(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012883
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ブロワ
(51)【国際特許分類】
F02M 26/34 20160101AFI20250117BHJP
F02M 26/50 20160101ALI20250117BHJP
F02M 26/35 20160101ALI20250117BHJP
【FI】
F02M26/34
F02M26/50 301
F02M26/35 Z
F02M26/50 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116049
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】507031099
【氏名又は名称】株式会社大阪送風機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 薫
(72)【発明者】
【氏名】木下 龍男
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA01
3G062AA05
3G062ED09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジンの運転中でもブロワ内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制できるEGRブロワを提供する。
【解決手段】EGR装置を備えるディーゼルエンジンに装備されるEGRブロワであって、ケーシング50の軸穴に挿通された回転軸61を回転させるモータ80と、インペラ62と、軸穴のシール装置70とを含み、ケーシング50は、吸込口が開口する下壁部51と、軸穴が形成された上壁部52と、下壁部51から上壁部52側に向かって突出する吸込筒部53と、それを取り囲むスクロール状の周壁部55と、下壁部51に開口する排水口部56とを有しており、更に、インペラ62の背面62eに向かって洗浄液を噴射する第1洗浄ノズル101と、周壁部55側からインペラ62の翼面部62cに洗浄液を噴射する第2洗浄ノズル102とを有し、インペラ62を洗浄する洗浄装置100が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関本体から排出される排ガスの一部を燃焼用気体の一部として再循環させるEGR装置と、前記排ガスにより駆動されるターボ過給機とを備えるディーゼルエンジンに、前記EGR装置の一部として装備され、前記再循環させる排ガスの一部を昇圧させるEGRブロワであって、
軸穴と吸込口および吐出口を有するガス通路とが形成されたケーシングと、
前記ケーシングの前記軸穴に挿通された駆動軸を回転させるモータと、
前記駆動軸に支持されて前記ケーシング内に収納されたインペラと、前記駆動軸に摺動可能に接触しつつ前記軸穴をシールするシール装置と、を含んで構成され、
前記ケーシングは、前記吸込口が開口する下壁部と、前記軸穴が形成された上壁部と、前記下壁部から前記上壁部側に向かって円錐台状に突出し上端が前記インペラの入口部に近接する吸込筒部と、前記吸込筒部を取り囲むとともに前記ガス通路を形成するスクロール状の周壁部と、前記下壁部に開口する排水口部と、を有しており、
前記上壁部に対面する前記インペラの背面に向かって該上壁部側から洗浄液を噴射する第1洗浄ノズルと、前記周壁部側から前記インペラの翼面部に向かって洗浄液を噴射する第2洗浄ノズルとを有し、前記インペラを洗浄する洗浄装置が、設けられていることを特徴とするEGRブロワ。
【請求項2】
前記ディーゼルエンジンが、大型船舶の主機関として構成されるとともに、
前記ターボ過給機のタービンを通過した排ガスの一部を前記ターボ過給機のコンプレッサに還流させる低圧EGRライン中で、該低圧EGRライン中の還流ガスを昇圧させる低圧EGRブロワとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載のEGRブロワ。
【請求項3】
前記上壁部と前記モータの間に設けられて前記軸穴および前記駆動軸を取り囲むとともに、前記軸穴から大気側に漏れ出るミスト状の漏出物を捕集するミスト捕集ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のEGRブロワ。
【請求項4】
前記ケーシングの内壁面全域に、ガラスフレーク層を有する耐熱性の防食塗膜が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載のEGRブロワ。
【請求項5】
前記シール装置は、
前記ケーシングに前記軸穴を形成するよう設けられ、前記軸穴の内周面上に開口する環状溝を形成する軸封ボックスと、
それぞれ前記環状溝内で前記駆動軸を取り囲むようにガータースプリングにより所定の接触圧で前記駆動軸に付勢された複数の分割シール部材で構成され、少なくとも前記駆動軸との摺動面がカーボン材料で形成されている第1のシールリングおよび第2のシールリングと、
前記環状溝内の前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングの間に前記駆動軸を取り囲むように設けられた円環板状のばね受け板と、
前記ばね受け板の両面と前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングとの間に縮設され、前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングを所定のばね圧で前記軸封ボックスの前記環状溝の両内側壁面に付勢する一対の歯付き皿ばね状の線ばねと、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のEGRブロワ。
【請求項6】
請求項2に記載のEGRブロワを備えるとともに、
前記低圧EGRライン中で前記低圧EGRブロワによる昇圧前の前記還流ガスを水噴射により浄化する湿式のスクラバと、
浄化後の還流ガスを前記低圧EGRブロワ側に通過させるとともに該還流ガスから浄化後の排水を分離させるデミスタと、
前記排水から微粒子成分を除去しpH調整して前記スクラバに再供給するポンプ付きの水処理装置と、を備えることを特徴とするディーゼルエンジンの低圧EGR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワに関し、特に大型または中型のディーゼルエンジンにおいてEGR(排気再循環)装置の一部を構成するEGRブロワに好適なブロワに関する。
【背景技術】
【0002】
送風対象のガスを吸入して昇圧させるブロワとして、従来、動力や電力を出力するシステムからの排ガスを昇圧して同システムに再循環させる再循環ブロワや、同システムへの供給ガス(低圧再循環ガスを含む)を昇圧する補助ブロワ等が知られている。
【0003】
例えば、船舶用のディーゼルエンジンの排気エミッション低減技術の一つとして、エンジンの排ガスの一部をそのエンジンの掃気側(給気側)に還流させて再循環させ、排気中のNOx(窒素酸化物)を低減させるEGRシステムが知られているが、そのEGRシステムには、排ガスの一部を再循環可能な圧力に昇圧するEGRブロワが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、大型船舶の主機関となる2サイクルディーゼルエンジンにおいて、そのエンジンから排出され排気ターボ過給機のタービンを通過した低圧の排ガスの一部をEGRガスとして、EGRブロワによりその過給機のコンプレッサの空気吸込入口側に戻すようにした低圧EGRシステムが特許文献2や特許文献3に記載されている。
【0005】
この種の低圧EGRシステムにおいては、過給機あるいは排ガスエコノマイザより下流側で排ガスの一部がEGRガスとして分岐され、排ガス洗浄装置であるスクラバによって排ガス中の煤煙等のPM(粒子状物質)および燃焼プロセスで形成されたSOx(硫黄酸化物)等が除去されるようになっている。そして、洗浄後のEGRガスがEGRブロワによって過給機の吸込側、典型的には排気ターボ過給機のコンプレッサの吸込口に比較的低圧・低温で送風され、新気と混合されて、エンジンに再循環される(非特許文献1参照)。
【0006】
また、排気ターボ過給機においては、使用燃料が低品質になると、過給機のタービンに排ガス中の燃焼残渣物が汚れとして被着し、その汚れが落ち難いことに着目し、その排気入口の外方側に盲板を、排気入口の上方に注水コックをそれぞれ配置して、タービンケーシング内にインペラの特定回転区間の羽根部分を浸漬可能な洗浄液溜まりを形成するとともに、インペラ駆動用のエアモータに船舶の雑用空気を供給してインペラを低速回転させ、タービン翼の汚れを除去するようにしたものが特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-157959号公報
【特許文献2】特開2018-127706号公報
【特許文献3】特開2013-170520号公報
【特許文献4】特開昭61-123720号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本マリンエンジニアリング学会誌第52巻第6号(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の特許文献1~3に記載のような従来のブロワおよびそれを備えたEGRシステムにあっては、スクラバで洗浄し切れなかった排ガス中の燃焼残渣物がEGRブロワのインペラやその近傍に付着して堆積し易いという問題や、EGRブロワ付近のEGR経路中に酸性の凝縮水が付着して腐食を招き易いという問題があった。
【0010】
また、EGRブロワを全体的に耐食性に優れた素材で形成する程度では、コスト高を招くにもかかわらず、酸性の凝縮水等に対して耐食性が十分でないという問題があった。
【0011】
これに対し、特許文献4に記載の排気ターボ過給機のように、インペラを浸漬可能な洗浄液溜まりを形成し、インペラを低速回転させることで、インペラ上の付着物や堆積物を除去することが考えられる。しかし、洗浄剤を所定深さまで溜める必要から、エンジンの運転停止状態でしか洗浄作業ができないばかりか、インペラの背面や周囲のケーシング内壁(洗浄液溜まりより上方側)を的確に洗浄したり防食したりすることができないという問題が残る。
【0012】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたものであり、エンジンの運転中でもブロワ内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することのできるEGRブロワを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係るブロワは、上記目的達成のため、機関本体から排出される排ガスの一部を燃焼用気体の一部として再循環させるEGR装置と、前記排ガスにより駆動されるターボ過給機とを備えるディーゼルエンジンに、前記EGR装置の一部として装備され、前記再循環させる排ガスの一部を昇圧させるEGRブロワであって、軸穴と吸込口および吐出口を有するガス通路とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記軸穴に挿通された駆動軸を回転させるモータと、前記駆動軸に支持されて前記ケーシング内に収納されたインペラと、前記駆動軸に摺動可能に接触しつつ前記軸穴をシールするシール装置と、を含んで構成され、前記ケーシングは、前記吸込口が開口する下壁部と、前記軸穴が形成された上壁部と、前記下壁部から前記上壁部側に向かって円錐台状に突出し上端が前記インペラの入口部に近接する吸込筒部と、前記吸込筒部を取り囲むとともに前記ガス通路を形成するスクロール状の周壁部と、前記下壁部に開口する排水口部と、を有しており、前記上壁部に対面する前記インペラの背面に向かって該上壁部側から洗浄液を噴射する第1洗浄ノズルと、前記周壁部側から前記インペラの翼面部に向かって洗浄液を噴射する第2洗浄ノズルとを有し、前記インペラを洗浄する洗浄装置が、設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明では、インペラの上背面、翼面部および下面に向かって、第1、第2洗浄ノズルから洗浄液がそれぞれ噴射されるとき、インペラが洗浄されるとともに、洗浄後の洗浄液が排水口部から排水される。したがって、エンジンの運転状態、例えば停止直前であっても、洗浄作業が可能となり、インペラおよびその周囲のケーシング内壁を的確に洗浄することができる。その結果、エンジンの運転中でもEGRブロワ内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することのできるEGRブロワとなる。
【0015】
なお、インペラがシュラウド一体型の場合、前記周壁部または前記下壁部側から前記インペラのシュラウドの下面に向かって洗浄液を噴射する第3洗浄ノズルをさらに設ける構成としてもよい。また、洗浄時にインペラを回転させるようにすると、各洗浄ノズルから噴射される洗浄液にインペラに対する速度変化や遠心方向への方向変化が生じることで、インペラの洗浄作用が強化されるとともに、第2洗浄ノズルから噴射される洗浄液がインペラの翼面部に衝突し飛散することで、インペラの翼面部の洗浄効果が高められる。また、第2洗浄ノズルから噴射される洗浄液がインペラの内部から吸込筒部の内周壁面に達したとしても、洗浄液はスクラバの下方の洗浄水溜まりや水処理装置等に戻すようにすることができ、排水口部から排水される洗浄液も同様に洗浄水溜まりや水処理装置等に戻すことができる。さらに、モータが、所定範囲内の任意の回転数および駆動トルクで動作可能なものであれば、インペラを洗浄に適した回転条件に制御可能となる。
【0016】
(2)本発明の好ましい実施形態においては、前記ディーゼルエンジンが、大型船舶の主機関として構成されるとともに、前記ターボ過給機のタービンを通過した排ガスの一部を前記ターボ過給機のコンプレッサに還流させる低圧EGRライン中で、該低圧EGRライン中の還流ガスを昇圧させる低圧EGRブロワとして構成されてもよい。その場合、スクラバで洗浄されたEGRガスが比較的低圧・低温で、EGRブロワ付近のEGR経路中に酸性の凝縮水が付着したり、洗浄し切れなかった排ガス中の燃焼残渣物がEGRブロワのインペラやその近傍に付着したりしても、容易に洗浄し排水と共に除去することができる。
【0017】
(3)本発明の好ましい実施形態は、前記上壁部と前記モータの間に設けられて前記軸穴および前記駆動軸を取り囲むとともに、前記軸穴から大気側に漏れ出るミスト状の漏出物を捕集するミスト捕集ユニットをさらに備える構成とすることができる。この場合、通常はさほど高圧にならないEGRブロワのケーシング内で、洗浄時にその洗浄液が軸穴のシール部に入り、軸穴から大気側に漏れ出るミスト状の漏出物が生じたとしても、その漏出物がミスト捕集ユニットによって捕集される。
【0018】
(4)本発明の好ましい実施形態は、前記ケーシングの内壁面全域に、ガラスフレーク層を有する耐熱性の防食塗膜が施されている構成とすることができる。このようにすると、例えばアルカリ成分のガラスフレークを耐熱性の塗料樹脂の塗膜中に積層するように形成したガラスフレーク層には、十分な耐酸性や耐食性を持たせることができる。また、大物部品となるケーシングの内壁部の素地、あるいは更に吸込筒部の素地を、鉄系材料で形成することにより、コスト低減を図ることができる。
【0019】
(5)本発明の好ましい実施形態において、前記シール装置は、前記ケーシングに前記軸穴を形成するよう設けられ、前記軸穴の内周面上に開口する環状溝を形成する軸封ボックスと、それぞれ前記環状溝内で前記駆動軸を取り囲むようにガータースプリングにより所定の接触圧で前記駆動軸に付勢された複数の分割シール部材で構成され、少なくとも前記駆動軸との摺動面がカーボン材料で形成されている第1のシールリングおよび第2のシールリングと、前記環状溝内の前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングの間に前記駆動軸を取り囲むように設けられた円環板状のばね受け板と、前記ばね受け板の両面と前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングとの間に縮設され、前記第1のシールリングおよび前記第2のシールリングを所定のばね圧で前記軸封ボックスの前記環状溝の両内側壁面に付勢する一対の歯付き皿ばね状の線ばねと、を有している構成とすることができる。
【0020】
このようにすると、ガータースプリング付きの第1、第2のシールリングの摺動面がカーボン材料で構成されるので所要の耐腐食性および自己潤滑性を得ることができ、これら第1、第2のシールリングが円環板状のばね受け板を間に挟んだ一対の歯付き皿ばね状の線ばねによって軸封ボックスの環状溝の両内側壁面に付勢されるので、通常の皿ばねに比べ低ばね定数となる皿ばね状の線ばねによって第1、第2のシールリングに環状溝の両内側壁面に対する安定した付勢力および摩擦保持力を発生させることができる。また、一対の歯付き皿ばね状の線ばねは、駆動軸の軸方向のみならず径方向にも撓み得る形状設定が可能となるので、狭い軸封ボックス内に一対の歯付き皿ばね状の線ばねと両ばね間の円環板状のばね受け板とをコンパクトに収納しながらこれらを軸方向および回転方向に確実に位置決めでき、環状溝の両内側壁側の摩擦保持力と相俟って、第1、第2のシールリングの有効な回り止め作用をなす位置決め保持力を発生させることができる。
【0021】
(6)本発明に係るディーゼルエンジンの低圧EGR装置は、上記(2)に記載の構成を有するEGRブロワを備えるとともに、前記低圧EGRライン中で前記低圧EGRブロワによる昇圧前の前記還流ガスを水噴射により浄化する湿式のスクラバと、浄化後の還流ガスを前記低圧EGRブロワ側に通過させるとともに該還流ガスから浄化後の排水を分離させるデミスタと、前記排水から微粒子成分を除去しpH調整して前記スクラバに再供給するポンプ付きの水処理装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
この構成により、低圧EGRブロワから排水される洗浄液および湿式のスクラバから排水される洗浄水を共に水処理装置に導入することができ、適宜循環させることで、使用水量を有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エンジンの運転中でもEGRブロワ内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することのできるEGRブロワを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るEGRブロワを含む船舶用の低速ディーゼルエンジンのEGRシステム構成を示すその概略構成図である。
【
図2】
図1中の矢印II方向の矢視図であり、本発明の一実施形態に係るEGRブロワのケーシングに洗浄装置が装着された状態を示すそのブロワ正面図である。
【
図3】(a)は、
図2中の矢印IIIa方向の矢視図であり、(b)は(a)中の矢印IIIb方向の矢視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置の要部の径方向片側の縦断面図である。
【
図6】(a)は、本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置の皿ばね状の線ばねを駆動軸方向に見たその平面図であり、(b)はその皿ばね状の線ばねを駆動軸径方向に見たその正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置の円環板状のばね受け板を駆動軸方向に見たその平面図である。
【
図8】(a)は、本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置のシールリングを駆動軸方向に見たその平面図であり、(b)はそのシールリングを駆動軸径方向に見たその正面図である。
【
図9】(a)は、本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置の軸封ボックスの主要部を駆動軸方向に見たその平面図であり、(b)はその軸封ボックスの主要部を駆動軸径方向に見たその正面断面図である。
【
図10】(a)は、本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるシール装置の軸封ボックスの蓋状の残部を駆動軸方向に見たその平面図であり、(b)はその軸封ボックスの蓋状の残部を駆動軸径方向に見たその正面断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるケーシングの上壁部の分割構造およびミスト捕集ユニットの配置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1ないし
図11は、本発明の一実施形態に係るブロワを、EGR装置付きの動力システム中にEGRブロワとして設けた場合を示している。
【0027】
まず、その構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の動力システム1は、2サイクルの大型のディーゼル機関であるエンジン10と、ターボ過給機20(排気ターボ過給機)と、低圧EGR装置30とを具備しており、これらが全て図示しない船舶の機関室に搭載されるようになっている。
【0029】
エンジン10は、例えば大型船舶の主機関として使用可能な電子制御式のエンジンであり、ピストン12およびクロスヘッド16を有する多気筒の機関本体11に、掃気トランク13、排気レシーバ14および燃料供給ユニット15等を装着した静圧過給方式の低速ディーゼル機関となっている。なお、本実施形態では動力システム1を船舶用としているが、船舶用以外、例えば発電所の発電機のような大型発電機を動作させる機関としても使用可能である。
【0030】
多気筒の機関本体11には、複数の気筒11a(
図1には1気筒のみ図示している)が設けられている。これら複数の気筒11aは、それぞれ掃気ポート11bを介して掃気トランク13に接続される一方、対応するそれぞれの排気弁14aの開弁時に排気レシーバ14内に排気可能になっている。各気筒11a内では、掃気により気筒11a内に取り込まれた空気がピストン12により発火点以上に圧縮され、その空気中に燃料が噴射されて燃焼する。このとき、燃焼ガスが膨張してピストン12が駆動されるとともに、排ガスが発生する。そして、各気筒11aからの排ガスが排気レシーバ14内に間欠的に送り出されるようになっている。
【0031】
ここで、掃気トランク13は、機関本体11の各気筒11a内の燃焼ガスを排出させつつ新たな空気で満たす掃気作用をなすための所定掃気圧での圧縮空気溜め(掃気受け)となっており、排気レシーバ14は、機関本体11の各気筒11aからの排ガスを蓄圧貯留しつつその排気圧力変動を緩和し、排ガスを安定した排気圧力でターボ過給機20側に供給することができる排気溜めとなっている。
【0032】
燃料供給ユニット15は、燃料清浄機で清浄化した舶用ディーゼル燃料をポンプ加圧し、気筒ごとの燃料弁が所定のタイミングで開弁するとき、機関本体11の各気筒11a内に燃料を噴射・供給できるようになっている。
【0033】
ターボ過給機20は、排気レシーバ14側から排気入口に供給される排気により回転駆動されるタービン21と、タービン21に一体に連結されてタービン21により回転駆動され、空気吸込口から空気を導入および圧縮して掃気トランク13側に供給するコンプレッサ22とを有している。
【0034】
ターボ過給機20のコンプレッサ22と掃気トランク13の間には、低圧EGR装置30により還流されるEGRガスをコンプレッサ22による加圧後に冷却する熱交換方式のエアークーラ23(
図1中では「A/C」と図示している)が設けられている。また、ターボ過給機20のタービン21の排気出口より下流側には、排気熱を回収する熱交換器であるエコノマイザ25が設けられており、このエコノマイザ25は、熱回収により発生した蒸気を船舶の雑用蒸気やターボ発電等に利用できるようになっている。
【0035】
低圧EGR装置30は、エコノマイザ25を通過した比較的低圧・低温の排ガスの一部をEGRガス(還流ガス)としてターボ過給機20のコンプレッサ22の空気吸込口側に還流させる低圧EGRラインLe1~Le3(以下、単にEGRラインLeともいう)と、その低圧EGRラインLeの入口付近に配置されたEGRバルブ27と、EGRバルブ27を通過したEGRガスを洗浄用の液滴(例えばアルカリ性の洗浄水)により浄化する湿式のスクラバ31と、そのスクラバ31を通過したEGRガスから浄化後の排水分を分離させるデミスタ32と、デミスタ32を通過した後の低圧のEGRガスを取り込んでターボ過給機20のコンプレッサ22の空気吸込口に送風する遠心式のEGRブロワ35(低圧EGRブロワ)とを含んでいる。
【0036】
スクラバ31は、例えばエコノマイザ25を通過した後の煙路26側から再循環経路である低圧EGRラインLe1に取り込まれたEGRガスに対して、洗浄用の液滴を噴霧させることで、EGRガス中のPMや燃焼プロセスで形成されたSOx等を除去する洗浄を行うことができ、そのスクラバ内底部側に、EGRガス浄化後の液滴を排水分として分離させ収集するデミスタ32が設けられている。
【0037】
EGRブロワ35は、デミスタ32を通過した後のEGRガスが導入されるスクロール型のケーシング50と、そのケーシング50に回転自在に挿通されたハブ状の回転軸61(駆動軸)と、回転軸61に支持されてケーシング50内に収納されたインペラ62と、回転軸61の外周面に摺動可能に接触しつつ後述する軸穴52aをシールするシール装置70とを具備している。
【0038】
図1ないし
図4および
図11に示すように、ケーシング50は、吸込口51aが開口する下壁部51と、軸穴52aが形成された上壁部52と、下壁部51から上壁部52側に向かって円錐台状に突出し上端53aがインペラ62の入口側に近接する吸込筒部53と、吸込筒部53を取り囲むとともにガス通路54をEGRラインLeの一部として形成するスクロール状の周壁部55と、下壁部51に開口する排水口部56とを有している。
【0039】
ケーシング50内に収納されてハブ状の回転軸61に支持されたインペラ62は、シュラウド一体型のもので、ガス通路54の内端側で吸込筒部53の突出し上端53aを回転自在に取り囲む下向きの入口部62aと、スクロール状の周壁部55に向かって放射外方向に開口する出口部62bと、入口部62a側から出口部62bへと延びつつ相互に等角度間隔に離間する複数の翼面部62cと、複数の翼面部62cの下面側を覆うシュラウド62dと、ケーシング50の上壁部52に対面する背面62eとを有している。
【0040】
図3(a)および
図3(b)に示すように、ケーシング50は、スクロール状の周壁部55の外端部55a側に開口する吐出口57a(吹出口)を有しており、ガス通路54は、吸込筒部53を取り囲むスクロール通路となってる。
【0041】
また、
図1中のケーシング50の上方側には、ハブ状の回転軸61を回転させるモータ80が配置されている。このモータ80は、
図5に示すように、上壁部52の着脱可能な中央側厚板部分52c上に突出する円環状のモータ取付部52pに締結固定されている。また、モータ80は、出力軸81と、出力軸81を駆動するモータ本体82とを有しており、出力軸81は、ハブ状の回転軸61の内方に嵌入されるとともにフリンガ63を介して回転軸61に突き当てられ、締結ボルトおよびプラグ状のワッシャーにより回転軸61に一体的にボルト締結されている。
【0042】
モータ本体82は、その詳細を図示しないが、例えば可変電圧可変周波数方式(以下、VVVF方式という)で制御されるインバータ一体型の電動モータであり、所定範囲内の任意の駆動回転数および駆動トルクで動作可能とすることで、エンジン10の運転条件や後述する洗浄条件に適した駆動状態に制御可能になっている。もっとも、モータ本体82は、電動モータでなく、エアモータ等であってもよい。
【0043】
インペラ62がケーシング50内でハブ状の回転軸61を介してモータ80の出力軸81により回転駆動されるとき、スクラバ31側での洗浄後にガス通路54内に導入されたEGRガスは、ターボ過給機20のコンプレッサ22の空気取入口に送風され、コンプレッサ22により掃気可能に加圧され、エアークーラ23を介してエンジン10に再循環されるようになっている。
【0044】
図2に示すように、ケーシング50には、インペラ62およびその近傍のケーシング50の内壁58を洗浄する洗浄装置100が装着されており、洗浄装置100は、上壁部52に対面するインペラ62の背面62eに向かってその上壁部52側から洗浄液を噴射する第1洗浄ノズル101と、周壁部55側からインペラ62の翼面部62cに向かって洗浄液を噴射する第2洗浄ノズル102と、周壁部55または下壁部51側からインペラ62のシュラウド62dの下面に向かって洗浄液を噴射する第3洗浄ノズル103とを有している。洗浄装置100は、さらに、洗浄液の供給源(例えば後述するポンプ36および水処理装置37)に接続される一端側が集合管で、他端側が3つの分岐管となっている洗浄液分配管104と、洗浄液分配管104の一端側に設けられたバルブ105とを有している。
【0045】
第1洗浄ノズル101は、インペラ62の外周半径位置付近の上方からインペラ62の背面62eに対して鉛直上方側に傾斜角θ1をなし、かつ、インペラ62の中心側に向かう噴射方向D1に洗浄液を噴射することができ、その噴射流量は球状弁体等を内蔵するバルブ105により調節可能になっている。なお、第1洗浄ノズル101からの洗浄液の噴射方向D1は、背面62eの径方向に対し所定交差角度をなしてインペラ62の周方向に傾くように設定してもよい。その場合、ハブ状の回転軸61から逸れる方向に洗浄液を噴射することができ、インペラ62の回転に対する洗浄液の衝突部位における相対速度を加減することもできる。また、洗浄液の噴射の強さは、例えばバルブ105やポンプ36により、あるいは追加の噴射制御バルブや増圧ポンプ等により変化させることができ、洗浄液の噴射の温度は、洗浄液の供給手段の切換えや蒸気熱利用等により変化させることができる。さらに、洗浄液の噴射は、液体のみの噴射に限らず、液体と気体の混合流体や、加圧過熱蒸気等の噴射とすることができ、その噴射の形態は、1または複数の扇形や円錐形その他の噴流形態とすることができる。
【0046】
第2洗浄ノズル102は、インペラ62の回転軸方向における翼面部62cの設置高さ付近にインペラ62の外周より外側に位置するように配置されており、インペラ62の翼面部62cに対し少なくとも周方向に所定の傾斜角をなし、かつ、インペラ62の中心側に向かう噴射方向D2に洗浄液を噴射するようになっている。また、第2洗浄ノズル102の噴射流量は、バルブ105により調節可能で、第1洗浄ノズル101の噴射流量に対し一定比率で変化するようになっている。なお、第2洗浄ノズル102からの洗浄液の噴射方向D2は、水平方向に近い噴射方向として図示しているが、翼面部62cの形状に応じて、洗浄効果が高まるように上下方向の傾斜角度をなしてインペラ62の回転軸方向に傾くように設定してもよい。
【0047】
第3洗浄ノズル103は、インペラ62の外周半径より外方側からインペラ62のシュラウド62dの下面に対し少なくとも鉛直方向に所定傾斜角をなし、かつ、インペラ62の中心側に向かう噴射方向D3に洗浄液を噴射することができる。また、第3洗浄ノズル103の噴射流量は、バルブ105により調節可能で、第1洗浄ノズル101および第2洗浄ノズル102のそれぞれの噴射流量に対し略一定比率で変化するようになっている。
なお、第3洗浄ノズル103からの洗浄液の噴射方向D3は、少なくとも鉛直上方側(インペラ62の回転軸方向一方側)に傾斜する噴射方向として図示しているが、シュラウド62dの形状に応じて、洗浄効果が高まるようにインペラ62の周方向にも傾くように設定できることは勿論である。
【0048】
この洗浄装置100は、ケーシング50のスクロール状の周壁部55の小半径領域側に配置されており、排水口部56は、スクロール状の周壁部55の大半径領域側に近接して配置されている。すなわち、第1洗浄ノズル101、第2洗浄ノズル102および第3洗浄ノズル103からそれぞれ噴射された洗浄液は、インペラ62の送風方向の回転により遠心方向に飛散または付勢されつつ流下して、排水口部56に排水されるようになっている。排水口部56には、図示しない排水管が接続されており、その排水管を通し、洗浄液はスクラバ31やデミスタ32の下方の洗浄水溜まりあるいは水処理装置37等に戻すことができるようになっている。なお、排水口部56からの排水を容易にすべく、下壁部51が水平面からわずかに傾斜して、排水口部56側が低くなるようにしてもよい。
【0049】
図5に示すように、ハブ状の回転軸61は、モータ80の出力軸81に対し一体回転するように連結することができる蓋付きの筒状体となっており、モータ80の出力軸81に所定の嵌合圧で嵌合する段付きの略円筒体61aと、インペラ62内の略円筒体61aの一端に同心的に嵌合しその一端を閉止するプラグ状のワッシャー61bと、略円筒体61aおよびプラグ状のワッシャー61bをモータ80の出力軸81に対して位置決め可能な環状のスペーサ61cと、モータ80の出力軸81に対して略円筒体61a、プラグ状のワッシャー61bおよびスペーサ61cを一体に締結固定するボルト61dと、回り止めピン61eとを有している。
【0050】
図5ないし
図9に示すように、シール装置70は、軸穴52aの内周面上に開口する環状溝71hを形成する軸封ボックス71と、環状溝71h内に収納された第1のシールリング73Aおよび第2のシールリング73Bと、環状溝71h内の第1および第2のシールリング73A、73Bの間にハブ状の回転軸61を取り囲むように設けられた円環板状のばね受け板74と、ばね受け板74の両面と第1および第2のシールリング73A、73Bとの間に縮設され、第1および第2のシールリング73A、73Bを所定のばね圧で軸封ボックス71の環状溝71hの両内側壁面に付勢する一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bと、を有している。
【0051】
図5、
図9および
図10に示すように、軸封ボックス71は、ボックス本体71Aと、複数の側板取付けねじ76によりボックス本体71Aに一体に締結固定された円環板状の側板71Bとによって構成されており、これらボックス本体71Aおよび側板71Bによって、軸穴52aおよび環状溝71hが形成されている。
【0052】
図9に示すように、ボックス本体71Aは、取付後にインペラ62側となる片面側に開いた円形凹部71vと、その円形凹部71vの内定部を貫通する円形の中心穴71aと、円形凹部71vの開口端側に位置するフランジ71fと、複数の側板取付孔71gおよび複数の固定ボルト孔71hbと、回止めピン取付け孔71iaとを有している。
【0053】
図10に示すように、円環板状の側板71Bは、ボックス本体71Aの円形の中心穴71aと内径が同一である円形の中心穴71bと、複数の側板取付けねじ76を挿通させてボックス本体71Aの複数の側板取付孔71gにねじ結合させることができるように、複数の側板取付孔71gと同半径位置に同角度間隔に形成された複数の取付ねじ孔71haと、回止めピン取付け孔71ibとを有している。
【0054】
そして、ボックス本体71Aおよび円環板状の側板71Bにより構成される軸封ボックス71は、それぞれの円形の中心穴71a、71bが同一の中心軸線上に位置するように位置決めされた状態で、複数の側板取付けねじ76により一体に締結されている。
【0055】
この軸封ボックス71は、複数の固定ボルト77をボックス本体71Aのフランジ71fに形成された複数の固定ボルト孔71hbに挿通し、上壁部52の中央側厚板部分52cに螺合させることで、ガスケット78を挟んで上壁部52の中央側厚板部分52cに対し一体に締結固定されている。その締結固定時には、ボックス本体71Aおよび円環板状の側板71Bが、円形の中心穴71a、71bがハブ状の回転軸61およびモータ80の出力軸81の回転中心軸線C1上に位置するように、配置および位置調整されている。
【0056】
また、上壁部52の円形の中央側厚板部分52cは、インペラ62より大径に形成されており、ケーシング50の上壁部52の外周側部分に対し複数の取付ボルト52bを外して中央側厚板部分52cを取り外すことにより、モータ80からインペラ62までの回転動作部分と、ケーシング50の残部を含む固定部分とを分離させることができるようになっている。
【0057】
図5および
図8に示すように、第1および第2のシールリング73A、73Bは、それぞれ環状溝71h内でハブ状の回転軸61を取り囲むようにガータースプリング72により所定の接触圧でハブ状の回転軸61に付勢された複数の2分割の分割シール部材73sa、73sbで構成されており、両分割シール部材73sa、73sbは、少なくともハブ状の回転軸61との摺動面がカーボン材料で形成されている。
【0058】
また、
図5、
図9および
図10に示すように、第1および第2のシールリング73A、73Bには、軸封ボックス71の環状溝71hの両内側壁面Fs1、Fs2(
図9、
図10参照)から回転中心軸線C1に対し軸平行に突出する複数の回止めピン71pa、71pbが設けられている。
【0059】
これら複数の回止めピン71pa、71pbは、第1および第2のシールリング73A、73Bに対して、それぞれハブ状の回転軸61の軸方向に凹凸係合している。
【0060】
一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bは、
図5および
図6に示すように、それぞれ周方向に延びる複数の円弧部75rと、複数の内凸爪部分75cと、片持ち鉤状に曲げ加工された両端部75e1、75e2とを有し、両端部75e1、75e2が周方向に所定の隙間dを隔てるように離間する自由形状を有している。
【0061】
また、一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bは、環状溝71hの内奥面71c(
図5、
図9参照)に圧接するよう径方向に縮径した状態に撓められて、軸封ボックス71内に嵌着されており、その嵌着状態で、複数の内凸爪部分75cが互いに略等角度間隔に離間することで、第1および第2のシールリング73A、73Bの周方向の全域を均等な側圧で付勢するようになっている。
【0062】
円環板状のばね受け板74は、
図5および
図7に示すように、複数の貫通孔74hと円弧状の切欠き74nとが等間隔に形成されており、切欠き74nにより円環板状のばね受け板74の周方向の角度位置調整ができるようになっている。例えば、切欠き74nは、ブロワ設置姿勢において、ケーシング50の正面側に配置される開閉蓋付きの点検穴110から目視できるような位置に配置されている。
【0063】
また、ハブ状の回転軸61に対する円環板状のばね受け板74の内径側の径方向隙間は、環状溝71hの内奥面71cに対する円環板状のばね受け板74の外径側の径方向隙間より大きくなっており、円環板状のばね受け板74がハブ状の回転軸61に接触することがないように寸法設定されている。
【0064】
さらに、上壁部52とモータ80の間には、軸穴52aおよびハブ状の回転軸61を放射外方側から取り囲むとともに、軸穴52aから大気側に漏れ出るミスト状の漏出物を捕集するミスト捕集ユニット90が設けられている。
【0065】
このミスト捕集ユニット90は、軸穴52aおよびハブ状の回転軸61を取り囲むよう上壁部52からモータ取付基準面Mtの高さに突出してモータ80の取付板83に近接する環状凸部91と、その環状凸部91に等角度間隔に設けられた複数のフィルタ状のミストキャッチャ92とを有しており、シール装置70とハブ状の回転軸61の摺動隙間を通して軸穴52aから大気側に漏れ出るミスト状の漏出物を捕集することができるようになっている。
【0066】
また、ケーシング50には、その内壁58の全域に及んで、
図2中に部分拡大図で示すような耐熱性の防食塗膜58iが施されており、防食塗膜58iは、耐熱性または熱硬化性の塗料樹脂の塗膜58r中に多層配置されたガラスフレーク層58fを有している。このガラスフレーク層58fは、例えばアルカリ成分の鱗片状のガラスフレークを塗料樹脂の塗膜中に均等に分散させつつ多層に積層するよう吹き付け塗装したものであり、これによって、防食塗膜58iは耐酸性を有する耐熱性のライニングとして機能するようになっている。
【0067】
また、ケーシング50の吸込筒部53の内周壁面53bおよび外周壁面53cにもそれぞれ耐熱性の防食塗膜58iが施されている。すなわち、ここにいうケーシング50の内壁58全域とは、ケーシング50内にEGRラインLeの一部として形成されるガス通路54等の全域を意味し、吸込筒部53の内周壁面53bや、吐出口57aを形成する吹出筒部57の内壁の防食塗膜57i等を含み得る。
【0068】
この防食塗膜58iが塗工されたケーシング50の内壁58全域で、ケーシング50の下壁部51、上壁部52と、吸込筒部53、周壁部55等の素地は、鉄系材料、例えば一般構造用圧延鋼材で形成されている。一方、ハブ状の回転軸61(ボルト61dおよびプラグ状のワッシャー61bを含む)およびインペラ62は、それぞれ例えば強度と耐食性に優れたステンレス鋼で形成されている。
【0069】
このように、本実施形態においては、ディーゼルエンジン10が、大型船舶の主機関として構成されるとともに、ターボ過給機20のタービン21を通過した排ガスの一部をターボ過給機20のコンプレッサ22に還流させる低圧EGRラインLe中で、その低圧EGRラインLe中の還流ガスをコンプレッサ22への供給圧に昇圧しつつ送風するEGRブロワが設けられている。
【0070】
次に、作用について説明する。
【0071】
上述のように構成された本実施形態のEGRブロワ35およびそれを備えた低圧EGR装置30において、ケーシング50は、下壁部51から円錐台状に突出して上端53aがインペラ62の入口部62aに挿入されて近接する吸込筒部53と、吸込筒部53を取り囲んでガス通路54を形成するスクロール状の周壁部55と、下壁部51に開口する排水口部56とを有しているので、インペラ62の背面62e、翼面部62cおよびシュラウド62sの下面に向かって、第1ないし第3洗浄ノズル101~103から洗浄液がそれぞれ噴射されるとき、インペラ62が洗浄されるとともに、洗浄後の洗浄液が排水口部56から排水される。したがって、エンジン10の運転状態、例えば停止直前であっても、洗浄作業が可能となり、インペラ62およびその周囲のケーシング50の内壁58を的確に洗浄することができる。その結果、エンジン10の運転中でもEGRブロワ35内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することができる。
【0072】
また、洗浄時にインペラ62を送風方向の回転させるようにすると、第1、第3洗浄ノズル101、103から噴射される洗浄液に、インペラ62に対する相対的な速度変化や遠心方向への方向変化が生じることで、インペラ62の洗浄作用が強化されるとともに、第2洗浄ノズル102から噴射される洗浄液がインペラ62の翼面部62cに衝突し飛散することで、インペラ62の翼面部62cの洗浄効果が高められる。
【0073】
また、第2洗浄ノズル102から噴射される洗浄液がインペラ62の内部から吸込筒部53の内周壁面53bに達したとしても、洗浄液はスクラバ31やデミスタ32の下方の洗浄水溜まりあるいは水処理装置37等に戻すようにすることができ、排水口部56から排水される洗浄液も同様に洗浄水溜まりや水処理装置37等に戻すことができる。さらに、VVVF方式のモータ80が、所定範囲内の任意の回転数および駆動トルクで動作可能であるので、インペラ62を洗浄に適した回転条件に制御可能となる。
【0074】
本実施形態のブロワは、EGRブロワ35として、低圧EGRラインLe中の還流ガスを昇圧させるので、スクラバ31で洗浄されたEGRガスが比較的低圧・低温で、EGRブロワ35付近のEGR経路Le中に酸性の凝縮水が付着したり、洗浄し切れなかった排ガス中の燃焼残渣物がEGRブロワ35のインペラ62やその近傍に付着したりしたとしても、容易に洗浄し排水と共に除去することができる。
【0075】
しかも、本実施形態では、上壁部52とモータ80の間に、軸穴52aから大気側に漏れ出るミスト状の漏出物を捕集するミスト捕集ユニット90が設けられているので、通常はさほど高圧にならないEGRブロワ35のケーシング50内で、洗浄時にその洗浄液が軸穴52aのシール部に入り、軸穴52aから大気側に漏れ出るミスト状の漏出物が生じたとしても、その漏出物がミスト捕集ユニット90によって確実に捕集される。
【0076】
また、本実施形態では、ケーシング50の内壁58の全域に、ガラスフレーク層58fを有する耐熱性の防食塗膜58iが施されているので、十分な耐酸性や耐食性を持たせることができる。また、大物部品となるケーシング50の内壁58を形成する内壁部の素地58s(
図2中の部分拡大図では、下壁部51の素地51s)、あるいは更に吸込筒部53の素地を、鉄系材料で形成することにより、コスト低減を図ることができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、シール装置70におけるガータースプリング付きの第1、第2のシールリング73A、73Bは、少なくともそれぞれの内周側の摺動面がカーボン材料で構成されたものであるので、所要の耐腐食性および自己潤滑性を得ることができる。また、第1、第2のシールリング73A、73Bが円環板状のばね受け板74を間に挟んだ一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bによって軸封ボックス71の環状溝71hの両内側壁面(
図9、
図10中のFs1、Fs2)に付勢されるので、通常の皿ばね等に比べ低ばね定数となる歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bによって第1、第2のシールリング73A、73Bに環状溝71hの両内側壁面に対する安定した付勢力および摩擦保持力を発生させることができる。
【0078】
また、一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bは、ハブ状の回転軸61の軸方向のみならず径方向にも撓み得る形状設定がなされているので、狭い軸封ボックス71内に一対の歯付き皿ばね状の線ばね75A、75Bと両ばね間の円環板状のばね受け板74とをコンパクトに収納しながら、これらを軸方向および回転方向に確実に位置決めでき、環状溝71hの両内側壁側の摩擦保持力および回止めピン71pa、71pbによる回り止め力と相俟って、第1、第2のシールリング73A、73Bの有効な回り止め作用をなす位置決め保持力を発生させることができる。
【0079】
加えて、本実施形態の舶用ディーゼルエンジン10の低圧EGR装置30は、低圧EGRラインLe中でEGRブロワ35による昇圧前のEGRガスを水噴射により浄化する湿式のスクラバ31と、浄化後のEGRガスをEGRブロワ35側に通過させるとともにそのガスから浄化後の排水を分離させるデミスタ32と、排水から微粒子成分を除去しpH調整してスクラバに再供給するポンプ付きの水処理装置37とを備えているので、EGRブロワ35から排水される洗浄液および湿式のスクラバ31から排水される洗浄水を共に水処理装置37に導入することができ、適宜循環させることで、使用水量を有効に抑制することができる。
【0080】
このように、本実施形態においては、エンジン10の運転中でもEGRブロワ35内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することができるものである。
【0081】
なお、上述の一実施形態に係るEGRブロワ35においては、ハブ状の回転軸61内にモータ80の出力軸81が差し込まれて両者がボルト締結により一体化されるものとしたが、インペラ62とモータ80の結合形態は、回転駆動可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0082】
また、上述の一実施形態では、第1ないし第3洗浄ノズル101~103からの洗浄剤噴射によって、特に耐食性優れた特定のステンレス鋼材で形成されたインペラ62を主な対象として洗浄し、ケーシング50の内壁58は、インペラ62の近傍のみが洗浄液噴射で洗浄されるものとした。しかし、洗浄の範囲は、汚れの付着や堆積の傾向に応じて適宜設定することができる。また、洗浄液の噴射方向は、専らインペラ62の回転中心軸線C1側に傾斜するものとしたが、例えば第1ないし第3洗浄ノズル101~103がそれぞれ向きの異なる噴射口を有し、内壁58の広い範囲にわたって洗浄を行うようにすることができ、さらに、インペラ62の回転に対する影響が相殺されるようにすることや、逆に回転方向への加勢や抵抗となる洗浄剤噴射を行うことも考えられる。
【0083】
さらに、一実施形態ではエンジン10を船舶用としたが、本発明は、船舶用以外の大型の機関、例えば発電機を動作させるための定置機関等であっても、適用可能である。
【0084】
以上説明したように、本発明は、エンジンの運転中でもブロワ内での燃焼残渣物の付着や堆積および凝縮水による腐食等を有効に抑制することのできるEGRブロワを提供することができるものであり、大型または中型のディーゼルエンジンにおいてEGR装置の一部を構成するEGRブロワ全般に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 動力システム
10 エンジン(ディーゼルエンジン、舶用ディーゼルエンジン、主機関)
11 機関本体(内燃機関本体)
11a 気筒(シリンダ)
11b 掃気ポート
12 ピストン
13 掃気トランク(掃気受け)
14 排気レシーバ(排気溜め)
14a 排気弁
15 燃料供給ユニット
16 クロスヘッド
20 ターボ過給機(排気ターボ過給機)
21 タービン
22 コンプレッサ
23 エアークーラ
25 エコノマイザ
26 煙路
27 EGRバルブ
30 低圧EGR装置
31 スクラバ(湿式のスクラバ)
32 デミスタ
35 EGRブロワ(低圧EGRブロワ)
37 水処理装置
50 ケーシング
51 下壁部
51a 吸込口
52 上壁部
52a 軸穴
52b 複数の取付ボルト
52c 中央側厚板部分
53 吸込筒部
53a 上端
53b 内周壁面
53c 外周壁面
54 ガス通路
55 周壁部(スクロール上の周壁部)
55a 外端部
56 排水口部
57 吹出筒部
57a 吐出口(吹出口)
57i、58i 防食塗膜
58 内壁(内壁面部分)
58f ガラスフレーク層
58r 塗膜
61 回転軸(駆動軸)
61a 略円筒体
61b ワッシャー
61c スペーサ
61d ボルト
62 インペラ
62a 入口部
62b 出口部
62c 翼面部
62d シュラウド
62e 背面(上背面)
62s シュラウド(翼面部の下側の覆い)
63 フリンガ
70 シール装置
71 軸封ボックス
71A ボックス本体
71B 側板
71a、71b 中心穴
71c 内奥面
71f フランジ
71g 側板取付孔
71h 環状溝
71ha 取付ねじ孔
71hb 固定ボルト孔
71ia、71ib 回止めピン取付け孔
71pa、71pb 回止めピン
71v 円形凹部
72 ガータースプリング
73A 第1のシールリング
73B 第2のシールリング
73sa、73sb 分割シール部材
74 ばね受け板
74h 貫通孔
74n 切欠き
75A、75B 線ばね(歯付き皿ばね状の線ばね)
75c 内凸爪部分
75e1、75e2 両端部
75r 円弧部
76 側板取付けねじ
77 固定ボルト
80 モータ
81 出力軸(駆動軸)
82 モータ本体
83 取付板
90 ミスト捕集ユニット
91 環状凸部
92 ミストキャッチャ
100 洗浄装置
101 第1洗浄ノズル(背面洗浄ノズル)
102 第2洗浄ノズル(翼部洗浄ノズル)
103 第3洗浄ノズル(下面洗浄ノズル)
104 洗浄液分配管
105 バルブ
110 点検穴
C1 回転中心軸線
D1、D2、D3 噴射方向(洗浄液の噴射方向)
Fs1、Fs2 内側壁面
Le、Le1、Le2、Le3 低圧EGRライン(排気再循環経路)
Mt モータ取付基準面
θ1 傾斜角