましくない。消化液に対して凝集処理をする場合には多量の薬剤を添加する必要があるが、薬剤には有機物でないものも多く、バイオ循環システム(有機物循環システム)としては課題があった。
【0006】
そこで、多量の薬剤を使わず物理的な濾過濃縮分離方式で消化液等の排液を濃縮処理して所望の液体肥料を得ることができる排液処理システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った排液処理システムは、有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離装置と、遠心分離装置により分離された液相を濾過して固形分を除去する濾過装置と、濾過装置により濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析装置と、を備える。遠心分離装置は排液を貯留する貯留槽と、壁部を含み、貯留槽の上方に配置されており、開口が設けられており、所定の速度で回転する回転容器と、貯留槽に貯留される排液を回転容器の内壁面に向かって吐出する吐出部と、を含む。遠心分離装置は、開口を下向きにした状態で回転容器を回転させながら吐出部により貯留槽から排液を壁部の内壁面に向かって吐出し、遠心力により固相を壁部の内壁面に付着させることにより固相と液相とを分離する。
【発明の効果】
【0008】
上記排液処理システムによれば、多量の薬剤を使わず物理的な濾過濃縮分離方式で消化液等の排液を濃縮処理して所望の液体肥料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1における排液処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、遠心分離装置の一部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、濾過装置の一部を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、排液処理システムを用いた排液処理方法における代表的な工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態1における排液処理システムを用いた排液処理方法におけるマテリアルバランスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の概要]
本発明に係る排液処理システムは、有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離装置と、遠心分離装置により分離された液相を濾過して固形分を除去する濾過装置と、濾過装置により濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析装置と、を備える。遠心分離装置は、排液を貯留する貯留槽と、壁部を含み、貯留槽の上方に配置されており、開口が設けられており、所定の速度で回転する回転容器と、貯留槽に貯留される排液を回転容器の内壁面に向かって吐出する吐出部と、を含む。遠心分離装置は、開口を下向きにした状態で回転容器を回転させながら吐出部により貯留槽から排液を壁部の内壁面に向かって吐出し、遠心力により固相を壁部の内壁面に付着させることにより固相と液相とを分離する。
【0011】
本発明に係る排液処理システムによると、遠心分離装置により遠心力を利用して、排液に含まれる固相と液相とを分離することができる。そして、濾過装置により液相中に残った固形分を取り除くことができる。この場合、遠心分離装置により固相を取り除いており、濾過装置の目詰まりや濾過膜の交換頻度の増加を抑制することができるため、長期間にわたって効率的に液相から固形分を取り除くことができる。そして、電気透析装置により窒素成分を濃縮して、所望の濃度の窒素成分とした液体肥料を得ることができる。ここで、遠心分離装置は、上記構成の貯留槽、回転容器および吐出部を含むため、回転容器の内壁面に固相を付着させることにより固相と液相とを分離することができる。この場合、液相は、回転容器の内壁面を伝って自重により再び貯留槽に戻り、固相のみが回転容器の内壁面に遠心力により堆積されていくため、液相から固相を引き離した状態で固相と液相とを分離することができる。堆積した固相は、回転容器の内壁面に付着しているため、定期的に回転容器の内壁面に付着した固相をこそげ落として、容易に回収することができる。また、上記した貯留槽、回転容器および吐出部を含む遠心分離装置、濾過装置および電気透析装置は比較的コンパクトかつ安価に構成することができる。以上より、上記排液処理システムによると、多量の薬剤を使わず物理的な濾過濃縮分離方式で排液を濃縮処理して所望の液体肥料を得ることができる。なお、回転容器の壁面から回収した固形分は、窒素成分およびリン成分等を含むため、固形堆肥として使用することができる。本発明に係る排液処理システムは、多量の有機物と固形分を含む消化液であっても効率的に処理を行うことができる。
【0012】
上記排液処理システムにおいて、回転容器の回転数は、4000rpm(round per minute)以上7000rpm以下であってもよい。回転数が低すぎると固形物の分離が不十分になり、回転数が高すぎるとエネルギーロスに繋がる。このように回転数を高くすることにより、より確実に排液に含まれる固相を回転容器の内壁面に付着させながら、液相を貯留槽に戻すことができる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。なお、回転容器の回転数は、5000rpm以上、さらに5500rpm以上が好ましく、6500rpm以下であることが好ましい。
【0013】
上記排液処理システムにおいて、回転容器に発生させる遠心力は、2200G以上6800G以下であってもよい。このように遠心力を高くすることにより、より確実に排液に含まれる固相を回転容器の内壁面に付着させながら、液相を貯留槽に戻すことができる。一方、遠心力が高すぎるとエネルギーロスに繋がる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。なお、回転容器に発生させる遠心力は、3500G以上さらに4200G以上が好ましく、6000G以下であることが好ましい。
【0014】
上記排液処理システムにおいて、吐出部の吐出方向から見て、壁部の周縁は、貯留槽の内側に配置されてもよい。このようにすることにより、壁部の周縁から伝い落ちる液相を貯留槽に確実に戻すことができる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。
【0015】
上記排液処理システムにおいて、濾過装置は、チューブ状の限外濾過膜を含んでもよい。液相を限外濾過膜の内部に流し、限外濾過膜の表面に対して平行方向に液を流すタンジェンシャルフロー方式濾過を行ってもよい。限外濾過膜を透過した透過液を濾液として回収し、電気透析装置に送ってもよい。限外濾過膜を透過しない成分は、非透過液として回収される。濾過装置は、排液を循環させて非透過液と透過液とを分離する。このことにより、短期間で、まだ比較的多くの固形分を含む液相から固形分の大半を除去し、固形分の含有量が少ない透過液、場合によっては、固形分をほとんど含まない透過液を得ることができる。また、チューブ状の限外濾過膜を透過した透過液も回収しやすく、限外濾過膜を透過しない非透過液を取り出しやすい。したがって、効率的に液相から固形分を取り除くことができる。なお、濾過装置で回収された非透過液は、排液よりも窒素濃度が高く、液体肥料としても使用することができる。
【0016】
上記排液処理システムにおいて、濾過装置は、濾過装置を循環する液相の粘度を測定する粘度センサと、濾過装置を循環する液相の流量を測定する流量計と、を含んでもよい。粘度センサにより測定された液相の粘度が所定値以上となった場合または流量計により測定された液相の流量が所定値未満となった場合に濾過を停止するように制御されてもよい。濾過装置による濾過が進行すると、透過液が回収され、非透過液が循環されるため、非透過液の粘度が高くなり流速が遅くなる。タンジェンシャルフロー方式の濾過では、循環する非透過液の流速が遅いと膜の目詰まりが発生しやすくなる。そこで、濾過装置の循環ループにおいて、例えば限外濾過膜の下流に流量計を配置し、非透過液の流速を測定する。非透過液の流速が所定値未満となった場合には、濾過を停止する。しかし、排液には多種多様な有機物や固形分が含まれ、性状は一定ではない。排液が、例えばメタン発酵後に排出される消化液であった場合には、消化液にはワラや米のもみ殻など多種多様な物質が含まれ性状が不安定である。そのため、循環する非透過液の流速が所定値以上であっても、非透過液の粘度が想定以上に高くなる場合が生じる。このような状態が続けば、限外濾過膜に過剰な圧力がかかり、限外濾過膜が損傷する場合がある。そのため、濾過装置の循環ループにおいて限外濾過膜の下流に粘度センサを設置し、非透過液の粘度を測定し、粘度が所定値以上となった場合には濾過を停止する。濾過を停止する際に、その旨や停止理由等をディスプレイやランプ等により表示してもよい。非透過液の性状が安定していれば、流速または粘度のみに基づいて濾過装置を制御しても支障が生じる可能性が低いが、排液の性状は不安定であるため、流速と粘度に基づいて濾過装置を制御することが好適である。このように液相の粘度および流量を管理することにより、限外濾過膜の損傷を防ぎながら、短時間での確実な濾過が可能になる。したがって、より適切に液相から固形分を取り除くことができる。
【0017】
上記排液処理システムにおいて、電気透析装置の前に配置されるキレート樹脂を含む金属イオン除去装置をさらに備えてもよい。このようにすることにより、電気透析装置による処理を行う前に、濾液中に含まれる金属イオンを取り除き、電気透析装置におけるいわゆる目詰まりを防止することができる。特に、カルシウムイオンを取り除くことにより、目詰まりを防止することができる。したがって、電気透析装置の損傷や部費の頻繁な交換等を避けることが容易となる。
【0018】
電気透析装置は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が交互に配置され、その間に脱塩室と濃縮室が配置された積層構造を備える。積層構造の両端に電極が設置されている。脱塩室に液を供給し、電極に電圧を印加すると、イオンが電極に引き寄せられるため、濃縮室に窒素イオンが集まる。そのため、濃縮室から排出される濃縮液には窒素成分が濃縮され、脱塩室からは脱塩液が排出される。濃縮液の窒素濃度は、排液の窒素濃度よりも、例えば5~15倍程度まで高くなり、液体肥料として好適に用いることができる。
【0019】
本発明に係る排液処理方法は、有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離工程と、遠心分離工程の後に、分離された液相を濾過して固形分を除去する濾過工程と、濾過工程の後に濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析工程と、を含む。遠心分離工程は、排液を貯留する貯留槽から、開口を下向きに配置した状態で、所定の速度で回転する回転容器の壁部の内壁面に向かって排液を吐出し、遠心力により固相を壁部の内壁面に付着させ、液相を貯留槽に回収することにより固相と液相とを分離する。
【0020】
このような排液処理方法によると、大掛かりな設備を必要とせず、安価に排液を処理して所望の液体肥料を得ることができる。本発明に係る排液処理方法は、多量の有機物と固形分とを含む消化液であっても安価で効率的に処理を行うことができる。
【0021】
[実施形態の具体例]
次に、本発明に係る排液処理システムの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下では、バイオガス発電に用いるメタン発酵槽から排出される排液である消化液を例に説明するが、それに限定されず、有機物を含む排液を処理する処理システムおよび処理方法に適用することができる。また、消化液も、メタン発酵による消化液に限定されない。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る排液処理システムについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における排液処理システム(消化液処理システム)の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1を参照して、実施の形態1に係る消化液処理システム11は、メタン発酵の結果生成される、有機物を含む消化液を処理して、所望の液体肥料を得る。消化液処理システム11は、遠心分離装置12と、濾過装置13と、金属イオン除去装置14と、電気透析装置15と、を含む。遠心分離装置12は、有機物を含む消化液を遠心力により固相と液相とに分離する。濾過装置13は、遠心分離装置12により分離された消化液は、遠心分離装置12、濾過装置13、金属イオン除去装置14、そして電気透析装置15を経由して処理され、所望の濃度の液体肥料が製造される。なお、消化液処理システム11は、遠心分離装置12、濾過装置13、金属イオン除去装置14、電気透析装置15を別々に配置して構成されていてもよく、上記の複数の種類の装置が一体となった装置として構成されていてもよい。
【0024】
次に、遠心分離装置12の構成について説明する。
図2は、遠心分離装置12の一部を示す模式図である。
図2を参照して、遠心分離装置12は、貯留槽21と、回転容器22と、吐出部23と、を含む。なお、遠心分離装置12は、消化液の処理量に応じて消化液処理システム11に複数含まれてもよい。
【0025】
貯留槽21は、平板状の底壁部24と、底壁部24の周縁から立ち上がるように延びる第1側壁部25と、を含む。すなわち、貯留槽21には、上部に開口26が設けられている。本実施形態においては、底壁部24は、円板状であり、第1側壁部25は、中空円筒状である。貯留槽21には、有機物を含む消化液16が貯留される。
【0026】
回転容器22は、貯留槽21の上方、本実施形態においては、貯留槽21の鉛直上方側に配置されている。回転容器22は、貯留槽21と間隔をあけて取り付けられる。回転容器22は、内壁面が半球状の天壁部27と、天壁部27の周縁から下方側に延びる第2側壁部28と、を含む。回転容器22には、開口29が設けられている。回転容器22の内部は空洞となっており、スクリューなどは設置されていない。
図2では開口29は下向きになっているが、回転容器22を回転させていないときには開口29が上向きに配置されていてもよい。第2側壁部28は、中空円筒状である。天壁部27の内壁面は、第2側壁部28の内壁面と滑らかに連なっている。回転容器22のサイズが余りに大き過ぎると、固形分の多い消化液16が吐出される回転容器22を高い回転数で回転させることが難しくなる。一方、回転容器22のサイズが余りに小さ過ぎると、処理量が少なくなり、処理に時間を要する。そのため、回転容器22のサイズは、例えば第2側壁部28の内壁面が直径20cm以上50cm以下の中空円筒状であり、容量として1L(リットル)以上10L以下程度であることが好適である。なお、後述する吐出部23の矢印D1で示す吐出方向から見て、壁部(第2側壁部28)の周縁は、貯留槽21の内側に配置される。回転容器22は、例えば、制御により矢印R1で示す向きに回転する。この回転時における回転軸17を、一点鎖線で示す。回転軸17は、回転容器22の最も凹んだ部分を通る。遠心分離装置12では、例えば、3μm以上の固形分を除去するのに適した回転数や遠心力が選択される。回転容器22の回転数は、4000rpm以上7000rpm以下である。回転容器22の遠心力は、2200G以上6800以下である。一例として、回転容器22の回転数は、6000rpmが選択され、回転容器22の遠心力は、5000Gが選択される。
【0027】
吐出部23は、例えば吐出ポンプであり、吐出口が貯留槽21内に配置されている。吐出部23は、貯留槽21に貯留される消化液16を回転容器22の内壁面に向かって吐出する。すなわち、本実施形態においては、吐出部23は、鉛直上方側に向かって消化液16を吐出する。貯留槽21に充填した消化液16を循環させて回転容器22の内壁面への吐出、貯留槽21への回収を繰り返し、所定時間経過するまで行う。遠心分離処理が終了すれば、貯留槽21に収容されている液を濾過装置13に送り出す。回収アーム(図示せず)を回転容器22の内壁面に沿うように動かして、内壁面に付着した固形分をこそげ落とし、付着物をタンク(図示せず)に回収する。その後、回転容器22を洗浄する。回収が終了すれば、貯留槽21に新たに消化液16を充填し、遠心分離処理を行う。遠心分離工程、固形分の回収、回転容器22の洗浄、貯留槽21への消化液16の充填はバッチ処理であり、1バッチ分の所要時間は適宜選択可能であるが、通常10分~30分程度である。なお、吐出部23は、例えばポンプ、吐出口、それらを繋ぐ配管等から構成される。
図2では、吐出部23が貯留槽21の内部に設置されているが、貯留槽21と吐出部23とが配管等で接続されていてもよい。貯留槽21は、複数のタンクから構成されていてもよい。
【0028】
次に、濾過装置13の構成について説明する。
図3は、濾過装置13の一部を示す概略斜視図である。
図3においては、理解を容易にする観点から、一部の部材を断面で示している。なお、
図3には透過液が流れる外側の配管の図示を省略している。濾過装置13は、チューブ状の限外濾過膜(UF(Ultra Filtration)膜)31の他、図示しないが循環タンク、透過液回収タンク、循環ポンプを含む。濾過装置13は、チューブラー型膜モジュールとも言う。限外濾過膜31には、複数の微細孔32が設けられている。限外濾過膜31は、遠心分離装置12で分離できなかった固形分を除去する。微細孔32の大きさとしては、例えば、φ0.02μmのものが用いられる。限外濾過膜31はチューブ状になっており、チューブ内部にタンジェンシャルフロー方式で液相33を流し、限外濾過膜31を透過した透過液を濾液34として回収する。限外濾過膜31を透過しなかった液相33は循環タンクに還流する。液相33は、循環タンクと限外濾過膜31間を循環し、バッチ処理が行われ、限外濾過膜31を透過した透過液と循環タンクに残った非透過液が回収される。その後、新たな液相33が循環タンクに充填される。非透過液は、窒素成分およびリン成分を消化液16よりも多く含み、植物の栄養成分が濃縮されているため液体肥料に利用される。
【0029】
濾過装置13は、粘度センサ35と、流量計36と、を含む。粘度センサ35および流量計36は、例えば、チューブ状の限外濾過膜31と循環タンクとの間に配置されている。粘度センサ35は、限外濾過膜31内を流れる液相33の粘度を検知する。流量計36は、限外濾過膜31内を流れる液相33の流量を検知する。測定した流量から限外濾過膜31を流れる液相の流速を算出することができるので、流量に基づいて制御を行うことができる。濾過装置13は、限外濾過膜31内を流れる液相33の粘度および流量に応じて動作が制御される。具体的には、例えば、粘度が所定の値(例えば、150mPa・s)よりも大きくなれば、流量に関わらず、濾過装置13における濾過の動作を停止する、流量が所定の値未満となれば、粘度に関わらず、濾過装置13における濾過の動作を停止する、といった具合である。ここでは流量計を用いているが、流速計を用い、流速が所定値未満、例えば2m/秒未満になった場合に濾過を停止するように制御してもよい。
【0030】
金属イオン除去装置14は、濾液34から金属イオンを除去するキレート樹脂を含む。キレート樹脂は透過液に含まれる成分に基づいて選択すればよい。金属イオン除去装置14は、具体的には、濾液34から濾液34中に含まれるカルシウムイオンを除去する。キレート樹脂を透過した濾液34からは、金属イオンとしてのカルシウムイオンが除去されている。金属イオン除去装置14は、濾過装置13の後であって、電気透析装置15の前に配置される。
【0031】
電気透析装置15は、電気透析により、濾液34中の窒素成分を濃縮する。電気透析装置15により窒素成分を濃縮して、所望の濃度の液体肥料を得る。
【0032】
次に、消化液処理システム11を用いた消化液処理方法について説明する。
図4は、消化液処理システム11を用いた消化液処理方法における代表的な工程を示すフローチャートである。
図4を参照して、実施の形態1における消化液処理方法では、工程(S10)として、遠心分離工程が実施される。この工程(S10)は、上記した遠心分離装置12を用いて消化液を固相と液相とに分離する工程である。この工程では、貯留槽21内に処理対象の消化液16を投入し、回転容器22を上記回転数で回転させながら、吐出部23による吐出を行う。そうすると、
図2の矢印D1の向きに反って吐出された消化液16は、自重により天壁部27の内壁面および第2側壁部28の内壁面に沿って、矢印D2、矢印D3の向きに伝う。ここで、消化液16に含まれる固相については、液相よりも重いため、大きな遠心力がかかり、回転容器22の第2側壁部28の内壁面に固相が付着する。一方、液相は、第2側壁部28の内壁面を伝って、再び貯留槽21内に落下する。このようにして、回転容器22を回転させながら吐出部23による吐出を所定時間続ける。その後、遠心分離装置12を停止する。貯留槽21内に残った液相は、固相の大部分が除去されたものとなり、次の工程へ運ばれる。遠心分離装置12の停止後、回転容器22の第2側壁部28の内壁面に付着した固相を、ヘラ等を用いてこそげ落とす。その後、貯留槽21および回転容器22を洗浄し、次の消化液の処理を行う。すなわち、いわゆるバッチ処理で遠心分離を行う。
【0033】
次に、工程(S20)として、濾過工程が実施される。この工程(S20)では、遠心分離工程の後に、固形分の含有量が低減した液相33を濾過して固形分をさらに除去する。具体的には、工程(S10)で得られた液相33を、限外濾過膜31で形成されたチューブ内に流す。そうすると、微細孔32を通じて限外濾過膜31の外部に透過する透過液は、固形分を含まない濾液34となる。つまり、遠心分離によって除去しきれない微細な固形分が、この工程によって除去される。この濾液34が回収されて次の工程へと運ばれる。なお、所定時間循環させても限外濾過膜31を透過しなかった液相33は、循環タンクに残存する。循環タンク内に残存した非透過液も窒素濃度、リン濃度は後述する濃縮液よりも低いものの消化液16よりは栄養成分が濃縮されているため、液体肥料として有効に利用することができる。
【0034】
次に、工程(S30)として、金属イオン除去工程が実施される。この工程(S30)では、キレート樹脂を含む金属イオン除去装置14に濾液34を通し、濾液34中の金属イオン、具体的には、カルシウムイオンを除去する。
【0035】
次に、工程(S40)として、電気透析工程が実施される。この工程(S40)では、濾過工程の後に濾過された濾液34を電気透析装置15により電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る。このようにして、所望の濃度の液体肥料を得る。
【0036】
消化液処理システム11を用いた消化液処理方法におけるマテリアルバランスの一例を
図5に示す。消化液の全窒素濃度(T-N)は低く、肥料として用いた場合には多量を散布する必要がある。消化液には固形分である不溶解性物質(SS:Suspended Solids)が、例えば20000~50000mg/Lと多量に含まれるため、一般的な遠心分離機を適用することが難しい。しかし、上記消化液処理システム11の遠心分離装置12は、簡易な構造でありながら、固形分の多い液体を供給しても高い回転数で回転容器22を回転させて固相と液相に分離することができる。これにより、消化液の固形分の量を大幅に、例えば1/10程度に低減することができる。また、限外濾過膜31による濾過工程の前に、遠心分離により固形分を除去しているため、限外濾過膜31の目詰まりや濾過工程中の流量減少、粘度上昇による濾過工程の早期停止を回避することにより、回収液に残存していた固形分の大半を除去することができる。例えば、固形分濃度(SS)を数10mg/L程度に低減することができる。なお、
図5中において「ケーキ量」とは、遠心分離装置12の回転容器22の壁面から回収した固形分の量を示す。電気透析装置15から排出される濃縮液のT-Nは、消化液の数倍から10倍程度に濃縮されている。
図5で示した例では、濃縮液T-Nは27000mg/L(2.7%)であり、液体肥料として用いるのに好適な窒素濃度である。脱塩水のT-Nおよび全リン濃度(T-P)は消化液よりも大幅に低減されており、脱塩水を下水道処理施設で処理する場合でも下水道処理設備に大きな負担がかからない。
【0037】
全リン濃度は、遠心分離装置12から回収された固形分が最も高く、次いで、濾過装置13から排出される非透過液となり、電気透析装置15から排出される濃縮液のT-Pが最も低い。また、電気透析装置15から排出される濃縮液のT-Nは、遠心分離装置12から回収された固形分、濾過装置13から排出される非透過液のT-Nよりも高く、窒素成分を多く含む液体肥料として好適に使用することができる。
【0038】
上記消化液処理システム11によると、遠心分離装置12により遠心力を利用して、消化液16に含まれる固相と液相とを分離することができる。そして、濾過装置13により液相中に残った固形分を取り除くことができる。この場合、遠心分離装置12により固相を取り除いており、濾過装置13の目詰まりや限外濾過膜31の交換頻度の増加を抑制することができるため、長期間にわたって効率的に液相から固形分を取り除くことができる。そして、電気透析装置15により窒素成分を濃縮して、所望の濃度の窒素成分とした液体肥料を得ることができる。ここで、遠心分離装置12は、上記構成の貯留槽21、回転容器22および吐出部23を含むため、回転容器22の内壁面に固相を付着させることにより固相と液相とを分離することができる。この場合、液相は、回転容器22の内壁面を伝って自重により再び貯留槽21に戻り、固相のみが回転容器22の内壁面に遠心力により堆積されていくため、液相から固相を引き離した状態で固相と液相とを分離することができる。堆積した固相は、回転容器22の内壁面に付着しているため、定期的に回転容器22の内壁面に付着した固相をこそげ落として、容易に回収することができる。また、上記した貯留槽21、回転容器22および吐出部23を含む遠心分離装置12、濾過装置13および電気透析装置15は比較的コンパクトかつ安価に構成することができる。以上より、上記消化液処理システム11によると、大掛かりな設備を必要とせず、安価に消化液を処理して所望の液体肥料を得ることができる。消化液処理のために多量の薬剤を使用すること無く、液体肥料を得ることができる。なお、回転容器22の内壁面から回収した固形分は、窒素成分およびリン成分等を含むため、固形堆肥として使用することができる。
【0039】
本実施形態においては、回転容器22の回転数は、4000rpm以上7000rpm以下である。このように回転数を高くすることにより、より確実に排液に含まれる固相を回転容器22の内壁面に付着させながら、液相を貯留槽21に戻すことができる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。
【0040】
本実施形態においては、回転容器22に発生させる遠心力は、2200G以上6800G以下である。このように遠心力を高くすることにより、より確実に排液に含まれる固相を回転容器22の内壁面に付着させながら、液相を貯留槽21に戻すことができる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。
【0041】
本実施形態においては、吐出部23の吐出方向から見て、壁部である第2側壁部28の周縁は、貯留槽21の内側に配置される。よって、第2側壁部28の周縁から伝い落ちる液相を貯留槽21に確実に戻すことができる。したがって、より効率的に固相と液相とを分離することができる。
【0042】
本実施形態においては、濾過装置13は、チューブ状の限外濾過膜31を含む。液相を限外濾過膜31の内部に流し、限外濾過膜31を透過した透過液を濾液として回収し、電気透析装置15に送る。限外濾過膜31を透過しない成分は、非透過液として回収される。濾過装置13は、消化液を循環させて非透過液と透過液とを分離する。このことにより、短期間で、まだ比較的多くの固形分を含む液相から固形分の含有量が少ない透過液を得ることができる。また、チューブ状の限外濾過膜31を透過した透過液も回収しやすく、限外濾過膜31を透過しない非透過液を取り出しやすい。したがって、効率的に液相から固形分を取り除くことができる。なお、濾過装置13で回収された非透過液は、消化液よりも窒素濃度が高く、液体肥料としても使用することができる。
【0043】
本実施形態においては、濾過装置13は、濾過装置13を循環する液相の粘度を測定する粘度センサ35と、濾過装置13を循環する液相の流量を測定する流量計36と、を含む。粘度センサ35により測定された液相の粘度が所定値以上となった場合または流量計36により測定された液相の流量が所定値未満となった場合に濾過を停止するように制御される。濾過装置13による濾過が進行すると、透過液が回収され、非透過液が循環されるため、非透過液の粘度が高くなり流速が遅くなる。チューブ状の限外濾過膜31では、タンジェンシャルフロー方式で非透過液を流すため、流速が遅いと膜の目詰まりが発生しやすくなる。そこで、濾過装置13の循環ループにおいて限外濾過膜31の下流に流量計を配置し、非透過液の流速を測定する。非透過液の流速が所定値未満となった場合には、濾過を停止する。しかし、排液の一例である消化液は、メタン発酵の結果生成されるものであり、消化液にはワラや米のもみ殻など多種多様な物質が含まれ性状が不安定である。そのため、循環する非透過液の流速が所定値以上であっても、非透過液の粘度が想定以上に高くなる場合が生じる。このような状態が続けば、限外濾過膜31に過剰な圧力がかかり、限外濾過膜31が損傷する場合がある。そのため、濾過装置13の循環ループにおいて限外濾過膜31の下流に粘度センサ35を設置し、非透過液の粘度を測定し、粘度が所定値以上となった場合には濾過を停止する。濾過を停止する際に、その旨や停止理由等をディスプレイやランプ等により表示してもよい。非透過液の性状が安定していれば、流速または粘度のみに基づいて濾過装置13を制御しても支障が生じる可能性が低いが、消化液の性状は不安定であるため、流速と粘度に基づいて濾過装置13を制御することが好適である。このように液相の粘度および流量を管理することにより、限外濾過膜31の損傷を防ぎながら、短時間での確実な濾過が可能になる。したがって、より適切に液相から固形分を取り除くことができる。
【0044】
本実施形態においては、電気透析装置15の前に配置されるキレート樹脂を含む金属イオン除去装置14を含む。よって、電気透析装置15による処理を行う前に、濾液中に含まれる金属イオンを取り除き、電気透析装置15におけるいわゆる目詰まりを防止することができる。特に、カルシウムイオンを取り除くことにより、目詰まりを防止することができる。したがって、電気透析装置15の損傷や部費の頻繁な交換等を避けることが容易となる。
【0045】
本発明に係る排液処理方法は、有機物を含む排液を遠心力により固相と液相とに分離する遠心分離工程と、遠心分離工程の後に、分離された液相を濾過して固形分を除去する濾過工程と、濾過工程の後に濾過された濾液を電気透析し、窒素成分を濃縮した濃縮液を得る電気透析工程と、を含む。遠心分離工程は、排液を貯留する貯留槽21から、開口を下向きに配置した状態で、所定の速度で回転する回転容器22の壁部の内壁面に向かって排液を吐出し、遠心力により固相を壁部の内壁面に付着させ、液相を貯留槽21に回収することにより固相と液相とを分離する。
【0046】
このような排液処理方法によると、大掛かりな設備を必要とせず、安価に排液を処理して所望の液体肥料を得ることができる。
【0047】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、金属イオン除去装置は、キレート樹脂により金属イオンを除去することとしたが、他の方法により金属イオンを除去することにしてもよい。
【0048】
また、上記の実施の形態において、遠心分離装置に含まれる回転容器の天壁部は、半球状の内壁面であることとしたが、これに限らず、例えば、テーパー状、すなわち、天壁部と第2側壁部の内壁面が角柱状であってもよいし、第2側壁部の下方側の端部が、内側に折り曲げられ、固相の貯留槽への落下を抑制する機構を備えることとしてもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
11 消化液処理システム、12 遠心分離装置、13 濾過装置、14 金属イオン除去装置、15 電気透析装置、16 消化液、17 回転軸、21 貯留槽、22 回転容器、23 吐出部、24 底壁部、25 第1側壁部、26,29 開口、27 天壁部、28 第2側壁部、31 限外濾過膜、32 微細孔、33 液相、34 濾液、35 粘度センサ、36 流量計。