(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012899
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】蓄電池監視システム、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250117BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20250117BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20250117BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250117BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H02J7/10 B
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H01M10/48 P
G01R31/387
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116076
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】内山 正規
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA61
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
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5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電池の各通電における前後の通電との間隔が短い場合であっても、蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを正確に取得する。
【解決手段】蓄電池監視システム(10)では、蓄電池(31,61)と、変換回路(40,70)とを備える蓄電池モジュール(30,60)が、充電装置(29)及び負荷(21)に並列に複数接続されている。パラメータ取得部(16c)は、満充電容量を推定する推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に所定パラメータを取得する。制御部(16b)は、蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、通電要求を入力した時から所定時間経過後に、推定蓄電池において所定パラメータを取得した後に通電を開始し、推定蓄電池の通電時間が非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、推定蓄電池及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える蓄電池モジュール(30,60,90)が、充電装置(29)及び負荷(21)の少なくとも一方に並列に複数接続される蓄電池監視システム(10,210)であって、
満充電容量を推定する前記蓄電池である推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得するパラメータ取得部(16c,31a,51,61a,91a)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御する制御部(16b)と、を備え、
前記制御部は、複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない前記蓄電池である非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始し、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、蓄電池監視システム。
【請求項2】
前記所定パラメータは、前記推定蓄電池に電流が流れていないとみなすことができる時間が前記所定時間以上である場合に計測される前記推定蓄電池の開回路電圧、又は前記開回路電圧に基づいて算出される前記推定蓄電池の充電率である、請求項1に記載の蓄電池監視システム。
【請求項3】
複数の前記蓄電池モジュールは、前記充電装置に並列に接続されており、
複数の前記蓄電池に対する前記通電要求は、複数の前記蓄電池に対する充電要求であり、
前記制御部は、前記充電要求に対する前記推定蓄電池の充電時間が前記充電要求に対する前記非推定蓄電池の充電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記推定蓄電池に流れる電流の平均値を前記非推定蓄電池に流れる電流の平均値よりも大きくする、請求項1又は2に記載の蓄電池監視システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、前記推定蓄電池の充電終了タイミングを前記非推定蓄電池の充電終了タイミングよりも早くする、請求項3に記載の蓄電池監視システム。
【請求項5】
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている、請求項3に記載の蓄電池監視システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記非推定蓄電池の少なくとも1つの充電を開始してから、前記推定蓄電池の充電を開始するまで、前記推定蓄電池に流れる電流を0に近づけるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、請求項5に記載の蓄電池監視システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記推定蓄電池の充電開始から充電終了まで、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記推定蓄電池に印加される電圧が、前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記非推定蓄電池に印加される電圧よりも高くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、請求項5に記載の蓄電池監視システム。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記非推定蓄電池の出力電圧と、前記推定蓄電池の出力電圧との電圧差が所定電圧差よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が低い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも増加させる又は前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が高い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも減少させるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、請求項5に記載の蓄電池監視システム。
【請求項9】
前記制御部は、複数の前記蓄電池のうち最も劣化していると予測される蓄電池、及び複数の前記蓄電池のうち満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池の少なくとも一方を、前記推定蓄電池に選択する、請求項1又は2に記載の蓄電池監視システム。
【請求項10】
前記制御部は、各蓄電池の通電可能電力及び前記蓄電池監視システムの通電可能電力に基づいて、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択する前記蓄電池の数を決定する、請求項1又は2に記載の蓄電池監視システム。
【請求項11】
前記制御部は、全ての前記非推定蓄電池の通電を開始してから前記推定蓄電池の通電を開始するまでの間に、前記蓄電池監視システムの通電可能電力が、全ての前記非推定蓄電池の通電可能電力の合計よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択した前記蓄電池の少なくとも1つを前記非推定蓄電池に変更して通電を開始する、請求項10に記載の蓄電池監視システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに複数の前記蓄電池に対する次の通電要求を入力した時に前記推定蓄電池の通電を終了し、前記推定蓄電池の通電を終了した時から前記所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始する、請求項1又は2に記載の蓄電池監視システム。
【請求項13】
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える蓄電池モジュール(30,60,90)が、充電装置(29)及び負荷(21)の少なくとも一方に並列に複数接続される蓄電池監視システム(10)に適用される制御プログラムであって、
満充電容量を推定する前記蓄電池である推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得する処理と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御する処理と、
複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない前記蓄電池である非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを取得した後に通電を開始し、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する処理と、
をコンピュータ(16)に実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、負荷に対して並列に接続される複数の電池ブロックのうち、満充電容量を推定する電池ブロック(以下、「推定電池ブロック」という)を分極が解消するまで並列接続から切り離すとともにそれ以外の電池ブロックにより放電又は充電を行い、推定電池ブロックの分極解消後の充電前の電圧を取得し、推定ブロックに所定の充電量が充電された後に、推定電池ブロックの充電後の分極解消後の電圧を取得するシステムがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムは、取得した充電前及び充電後の推定電池ブロックの分極解消後の電圧(所定パラメータ)からそれぞれ充電前及び充電後の充電率(所定パラメータ)を求め、それらの値と前記所定の充電量とから、満充電容量を推定している。特許文献1に記載のシステムによれば、推定電池ブロック以外の電池ブロックの使用に支障を与えることなく、推定電池ブロックの分極の解消時間が確保され、推定電池ブロックの満充電容量を正確に推定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシステムでは、推定電池ブロックの充電(通電)前に分極を解消するための放置時間(以下、「分極解消時間」という)を確保した分、推定電池ブロックに所定の充電量を充電し終える充電終了タイミングが遅くなる。このため、複数の電池ブロックの充電後すぐに複数の電池ブロックが放電に使用される場合に、推定電池ブロックの充電後に分極解消時間を確保することが困難である。
【0005】
また、放電(通電)前及び放電後の充電率を求め、それらの値と所定の放電量とから、満充電容量を推定する場合も、同様の問題が生じ得る。すなわち、推定電池ブロックの放電前に分極解消時間を確保し、複数の電池ブロックの放電後すぐに複数の電池ブロックが充電に使用される場合に、推定電池ブロックの放電後に分極解消時間を確保することが困難である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、蓄電池監視システムにおいて、蓄電池の各通電における前後の通電との間隔が短い場合であっても、蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを正確に取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える蓄電池モジュール(30,60,90)が、充電装置(29)及び負荷(21)の少なくとも一方に並列に複数接続される蓄電池監視システム(10,210)であって、
満充電容量を推定する前記蓄電池である推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得するパラメータ取得部(16c,31a,51,61a,91a)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御する制御部(16b)と、を備え、
前記制御部は、複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない前記蓄電池である非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始し、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する。
【0008】
上記構成によれば、電力供給システムでは、蓄電池と、前記蓄電池から1次側端子対に入力された電力を変換して2次側端子対から出力する変換回路とを備える蓄電池モジュールが、充電装置及び負荷の少なくとも一方に並列に複数接続される。このため、蓄電池を充電装置により充電(通電)したり、蓄電池から負荷へ放電(通電)したりすることができる。
【0009】
パラメータ取得部は、推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得する。所定パラメータを正確に取得するためには、所定パラメータの取得前に、推定蓄電池において分極解消時間を確保する必要がある。また、制御部は、複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御することができる。
【0010】
ここで、前記制御部は、複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する。このため、非推定蓄電池の少なくとも1つにより、複数の前記蓄電池に対する通電要求に応じることができる。一方、前記制御部は、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始する。このため、推定蓄電池において、通電要求を入力した時の直前の通電終了タイミングから通電要求を入力した時までの間隔が短かったとしても、所定パラメータを取得する前に推定蓄電池の分極解消時間として所定時間を確保することができる。そして、所定パラメータを取得した後に推定蓄電池の通電を開始することができる。ただし、推定蓄電池の通電開始タイミングは、非推定蓄電池の通電開始タイミングよりも遅くなる。
【0011】
この点、前記制御部は、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する。このため、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間以上である場合と比較して、推定蓄電池の通電終了タイミングを早くすることができる。このため、推定蓄電池の通電終了後に、推定蓄電池の分極解消時間を確保しやすくなる。したがって、蓄電池の各通電における前後の通電との間隔が短い場合であっても、蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを正確に取得することができる。
【0012】
具体的には、第2の手段のように、前記所定パラメータは、前記推定蓄電池に電流が流れていないとみなすことができる時間が前記所定時間以上である場合に計測される前記推定蓄電池の開回路電圧、又は前記開回路電圧に基づいて算出される前記推定蓄電池の充電率である、といった構成を採用することができる。こうした構成によれば、前記推定蓄電池の開回路電圧に基づいて、推定蓄電池の満充電容量を精度よく算出することができる。例えば、満充電容量=充電量×100/(充電後の充電率-充電前の充電率)の式により満充電容量を算出することができる。
【0013】
第3の手段では、複数の前記蓄電池モジュールは、前記充電装置に並列に接続されており、複数の前記蓄電池に対する前記通電要求は、複数の前記蓄電池に対する充電要求であり、前記制御部は、前記充電要求に対する前記推定蓄電池の充電時間が前記充電要求に対する前記非推定蓄電池の充電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記推定蓄電池に流れる電流の平均値を前記非推定蓄電池に流れる電流の平均値よりも大きくする。
【0014】
上記構成によれば、通電要求が充電要求である場合に、推定蓄電池及び非推定蓄電池に流れる電流の平均値を制御することで、推定蓄電池の充電時間を非推定蓄電池の充電時間よりも容易に短くすることができる。
【0015】
第4の手段では、前記制御部は、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、前記推定蓄電池の充電終了タイミングを前記非推定蓄電池の充電終了タイミングよりも早くする。こうした構成によれば、推定蓄電池の充電開始タイミングが非推定蓄電池の充電開始タイミングよりも遅くなったとしても、前記推定蓄電池の充電終了タイミングを前記非推定蓄電池の充電終了タイミングよりも早くすることができる。したがって、推定蓄電池の充電終了後に、推定蓄電池の分極解消時間をさらに確保しやすくなる。
【0016】
第5の手段では、前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている。
【0017】
上記構成によれば、蓄電池の出力電圧Vbと変換回路の出力電圧Voとを足した電圧が、蓄電池モジュールの出力電圧Vmとなる。このため、変換回路の2次側端子対に蓄電池が並列接続された蓄電池モジュールと比較して、蓄電池モジュールに出力電圧Vmが要求される際に変換回路に要求される出力電圧Voを低下させることができる。したがって、変換回路の定格電圧を低くすることができ、ひいては変換回路の定格容量を小さくすることができるため、変換回路の小型化を図ることができる。
【0018】
第6の手段では、前記制御部は、前記非推定蓄電池の少なくとも1つの充電を開始してから、前記推定蓄電池の充電を開始するまで、前記推定蓄電池に流れる電流を0に近づけるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する。こうした構成によれば、充電装置からリレー等により推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールを切り離さない場合であっても、推定蓄電池に流れる電流を0に近づけることができ、推定蓄電池に分極が生じることを抑制することができる。
【0019】
第7の手段では、前記制御部は、前記推定蓄電池の充電開始から充電終了まで、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記推定蓄電池に印加される電圧が、前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記非推定蓄電池に印加される電圧よりも高くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する。こうした構成によれば、推定蓄電池及び非推定蓄電池に印加される電圧を制御することで、推定蓄電池及び非推定蓄電池に流れる電流を容易に制御することができる。
【0020】
非推定蓄電池の出力電圧と推定蓄電池の出力電圧との電圧差が大きくなり過ぎると、非推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧と推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧とを一致させるように変換回路で調整することが困難となる。
【0021】
この点、第8の手段では、前記制御部は、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記非推定蓄電池の出力電圧と、前記推定蓄電池の出力電圧との電圧差が所定電圧差よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が低い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも増加させる又は前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が高い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも減少させるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する。こうした構成によれば、非推定蓄電池の出力電圧と推定蓄電池の出力電圧との電圧差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。したがって、非推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧と推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧とを一致させるように変換回路で調整可能な状態を維持することができる。
【0022】
第9の手段では、前記制御部は、複数の前記蓄電池のうち最も劣化していると予測される蓄電池、及び複数の前記蓄電池のうち満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池の少なくとも一方を、前記推定蓄電池に選択する。こうした構成によれば、満充電容量が少ないと予測される蓄電池、又は把握している満充電容量の誤差が大きいと予測される蓄電池の満充電容量を推定することができる。したがって、複数の蓄電池の満充電容量を用いて複数の蓄電池の通電を制御する際に、制御の効果を向上させることができる。
【0023】
非推定蓄電池を通電する際に、通電する非推定蓄電池の電力の合計が蓄電池監視システムの通電可能電力よりも大幅に小さい場合は、蓄電池監視システムの通電効率が低下するおそれがある。
【0024】
この点、第10の手段では、前記制御部は、各蓄電池の通電可能電力及び前記蓄電池監視システムの通電可能電力に基づいて、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択する前記蓄電池の数を決定する。こうした構成によれば、各蓄電池の通電可能電力及び前記蓄電池監視システムの通電可能電力を考慮して、前記非推定蓄電池の通電開始時に推定蓄電池に選択する前記蓄電池の数、ひいては通電する非推定蓄電池の数を決定することができる。したがって、蓄電池監視システムの通電効率が低下することを抑制することができる。
【0025】
第11の手段では、前記制御部は、全ての前記非推定蓄電池の通電を開始してから前記推定蓄電池の通電を開始するまでの間に、前記蓄電池監視システムの通電可能電力が、全ての前記非推定蓄電池の通電可能電力の合計よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択した前記蓄電池の少なくとも1つを前記非推定蓄電池に変更して通電を開始する。こうした構成によれば、全ての前記非推定蓄電池を通電しても蓄電池監視システムの通電可能電力に達しない場合に、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択した前記蓄電池の少なくとも1つを前記非推定蓄電池に変更して、非推定蓄電池の通電電力の合計を増加させることができる。したがって、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択した前記蓄電池の数が多すぎた場合であっても、蓄電池監視システムの通電効率が低下することを抑制することができる。
【0026】
前記推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに複数の前記蓄電池に対する次の通電要求を入力した場合にすぐに推定蓄電池の通電を開始すると、次の通電要求に対する推定蓄電池の通電開始前に、推定蓄電池の分極解消時間を確保して所定パラメータを取得することができない。
【0027】
この点、第12の手段では、前記制御部は、前記推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに複数の前記蓄電池に対する次の通電要求を入力した時に前記推定蓄電池の通電を終了し、前記推定蓄電池の通電を終了した時から前記所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始する。こうした構成によれば、前記推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに複数の前記蓄電池に対する次の通電要求を入力した場合であっても、推定蓄電池の分極解消時間として所定時間を確保して所定パラメータを取得することができる。
【0028】
第13の手段は、
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える蓄電池モジュール(30,60,90)が、充電装置(29)及び負荷(21)の少なくとも一方に並列に複数接続される蓄電池監視システム(10)に適用される制御プログラムであって、
満充電容量を推定する前記蓄電池である推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得する処理と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御する処理と、
複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない前記蓄電池である非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを取得した後に通電を開始し、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する処理と、
をコンピュータ(16)に実行させる。
【0029】
上記構成によれば、蓄電池監視システムに適用される制御プログラムをコンピュータに実行させることにより、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】理想ユースケースにおける満充電容量算出の態様を示すタイムチャート。
【
図4】OCVとSOCの関係、及びSOCの取得態様を示すグラフ。
【
図5】ユースケースとSOH算出可否との関係を示す模式図。
【
図6】第1実施形態の満充電容量算出の概要を示す模式図。
【
図7】第1実施形態の満充電容量算出の手順を示すフローチャート。
【
図8】第1実施形態の満充電容量算出の態様を示すタイムチャート。
【
図9】満充電容量算出の変更例の概要を示す模式図。
【
図12】第2実施形態の満充電容量算出の手順を示すフローチャート。
【
図13】非推定蓄電池及び推定蓄電池の数とシステムの充電可能電流との関係を示す模式図。
【
図19】満充電容量算出の他の変更例の概要を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、車両に搭載されて負荷に電力を供給する電力供給システムに具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。車両は、例えばハイブリッド車両や電気自動車であり、車両を起動する起動スイッチ(例えばIGスイッチやスタートスイッチ)を備えている。車両は、起動スイッチ(図示略)をオンすることにより動作状態(動作中)となり、起動スイッチをオフすることにより停止状態(停止中)となる。
【0032】
図1に示すように、電力供給システム10は、バス11,12(電力供給バス)、第1蓄電池モジュール30、第2蓄電池モジュール60、電圧センサ13、電流センサ19、ECU(Electronic Control Unit)16等を備えている。なお、バスの正極側(正側)をバス11と称し、バスの負極側(負側)をバス12と称する。バス12は接地されている。
【0033】
バス11,12には、第1蓄電池モジュール30(蓄電池モジュール)、第2蓄電池モジュール60(蓄電池モジュール)、負荷21、外部充電器29、及び電圧センサ13が並列に接続されている。蓄電池モジュール30,60は、バス11,12に電力を入出力する。負荷21は、バス11,12から電力を入力する、又はバス11,12に電力を入出力する。外部充電器29は、バス11,12に電力を入力することにより、蓄電池31,61を充電する。電圧センサ13は、バス12とバス11との間の電圧であるバス電圧Vbusを検出する。電流センサ19は、バス12(負荷21又は外部充電器29)に流れる電流を検出する。
【0034】
負荷21は、例えばインバータとMG(Motor Generator)との組み合わせ(インバータ付きモータユニット)、電気ヒータ、DCDCコンバータ等である。MG(電動発電機)は、インバータから供給される電力により、例えば電動自動車を駆動する、又は電動自動車から付与される回転力により回生発電を行う。インバータは、バス11,12とMGとの間で電力を変換する。電気ヒータは、例えばバス11,12から供給される電圧により発熱し、車内やバッテリを暖める。DCDCコンバータは、例えばバス11,12から供給される直流電力を変換して直流電力を供給したり、太陽光パネル等から供給される直流電力を変換してバス11,12へ直流電力を供給したりする。負荷21は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0035】
外部充電器29(充電装置)は、車両の外部に設置された周知の直流充電器である。外部充電器29の定格充電電力(充電可能電力)は、外部充電器29の仕様により予め決まっている。例えば、外部充電器29は、定格電圧=400[V]であり、定格電力=150[kW]である。外部充電器29は、充電ケーブル29a,29bを介してバス11,12(車両)に接続され、バス11,12へ充電電力を出力する。外部充電器29は、ECU16と通信可能である。外部充電器29は、自身の定格充電電力等、充電に関する情報をECU16へ送信する。外部充電器29は、充電ケーブル29a,29bがバス11,12に接続された時に、接続されたことを示す信号をECU16へ送信する。
【0036】
第1蓄電池モジュール30は、第1蓄電池31、第1電流センサ33、第1駆動回路35、第1変換回路40、リレー40a,40b等を備えている。第1蓄電池31(蓄電池)は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を用いた高電圧の2次電池であり、種類は任意である。第1電流センサ33(電流センサ)は、第1蓄電池31に流れる電流を検出する。第1電流センサ33による検出値は、ECU16に入力され、例えば第1蓄電池31の充電率(SOC:State Of Charge)[%]の計算に用いられる。第1駆動回路35(駆動回路)は、第1変換回路40が備えるスイッチング素子(後述)をオンオフ駆動する。第1駆動回路35は、ECU16により制御される。リレー40a,40bは、蓄電池モジュール30をバス11,12に対してそれぞれ切断及び接続する。なお、第1蓄電池31(蓄電池)は、高電圧でない2次電池でもよい。
【0037】
第1変換回路40(変換回路)は、1次側端子対である1次側の正極端子41及び負極端子42と、2次側端子対である2次側の正極端子47及び負極端子48とを備えている。第1蓄電池31の負極がバス12に接続されている。第1蓄電池31の正極に1次側の正極端子41が接続され、第1蓄電池31の負極に1次側の負極端子42が接続されている。また、第1蓄電池31の正極に2次側の負極端子48が接続されている。2次側の正極端子47がバス11に接続されている。すなわち、第1変換回路40の1次側端子対41,42に第1蓄電池31の正極及び負極がそれぞれ接続され、第1変換回路40の2次側端子対47,48に第1蓄電池31が直列接続されている。第1変換回路40は、第1蓄電池31から1次側端子対41,42に入力された電力を変換して2次側端子対47,48から出力する。なお、第1変換回路40は、2次側端子対47,48に入力された電力を変換して1次側端子対41,42から出力することも可能である双方向の変換回路である。
【0038】
第2蓄電池モジュール60は、第1蓄電池モジュール30と同様の構成であり、第2蓄電池61(蓄電池)、第2電流センサ63(電流センサ)、第2駆動回路65(駆動回路)、第2変換回路70、リレー70a,70b等を備えている。第2変換回路70(変換回路)は、第1変換回路40と同様の構成であり、1次側端子対である1次側の正極端子71及び負極端子72と、2次側端子対である2次側の正極端子77及び負極端子78とを備えている。これらの接続態様も第1蓄電池モジュール30と同様であるため、第1蓄電池モジュール30についての上記説明を援用する。なお、第1蓄電池モジュール30と第2蓄電池モジュール60とは、同様の機能を有する構成を備えているものの、各構成の定格や耐電圧は互いに異なっていてもよい。
【0039】
図2に、第1変換回路40の一例を示す。第1変換回路40は、周知のセンタータップ式の絶縁型DCDCコンバータである。第1変換回路40は、スイッチング素子43~46,54,55、平滑コンデンサ50,57、トランス53、リアクトル56、電圧センサ51,59、電流センサ52,58等を備えている。スイッチング素子43~46,54,55は、例えばMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子43~46は、フルブリッジ回路を構成している。スイッチング素子43とスイッチング素子44との接続点、及びスイッチング素子45とスイッチング素子46との接続点が、トランス53の1次側コイルの両端にそれぞれ接続されている。スイッチング素子54,55は、トランス53の2次側コイルの両端部とリアクトル56との間にそれぞれ接続されている。電圧センサ51は、1次側の負極端子42と正極端子41と間の電圧、すなわち第1蓄電池31の出力電圧Vb(1次側電圧)を検出する。電流センサ52は、1次側回路に入力される電流である入力電流Ii(1次側電流)を検出する。電圧センサ59は、2次側の負極端子48と正極端子47と間の電圧、すなわち第1変換回路40の出力電圧Vo(2次側電圧)を検出する。電流センサ58は、リアクトル56に流れる電流、すなわち第1変換回路40の出力電流Io(2次側電流)を検出する。電圧センサ51,59、及び電流センサ52,58による検出値は、ECU16に入力される。
【0040】
ECU16(制御装置)は、例えばCPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータ(コンピュータ)として構成されている。ECU16は、リレー40a,40b,70a,70bの状態、及び負荷21の状態を制御する。さらに、ECU16は、電力供給システム10に適用される制御プログラムを実行することにより、バス電圧設定部16a、制御部16b、パラメータ取得部16c等の機能を実現する。なお、蓄電池モジュール30,60、制御部16b、及びパラメータ取得部16cにより、蓄電池監視システムが構成されている。
【0041】
バス電圧設定部16aは、バス11,12から負荷21へ供給することが要求される電圧であるバス電圧要求値Vbus*を設定する。バス電圧設定部16aは、負荷21の状態に基づいてバス電圧要求値Vbus*を設定する。
【0042】
制御部16bは、蓄電池モジュール30,60の出力電圧Vm1,Vm2がそれぞれバス電圧要求値Vbus*になる(バス電圧要求値Vbus*に近づく)ように、変換回路40,70の出力電圧Vo1,Vo2をそれぞれ制御する。例えば、制御部16bは、電圧センサ51,59、及び電流センサ52,58による検出値に基づいてスイッチング素子43~46,54,55を制御することにより、第1変換回路40の第1出力電圧Vo1が第1出力電圧要求値Vo1*になる(第1出力電圧要求値Vo1*に近づく)ように制御する。詳しくは、第1出力電圧要求値Vo1*を、バス電圧要求値Vbus*から第1蓄電池31の第1出力電圧Vb1を引いた電圧に設定する(Vo1*=Vbus*―Vb1)。同様にして、制御部16bは、第2変換回路70の第2出力電圧Vo2が第2出力電圧要求値Vo2*になる(第2出力電圧要求値Vo2*に近づく)ように制御する。詳しくは、第2出力電圧要求値Vo2*を、バス電圧要求値Vbus*から第2蓄電池61の第2出力電圧Vb2を引いた電圧に設定する(Vo2*=Vbus*―Vb2)。
【0043】
なお、第1蓄電池31の第1出力電圧Vb1と第2蓄電池61の第2出力電圧Vb2との電圧差が大きくなり過ぎると、第1蓄電池モジュール30の出力電圧Vm1と第2蓄電池モジュール60の第2出力電圧Vm2とを一致させるように変換回路40,70で調整することが困難となる。
【0044】
図3は、理想ユースケースにおける満充電容量算出の態様を示すタイムチャートである。タイミングt11において車両の走行が終了すると、蓄電池31,61の分極が徐々に解消する。タイミングt12において蓄電池31,61の電圧が安定した時に、パラメータ取得部16cは蓄電池31,61の回路を開いた状態で電圧センサ51により充電前OCV(Open Circuit Voltage、開回路電圧)を検出させる。その後、制御部16bは変換回路40,70を制御することにより、外部充電器29からの充電電力により蓄電池31,61を充電する。タイミングt13において蓄電池31,61の充電が終了すると、蓄電池31,61の分極が徐々に解消する。タイミングt14において蓄電池31,61の電圧が安定した時に、パラメータ取得部16cは蓄電池31,61の充電後OCVを電圧センサ51により検出させる。なお、充電前OCV及び充電後OCVは、蓄電池31,61の満充電容量の推定に用いる所定パラメータに相当する。
【0045】
図4は、OCVとSOCの関係、及びSOCの取得態様を示すグラフである。パラメータ取得部16cは、安定した状態のOCVとSOCとの関係を規定した
図4のグラフを記憶している。安定した状態のOCVとSOCとの関係は、予め試験等に基づいて取得しておくことかできる。パラメータ取得部16cは、
図3のタイミングt12で検出した充電前OCVを
図4のグラフに当てはめることにより、充電前SOC(所定パラメータ)を算出する。パラメータ取得部16cは、
図3のタイミングt14で検出した充電後OCVを
図4のグラフに当てはめることにより、充電後SOC(所定パラメータ)を算出する。そして、パラメータ取得部16c(ECU16)は、満充電容量[Ah]=充電量×100/(充電後SOC-充電前SOC)の式により、満充電容量を算出する。充電量は、充電開始から終了までの電流の積算値であり、例えば電流センサ33,63によりそれぞれ検出された電流を積算することにより算出することができる。パラメータ取得部16c(ECU16)は、蓄電池の健全性(SOH:State Of Health)[%]=現在の満充電容量×100/製造時の満充電容量の式により、蓄電池31,61のSOHを算出する。なお、蓄電池31,61の電圧が安定していない状態で充電前OCV(充電後OCV)を検出すると、
図4のグラフに当てはめる充電前OCV(充電後OCV)を正確に検出することができない。その場合、蓄電池31,61の満充電容量を正確に推定することができず、ひいては蓄電池31,61のSOHを正確に推定することができない。
【0046】
図5は、ユースケースとSOH算出可否との関係を示す模式図である。なお、星印は、安定後のOCVを検出可能なタイミングを表している。
【0047】
理想ユースケースでは、車両の走行終了後に、蓄電池31,61の分極を解消するための放置時間(分極解消時間)を確保することができ、タイミングt21において安定後の充電前OCVを検出することができる。蓄電池31,61の充電終了後においても、蓄電池31,61の分極解消時間を確保することができ、タイミングt25において安定後の充電後OCVを検出することができる。したがって、SOHを正確に推定することができる。
【0048】
問題があるユースケースでは、車両の走行終了後すぐにユーザによる蓄電池31,61の充電操作が行われている。このため、蓄電池31,61の分極解消時間を確保することができず、蓄電池31,61の安定後の充電前OCVを検出することができない。したがって、SOHを正確に推定することができない。
【0049】
比較例では、車両の走行終了後すぐにタイミングt21においてユーザによる蓄電池31,61の充電操作が行われた時に、例えば満充電容量を推定する第1蓄電池31の充電を、タイミングt21からタイミングt22まで禁止する。このため、タイミングt22において、安定後の充電前OCVを検出することができる。しかし、第1蓄電池31の充電終了タイミングt24は、充電操作が行われた時にすぐに充電を開始した例えば第2蓄電池61の充電終了タイミングt23よりも遅くなる。このため、タイミングt25においてユーザによる走行要求があった時に、第1蓄電池31の分極解消時間を確保することができず、第1蓄電池31の安定後の充電後OCVを検出することができない。したがって、SOHを正確に推定することができない。
【0050】
図6は、本実施形態の満充電容量算出の概要を示す模式図である。本実施形態では、車両の走行終了後すぐにタイミングt31においてユーザによる蓄電池31,61の充電操作が行われた時に、満充電容量を推定しない蓄電池である非推定蓄電池の充電を開始する。このとき、例えば外部充電器29の定格充電電力により充電を行う。一方、満充電容量を推定する蓄電池である推定蓄電池を、タイミングt31からタイミングt32まで分極を解消するために放置する。このため、タイミングt32において、安定後の充電前OCVを検出することができる。充電前OCVを検出後、推定蓄電池の充電を開始し、非推定蓄電池及び推定蓄電池の充電電力を制御する。このとき、推定蓄電池の充電電力を各非推定蓄電池の充電電力よりも大きくする。これにより、推定蓄電池の充電時間Te2を、非推定蓄電池の充電時間Te1よりも短くすることができる。その結果、例えばタイミングt33において、推定蓄電池が満充電される。その後、分極を解消するために推定蓄電池を放置する。そして、タイミングt34においてユーザによる走行要求があった時に、推定蓄電池の分極解消時間が確保されており、推定蓄電池の安定後の充電後OCVを検出することができる。したがって、SOHを正確に推定することができる。
【0051】
図7は、本実施形態の満充電容量算出の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ECU16により所定の周期で繰り返し実行される。ここでは、第1蓄電池31を推定蓄電池に決定し、第2蓄電池61を非推定蓄電池に決定する場合を例にして説明する。
【0052】
まず、充電開始タイミングであるか否か判定する(S10)。例えば、充電ケーブル29a,29bがバス11,12に接続された時に、接続されたことを示す信号を外部充電器29から受信した場合に充電開始タイミングである(充電要求あり、通電要求あり)と判定する。この判定において、充電開始タイミングであると判定した場合(S10:YES)、非推定蓄電池及び推定蓄電池を決定する(S11)。具体的には、複数の蓄電池31,61のうち最も劣化していると予測される蓄電池、及び複数の蓄電池31,61のうち満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池の少なくとも一方を、推定蓄電池に選択する。例えば、直前に推定した満充電容量が最も少ない蓄電池を、最も劣化していると予測される蓄電池として選択する。例えば、直前に満充電容量を算出した時からの経過時間が最も長い蓄電池を、満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池として選択する。そして、複数の蓄電池31,61のうち、例えば推定蓄電池に選択された第1蓄電池31を推定蓄電池に決定し、推定蓄電池に選択されなかった残りの第2蓄電池61を非推定蓄電池に決定する。なお、最も劣化していると予測される蓄電池と、満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池とを選択してそれらが異なる場合は、いずれか一方を推定蓄電池に決定してもよい。また、複数の蓄電池31,61のうちSOCが最も大きい蓄電池を推定蓄電池に選択したり、推定蓄電池をランダムに選択したりすることもできる。続いて、非推定蓄電池の充電を開始する(S12)。
【0053】
一方、S10の判定において、充電開始タイミングでないと判定した場合(S10:NO)、充電開始からの経過時間が所定時間に等しいか否か判定する(S13)。具体的には、充電開始からの経過時間が、例えば第1蓄電池31(蓄電池)の分極が解消してOCVが安定するまでに必要な放置時間(待機時間)よりも長く設定された時間閾値に等しいか否か判定する。なお、時間閾値を可変値にして、推定蓄電池の温度が低いほど時間閾値が長くなるように設定してもよい。また、充電開始タイミングの前に推定蓄電池が時間Te3だけ既に放置されていた場合は、上記時間閾値から時間Te3を引いた時間を新たな時間閾値に設定してもよい。充電開始からの経過時間は、例えばS13の処理で充電開始タイミングであると判定した時からの経過時間でもよいし、S12の処理において非推定蓄電池の充電を開始した時からの経過時間でもよい。この判定において、充電開始からの経過時間が所定時間に等しいと判定した場合(S13:YES)、推定蓄電池の充電前OCV(所定パラメータ)を取得する(S14)。具体的には、推定蓄電池の回路を開いた状態(推定蓄電池に電流が流れていないとみなすことができる状態)において、電圧センサ51により推定蓄電池の出力電圧Vbを検出させる。続いて、推定蓄電池の充電を開始する(S15)。
【0054】
また、S13の判定において、充電開始からの経過時間が所定時間に等しくないと判定した場合(S13:NO)、充電終了条件を満たした蓄電池があるか否か判定する(S16)。具体的には、非推定蓄電池及び推定蓄電池のうち、出力電圧Vbが満充電電圧閾値に到達した蓄電池を、充電終了条件を満たした蓄電池であると判定する。満充電電圧閾値は、蓄電池31,61が満充電になったことを判定することのできる値に設定されている。この判定において、充電終了条件を満たした蓄電池があると判定した場合(S16:YES)、充電終了条件を満たした蓄電池の充電を終了する(S17)。蓄電池の充電を終了するためには、例えば蓄電池31,61に電流が流れないように変換回路40,70をそれぞれ制御してもよいし、蓄電池31,61をリレー40a,40b、70a,70bによりそれぞれバス11,12から切り離してもよい。一方、この判定において、充電終了条件を満たした蓄電池がないと判定した場合(S16:NO)、S18の処理へ進む。
【0055】
続いて、充電を開始又は終了している蓄電池の状態に応じて、各蓄電池31,61の充電電力を制御する(S18)。ここで、例えば非推定蓄電池61の充電を開始し且つ推定蓄電池31を分極解消のために放置している状態では、非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御して、外部充電器29の定格充電電力により非推定蓄電池61の充電を行う。このとき、例えば推定蓄電池31に電流が流れていないとみなすことができる(推定蓄電池に流れる電流を0に近づける)ように推定蓄電池31に対応する変換回路40を制御する、又は推定蓄電池31をリレー40a,40bによりそれぞれバス11,12から切り離す。ECU16は、外部充電器29との通信により外部充電器29の定格充電電力を取得することができる。また、推定蓄電池31の充電も開始して非推定蓄電池61及び推定蓄電池31を充電している状態では、充電ケーブル29a,29bの接続(充電要求)に対する推定蓄電池31の充電時間が充電要求に対する非推定蓄電池61の充電時間よりも短くなるように、推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御する。具体的には、推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御することにより、複数の蓄電池31,61の充電開始から充電終了までにおいて、推定蓄電池31に流れる電流の平均値を非推定蓄電池61に流れる電流の平均値よりも大きくする。詳しくは、推定蓄電池31に対応する変換回路40から推定蓄電池31に印加される出力電圧Voが、非推定蓄電池61に対応する変換回路70から非推定蓄電池61に印加される出力電圧Voよりも高くなるように、推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御する。そして、非推定蓄電池61又は推定蓄電池31の充電終了条件が満たされて、非推定蓄電池61及び推定蓄電池31の一方のみ充電している状態では、充電している一方の蓄電池に外部充電器29の定格充電電力により充電を行う。
【0056】
続いて、推定蓄電池の充電が終了し、且つ推定蓄電池の充電終了から上記所定時間以上が経過したか否か判定する(S19)。この判定において否定判定した場合(S19:NO)、この一連の処理を一旦終了する(END)。一方、この判定において肯定判定した場合(S19:YES)、推定蓄電池の充電後OCV(所定パラメータ)を取得する(S20)。取得した充電前OCV及び充電後OCV、並びに推定蓄電池の充電開始から終了までの充電量に基づいて、充電前SOC及び充電後SOC、並びに満充電容量を算出する(S21)。具体的には、取得した充電前OCV及び充電後OCVを
図4のグラフに当てはめることにより、充電前SOC(所定パラメータ)及び充電後SOC(所定パラメータ)を算出する。そして、満充電容量[Ah]=充電量×100/(充電後SOC-充電前SOC)の式により、満充電容量を算出する。その後、この一連の処理を終了する。
【0057】
なお、S14,S20,S21の処理がパラメータ取得部16cとしての処理に相当し、S12,S15,S18の処理が制御部16bとしての処理に相当する。
【0058】
図8は、本実施形態の満充電容量算出の態様を示すタイムチャートである。タイミングt41において充電要求が入力されると、非推定蓄電池の充電が開始され、推定蓄電池は充電なしで放置される。タイミングt42において充電開始からの経過時間が時間閾値に到達すると、推定蓄電池のOCVが取得される。そして、推定蓄電池の充電が開始され、推定蓄電池の充電電流が非推定蓄電池の充電電流よりも大きくなるように制御される。タイミングt43において、推定蓄電池の出力電圧Vbが満受電電圧閾値に到達し、推定蓄電池の充電が終了する。タイミングt44において、非推定蓄電池の出力電圧Vbが満受電電圧閾値に到達し、非推定蓄電池の充電が終了する。すなわち、制御部16bは、推定蓄電池に対応する変換回路及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御することで、推定蓄電池の充電終了タイミングt43を非推定蓄電池の充電終了タイミングt44よりも早くする。タイミングt45において車両が走行のために起動された時には、推定蓄電池の充電終了タイミングt43から上記所定時間に相当する上記時間閾値以上が経過しており、推定蓄電池のOCVが取得される。
【0059】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0060】
・制御部16bは、複数の蓄電池31,61に対する充電要求を入力した時に、例えば非推定蓄電池61の充電を開始する。このため、非推定蓄電池61により、複数の蓄電池31,61に対する充電要求に応じることができる。一方、制御部16bは、充電要求を入力した時から所定時間経過後に、例えば推定蓄電池31において所定パラメータをパラメータ取得部16cにより取得した後に充電を開始する。このため、推定蓄電池31において、充電要求を入力した時の直前の充電終了タイミングから充電要求を入力した時までの間隔が短かったとしても、所定パラメータを取得する前に推定蓄電池31の分極解消時間として所定時間を確保することができる。そして、所定パラメータを取得した後に推定蓄電池31の充電を開始することができる。
【0061】
・制御部16bは、例えば充電要求に対する推定蓄電池31の充電時間が充電要求に対する非推定蓄電池61の充電時間よりも短くなるように、推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御する。このため、充電要求に対する推定蓄電池31の充電時間が充電要求に対する非推定蓄電池61の充電時間以上である場合と比較して、推定蓄電池31の充電終了タイミングt43を早くすることができる。このため、推定蓄電池31の充電終了後に、推定蓄電池31の分極解消時間を確保しやすくなる。したがって、蓄電池31,61の充電における前後の放電との間隔が短い場合であっても、蓄電池31,61の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを正確に取得することができる。
【0062】
・所定パラメータは、推定蓄電池31に電流が流れていないとみなすことができる時間が所定時間以上である場合に計測される推定蓄電池31のOCV、及びOCVに基づいて算出される推定蓄電池31のSOCである。こうした構成によれば、推定蓄電池31のOCVに基づいて、推定蓄電池31の満充電容量を精度よく算出することができる。
【0063】
・推定蓄電池31及び非推定蓄電池61に流れる電流の平均値をそれぞれ制御することで、推定蓄電池31の充電時間を非推定蓄電池61の充電時間よりも容易に短くすることができる。
【0064】
・制御部16bは、例えば推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御することで、推定蓄電池31の充電終了タイミングt43を非推定蓄電池61の充電終了タイミングt44よりも早くする。こうした構成によれば、推定蓄電池31の充電開始タイミングt42が非推定蓄電池61の充電開始タイミングt41よりも遅くなったとしても、推定蓄電池31の充電終了タイミングt43を非推定蓄電池61の充電終了タイミングt44よりも早くすることができる。したがって、推定蓄電池31の充電終了後に、推定蓄電池31の分極解消時間をさらに確保しやすくなる。
【0065】
・蓄電池31,61の出力電圧Vbと変換回路40,70の出力電圧Voとを足した電圧が、蓄電池モジュール30,60の出力電圧Vmとなる。このため、変換回路40,70の2次側端子対47,48,77,78に蓄電池31,61が並列接続された蓄電池モジュールと比較して、蓄電池モジュール30,60に出力電圧Vmが要求される際に変換回路40,70に要求される出力電圧Voを低下させることができる。したがって、変換回路40,70の定格電圧を低くすることができ、ひいては変換回路40,70の定格容量を小さくすることができるため、変換回路40,70の小型化を図ることができる。
【0066】
・制御部16bは、例えば非推定蓄電池61の充電を開始してから、推定蓄電池31の充電を開始するまで、推定蓄電池31に流れる電流を0に近づけるように、推定蓄電池31に対応する変換回路40を制御する。こうした構成によれば、外部充電器29からリレー40a,40bにより推定蓄電池31に対応する蓄電池モジュール30を切り離さない場合であっても、推定蓄電池31に流れる電流を0に近づけることができ、推定蓄電池31に分極が生じることを抑制することができる。
【0067】
・制御部16bは、例えば推定蓄電池31の充電開始から充電終了まで、推定蓄電池31に対応する変換回路40から推定蓄電池31に印加される電圧が、非推定蓄電池61に対応する変換回路70から非推定蓄電池61に印加される電圧よりも高くなるように、推定蓄電池31に対応する変換回路40及び非推定蓄電池61に対応する変換回路70を制御する。こうした構成によれば、推定蓄電池31及び非推定蓄電池61に印加される電圧を制御することで、推定蓄電池31及び非推定蓄電池61に流れる電流を容易に制御することができる。
【0068】
・制御部16bは、複数の蓄電池31,61のうち最も劣化していると予測される蓄電池、及び複数の蓄電池31,61のうち満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池の少なくとも一方を、推定蓄電池に選択する。こうした構成によれば、満充電容量が少ないと予測される蓄電池、又は把握している満充電容量の誤差が大きいと予測される蓄電池の満充電容量を推定することができる。したがって、複数の蓄電池31,61の満充電容量を用いて複数の蓄電池31,61の通電を制御する際に、制御の効果を向上させることができる。
【0069】
・蓄電池監視システム(電力供給システム10)に適用される制御プログラムをECU16(コンピュータ)に実行させることにより、上記の作用効果を奏することができる。
【0070】
なお、第1実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0071】
・非推定蓄電池61の充電終了タイミングt44が推定蓄電池31の充電終了タイミングt43がよりも早くなってもよい。その場合であっても、充電要求に対する推定蓄電池31の充電時間が充電要求に対する非推定蓄電池61の充電時間よりも短くなっていれば、推定蓄電池31の充電終了後に、推定蓄電池31の分極解消時間を確保しやすくなる。
【0072】
・外部充電器29により非推定蓄電池61の充電を行わないか行うかを、リレー70a,70bの開閉により切り替えることもできる。
【0073】
・
図9に示すように、パラメータ取得部16cは、タイミングt51において充電要求を入力した時から所定時間経過後に、タイミングt52においてOCVを取得する。そして、推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに走行要求(複数の蓄電池31,61に対する放電要求、次の通電要求)を入力した場合を想定する。この場合に、仮に、すぐに推定蓄電池の放電を開始したとすると、走行要求に対する推定蓄電池の放電開始前に、推定蓄電池の分極解消時間を確保してOCV(所定パラメータ)を取得することができない。
【0074】
そこで、制御部16bは、推定蓄電池の充電(通電)を開始してから終了するまでに走行要求を入力した時に、以下のように制御することもできる。すなわち、制御部16bは、タイミングt53において走行要求を入力した時に推定蓄電池の充電を終了し、推定蓄電池の充電を終了した時から所定時間経過後に、タイミングt54で推定蓄電池においてOCV(所定パラメータ)をパラメータ取得部16cにより取得した後に推定蓄電池の放電(通電)を開始してもよい。こうした構成によれば、推定蓄電池の充電を開始してから終了するまでに走行要求を入力した場合であっても、推定蓄電池の分極解消時間として所定時間を確保してOCVを取得することができる。なお、制御部16bは、安定後の充電前OCVを取得できていない場合は、上記制御を実行しないようにすることもできる。
【0075】
・
図10に示すように、電力供給システム10は、第1蓄電池モジュール30の正極側(正側)をバス11に接続する経路22、第2蓄電池モジュール60の負極側(負側)をバス12に接続する経路24、及び経路22と経路24とを接続する経路23を備えていてもよい。経路22には、経路22と経路23との接続点N1と、経路22とバス11との接続点N2との間に、経路22を切断及び接続するリレー25(スイッチ)が設けられている。経路23には、経路23を切断及び接続するリレー26(スイッチ)が設けられている。経路24には、経路24と経路23との接続点N3と、経路24とバス12との接続点N4との間に、経路24を切断及び接続するリレー27(スイッチ)が設けられている。リレー25~27は、ECU16により制御される。なお、経路22~24、及びリレー25~27により、切替回路が構成されている。
【0076】
上記構成によれば、ECU16は、リレー25,27をオン(接続)し、リレー26をオフ(遮断)することにより、バス11,12に対して第1蓄電池モジュール30及び第2蓄電池モジュール60を並列接続に切り替えることができる。また、ECU16は、リレー25,27をオフ(遮断)し、リレー26をオン(接続)することにより、バス11,12に対して第1蓄電池モジュール30及び第2蓄電池モジュール60を直列接続に切り替えることができる。すなわち、切替回路は、蓄電池モジュール30,60(複数の蓄電池モジュール)を、バス11,12に対して直列接続と並列接続とに切り替える。そして、蓄電池モジュール30,60を切替回路により並列接続に切り替えた場合は、蓄電池モジュール30,60からバス11,12へ電力を供給することができる。このため、蓄電池モジュール30,60を冗長な電源として用いることができる。そして、ECU16は、蓄電池モジュール30,60を切替回路により並列接続に切り替えた状態において、電力供給システム10の上記制御及びその変更例と同様の制御を実行することができる。また、蓄電池モジュール30,60を切替回路により直列接続に切り替えた場合は、蓄電池モジュール30,60の出力電圧Vm1,Vm2を足した電圧をバス11,12に供給することができる。このため、蓄電池モジュール30,60をより高圧な電源として用いることができる。
【0077】
さらに、負荷28が、第2蓄電池モジュール60(蓄電池モジュール)の第2蓄電池61(蓄電池)に並列に接続されていてもよい。この場合は、第2蓄電池61から負荷28へ電力を供給することにより、第2蓄電池61の充電量を減少させることができる。このため、第2蓄電池モジュール60の第2蓄電池61の第2出力電圧Vb2を、第1蓄電池モジュール30の第1蓄電池31の第1出力電圧Vb1よりも低下させやすくなる。したがって、第2蓄電池モジュール60の第2蓄電池61の第2出力電圧Vb2に第2変換回路70の第2出力電圧Vo2を足す制御を行いやすくなり、第2蓄電池モジュール60の第2出力電圧Vm2をバス電圧要求値Vbus*に調整しやすくなる。
【0078】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0079】
本実施形態では、
図11に示すように、電力供給システム210は、3つ以上の蓄電池モジュール30,60,90を備えている。ここでは、電力供給システム210が、3つの蓄電池モジュール30,60,90を備えている場合を例にして説明する。なお、同図では、変換回路40,70,100(PPC:Partial Power Converter、部分昇圧コンバータ)の接続態様を簡略化して表示している。蓄電池モジュール30,60,90は、蓄電池31,61,91の電圧をそれぞれ検出する電圧センサ31a,61a,91aと、蓄電池モジュール30,60,90をバス11,12に対してそれぞれ切断及び接続するリレー40a,40b,70a,70b,100a,100b(スイッチ)を備えている。
【0080】
図12は、本実施形態の満充電容量算出の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ECU16により所定の周期で繰り返し実行される。
【0081】
S30の処理は、
図7のS10の処理と同一である。この判定において、充電開始タイミングであると判定した場合(S30:YES)、非推定蓄電池及び推定蓄電池の数を決定する(S31)。具体的には、電力供給システム10の充電可能電流(充電可能電力)に基づいて、非推定蓄電池に選択する蓄電池の数を決定する。電力供給システム10(システム)の充電可能電流は、例えば外部充電器29の仕様により決まる電流上限値、又は変換回路40,70,100等の仕様により決まる電流上限値を通信等により取得して採用することができる。電力供給システム10の充電可能電流と、非推定蓄電池に選択する蓄電池の数との関係は、予め試験等に基づいて規定(例えばECU16にテーブル又はグラフを記憶)しておくことができる。例えば、電力供給システム10の充電可能電流が大きいほど、非推定蓄電池に選択する蓄電池の数が多くなる。ここで、後述する各蓄電池の充電可能電流(充電可能電力)も考慮して、非推定蓄電池に選択する蓄電池の数を規定することもできる。そして、蓄電池の合計数Nから非推定蓄電池に選択した蓄電池の数を引いて、推定蓄電池に選択する蓄電池の数を決定する。すなわち、各蓄電池の充電可能電力(通電可能力)及び電力供給システム10の充電可能電力に基づいて、非推定蓄電池の充電開始時に推定蓄電池に選択する蓄電池の数を決定する。推定蓄電池に選択する蓄電池の数を決定した場合に、推定蓄電池に優先的に選択する蓄電池の決め方は、
図7のS11の処理と同様である。続いて、全ての非推定蓄電池の充電を開始する(S32)。
【0082】
S33~S35の処理は、
図7のS13~S35の処理と同様である。ただし、S34,S35の処理では、全ての推定蓄電池を対象とする。
【0083】
S36,S37の処理は、
図7のS16,S17の処理と同様である。ただし、S36,S37の処理では、全ての蓄電池31,61,91(全ての蓄電池モジュール30,60,90)を対象とする。
【0084】
S38の処理は、
図7のS18の処理と同様である。ただし、S38の処理では、全ての蓄電池31,61,91(全ての蓄電池モジュール30,60,90)を対象とする。例えば、非推定蓄電池の充電を開始し且つ推定蓄電池を分極解消のために放置している状態では、全ての非推定蓄電池に対応する変換回路を制御して、外部充電器29の定格充電電力を全ての非推定蓄電池に分配して充電を行う。また、推定蓄電池の充電も開始して非推定蓄電池及び推定蓄電池を充電している状態では、充電ケーブル29a,29bの接続(充電要求)に対する推定蓄電池の充電時間が充電要求に対する非推定蓄電池の充電時間よりも短くなるように、全ての推定蓄電池に対応する変換回路及び全ての非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。そして、一部の非推定蓄電池及び一部の推定蓄電池の充電終了条件が満たされて、非推定蓄電池及び推定蓄電池の一部のみ充電している状態では、充電している一部の蓄電池に外部充電器29の定格充電電力を分配して充電を行う。
【0085】
続いて、電力供給システム10の充電可能電流が、非推定蓄電池の充電可能電流の合計よりも大きいか否か判定する(S39)。非推定蓄電池(蓄電池)の充電可能電流は、予め試験等に基づいて規定(例えばECU16にマップを記憶)しておくことができる。例えば、蓄電池の温度が高いほど蓄電池の充電可能電流が大きくなり、蓄電池のSOCが低いほど充電可能電流が大きくなる。そして、マップを参照して蓄電池の温度及びSOCを当てはめることにより、蓄電池の充電可能電流を算出する。この判定において、電力供給システム10の充電可能電流が、非推定蓄電池の充電可能電流の合計よりも大きいと判定した場合(S39:YES)、推定蓄電池に選択した蓄電池の1つを非推定蓄電池に変更して充電を開始する(S40)。
図13に示すように、非推定蓄電池を充電する際に、充電する非推定蓄電池の電流の合計が電力供給システム10の充電可能電流よりも大幅に小さい場合(例えば非推定蓄電池の数=1)は、電力供給システム10における蓄電池の充電効率が低下する。例えば、全ての非推定蓄電池を充電するために必要な充電時間が長くなる。ここで、電力供給システム10の充電可能電流よりも大きな電流で蓄電池の充電を行うことはできない。各蓄電池の充電可能電流よりも大きな電流を各蓄電池に流すと、各蓄電池が劣化する。このため、充電電流は、電力供給システム10の充電可能電流及び非推定蓄電池の充電可能電流の合計のうち小さい方の電流となる。例えば、非推定蓄電池の数=4の場合、非推定蓄電池の充電可能電流の合計が電力供給システム10の充電可能電流よりも若干大きくなる。この場合は、S38の処理において、電力供給システム10の充電可能電流を4つの非推定蓄電池に分配して充電を行うことにより、電力供給システム10における蓄電池の充電効率を向上させることができる。さらに、推定蓄電池の数=N-4を、できるだけ多くすることができる。非推定蓄電池の数=5の場合は、推定蓄電池の数=N-5が少なくなる。そこで、S40の処理では、推定蓄電池に選択した蓄電池の1つを非推定蓄電池に変更して充電を開始する。
【0086】
続いて、非推定蓄電池の出力電圧Vbと推定蓄電池の出力電圧Vbとの電圧差が所定電圧差よりも大きいか否か判定する(S41)。非推定蓄電池が複数である場合、複数の非推定蓄電池の出力電圧Vbの最高値、平均値、最低値等を適宜判定に用いることができる。同様に、推定蓄電池が複数である場合、複数の推定蓄電池の出力電圧Vbの最高値、平均値、最低値等を適宜判定に用いることができる。所定電圧差は、非推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧Vmと推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧Vmとを一致させるように変換回路で調整することが困難となることを判定可能な値に設定されている。この判定において、非推定蓄電池の出力電圧Vbと推定蓄電池の出力電圧Vbとの電圧差が所定電圧差よりも大きいと判定した場合(S41:YES)、充電中の蓄電池の充電電力を調整する(S42)。具体的には、非推定蓄電池及び推定蓄電池のうち出力電圧が低い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも増加させるように、推定蓄電池に対応する変換回路及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。例えば、非推定蓄電池及び推定蓄電池のうち出力電圧が低い方に含まれる最も出力電圧が低い蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも増加させる。又は、非推定蓄電池及び推定蓄電池のうち出力電圧が高い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも減少させるように、推定蓄電池に対応する変換回路及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。例えば、非推定蓄電池及び推定蓄電池のうち出力電圧が高い方に含まれる最も出力電圧が高い蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも減少させる。
【0087】
S43~S45の処理は、
図7のS19~S21の処理と同様である。ただし、S43~S45の処理では、全ての推定蓄電池を対象とする。
【0088】
なお、S34,S44,S45の処理がパラメータ取得部16cとしての処理に相当し、S32,S35,S38,S40,S42の処理が制御部16bとしての処理に相当する。
【0089】
以上詳述した本実施形態は、第1実施形態の利点に加えて以下の利点を有する。
【0090】
・制御部16bは、複数の蓄電池31,61,91の充電開始から充電終了までにおいて、非推定蓄電池の出力電圧Vbと、推定蓄電池の出力電圧Vbとの電圧差が所定電圧差よりも大きい場合に、電圧差を縮小させるように、推定蓄電池に対応する変換回路及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。こうした構成によれば、非推定蓄電池の出力電圧Vbと推定蓄電池の出力電圧Vbとの電圧差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。したがって、非推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧Vmと推定蓄電池に対応する蓄電池モジュールの出力電圧Vmとを一致させるように変換回路で調整可能な状態を維持することができる。
【0091】
・制御部16bは、各蓄電池の充電可能電力及び電力供給システム10の充電可能電力に基づいて、非推定蓄電池の充電開始時に推定蓄電池に選択する蓄電池の数を決定する。こうした構成によれば、各蓄電池の充電可能電力及び電力供給システム10の充電可能電力を考慮して、充電する非推定蓄電池の数を決定することができる。したがって、電力供給システム10の充電効率が低下することを抑制することができる。
【0092】
・制御部16bは、全ての非推定蓄電池の充電を開始してから推定蓄電池の充電を開始するまでの間に、電力供給システム10の充電可能電流が、全ての非推定蓄電池の充電可能電流の合計よりも大きい場合に、非推定蓄電池の充電開始時に推定蓄電池に選択した蓄電池の1つを非推定蓄電池に変更して充電を開始する。こうした構成によれば、全ての非推定蓄電池を充電しても電力供給システム10の充電可能電流に達しない場合に、非推定蓄電池の充電電流の合計を増加させることができる。したがって、非推定蓄電池の充電開始時に推定蓄電池に選択した蓄電池の数が多すぎた場合であっても、電力供給システム10の充電効率が低下することを抑制することができる。
【0093】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0094】
・
図12のS31の処理を、
図12の一連の処理を開始するよりも前に予め実行しておくこともできる。
【0095】
・
図12のS38の処理において、非推定蓄電池の充電を開始し且つ推定蓄電池を分極解消のために放置している状態で、充電していない蓄電池が非推定蓄電池に含まれる場合は、S40の処理に代えて充電していない非推定蓄電池の1つの充電を開始してもよい。
【0096】
・
図14に示すように、電力供給システム210は、第3蓄電池モジュール90の第3変換回路100とリレー100aとの接続点N7と、第1蓄電池モジュール30の第1蓄電池31とリレー40bとの接続点N8とを接続する経路211を備えていてもよい。さらに、電力供給システム210は、第1蓄電池モジュール30の第1変換回路40とリレー40aとの接続点N9と、第2蓄電池モジュール60の第2蓄電池61とリレー70bとの接続点N10とを接続する経路213を備えていてもよい。経路211には、経路211を切断及び接続するリレー212(スイッチ)が設けられている。経路213には、経路213を切断及び接続するリレー214(スイッチ)が設けられている。リレー212,214は、ECU16により制御される。なお、経路211,213、及びリレー212,214により、切替回路が構成されている。すなわち、電力供給システム210は、3個以上の蓄電池モジュール(複数の蓄電池モジュール)を備え、切替回路は3個以上の蓄電池モジュールをバス11,12に対して直列接続と並列接続とに切り替えてもよい。
【0097】
また、第1、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を援用する。
【0098】
・充電終了条件を満たしたか否かの判定に、満充電電圧閾値よりも低い電圧閾値(例えば所定SOCに対応)を用いることもできる。
【0099】
・負荷21として、例えばインバータとMG(Motor Generator)との組み合わせ(インバータ付きモータユニット)が、バス11,12に2個以上並列に接続されていてもよい。その場合は、インバータ付きモータユニットの数が多いほど、バス11,12に接続されている蓄電池モジュールの数を多くしてもよい。
【0100】
・
図15に示すように、第1変換回路40(変換回路)において、
図2のスイッチング素子54,55をトランス53と負極端子48との間に接続してもよい。こうした構成によっても、
図2の第1変換回路40と同様の作用効果を奏することができる。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0101】
・
図16に示すように、第1変換回路40(変換回路)は、センタータップ式でないトランス153と、スイッチング素子143~146で構成される2次側のフルブリッジ回路とを備える周知の絶縁型DCDCコンバータであってもよい。スイッチング素子143~146は、例えばMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子143~146は、ECU16により制御される。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0102】
・第1変換回路40(変換回路)として、共振型DCDCコンバータを採用することもできる。また、第1変換回路40(変換回路)として、バックコンバータ等の非絶縁型DCDCコンバータを採用することもできる。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0103】
・
図17に示すように、蓄電池モジュール30,60が構成されていてもよい。すなわち、第1蓄電池31の正極がバス11に接続されている。第1蓄電池31の正極に第1変換回路40の1次側の正極端子41が接続され、第1蓄電池31の負極に第1変換回路40の1次側の負極端子42が接続されている。また、第1蓄電池31の負極に第1変換回路40の2次側の正極端子47が接続されている。第1変換回路40の2次側の負極端子48がバス12に接続されている。この場合も、第1変換回路40の1次側端子対41,42に第1蓄電池31の正極及び負極がそれぞれ接続され、第1変換回路40の2次側端子対47,48に第1蓄電池31が直列接続されている。こうした構成によっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、第2蓄電池モジュール60及び第3蓄電池モジュール90等(蓄電池モジュール)においても同様である。
【0104】
・
図18に示すように、変換回路240,270として、PPC(部分昇圧コンバータ)でない一般的なDCDCコンバータを採用することもできる。変換回路240の2次側端子48は、第1蓄電池31の負極に接続されている。すなわち、第1変換回路40の2次側端子対47,48に、第1蓄電池31が並列接続されていてもよい。なお、第2蓄電池モジュール60及び第3蓄電池モジュール90等(蓄電池モジュール)においても同様である。
【0105】
・パラメータ取得部16cは、推定蓄電池の放電(通電)開始前及び放電終了後に、推定蓄電池の満充電容量の推定に用いるOCV(所定パラメータ)及びSOC(所定パラメータ)を取得することもできる。
図19に示すように、制御部16bは、タイミングt61において走行要求(複数の蓄電池に対する放電要求)を入力した時に、非推定蓄電池の少なくとも1つの放電により車両の走行を開始する。一方、制御部16bは、走行要求を入力した時から所定時間経過後のタイミングt62において、推定蓄電池において放電前OCVをパラメータ取得部16cにより取得した後に放電を開始する。制御部16bは、走行要求に対する推定蓄電池の放電時間Te2が放電要求に対する非推定蓄電池の放電時間Te1よりも短くなるように、推定蓄電池に対応する変換回路及び非推定蓄電池に対応する変換回路を制御する。タイミングt64において推定蓄電池の電圧が安定した時に、パラメータ取得部16cは推定蓄電池の放電後OCVを取得する。そして、パラメータ取得部16cは、放電前OCV及び放電後OCVを
図4のグラフに当てはめることにより、放電前SOC及び放電後SOCを算出する。そして、パラメータ取得部16c(ECU16)は、満充電容量[Ah]=放電量×100/(放電前SOC-放電後SOC)の式により、満充電容量を算出する。放電量は、放電開始から終了までの電流の積算値である。こうした構成によっても、第1,第2実施形態及びその変更例に準じた作用効果を奏することができる。
【0106】
・ECU16のバス電圧設定部16a、制御部16b、及びパラメータ取得部16cの少なくとも1つの機能を、例えば蓄電池毎に設けられて蓄電池の状態を管理するBMU(Battery Management Unit)や、電気自動車の動力を制御する動力制御ECU(Electronic Control Unit)、電気自動車を統括的に制御する車両制御ECU(上位ECU)により実現することもできる。また、電力供給システム10,210を例えば定置電源として用いる場合は、ECU16のバス電圧設定部16a、制御部16b、及びパラメータ取得部16cの機能を、定置電源を制御する定置電源制御ECU(制御装置)により実現することもできる。
【0107】
・本開示に記載のECU16及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能(命令)を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のECU16及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のECU16及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0108】
なお、上記実施形態及び各変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実行することもできる。
【0109】
以下、上述した実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える蓄電池モジュール(30,60,90)が、充電装置(29)及び負荷(21)の少なくとも一方に並列に複数接続される蓄電池監視システム(10,210)であって、
満充電容量を推定する前記蓄電池である推定蓄電池の通電開始前及び通電終了後に、前記推定蓄電池の満充電容量の推定に用いる所定パラメータを取得するパラメータ取得部(16c,31a,51,61a,91a)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池モジュールの前記蓄電池の通電状態をそれぞれ制御する制御部(16b)と、を備え、
前記制御部は、複数の前記蓄電池に対する通電要求を入力した時に、満充電容量を推定しない前記蓄電池である非推定蓄電池の少なくとも1つの通電を開始する一方、前記通電要求を入力した時から所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始し、前記通電要求に対する前記推定蓄電池の通電時間が前記通電要求に対する前記非推定蓄電池の通電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、蓄電池監視システム。
[構成2]
前記所定パラメータは、前記推定蓄電池に電流が流れていないとみなすことができる時間が前記所定時間以上である場合に計測される前記推定蓄電池の開回路電圧、又は前記開回路電圧に基づいて算出される前記推定蓄電池の充電率である、構成1に記載の蓄電池監視システム。
[構成3]
複数の前記蓄電池モジュールは、前記充電装置に並列に接続されており、
複数の前記蓄電池に対する前記通電要求は、複数の前記蓄電池に対する充電要求であり、
前記制御部は、前記充電要求に対する前記推定蓄電池の充電時間が前記充電要求に対する前記非推定蓄電池の充電時間よりも短くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記推定蓄電池に流れる電流の平均値を前記非推定蓄電池に流れる電流の平均値よりも大きくする、構成1又は2に記載の蓄電池監視システム。
[構成4]
前記制御部は、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御することで、前記推定蓄電池の充電終了タイミングを前記非推定蓄電池の充電終了タイミングよりも早くする、構成3に記載の蓄電池監視システム。
[構成5]
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている、構成3又は4に記載の蓄電池監視システム。
[構成6]
前記制御部は、前記非推定蓄電池の少なくとも1つの充電を開始してから、前記推定蓄電池の充電を開始するまで、前記推定蓄電池に流れる電流を0に近づけるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、構成5に記載の蓄電池監視システム。
[構成7]
前記制御部は、前記推定蓄電池の充電開始から充電終了まで、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記推定蓄電池に印加される電圧が、前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路から前記非推定蓄電池に印加される電圧よりも高くなるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、構成5又は6に記載の蓄電池監視システム。
[構成8]
前記制御部は、複数の前記蓄電池の充電開始から充電終了までにおいて、前記非推定蓄電池の出力電圧と、前記推定蓄電池の出力電圧との電圧差が所定電圧差よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が低い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも増加させる又は前記非推定蓄電池及び前記推定蓄電池のうち出力電圧が高い方に含まれる少なくとも1つの蓄電池に入力される電力あるいは電流を現在よりも減少させるように、前記推定蓄電池に対応する前記変換回路及び前記非推定蓄電池に対応する前記変換回路を制御する、構成5~7のいずれか1つに記載の蓄電池監視システム。
[構成9]
前記制御部は、複数の前記蓄電池のうち最も劣化していると予測される蓄電池、及び複数の前記蓄電池のうち満充電容量を算出していない期間が最も長い蓄電池の少なくとも一方を、前記推定蓄電池に選択する、構成1~8のいずれか1つに記載の蓄電池監視システム。
[構成10]
前記制御部は、各蓄電池の通電可能電力及び前記蓄電池監視システムの通電可能電力に基づいて、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択する前記蓄電池の数を決定する、構成1~9のいずれか1つに記載の蓄電池監視システム。
[構成11]
前記制御部は、全ての前記非推定蓄電池の通電を開始してから前記推定蓄電池の通電を開始するまでの間に、前記蓄電池監視システムの通電可能電力が、全ての前記非推定蓄電池の通電可能電力の合計よりも大きい場合に、前記非推定蓄電池の通電開始時に前記推定蓄電池に選択した前記蓄電池の少なくとも1つを前記非推定蓄電池に変更して通電を開始する、構成10に記載の蓄電池監視システム。
[構成12]
前記制御部は、前記推定蓄電池の通電を開始してから終了するまでに複数の前記蓄電池に対する次の通電要求を入力した時に前記推定蓄電池の通電を終了し、前記推定蓄電池の通電を終了した時から前記所定時間経過後に、前記推定蓄電池において前記所定パラメータを前記パラメータ取得部により取得した後に通電を開始する、構成1~11のいずれか1つに記載の蓄電池監視システム。
【符号の説明】
【0110】
10…電力供給システム、16b…制御部、16c…パラメータ取得部、21…負荷、29…外部充電器、30…第1蓄電池モジュール、31…第1蓄電池、31a…電圧センサ、40…第1変換回路、41…正極端子(1次側端子対)、42…負極端子(1次側端子対)、47…正極端子(2次側端子対)、48…負極端子(2次側端子対)、51…電圧センサ、60…第2蓄電池モジュール、61…第2蓄電池、61a…電圧センサ、70…第2変換回路、71…正極端子(1次側端子対)、72…負極端子(1次側端子対)、77…正極端子(2次側端子対)、78…負極端子(2次側端子対)、90…第3蓄電池モジュール、91…第3蓄電池、91a…電圧センサ、100…第3変換回路、210…電力供給システム。