(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012850
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】再生無機繊維の製造方法及び触媒担体保持マットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20250117BHJP
D06H 7/00 20060101ALI20250117BHJP
D06C 7/00 20060101ALI20250117BHJP
B07B 4/08 20060101ALI20250117BHJP
B07B 9/00 20060101ALI20250117BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20250117BHJP
【FI】
B09B3/35
D06H7/00 ZAB
D06C7/00 Z
B07B4/08 Z
B07B9/00 A
B09B3/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115997
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 龍也
(72)【発明者】
【氏名】横山 聖海
【テーマコード(参考)】
3B154
4D004
4D021
【Fターム(参考)】
3B154AA13
3B154AB22
3B154AB23
3B154AB31
3B154BB12
3B154BB53
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4D004AA16
4D004AA26
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4D021FA09
4D021GA11
4D021GA23
4D021GB01
4D021GB02
4D021HA01
4D021HA10
(57)【要約】
【課題】 触媒担体保持マットの廃材から無機繊維を再生する方法を提供する。
【解決手段】 無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、上記廃材を、裁断する裁断工程、分級する分級工程、焼成する焼成工程及び選別する選別工程、を含むことを特徴とする再生無機繊維の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、
前記廃材を、裁断する裁断工程、分級する分級工程、焼成する焼成工程及び選別する選別工程、を含むことを特徴とする再生無機繊維の製造方法。
【請求項2】
前記裁断工程は、前記廃材を□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する粗裁断工程である、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項3】
前記廃材が、ニードルマットの廃材を含む、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項4】
前記分級工程は、前記廃材を分級する第1分級工程と、前記第1分級工程を経た前記廃材を更に分級する第2分級工程を備える、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項5】
前記第1分級工程は、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する工程である、請求項4に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程は、前記第1分級工程の後、かつ、前記第2分級工程の前に行われる工程であり、かつ、前記第1分級工程を経た前記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程である、請求項5に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項7】
前記第2分級工程は、前記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した無機繊維を除去する工程である、請求項6に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項8】
前記廃材は抄造マットの廃材を含み、
前記第2分級工程は、前記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した前記抄造マット由来の無機繊維を除去する工程である、請求項7に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項9】
前記焼成工程は、前記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程である、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項10】
前記焼成工程は、前記廃材を800~900℃の温度に加熱する工程である、請求項9に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項11】
前記選別工程は、前記廃材に含まれる無機繊維とその他の異物を、比重で分離する比重分離工程である、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項12】
前記比重分離工程は、傾斜させた多孔性プレートの上面に前記廃材を配置し、振動を加えながら前記多孔性プレートの底面から上面に向かって送風することで、相対的に比重の高い物質を前記多孔性プレートの上方に移動させ、相対的に比重の低い物質を前記多孔性プレートの下方に移動させる乾式比重分離工程である、請求項11に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項13】
前記廃材は、前記触媒担体保持マットを構成する前記無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含み、
前記選別工程は、前記焼成工程よりも後に行われ、
前記焼成工程は、前記廃材を800~900℃の温度に加熱して、前記廃材に含まれる有機分を焼失させるとともに、前記ブランケット状のガラス繊維を熱収縮させて比重を大きくする工程であり、
前記選別工程では、前記焼成工程により比重が大きくなった前記ブランケット状のガラス繊維を分離する、請求項12に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項14】
前記廃材を、酸性溶液により処理する酸処理工程をさらに備える、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項15】
前記廃材を、湿式分離する湿式分離工程をさらに備える、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項16】
前記湿式分離工程は、前記廃材と溶媒の混合液を調製し、前記混合液に対して遠心分離操作を行う工程である、請求項15に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項17】
前記湿式分離工程は、前記廃材と溶媒の混合液を調製した後、前記混合液のpHを制御して凝集分離操作を行う工程である、請求項15に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項18】
前記裁断工程は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程であり、
前記分級工程は、裁断された前記廃材を分級する工程であり、
前記焼成工程は、分級された前記廃材を焼成する工程であり、
前記選別工程は、焼成された前記廃材を選別する工程である、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の再生無機繊維の製造方法により得られた再生無機繊維と、溶媒と、有機バインダと、を含むスラリーを準備する工程と、
前記スラリーを抄造法により成形して、前記再生無機繊維を含む無機繊維集合体を得る抄造工程と、
前記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする触媒担体保持マットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生無機繊維の製造方法及び触媒担体保持マットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載部品のリサイクル率は年々その割合が高まっているが、触媒担体保持マットは、搭載された自動車が廃車となった際もリサイクルされることなく、産業廃棄物として埋め立て処分されることが通例となっている。
【0003】
同じく無機繊維を原料とする製品であっても、例えば建材用断熱材については、主に樹脂製のカバーで覆われた状態で使用されることや、使用中に汚染される可能性が低いといった事情が存在する。そのため、使用済みの断熱材を解繊し、新たな無機繊維と混ぜて新規の断熱材を製造することができた(例えば特許文献1)。
【0004】
触媒担体保持マットのリサイクルが積極的に行われない背景には、以下の事情が存在すると推察する。
【0005】
まず、触媒担体保持マットは、振動や熱が加わる条件下で使用されるため、時間の経過とともに、無機繊維が折れて微細化したり、無機繊維の立体構造が破壊されたりして、その特性が劣化する。従って、使用済みの触媒コンバータから取り出された触媒担体保持マットを、そのまま再使用することはできず、再使用するためには、微細化した無機繊維を除去する必要があった。
【0006】
さらに、使用済みの触媒担体保持マットには、外的要因により様々な不純物が付着することがある。
例えば、排ガス中の不純物や触媒担体から脱落した貴金属成分が付着していることがある。また、貴金属が含まれる触媒担体をリサイクルする際、金属ケースを切断して触媒担体が取り出されることが多いため、金属ケースを切断した際の金属片(切削屑)や触媒担体片等が混入することもある。さらに、車両に搭載される触媒担体保持マットの周囲には、断熱のためにブランケット状のガラス繊維が配置されていることが多く、触媒担体保持マットが回収される過程で、このブランケット状のガラス繊維の破片や、ブランケット状のガラス繊維を覆う金属ケースの切削屑等が混入することを防ぐことができない。
【0007】
以上の事情により、触媒担体保持マットをリサイクルする方法については、未だ検討されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、触媒担体保持マットの廃材から無機繊維を再生する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、上記廃材を、裁断する裁断工程、分級する分級工程、焼成する焼成工程及び選別する選別工程、を含むことを特徴とする。
【0011】
触媒担体保持マットの廃材とは、使用済みの触媒コンバータ等から回収された、廃棄された触媒担体保持マットを指す。
触媒担体保持マットの回収は、例えば、触媒担体保持マットが使用された装置を分解した後、触媒担体が取り外された後に行われる。従って、触媒担体を取り外すためにケーシング等の周辺機器が取り外されたり、切断されたりすることにより、切削屑、触媒片、ブランケット状のガラス繊維の破片、錆などの異物が混入しやすい。
【0012】
本明細書においては、処分場やリサイクル施設等から回収された廃棄された触媒担体保持マット、及び、これらが特に区別や分類されることなく混合された混合物を「触媒担体保持マットの廃材(廃材)」と呼ぶ。触媒担体保持マットの廃材には、例えば、抄造マットの廃材やニードルマットの廃材を含む。また、触媒担体保持マットの廃材は、上述した切削屑、触媒片、ブランケット状のガラス繊維の破片、錆等の異物を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の再生無機繊維の製造方法では、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材(以下、単に廃材ともいう)に対して、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程という4つの工程を行う。
なお、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程の順序は特に限定されない。
裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程を行うことで、触媒担体保持マットの廃材に含まれる異物を除去し、再生無機繊維を得ることができる。
【0014】
得られた再生無機繊維は各種用途に用いることができる。
再生無機繊維の用途としては、例えば、フィラー、不定形耐火物、断熱材、触媒担体保持マットの原料等が挙げられる。
【0015】
さらに、本発明の再生無機繊維の製造方法は、新たに原料から新たに無機繊維を製造する場合と比較して、高温条件下での焼成が少ない等の理由によりCO2の排出量が少ない。
【0016】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記裁断工程は、上記廃材を□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する粗裁断工程であることが好ましい。
上記形状に粗裁断された廃材は、取り扱い性が良好となる。
【0017】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記廃材が、ニードルマットの廃材を含むことが好ましい。
ニードルマットの廃材には、繊維長の長い無機繊維が多く含まれているため、再生無機繊維の回収効率が高い。
【0018】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記分級工程は、上記廃材を分級する第1分級工程と、上記第1分級工程を経た上記廃材を更に分級する第2分級工程を備えることが好ましい。
分級工程が第1分級工程と第2分級工程を備えていると、第1分級工程と第2分級工程の分級条件を調整することで、異物を効率的に除去することができる。
【0019】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記第1分級工程は、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する工程であることが好ましい。
□10mm以下の大きさの異物には、例えば金属片、触媒担体片、抄造法で製造された触媒担体保持マットを構成する無機繊維のうち既に有機分が焼失しているもの等が含まれる。
上記第1分級工程により、これらの異物を除去することができる。
【0020】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記焼成工程は、上記第1分級工程の後、かつ、上記第2分級工程の前に行われる工程であり、かつ、上記第1分級工程を経た上記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程であることが好ましい。
有機分が存在することによって□10mmを超える大きさとなっている異物は、上記第1分級工程では除去することができないが、焼成工程が上記工程であると、当該異物に含まれる有機分を焼失させて、その大きさを□10mm以下の大きさとすることにより除去することが可能となる。
【0021】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記第2分級工程は、上記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した無機繊維を除去する工程であることが好ましい。
触媒担体保持マットは、無機繊維が有機バインダにより結合されることでその形状を維持している場合があり、有機分が焼失していない場合には、その形状が□10mmを超える大きさとなっていて第1分級工程では除去できない場合がある。
しかし、上記第2分級工程が上記工程であると、有機分を焼失させることで触媒担体保持マットを構成する無機繊維を微細化することができるため、第1分級工程で除去できなかった異物の一部を除去することができる。
【0022】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記廃材は抄造マットの廃材を含み、上記第2分級工程は、上記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した上記抄造マット由来の無機繊維を除去する工程であることが好ましい。
抄造マットでは、無機繊維が有機バインダにより結合されることでその形状が維持されているため、抄造マットの廃材には、有機分が焼失していない場合に、その形状が□10mmを超える大きさとなっていて第1分級工程では除去できない異物が多く含まれている場合がある。
このような場合であっても、上記第2分級工程を用いることで、抄造マット由来の無機繊維を除去することができる。
【0023】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記焼成工程は、上記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程であることが好ましい。
焼成工程において廃材に含まれる有機分を焼失させることで、廃材から有機分を除去することができる。
【0024】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記焼成工程は、上記廃材を800~900℃の温度に加熱する工程であることが好ましい。
焼成工程における加熱温度を上記範囲に設定することで、無機繊維を劣化させることなく廃材に含まれる有機分を除去することができる。
加熱温度が800℃未満の場合、廃材に含まれる有機分を充分に除去できない場合がある。
加熱温度が900℃を超える場合、廃材を構成する無機繊維を劣化させてしまう場合がある。
【0025】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記選別工程は、上記廃材に含まれる無機繊維とその他の異物を、比重で分離する比重分離工程であることが好ましい。
選別工程が上記比重分離工程であると、無機繊維とは比重が大きく異なる異物を除去しやすい。
【0026】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記比重分離工程は、傾斜させた多孔性プレートの上面に上記廃材を配置し、振動を加えながら上記多孔性プレートの底面から上面に向かって送風することで、相対的に比重の高い物質を上記多孔性プレートの上方に移動させ、相対的に比重の低い物質を上記多孔性プレートの下方に移動させる乾式比重分離工程であることが好ましい。
比重分離工程が、上記乾式比重分離工程であると、無機繊維とは比重が異なる物質を除去しやすい。
【0027】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記廃材は、上記触媒担体保持マットを構成する上記無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含み、上記選別工程は、上記焼成工程よりも後に行われ、上記焼成工程は、上記廃材を800~900℃の温度に加熱して、上記廃材に含まれる有機分を焼失させるとともに、上記ブランケット状のガラス繊維を熱収縮させて比重を大きくする工程であり、上記選別工程では、上記焼成工程により比重が大きくなった上記ブランケット状のガラス繊維を分離することが好ましい。
上記工程を経ることにより、廃材に不純物として含まれるブランケット状のガラス繊維を効率的に除去することができる。
【0028】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、上記廃材を、酸性溶液により処理する酸処理工程をさらに備えることが好ましい。
酸処理工程を備えることで、選別工程では分離できなかった金属等の異物を除去しやすい。
【0029】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、上記廃材を、湿式分離する湿式分離工程をさらに備えることが好ましい。
湿式分離工程は、乾式分離工程と比較して、分級の効率や精度を高めることができる。そのため、上記湿式分離工程をさらに備えていると、繊維長が短い短繊維を高い精度で除去することができ、再生無機繊維の品質を安定させることができる。
【0030】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記湿式分離工程は、上記廃材と溶媒の混合液を調製し、上記混合液に対して遠心分離操作を行う工程であることが好ましい。
湿式分離工程が上記遠心分離操作であると、繊維長が短い無機繊維を高い精度で除去することができる。
【0031】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記湿式分離工程は、上記廃材と溶媒の混合液を調製した後、上記混合液のpHを制御して凝集分離操作を行う工程であることが好ましい。
湿式分離工程が上記凝集分離操作であると、繊維長が短い無機繊維を高い精度で除去することができる。
さらに、廃材が複数種類の無機繊維を含んでいる場合、無機繊維が凝集するpHが無機繊維の種類ごとに異なることを利用して、種類の異なる無機繊維を分離することができる。
【0032】
本発明の再生無機繊維の製造方法において、上記裁断工程は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程であり、上記分級工程は、裁断された上記廃材を分級する工程であり、上記焼成工程は、分級された上記廃材を焼成する工程であり、上記選別工程は、焼成された上記廃材を選別する工程であることが好ましい。
本発明の再生無機繊維の製造方法では、まず、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程(裁断工程)を行い、次に、裁断された廃材を分級する工程(分級工程)を行い、次いで、分級された廃材を焼成する工程(焼成工程)を行い、次いで、焼成された廃材を選別する工程(選別工程)を行うことが好ましい。
裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程をこの順序で行うことにより、廃材から効率的に異物を除去することができる。
【0033】
本発明の触媒担体保持マットの製造方法は、本発明の再生無機繊維の製造方法により得られた再生無機繊維と、溶媒と、有機バインダと、を含むスラリーを準備する工程と、上記スラリーを抄造法により成形して、上記再生無機繊維を含む無機繊維集合体を得る抄造工程と、上記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明の再生無機繊維の製造方法により製造される再生無機繊維は、通常の方法で製造される無機繊維と比較してCO2の排出量が少ない。そのため、本発明の触媒担体保持マットの製造方法を用いることで、CO2排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は本発明の再生無機繊維の製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、乾式比重分離工程の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0037】
[再生無機繊維の製造方法]
本発明の再生無機繊維の製造方法は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、上記廃材を、裁断する裁断工程、分級する分級工程、焼成する焼成工程及び選別する選別工程、を含むことを特徴とする。
【0038】
触媒担体保持マットの廃材とは、使用済みの触媒コンバータ等から回収された、廃棄された触媒担体保持マットを指す。
触媒担体保持マットの回収は、例えば、触媒担体保持マットが使用された装置を分解した後、触媒担体が取り外された後に行われる。従って、触媒担体を取り外すためにケーシング等の周辺機器が取り外されたり、切断されたりすることにより、金属片、触媒片、ブランケット状のガラス繊維の破片、錆などの異物が混入しやすい。
【0039】
本明細書においては、処分場やリサイクル施設等から回収された廃棄された触媒担体保持マット、及び、これらが特に区別や分類されることなく混合された混合物を「触媒担体保持マットの廃材(廃材)」と呼ぶ。触媒担体保持マットの廃材には、例えば、抄造マットの廃材やニードルマットの廃材を含む。また、触媒担体保持マットの廃材は、上述した切削屑、触媒片、ブランケット状のガラス繊維の破片、錆等の異物を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の再生無機繊維の製造方法では、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材(以下、単に廃材ともいう)に対して、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程という4つの工程を行う。
なお、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程の順序は特に限定されない。
裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程を行うことで、触媒担体保持マットの廃材に含まれる異物を除去し、再生無機繊維を得ることができる。
【0041】
なお、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程はいずれも、バッチ式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。
【0042】
得られた再生無機繊維は各種用途に用いることができる。
再生無機繊維の用途としては、例えば、フィラー、不定形耐火物、断熱材、触媒担体保持マットの原料等が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明の再生無機繊維の製造方法は、原料から新たに無機繊維を製造する場合と比較して、高温条件下での焼成が少ない等の理由によりCO2の排出量が少ない。
【0044】
図1は本発明の再生無機繊維の製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図1に示す再生無機繊維の製造方法では、触媒担体保持マットの廃材に対して、裁断工程S1、分級工程S2、焼成工程S3及び選別工程S4がこの順で行われる。
【0045】
すなわち、裁断工程は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程であり、分級工程は、裁断された廃材を分級する工程であり、焼成工程は、分級された廃材を焼成する工程であり、選別工程は、焼成された廃材を選別する工程である。
裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程をこの順序で行うことにより、廃材から効率的に異物を除去することができる。
【0046】
ただし、本発明の再生無機繊維の製造方法において、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程の順序は、
図1に示す順序に限定されない。
【0047】
以下、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程の詳細を説明する。
【0048】
(裁断工程)
裁断工程では、廃材を裁断する。
廃材を裁断することで取り扱い性を向上させる。
【0049】
裁断工程で用いる「廃材」は、分級工程、焼成工程及び選別工程を経ていない廃材であってもよいが、上記3工程のうちの1つ以上の工程を経た廃材であってもよい。
【0050】
ただし、分級工程、焼成工程及び選別工程における廃材の取り扱い性を考慮すると、裁断工程は、分級工程及び選別工程よりも前に行われることが好ましく、裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程の4つの工程のうちで最初に行われることがより好ましい。
換言すると、裁断工程は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程であることが好ましい。
【0051】
裁断工程で裁断される廃材の大きさは特に限定されないが、□30mm~□100mmの大きさが好ましく、□30mm~□50mmの大きさがより好ましい。
【0052】
廃材を□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する裁断工程を、粗裁断工程ともいう。
すなわち、裁断工程は、廃材を□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する粗裁断工程であることが好ましい。
【0053】
廃材を裁断する方法は特に限定されないが、裁断機、フェザーミル、粉砕機等による裁断等が挙げられる。
【0054】
(分級工程)
分級工程では、大きさの差を利用して異物を除去する。
【0055】
分級工程で用いる廃材は、裁断工程、焼成工程及び選別工程を経ていない廃材であってもよいが、上記3工程のうちの1つ以上の工程を経た廃材であってもよい。
【0056】
ただし、分級工程における廃材の取り扱い性を考慮すると、分級工程は、裁断工程の後に行われることが好ましい。
換言すると、分級工程は、裁断された廃材を分級する工程であることが好ましい。
【0057】
分級工程は、所定の目開きを持つ篩を用いて廃材を篩にかける篩分け工程であることが好ましい。
【0058】
分級工程は、廃材を分級する第1分級工程と、第1分級工程を経た廃材を更に分級する第2分級工程を備えることが好ましい。
【0059】
第1分級工程は、例えば、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する工程であることが好ましい。
【0060】
第2分級工程は、例えば、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する工程であることが好ましい。
【0061】
(焼成工程)
焼成工程では、廃材を焼成する。
廃材を焼成することで、廃材に含まれる有機分を焼失させることができる。
【0062】
上記有機分としては、例えば、触媒担体保持マットに元来含まれる有機バインダ、排ガス中の成分であるスス、触媒担体保持マットや周辺機器を固定するために使用された有機テープ(接着テープ)、等が挙げられる。
【0063】
焼成工程で用いる廃材は、裁断工程、分級工程及び選別工程を経ていない廃材であってもよいが、上記3工程のうちの1つ以上の工程を経た廃材であってもよい。
【0064】
ただし、焼成工程における廃材の取り扱い性を考慮すると、焼成工程は、裁断工程よりも後に行われることが好ましい。
【0065】
さらに、焼成工程に必要なエネルギーを低減する観点から、焼成工程で用いる廃材は、分級工程で異物が除去された廃材であることが好ましい。従って、焼成工程は、分級工程よりも後に行われることが好ましい。
換言すると、焼成工程は、分級された廃材を焼成する工程であることが好ましい。
【0066】
ただし、焼成工程において廃材に含まれる有機分が焼失した結果、有機分によって形状が維持されていた異物が微細化する場合がある。
このような微細化した異物を除去するために、焼成工程の後にも、分級工程が行われることが好ましい。
【0067】
すなわち、分級工程が上述した第1分級工程及び第2分級工程を備える場合には、焼成工程は、第1分級工程の後、かつ、第2分級工程の前に行われることが好ましい。
【0068】
また、廃材が、有機分によって形状が維持された無機繊維(の集合体)を含む場合、上記焼成工程によって、有機分を焼失させて、廃材中の無機繊維(の集合体)を微細化することができる。
ここで、第2分級工程を焼成工程の後に行うと、上記の微細化した無機繊維を除去することができる。
【0069】
すなわち、第2分級工程は、焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した無機繊維を除去する工程であることが好ましい。
【0070】
抄造マットは、有機分により繊維長の短い無機繊維を結合した、無機繊維の集合体で構成されている。
従って、廃材が抄造マットの廃材を含む場合、焼成工程によって有機分を焼失させて、廃材中の抄造マット由来の無機繊維(の集合体)を微細化することができる。
【0071】
そのため、第2分級工程は、焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した抄造マット由来の無機繊維を除去する工程であることが好ましい。
【0072】
焼成工程は、廃材に含まれる有機分を焼失させる工程であることが好ましく、廃材を800~900℃の温度に加熱する工程であることがより好ましい。
【0073】
焼成工程における雰囲気は特に限定されないが、例えば、大気中で焼成することが好ましい。
【0074】
廃材がブランケット状のガラス繊維を含む場合、焼成工程によって廃材を800~900℃の温度に加熱することで、廃材に含まれる有機分を焼失させることができるとともに、ブランケット状のガラス繊維を熱収縮させて比重を大きくすることができる。
【0075】
(選別工程)
選別工程では、廃材に含まれる異物を選別して除去する。
ここで、選別工程には、上述した分級工程を含まないものとする。
また、後述する湿式分離工程も、選別工程に含まないものとする。
【0076】
選別工程で用いる廃材は、裁断工程、分級工程及び焼成工程を経ていない廃材であってもよいが、上記3工程のうちの1つ以上の工程を経た廃材であってもよい。
【0077】
ただし、焼成工程により異物が熱収縮を起こして比重が増加する場合を考慮すると、選別工程は、焼成工程の後に行われることが好ましい。
換言すると、選別工程は、焼成された廃材に含まれる異物を選別する工程であることが好ましい。
【0078】
選別工程としては、廃材に含まれる無機繊維とその他の異物を、比重で分離する比重分離工程であることが好ましい。
なお、比重分離工程は、上述した分級工程に含まれないものである。
【0079】
比重分離工程としては、傾斜させた多孔性プレートの上面に廃材を配置し、振動を加えながら多孔性プレートの底面から上面に向かって送風することで、相対的に比重の高い物質を多孔性プレートの上方に移動させ、相対的に比重の低い物質を多孔性プレートの下方に移動させる、乾式比重分離工程であることが好ましい。
【0080】
図2を参照して、乾式比重分離工程の例を説明する。
図2は、乾式比重分離工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0081】
図2に示す多孔性プレート10の上には、廃材1が配置されている。
廃材1は、相対的に比重の小さい低比重物質3と、相対的に比重の大きい高比重物質5を含んでいる。
なお、低比重物質3及び高比重物質5の形状は、
図2に示すような円形(球形)に限定されるものではない。
【0082】
多孔性プレート10は水平方向(
図2中、Hで示す破線が伸びる方向)から所定の角度(θ)だけ傾斜している。
多孔性プレート10の表面と廃材1との間には充分な摩擦が生じている。従って、多孔性プレート10の傾斜θに沿って、廃材1が多孔性プレート10の下方に自然に移動することはない。
【0083】
多孔性プレート10は通気可能な無数の孔を有しており、多孔性プレート10の下方から風が吹き付けられた場合、その一部が多孔性プレート10の上面側に到達する。
従って、多孔性プレート10を傾斜方向に平行な方向(
図2中、両矢印vで示す方向)に振動させながら、多孔性プレート10の下方から送風を行うと、相対的に比重の小さい低比重物質3は、送風により巻き上げられて、落下する際に、多孔性プレート10の下方に移動する。
一方、相対的に比重の大きい高比重物質5は、送風により巻き上げられないため、多孔性プレート10での位置が変わらず、下方へは移動しない。
【0084】
以上の操作により、多孔性プレート10の下方に、相対的に比重の小さい低比重物質3が集中し、多孔性プレート10の上方に、相対的に比重の大きい高比重物質5が集中することとなる。
これにより、廃材に含まれる無機繊維とその他の異物とを、比重の差で分離することができる。
例えば、廃材が、触媒担体保持マットを構成する無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含む場合、熱収縮したブランケット状のガラス繊維の比重は、廃材に含まれる無機繊維の比重よりも大きい。従って、上記乾式比重分離工程によって、熱収縮したブランケット状のガラス繊維は、多孔性プレートの上方に集中し、廃材に含まれる無機繊維は多孔性プレートの下方に集中する。
【0085】
乾式比重分離工程における条件は、特に限定されず、廃材に含まれる無機繊維とその他の異物とを分離することができる条件に適宜設定すればよい。
【0086】
多孔性プレートの傾斜角度は適宜設定することができるが、例えば、5°~30°であることが好ましい。
【0087】
多孔性プレートとしては、例えば、網、パンチングメタル等を用いることができる。
【0088】
多孔性プレートの目開きは、多孔性プレートの底面から上面に充分な風量を供給することができ、かつ、廃材に含まれる無機繊維が目開きから落下しないようなサイズであればよい。
【0089】
廃材が、触媒担体保持マットを構成する無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含み、焼成工程により、廃材が800~900℃の温度で加熱された場合、ブランケット状のガラス繊維が熱収縮するため比重が大きくなる。そのため、廃材に含まれる無機繊維よりも比重が大きくなり、上述した乾式比重分離工程により廃材に含まれる無機繊維と、ブランケット状のガラス繊維(熱収縮したもの)とを分離することができる。
【0090】
すなわち、廃材が触媒担体保持マットを構成する無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含む場合、選別工程は、焼成工程よりも後に行われ、焼成工程は、廃材を800~900℃の温度に加熱して、廃材に含まれる有機分を焼失させるとともに、ブランケット状のガラス繊維を熱収縮させて比重を大きくする工程であり、選別工程では、焼成工程により比重が大きくなったブランケット状のガラス繊維を分離することが好ましい。
【0091】
乾式比重分離工程では、異物を除去した後に、さらに、再生無機繊維を構成する繊維を、比重ごとに分けてもよい。
例えば、高比重の再生無機繊維と、中比重の再生無機繊維と、低比重の再生無機繊維と、に分けることで、再生無機繊維の比重、ひいては組成を調整することができる。
【0092】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、上述した裁断工程、分級工程、焼成工程及び選別工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
【0093】
その他の工程としては、例えば、酸処理工程、湿式分離工程等が挙げられる。
【0094】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、廃材を、酸性溶液により処理する酸処理工程をさらに備えることが好ましい。
酸処理工程を備えることで、分級工程及び選別工程で分離できなかった金属等の異物を除去しやすい。
【0095】
酸処理工程を行う順序は、特に限定されないが、裁断工程、分級工程及び選別工程の後が好ましい。
【0096】
酸処理工程で用いる酸性溶液としては、除去対象物と反応するものであれば特に限定されない。酸性溶液としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。
【0097】
一般的に、無機繊維は、酸性溶液との反応性が極めて低いため、通常の酸性溶液が無機繊維と反応することはないといえる。一方で、金属ケース等の切削屑は酸性溶液に容易に溶解するため、酸処理工程により除去することができる。
【0098】
反応終了後、必要に応じて酸性溶液を中和した後、濾過し、水洗することで、酸性溶液及び異物を分離することができる。
【0099】
本発明の再生無機繊維の製造方法は、廃材を、湿式分離する湿式分離工程をさらに備えることが好ましい。
なお、湿式分離工程は、上述した分級工程及び選別工程に含まれないものである。
湿式分離工程は、乾式分離工程と比較して、分級の効率や精度を高めることができる。
そのため、上記湿式分離工程をさらに備えていると、再生無機繊維の繊維長分布を狭くして、再生無機繊維の品質を安定させることができる。
【0100】
湿式分離工程としては、例えば、遠心分離操作を行う工程や、凝集分離操作を行う工程が挙げられる。
【0101】
湿式分離工程は、廃材を溶媒と混合した混合液を調製し、混合液に対して遠心分離操作を行う工程であることが好ましい。
湿式分離工程が上記遠心分離操作であると、繊維長が短い無機繊維を高い精度で除去することができる。
【0102】
遠心分離操作を行う混合液を調製する際に用いる溶媒は特に限定されないが、例えば水、エタノール等があげられる。
【0103】
遠心分離工程における遠心加速度は特に限定されないが、例えば、1000G~10000Gが挙げられる。
【0104】
湿式分離工程は、廃材を溶媒と混合した混合液を調製した後に、混合液のpHを制御して凝集分離操作を行う工程であることが好ましい。
湿式分離工程が上記凝集分離操作であると、繊維長が短い無機繊維を高い精度で除去することができる。
【0105】
このような操作により、例えば、廃材中の無機繊維を凝集させることができ、凝集した無機繊維と、無機繊維以外の成分とを分離することができる。
【0106】
混合液のpHは、凝集させたい無機繊維の種類により適宜調整すればよい。
例えば、アルミナ繊維を凝集させたい場合には、pH8.5程度とすることが好ましく、ムライト繊維を凝集させたい場合にはpH7程度とすることが好ましい。
上記条件において、無機繊維の表面電荷(ゼータ電位)がゼロに近くなり、無機繊維同士の静電的な反発が弱まるため、無機繊維同士の凝集が生じやすくなる。
【0107】
上述したように、無機繊維の種類によって沈殿が生じるpHが異なるため、廃材中に複数種類の無機繊維が含まれている場合であっても、凝集分離工程を行うことで、これらを分離することもできる。
【0108】
凝集分離操作を行う混合液を調製する際に用いる溶媒は特に限定されないが、例えば水、エタノール等が挙げられる。
【0109】
混合液のpHの制御は、例えばpH調整剤を添加することにより行うことができる。
混合液に添加するpH調整剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基等が挙げられる。
【0110】
なお、pH調整剤に加えて、さらに凝集剤を添加してもよい。
凝集剤を添加することで、混合液中で凝集が生じやすくなる場合がある。
凝集剤は、無機系凝集剤であってもよく、高分子凝集剤であってもよい。
【0111】
[再生無機繊維]
続いて、本発明の再生無機繊維の製造方法により得られる再生無機繊維について説明する。
【0112】
本発明の再生無機繊維の製造方法により得られる再生無機繊維は、触媒担体保持マットの廃材から分離された無機繊維であり、繊維長が0.1mm~20mmの無機繊維で構成されていることが好ましい。
【0113】
再生無機繊維の平均繊維長は、0.1mm~20mmであることが好ましい。
再生無機繊維の平均繊維径は、3μm~10μmであることが好ましい。
【0114】
再生無機繊維を構成する無機繊維の種類は、1種類だけであってもよく、2種類以上の無機繊維が含まれていてもよい。
【0115】
[触媒担体保持マットの製造方法]
本発明の触媒担体保持マットの製造方法は、本発明の再生無機繊維の製造方法により得られた再生無機繊維と、溶媒と、有機バインダと、を含むスラリーを準備する工程と、上記スラリーを抄造法により成形して、上記再生無機繊維を含む無機繊維集合体を得る抄造工程と、上記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0116】
[スラリーを準備する工程]
スラリーは、再生無機繊維と、溶媒と、有機バインダとを含む。
溶媒としては、例えば、水を用いることができる。
有機バインダとしては、例えば、アクリル系樹脂等を用いることができる。
スラリーには、必要に応じて、分散剤、凝集剤等を加えてもよい。
【0117】
再生無機繊維と、本発明の再生無機繊維の製造方法で得られる再生無機繊維である。
なお、再生無機繊維は、必要に応じて、裁断等により繊維長を調整してもよい。
【0118】
[抄造工程]
次いで、スラリーを抄造法により成形して、無機繊維集合体を得る。
例えば、底面のろ過用のメッシュが形成された成形器にスラリーを流し込んだ後に、スラリー中の溶媒を、メッシュを介して脱水することにより無機繊維集合体を作製する。
【0119】
[乾燥工程]
続いて、得られた無機繊維集合体を乾燥させる。
乾燥する際の乾燥温度は、100~250℃であることが好ましい。
また無機繊維集合体を圧縮しながら乾燥させてもよい。
無機繊維集合体の圧縮は、プレス機等を使用して行うことができる。
プレス機のプレス板を熱板として熱板の温度を高温(例えば100℃~250℃)とすることにより加圧と合わせて乾燥を行ってもよい。
【0120】
以上の工程により、本発明の再生無機繊維を原料に使用して触媒担体保持マットを製造することができる。
本発明の再生無機繊維の製造方法により製造される再生無機繊維は、通常の方法で製造される無機繊維と比較してCO2の排出量が少ない。そのため、本発明の触媒担体保持マットの製造方法を用いることで、CO2排出量を低減することができる。
【0121】
本明細書には以下の発明が記載されている。
【0122】
本開示(1)は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、
前記廃材を、裁断する裁断工程、分級する分級工程、焼成する焼成工程及び選別する選別工程、を含むことを特徴とする再生無機繊維の製造方法である。
【0123】
本開示(2)は、前記裁断工程は、前記廃材を□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する粗裁断工程である、本開示(1)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0124】
本開示(3)は、前記廃材が、ニードルマットの廃材を含む、本開示(1)又は(2)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0125】
本開示(4)は、前記分級工程は、前記廃材を分級する第1分級工程と、前記第1分級工程を経た前記廃材を更に分級する第2分級工程を備える、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0126】
本開示(5)は、前記第1分級工程は、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する工程である、本開示(4)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0127】
本開示(6)は、前記焼成工程は、前記第1分級工程の後、かつ、前記第2分級工程の前に行われる工程であり、かつ、前記第1分級工程を経た前記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程である、本開示(4)又は(5)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0128】
本開示(7)は、前記第2分級工程は、前記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した無機繊維を除去する工程である、本開示(4)~(6)のいずれかとの任意の組み合わせの再生無機繊維の製造方法である。
【0129】
本開示(8)は、前記廃材は抄造マットの廃材を含み、
前記第2分級工程は、前記焼成工程によって有機分が焼失したことにより微細化した前記抄造マット由来の無機繊維を除去する工程である、本開示(4)~(7)のいずれかとの任意の組み合わせの再生無機繊維の製造方法である。
【0130】
本開示(9)は、前記焼成工程は、前記廃材に含まれる有機分を焼失させる工程である、本開示(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0131】
本開示(10)は、前記焼成工程は、前記廃材を800~900℃の温度に加熱する工程である、本開示(9)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0132】
本開示(11)は、前記選別工程は、前記廃材に含まれる無機繊維とその他の異物を、比重で分離する比重分離工程である、本開示(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0133】
本開示(12)は、前記比重分離工程は、傾斜させた多孔性プレートの上面に前記廃材を配置し、振動を加えながら前記多孔性プレートの底面から上面に向かって送風することで、相対的に比重の高い物質を前記多孔性プレートの上方に移動させ、相対的に比重の低い物質を前記多孔性プレートの下方に移動させる乾式比重分離工程である、本開示(11)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0134】
本開示(13)は、前記廃材は、前記触媒担体保持マットを構成する前記無機繊維とは別に、ブランケット状のガラス繊維を含み、
前記選別工程は、前記焼成工程よりも後に行われ、
前記焼成工程は、前記廃材を800~900℃の温度に加熱して、前記廃材に含まれる有機分を焼失させるとともに、前記ブランケット状のガラス繊維を熱収縮させて比重を大きくする工程であり、
前記選別工程では、前記焼成工程により比重が大きくなった前記ブランケット状のガラス繊維を分離する、本開示(12)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0135】
本開示(14)は、前記廃材を、酸性溶液により処理する酸処理工程をさらに備える、本開示(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0136】
本開示(15)は、前記廃材を、湿式分離する湿式分離工程をさらに備える、本開示(1)~(14)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0137】
本開示(16)は、前記湿式分離工程は、前記廃材と溶媒の混合液を調製し、前記混合液に対して遠心分離操作を行う工程である、本開示(15)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0138】
本開示(17)は、前記湿式分離工程は、前記廃材と溶媒の混合液を調製した後、前記混合液のpHを制御して凝集分離操作を行う工程である、本開示(15)に記載の再生無機繊維の製造方法である。
【0139】
本開示(18)は、前記裁断工程は、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材を裁断する工程であり、
前記分級工程は、裁断された前記廃材を分級する工程であり、
前記焼成工程は、分級された前記廃材を焼成する工程であり、
前記選別工程は、焼成された前記廃材を選別する工程である、本開示(1)~(17)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法である。
【0140】
本開示(19)は、本開示(1)~(18)のいずれかとの任意の組合せの再生無機繊維の製造方法により得られた再生無機繊維と、溶媒と、有機バインダと、を含むスラリーを準備する工程と、
前記スラリーを抄造法により成形して、前記再生無機繊維を含む無機繊維集合体を得る抄造工程と、
前記無機繊維集合体を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする触媒担体保持マットの製造方法である。
【0141】
以下に、本発明の再生無機繊維の製造方法の一例を示す。
【0142】
(工程1:裁断工程)
まず、無機繊維からなる触媒担体保持マットの廃材に対して、裁断工程を行う。
裁断工程は、廃材を、□30mm~□100mmの大きさに粗裁断する粗裁断工程である。
粗裁断工程を経ることにより、廃材が、□30mm~□100mmの大きさになるため、取り扱い性が向上する。
なお、ここで用いる廃材は、ニードルマットの廃材及び抄造マットの廃材を含み、異物として、切削屑、触媒片、ブランケット状のガラス繊維、錆が混入しているものとする。
【0143】
(工程2:第1分級工程)
続いて、裁断工程を経た廃材に対して、分級工程である第1分級工程を行う。
第1分級工程では、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する。
上記第1分級工程を経ることにより、廃材に含まれる□10mm以下の大きさの異物を除去する。ここで、切削屑、金属片等の異物が除去される。
【0144】
(工程3:焼成工程)
続いて、第1分級工程を経た廃材に対して、焼成工程を行う。
焼成工程では、第1分級工程を経た廃材を、大気中、800~900℃の温度で1時間加熱する。
上記焼成工程により、廃材に含まれる有機分が焼失するとともに、ファブリック状のガラス繊維が熱収縮し、比重が大きくなる。廃材に含まれる有機分が焼失することにより、抄造マット由来の無機繊維が微細化する。
【0145】
(工程4:第2分級工程)
続いて、焼成工程を経た廃材に対して、第2分級工程を行う。
第2分級工程では、□10mmを超える目開きを持つ篩を用いて、□10mm以下の大きさの異物を除去する。
第2分級工程の分級条件は第1分級工程と同じであるが、焼成工程を経たことで、抄造マット由来の無機繊維が微細化しているため、これが第2分級工程で除去される。
【0146】
(工程5:選別工程)
最後に、第2分級工程を経た廃材に対して、選別工程を行う。
選別工程では、
図2に示したような乾式比重分離工程を行う。
乾式比重分離工程を行うことで、焼成工程において熱収縮で比重が大きくなったブランケット状のガラス繊維を分離することができる。
具体的には、例えば、乾式比重分離工程の終了後に、多孔性プレートの下流側から落下した廃材と、多孔性プレートの下流側1/3の部分に配置された廃材を回収して、再生無機繊維を得ることができる。
【0147】
以上の工程により、ニードルマットの廃材及び抄造マットの廃材並びにブランケット状のガラス繊維を含む触媒担体保持マットの廃材から、再生無機繊維を得ることができる。
【符号の説明】
【0148】
1 触媒担体保持マットの廃材
3 低比重物質
5 高比重物質
10 多孔性プレート
S1 裁断工程
S2 分級工程
S3 焼成工程
S4 選別工程